(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152486
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】設計支援装置
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20221004BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20221004BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20221004BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20221004BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/27
G06N20/00
G06F30/10 100
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055274
(22)【出願日】2021-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】501089759
【氏名又は名称】デンソーテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】服部 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和美
(72)【発明者】
【氏名】柴田 真志
(72)【発明者】
【氏名】井口 竜也
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DC01
5B146DC03
5B146DC04
5B146DC05
5B146DJ02
5B146DJ11
(57)【要約】
【課題】設計対象を設計する際、設計変数が公差範囲内で変動した場合にも制約条件を充足する設計変数の組み合わせ得る技術を提供する。
【解決手段】設計対象の設計を支援する設計支援装置である。設計支援装置は、第1の算出部(S11-S19)と、第2の算出部(S20-S31)と、を備える。第1の算出部は、基準組み合わせ候補を繰り返し生成し、制約条件を充足する基準組み合わせ候補である第1組み合わせ候補を抽出する。第2の算出部は、第1組み合わせ候補毎に、公差組み合わせ候補を繰り返し生成し、生成された公差組み合わせ候補のうち全てが制約条件を充足する第1組み合わせ候補を、第2組み合わせ候補として特定し、第2組み合わせ候補を記憶装置に記憶する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計対象の設計を支援する設計支援装置であって、
前記設計対象が備える設計要因を数値で表す複数の設計変数の組み合わせであって、複数の前記設計変数のうち少なくとも一つを予め定められた基準範囲内で変化させた基準組み合わせ候補を繰り返し生成し、制約条件を充足する前記基準組み合わせ候補である第1組み合わせ候補を抽出するように構成された第1の算出部(S11-S19)と、
前記第1組み合わせ候補毎に、前記第1組み合わせ候補に含まれる複数の前記設計変数のうち少なくとも1つの前記設計変数を予め定められた公差範囲内で変化させた公差組み合わせ候補を繰り返し生成し、生成された前記公差組み合わせ候補のうち全てが前記制約条件を充足する前記第1組み合わせ候補を第2組み合わせ候補として特定し、前記第2組み合わせ候補を記憶装置に記憶するように構成された第2の算出部(S20-S31)と、
を備える設計支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の設計支援装置であって、
前記制約条件は、前記設計対象に関する物理量であって前記複数の設計変数の組み合わせを入力とする関数に基づいて算出される制約物理量が予め定められた制限値に基づいて制限されることであり、
前記設計対象の性能に関する物理量であって前記複数の設計変数の組み合わせを入力とする関数に基づいて算出される値を評価指標として、
前記第1の算出部は、
前記基準組み合わせ候補を繰り返し生成するように構成された第1の最適化部(S15)と、
前記基準組み合わせ候補が生成される毎に、前記基準組み合わせ候補を入力とする関数に基づいて算出される前記評価指標と、前記基準組み合わせ候補を入力とする関数に基づいて算出される前記制約物理量と、を算出するように構成された第1の解析部(S17)と、
前記第1の解析部によって算出された前記制約物理量に基づいて、前記制約条件を充足する前記基準組み合わせ候補を前記第1組み合わせ候補として抽出するように構成された第1の抽出部(S19)と、
を備え、
前記第1の最適化部は、前記第1の解析部によって算出される前記評価指標を改善する前記基準組み合わせ候補を繰り返し生成し、
前記第2の算出部は、
前記第1組み合わせ候補毎に、前記公差組み合わせ候補を繰り返し生成するように構成された第2の最適化部(S23)と、
前記公差組み合わせ候補が生成される毎に、前記公差組み合わせ候補を入力とする関数に基づいて算出される前記制約物理量を算出するように構成された第2の解析部(S25)と、
前記第2の最適化部により生成された前記公差組み合わせ候補のうち全てが前記制約条件を充足する前記第1組み合わせ候補を前記第2組み合わせ候補として抽出するように構成された第2の抽出部(S29)と、
を備え、
前記第2の最適化部は、前記第1組み合わせ候補毎に、前記制約条件の充足を悪化させる前記公差組み合わせ候補を繰り返し生成する
設計支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の設計支援装置であって、
前記第1の最適化部は、過去に生成された前記基準組み合わせ候補と前記第1の解析部により前記基準組み合わせ候補に基づいて算出された前記制約物理量及び前記評価指標とに基づいて、最適化アルゴリズムを用いて、前記評価指標を改善する前記基準組み合わせ候補を繰り返し学習し、学習した前記基準組み合わせ候補を新たな前記基準組み合わせ候補として繰り返し生成する
設計支援装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の設計支援装置であって、
前記第2の最適化部は、過去に生成された前記公差組み合わせ候補と前記第2の解析部により前記公差組み合わせ候補に基づいて算出された前記制約物理量とに基づいて、最適化アルゴリズムを用いて、前記制約条件の充足を悪化させる前記公差組み合わせ候補を繰り返し学習し、学習した前記公差組み合わせ候補を新たな前記公差組み合わせ候補として繰り返し生成する
設計支援装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の設計支援装置であって、
前記第2の最適化部は、生成した前記公差組み合わせ候補が前記制約条件を充足するあいだは、新たな前記公差組み合わせ候補を繰り返し生成し、生成した前記公差組み合わせ候補が前記制約条件を充足しない場合は、前記公差組み合わせ候補の基となる前記第1組み合わせ候補について前記公差組み合わせ候補を新たに生成することを中止する
設計支援装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の設計支援装置であって、
前記第1の最適化部は、前記第2の最適化部により生成された前記公差組み合わせ候補が前記制約条件を充足しない場合に、更に、過去に生成された前記公差組み合わせ候補と、前記第2の解析部によって前記公差組み合わせ候補に基づいて算出された前記制約物理量と、に基づいて、新たな前記基準組み合わせ候補を生成する
設計支援装置。
【請求項7】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の設計支援装置であって、
前記第2の解析部は、前記公差組み合わせ候補に基づいて、前記制約物理量と、前記評価指標とを算出し、
前記第1の最適化部は、前記第2の最適化部により生成された前記公差組み合わせ候補が前記制約条件を充足しない場合に、更に、過去に生成された前記公差組み合わせ候補と、前記第2の解析部によって前記公差組み合わせ候補に基づいて算出された前記制約物理量及び前記評価指標と、に基づいて、新たな前記基準組み合わせ候補を生成する
【請求項8】
請求項2から請求項7のいずれか一項に記載の設計支援装置であって、
前記第1の最適化部は、前記評価指標を改善する前記基準組み合わせ候補、を予め定められた基準回数を上限として繰り返し生成し、
前記第2の最適化部は、前記第1組み合わせ候補毎に、前記制約条件の充足を悪化させる前記公差組み合わせ候補、を予め定められた公差回数を上限として繰り返し生成する、
設計支援装置。
【請求項9】
請求項2から請求項8のいずれか一項に記載の設計支援装置であって、
前記制約条件は、前記制約物理量が、前記制限値に基づいて前記制限値以下であると制限されることであり、
前記第2の最適化部は、前記制約物理量が前記制限値に近づく値となる前記公差組み合わせ候補を、前記制約条件の充足を悪化させる前記公差組み合わせ候補として、繰り返し生成する
設計支援装置。
【請求項10】
請求項2から請求項9のいずれか一項に記載の設計支援装置であって、
前記第2組み合わせ候補のうち、前記評価指標がより改善される少なくとも一つの前記第2組み合わせ候補を最適解として抽出するように構成された最適抽出部(S32)
を更に備える設計支援装置。
【請求項11】
請求項2から請求項10のいずれか一項に記載の設計支援装置であって、
前記設計対象は構造物であり、
前記設計要因は形状及び物理的特性のうちの少なくとも一方に関するものであり、
前記評価指標は、前記設計対象の質量であり、
前記制約物理量は、前記設計対象に作用する応力の最大値である応力最大値であり、前記制限値は、前記設計対象にて許容される応力の値である許容応力値であり、前記制約条件は前記応力最大値が前記許容応力値以下であること、である
設計支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設計対象の設計を支援する設計支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
設計対象の設計を支援する技術として、いわゆる最適化を行う技術が知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、統計的手法であるシックスシグマ手法に基づいて最適化を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、設計の対象となる設計対象は種々の複数の設計要因を備える。設計の際は、設計対象に要求される性能を実現するために、設計対象が備える設計要因のうち性能に影響を与える複数の設計要因の特性を把握し、どのような設計要因の組み合わせを採用することが妥当であるかを検討する。
【0006】
最適化では、設計対象に要求される予め定められた制約条件を充足するという制約のもとで最も優れた性能を実現するために、より優れた性能が得られる設計要因の組み合わせを探索する。ここで、設計要因を数値化したものを設計変数という。制約条件及び性能は、設計変数の組み合わせを入力とする関数として表される。探索された設計要因の組み合わせ(すなわち、設計変数の組み合わせ。以下、解ともいう。)のうちで、最も優れた性能が得られる(すなわち、最適な)設計変数の組み合わせを最適解という。
【0007】
最適解は最も優れた性能が得られる解ではあるが、探索された最適解によっては、最適解に含まれる設計変数がばらついた場合に性能が大きく変動し、変動した性能が設計対象に要求される許容範囲を超えるおそれがあった。そこで特許文献1では、設計変数が予め定められた範囲内でばらついた場合に、目的とする性能の変動が許容範囲内(例えば、シックスシグマ)に収まる最適解を探索する。
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術では、探索された最適解は、設計変数がばらついた場合に、制約条件を充足しなくなるおそれがある、という課題があることが見出された。
【0009】
本開示は、設計対象を設計する際に設計変数が公差範囲内で変動した場合にも、制約条件を充足する設計変数の組み合わせ得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、設計対象の設計を支援する設計支援装置である。設計支援装置は、第1の算出部(S11-S19)と、第2の算出部(S20-S31)と、を備える。第1の算出部は、基準組み合わせ候補を繰り返し生成し、制約条件を充足する基準組み合わせ候補である第1組み合わせ候補を抽出するように構成される。基準組み合わせ候補は、設計対象が備える設計要因を数値で表す複数の設計変数の組み合わせであって、複数の設計変数のうち少なくとも一つを予め定められた基準範囲内で変化させたものである。
【0011】
第2の算出部は、第1組み合わせ候補毎に、公差組み合わせ候補を繰り返し生成し、生成された公差組み合わせ候補のうち全てが制約条件を充足する第1組み合わせ候補を、第2組み合わせ候補として特定し、第2組み合わせ候補を記憶装置に記憶するように構成される。公差組み合わせ候補は、第1組み合わせ候補に含まれる複数の設計変数のうち少なくとも1つの設計変数を予め定められた公差範囲内で変化させたものである。
【0012】
本開示によれば、第2組み合わせ候補により決定される設計要因に基づいて設計される設計対象は、第2組み合わせ候補に含まれる設計変数が公差範囲内で変動したとしても、制約条件を充足する。これにより、設計対象を設計する際、設計変数が公差範囲内で変動した場合にも、制約条件を満たす設計変数の組み合わせを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】シミュレーション装置の構成を示すブロック図。
【
図3】基準組み合わせ候補x
1に基づく構造物において応力が作用する様子を説明する説明図。
【
図4】基準組み合わせ候補x
2に基づく構造物において応力が作用する様子を説明する説明図。
【
図6】設計変数設定部、解析実行部、最適化部の作動を説明するための概念図。
【
図9】基準寸法を用いた第1組み合わせ候補に対して公差範囲内で設計変数を変化させたときの最大応力値の様子を説明する説明図。
【
図10】第2実施形態の探索処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
[1.第1実施形態]
[1-1. 構成]
図1に示すシミュレーション装置1は、
図2示すような構造物9を設計対象として、例えば必要な強度を確保した上で構造物9の質量を最小とする設計を支援する装置である。
【0016】
構造物9は、車両等に搭載される熱交換器(例えば、ラジエータ)に用いられる管状の部品7における一構成品である。
図2は、管状の部品7の長手方向(すなわち、
図2の紙面に垂直な方向)に垂直な面における断面を示す。管状の部品7では、構造物9が他の構造物8に取り付けられることにより空間71が形成され、空間71内に流体(例えば、冷却水や潤滑油)が流れる。
【0017】
構造物9の各所には、他の構造物8に取り付けられることによる応力や流体による応力が複雑に作用する。構造物9の性能(例えば、質量、強度等)は、構造物9が備える複数の設計要因に基づいて決定される。性能を決定する設計要因としては、例えば、各部の管材の厚さ(板厚)、各部の曲げ角度、管材の物理的特性(例えば、ヤング率、導電率、表面粗さ等)等といった、種々の設計要因が含まれ得る。なお、管材とは構造物9を構成する材料をいう。
【0018】
<最適化問題>
ここで、構造物9の質量を最小化する際の問題について説明する。構造物9の質量は形状に応じて変化するので、質量を最小化するという性能の要求に対しては、上述の設計要因のうち形状に関する設計要因(例えば、各部の板厚の寸法や、各部の板厚の曲げ寸法)を小さくする方向に変化させることが考えられる。なお、曲げ寸法は、いわゆるR寸法で指定されてもよいし、角度を用いた角度寸法で指定されてもよい。
【0019】
但し、例えば各所の板厚の寸法や曲げ寸法を際限無くただ単に小さくする方向に変化させると、質量は最小化されたとしても、作用する応力に構造物9が耐えられないという問題(すなわち、いわゆる最適化問題)が生じ得る。
図3及び
図4に示すように、構造物9の形状を変化させると、構造物9a、9bの各所において作用する応力の大きさは変化し、最も大きい応力が作用する位置もその大きさも変化する。なお、
図3及び
図4は、長手方向に延びる構造物9a、9bの一部を示す斜視図である。
【0020】
構造物9において作用する最も大きい応力値(以下、最大応力値Pmax)は、構造物9が許容し得る予め定められた応力値(以下、許容応力値Plim)以下である必要がある。構造物9の最適化問題は、(1)式-(6)式のように定式化される。
【0021】
【0022】
設計要因を数値で表したものを設計変数という。(1)式-(6)式におけるxは、ベクトル(以下、設計変数ベクトルx)として表される。設計変数ベクトルxは、x=(x1、…xm)といったように、複数(すなわち、m個)の設計変数x1、…xmを含む。mは、設計変数ベクトルxに含まれる設計変数の数(すなわち、性能に影響を及ぼす設計要因の数)であり、2以上の自然数である。以下では、それぞれの設計変数を区別する場合は、例えばx1、x2、xmのように、添え字を付して記載する。
【0023】
また、それぞれの設計変数を区別しない場合(例えば、それぞれの設計変数に共通する説明を記載する場合等)は、設計変数xnのように、添え字を付して記載する。設計変数ベクトルxは、複数の設計変数xnの組み合わせである、といえる(すなわち、nは1~mの自然数)。それぞれの設計変数xn及びそれぞれの設計変数xnに対応する数値等(例えば、後述する基準範囲の下限値an及び上限値bn等)を示す場合に、「n」等の添え字を付して記載することがある。設計変数xnの具体的な数値を設計変数値ともいう。
【0024】
シミュレーション装置1では、
図2に示すように、寸法部位d1、d2、…dm(例えば、m=5)それぞれにおける寸法(すなわち、板厚の寸法や曲げ寸法)を設計要因として、これらの設計要因を設計変数x
nとして用いる(すなわち、nは1~mの自然数であり、ここではm=5。)。具体的には、寸法部位d1、d2における板厚の寸法をそれぞれ設計変数x
1、x
2として用い、寸法部位d3におけるR寸法を設計変数x
3として用い、寸法部位d4における角度寸法を設計変数x
4として用い、寸法部位d5における板厚の寸法を設計変数x
5として用いる。
【0025】
設計変数ベクトルxは、これらの設計変数x1、x2、…、x5を含む。設計変数ベクトルxは、x=(x1、x2、…xm)(すなわち、m=5)のように表される。なお、本開示において、設計変数xnとして用いられる設計要因の種類、及び、設計変数ベクトルxに含まれる設計変数xnの数mは、これらに限定されるものではなく、任意に設定され得る。
【0026】
設計変数ベクトルxは、(6)式に示すように変化させる範囲が予め定められている。すなわち、それぞれの設計変数xnを変化させる範囲は、an≦xn≦bnといったように、設計変数xn毎に予め定められている。以下でいう基準範囲とは、それぞれの設計変数xnを変化させる範囲をいう。例えば、基準範囲は、設計変数x1に対しては、a1≦x1≦b1であり、設計変数x2に対しては、a2≦x2≦b2である、といったように、設計変数xn毎に定められている(すなわち、nは1~mの自然数)。
【0027】
目的関数f(x)は、(1)式に示すように、設計変数ベクトルxを入力とする関数であって構造物9の性能を表す。評価指標は、構造物9の性能を表す物理量であり、目的関数f(x)を用いて算出される具体的な数値である。評価指標は、設計変数ベクトルx(すなわち、複数の設計変数xnの組み合わせ)に基づいて(すなわち、設計変数ベクトルxを入力として)算出される。シミュレーション装置1は、1つの目的関数f(x)が定義される最適化(すなわち、単目的関数の最適化)を対象とする。
【0028】
制約条件は、構造物9が充足すべき条件であり、(2)式に示すように、応力最大値Pmaxが予め定められた許容応力値Plim以下であること、である。応力最大値Pmaxは、構造物9の形状に基づいて、すなわち、設計変数ベクトルxに基づいて算出される。設計変数ベクトルxに基づいて算出される、とは、設計変数ベクトルxを入力とする関数を用いて具体的な数値として算出されること、をいう。
【0029】
ところで、制約条件は、(3)式に示すように、制約物理量が予め定められた制限値に基づいて制限されること、ともいえる。制約物理量は、構造物9に関する物理量であって、(4)式に示すように設計変数ベクトルxを入力とする関数(すなわち、M(x))を用いて算出される具体的な数値である。つまり、(2)式における応力最大値Pmaxが制約物理量に相当し、許容応力値Plimが制限値に相当する。
【0030】
なお、一般に、最適化問題における制約条件は、等式で示される等式制約条件関数h(x)及び不等式で示される不等式制約条件関数g(x)のうちの少なくとも一方によって表されるが、ここでは、(5)式に示すように、不等式制約条件関数g(x)によって表される。
【0031】
シミュレーション装置1は、構造物9について、上述のように定式化された最適化問題において、制約条件を充足するという制約のもとで質量を最小化する設計変数ベクトルxを探索するシミュレーションを行う。ここで、探索するとは、設計変数ベクトルxにおけるそれぞれの設計変数xnの設計変数値の組み合わせを変化させて、制約条件を充足するという制約のもとで質量を最小化する設計変数ベクトルx、の候補となる設計変数ベクトルxを生成することをいう。
【0032】
<装置構成>
図1に戻り説明を続ける。シミュレーション装置1は、入力部10、表示部20、及び制御部30を備える。
【0033】
入力部10は、シミュレーションの条件等が入力される装置である。入力部10には、例えば、キーボードやマウス等が該当する。
【0034】
表示部20は、シミュレーションの結果等が表示される装置である。表示部20には、例えば、ディスプレイ等が該当する。
【0035】
制御部30は、CPU31、RAM32、ROM33、及びHDD34を備える。HDD34には、シミュレーションを実行するためのシミュレーションプログラムが格納される。シミュレーション装置1において、入力部10への入力に応じてシミュレーションプログラムが起動されると、CPU31がシミュレーションプログラムをRAM32に読み出して実行する。これにより、当該シミュレーションプログラムに対応するシミュレーション方法が実行され、探索処理が実行される。そして、シミュレーションの結果が表示部20に表示される。
【0036】
制御部30は、
図5に示すように、初期設定部35、設計変数設定部36、解析実行部37、最適化部38、の機能を備える。
【0037】
初期設定部35は、シミュレーション装置1にシミュレーションを行わせるための情報を設定する。初期設定部35は、入力情報受付部301、最適化情報受付部302を備える。
【0038】
入力情報受付部301は、入力部10によってユーザから入力された入力情報を受け付け、HDD34に記憶する。入力情報には、解析実行部37(例えば、汎用の3DCADソフトウェア)を利用して構造物9の3Dモデルを作成するために必要な、種々の情報(例えば、構造物9の各部の寸法(例えば、板厚の寸法、曲げ寸法)、物性値等といった、種々の設計要因の初期値)が含まれる。また、入力情報には、解析実行部37(例えば、汎用の解析ソフトウェア)を利用して構造物9に関する解析(例えば、各部位に作用する応力を算出する解析)を実行する際のモデル(例えば、メッシュモデル)における種々の境界条件が含まれる。
【0039】
最適化情報受付部302は、入力部10によってユーザから入力された、最適化情報を受け付け、HDD34に記憶する。最適化情報は、最適化問題を定義するための情報である。最適化情報は、構造物9が備える複数の設計要因のうちいずれの設計要因を設計変数xnとして用いるかの設定(すなわち、設計変数ベクトルxの設定)、目的関数、及び制約条件、を示す情報を含む。
【0040】
最適化情報は、第1最適化情報と第2最適化情報とを含む。第1最適化情報で定義される最適化問題を第1最適化問題といい、第2最適化情報で定義される最適化問題を第2最適化問題ともいう。
【0041】
第1最適化情報は、構造物9において作用する最大応力値Pmaxが許容応力値Plim以下であるという制約条件を充足するという制約のもとで質量を最小化する設計変数ベクトルxを探索する最適化問題(すなわち、第1最適化問題)を定義する。例えば、(1)式-(5)式を表すような情報が用いられる。
【0042】
第2最適化情報は、最大応力値Pmaxが許容応力値Plim以下であること、という制約条件を充足するという制約のもとで制約条件の充足を悪化させる設計変数ベクトルxを探索する最適化問題(すなわち、第2最適化問題)を定義する。
【0043】
ここで、制約条件は最大応力値Pmax≦許容応力値Plimであることから、制約条件の充足を悪化させる、とは、最大応力値Pmaxが許容応力値Plimに近づく値となることである。つまり、第2最適化情報は、上述の制約条件を充足するという制約のもとで許容応力値Plimと最大応力値Pmaxとの差分を最小化する設計変数ベクトルxを探索する第2最適化問題、を定義する。
【0044】
また、最適化情報は、設計変数xnを変化させる基準範囲を示す情報(すなわち、式(6))と、設計変数xnを基準範囲内で変化させる刻み幅DAnを示す情報と、を含む。また、最適化情報は、それぞれの設計変数xnに対応する設計要因について、製造上の公差の範囲として予め設定されている公差範囲を示す情報と、それぞれの設計変数xnを公差範囲内で変化させる刻み幅DBnを示す情報と、を含む。
【0045】
また、最適化情報は、設計変数ベクトルxの初期値(すなわち、予め定められた設計変数xnの組み合わせ)を複数組含む。後述するS14にて取得される予め定められた基準組み合わせ候補x1、x2、及び、後述するS22にて取得される予め定められた公差組み合わせ候補x1、x2、が、ここでいう設計変数ベクトルxの初期値に相当する。
【0046】
設計変数設定部36は、解析実行部37に設計変数ベクトルxに基づいて解析を実行させるために、設計変数ベクトルxを解析実行部37に対する入力(以下、入力値)として設定する(例えば、HDD34における所定の入力値記憶領域に記憶する)。設計変数設定部36は、基準寸法設定部303、基準寸法候補記録部304、寸法公差設定部305、及び寸法公差候補記録部306を含む。
【0047】
基準寸法設定部303は、後述する基準組み合わせ候補xを解析実行部37に対する入力値として設定する。基準寸法候補記録部304は入力値である基準組み合わせ候補xをHDD34に記憶する。基準組み合わせ候補xは、設計変数ベクトルxであり、処理の段階に応じてこのようにも記載する。後述するS16が、基準寸法設定部303及び基準寸法候補記録部304に相当する。
【0048】
寸法公差設定部305は、後述する公差組み合わせ候補xを解析実行部37に対する入力値として設定する。寸法公差候補記録部306は入力値である公差組み合わせ候補xをHDD34に記憶する。公差組み合わせ候補xは、設計変数ベクトルxであり、処理の段階に応じてこのようにも記載する。後述するS24が寸法公差設定部305及び寸法公差候補記録部306に相当する。
【0049】
解析実行部37は、設定された入力値(すなわち、設計変数ベクトルxである基準組み合わせ候補x、又は、公差組み合わせ候補x)を取得し、入力値として設定された設計変数ベクトルxに基づいて予め定められた解析を実行する。解析実行部37は、解析の結果である応答(以下、応答値)を、入力値として設定された設計変数ベクトルxと対応づけてHDD34に記憶する。解析実行部37は、CAD形状生成部307、CAE強度計算部308を備える。
【0050】
CAD形状生成部307は、入力値として設定された設計変数ベクトルxに基づく構造物9の3Dモデルを生成する。CAD形状生成部307としては、汎用の3DCADソフトウェアが用いられる。CAE強度計算部308は、CAD形状生成部307によって生成された構造物9の3Dモデルに基づいて解析用のモデル(例えば、メッシュモデル)を生成し、予め定められた解析を実行し、解析の結果である応答値を入力値と対応づけてHDD34に記憶する。
【0051】
ここでいう解析とは、入力値として設定された設計変数ベクトルxに基づいて、応力最大値Pmax(すなわち、制約物理量)及び質量(すなわち、評価指標)を算出すること、又は、応力最大値Pmaxのみを算出することである。応答値には、応力最大値Pmax及び質量、又は、応力最大値Pmaxのみが含まれる。CAE強度計算部308としては、汎用の解析ソフトウェアが用いられる。
【0052】
最適化部38は、解析実行部37にて算出された応答値に含まれる応力最大値Pmax(すなわち、制約物理量)に基づいて、制約条件が充足されるか否かを判定する。また、最適化部38は、過去に解析実行部37にて生成された応答値と該応答値を算出するために用いられた入力値とに基づいて、最適化アルゴリズムを用いて、上述の第1最適化問題又は第2最適化問題における最適解の候補となる新たな入力値を学習する。最適化部38は、学習した入力値を解析実行部37に対して新たな入力値として設定する。
【0053】
最適化部38は、学習・フィードバック部(以下、学習FB部309)、反復処理部310、を備える。学習FB部309は、制約条件の充足を判定し、上述のように最適化問題の最適解の候補となる設計変数ベクトルxを学習し、設計変数設定部36に、学習した設計変数ベクトルxを解析実行部37に対する新たな入力値として設定させる。反復処理部310は、学習FB部309に、上述の作動を、所定回数の繰り返しが完了するまで反復させる。
【0054】
図6に、設計変数設定部36、解析実行部37及び最適化部38の作動の概念図を示す。第1最適化問題においては、後述するS15及びS18が学習FB部309に相当し、S12及びS30が反復処理部310に相当する。第2最適化問題においては、S23及びS26が学習FB部309に相当し、S28が反復処理部310に相当する。
【0055】
なお、最適化アルゴリズムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、実験計画法、応答曲面法、遺伝的アルゴリズム法等といった、種々のアルゴリズムが用いられる。 また、学習FB部309は、AI(すなわち、人工知能)を用いて最適化アルゴリズムを実行する汎用のソフトウェア(例えば、HEEDS等)によって実現されてもよい。なお、HEEDSは登録商標である。
【0056】
[1-2.処理]
次に、制御部30が実行する探索処理について、
図7のフローチャートを用いて説明する。探索処理は、構造物9の設計変数ベクトルxについて最適化を行うための処理である。
【0057】
制御部30は、まずステップ(以下、Sと記載する)10では、HDD34に記憶されている入力情報及び最適化情報を取得する。また、制御部30は、基準生成回数j、公差生成回数kを0に設定する(すなわち、初期化する)。基準生成回数jは、基準組み合わせ候補xを生成した回数を示す。公差生成回数kは、後述する公差組み合わせ候補xを生成した回数を示す。
【0058】
制御部30は、S11-S19では、基準組み合わせ候補xを繰り返し生成し、制約条件を充足する基準組み合わせ候補xを第1組み合わせ候補xとして抽出する。基準組み合わせ候補xとは、設計変数ベクトルxであって、設計変数ベクトルxに含まれる複数の設計変数xnのうち少なくとも一つの設計変数xnを、基準範囲内で、離散的に変化させたもの(すなわち、離散的に変化させた設計変数値の新たな組み合わせ)である。
【0059】
上述のように、シミュレーションにおいて、設計変数xn毎に、設計変数xnを変化させる範囲としての基準範囲が予め定められている。設計変数xnを基準範囲内で変化させた、とは、基準範囲の下限値anから上限値bnまでを予め定められた刻み幅DAn毎に刻んだ離散的な値(以下、基準寸法ともいう)のうちのいずれかの値を設計変数xnの設計変数値として設定すること、をいう。
【0060】
例えば、設計変数xnの基準範囲がan≦xn≦bnであるとすると、基準寸法は、an、an+DAn、an+2×DAn、an+3×DAn、…、bn、といった離散的な値をいう。基準組み合わせ候補x、第1組み合わせ候補xは、基準寸法で示される。以下、各ステップの詳細を説明する。
【0061】
制御部30は、次にS11では、基準生成回数jを1つ増加させる。
【0062】
制御部30は、続くS12では、基準生成回数jが予め定められた基準指定回数以上であるか否かを判定し、基準生成回数jが基準指定回数未満である場合に処理をS12に移行させ、基準生成回数jが基準指定回数以上である場合に本探索処理を終了する。基準指定回数は、基準組み合わせ候補xを生成する回数の上限を示すための値であり、予めHDD34に記憶されている。
【0063】
制御部30は、S13では、基準生成回数jが3以上であるか否かを判定する。制御部30は、基準生成回数jが3未満である場合は処理をS14に移行させ、基準生成回数jが3以上である場合は処理をS15に移行させる。なお、ここでは3に設定されている数値を基準学習開始回数、ともいう。
【0064】
制御部30は、基準生成回数jが1又は2である場合に移行するS14では、基準生成回数jに応じた基準組み合わせ候補xjを取得し、処理をS15へ移行させる。以下では、何回目に生成された基準組み合わせ候補xであるかを区別する場合に、「j」等の添え字を付して記載する。
【0065】
基準生成回数jに応じた基準組み合わせ候補xj(すなわち、j=1に応じた基準組み合わせ候補x1、j=2に応じた基準組み合わせ候補x2)は、予め定められた基準寸法の組み合わせであり、それぞれ異なっており、予めHDD34に記憶されている。なお、基準組み合わせ候補xj(例えば、j=1)は、基準組み合わせ候補x1=(x1
1、x2
1、…xm
1)のように表せるものである。
【0066】
以下のS15は最適化アルゴリズム(すなわち、逐次学習)に基づいて基準組み合わせ候補xを生成する。このため、1回目及び2回目の処理サイクル(すなわち、基準生成回数j=1、2である場合)では、制御部30は、本ステップを実行して、予め定められた基準組み合わせ候補x1、x2を、学習時の初期値として取得する。
【0067】
制御部30は、基準生成回数jが3以上である場合に移行するS15では、最適化アルゴリズムを用いて、第1最適化情報により定義される最適化問題における最適解の候補となる基準組み合わせ候補xを学習する。つまり、制御部30は、最適化アルゴリズムを用いて、制約条件を充足するという制約のもとで、評価指標が改善される基準組み合わせ候補xを学習する。
【0068】
制約条件は、上述のように、基準組み合わせ候補xを入力とする関数に基づいて算出される最大応力値Pmaxが許容応力値Plim以下であることである。評価指標を改善するとは、基準組み合わせ候補xを入力とする目的関数f(x)に基づいて算出される評価指標としての質量がより小さくなることである。
【0069】
制御部30は、本S15が実行される毎に、過去(すなわち、過去のサイクル)にS15にて生成された基準組み合わせ候補xとS17にて該基準組み合わせ候補xに基づいて算出された最大応力値Pmax及び質量に基づいて、上述のように基準組み合わせ候補xを学習する。制御部30は、学習した基準組み合わせ候補xを新たな基準組み合わせ候補xとして生成する。
【0070】
制御部30は、S16では、基準寸法設定部303に、S14にて取得した基準組み合わせ候補x、又はS15にて学習した基準組み合わせ候補xを、解析実行部37に対する新たな入力値として設定させる。また、制御部30は、基準寸法候補記録部304に、入力値として設定された基準組み合わせ候補xをHDD34に記憶させる。
【0071】
制御部30は、続くS17では、解析実行部37に、入力値として設定された基準組み合わせ候補xに基づいて解析を実行させ、解析の結果である応答値を入力値と対応づけてHDD34に記憶させる。ここでいう解析とは、入力値として設定された基準組み合わせ候補xに基づいて、応力最大値Pmax(すなわち、制約物理量)及び質量(すなわち、評価指標)を算出すること、である。応答値には、応力最大値Pmax及び質量が含まれる。
【0072】
制御部30は、次にS18では、入力値として設定された基準組み合わせ候補xが制約条件を充足するか否か、を判定する。基準組み合わせ候補xが制約条件を充足するとは、S17にて入力値としての基準組み合わせ候補xに基づいて算出された最大応力値Pmaxが許容応力値Plim以下であることをいう。制御部30は、最大応力値Pmaxが許容応力値Plim以下である場合に処理をS19へ移行させ、最大応力値Pmaxが許容応力値Plimを超える場合に処理をS11へ戻し、S11以降の処理を繰り返す。
【0073】
つまり、S15に移行する迄に、HDD34には、入力値として設定された基準組み合わせ候補xと、応答値としての応力最大値Pmax及び質量とが対応づけられた情報が複数組蓄積されている。制御部30は、S15では、基準生成回数jが3以上且つ基準指定回数未満である間、蓄積された情報に基づいて学習した基準組み合わせ候補xを新たな基準組み合わせ候補xとして生成する作動を、基準回数繰り返し実行する。基準指定回数-2が基準回数に相当する。
【0074】
制御部30は、S19では、制約条件を充足すると判定された基準組み合わせ候補xを、第1組み合わせ候補xとしてHDD34に記憶し、処理をS20へ移行させる。
【0075】
制御部30は、S20-S30では、第1組み合わせ候補x毎に、公差組み合わせ候補xを予め定められた公差指定回数を上限として繰り返し生成し、生成された公差組み合わせ候補xのうち全てが制約条件を充足する第1組み合わせ候補xを第2組み合わせ候補xとして特定する。
【0076】
第1組み合わせ候補xは、基準寸法で示される基準組み合わせ候補xのうち、制約条件を充足する基準組み合わせ候補xであり、公差組み合わせ候補xの基となる(すなわち、設計変数xnを公差範囲内で変化させる前の)基準組み合わせ候補xである。
【0077】
公差組み合わせ候補xとは、設計変数ベクトルxであって、第1組み合わせ候補xに含まれる設計変数xnのうち少なくとも1つの設計変数xnを、公差範囲内で、離散的に変化させたもの(すなわち、離散的に変化させた設計変数値の新たな組み合わせ)である。
【0078】
上述のように、シミュレーションにおいて、設計変数xn毎に、基準寸法で表された設計変数xnを変化させる許容範囲としての公差範囲が予め定められている。設計変数xnを公差範囲内で変化させた、とは、基準寸法で表された設計変数xnと、設計変数xnの公差範囲の下限値-gnから上限値hnまでを予め定められた刻み幅DBn毎に刻んだ離散的な値のうちのいずれかの値とを加算した値(以下、公差寸法ともいう)を設計変数xnの設計変数値として設定すること、をいう。
【0079】
例えば、設計変数xnの公差範囲が-gn≦xn≦hnといったように、基準寸法で表された設計変数xn毎に予め定められているとする。公差範囲は、設計変数x1に対しては、-g1≦x1≦h1であり、設計変数x2に対しては、-g2≦x2≦h2である、といったように、基準寸法で表された設計変数xn毎に定められている。設計変数xnの公差範囲が-gn≦xn≦hnである場合、公差寸法は、(-gn)+xn、(-gn+DBn)+xn、(-gn+2×DBn)+xn、(-gn+3×DBn)+xn、…、hn+xn、といった離散的な値、をいう。公差組み合わせ候補x、第2組み合わせ候補xは、公差寸法で示される。以下、各ステップの詳細を説明する。
【0080】
制御部30は、次にS20では、公差生成回数kを1つ増加させる。
【0081】
制御部30は、続くS21では、公差生成回数kが3以上であるか否かを判定する。制御部30は、公差生成回数kが3未満である場合は処理をS22に移行させ、公差生成回数kが3以上である場合は処理をS23に移行させる。なお、ここでは3に設定されている数値を公差学習開始回数、ともいう。
【0082】
以下では、何回目に生成された公差組み合わせ候補xであるかを区別する場合に、「k」等の添え字を付して記載する。公差生成回数kに応じた公差組み合わせ候補xk(すなわち、k=1に応じた公差組み合わせ候補x1、k=2に応じた公差組み合わせ候補x2)は、予め定められた公差寸法の組み合わせであり、それぞれ異なっており、予めHDD34に記憶されている。なお、公差組み合わせ候補xk(例えば、k=1)は、公差組み合わせ候補x1=(x1
1、x2
1、…xm
1)のように表せるものである。
【0083】
以下のS23は最適化アルゴリズム(すなわち、逐次学習)に基づいて公差組み合わせ候補xを生成する。このため、1回目及び2回目の処理サイクル(すなわち、公差生成回数k=1、2である場合)では、制御部30は、本ステップを実行して、予め定められた公差組み合わせ候補x1、x2を、学習時の初期値として取得する。
【0084】
制御部30は、公差生成回数kが3以上である場合に移行するS23では、最適化アルゴリズムを用いて、第2最適化情報により定義される最適化問題における最適解の候補となる公差組み合わせ候補xを学習する。つまり、制御部30は、最適化アルゴリズムを用いて、制約条件を充足するという制約のもとで、制約条件の充足を悪化させる公差組み合わせ候補xを学習する。
【0085】
制約条件は、上述のように、公差組み合わせ候補xを入力とする関数に基づいて算出される最大応力値Pmaxが許容応力値Plim以下であることである。制約条件の充足を悪化させるとは、許容応力値Plimと、公差組み合わせ候補xを入力とする関数に基づいて算出される最大応力値Pmaxとの差分を最小化すること、である。
【0086】
制御部30は、本S23が実行される毎に、過去(すなわち、過去のサイクル)にS23にて生成された公差組み合わせ候補xとS25にて該公差組み合わせ候補xに基づいて算出された最大応力値Pmaxとに基づいて、上述のように公差組み合わせ候補xを学習する。制御部30は、学習した公差組み合わせ候補xを新たな公差組み合わせ候補xとして生成する。
【0087】
制御部30は、S24では、寸法公差設定部305に、S22にて取得した公差組み合わせ候補x、又はS23にて学習した公差組みみ合わせ候補xを、解析実行部37に対する新たな入力値として設定させる。また、制御部30は、寸法公差候補記録部306に、入力値として設定された公差組み合わせ候補xをHDD34に記憶させる。
【0088】
制御部30は、続くS25では、解析実行部37に、入力値として設定された公差組み合わせ候補xに基づいて解析を実行させ、解析の結果である応答値を入力値と対応づけてHDD34に記憶させる。ここでいう解析とは、入力値として設定された公差組み合わせ候補xに基づいて、応力最大値Pmax(すなわち、制約物理量)を算出すること、である。応答値には、応力最大値Pmaxのみが含まれる。
【0089】
制御部30は、次にS26では、入力値として設定された公差組み合わせ候補xが制約条件を充足するか否か、を判定する。公差組み合わせ候補xが制約条件を充足するとは、S25にて入力値としての公差組み合わせ候補xに基づいて算出された最大応力値Pmaxが許容応力値Plim以下であることをいう。制御部30は、最大応力値Pmaxが許容応力値Plim以下である場合に処理をS28へ移行させ、最大応力値Pmaxが許容応力値Plimを超える場合に処理をS27へ移行させる。
【0090】
制御部30は、最大応力値Pmaxが許容応力値Plimを超える場合に移行するS27では、公差生成回数kを0に初期化した後に処理をS11へ戻し、S11以降の処理を繰り返す。つまり、制御部30は、公差組み合わせ候補xが制約条件を充足しない場合には、新たな公差組み合わせ候補xを生成すること(すなわち、該公差組み合わせ候補xの基になる第1組み合わせ候補に基づいて公差組み合わせ候補xを生成すること)を中止する。
【0091】
制御部30は、S28では、公差生成回数kが公差指定回数以上であるか否かを判定する。ここで、制御部30は、公差生成回数kが公差指定回数以上である場合に、処理をS29へ移行させる。一方、制御部30は、公差生成回数kが公差指定回数未満である場合に、処理をS20へ移行させ、S20以降の処理を繰り返す。
【0092】
つまり、S23に移行する迄に、HDD34には、入力値として設定された公差組み合わせ候補xと、応答値としての応力最大値Pmaxとが対応づけられた情報が複数組蓄積されている。制御部30は、S23では、公差生成回数kが3以上且つ公差指定回数未満であり、S25によって算出された応力最大値Pmaxが制約条件を充足するあいだ、蓄積された情報に基づいて学習した公差組み合わせ候補xを新たな公差組み合わせ候補xとして生成する作動を、公差回数繰り返す。公差指定回数-2が公差回数に相当する。
【0093】
制御部30は、S29では、第1組み合わせ候補xを、第2組み合わせ候補xとしてHDD34に記憶する。第2組み合わせ候補xは、制約条件を充足する基準組み合わせ候補xである第1組み合わせ候補xのうち、設計変数xnを公差範囲内で公差回数繰り返し変化させても制約条件を充足するものである。つまり、第2組み合わせ候補xは、最適な設計変数の組み合わせの候補(すなわち、最適解の候補)である。
【0094】
制御部30は、続くS30では、基準生成回数jが基準指定回数以上であるか否かを判定する。ここで、制御部30は、基準生成回数jが基準指定回数以上である場合に、処理をS32へ移行させる。一方、制御部30は、基準生成回数jが基準指定回数未満である場合に、処理をS31へ移行させて公差生成回数kを初期化した後に処理をS11へ戻し、S11以降の処理を繰り返す。
【0095】
制御部30は、S32では、HDD34に記憶されている第2組み合わせ候補のうちから、性能が改善される第2組み合わせ候補を選択し、選択された第2組み合わせ候補を最適解としてHDD34に記憶する。制御部30は、最も性能が良い(例えば、最も質量が小さい)1つの第2組み合わせ候補を最適解として選択する。そして、制御部30は、以上で探索処理を終了する。
【0096】
[作動]
上述のように構成されたシミュレーション装置1の作動について説明する。シミュレーション装置1は、S11-S19では、第1最適化問題について最適化を行って基準組み合わせ候補xを繰り返し生成し、複数の基準組み合わせ候補xのうちから第1組み合わせ候補xを抽出する。
図8は、応答曲面の例を示した図である。説明のため、基準組み合わせ候補xに含まれる2つの設計変数x
1、x
2を用いた応答曲面の例を示す。基準組み合わせ候補xに含まれる2つの設計変数x
1、x
2は、基準寸法に基づいて離散的な値をとる。
【0097】
目的関数は、第1最適化問題においては質量であり、図中における縦軸の下方から上方に向かって質量が小さくなる。S19にて抽出される第1組み合わせ候補xは、基準寸法で表され、応答曲面上に分布している(すなわち、制約条件を充足する)。
【0098】
シミュレーション装置1は、S20-S31では、第1組み合わせ候補x毎に、第2最適化問題について最適化を行って公差組み合わせ候補xを繰り返し生成し、全ての公差組み合わせ候補xが制約条件を充足する第1組み合わせ候補xを、第2組み合わせ候補xとして抽出する。
図9は、第1組み合わせ候補xに対して、第1組み合わせ候補xに含まれる設計変数x
nを公差範囲内で変化させたときの応力最大値P
maxの例を示す。説明のため、第1組み合わせ候補xに含まれる設計変数x
1、x
2のみを変化させたときの例を示す。
【0099】
図中の色の濃淡においては、色が濃くなるほど応力最大値P
maxが大きいことを示す。
図9に示すように、必ずしも第1組み合わせ候補x(すなわち、基準寸法)における応力最大値P
maxが最も大きいわけではない。第1組み合わせ候補xの設計変数x
1、x
2を公差範囲内で変化させたときの(すなわち、公差組み合わせ候補xの)応力最大値P
maxが、第1組み合わせ候補xにおける応力最大値P
maxを超える場合があり得る。
【0100】
シミュレーション装置1は、上述のように、公差回数繰り返し生成された全ての公差組み合わせ候補xが制約条件を充足する第1組み合わせ候補xを、第2組み合わせ候補xとして抽出する。これにより、第2組み合わせ候補xは、第2組み合わせ候補xに含まれる設計変数xnが公差範囲内で変動した場合にも、制約条件を充足する。
【0101】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0102】
(1a)上述の実施形態に係るシミュレーション装置1では、制御部30は、S11-S19では、基準組み合わせ候補xを繰り返し生成し、制約条件を充足する基準組み合わせ候補xである第1組み合わせ候補xを抽出する。制御部30は、S20-S31では、第1組み合わせ候補毎に、公差組み合わせ候補を繰り返し生成し、生成された公差組み合わせ候補のうち全てが制約条件を充足する第1組み合わせ候補を、第2組み合わせ候補として特定し記憶装置に記憶する。
【0103】
記憶装置に記憶される第2組み合わせ候補xは、設計変数xnが公差範囲内で変動したとしても制約条件を充足する。つまり、シミュレーション装置1は、設計変数xnが公差範囲内で変動した場合にも制約条件を充足する設計変数xnの組み合わせ(すなわち、第2組み合わせ候補x)を得ることができる。
【0104】
(1b)上述の実施形態に係るシミュレーション装置1は、S15では、評価指標(すなわち性能)を改善する基準組み合わせ候補xを繰り返し生成する。従って、性能を改善する基準組み合わせ候補xのうちから制約条件を充足する第1組み合わせ候補xを抽出できる。これにより、制約条件を充足する制約の下で性能を改善する第1組み合わせ候補xを抽出する時間を短縮することができる。
【0105】
また、シミュレーション装置1は、S23では、制約条件の充足を悪化させる公差組み合わせ候補xを繰り返し生成する。従って、制約条件の充足を悪化させる複数の公差組み合わせ候補xの全てが制約条件を充足する第1組み合わせ候補xを、第2組み合わせ候補xとして抽出できる。これにより、設計変数xnが公差範囲内で変動した場合にも制約条件を充足する第1組み合わせ候補x(すなわち、第2組み合わせ候補x)を探索する時間を短縮することができる。
【0106】
(1c)上述の実施形態に係るシミュレーション装置1は、S15では、最適化アルゴリズムに基づいて、性能を改善する複数の基準組み合わせ候補xのうちから、制約条件を充足する第1組み合わせ候補xを抽出する。これにより、最適化アルゴリズムに基づいて、制約条件を充足する制約のもとで性能を改善する第1組み合わせ候補xを抽出する時間を、より短縮することができる。
【0107】
(1d)上述の実施形態に係るシミュレーション装置1は、S23では、最適化アルゴリズムに基づいて、制約条件の充足を悪化させる複数の公差組み合わせ候補xのうち全てが制約条件を充足する第1組み合わせ候補xを、第2組み合わせ候補xとして抽出する。これにより、最適化アルゴリズムに基づいて、設計変数xnが公差範囲内で変動したとしても制約条件を充足する第1組み合わせ候補x(すなわち、第2組み合わせ候補x)を抽出する時間を、より短縮することができる。
【0108】
(1e)上述の実施形態に係るシミュレーション装置1は、S23では、公差組み合わせ候補xが制約条件を充足しない場合には、該公差組み合わせ候補xの基になる第1組み合わせ候補について新たな公差組み合わせ候補xを生成することを中止する。これにより、例えば第1組み合わせ候補x毎に公差組み合わせ候補xを常に所定回数生成した後に第1組み合わせ候補xを第2組み合わせ候補xとして特定できるかを判定する場合よりも、次に新たな第2組み合わせ候補xを特定するまでの時間を短縮することができる。
【0109】
(1f)上述の実施形態に係るシミュレーション装置1は、基準回数を上限として基準組み合わせ候補xを繰り返し生成する。このため、全ての基準寸法の組み合わせで基準組み合わせ候補xを生成する場合よりも、第1組み合わせ候補xを抽出する迄の時間を短縮することができる。同様に、シミュレーション装置1は、公差回数を上限として公差組み合わせ候補xを繰り返し生成する。このため、全ての公差寸法の組み合わせで公差組み合わせ候補xを生成する場合よりも、第2組み合わせ候補xを抽出する迄の時間を短縮することができる。
【0110】
(1g)上述の実施形態に係るシミュレーション装置1では、制約条件は、制約物理量としての応力最大値Pmaxが、制限値としての許容応力値Plimに基づいて、許容応力値Plim以下であると制限されることである。シミュレーション装置1は、S25では、応力最大値Pmaxが許容応力値Plimに近づく値となる公差組み合わせ候補xを、制約条件の充足を悪化させる公差組み合わせ候補xとして、繰り返し生成する。これにより、上述の(1d)の効果を得ることができる。
【0111】
(1h)上述の実施形態に係るシミュレーション装置1は、S32では、HDD34に記憶された第2組み合わせ候補xのうち、評価指標がより改善される少なくとも一つの第2組み合わせ候補を最適解として抽出する。これにより、シミュレーション装置1によって機械的に最適解を抽出することができるので、設計者によって最適解が抽出される場合よりも、設計者の負担を軽減することができる。
【0112】
(1i)上述の実施形態に係るシミュレーション装置1では、設計対象は構造物9であり、設計要因は形状及び物理的特性のうちの少なくとも一方に関するものであり、評価指標は、設計対象の質量である。制約物理量は応力最大値Pmaxであり、制限値は許容応力値Plimであり、制約条件は応力最大値Pmaxが許容応力値Plim以下であること、である。これにより、構造物9において、構造物9が許容応力値Plimに耐えるという制約のもとで質量を最小とする最適化において、より適した形状又はより適した物理的特性を表す設計変数xnの組み合わせを得ることができる。
【0113】
上述の実施形態において、シミュレーション装置1、制御部30が設計支援装置に相当し、HDD34が記憶装置に相当する。S11-S19が第1の算出部に相当し、S20-S31が第2の算出部に相当し、S15、S18、が第1の最適化部に相当し、S17が第1の解析部に相当し、S19が第1の抽出部に相当する。S23、S26が第2の最適化部に相当し、S25が第2の解析部に相当し、S29が第2の抽出部に相当し、S32が最適抽出部に相当する。設計変数ベクトルxが複数の設計変数の組み合わせ、に相当する。
【0114】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0115】
上述の第1実施形態では、S15では、過去にS15にて生成された基準組み合わせ候補xとS17にて該基準組み合わせ候補xに基づいて算出された応力最大値Pmax及び質量とを対応づけた情報に基づいて、新たな基準組み合わせ候補xを学習した。これに対し、第2実施形態では、更に、過去にS23にて生成された公差組み合わせ候補xとS25にて該公差組み合わせ候補xに基づいて算出された応力最大値Pmax及び質量とを対応づけた情報も用いて学習を行う点で、第1実施形態と相違する。
【0116】
上述の相違点に伴って、
図10に示す第2実施形態の制御部30が実行する探索処理では、第1実施形態の探索処理(すなわち、
図7)に対して、S15がS15aに置換され、S25がS25aに置換される。
【0117】
[2-2.処理]
次に、第2実施形態のシミュレーション装置(以下、シミュレーション装置1a)における制御部30が、第1実施形態の探索処理に代えて実行する探索処理について、説明する。なお、第2実施形態の探索処理は、S15a、S25aのみが第1実施形態とは異なり他は同様であるため、以下では説明を簡略化する。
【0118】
制御部30は、S15aでは、第1応答情報及び第2応答情報に基づいて、新たな基準組み合わせ候補xを学習する。第1応答情報は、過去に(すなわち、S15aに移行する迄の過去に)、S15aにて生成された基準組み合わせ候補xとS17にて該基準組み合わせ候補xに基づいて算出された応力最大値Pmax及び質量とを対応づけた情報をいう。第2応答情報は、過去に(すなわち、S15aに移行する迄の過去に)、S23にて生成された公差組み合わせ候補xとS25aにて該公差組み合わせ候補xに基づいて算出された応力最大値Pmax及び質量とを対応づけた情報をいう。
【0119】
制御部30は、S25aでは、解析実行部37に、入力値として設定された公差組み合わせ候補xに基づいて解析を実行させ、解析の結果である応答値を入力値と対応づけてHDD34に記憶させる。ここでいう解析とは、入力値として設定された公差組み合わせ候補xに基づいて、応力最大値Pmax(すなわち、制約物理量)及び質量(すなわち、評価指標)を算出すること、である。応答値には、応力最大値Pmax及び質量が含まれる。
【0120】
制御部30は、S26では、S25aにて算出された最大応力値Pmaxが制約条件を充足しない(すなわち、許容応力値Plimを超える)場合に、処理をS27に移行させて公差生成回数kを0に初期化した後に処理をS11へ戻し、S11以降の処理を繰り返す。
【0121】
つまり、制御部30は、S25aにて算出された最大応力値Pmaxが制約条件を充足しないと判定された後に移行するS15aでは、第1応答情報及び第2応答情報の両方を用いて、新たな基準組み合わせ候補xを学習する。
【0122】
[2-3.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果(1a)-(1i)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0123】
(2a)上述の実施形態に係るシミュレーション装置1aは、S15aでは、S25aにて算出された制約物理量が制約条件を充足しないときに、上述の第1応答情報に加えて第2応答情報も用いて、これらの両方に基づいて、新たな基準組み合わせ候補xを学習する。これにより、学習のベースとなる情報が増加するので、より精度の良い(すなわち、制約条件を充足しつつより性能を改善する)第2組み合わせ候補xを得ることができる。
【0124】
<変形例>
なお、本実施形態の変形例としてのシミュレーション装置(以下、シミュレーション装置1b)は、図示しないが、S25を実行し、S15に代えてS15bを実行する。S15bでは、S25にて算出された制約物理量が制約条件を充足しないときに、上述の第1応答情報に加えて、過去に(すなわち、S15bに移行する迄の過去に)、S23にて生成された公差組み合わせ候補xとS25にて該公差組み合わせ候補xに基づいて算出された応力最大値Pmaxとを対応づけた情報も用いて、新たな基準組み合わせ候補xを学習してもよい。
【0125】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0126】
(3a)上述の各実施形態のシミュレーション装置1では、制御部30は、S32では、複数の第2組み合わせ候補xを最適解として選択してもよい。例えば、制御部30は、相対的に性能が良い(例えば、相対的に質量が小さい)複数の第2組み合わせ候補を最適解として選択してもよい。
【0127】
(3b)上述の各実施形態のシミュレーション装置1では、制御部30は、S32を実行しなくてもよい。この場合、設計者が、第2組み合わせ候補xのうちから適宜最適解を選択してもよい。
【0128】
(3c)上述の各実施形態のシミュレーション装置1では、最適化情報は、設計変数xnを基準範囲内で変化させる刻み幅DAnを示す情報に代えて、設計変数xnを基準範囲内で変化させる回数を示す情報を含んでもよい。同様に、最適化情報は、設計変数xnを公差範囲内で変化させる刻み幅DBnを示す情報に代えて、設計変数xnを公差範囲内で変化させる回数を示す情報を含んでもよい。
【0129】
(3d)上述の各実施形態のシミュレーション装置1では、基準学習開始回数、公差学習開始回数は、それぞれ、3以上の適宜定められた任意の整数であってよい。
【0130】
(3e)上述の各実施形態のシミュレーション装置1では、制御部30は、S15、S15aでは、新たな基準組み合わせ候補xを学習する作動を、適当な収束基準が満たされる迄繰り返すように構成されてもよい。同様に、制御部30は、S23では、新たな公差組み合わせ候補xを学習する作動を、適当な収束基準が満たされる迄繰り返すように構成されてもよい。
【0131】
(3f)上述の各実施形態のシミュレーション装置1では、制約条件は、制約物理量が、制限値に基づいて制限値以上であると制限されること、であってもよい(すなわち、制約物理量≧制限値)。シミュレーション装置1は、S25、S25aでは、制約物理量が制限値に近づく値となる公差組み合わせ候補xを、制約条件の充足を悪化させる公差組み合わせ候補xとして、繰り返し生成してもよい。この場合においても、上述の(1d)の効果を得ることができる。
【0132】
また、上述の各実施形態のシミュレーション装置1では、制約条件は、制約物理量が、制限値に基づいて制限値と等しい、と制限されること、であってもよい(すなわち、制約物理量=制限値)。シミュレーション装置1は、S25、S25aでは、制約物理量が制限値から離れる値となる公差組み合わせ候補xを、制約条件の充足を悪化させる公差組み合わせ候補xとして、繰り返し生成してもよい。この場合においても、上述の(1d)の効果を得ることができる。
【0133】
(3g)上述の各実施形態のシミュレーション装置1では、構造物9を設計対象とする場合、設計変数xnとして、例えば、寸法(すなわち、長さ、角度、厚さ等)といった、形状に関する種々の設計要因を表す数値を用いてもよい。また、設計変数xnとして、例えば、ヤング率、導電率、誘電率等といった物性に関する種々の設計要因を表す数値(すなわち、物性値)を用いてもよい。なお、設計変数xnとしては、これらに限定されるものではなく、種々の設計要因を表す数値が用いられてよい。
【0134】
(3h)上述の実施形態のシミュレーション装置1では、設計対象は、
図2に示す構造物9に限定されるものではないことは、いうまでもない。また、設計対象は、構造物9のような工業製品に限定されるものではなく、最適化問題の対象となるものであればよく、制約条件、目的関数、設計変数が設定されるものであればよい。
【0135】
(3i)本開示に記載の制御部30及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部30及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部30及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。制御部30に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0136】
(3j)上述の実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上述の実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上述の実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上述の実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0137】
(3k)本開示は、上述したシミュレーション装置1、制御部30の他、上述した制御部30を機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した媒体、及び設計支援方法など、種々の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0138】
1…シミュレーション装置、30…制御部、31…CPU、34…HDD。