(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152496
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ドア枠
(51)【国際特許分類】
E06B 1/16 20060101AFI20221004BHJP
E06B 1/32 20060101ALI20221004BHJP
E06B 1/20 20060101ALI20221004BHJP
E05D 7/081 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
E06B1/16 Z
E06B1/32
E06B1/20
E05D7/081
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055286
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】宮川 真一
【テーマコード(参考)】
2E011
2E030
【Fターム(参考)】
2E011CA05
2E011CA07
2E011CB02
2E011CC05
2E030BB03
2E030HA02
2E030HB02
2E030HC02
2E030HD02
2E030HE01
(57)【要約】
【課題】ドアの荷重を受けても変形や破損しない十分な強度を備えながら、見付幅が小さくて見栄えの良好なドア回転軸側の縦枠を有するドア枠を提供する。
【解決手段】ドア枠10の少なくともドア回転軸側の軸側縦枠20が、躯体1の開口部2に固定されるアルミ中空成形体である枠本体21と、枠本体に対して幅方向に移動可能な任意位置で枠本体に固定される木質材料の調整部材22とからなる。枠本体の上下端の幅方向一方側にピボット丁番縦枠側金具50が取り付けられ、そのピボット軸53が、ドア70の上下端に取り付けられたピボット丁番ドア側金具60のピボット軸受孔63に挿入されることにより、ドアが軸側縦枠20に開閉可能に組付けられる。枠本体の幅方向他方側には、調整部材を移動可能に収容する調整部材収容溝30が形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
丁番でドアを開閉可能に支持するドア枠において、少なくともドア回転軸側の軸側縦枠が、躯体の開口部に固定される枠本体と、この枠本体に対して幅方向に移動可能な任意位置で枠本体に固定される調整部材とからなり、枠本体の幅方向一方側に丁番が取り付けられると共に、枠本体の幅方向他方側に調整部材を移動可能に収容する調整部材収容溝を有することを特徴とするドア枠。
【請求項2】
丁番がピボット丁番であり、枠本体の上下端に取り付けられることを特徴とする、請求項1記載のドア枠。
【請求項3】
枠本体の幅方向他方側の先端に前記調整部材収容溝が形成されることを特徴とする、請求項1または2記載のドア枠。
【請求項4】
枠本体の表面の幅方向他方側に連結片を介して調整部材取付片が枠本体表面に略平行に形成され、枠本体表面と調整部材取付片との間に前記調整部材収容溝が形成されることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか記載のドア枠。
【請求項5】
調整部材が幅Waの内側部と幅Wb(>Wa)の外側部とを有してなり、該内側部が前記調整部材収容溝に収容されることを特徴とする、請求項4記載のドア枠。
【請求項6】
前記調整部材取付片の先端が調整部材の内側部と外側部との間の段部に係合可能であることを特徴とする、請求項5記載のドア枠。
【請求項7】
枠本体が金属による中空成形品であり、調整部材が木質材料からなることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか記載のドア枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丁番を介してドアを開閉可能に支持するドア枠に関し、特にそのドア回転軸側の縦枠に関する。
【背景技術】
【0002】
丁番を介してドアを開閉可能に支持するドア枠は、たとえば下記の特許文献1に公知である。ドア枠は、ドアを設置する開口部の内面に固定される上枠、下枠および左右縦枠からなる四方枠、上枠および左右縦枠からなる三方枠、または、左右縦枠のみからなる二方枠として構成され、ドア回転軸側の縦枠の上下端にそれぞれピボット軸またはピボット軸受孔を有するピボット丁番縦枠側金具が設けられると共に、ドアの回転軸側の上下木口にピボット軸受孔またはピボット軸を有するピボット丁番ドア側金具が設けられ、ピボット軸受孔に挿入されたピボット軸を回転軸として、回転軸側の縦枠にドアが回転可能に支持される。
【0003】
一般住宅の内装ドアなどにおいては、木質材料を主体として形成されるドアとの意匠的統一性を図るために、ドア枠についても木質材料が用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ドア枠を木質材料からなるものとした場合、特に丁番を介してドアの荷重がかかるドア回転軸側の縦枠については、その強度を確保するために見付幅が大きく(厚く)なり、見栄えが悪いという問題がある。また、戸当たり部材を嵌合固定するための戸当たり溝が縦枠に設けられる場合、戸当たり溝の部分ではその溝深さ分だけ縦枠の見付幅が小さくなって強度が低下し、ドアの荷重により縦枠が変形ないし破損しやすくなる。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、ドアの荷重を受けても変形や破損しない十分な強度を備えながら、見付幅が小さくて見栄えの良好なドア回転軸側の縦枠を有するドア枠を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、丁番でドアを開閉可能に支持するドア枠において、少なくともドア回転軸側の軸側縦枠が、躯体の開口部に固定される枠本体と、この枠本体に対して幅方向に移動可能な任意位置で枠本体に固定される調整部材とからなり、枠本体の幅方向一方側に丁番が取り付けられると共に、枠本体の幅方向他方側に調整部材を移動可能に収容する調整部材収容溝を有することを特徴とする。
【0008】
本願の請求項2に係る発明は、請求項1記載のドア枠において、丁番がピボット丁番であり、枠本体の上下端に取り付けられることを特徴とする。
【0009】
本願の請求項3に係る発明は、請求項1または2記載のドア枠において、枠本体の幅方向他方側の先端に前記調整部材収容溝が形成されることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか記載のドア枠において、枠本体の表面の幅方向他方側に連結片を介して調整部材取付片が枠本体表面に略平行に形成され、枠本体表面と調整部材取付片との間に前記調整部材収容溝が形成されることを特徴とする。
【0011】
本願の請求項5に係る発明は、請求項4記載のドア枠において、調整部材が幅Waの内側部と幅Wb(>Wa)の外側部とを有してなり、該内側部が前記調整部材収容溝に収容されることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項6に係る発明は、請求項5記載のドア枠において、前記調整部材取付片の先端が調整部材の内側部と外側部との間の段部に係合可能であることを特徴とする。
【0013】
本願の請求項7に係る発明は、請求項1ないし6のいずれか記載のドア枠において、枠本体が金属による中空成形品であり、調整部材が木質材料からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ドア枠のドア回転軸側の縦枠が、躯体の開口部に固定される枠本体と、この枠本体に対して幅方向に移動可能な任意位置で枠本体に固定される調整部材との2部材で構成される。したがって、たとえば枠本体をアルミなどの金属製として、丁番を介してドアの荷重を受けても変形や破損しない強度を備えたものとすると共に、調整部材については木質材料で形成することにより木質感を与えて、ドア枠に関連する他の部材(開放側の縦枠や上枠など)が木質材料で形成されている場合において統一した意匠性を与えることができ、強度と見栄えを両立させることができる。枠本体を中空成形品として軽量化することで、取扱いや施工作業が容易になる効果もある。
【0015】
また、上記のように構成することにより、ドアの荷重を丁番を介して支持可能な強度を有するドア枠が形成されると共に、枠本体を薄くすることができ、ドアの荷重が直接作用しない調整部材も薄くすることができるので、従来のように縦枠の全体を木質材料による単一部材として形成した場合に比べて見付幅の小さい縦枠とすることができ、見栄えが良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態(実施例1)によるドア枠およびドア(閉止状態)をドアで区画される空間の一方側(
図1においてドアの手前側)から見たときの正面図である。図示の便宜のため、ドアに取り付けられる開閉操作用の取手、ラッチ、ラッチ受けなど本発明に直接関連しない部材は図示省略されている。
【
図2】同ドア枠およびドア(閉止状態)をドアで区画される空間の他方側(
図1においてドアの反対側)から見たときの背面図である。図示の便宜のため、ドアに取り付けられる開閉操作用の取手、ラッチ、ラッチ受けなど本発明に直接関連しない部材は図示省略した。
【
図4】
図2のB1部およびB2部(
図1のA1部およびA2部をそれぞれ閉止状態のドアの反対側から見た部分)の拡大図である。
【
図5】
図1のX-X切断線による断面図である(ハッチング省略)。
【
図6】下端側の軸側縦枠の施工状態を示す平面図である(ドア省略)。
【
図7】
図3のY-Y切断線による断面図(ハッチング省略)である。
【
図8】軸側縦枠を構成する2部材のうちの枠本体を単独で示す平面図である。枠本体の表面の全部または一部に任意に貼着される化粧シートは図示省略されている。
【
図9】軸側縦枠を構成する2部材のうちの調整部材を単独で示す平面図である。調整部材の表面の全部または一部に任意に貼着される化粧シートは図示省略されている。
【
図10】本発明の他実施形態(実施例2)によるドア枠およびドア(閉止状態)を示す、
図5と同様の断面図である(ハッチング省略)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に実施例を挙げて本発明について詳述する。
【実施例0018】
本発明の一実施形態(実施例1)によるドア枠について、
図1ないし
図9を参照して説明する。この実施例におけるドア枠10は、上枠11および左右の縦枠20,40からなる三方枠として構成され、壁などの躯体1の開口部2に臨む内面側に釘打ちなどで固定される。後述するピボット丁番(ピボット丁番縦枠側金具50A,50Bおよびピボット丁番ドア側金具60A,60B)を介してドア枠10内にドア70が開閉可能に設けられる。縦枠20がドア70の回転軸側に立設される縦枠(以下、「軸側縦枠」という。)であり、縦枠40がドア70の開閉端側に立設される縦枠(以下、「開放側縦枠」という。)である。
【0019】
軸側縦枠20は、開口部2の全高、すなわち床面4から上枠11の下面までの長さ寸法を有する長尺体であって、この実施例では、枠固定ネジ23で躯体1に固定される枠本体21と、枠本体21に対して幅方向ないし壁厚方向(
図1および
図2の紙面鉛直方向、
図5および
図6の紙面上下方向)に移動可能な任意位置において調整部材固定ネジ24で固定される調整部材22の2部材から構成される。
【0020】
枠本体21は枠固定ネジ23で躯体1に固定されると共に、その表面21aの幅方向一方側(ドア70の手前側)の上下端にそれぞれピボット丁番縦枠側金具50A,50Bが丁番固定ネジ25,25で固定される。丁番固定ネジ25,25が挿通する枠本体21の裏面21b側の領域には裏溝26が凹設されており、丁番固定ネジ25,25を枠本体21の表面21a側からネジ挿通孔27に通して、裏溝26に嵌め込んだ裏板28の雌ネジ(図示せず)に螺合させることにより、ピボット丁番縦枠側金具50A,50Bが枠本体21の上下端にそれぞれ固定される。枠本体21の材質は特に限定されないが、たとえば、ドア70の荷重を受けても変形や破損しない強度と、取扱いや施工作業に便宜を与える軽量性と、所定形状に容易に加工できる易加工性とを備えるアルミなどの金属や硬質プラスチックなどで形成することができる。この実施例の枠本体21は中空部29を有するアルミ中空成形品である。
【0021】
調整部材22は任意材料で形成されるが、この実施例では、厚さTaおよび幅Waの内側部221と、厚さTb(>Ta)および幅Wbの外側部222とを有するように加工形成されたMDFからなる長尺材である。調整部材22の裏面22bは全体を通じて平坦面に形成されているので、その表面側において、内側部221と外側部222との間にこれらの厚さの差(Tb-Ta)に起因する段部223が形成されている。調整部材22の寸法の一例として、この実施例では、Ta=9.0mm、Tb=12.0mm、Wa=22.5mm、Wb=20.7mmである。
【0022】
枠本体21の表面21aの幅方向他方側(ドア70の反対側)には、調整部材22の内側部221を幅方向に移動可能に収容する調整部材収容溝30を枠本体表面21aとの間に与える調整部材取付片31が形成されている。調整部材収容溝30の深さDは、調整部材22の内側部221の幅Waと略同一またはそれより若干大きい寸法に形成され、開口端の幅E(調整部材取付片31の先端と枠本体表面21aとの間の間隔)は、調整部材22の内側部221の厚さTaと略同一またはそれより若干小さい寸法に形成される。枠本体21の寸法の一例として、この実施例では、D=25.0mm、E=9.0mmである。調整部材取付片31と枠本体21とを連結する連結片32は戸当たりを兼ねている。
【0023】
下端側のピボット丁番縦枠側金具50Aは、枠本体表面21aに当接してピボット丁番固定ネジ25,25で枠本体21に固定される取付片51と、取付片51に対して略直角方向(施工状態において略水平方向)に延長する水平片52とを有して一体に形成され、水平片52の先端部からはピボット軸53が所定の突出長さを有して垂立している。
【0024】
ドア70の軸側縦枠20側の上下端にはそれぞれピボット丁番ドア側金具60A,60Bが取り付けられる。下端側のピボット丁番ドア側金具60Aは、ドア70の軸側縦枠20側の下端を一部切り欠いて形成した凹部71に挿入される取付片61と、取付片61からドア70の一方側(手前側)に突出する突出片62とからなり、突出片62の裏面には、ピボット丁番縦枠側金具50Aのピボット軸53を回動自在に収容するピボット軸受孔63が垂直方向に所定深さを有するものとして形成されている。取付片61には複数のネジ穴64が形成され、これらのネジ穴64に固定ネジ65を螺着することにより、ピボット丁番ドア側金具60Aがドア70に取り付けられる。
【0025】
図5および
図6は軸側縦枠20の下端部(A1部,B1部)における構成が示されているが、軸側縦枠20の上端部(A2部,B2部)における構成はこれを略上下反転させた構成に相当するので、詳細な説明を割愛する。ただし、上端部(A2部,B2部)においては、ピボット丁番縦枠側金具50Bの水平片52からピボット軸54が下方に向けて所定の突出長さで垂下し、これを受けるピボット軸受孔66がピボット丁番ドア側金具60Bの突出片62に所定の深さを有するものとして形成されている(
図3および
図4参照)。
【0026】
開放側縦枠40の構成、形状、材質などは特に限定されないが、この実施例では、MDFから
図5に示すような所定形状に加工形成されたものとされ、その表面側に合成樹脂製の戸当たり41が設けられている。なお、
図5および
図6において符号3,3は躯体1の両面に貼着される壁材を示す。
【0027】
このドア枠10の施工手順について説明する。
【0028】
枠本体21の表面21aと調整部材取付片31との間の調整部材収容溝30に調整部材22の内側部221を挿入し、任意の深さ位置で調整部材固定ネジ24を枠本体21の裏面21b側からねじ込むことにより、調整部材22を枠本体21に固定して軸側縦枠20を形成する。この作業は、施工現場で行っても良いし、あらかじめ工場で組み立てた軸側縦枠20を施工現場に搬入しても良い。調整部材22の固定位置は、外側部222によって壁材3の木口を隠蔽するに十分な位置とし、躯体1や壁材3の厚さに応じて位置調整する。躯体1や壁材3の厚さが大きく異なる場合にも対応させるために、大きさ(特に外側部222の幅Wb)が異なる複数種類の調整部材22を用意しておき、その中から躯体1や壁材3の厚さに応じて選択して用いても良い。
【0029】
このようにして形成した軸側縦枠20を、別途用意した上枠11および開放側縦枠40と組み合わせて三方枠のドア枠10を形成する。四方枠の場合はさらに下枠も組み合わせて四方枠のドア枠10とする。軸側縦枠20および開放側縦枠40のみで構成される二方枠の場合は、この作業工程は不要である。三方枠や四方枠としてのドア枠10を形成する作業も、施工現場で行っても良いし、あらかじめ工場で組み立てたドア枠10を施工現場に搬入しても良い。
【0030】
このようにして組み立てたドア枠10を、施工現場にて、枠固定ネジ23により開口部2に設置して躯体1に固定する。
【0031】
軸側縦枠20の上下端にそれぞれピボット丁番固定ネジ25,25によりピボット丁番縦枠側金具50A,50Bを固定する。この作業は、施工現場においてドア枠10を組み立てる前または組み立てた後に行っても良いし、ドア枠10を開口部2に固定した後に行っても良いし、あるいは、あらかじめ工場でピボット丁番縦枠側金具50A,50Bを取り付けた軸側縦枠20としたものを施工現場に搬入しても良い。
【0032】
そして、ドア70の上下端に取り付けたピボット丁番ドア側金具60A,60Bを、軸側縦枠20の上下端に取り付けたピボット丁番縦枠側金具50A,50Bにそれぞれ組み付けることにより、ドア70を軸側縦枠20に開閉可能に設置する。この作業は、具体的には、ドア70を若干斜めにした状態で持ち上げて、その上端に取り付けられているピボット丁番ドア側金具60Bのピボット軸受孔66に、軸側縦枠20の上端に取り付けられているピボット丁番縦枠側金具50Bのピボット軸53を差し込み、ドア70の上端が上枠11の下面に略当接するまで持ち上げた後、この状態を維持したままドア70の下端を軸側縦枠20に近付かせて略垂直な状態にして、その下端に取り付けられているピボット丁番ドア側金具60Aのピボット軸受孔63に、軸側縦枠20の下端に取り付けられているピボット丁番縦枠側金具50Aから垂立するピボット軸53を差し込んで、ドア70から手を離すことによって行うことができる。
【0033】
このような作業手順でのドア70設置を可能にするために、ピボット丁番縦枠側金具50A,50Bにおけるピボット軸53,54の突出長さ、並びに、ピボット丁番ドア側金具60A,60Bにおけるピボット軸受孔63,66の深さは、ドア70を持ち上げてピボット丁番縦枠側金具50Bのピボット軸53をピボット丁番ドア側金具60Bのピボット軸受孔63の奥深くまで挿入したときに、ドア70の下端がピボット丁番縦枠側金具50Aのピボット軸53の先端より若干上方に浮いていて干渉しない位置にあり、且つ、その後にピボット丁番縦枠側金具50Aのピボット軸53をピボット丁番ドア側金具60Aのピボット軸受孔63に挿入した状態にしてドア70の自重で落とし込んだときに、ピボット丁番縦枠側金具50Bのピボット軸54の少なくとも先端部がピボット丁番ドア側金具60Bのピボット軸受孔66に入り込んで抜け落ちないような寸法に設定されている。
【0034】
あるいは、ドア70の設置作業をより容易に行えるようにするために、ピボット丁番縦枠側金具50Bのピボット軸54を上下移動可能とし、これをバネ付勢によりピボット丁番縦枠側金具50Bから下方に突出させるような構成にしても良い。このような構成を採用すると、最初に、ドア70を斜めにしてピボット丁番ドア側金具60Aのピボット軸受孔63に、ピボット丁番縦枠側金具50Aから垂立するピボット軸53を差し込んだ後、ピボット丁番縦枠側金具50Bのピボット軸54をバネ付勢に抗して上方に移動させた状態にして、ドア70の上端を軸側縦枠20に近付かせていくと、ピボット軸54がピボット丁番ドア側金具60Bのピボット軸受孔66に整列したときに、バネ付勢を受けてピボット軸54が自動的に突出してピボット軸受孔66に嵌まり込む。ドア70の下端側でピボット丁番ドア側金具60Aのピボット軸受孔63にピボット丁番縦枠側金具50Aのピボット軸53を差し込んだ時点でドア70を略自立させることができ、その後はドア70の上端部分を軸側縦枠20に近づけていくだけで設置作業が完了するので、ドア70の全重量を受けずに容易に作業することができる。
【0035】
これに代えて、たとえば、ピボット丁番ドア側金具60Bに回転可能なストッパー機構を設け、ストッパーに設けたピボット軸挿通路を開放側縦枠40に向けて開口させた位置にして、ピボット丁番縦枠側金具50Bのピボット軸54をこのピボット軸挿通路に挿通させてピボット丁番ドア側金具60Bのピボット軸受孔66に嵌め込んだ後に、ストッパーを回転させてピボット軸挿通路を閉じるような構成を採用しても、上記と同様にドア設置作業の容易化を図ることができる。
【0036】
なお、既述したように、この実施例における調整部材22は比較的薄い内側部221と比較的厚い外側部222とを有して形成され、内側部221を調整部材取付片31と枠本体表面21aとの間の調整部材収容溝30に嵌合させた状態で幅方向に移動可能であるが、内側部221と外側部222との間の段部223を調整部材取付片31の先端に係合させた状態(
図5および
図6)とすることにより、調整部材固定ネジ24による固定と共に、調整部材22を枠本体21に対して安定して位置決めすることができる。したがって、このような位置関係でも壁材3の木口を隠蔽できる幅Wbの外側部222を備えた調整部材22を用いることが好ましい。
この実施例では、軸側縦枠90の構成が、実施例1の軸側縦枠20とは異なるものとされている。他の部材については実施例1と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。また、このドア枠80の施工手順も実施例1のドア枠10の場合と同様に行うことができるので、説明を省略する。
この実施例における枠本体91は、実施例1の枠本体21と略同一形状を有するが、実施例1において枠本体21に設けられる調整部材取付片31および連結片32は省略され、これに代えて、枠本体91の表面板91aと裏面板91bの間で幅方向一方側(ピボット丁番縦枠側金具50A,50Bとは反対側)に開口する調整部材収容溝96が形成され、この調整部材収容溝96に、略一定の厚さを有する平板状の調整部材92が任意の深さ位置まで挿入されて調整部材固定ネジ94で枠本体91に固定されている。表面板91aには開口部2に向けて突出する戸当たり板97が取り付けられている。符号95は、ピボット丁番縦枠側金具50A,50Bを軸側縦枠90の上下端に固定するためのピボット丁番固定ネジであり、実施例1におけるピボット丁番固定ネジ25と同様のものである。符号98はピボット丁番固定ネジ95を螺着させるための裏板であり、実施例1における裏板25と同様のものである。
以上に本発明の幾つかの実施例について図面を参照して詳述したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって定められる発明の範囲内において多種多様に変形ないし変更して実施可能である。
図示実施例では、枠本体21,91と調整部材22,92の2部材からなる縦枠の構成を軸側縦枠20,90のみに採用し、開放側縦枠40についてはMDFの単一部材からなるものとしたが、外観の統一性などの観点から、開放側縦枠40についても同様に枠本体と調整部材の2部材からなるものとしても良い。
また、既述したように、ドア枠は、図示実施例のように上枠、軸側縦枠および開放側縦枠からなる三方枠であっても良いし、上枠、下枠、軸側縦枠および開放側縦枠からなる四方枠であっても良く、あるいは軸側縦枠および開放側縦枠のみからなる二方枠であっても良い。