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  • 特開-サージタンク構造 図1
  • 特開-サージタンク構造 図2
  • 特開-サージタンク構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152514
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】サージタンク構造
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/00 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
F01P11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055310
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】直井 人士
(57)【要約】
【課題】圧力バルブ及びバルブホルダの安定性を確保することができるサージタンク構造を提供すること。
【解決手段】内燃機関10を冷却するために冷却水が循環する冷却回路1に備えられるサージタンク14の構造であって、冷却回路1の内部圧力が所定圧以上にならないようにする圧力バルブ30と、圧力バルブ30を固定するためのバルブホルダ20とを有し、バルブホルダ20は、圧力バルブ30と内径側で接触する接触部が形成されており、バルブホルダ30は、樹脂及び金属から構成され、少なくとも接触部が金属から構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を冷却するために冷却水が循環する冷却回路に備えられるサージタンク構造であって、
前記冷却回路の内部圧力が所定圧以上にならないようにする圧力バルブと、
前記圧力バルブを固定するためのバルブホルダと、を有し、
前記バルブホルダは、前記圧力バルブと内径側で接触する接触部が形成されており、
前記バルブホルダは、樹脂及び金属から構成され、少なくとも前記接触部が金属から構成されていることを特徴とするサージタンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサージタンク構造に係り、詳しくは内燃機関の冷却水を貯留するサージタンクのバルブホルダの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1のように、内燃機関の水冷式冷却システムにおいては、内燃機関の冷却水を冷却するためにラジエータ及びラジエータに接続されるサージタンクが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59-19921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような内燃機関の水冷式冷却システムには、圧力バルブを用いて、冷却水の沸点を上昇させるのが一般的である。しかし、近年、燃費改善などの目的から、圧力バルブに要求される許容圧力値の上昇や、冷却システムにおける常用冷却水温度の上昇が望まれており、圧力バルブにかかる負荷が増加する傾向にある。そのため、圧力バルブ、及び、当該圧力バルブが装着されるバルブホルダの構造に対する安定性がさらに重要になっている。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧力バルブ及びバルブホルダの安定性を確保することができるサージタンク構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0007】
本適用例に係るサージタンク構造は、内燃機関を冷却するために冷却水が循環する冷却回路に備えられるサージタンク構造であって、前記冷却回路の内部圧力が所定圧以上にならないようにする圧力バルブと、前記圧力バルブを固定するためのバルブホルダと、を有し、前記バルブホルダは、前記圧力バルブと内径側で接触する接触部が形成されており、前記バルブホルダは、樹脂及び金属から構成され、少なくとも前記接触部が金属から構成されていることを特徴とする。
【0008】
このように冷却回路の内部圧力を維持するための圧力バルブと当該圧力バルブを固定するバルブホルダとの接触部を金属とすることで、当該接触部は樹脂よりも熱や圧力に対して変形しにくくなり、安定的に圧力バルブとバルブホルダと接触状態を維持することができる。これにより、圧力バルブ及びバルブホルダの安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るサージタンクを含む内燃機関の冷却回路の概略構成図である。
図2】サージタンクのバルブホルダの断面図である。
図3】圧力バルブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のサージタンク構造の一実施形態について図を参照しながら以下に説明する。
【0011】
図1には本実施形態のサージタンクを含む内燃機関の冷却回路の概略構成図が、図2には圧力バルブの断面図が、図3にはサージタンクのバルブホルダの断面図を表している。
【0012】
図1に示す冷却回路1は、エンジン(内燃機関)10のウォータジャケット10a内を冷却水(冷媒)が流通し、エンジン10を冷却するための水冷式冷却システムにおける回路である。なお、エンジン10が冷却水温度よりも低い状態にあるときは冷却水の循環によりエンジン10を暖気させることも可能である。
【0013】
詳しくは、本実施形態の冷却回路1には、車両(例えばトラック)の動力源であるエンジン10と、エンジン10の動力を利用して冷却水を循環させるウォータポンプ11、外気と熱交換して冷却水を冷却するラジエータ12、冷却水の温度に応じて冷却水の流路を変更するサーモスタット13、冷却水を貯留するサージタンク14が介装されている。
【0014】
エンジン10が始動され、エンジン10が十分に暖気されていない(冷時)場合、冷却水はエンジン10から配管P1を介してサーモスタット13に流れ、当該サーモスタット13から配管P2を通ってウォータポンプ11に達し、当該ウォータポンプ11によってエンジン10のウォータジャケット10a内に圧送され、エンジン10が十分に暖気されるまでこの循環が繰り返される。
【0015】
そして、エンジン10の暖気が進み、冷却水の温度が所定温度以上に上昇すると、サーモスタット13は、配管P1からの冷却水を配管P2側に流すのを止めて、配管P3側に流す。配管P3を通った冷却水はラジエータ12によって冷却され、配管P4を介してウォータポンプ11によってエンジン10のウォータジャケット10a内に圧送されてエンジン10を冷却する。
【0016】
更に、エンジン10が高回転、高負荷等で運転されると、冷却水は温度が上昇すると共に体積膨張する。膨張した量の冷却水は配管P5及び、配管P6を介してサージタンク14に流れ込む。サージタンク14内に流れ込んだ冷却水は、当該サージタンク14内で冷却されると共に、冷却水内に混入している気泡を除去して、配管P7を介してウォータポンプ11に吸入されて、ウォータジャケット10aに圧送される。
【0017】
このように構成される冷却回路1の内部圧力は、100℃でも冷却水が沸騰しないように大気圧以上に維持される。この大気圧以上の内部圧力を維持するために、サージタンク14上部のバルブホルダ20に圧力バルブ30が装着されている。
【0018】
図2に示すように、バルブホルダ20は、サージタンク14の上面に形成された注水口14a周縁部分に溶着されている。
【0019】
バルブホルダ20は、ホルダ本体部21が注水口14aよりも径の大きい筒状をなしている。当該ホルダ本体部21の上部外周には、外側に突出した環状鍔部22が形成されている。ホルダ本体部21の中央部分には、図示しないリザーバタンクと連通している連通孔23が形成されている。
【0020】
ホルダ本体部21の下部内周は、注水口14aと同径をなすよう内径側に狭まっており、具体的にはホルダ本体部21の内周面から環状溝部24を介して環状突起部25が形成されている。環状突起部25は環状溝部24よりもホルダ本体部21の軸方向Ohの先端側(上側)に突出しており、環状突起部25が注水口14aと同径の開口縁をなしている。
【0021】
さらに、このホルダ本体部21の下部内周部分においては、ホルダ本体部21の下部内周面から環状溝部24及び環状突起部25が金属部26により構成されている。バルブホルダは、この金属部26以外の部分は樹脂により構成されている。またサージタンク14も主に樹脂により構成されている。
【0022】
このバルブホルダ20に装着される圧力バルブ30は、図3に示すように、主に、頂部をなすキャップ部31と、リテーナ32と、正圧弁33と、負圧弁34とを有している。
【0023】
詳しくは、キャップ部31は、樹脂製のキャップカバー31aの内面に金属のキャッププレート31bが設けられている。
【0024】
キャッププレート31bの中央部にてリテーナ32の第1リテーナプレート32aとリテーナラバー32bと第2リテーナプレート32cが固定されている。リテーナラバー32bは、第1リテーナプレート32aと第2リテーナプレート32cにより、圧力バルブ30の軸方向Obにおいて挟持されている。第1リテーナプレート32a、リテーナラバー32b、第2リテーナプレート32cはそれぞれ円盤状をなしており、第2リテーナプレート32cは他より径が小さくリテーナラバー32bの周縁側の一側面は露出している。圧力バルブ30をバルブホルダ20に装着した際には、このリテーナラバー32bの一側面に上述のバルブホルダ20の上部開口縁が接触してシールすることになる。
【0025】
正圧弁33は、軸方向Obに延びる軸部とその先端にて径方向に拡がった傘状部からなる正圧弁体33aが正圧弁用スプリング33bにより付勢されており、当該正圧弁体33aの傘状部の一面側には円盤状の正圧ラバー33cが配設されている。図3にて点線で示すように、圧力バルブ30をバルブホルダ20に装着した際には、この正圧ラバー33cの一側面にバルブホルダ20の環状突起部25が接触してシールすることになる。
【0026】
負圧弁34は、正圧弁体33aの内部から一側に貫通して延びる軸部とその先端にて径方向に拡がった傘状部からなる負圧弁体34aが負圧弁用スプリング34bにより付勢されている。負圧弁体34aは正圧弁体33aとは逆方向に付勢されており、具体的には正圧弁体33aは軸方向Obの一側に付勢され、負圧弁体34aは軸方向Obの他側(頂部側)に付勢されている。
【0027】
このように構成された圧力バルブ30は、冷却回路1の内部圧力が所定の上限圧力以上になると正圧弁33が開き、つまり正圧ラバー33cとバルブホルダ20の環状突起部25とが離間して、そこから圧力が外部(連通孔23)に抜けて、圧力を低下させる機能をなす。一方、冷却回路1の内部圧力が所定の下限圧力以下となると負圧弁34が開くことで、図示しないリザーバタンクから正圧弁33内を通って冷却水を吸い込むよう機能する。
【0028】
圧力バルブ30において、サージタンク14内、つまりは冷却回路1の内部圧力を高圧で維持するには、正圧ラバー33cとバルブホルダ20の環状突起部25との接触部が全域で偏りなく接触していることが理想的である。例えば、バルブホルダ20はサージタンク14に溶着により取り付けられているが、環状突起部25が樹脂製であると、溶着時の熱により変形して、環状突起部25により形成される開口面の平面度が規格から外れるおそれがある。これに対して、本実施形態のサージタンク14のバルブホルダ20は、環状突起部25を含めて金属部26により構成されている。金属部26は樹脂部分よりも熱や圧力に対して変形しにくいことから、環状突起部25により形成される開口面の平面度を安定化させることができる。
【0029】
したがって、本実施形態のバルブホルダ20を有するサージタンク14は、全部分が樹脂製のバルブホルダよりも安定的にサージタンク14(つまり冷却回路1)の内部圧力を維持することができる。
【0030】
このようにして、本実施形態のサージタンク14は、圧力バルブ30及びバルブホルダ20の安定性を確保することができる。これにより、燃費改善等を目的とした冷却回路1の内部圧力の高圧化も実現することができる。
【0031】
以上で本発明に係るサージタンク構造の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではなく、他のサージタンクにも適用可能である。
【0032】
上記実施形態では、バルブホルダ20のホルダ本体部21の内周面から環状溝部24及び環状突起部25を金属部26としているが、金属部の範囲はこれに限られるものではない。例えば、金属部は、少なくとも圧力バルブの正圧ラバーとの接触部を含んでいればよいことから、環状突起部のみを金属部としてもよい。
【0033】
また、金属部26と樹脂から構成されるバルブホルダ20は、射出成形など様々な方法で成形できる。例えば、射出成形を行う場合、射出成型前に金属部26に汎用接着剤を塗布した後、射出成型を行い成形しても良い。このようにすれば、接着剤により金属部26と樹脂部材の気密性のさらなる向上を得ることが期待できる。
【0034】
また、圧力バルブの構造は上記実施形態のものに限られず、例えば負圧弁を備えていない圧力バルブのバルブホルダを備えたサージタンクにも適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 :冷却回路
10 :エンジン
14 :サージタンク
14a :注水口
20 :バルブホルダ
21 :ホルダ本体部
22 :環状鍔部
23 :連通孔
24 :環状溝部
25 :環状突起部
26 :金属部
30 :圧力バルブ
図1
図2
図3