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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152467
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】DC-DC電力変換器の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055253
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519417676
【氏名又は名称】株式会社アパード
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】村山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹下 隆晴
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AA15
5H730AS01
5H730AS17
5H730BB26
5H730BB27
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730FD11
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】より少ないセンサで、DC-DC電力変換器の二次側回路の電流及び電圧を検出する。
【解決手段】一次側回路(1)は、スイッチング素子R+、R-、S+、S-を含む回路を有する。二次側回路(2)は、共振キャパシタをそれぞれ並列に接続した4個のダイオードU+、U-、V+、V-を含むダイオード整流回路と、この整流回路に並列接続された平滑キャパシタC2とを含む。二次側回路(2)において、トランスTrの漏れインダクタンスLと共振キャパシタとの共振回路が形成される。トランスTrの漏れインダクタンスLと、前記共振キャパシタの容量Cと、トランスTrの一次側の電圧vとから、トランスTrの二次側の電流i及び電圧vを検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側回路と二次側回路とがトランスを介して接続されたDC-DC電力変換器の制御方法であって、
前記一次側回路は、スイッチング素子を含む回路を有し、
前記二次側回路は、共振キャパシタをそれぞれ並列に接続した4個のダイオードを含むダイオード整流回路と、前記整流回路と並列に接続された平滑キャパシタとを有し、
前記二次側回路において、前記トランスの漏れインダクタンスと前記共振キャパシタとの共振回路が形成され、
前記トランスの漏れインダクタンスと、前記共振キャパシタの容量と、前記トランスの一次側の電圧とから、前記トランスの二次側の電流及び電圧を検出することを特徴とするDC-DC電力変換器の制御方法。
【請求項2】
前記一次側回路は、4つの前記スイッチング素子を有するHブリッジ回路と、前記Hブリッジ回路と並列に接続されたキャパシタとを有する請求項1記載のDC-DC電力変換器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC-DC電力変換器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、リチウムイオン電池等の二次電池を非接触で充電する非接触式充電器として、トランスの一次側から二次側に電力を伝達するDC-DC電力変換器が用いられる。このようなDC-DC電力変換器として、トランスの一次側の電流波形と二次側の電流波形との位相差によりトランスの一次側から二次側に電力を送電する、デュアルアクティブブリッジ方式(DAB方式)のDC-DC電力変換器が知られている。
【0003】
下記の特許文献1に示されているDAB方式のDC-DC電力変換器では、一次側回路及び二次側回路の半導体スイッチング素子の切り替え位相差を制御して、ソフトスイッチングを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-152687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなDC-DC電力変換器を用いて二次電池に充電する際、過充電を防ぐために、CCCV充電(Constant Current Constant Voltage:定電流定電圧充電)を利用することが一般的に行われている。この場合、二次側回路におけるリアルタイムの電流及び電圧を検出することが必要となる。上記特許文献1の電力変換器では、二次側回路に設けた電流センサ及び電圧センサで、二次側回路の電流及び電圧を検出することができる。
【0006】
一方、近年の車両電動化の流れに対しては、より安価な充電設備が求められるため、DC-DC電力変換器を用いて充電を行う場合、二次側回路の電流制御を行うためのセンサ類の数はより少ない方が好ましい。
【0007】
そこで、本発明は、より少ないセンサで、DC-DC電力変換器の二次側回路の電流及び電圧を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願人による特願2019-211006では、一次側回路と二次側回路がトランスを介して接続されたDC-DC電力変換器を提案している。前記一次側回路は、スイッチング素子を含む回路を有する。前記二次側回路は、共振キャパシタをそれぞれ並列に接続した4個のダイオードを含むダイオード整流回路と、前記整流回路と並列に接続された平滑キャパシタとを有する。前記二次側回路において、前記トランスの漏れインダクタンスと前記共振キャパシタとの共振回路が形成される。
【0009】
上記の回路構成を有するDC-DC電力変換器では、一次側回路のインバータ動作(スイッチング素子の操作)のみで、二次側の電流及び電圧を制御することができるため、二次側回路のスイッチング素子を省略できる。この回路構成では、トランスの漏れインダクタンスと二次側回路の共振キャパシタ(コンデンサ)の容量とからトランスの二次側の電圧を検出することができる。こうして取得したトランスの二次側の電圧と、一次側回路に設けたセンサで検出したトランスの一次側の電圧とから、トランスの二次側の電流を検出することができる。
【0010】
以上の知見に基づいてなされた本発明は、上記の回路構成を有するDC-DC電力変換器の制御方法において、前記トランスの漏れインダクタンスと、前記二次側回路の共振キャパシタの容量と、前記トランスの一次側の電圧とから、前記二次側回路の電流及び電圧を検出することを特徴とする。これにより、二次側回路に電流センサや電圧センサを設けることなく、一次側回路に設けた電圧センサだけで、二次側回路の電流及び電圧を検出することができる。
【0011】
上記のDC-DC電力変換器は、例えば、4つの前記スイッチング素子を有するHブリッジ回路と、前記Hブリッジ回路と並列に接続されたキャパシタとを有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、より少ないセンサで、DC-DC電力変換器のトランスの二次側の電流及び電圧を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態の電力変換器の回路図である。
図2】各スイッチの導通状態と高周波トランスの電圧、電流波形を示す図である。
図3】二次側ダイオード整流回路の各転流動作を示す図である。
図4】高周波トランスの周波数と共振周波数の比f/fに対する出力電力Poutの特性を示す図である。
図5】一次側回路のスイッチR-,S+からスイッチR+,S-に転流する場合の回路の動作モードと高周波トランスの一次電圧波形vを示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態の電力変換器の回路図である。
図7】モード切換タイミング(モード2-2)による出力電力の制御方法を説明する動作波形図である。
図8】モード切換タイミング(モード2-3)による出力電力の制御方法を説明する動作波形図である。
図9】一次電圧vが0となる期間Tに対する出力電力特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。なお、一次側のソフトスイッチング回路は、例えばHブリッジ回路、ハーフブリッジ回路が使用できるが、これに限定されず、何れの回路も使用され得る。
【0015】
本実施形態のDC-DC電力変換器の基本的な特徴は、スイッチング素子を有する回路により方形波等を発生させる一次側回路と、受動素子のみで構成され整流回路とLC共振回路との組合せで構成される二次側回路とをトランスにより電磁結合する回路構成を採用した点にある。これにより、簡単な回路構成でありながら供給電力は一次側回路のスイッチング周波数により調整でき、また、二次側回路側が受動素子のみで構成されるため、トランスの鉄心で一次側回路側と二次側回路側とを分離できる利点が得られる。
【0016】
上記のような回路構成では、トランスの漏れインダクタンスと、二次側回路の共振キャパシタの容量とから、トランスの二次側の電圧を検出できる。こうして検出したトランスの二次側の電圧と、電圧センサで検出したトランスの一次側の電圧とから、トランスの二次側の電流を検出することができる。これにより、二次側回路に電流センサや電圧センサを設けることなく、二次側の電圧及び電流を検出することができるため、回路に設けられるセンサの数を従来よりも減らすことができる。以下、図面を参照して具体的な回路図について説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の電力変換器(10)の回路図を示す。本回路は、単方向絶縁型DC-DC電力変換器であり、一次側回路(1)側はHブリッジ回路が設けられ、二次側回路(2)側はダイオード整流回路で構成され、それらが高周波トランスTrで結合される。なお、一次側回路及び二次側回路をそれぞれ単に「一次側」、「二次側」と表記する場合がある。高周波トランスTrを単に「トランス」と表記する場合がある。
【0018】
一次側Hブリッジ回路は4つのスイッチング素子R+,R-,S+,S-で構成される。スイッチング素子には、逆並列のダイオードが接続される。スイッチング素子の寄生容量(浮遊容量)はCと表す。一次側Hブリッジ回路は、入力直流電圧Vinを高周波の方形波交流電圧vに変換する。
【0019】
なお、高周波トランスTrの漏れインダクタンスをLで表記し、高周波トランスTr全体の漏れインダクタンスを二次側での換算値として表している。漏れインダクタンスが小さい場合には、トランスに直列にリアクトルを接続し、高周波トランス自体の漏れインダクタンスと挿入したリアクトルを含めて漏れインダクタンスL(インダクタンスL)としている。トランスの一次巻線と二次巻線の巻数をそれぞれn1、n2としたとき、巻数比a(=n1/n2)を用いて、一次電圧vの二次換算値はv’(=v/a)と表される。
【0020】
二次側ダイオード整流回路は、共振キャパシタをそれぞれ並列に接続した4個のダイオードU+,U-,V+,V-と平滑キャパシタCとで構成される。ここで、共振キャパシタの容量Cは、ダイオードの寄生容量(例えば数nF~10nF程度)よりも相対的にかなり大きな値(例えば数十nF~1μF、具体的には100nF~1μF、典型的には500nF~1μF)である。二次側ダイオード整流回路は高周波方形波電圧を出力直流電圧Voutに変換する。
【0021】
なお、寄生容量が十分に大きい(例えば数十nF~1μF)ダイオード(容量を大きく設計したダイオード)を用いることで、実質的に共振キャパシタ(C)をダイオードに内蔵した構成とすることもできる。この場合、共振キャパシタをダイオード外部に設ける必要がなく、小型に構成することができる。
【0022】
本実施形態で示す二次側回路の特徴は、インダクタンスLとキャパシタ(C)との共振を用いる点にあり、他の構成は用途によって適宜変更可能である。例えば、図1では、二次側出力に直流電源が接続されているが、直流負荷が接続されていてもよい。例えば、二次電池の充電回路といった用途であれば図1のように直流電源として表されるが、例えば鉄道の架線から鉄道に電力を変換するDC-DCコンバーターとして使用する場合は、直流負荷として表される。
【0023】
図2は、図1の絶縁型DC-DC電力変換回路の各スイッチの導通状態と高周波トランスの電圧、電流波形を示す。図2の横軸は時間である。図2では、説明の簡単化のために、高周波トランスの巻数比a=1とし、さらに、入出力直流電圧が等しい場合(Vin=Vout)である。一次側Hブリッジ回路においては、R,S相のスイッチング位相を180度ずらして、各スイッチのデューティ50%で通電することで、入力直流電圧Vinを振幅とし、周波数f(=1/2T;高周波波形の半周期T)の方形波交流電圧を一次電圧vとして発生する。図2の一次電圧vの波形に、一次電圧vの変化に伴う動作モードとして<モード1-1>から<モード1-4>の各区間を示す。二次電圧vは一次電圧vに対して遅れ電圧になる。高周波トランスの励磁電流は一次、二次電流に比較して十分小さいとして励磁電流を無視すれば、高周波トランスの一次電流iと二次電流iは等しくなる。図2の一次電流i、二次電流iに示す方形波状の電流が得られる。波形の詳細は後に詳しく導出する。一次電流i、二次電流iの波形と共に、二次側ダイオード整流回路の転流に伴う動作モードとして<モード2-1>から<モード2-4>の各区間を示す。
【0024】
図3は、二次側ダイオード整流回路の各転流動作を示す図であり、Hブリッジ回路のスイッチングにより一次電圧が負から正に切り換わったときの二次側ダイオード整流回路において、ダイオードU-,V+がそれぞれダイオードU+,V-に転流するときの各モードにおける回路動作を示している。図3の転流前の<モード2-1>では、一次側スイッチR-,S+が導通し、一次電圧v’は、入力直流電圧-Vin(=-Vout)になり、二次電流iはダイオードU-とV+が導通して負の電流-Iが流れている。二次電圧vは、出力直流電圧-Voutになり、一次、二次電圧が等しいので、一定値-Iの二次電流iが流れる。ダイオードU-とV+の並列キャパシタの電圧は零で、ダイオードU+とV-の並列キャパシタは出力直流電圧Voutに充電される。図2の時刻t=tにおいてHブリッジ回路のスイッチをR-,S+からR+,S-に切り換えて、一次電圧v’が-VinからVinに変化すると、<モード2-2>に移る。図3の<モード2-2>に移ってもインダクタンスLによる二次電流の連続性からダイオードU-とV+が導通し続ける。<モード2-2>の二次側回路の電圧方程式は次式で与えられる。
【0025】
【数1】
【0026】
ここで、<モード2-2>における一次電圧v’=Vin=Vout、二次電流初期値i(t)=-Iを(1)式に代入して、<モード2-2>の二次電流i(t)が次式で得られる。
【0027】
【数2】
【数3】
【0028】
図2に示すように<モード2-2>では、二次電流i(t)は一定の傾きで零に向かって増加していく。二次電流i(t)が時刻t=tで零になると<モード2-2>が終了する。<モード2-2>の期間T=t-tは、(4)で与えられる。
【数4】
【0029】
時刻t=tで二次電流i(t)=0になると、二次側回路における全てのダイオードが非導通状態になり、図3の<モード2-3>に移る。<モード2-3>が始まる時刻t=tにおけるダイオードU-,V+の並列キャパシタの初期電圧は共に零であり、ダイオードU+,V-の並列キャパシタの初期電圧は共にVoutである。<モード2-3>では、インダクタLと4個のキャパシタ(C)の共振回路が構成される。回路の対称性から二次電流の半分の電流i/2が各キャパシタに流れる。<モード2-3>における電圧方程式が次式で与えられる。
【0030】
【数5】
【0031】
一次電圧v’=Vin=Vout、二次電流初期値i(t)=0をそれぞれ(5)式に代入して解くと、<モード2-3>の二次電流i(t)が次式で得られる。
【0032】
【数6】
【0033】
二次電流i(t)は、共振角周波数ωo(=2πf=1/√(LC))の電流が流れる。二次電圧vは、(6)式の二次電流i(t)を用いて次式で得られる。
【数7】
【0034】
(6)、(7)式の二次電流i、二次電圧vは、図2に示すように正弦波波形になる。二次電流i、二次電圧vがそれぞれI、Voutになると、ダイオードU+,V-の並列キャパシタの電圧も共に零になり、時刻t=tで<モード2-3>は終了する。図2において、時刻t=tにおける位相は、π/2であり、二次電流iの振幅Iと<モード2-3>の期間T=t-tは、(6)、(7)式から次式で得られる。
【0035】
【数8】
【数9】
【0036】
(3)式の<モード2-2>の二次電流i、(4)式の<モード2-2>の期間Tは、(8)式をそれぞれ代入して、次式に書き換えられる。
【0037】
【数10】
【数11】
【0038】
時刻t=tでダイオードU+,V-の並列キャパシタの電圧が共に零になると、ダイオードU+,V-が導通し、図3の<モード2-4>に移る。<モード2-4>の二次側回路の電圧方程式は次式で与えられる。
【0039】
【数12】
【0040】
ここで、<モード2-4>における一次電圧v’=Vin=Vout、二次電流初期値i(t)=Iを(12)式に代入して、<モード2-4>の二次電流i(t)が次式で得られる。
【数13】
【0041】
図2に示すように<モード2-4>では、二次電流i(t)は一定値になる。Hブリッジ回路がスイッチングをして一次電圧が正から負に切り換わることで、<モード2-4>が終了する。
【0042】
二次側回路の動作から各ダイオードは、いずれも並列キャパシタ電圧が零の状態でスイッチングする。すなわち、ダイオードのリカバリー損失は発生しないので、電力損失が発生せず、極めて高効率になる。出力電力Poutは、出力電流ioutを用いて、高周波トランスの半周期Tの平均電力として次式で得られる。
【0043】
【数14】
【0044】
出力電力Poutの制御は、高周波トランスの周波数fにより調整できる。(14)式の出力電力Poutを,高周波トランスの周波数f(=1/2T)と共振周波数f(=1/(2π√(LC)))を用いて書き直すと、次式が得られる。
【0045】
【数15】
【0046】
図4は、(15)式に基づいて、高周波トランスの周波数と共振周波数の比f/fに対する出力電力Poutの特性を示す。共振周波数fは回路パラメータで決まり、一定値であり、トランスの周波数fを高くすることで、出力電力Poutを低減できる。図4では、高周波トランスの周波数と共振周波数の比(f/f)=1/4を定格出力Pout=1と基準化して表している。(15)式の出力電力Poutが成立する高周波トランスの最大周波数(f/fmaxは、図2の二次電流i(t)の波形において、電流値Iの期間が零になる場合で、次式で得られる。
【0047】
【数16】
【0048】
高周波トランスの最大周波数は(f/fmax=1.22となり、このとき、図4では定格出力の0.23まで出力電力を低減できている。高周波トランスの周波数fを、(f/fmaxから定まる値より高い周波数にすると、(15)式は成立しないが、さらに出力電力Poutの低減は可能である。
【0049】
次に、Hブリッジ回路のソフトスイッチング転流について説明する。
【0050】
図1では、一次側Hブリッジ回路のスイッチング素子の並列キャパシタCが寄生容量であるとして説明したが、スイッチのソフトスイッチングをするために、別途キャパシタを並列に外付けしても良い。以下では並列にキャパシタを外付けした場合を含め、スイッチング素子の並列静電容量をCとして説明する。
【0051】
図5は、一次側Hブリッジ回路のスイッチR-,S+からスイッチR+,S-に転流する場合の回路の動作モードと高周波トランスの一次電圧波形vを示す。
【0052】
転流前の<モード1-1>では、スイッチR-,S+がいずれも導通しており、一次電圧vは負の入力直流電圧-Vinを発生している。一次電流iとして、負の一定電流-IがスイッチR-,S+を流れている。スイッチR-,S+の並列キャパシタの電圧は共に零で、スイッチR+,S-の並列キャパシタの電圧は共に入力直流電圧Vinに充電される。スイッチR-,S+を非導通状態にしたときに、並列キャパシタ電圧が零なので、スイッチR-,S+は零電圧スイッチング(ZVS: Zero Voltage Switching)される。
【0053】
スイッチR-,S+を非導通状態にすることで、図5の<モード1-2>に移る。<モード1-2>では、負荷電流の連続性から一次電流iは負の電流-Iに保たれ、4個の並列キャパシタCに流れる。スイッチR-,S+の並列キャパシタの電圧は零から増加していき、スイッチR+,S-の並列キャパシタの電圧は減少していく。これらのキャパシタ電圧の変化により、一次電圧vは、負の入力直流電圧-Vinから正の入力直流電圧Vinまで変化する。一次電圧vが正の入力直流電圧Vinになったときに、スイッチR+,S-の並列キャパシタ電圧は共に零になり、スイッチR+,S-の並列ダイオードが導通する。スイッチR+,S-の並列ダイオードの導通により、<モード1-3>に移る。<モード1-3>の期間中に、スイッチR+,S-が導通するためのゲート信号を与える。並列ダイオードが導通状態になっているので、スイッチにゲート信号を与えても、逆バイアスされスイッチは導通しない。既に述べたように一次電流iは零に向かって一定の傾きで増加していく。そして、一次電流iが負から正になることで、<モード1-4>に移る。一次電流iの符号が負から正に変化してスイッチR+,S-が導通するときには、並列キャパシタ電圧は零のままであり、ZVSを実現できる。他のスイッチングにおいても同様にソフトスイッチングができ、スイッチング損失を低減できる。
【0054】
以上のように、第1の実施形態によれば、簡単な回路構成で効率良くスイッチング損失を低減できる効果を得ることができる。
【0055】
また、更なる効果として、出力側の電力の制御を容易に実行することができ、特に、低出力側の制御性が向上する。上記の通り、(15)式より出力側の電力はスイッチング周波数により調整できるが、Poutの値が0.23以下の制御性が悪くなり、わずかな周波数変動により大きく出力が変動してしまうが、第1の実施形態によれば、(15)式によらず出力側の電力を制御することが可能となる。その結果、例えば、出力電力の供給対象、例えば蓄電池等の充電レベルが一定値を越えたあとは供給電力を極めて小さく制御するといったことも可能となる。この具体的な方法については第3の実施形態において詳述する。
【0056】
(第2の実施形態)~一次側ハーフブリッジ回路による回路構成~
図6は、第1の実施形態における図1の一次側Hブリッジ回路をハーフブリッジ回路(1’)に置き換えた回路である。入力直流電圧は2Vinで、2個のキャパシタC1を直列接続して入力直流電圧2Vinの直流中性点を設けている。2個のキャパシタC1の直流電圧は、共にVinになる。高周波トランスの2個の入力端子の片側をR相の出力端子に接続し、もう片方を直流中性点に接続する。ハーフブリッジは、2個のスイッチング素子R+,R-で構成される。スイッチング素子には、逆並列のダイオードが内蔵され、スイッチング素子の寄生容量をCとしている。
【0057】
図2に示すHブリッジ回路を用いた絶縁型DC-DC電力変換回路の動作波形は、S相のスイッチング信号を無視すれば、図6のハーフブリッジ回路を用いた回路の動作波形としてそのまま適用できる。すなわち、スイッチング素子R+を導通することで、高周波トランスの一次電圧vは、入力直流電圧の上側キャパシタC1に接続され、キャパシタ電圧Vinになる。スイッチング素子R-を導通することで、高周波トランスの一次電圧vは、入力直流電圧の下側キャパシタC1に接続され、負のキャパシタ電圧-Vinになる。
【0058】
したがって、Hブリッジ回路を用いたときと同様に一次電圧vとして振幅Vinの方形波交流波形が得られる。ハーフブリッジ回路を用いた回路において、高周波トランスおよび二次側回路については図1のHブリッジ回路を用いた回路と同じであり、図2の二次電圧v、一次電流i、二次電流iの各波形が得られる。二次側回路においては、ダイオードのリカバリー損失を発生しない高効率な動作ができる。
【0059】
第1の実施形態で説明したように、出力電力Poutの制御は、(15)式により、高周波トランスの周波数f(=1/2T)により調整できる。また、一次側ハーフブリッジ回路のソフトスイッチングも実現できる。
【0060】
図6のハーフブリッジ回路においてスイッチR-からスイッチR+への転流について説明する。スイッチR-が導通している状態では、一次電圧vは負の入力直流電圧-Vinで、一次電流iは負の電流-IがスイッチR-に流れている。また、スイッチR-の並列キャパシタの電圧は零である。スイッチR-を非導通にしたときには、スイッチR-の並列キャパシタの電圧が零であり、ZVSが実現される。一次電流iに引き続き負の電流-Iが流れることで、スイッチR+の並列キャパシタの電圧は、Vinから減少し、零電圧になると、スイッチR+の並列ダイオードが導通する。一次電圧vは正の入力直流電圧Vinとなり、一次電流iも負の電流-Iから零に向けて増加していく。一次電流iが負の間にスイッチR+に導通信号を与えれば、一次電流iが負から正に変化して、ダイオードからスイッチR+に電流が転流するときにおいても、並列キャパシタの電圧は零であり、ZVSが実現される。したがって、全ての転流でソフトスイッチングを実現でき、スイッチング損失を低減できる。
【0061】
本実施形態で示す二次側回路は、第1の実施形態と同じであり、インダクタンスLとキャパシタンスCとの共振を用いている点に特徴がある。従って、他の構成は用途によって適宜変更可能である。例えば、図6では、二次側出力に直流電源が接続されているが、直流負荷が接続されていてもよい。例えば、二次電池の充電回路といった用途であれば図6のように直流電源として表されるが、例えば鉄道の架線から鉄道に電力を変換するDC-DCコンバーターとして使用する場合、直流負荷として表される。
【0062】
以上のように、一次側回路としてハーフブリッジ回路を用いてもDC-DC電力変換器を構成することができる。第2の実施形態によれば、第1の実施形態と比較して、一次側回路の構成が簡単であり、さらに小型な、或いは安価なDC-DC電力変換器を得ることができる。なお、出力側の電力の制御は(15)式よりスイッチング周波数により調整できる。
【0063】
(第3の実施形態)~Tを制御することによる送電電力制御方法~
上記第1及び第2の実施形態で説明したように、いずれの回路構成においても(15)式により、二次側回路の電力は一次側回路のスイッチング周波数を変化させることで制御できる。しかし、第1の実施形態において説明する回路構成によれば、一次電圧vが零となる期間Tを制御することができるため、周波数制御によらず二次側電力を制御することが可能となる。
【0064】
本実施形態では、第1の実施形態で説明する回路において、一次電圧vが零となる期間Tを制御することにより実現される電力制御方法について説明する。
【0065】
(1)<モード2-2>における電力低減制御方法
図1の単方向絶縁型DC-DC電力変換回路の高周波トランスの周波数fが一定値の状態で、出力電力Poutを一次側Hブリッジ回路のスイッチングパターンで制御する方法を説明する。図2の動作波形が最大出力電力時であり、一次電圧vとして振幅Vinの方形波交流波形を出力している。図7の動作波形が、出力電力Poutの調整のために電力を少し低減した場合である。電力低減の基本的な考え方は、S相のスイッチの切り換えタイミングを期間Tだけ遅らせ、一次電圧vの方形波波形において、電圧が零となる期間Tを設けて一次電圧vの実効値を低減する方法である。図7の動作波形では、一次電圧vが零になる期間Tに新たなモードが加わっただけで、期間T以外の波形は、図2の最大出力電力時の波形と同じである。図7の動作波形では、一次電圧vが零になる期間Tを<モード2-21>、一次電圧vがVinになる期間を<モード2-22>として、2モードに分離している。(1)式の<モード2-2>の二次側回路電圧方程式に、一次電圧v’=0、二次電流初期値i(t)=-I、(8)式をそれぞれ代入して、<モード2-21>の二次電流i(t)が次式で得られる。
【0066】
【数17】
【数18】
【0067】
すなわち、(17)式の<モード2-21>の二次電流の傾きdi/dtは、(2)式の<モード2-2>の傾きに対して1/2になっているので、<モード2-21>の最大の期間Tは、<モード2-2>の期間T=√(LC)の2倍になる。したがって、<モード2-21>の期間T21=Tの範囲は、次式で与えられる。
【0068】
【数19】
【0069】
ここで、(18)式に時刻t=t+Tを代入して、<モード2-22>の二次電流初期値i(t+T)が次式で得られる。
【0070】
【数20】
【0071】
また、(1)式の<モード2-2>の二次側回路電圧方程式に、一次電圧v’=Vin=Vout、(20)式の二次電流初期値i(t+T)、(8)式をそれぞれ代入して、<モード2-22>の二次電流i(t)が次式で得られる。
【0072】
【数21】
【0073】
<モード2-22>の終了時刻tでは、(21)式の二次電流i(t)=0になるので、終了時刻tおよび<モード2-22>の期間T22は次式で得られる。
【0074】
【数22】
【数23】
【0075】
導出した全モードの二次電流波形をもとに、出力電力Poutを計算すると次式が得られ、一次電圧vが零となる期間Tにより出力電力Poutを制御できる。
【0076】
【数24】
【0077】
(2)<モード2-3>における電力低減制御方法
一次電圧vが零となる期間Tが2π√(LC)以上になると、図7の<モード2-3>の範囲まで、一次電圧vが零となるので、(6)式の二次電流iの共振波形が変化する。図8は、一次電圧vが零となる期間Tが2π√(LC)以上になった場合の二次電圧v、一次電流i、二次電流iの各波形を示す。図8の動作波形では、時刻tとtの間で、一次電圧vが零になる期間T31を<モード2-31>、一次電圧vがVinになる期間T32を<モード2-32>として、2モードに分離している。また、<モード2-1>の二次電流iの電流値-Iの絶対値Iは、(8)式のI(>I)に比較して小さくなる。
【0078】
図8の<モード2-1>は、図3の転流前の<モード2-1>の回路接続になり、一次側スイッチR-,S+が導通し、一次電圧v’は、入力直流電圧-Vinが掛かり、二次電流iはダイオードU-とV+が導通して負の電流-Iが流れている。図8の時刻t=tにおいてHブリッジ回路のスイッチをR-からR+に切り換えて、一次電圧v’が-Vinから0に変化すると、<モード2-21>に移る。<モード2-21>における一次電圧v’=Vin=Vout、二次電流初期値i(t)=-Iを(1)式に代入して、<モード2-21>の二次電流i(t)が次式で得られる。
【0079】
【数25】
【数26】
【0080】
図8に示すように<モード2-21>では、二次電流i(t)は一定の傾きで零に向かって増加していく。二次電流i(t)が時刻t=tで零になると<モード2-21>が終了する。<モード2-21>の期間T21=t-tは、(27)式で与えられる。
【0081】
【数27】
【0082】
時刻t=tで二次電流i(t)=0になると、二次側回路における全てのダイオードが非導通状態になり、図3の<モード2-31>に移る。<モード2-31>が始まる時刻t=tにおけるダイオードU-,V+の並列キャパシタの初期電圧は共に零であり、ダイオードU+,V-の並列キャパシタの初期電圧は共にVoutである。<モード2-3>では、インダクタLと4個のキャパシタ(C)の共振回路が構成される。回路の対称性から二次電流の半分の電流i/2が各キャパシタに流れ、(5)式の電圧方程式が成立する。一次電圧v’=0、二次電流初期値i(t)=0をそれぞれ(5)式に代入して解くと、<モード2-31>の二次電流i(t)が次式で得られる。
【0083】
【数28】
【0084】
二次電圧vは、(28)式の二次電流i(t)を用いて次式で得られる。
【0085】
【数29】
【0086】
(28)、(29)式の二次電流i、二次電圧vは、図8に示すように正弦波波形になる。時刻t=t+T31の二次電圧v、二次電圧vは、それぞれ次式で得られる。
【0087】
【数30】
【数31】
【0088】
時刻t=t+T31で、Hブリッジ回路のスイッチをS+からS-に切り換わると、一次電圧v=Vinがスッテプ的に上昇し、新たな共振動作となる。<モード2-32>における電圧方程式が次式で与えられる。
【0089】
【数32】
【0090】
一次電圧v’=Vin=Vout、二次電流初期値i(t+T31)を(32)式に代入して解くと、<モード2-32>の二次電流i(t)が次式で得られる。
【0091】
【数33】
【0092】
(33)式の1行目の項は時刻t=t+T31で一次電圧v’=Voutに変化したことによる共振電流であり、2行目の項は時刻t=t+T31以前からの共振電流項である。3行目はこれら2項を1つの共振電流として表した式である。<モード2-32>の二次電圧vは、(33)式の二次電流i(t)を用いて次式で得られる。
【0093】
【数34】
【0094】
時刻t=tで二次電圧v(t)=Voutになると、ダイオードU+,V-の並列キャパシタの電圧が零になり、ダイオードU+,V-が導通し、<モード2-32>が終了する。時刻t=tで(34)式の第2項が零になり、<モード2-32>の期間T32を用いて期間t-t=T31+T32と表せるので、次式にて期間T32が求まる。
【0095】
【数35】
【0096】
時刻t=tは、(35)式を用いて、期間T31の関数として次式で与えられる。
【0097】
【数36】
【0098】
(36)式のtを(33)式に代入して二次電流i(t)=Iが次式で得られる。
【0099】
【数37】
【0100】
期間T31が長くなれば、二次電流値Iが小さくなり、送電電力を低減できる。期間T31=π√(LC)のとき、二次電流値I=0になるので、期間T31は零からπ√(LC)の範囲で制御すれば良い。
<モード2-4>の期間t>tでは、(12)式の電圧方程式が成立し、一次電圧v’=Vin=Voutからdi/dt=0になり、一定値の二次電流i(t)=Iが流れる。(27)式に(37)式のIを代入して、期間T21が次式で得られる。
【0101】
【数38】
【0102】
一次電圧が零となる期間Tは期間T31を用いて次式で得られる。
【0103】
【数39】
【0104】
期間T31の最大値π√(LC)のときの一次電圧が零となる期間の最大値Td maxは、次式で得られる。
【0105】
【数40】
【0106】
図8の二次電圧vと二次電流iから期間Tの出力電力Poutは、次式で表される。
【0107】
【数41】
【0108】
(41)式に、(37)式のI、(35)式のT32、(38)式のT21を代入して、出力電力Poutは次式で表される。次式で表される。
【0109】
【数42】
【0110】
図9は、(39)式の一次電圧が零となる期間Tに対する(42)式の出力電力Poutを表している。図9は高周波トランスの周波数と共振周波数の比f/f=π√(LC)/T=1/4の場合で、T=4π√(LC)である。一次電圧の零電圧期間Tを長くするほど、二次電流値Iは減少していき、出力電力Poutも低減する。したがって、一次電圧の零電圧期間Tにより、出力電力Poutを制御できる。
【0111】
以上の説明では、高周波トランスの巻数比をa=1とし、さらに、入出力直流電圧を等しいとしたVin=Voutの場合について説明をしたが、入出力直流電圧がVin/a=Voutの場合においても同様の動作波形が得られる。入出力直流電圧がVin/a≠Voutの場合においては、上記の説明で二次電流波形が一定値であったときに、一次と二次電圧の差によって二次電流波形に傾きが発生するなどの誤差を生じる場合があるが、説明した基本的な機能は同様に得られる。
【0112】
(第4の実施形態)~出力電力制御と一次、二次側回路の分離~
図1および図6の本発明回路構成において、二次側回路はいずれも受動素子で構成されるため、制御する必要がない。したがって、一次側回路の直流電圧Vinと一次電流iを検出して、一次側回路の周波数fまたは零電圧の期間Tにより出力電力Poutを制御できる。また、高周波トランスの一次巻線鉄心と二次巻線鉄心で分離できるようにすれば、一次側回路と二次側回路を物理的に分離することが可能となる。送電時のみ一次側回路と二次側回路を結合して使用できる。
【0113】
たとえば、電力供給側である一次側回路を地上側、二次側回路を車両側へ置き、送電時(車両への充電中)のみ高周波トランスの一次、二次の鉄心を近づけることで、送電(充電)が可能である。送電中以外は、物理的にトランスの鉄芯(コア)が(独立)分離している一方、送電中(充電中)は、鉄心間に働く電磁力により一次、二次鉄心を結合でき、送電が可能になる。このように非放射型の磁界結合方式非接触電力伝送にも利用することができる。
【0114】
(二次電流及び二次電圧の検出)
従来のDC-DC電力変換器では、二次側の電流及び電圧を検出するために、二次側回路に電流センサ及び電圧センサを設けていた。これに対し、上記の電力変換器(10)では、二次側回路(2)が、一次側回路(1)のスイッチング周波数により調整できる受動的な回路であるため、トランスTrの漏れインダクタンスLと、二次側回路(2)の共振キャパシタの容量Cと、一次側回路(1)の電圧Vとから、二次側回路(2)の電流i及び電圧vを検出することができる。
【0115】
具体的に、上記の電力変換器(10)において、トランスTrの二次側の電流値iは次式で表される。尚、Vは、トランスTrの両端の電圧差(一次側の電圧vと二次側の電圧vとの差)であり、Cは定数である。
【0116】
【数43】
【数44】
【0117】
電力変換器(10)の一次側回路(1)には、トランスTrの一次電圧vを検出する電圧センサ(3)が設けられる(図1及び図6参照)。トランスTrの漏れインダクタンスLと、二次側回路(2)の共振キャパシタの容量Cとから、トランスTrの二次側の電圧vを算出することができる。こうして算出したトランスTrの二次側の電圧vと、電圧センサ(3)で測定したトランスTrの一次側の電圧vとから、トランスTrの一次側と二次側の電圧差Vを取得できる。そして、上記の式に、トランスTrの漏れインダクタンスL及び電圧差Vを代入することにより、トランスTrの二次側の電流iを算出することができる。
【0118】
例えば、上記の第3の実施形態において、電力変換器(10)の出力電流値I{=i(t)}は上記の(37)式で表される。同式中の漏れインダクタンスL及び共振キャパシタ容量Crは既知であり、出力直流電圧Vout(=Vin/a)は、電圧センサ(3)で検出した一次側の電圧Vin及び巻き数比aから求められる。従って、同式中のT31が分かれば、出力電流値Iを算出することができる。図8から、T31=T-T21である。T21は、上記の式(27)に、出力直流電圧Vout(=Vin/a)と、漏れインダクタンスLと、前回の出力電流値I(本実施形態では、経時的に変化する出力電流値Iを微小間隔で間欠的に算出しており、「前回の出力電流値I」とは、一つ前に算出した出力電流値Iのことを言う。)とを代入することで算出できる。
【0119】
この場合、出力電流値Iを算出する手順は以下の通りである。
(1)時間0からスタートする。
(2)前回の電流からT21を求める。
(3)電圧波形からTを計測(電圧が立ち上がるまでの時間を算出)し、T31を求める。
(4)(37)式にT31、Vout、L、Cを代入し、出力電流値Iを求める。
以上の計算を電力変換中(充電中)に繰り返すことで、電圧センサ(3)で検出した電圧値から、出力電流値を求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明に係る電力変換器(10)は、例えば、種々の用途に用いられる二次電池の充電器に用いられる。例えば、自動搬送車に搭載された二次電池を非接触で充電する場合に、本発明に係る電力変換器(10)が用いられる。この場合、一次側回路(1)が充電ステーションに設けられ、二次側回路(2)が自動搬送車に設けられる。充電ステーションの一次側回路(1)に設けた電圧センサ(3)で一次電圧vを測定するだけで、自動搬送車の二次側回路(2)の電圧v及び電流iを検出することができるため、二次側回路(2)に電流センサ及び電圧センサに設ける必要がなくなる。こうして検出した二次側の電圧v及び電流iに基づいて、CCCV方式等で入力電圧Vinを制御することにより、過不足なく充電することが可能となる。
【0121】
本発明に係る電力変換器は、上記の他にも、鉄道その他産業機器など、あらゆる製品分野で広く用いることができ、適用可能な応用範囲が広く、産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0122】
10 電力変換器
1 一次側回路(Hブリッジ回路)
1’ 一次側回路(ハーフブリッジ回路)
2 二次側回路
3 電圧センサ
C1 キャパシタ
C2 (平滑)キャパシタ
Cr 共振キャパシタ容量
Cs 寄生容量
U+,U-,V+,V- ダイオード
R+,R-,S+,S- スイッチング素子
Tr トランス
L インダクタンス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9