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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152507
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】青果物鮮度保持包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/50 20060101AFI20221004BHJP
   B65D 77/04 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B65D85/50 120
B65D77/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055303
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 政徳
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 朱音
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤本 丹民
【テーマコード(参考)】
3E035
3E067
【Fターム(参考)】
3E035AA11
3E035BA01
3E035BA08
3E035BB02
3E035BC01
3E035BC02
3E067AB08
3E067AC03
3E067BA05C
3E067BA06C
3E067BA12B
3E067BB02C
3E067BB14B
3E067CA03
3E067FA04
3E067FC01
3E067GD01
(57)【要約】
【課題】ブロッコリーの包装に要する作業を軽減させるとともに、必要とする設備や資材もできるだけ少なくして、高い鮮度保持効果を得られるような包装体を提供する。
【解決手段】通気性を有する合成樹脂フィルムからなる袋で複数株のブロッコリーを収納した包装袋を、通気性を有する外装箱に箱詰めし、前記包装袋の開放口を含む上部を折り畳み、前記合成樹脂フィルムが重なった部分の面積Fと前記外装箱の底面積Bとの比F/Bが0.35以上1.2以下となるように包装して鮮度保持包装体とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有する合成樹脂フィルムからなるフィルム袋で複数株のブロッコリーを収納した包装袋を、通気性を有する外装箱に箱詰めしてあり、
前記包装袋の開放口を含む上部を折り畳み、前記合成樹脂フィルムが重なった部分の面積Fと前記外装箱の底面積Bとの比F/Bが0.35以上1.2以下である鮮度保持包装体。
【請求項2】
前記ブロッコリーの収納数が3株以上40株以下であり、
前記外装箱の外形面積に対する開口面積比率Rが0.001%以上60%以下であり、
前記合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおけるガス交換速度Eが、0.1×10cc/m・day・atm以上1.2×10cc/m・day・atm以下である請求項1に記載の鮮度保持包装体。
【請求項3】
前記合成樹脂フィルムが、穿孔された厚さ15μm以上60μm以下のポリオレフィンフィルムである請求項2に記載の鮮度保持包装体。
【請求項4】
前記外装箱が段ボール箱からなり、前記開口面積比率Rが0.001%以上30%以下である請求項2又は3に記載の鮮度保持包装体。
【請求項5】
通気性を有する合成樹脂フィルムからなる袋で複数株のブロッコリーを収納した包装袋を、通気性を有する外装箱に箱詰めし、前記包装袋の開放口を含む上部を折り畳み、前記合成樹脂フィルムが重なった部分の面積Fと前記外装箱の底面積Bとの比F/Bが0.35以上1.2以下となるように包装した、ブロッコリー鮮度保持包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、青果物の鮮度を保持するための鮮度保持包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
青果物を保管、輸送するための包装体に、二酸化炭素発生剤や酸素発生剤を内包させることで、包装体内部の酸素濃度と二酸化炭素濃度を調節して、青果物の鮮度を長期間に亘って保持する試みは一般的に行われている。例えば特許文献1には、ブロッコリー又はカリフラワーを半密封容器に入れて、二酸化炭素発生剤や酸素発生剤を内包させ、酸素濃度と二酸化炭素濃度を所定の値に保持し続ける鮮度保持方法が提案されている。
【0003】
また別の鮮度保持方法として、包装体に内外のガス交換を制御できる適度な通気性を持たせ、青果物の置かれている環境の二酸化炭素濃度や酸素濃度、水蒸気量を調節することで、包装された青果物の鮮度を無包装や密封包装よりも長く保つ手法も行われている。
【0004】
特許文献2には、包装する青果物の重量に対して総開孔面積が0.4~4.0mm/kgとなるようにフィルムに開孔し、孔径とフィルム厚みとの比を3以上50以下となるように調整して、密封包装した青果物を真空予冷する手法が提案されている。適度に酸素濃度が確保され、二酸化炭素濃度も低く抑えることで、腐敗防止と呼吸抑制効果を発揮し、水滴の発生も防止できると主張されている。
【0005】
特許文献3には、エダマメまたはブロッコリーに用いる鮮度保持包装袋に、平均径が30μm以上800μm以下である孔をレーザー照射装置により設け、40℃、90%RHにおける酸素透過量P1と、5℃、90%RHにおける酸素透過量P2との比P1/P2が所定の値となるように調整する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2931885号公報
【特許文献2】特許第3346002号公報
【特許文献3】特許第6265054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように二酸化炭素発生剤や酸素発生剤を使用する手法では、発生剤からガスが十分に発生し続けている間は鮮度保持効果が見込めるものの、発生するガスが尽きてしまうと鮮度保持効果も見込めなくなってしまう。また、発生するガスが内部で過剰にならないように、かつある程度の濃度を維持できるように、包装には条件が限られた通気性を持たせる必要がある。このため、ガス発生剤と通気性を高度に制御した包装体との両方が必要になる。内容物に比べてコストを掛けにくい包装体において、このように両方の要素が必要になる手法は高コストになりやすく好ましくなかった。
【0008】
また、通気性のあるフィルムで青果物を密封包装するためには、密封にするための設備(パックシーラーやヒートシーラー等)や輪ゴム止めなどの人手による包装作業が必要で、設備投資にコストがかかったり、熟練した人員が必要となったりする。特に、密封しようとする内容物が一包装体あたり1kgを超えるような集合包装の場合は、設備で行うには大型且つ高価なものが必要であり、手作業で行うとなると時間がかかり、生産性が低下する場合もあった。
【0009】
一方で、集合包装ではなく、個包装で対応しようとすると、内容物一つに対して一つの包装が必要で包材コストがかさむだけでなく、外装箱に箱詰めすると、一箱当たりの収納量が減少し、輸送効率が低下してしまう。また、内容物一つ一つを手入れで包装する場合は作業に手間がかかるため、生産性が著しく低くなっていた。
【0010】
そこでこの発明は、ブロッコリーの包装に要する作業を軽減させるとともに、必要とする設備や資材もできるだけ少なくして、高い鮮度保持効果を得られるような包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、通気性を有する合成樹脂フィルムからなるフィルム袋で複数株のブロッコリーを収納した包装袋を、通気性を有する外装箱に箱詰めしてあり、
前記包装袋の開放口を含む上部を折り畳み、前記合成樹脂フィルムが重なった部分の面積Fと前記外装箱の底面積Bとの比F/Bが0.35以上1.2以下となるように包装した鮮度保持包装体により上記の課題を解決したのである。
【0012】
複数株のブロッコリーをまとめて包装する集合包装とすることで、個包装に比べて手間と時間を大幅に低減できる。この一つの包装袋で適度な通気性とガス保持性とを両立できる条件として、F/Bが上記の範囲となるように折り畳むことで、包装袋の通気性を有する部分と折り畳み部分で、ブロッコリーの鮮度を保持できるだけのガス交換性能を発揮することができる。
【0013】
この発明にかかる鮮度保持包装体は、前記ブロッコリーの収納数が3株以上40株以下であり、
前記外装箱の外形面積に対する開口面積比率Rが0.001%以上60%以下であり、
前記合成樹脂フィルムの23℃、60%RHにおけるガス交換速度Eが、0.1×10cc/m・day・atm以上1.2×10cc/m・day・atm以下である実施形態を採用することができる。
【0014】
ブロッコリーの収納数がこの範囲であれば、高い生産性を維持しながら鮮度保持効果を発揮することができる。ただし、鮮度保持包装体の外装箱自体は通気性が高すぎても、低すぎても問題となるので、外装箱の外形面積に対して開口部が占める面積比率である開口面積比率が上記の範囲であると好ましい。また、包装袋の折り畳み部分だけでなく、合成樹脂フィルム自体も所定の通気性を有することで、より鮮度保持に適した状態に制御することができる。
【0015】
この発明にかかる鮮度保持包装体は、前記合成樹脂フィルムの厚さが15μm以上60μm以下である実施形態を採用することができる。
【0016】
特に、前記外装箱が段ボール箱からなる場合は、前記開口面積比率Rが0.001%以上30%以下である実施形態を好適に採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明にかかる鮮度保持包装体により、大量のブロッコリーをまとめた一つの集合包装体を速やかに、かつ簡便に生産することができる。また、大型設備などを導入する設備投資上の負担もなく、人の手で容易に生産することができるため、ブロッコリーの出荷にかかる手間とコストを大幅に抑えることができる。この鮮度保持包装体に包装されたブロッコリーは、鮮度を保持したまま輸送保管することができ、外装箱に収納したまま生産地から消費地までの出荷を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明にかかる鮮度保持包装体の一部透視した斜視図
図2】(a)この発明にかかる鮮度保持包装体の製造手順のうち、開放口を含む上部を折り畳む際の図、(b)上部を折りたたんで合成樹脂フィルムが重なった状態を作り出した状態の図
図3】この発明にかかる鮮度保持包装体の包装袋における上面の重なり部分を示す平面図
図4】(a)鮮度保持包装体の包装袋上面の重なり部分が30%(0.3)である例を示す断面図、(b)鮮度保持包装体の包装袋上面の重なり部分が70%(0.7)である例を示す断面図、(c)鮮度保持包装体の包装袋上面の重なり部分が120%(1.2)である例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明について実施形態を挙げながら詳細に説明する。この発明は、ブロッコリーの包装に用いる鮮度保持包装体である。
【0020】
この発明にかかる鮮度保持包装体1は、通気性を有する合成樹脂フィルムからなるフィルム袋11で複数株のブロッコリー2を収納した包装袋を、通気性を有する外装箱15に箱詰めしたものである。
【0021】
収納するブロッコリーの数は3株以上であると好ましく、6株以上であるとより好ましい。このような集合包装とすることで、フィルム袋のコストや、収納や箱詰めの手間が抑えられる。2株であると個包装に比べてそれほど手間が省けないばかりか、外装箱へ箱詰めする際に個包装よりもかえって手間がかかる場合もあり、作業効率の点から問題となる。一方、40株以下であると好ましく、36株以下であるとより好ましい。一つの鮮度保持包装体の中に大量に梱包しすぎると、外装箱が大きく、また重たくなり、人手による取扱いが困難になり、さらに箱の中に何株も積み重ねることになってブロッコリーが傷みやすくなるおそれがある。
【0022】
この発明にかかる鮮度保持包装体1は、前記包装袋の開放口12を含む上部を折り畳んで、収納したブロッコリー2の上に重ねて、外装箱15の内部に箱詰めしたものである。外装箱15として段ボール箱を用いた例の斜視図を図1に示す。袋の上部を折り畳んで箱詰めすることで、袋の開口部を密封するための副資材や設備を特に必要とすることなく、開放口12を閉じることができる。このような簡単な包装作業により、十分な鮮度保持効果を発揮する。
【0023】
フィルム袋11を構成する合成樹脂フィルムは、特に材質を限定されるものではないが、ブロッコリー2に対して悪影響がなく、収納するために開放口12を開けたり、収納作業をしたりする際の取り回しの良さ、使用後の廃棄時における安全性やコストの点から、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルムが好適に用いられる。その中でも特に、防曇性を有するポリオレフィンフィルムであると、輸送保管時にブロッコリー2から放出される水蒸気が結露して生じる、ブロッコリー2の腐敗の原因となる水滴の付着を抑制できるのでより好ましい。
【0024】
上記合成樹脂フィルムの厚さは、15μm以上が好ましく、20μm以上であるとより好ましい。15μm未満であると特に後述する穿孔したフィルムとする場合に破れやすくなり、裂けて生じる穿孔部の大きさを好適な範囲に収めることが難しくなるおそれがある。一方、60μm以下が好ましく、50μm以下であるとより好ましい。60μmを超えると後述する穿孔用針を用いて好適な形状の穿孔部を形成させることが難しくなるだけでなく、そもそも貫通しにくくなるおそれがある。
【0025】
この合成樹脂フィルム自体も通気性を有することが望ましい。折り畳み部分だけでは通気性が不十分になりやすいためである。通気性を確保する構造としては、フィルムの製造後に熱針やレーザー光、あるいは非加熱針で必要な数と大きさになる孔を穿孔させたものが挙げられる。
【0026】
上記の合成樹脂フィルムの通気性を確保する構造のうち、熱針やレーザー光により穿孔したフィルムを採用する場合、穿孔時に熱がかかることで孔の周りに溶融した樹脂が冷えて固まるため、孔形状が安定し、目標とするガス交換速度Eへの制御がしやすい。また、穿孔部分の樹脂は溶融した後に固まるため、フィルムカスも発生しにくく、収納したブロッコリー2に異物が付着するおそれがほとんどないという利点を有する。一方で、あまり大きな孔面積とすると、適度な通気性に調整するためには孔数が少なくなることから、ブロッコリー2と接触して1つでも孔が塞がると、鮮度保持効果に影響を及ぼす可能性がある。また、孔形状やピッチのばらつきを制御するために、加工速度を抑えなければならず、生産性が低下してコスト高となる。
【0027】
上記の合成樹脂フィルムの通気性を確保する構造のうち、非加熱針で穿孔するフィルムを採用するのが特に好ましい。この場合、孔面積が0.0007~0.004mm程度と小さいものが採用できることから、単位面積当たりの孔数を多くして、フィルム袋の広範囲でガス交換を行うことができる。このため、収納するブロッコリーの容積占有率を高めて、フィルム袋同士が密着しても、ガス交換に寄与する孔を十分に確保できることから、全体としてガス交換性能は影響を受けにくい。また、孔面積が小さいため、フィルムの外観を損なわずに使用することができ、フィルムに印刷があってもその表示が邪魔されることなく、また見栄えの点からも問題がない。穿孔加工する場合には、フィルムを移送するロールの表面に接触して回転させる器具を用いることで、加工速度を低下させることなく全体に穿孔することができるため、製造効率の点からも優れている。なお、非加熱針で穿孔する際にはフィルムカスが発生して、収納したブロッコリーに付着する可能性がわずかに残るが、ブロッコリーは生で食することが少なく、調理前に茹でたり水洗したりといった作業を経て利用するため、フィルムカスが残存したとしても、この際に除去できるため、実用上は問題とならない。
【0028】
この発明のフィルム袋に用いる上記合成樹脂フィルムは、上記のいずれの手法によるかを問わず、23℃、60%RH環境におけるガス交換速度Eが、0.1×10cc/m・day・atm以上であると好ましく、0.3×10cc/m・day・atm以上であるとより好ましい。0.1×10cc/m・day・atm未満であると通気性が不十分になり、袋に収納したブロッコリー2の鮮度が十分に保持できなくなるおそれが高くなる。一方、上記合成樹脂フィルムのガス交換速度Eは、1.2×10cc/m・day・atm以下であると好ましく、1.0×10cc/m・day・atm以下であるとより好ましい。通気性が高すぎると、ブロッコリーを袋に収納しても外気に曝している状況に近づきすぎて、鮮度保持効果が発揮されなくなってしまう。
【0029】
これらのような合成樹脂フィルムからなるフィルム袋11は、一般的な製袋方法により形成させることができる。例えば、比較的小さい袋であれば、袋の底部で合成樹脂フィルムを折り返し、左右をヒートシール若しくは溶断することで製袋することができる。比較的大きい袋であれば、2枚のシートを重ねた上で3辺をヒートシールもしくは溶断して残りの1辺を開放口とする袋に製袋することができる。これらの中でも特に実施形態は制限されないが、三辺が塞がり、上部に開放口12を有する矩形の袋が、低コストかつ本発明における折り畳みにおいて好適に用いることができる。
【0030】
この発明にかかる鮮度保持包装体1を製造するには、図2(a)に示すように、上記のフィルム袋11に、ブロッコリー2を複数株収納したものを、外装箱15の中に箱詰めする。この形態にするための手順としては、外装箱15の外でフィルム袋11にブロッコリー2を収納してから外装箱15に箱詰めしてもよいし、外装箱15の中にフィルム袋11を広げた中にブロッコリー2を収納して箱詰めしてもよい。
【0031】
このフィルム袋11の開放口12の側を折り畳んで、フィルム同士が重なる部分を有するようにしてブロッコリー2の上部に被せる。このような完全密封ではない状態とすることで、密封するための副資材や設備を必要とすることなく作業ができる。また、このような簡単な包装作業により、十分な鮮度保持効果を発揮することができる。この折り畳んだ状況を図2(b)に示す。この発明にかかる鮮度保持包装体1では、この開放口12を折り畳んだ、フィルム袋11の上方側にある合成樹脂フィルムが重なった部分の面積Fと、外装箱15の底面積Bとの比F/Bが0.35以上である必要があり、0.5以上であると好ましい。F/Bが0.35未満では折り畳まれた部分が少なすぎて、フィルム袋11による開放口12の密閉度合いが不十分となり、ガス交換が進みすぎてしまう。なお、合成樹脂フィルムが重なった部分の面積Fの概念図を図3(a)に示す。また、外装箱15の底面積Bの概念図を図3(b)に示す。
【0032】
合成樹脂フィルムが重なった状況の概念的な側面断面図を図4に示す。図4(a)は重なった部分が30%程度、すなわちF/B=0.3程度の状況である。重なっている部分がやや小さく、内部のガスが抜け出やすすぎる状況にある。図4(b)は重なった部分が70%程度、すなわちF/B=0.7程度の状況である。十分に上面が二重に重なった部分で覆われており、内部のガスが抜け出にくくなっている。図4(c)は重なった部分が100%を超えて側面部分の一部も重なった、F/B=1.2程度の状況である。
【0033】
一方で、F/Bは1.2以下であると好ましく、1.0以下であるとより好ましい。1.0を超える状況は、合成樹脂フィルムが重なった部分がフィルム袋11の上部側だけでなく、外装箱15の側面側まで広がっていることを示す。F/Bが1.2を超えると重なっている部分が大きすぎ、合成樹脂フィルムの無駄が多すぎる。また、余っている部分が大きいということは開放口12から収納部分までの深さも大きすぎることになり、ブロッコリーを収納する際の作業性が悪化するおそれもある。
【0034】
この発明にかかる鮮度保持包装体1は、上記の値の範囲となるように折り畳まれた開放口12の隙間でわずかに発揮される通気性と、合成樹脂フィルムそのものの通気性とが合わさって、好適な通気性を実現する。ただし、フィルム袋11を箱詰めする外装箱15にも条件がある。
【0035】
外装箱15は、通気性を有し、ブロッコリー2を複数株詰めた集合包装となるフィルム袋11を箱詰めできる箱である。形態は特に限定されるものではなく、図1及び図2に記載したような段ボール箱、プラスチック製の有孔コンテナ(以下「プラスチックコンテナ」という。)、木箱などを用いることができる。これらの外装箱の側面には、図1に示すような把手穴や真空予冷用の通風口が形成されていてもよいし、通気用の格子で区切られた孔を有していてもよい。ただし、底面以外は直方体の枠部分のみであるような、側面が完全に開放されている外枠型ケースである箱は好ましくない。外装箱15の材質としては、プラスチック、木材、段ボールなどが挙げられる。
【0036】
外装箱15の形態のうち、上記のプラスチックコンテナは耐久性とリユース性能が高く、通い箱としての利用が可能であるという利点を有する。また、通気口を多数設けても、形状を保ちやすく、強度を確保しやすい。一方で、やや重量があり、リユースのために回収するための手間や輸送コストを要する。また、リユース前に洗浄しなければならない場合がほとんどであり、洗浄の手間やコストも無視できない。
【0037】
外装箱15の形態のうち、上記の木箱は製造にあたって化石燃料由来の材料を必要としないため、環境負荷が小さいという利点がある。木製の板が側面を支えるため、主に側面に通気口を設けても、形状を保ちやすく、強度を確保しやすい。一方で、内容物に対する外装箱の重量が非常に大きく、作業性の低下や輸送コストの上昇につながりやすい。木箱を形成する板を薄くしたり、面積を小さくしたりして軽量化することは当然に考えられるが、特に面積を小さくしすぎると、輸送保管時に側面から内容物がはみ出しやすくなり、上部のフィルム同士の重なり部分の状態を維持できなくなるおそれがある。
【0038】
外装箱15の形態のうち、上記の段ボール箱は、ワンウェイで使用されるため衛生的な利用ができる。また、材料自体の通気性がよいため、開口面積を抑えることができ、箱としての強度を保ちやすい。木箱やプラスチックコンテナに比べて軽量のため作業性もよく、未使用時にはシート状にして保管できるため、倉庫などでかさばらずに済む。箱自体はワンウェイになるが、材料としてはリサイクルできる仕組みが確立されており、総合的に見た環境負荷は小さいという利点もある。また、この発明にかかる鮮度保持包装体1では、ブロッコリー2をフィルム袋11に収納した状態で箱詰めされているため、ブロッコリーから放出される水蒸気による段ボール箱の強度低下を抑えることもできる。
【0039】
外装箱15の外形面積に対する開口面積比率Rが、0.001%以上であると好ましく、0.01%以上であるとより好ましい。0.001%未満であると、フィルム袋11やその開放口12が通気性を有していても、外装箱15の材料自体の通気性だけでは外気とのガス交換が不十分になり、鮮度保持効果を十分に発揮しきれなくなってしまう。なお、ここで上記した外形面積とは、主に直方体とみなせる箱の外枠部分が形成する実際の面又は仮想的な面の合計面積である。6面を覆う段ボールでは、把手穴のような開口部を有する場合でも開口部がないものと仮想した6面の面積の合計である。フラップが重なっている部分は二重に加算しない。有孔のプラスチックコンテナなどでは、通気孔などの開口部がある各面については開口部が無いものと仮想した各面の面積の合計である。一方、Rが60%以下であると好ましく、50%以下であるとより好ましい。60%を超えると、フィルム袋11がはみ出して外気と直接接触する状況に近づくだけでなく、上部のフィルム同士の重なり部分の状態を維持できなくなってしまい、鮮度保持包装体1としての鮮度保持効果をほとんど発揮できなくなってしまう。なお、参考までに図1に示す把手穴と通風口を有する段ボール箱はRが0.5%である。
【0040】
外装箱15が段ボール箱の場合は、開口面積比率Rが0.001%以上30%以下であるとより好ましい。段ボールは特に側面部分で箱の圧縮強度を支持しているため、Rが高すぎると強度の点から問題となるおそれがある。一方で、上記の通り、材料自体の通気性が高いため、それほど多くの孔がなくても通気性を確保しやすい。
【0041】
この発明にかかる鮮度保持包装体1において、外装箱15の容積中にブロッコリー2が占める体積の割合(以下、「容積占有率」という)は、図1に示すような縦詰め一段による詰め方の場合は、50%以上80%以下が望ましい。容積占有率が低すぎると、輸送時にブロッコリー2が包装体の中で動いてぶつかって傷んでしまうおそれがあり、また輸送効率も悪くなる。一方で、縦詰めで80%を超える容積占有率にしようとすると、花蕾同士を無理やり変形させなければ難しくなり、ブロッコリー2が傷みやすくなってしまう。なお、ブロッコリー2は主に食べる花蕾部分が多数の凹凸が複雑に重なり合った形状をしているが、ここでのブロッコリー2が占める体積は、仮想的に花蕾部分を半球に、茎部分を円柱と見なした排除体積をいい、標準的なブロッコリー2では概ね1000~1500cmである。一方、個々のブロッコリー2を横倒しにし、花蕾と茎とが交互になるようにして二段詰めを行う場合、容積占有率は65%以上85%以下が望ましい。二段詰めで65%未満とすると輸送効率が悪すぎる。一方で、二段詰めでも85%を超えて詰めようとすると、ブロッコリー2が無理に変形する力がかかるので、やはり傷みやすくなってしまう。
【0042】
この発明にかかる鮮度保持包装体1において、外装箱15の容積Vのうち、ブロッコリー2を詰める際に必要な空間、すなわち花蕾3の上端及び外周と、茎4の下端までを含めた領域をカバーできる直方体の空間Vが占める割合(「空間容積率」という)は、縦詰め一段の場合、80%以上95%以下が望ましい。また、交互詰め二段の場合は、空間容積率が85%以上97%以下であると好ましい。いずれの詰め方でも、ブロッコリー2が少なすぎると外装箱15内上部に空間が無駄に空いて、輸送効率が悪くなってしまうことになる。一方で、多すぎると外装箱15の天面が封かんしにくくなったり、外装箱を積み重ねたときにブロッコリーの花蕾にも荷重がかかったりするおそれがある。
【0043】
この発明にかかる鮮度保持包装体1は、ブロッコリー2の包装、輸送、保管に用いることで、包装体内外のガスが適度に交換されつつ、鮮度を長く保持することができる。集合包装であり、なおかつ開放口12を機械的に密封する必要が無いため、大量のブロッコリー2であっても、効率よく包装することができる。
【実施例0044】
次に、この発明を実際に実施した実施例を挙げて、この発明をさらに具体的に示す。
【0045】
フィルム袋に用いる合成樹脂フィルムとして、次のものを用意した。これらに後述する表1に記載の仕様となるように熱針、レーザー、非加熱針による穿孔を行った。ただし、非加熱針を用いた穿孔はスリット状であり、孔径はスリットの長さを示す。穿孔したフィルム又は「孔なし」については穿孔を行わないフィルムを表1に記載の寸法に切り出し、三辺をヒートシールしてフィルム袋を製袋した。
・防曇二軸延伸ポリプロピレンフィルム(表中「防曇OPP」)・・厚さ25μm、フタムラ化学(株)製:AF-642S
・低密度ポリエチレンフィルム(表中「LLDPE」)・・厚さ20μm、三井化学東セロ(株)製:TUX-HC-E
【0046】
【表1】
【0047】
<ガス交換速度E測定>
それぞれのフィルムを用いて、4辺をヒートシールして150mm×180mmの袋を作製し、穿孔フィルムの穿孔部分を避けて、サンプリングを行うための注射器用ノズルを取り付けた。次に、そのノズルを利用して袋をアスプレーターで脱気してから、ガス体シリンジを用いてその袋内に750ccの窒素ガス(純度99.99%以上)を充填した。窒素ガス充填直後に袋内のガスを1ccサンプリングし、パックドカラムを備えたガスクロマトグラフィー(TCD検出器)で酸素濃度を測定して、その値を初期酸素濃度(C)とした。その後、この袋を23℃、60%RHに設定した恒温恒湿器内で静置保管し、保管開始から30分、1時間、2時間、3時間が経過した時の袋内酸素濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。なお、測定は全て大気下で行った。得られた測定値において、経過時間と袋内酸素濃度の間に比例関係が成り立つこと(相関関数0.98以上)を確認し、それが成り立たない場合は再度試験を行った。空気中の酸素濃度を21%として、保管開始から3時間経過後の袋内酸素濃度の測定値を用いて、下記の計算式により袋内の空気全体のガス交換速度Eを算出した。
E=(C-C)/CO2×V/t/s/P……(1)
ただし、各記号は次の通りである。
E:ガス交換速度(cc/m・day・atm)
:窒素ガス充填からt時間後における袋内酸素濃度(%)
:窒素ガス充填直後の袋内酸素濃度(%)
O2:空気中の酸素濃度(21%)
V:充填した窒素ガスの量(750cc)
t:ガス充填時からの経過時間(3hr=0.125day)
s:袋の内表面積(0.054m
P:測定時の大気圧(1atm)
【0048】
また、外装箱として、次のものを用意した。
・段ボール箱(1)・・レンゴー(株)製、内寸450mm×320mm×240mm(B=450×320=144,000mm)、外形面積=688,000mm、開口面積=87,000mm、開口面積比率R=13%
・段ボール箱(2)・・レンゴー(株)製、内寸300mm×210mm×200mm(B=300×210=63,000mm)、外形面積=350,000mm、開口面積=18mm、開口面積比率R=0.005%
・プラスチックコンテナ・・岐阜プラスチック工業(株)製、MB-20F、内寸474mm×315mm×292mm(B=460×315=149,310mm)、外形面積=924,000mm、開口面積=465,000mm、開口面積比率R=50%
・木箱・・パイン材製、内寸460mm×330mm×250mm(B=460×330=151,800mm)、外形面積=915,000mm、開口面積=660,000mm、開口面積比率R=72%
・発泡スチロール箱・・積水化成品工業(株)製、HA-40、内寸427mm×340mm×250mm(B=427×340=145,180mm)、外形面積=1,127,000mm、開口面積=0mm、開口面積比率R=0%
【0049】
<フィルム袋の通気性の違いによる評価>
(実施例1~4、比較例1、2)
合成樹脂フィルムとして防曇二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用い、熱針(実施例1)、レーザー(実施例2)、非加熱針(実施例3,4、比較例1)により穿孔したフィルム、又は穿孔していないフィルム(比較例2)を製袋したフィルム袋を、底部をクラフト粘着テープ((株)大塚商会製、TGK-KTKC50)でI貼りした外装箱の内部に広げてブロッコリーを詰め、図1に示すような3×4株の12株が並ぶように縦詰めした。その上で、袋上部のフィルムを折り畳み、フィルムの重なり部分の面積Fを表1に「重なり面積F」として記載した。なお、同じ非加熱針を用いて穿孔した実施例3、4、及び比較例1は、この順に袋寸法が小さくなり、折り畳んだときの重なり部分の面積Fが順に小さくなる。折り畳んだフィルムの上部を外装箱である段ボール箱の上部フラップで押さえて、上部フラップを上記クラフト粘着テープで貼り合わせて密封した。こうして得られた鮮度保持包装体を20℃、50%RHに設定した恒温恒湿器内で6日間保管し、ブロッコリーの品質評価を行った。基準としては、変色及び異臭がないものを〇、変色又は異臭のいずれかがわずかに確認できるものを△、変色又は異臭の少なくともいずれかがはっきりと確認できるものを×、とした。
【0050】
実施例1~4では、穿孔方法の種類によらず、いずれも鮮度保持効果が好適に発揮された。一方、袋の寸法を小さくして上部の重なり部分の面積Fを小さくしたことでF/Bが低下した比較例1は、通気性が高くなりすぎたせいか鮮度保持効果が不十分であった。穿孔しないフィルムで製袋した通気性を有さないフィルム袋を用いた比較例2では、ブロッコリーが明確に変色と異臭が確認され、鮮度は保持されなかった。
【0051】
<外装箱の違いによる評価>
(実施例5、比較例3~5)
外装箱として側面に通気口を有するプラスチックコンテナを用い、レーザー穿孔したフィルム袋を用いた実施例5では、ブロッコリーの鮮度保持効果が好適に発揮された。一方、実施例5において、プラスチックコンテナの代わりに、開口面積比率Rが大きすぎる木枠を用いた比較例3は、通気性を検証する前に、ブロッコリーを詰めたフィルム袋を木枠が支えることができずに木枠からはみ出してしまい、開放口を折り畳んだ状態での鮮度保持包装体としての形状を保つことができず、通気性も制御できなくなった結果、ブロッコリーははっきりと劣化したことが確認された。開口面積比率Rが0%で通気性を有さない発泡スチロールを外装箱に用いた比較例4では、ブロッコリーがはっきりと劣化したことが確認された。外装箱に箱詰めせずにフィルム袋だけで包装した比較例5も、開放口を折り畳んだ状態の形状を保つことができず、通気性も制御できなくなった結果、ブロッコリーは明確に変色と異臭が確認され、鮮度は保持されなかった。
【0052】
<小口箱における評価>
(実施例6、比較例6)
実施例6として、小型の段ボール箱を外装箱に用い、非加熱針で穿孔したフィルム袋を用いて鮮度保持包装体を得たところ、ブロッコリーの鮮度保持効果が好適に発揮された。一方、同じ段ボール箱を用い、穿孔されていない低密度ポリエチレンのフィルム袋を用いた比較例6では、通気性を確保することができず、ブロッコリーの一部に変色と異臭が確認された。
【符号の説明】
【0053】
1 鮮度保持包装体
2 ブロッコリー
3 花蕾
4 茎
11 フィルム袋
12 開放口
15 外装箱
B 外装箱の底面積
F 重なり部分の面積
図1
図2
図3
図4