(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152537
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】離水抑制剤
(51)【国際特許分類】
A23L 29/00 20160101AFI20221004BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20221004BHJP
A23L 29/20 20160101ALI20221004BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20221004BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20221004BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A23L29/00
A23L35/00
A23L29/20
A61K8/60
A61K47/24
A61K47/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055342
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】306007864
【氏名又は名称】ユニテックフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩政 菜津紀
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 彰大
(72)【発明者】
【氏名】山口 紘武
(72)【発明者】
【氏名】内田 沙綺
【テーマコード(参考)】
4B035
4B036
4B041
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4B035LC03
4B035LC16
4B035LG04
4B035LG20
4B036LC05
4B036LE02
4B036LF19
4B036LH04
4B036LH05
4B036LH07
4B036LH10
4B036LH11
4B036LH13
4B036LH29
4B036LH37
4B036LH44
4B036LH50
4B036LK06
4B036LP01
4B036LP24
4B041LC03
4B041LC07
4B041LD01
4B041LH01
4B041LH07
4B041LH10
4B041LH16
4B041LK05
4C076AA99
4C076BB01
4C076CC40
4C076CC50
4C076DD63
4C076EE30G
4C076EE38G
4C076FF57
4C076FF70
4C083AD241
4C083AD351
4C083AD371
4C083AD601
4C083CC01
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】従来の離水抑制剤とは異なり、まとまり感、ぬめりやねとつき等が生じない、新規の離水抑制剤を提供する。
【解決手段】グアニル酸及び/又はグアニル酸塩を用いることで、従来の離水抑制剤とは異なり、まとまり感、ぬめりやねとつき等が生じない、新規の離水抑制剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グアニル酸及び/又はグアニル酸塩を含む離水抑制剤。
【請求項2】
さらに増粘多糖類を含む請求項1に記載の離水抑制剤。
【請求項3】
増粘多糖類がキサンタンガム、ネイティブジェランガム、脱アシル型ジェランガム、κカラギナン、ιカラギナン、λカラギナン、ペクチン、シロキクラゲ多糖体、寒天、タラガム、ローカストビーンガム、グアーガム及びデンプンから選ばれるいずれか一種以上である請求項2に記載の離水抑制剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の離水抑制剤を加える工程を含む飲食品の製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の離水抑制剤を加える工程を含む飲食品の食感改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離水抑制剤に関する。さらに詳しくは、グアニル酸及び/又はグアニル酸塩を含む離水抑制剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品、化粧品、医薬品等の製造にあたり、製品からの離水を抑えるためにキサンタンガム、ジェランガムやカラギナン等の様々な増粘多糖類が使用されてきた。
しかし、増粘多糖類によって生じるまとまり感、ぬめりやねとつき等が製品によっては適さないことがあり、より有用な離水抑制剤の提供が望まれてきた。
【0003】
この課題を解決すべく検討を重ねた結果、本出願人は有用な剤のひとつとしてシロキクラゲ多糖体を有効成分とする離水抑制剤を開発するに至った。本出願人によるこの離水抑制剤は単なる飲食品、化粧品等のみならず、冷凍後解凍しても離水が少ない飲食品、化粧品等の提供にも有用であることが確認されている(例えば、特許文献1、参照)。
【0004】
本出願人はさらに有用な成分の検討を行い、グアニル酸及び/又はグアニル酸塩に着目するに至った。グアニル酸及び/又はグアニル酸塩はキノコ類の旨味成分として知られるものであり、調味料、味覚増強剤やフレーバー前駆物質等として使用することが開示されている(例えば、特許文献2、3、参照)。
また、特許文献4において、調味コンニャク加工品の製造法にあたり、離水を少なくするための浸透圧の低い食品添加物の旨味成分を含有することが開示されており、グアニル酸塩がそのひとつとして挙げられている。しかし、この文献ではイノシン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム及びコハク酸ナトリウムを含む酸性調味液を用いて調味コンニャク加工品を製造したことは開示されているものの、離水抑制効果については具体的に記載されておらず、グアニル酸塩については検討すらされていなかった。
【0005】
そこで、本出願人は、グアニル酸及び/又はグアニル酸塩の離水抑制効果の検討を行うとともに、従来の増粘多糖類を用いた離水抑制剤と異なり、まとまり感やぬめり等が生じない、新規の有用な離水抑制剤の提供を試みた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-157803号公報
【特許文献2】特開2008-212131号公報
【特許文献3】特表2017-509349号公報
【特許文献4】特許第5926071号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は従来の離水抑制剤とは異なり、まとまり感、ぬめりやねとつき等が生じない、新規の離水抑制剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、グアニル酸及び/又はグアニル酸塩を用いることで、従来の離水抑制剤とは異なり、まとまり感、ぬめりやねとつき等が生じない、新規の離水抑制剤が提供できることを見出した。
本願発明の離水抑制剤はグアニル酸及び/又はグアニル酸塩に加え、さらに増粘多糖類を含むこともできるが、この場合でも増粘多糖類によるまとまり感等を抑えることができる。そして、製品にこれらの不要の物性を与えないことから、飲食品、医薬品、工業製品等の製造に幅広く活用でき、飲食品の食感改善等を目的としても使用できる。
【0009】
すなわち、本発明は次の(1)~(5)に示される離水抑制剤等に関する。
(1)グアニル酸及び/又はグアニル酸塩を含む離水抑制剤。
(2)さらに増粘多糖類を含む上記(1)に記載の離水抑制剤。
(3)増粘多糖類がキサンタンガム、ネイティブジェランガム、脱アシル型ジェランガム、寒天、κカラギナン、ιカラギナン、λカラギナン、ペクチン、シロキクラゲ多糖体、タラガム、ローカストビーンガム、グアーガム及びデンプンから選ばれるいずれか一種以上である上記(2)に記載の離水抑制剤。
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の離水抑制剤を加える工程を含む飲食品の製造方法。
(5)上記(1)~(3)のいずれかに記載の離水抑制剤を加える工程を含む飲食品の食感改善方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、従来の離水抑制剤とは異なり、まとまり感、ぬめりやねとつき等が生じない、新規の離水抑制剤の提供が可能となった。本発明の離水抑制剤は増粘多糖類を含む場合であっても、不要な物性を製品に与えないことから、飲食品、医薬品、工業製品等の製造に幅広く活用でき、飲食品の食感改善等を目的として使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の離水抑制剤による離水抑制効果を示した図である(実施例3)。
【
図2】本発明の離水抑制剤による離水抑制効果を示した図である(実施例4)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の「離水抑制剤」は、グアニル酸及び/又はグアニル酸塩を有効成分として含み、飲食品、化粧品等の離水を抑制し得る剤のことをいう。本発明の「離水抑制剤」は離水抑制に加え、飲食品等の食感を改善する作用を有するものも含まれる。
このような本発明の「離水抑制剤」はグアニル酸及び/又はグアニル酸塩を含む剤であればよいが、グアニル酸及び/又はグアニル酸塩に加え、離水の抑制に有効な成分や、剤の形態を保つのに必要な成分等のその他の成分を含むものであっても良い。このような成分として例えば増粘多糖類が挙げられる。
本発明の「離水抑制剤」に含まれるこれらの成分は、ヒト等の動物を対象とする飲食品、化粧品等の製造において安全に使用できるものであればよく、市販のものや、独自に抽出、精製、合成等したものを使用できる。
【0013】
本発明の「離水抑制剤」に使用し得るグアニル酸及び/又はグアニル酸塩は、市販のものであっても独自に製造したもの等を用いてもよく、その製造方法として抽出法、分解法、発酵法、合成法又は半合成法等が知られているがいずれの製造方法で製造したものであってもよい。市販のグアニル酸及び/又はグアニル酸塩としては、例えば、グアノシン5'- 一リン酸二ナトリウム(東京化成工業株式会社)、グアノシン5'- 一リン酸二ナトリウムn水和物(富士フィルム和光純薬株式会社)、CJTIDE GMP(シージェイジャパン株式会社)等が挙げられる。特にCJTIDE GMP(シージェイジャパン株式会社)を用いることが好ましい。これらの「グアニル酸及び/又はグアニル酸塩」は一種以上であればよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
また、増粘多糖類としては、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、脱アシル型ジェランガム、寒天、κカラギナン、ιカラギナン、λカラギナン、HMペクチン、LMペクチン、シロキクラゲ多糖体、タラガム、ローカストビーンガム、グアーガム及びデンプン等を使用することができ、これらを二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0015】
例えば、キサンタンガムとしてはCX90(Cargill社)等、ネイティブジェランガムとしてはケルコゲルHM(DSP五協フード&ケミカル株式会社)等、脱アシル型ジェランガムとしてはケルコゲル(DSP五協フード&ケミカル株式会社)等、寒天としてはS-7(伊那食品工業株式会社)等、κカラギナンとしてはCG30、ME22(いずれもCargill社)等、ιカラギナンとしてはKHG30T(Cargill社)等、λカラギナンとしてはMM30(Cargill社)等、ペクチンとしてはLMペクチン(ユニテックフーズ株式会社)等、シロキクラゲ多糖体としてはトレメルガム(ユニテックフーズ株式会社、Tremella fuciformis由来、100℃以下のお湯で抽出して製造)等、タラガムとしてはSP175(UNIPEKTIN社)等、ローカストビーンガムとしてはL175HQ(UNIPEKTIN社)等、グアーガムとしてはGHK175(UNIPEKTIN社)等、デンプンとしてはC*PolarTex-Instant(商標)(Cargill社)等が挙げられる。
【0016】
さらにその他の成分としてデキストリン、乳酸カルシウムや塩化カリウム等の塩類等を含むものであってもよい。例えば、デキストリンとしては、パインデックス#2(松谷化学工業株式会社)等が挙げられ、乳酸カルシウムとしては乳酸カルシウム(扶桑化学工業株式会社)、塩化カリウムとしてはスーパーカリ(赤穂化成株式会社)等が挙げられる。
【0017】
本発明の「離水抑制剤」の剤形はいずれの形であってもよく、粉末、顆粒、散剤等の固形のグアニル酸及び/又はグアニル酸塩やその他の成分をそのまま「離水抑制剤」としてもよく、これらの固形のグアニル酸及び/又はグアニル酸塩やその他の成分を水等の溶媒に溶かして液体の「離水抑制剤」として用いても良い。また、ゲルやゾルの「離水抑制剤」としても良い。
さらに本発明の「離水抑制剤」はグアニル酸及び/又はグアニル酸塩やその他の成分を混合したものでもよく、それぞれを別々に分けて、キットとしたものでも良い。
【0018】
本発明の「離水抑制剤」は、飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、工業製品等の製造に利用でき、対象となる製品からの離水が抑えられる用量の範囲で加えればよく、例えば、対象となる製品100gに対して0.03~3g添加することが好ましい。
対象となる製品が飲食品であり、もやし炒めの場合は、もやし200gに対してグアニル酸及び/又はグアニル酸塩が0.06~0.6gとなるように加えることが好ましく、さらに増粘多糖類を組み合わせた「離水抑制剤」である場合は、増粘多糖類が0.06~0.4gとなるように加えることが好ましい。
【0019】
また、対象となる製品が水を主成分とするゲルである場合は、水100gに対して、グアニル酸及び/又はグアニル酸塩が0.1~3.0w/w%となるように加えることが好ましく、さらに増粘多糖類を組み合わせた「離水抑制剤」である場合は、増粘多糖類が0.1~1.0w/w%となるように加えることが好ましい。
【0020】
対象となる製品が甘酢大根おろしの場合は、甘酢大根おろし100gに対してグアニル酸及び/又はグアニル酸塩が0.4~2.5gとなるように加えることが好ましく、さらに増粘多糖類を組み合わせた「離水抑制剤」である場合は、増粘多糖類が0.08~0.17gとなるように加えることが好ましい。
そして、対象となる製品がツナマヨネーズの場合は、ツナマヨネーズ100gに対してグアニル酸及び/又はグアニル酸塩が0.5~3.0gとなるように加えることが好ましく、さらに増粘多糖類を組み合わせた「離水抑制剤」である場合は、増粘多糖類が0.1~0.2gとなるように加えることが好ましい。
【0021】
本発明の「離水抑制剤」を飲食品用とする場合、例えば、ゼリー、ムース、ババロア、プリン、グミキャンディー、ヨーグルト、マシュマロ、水ようかん、ファットスプレッド、レトルト食品(カレー、ハンバーグ、非常食等)、冷凍食品(餃子、小籠包、シュウマイ、ハンバーグ、クリームコロッケ、メンチカツ等)、レンジ調理用のチルド食品(麺類、汁物、総菜等)、生鮮食品(青果物、魚介類等)、美容食品、チルド食品等、又はこれらに添加するものとして用いることができる。
【0022】
本発明の「離水抑制剤」を飲食品用に使用する場合は、対象となる製品のpHがpH8.0以下となるように加えることが好ましく、特にpH6.0以下となるように加えることが好ましい。
【0023】
本発明の「飲食品の製造方法」や「飲食品の食感改善方法」は、飲食品の製造にあたり、本発明の「離水抑制剤」を加える工程を含む方法であればよい。離水抑制剤は原料を混合する段階で加えても良く、製造工程の途中で加えても良い。飲食品の調理が完了した段階で最後に振りかける等して加えても良い。
「離水抑制剤」がグアニル酸及び/又はグアニル酸塩と増粘多糖類等のその他の成分からなる場合は、異なる工程の時にそれぞれ加えても良い。また、粉末等の固形の「離水抑制剤」をそのまま加えても良く、水等の溶液に溶かして加えても良い。
【0024】
本発明の「飲食品の食感改善方法」における「飲食品の食感改善」とは、増粘多糖類の添加によるまとまり感、ぬめりやねとつき等の発生を抑制することで、「離水抑制剤」を加えていても、「離水抑制剤」を加えていない、通常の製造方法によって製造された飲食品と同等の食感を与え得ることや、旨味を向上すること等を指す。
即ち、製造対象がもやし炒めである場合は、「離水抑制剤」を加えているにもかかわらず、通常の製造方法によって製造されたもやし炒めと同等の食感を与え得る。
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明の具体的な実施態様について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0026】
本願明細書の実施例において、別途、記載がない限りは次の試料をそれぞれ使用した。
1.グアニル酸塩:JTIDE GMP(シージェイジャパン株式会社)(以下、単にGMPと示す場合がある)
【0027】
2.増粘多糖類
1)キサンタンガム:CX90(Cargill社)
2)ネイティブジェランガム:ケルコゲルHM(DSP五協フード&ケミカル株式会社)
3)脱アシル型ジェランガム:ケルコゲル(DSP五協フード&ケミカル株式会社)
4)寒天:S-7(伊那食品工業株式会社)
5)κカラギナン:CG30(Cargill社)
6)ιカラギナン:KHG30T(Cargill社)
7)λカラギナン:MM30(Cargill社)
8)LMペクチン(ユニテックフーズ株式会社)
9)シロキクラゲ多糖体:トレメルガム(ユニテックフーズ株式会社)
10)タラガム:SP175(UNIPEKTIN社)
11)ローカストビーンガム:L175HQ(UNIPEKTIN社)
12)グアーガム:GHK175(UNIPEKTIN社)
13)デンプン:C*PolarTex-Instant(商標)(Cargill社)
【0028】
3.その他の成分
1)デキストリン:パインデックス#2(松谷化学工業株式会社)
2)乳酸カルシウム(扶桑化学工業株式会社)
【0029】
[実施例1]
離水抑制剤の調製
1.グアニル酸塩を含む離水抑制剤
A:グアニル酸塩(粉末)をそのまま離水抑制剤Aとした。
【0030】
2.増粘多糖類を含む離水抑制剤
B:グアニル酸塩とキサンタンガムを組み合わせて離水抑制剤Bとした。
C:グアニル酸塩とネイティブジェランガムを組み合わせて離水抑制剤Cとした。
D:グアニル酸塩と脱アシル型ジェランガムを組み合わせて離水抑制剤Dとした。
E:グアニル酸塩と寒天を組み合わせて離水抑制剤Eとした。
F:グアニル酸塩とκカラギナンを組み合わせて離水抑制剤Fとした。
G:グアニル酸塩とιカラギナンを組み合わせて離水抑制剤Gとした。
H:グアニル酸塩とλカラギナンを組み合わせて離水抑制剤Hとした。
I:グアニル酸塩とLMペクチンを組み合わせて離水抑制剤Iとした。
J:グアニル酸塩とシロキクラゲ多糖体を組み合わせて離水抑制剤Jとした。
K:グアニル酸塩とタラガムを組み合わせて離水抑制剤Kとした。
L:グアニル酸塩とローカストビーンガムを組み合わせて離水抑制剤Lとした。
M:グアニル酸塩とグアーガムを組み合わせて離水抑制剤Mとした。
N:グアニル酸塩とデンプンを組み合わせて離水抑制剤Nとした。
【0031】
3.デキストリンを含む離水抑制剤
A1:グアニル酸塩とデキストリンを組み合わせて離水抑制剤A1とした。
B1:グアニル酸塩、キサンタンガム及びデキストリンを組み合わせて離水抑制剤B1とした。
C1:グアニル酸塩、ネイティブジェランガム及びデキストリンを組み合わせて離水抑制剤C1とした。
D1:グアニル酸塩、脱アシル型ジェランガム及びデキストリンを組み合わせて離水抑制剤D1とした。
E1:グアニル酸塩、寒天及びデキストリンを組み合わせて離水抑制剤E1とした。
F1:グアニル酸塩、κカラギナン及びデキストリンを組み合わせて離水抑制剤F1とした。
G1:グアニル酸塩、ιカラギナン及びデキストリンを組み合わせて離水抑制剤G1とした。
H1:グアニル酸塩、λカラギナン及びデキストリンを組み合わせて離水抑制剤H1とした。
I1:グアニル酸塩、LMペクチン及びデキストリンを組み合わせて離水抑制剤I1とした。
J1:グアニル酸塩、シロキクラゲ多糖体及びデキストリンを組み合わせて離水抑制剤J1とした。
K1:グアニル酸塩、タラガム及びデキストリンを組み合わせて離水抑制剤K1とした。
L1:グアニル酸塩、ローカストビーンガム及びデキストリンを組み合わせて離水抑制剤L1とした。
M1:グアニル酸塩、グアーガム及びデキストリンを組み合わせて離水抑制剤M1とした。
N1:グアニル酸塩、デンプン及びデキストリンを組み合わせて離水抑制剤N1とした。
【0032】
4.乳酸カルシウムを含む離水抑制剤
A2:グアニル酸塩と乳酸Caを組み合わせて離水抑制剤A2とした。
B2:グアニル酸塩、キサンタンガム及び乳酸Caを組み合わせて離水抑制剤B2とした。
C2:グアニル酸塩、ネイティブジェランガム及び乳酸Caを組み合わせて離水抑制剤C2とした。
D2:グアニル酸塩、脱アシル型ジェランガム及び乳酸Caを組み合わせて離水抑制剤D2とした。
E2:グアニル酸塩、寒天及び乳酸Caを組み合わせて離水抑制剤E2とした。
F2:グアニル酸塩、κカラギナン及び乳酸Caを組み合わせて離水抑制剤F2とした。
G2:グアニル酸塩、ιカラギナン及び乳酸Caを組み合わせて離水抑制剤G2とした。
H2:グアニル酸塩、λカラギナン及び乳酸Caを組み合わせて離水抑制剤H2とした。
I2:グアニル酸塩、LMペクチン及び乳酸Caを組み合わせて離水抑制剤I2とした。
J2:グアニル酸塩、シロキクラゲ多糖体及び乳酸Caを組み合わせて離水抑制剤J2とした。
K2:グアニル酸塩、タラガム及び乳酸Caを組み合わせて離水抑制剤K2とした。
L2:グアニル酸塩、ローカストビーンガム及び乳酸Caを組み合わせて離水抑制剤L2とした。
M2:グアニル酸塩、グアーガム及び乳酸Caを組み合わせて離水抑制剤M2とした。
N2:グアニル酸塩、デンプン及び乳酸Caを組み合わせて離水抑制剤N2とした。
【0033】
[実施例2]
もやし炒めの製造
もやし、サラダ油、食塩及び表1に記載の各離水抑制剤を用いて、次の手順ア又は手順イによりもやし炒めを調理した。比較として離水抑制剤を加えないもやし炒め(比較例a、b)も調理した。
〔手順ア〕
1.フライパンにサラダ油(8.0g)を計量し、IH(Panasonic、KZ-PH31)の中火で1分間余熱した。
2.上記1のフライパンにもやし(200g)を入れ、菜箸で混ぜながら3分間加熱した。
3.上記2のフライパンに食塩(2.0g)と各離水抑制剤を入れ、さらに1分間加熱した。
4.上記3において調製されたもやし炒めを-40℃、2分の条件で急速冷凍した。
〔手順イ〕
1.沸騰させた水にもやし(200g)を入れた。
2.上記1のもやしの周囲の湯温が85℃に到達した後、1分間保持した。
3.上記2のもやしをザルにあげて流水冷却した。
4.上記3のもやしの水気を切り計量した。
5.ステンレスボウルに油(8.0g)を図りとり、上記4のもやしを入れた。
6.上記5に各離水抑制剤と食塩(2.0g)をふりかけて全体を和えた。
7.上記6をビニール袋に入れて密封冷蔵保存した。
【0034】
離水抑制剤を加えたもの及び比較例の離水率を次の式1により求め、結果を表1に示した。
ここで、常温時の離水量とは、急速冷凍(手順ア)又は密封冷蔵保存(手順イ)した後、一晩経過した各もやし炒めを丸皿に移し、常温下で、丸皿に傾斜をつけて15分間静置した際の丸皿の下部に溜まった離水の量(g)のことを指す。
また、加熱時の離水量とは、上記のように常温時の離水量を測定した後に、各もやし炒めを電子レンジ(HOSHIZAKI HMN-18B)で加熱(600W、2分)し、再び丸皿に傾斜をつけて15分間静置した際の丸皿の下部に溜まった離水の量(g)のことを指す。
【0035】
【0036】
【0037】
表1に示されるように、グアニル酸塩を含む離水抑制剤Aを用いることにより離水が抑制されることが確認できた。また、グアニル酸塩とキサンタンガム等の増粘多糖類を含む離水抑制剤Bを用いることにより、離水が完全に抑制されることも確認できた。
【0038】
[実施例3]
水ゲルの製造(1)
表2に記載の組成となるように各離水抑制剤と水(100g)、クエン酸(適量)を60℃で混合し、得られた溶液をプリンカップ(80ml)に入れ、10℃で22±2時間静置して水ゲルを製造した。
即ち、水(100g)に各離水抑制剤を分散させ、電子レンジで沸騰直前まで加熱した。その後、攪拌しながら熱湯で溶解したクエン酸(適量)を加え、得られた溶液のpHを測定した後、各溶液をプリンカップ(80ml)に60g充填し、10℃で22±2時間静置して水ゲルを製造した。比較として、グアニル酸塩を含まない水ゲル(比較例c)も製造した。
各水ゲルのpHを表2に示した。また、各水ゲルの中心付近を円型(直径2.3cm)でくり抜いて10℃で4時間静置した後の離水量(g)を調べ、水ゲル全量(g)に対する離水率を算出し、
図1に示した。
【0039】
【0040】
その結果、
図1に示されるように、グアニル酸塩を含む離水抑制剤A、グアニル酸塩と寒天を含む離水抑制剤E、グアニル酸塩とκカラギナンを含む離水抑制剤Fを用いることにより、離水抑制剤を全く加えない場合、寒天又はκカラギナンのみを加えた場合(比較例c、f、g)と比べて明らかに離水が抑制されることが確認できた。
また、グアニル酸塩とネイティブ型ジェランガム又は脱アシル型ジェランガムを含む離水抑制剤C、Dを用いた場合も同様に離水が抑制されることが確認できた。
【0041】
[実施例4]
水ゲルの製造(2)
実施例3と同様の方法により、表3に記載の組成となるように各離水抑制剤と水を60℃で混合し、得られた溶液を20℃で一晩静置して水ゲルを製造した。比較として、グアニル酸塩を含まず、LMペクチンのみを含む水ゲル(比較例h)も製造した。
【0042】
得られた各水ゲルの離水の程度をろ紙法により調べた。
即ち、ろ紙上に直径3.9cm(内径3cm)、高さ1cmの円筒リングを置き、各水ゲルを9g乗せて30分室温で静置した。その後、ろ紙に吸われた離水円の直径を2方向で測定し、その平均値(染込円直径)からOリングの直径を引いた値を離水値とした。表3に各水ゲルの離水値とpHを示した。
【0043】
【0044】
LMペクチンのみを用いた水ゲルは元々離水が少ない水ゲルであるが、このようなLMペクチンのみを用いた水ゲルよりもさらに、表3及び
図2に示されるように、グアニル酸塩とιカラギナンを組み合わせた離水抑制剤Gや、これにさらに乳酸Caを加えた離水抑制剤G2を用いることで、水ゲルからの離水が明らかに抑制されることが示された。
【0045】
[実施例5]
水ゲルの製造(3)
グアニル酸塩3.0w/w%、増粘多糖類としてキサンタンガム、λカラギナン、シロキクラゲ多糖体、タラガム、ローカストビーンガム又はグアーガムを0.1w/w%含む離水抑制剤B、H、J~Mをそれぞれ用いて、実施例3と同様の方法により水ゲルを製造した。
各水ゲルの中心付近を円型(直径2.3cm)でくり抜き、10度で4日間静置した後、離水の程度を目視にて観察した結果、いずれの水ゲルにおいても離水は全く見られなかった。
【0046】
[実施例6]
飲食品(甘酢大根おろし)の製造
甘酢大根おろし(大根おろし82.30g、食塩1.24g、砂糖8.23g、酢8.23g)を調製し、表4に記載の配合割合となるように離水抑制剤A、A1、B1をそれぞれ加えて本願発明の甘酢大根おろしとした。比較として離水抑制剤を加えない甘酢大根おろし(比較例i)も製造した。
【0047】
各甘酢大根おろしを4℃で一晩静置した後、茶こし(80号、40メッシュ))に入れ、300mlのトールビーカーに乗せて約45分間水切りを行い、得られた離水の量を調べ、pHを測定した。
各甘酢大根おろしの製造時の全重量(g)あたりの離水量(g)を離水率(%)とし、pHとともに表4に示した。
【0048】
【0049】
表4に示されるように、グアニル酸塩を含む離水抑制剤A、グアニル酸塩とデキストリンを組み合わせた離水抑制剤A1や、これにさらにキサンタンを加えた離水抑制剤B1を用いることで、離水抑制剤を全く加えない場合(比較例i)と比べて明らかに離水が抑制されることが確認できた。
キサンタンガムとデキストリンを組み合わせたものを加えた場合も離水が抑制されることが確認できたが、ぬめりが強く、もったりとしてまとまり感のある食感となるため、甘酢大根おろしとして好ましいとは言えなかった。一方、本願発明の離水抑制剤を加えた場合は甘酢大根おろしとして好ましい食感であった。
【0050】
[実施例7]
飲食品(ツナマヨネーズ)の製造
ツナマヨネーズ(ツナ43.0g、マヨネーズ50.0g、めんつゆ6.7g、食塩0.3g)を調製し、表5、6に記載の配合割合となるように離水抑制剤A、A1、B1、J1をそれぞれ加えて本願発明のツナマヨネーズとした。比較として離水抑制剤を加えないツナマヨネーズ(比較例j)も製造した。
【0051】
各ツナマヨネーズを4℃で一晩静置した後、ろ紙法により離水の程度を調べた。
即ち、ろ紙上に内径3cm、高さ1cmの円筒リングを置き、各ツナマヨネーズを10g詰めて保形し15分静置した後、ろ紙に吸われた離水円の直径を2方向で測定し、その平均値(染込円直径)を離水値(mm)とした。離水測定後、各ツナマヨネーズのpHを測定し、離水の程度とともに表5、6に示した。
【0052】
【0053】
【0054】
表5、6に示されるように、グアニル酸塩を含む離水抑制剤A、グアニル酸塩とデキストリンを組み合わせた離水抑制剤A1、これにさらにキサンタンを加えた離水抑制剤B1及びグアニル酸塩、シロキクラゲ多糖体及びデキストリンを組み合わせた離水抑制剤J1を用いることにより、離水抑制剤を全く加えない場合(比較例j)と比べて明らかに離水が抑制されることが確認できた。
また、いずれの離水抑制剤を用いた場合も食感に影響はなく、旨味が増してツナマヨネーズとして好ましい食感であった。
本発明によって、従来の離水抑制剤とは異なり、まとまり感、ぬめりやねとつき等が生じない、新規の離水抑制剤の提供が可能となった。本発明の離水抑制剤は増粘多糖類を含む場合であっても、不要な物性を製品に与えないことから、飲食品、医薬品、工業製品等の製造に幅広く活用でき、飲食品の食感改善等を目的として使用することもできる。