(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152573
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】印刷可能マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 D
A41D13/11 H
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055395
(22)【出願日】2021-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年6月1日有限会社倉谷製帽所(栃木県宇都宮市大通り3-5-17HATビル1F)で販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年10月25日ウェブサイトに掲載 https://www.kurataniseibousyo.com/https://www.facebook.com/profile.php?id=100002702904610
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年10月25日ウェブサイトに掲載 https://www.facebook.com/profile.php?id=100002702904610
(71)【出願人】
【識別番号】398054683
【氏名又は名称】有限会社倉谷製帽所
(74)【代理人】
【識別番号】100160657
【弁理士】
【氏名又は名称】上吉原 宏
(72)【発明者】
【氏名】倉谷 昌良
(57)【要約】
【課題】
本発明は、飛沫の飛散防止やウイルス等の侵入を遮るのは勿論のこと、息苦しさの軽減、肌荒れ防止、顔へのフィット性、耳掛け紐による痛みの抑止、更にはデザイン性等々、これら様々な問題点を解決するマスクの技術提供を課題とするものである。
【解決手段】
本発明は、印刷可能とするマスクであって、口及び鼻を被覆する被覆体と、耳掛け部とからなり、前記被覆体の外側面にポリエステル製のドライ素材を用いることで速乾性と通気性を備えると供に前記外側面に昇華転写印刷を可能とし、内側面に無染色のオーガニックコットン素材を用いることで良好な肌触り性を備えることを手段とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷可能とするマスクであって、
口及び鼻を被覆する被覆体(10)と、
耳掛け部(20)とからなり、
前記被覆体(10)の外側面(11)にポリエステル製のドライ素材(12)を用いることで速乾性と通気性を備えると供に前記外側面(11)に昇華転写印刷(30)を可能とし、
内側面(13)に無染色のオーガニックコットン素材(14)を用いることで良好な肌触り性を備えることを特徴とする印刷可能マスク(1)。
【請求項2】
前記耳掛け部(20)が綿素材(21)を用いた丸紐(22)を用い、前記被覆体(10)の耳側後方の両側部に設けられる紐通し部(23)に前記丸紐(22)を通し上下から出た前記丸紐(22)を引き解け結び(24)により長さを自由に調節可能とする耳掛け部長さ調整機構(25)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の印刷可能マスク(1)。
【請求項3】
前記外側面(11)のドライ素材(12)の一部または全部に昇華転写印刷(30)されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷可能マスク(1)。
【請求項4】
前記被覆体(10)の縫製部(40)に用いる縫製糸(41)にポリエステル繊維を素材とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の印刷可能マスク(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクの技術に関し、詳しくは、オーガニックコットン素材による肌への優しさと、ポリエステルドライ素材の持つ吸汗速乾性並びに昇華転写印刷可能な性質を生かし、且つ金具やゴムを使うことなく耳に負担の少ない綿素材の丸紐だけを使用した調整機能付きの耳掛け部を採用したマスクの技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2020年から猛威を振るっている新型コロナウイルスのように、まだワクチンや特効薬が十分とは言い難いウイルス性感染症の流行等、予想しない事態が起きることがある。そのような事態が起こったときの対策として、外出時のマスク着用が有効である事は言うまでもない。しかしながら、外出時に毎日マスクを長時間着用するとなると様々な問題が生じることとなる。即ち、肌荒れや耳掛け部の痛み、廃棄または洗濯などである。そこで、このマスクに関しては様々な素材のものや形などが工夫され、これらの問題に対応しているという現状にある。例えば、飛沫の飛散防止やウイルス等の侵入を遮るのは勿論であるが、息苦しさの軽減、肌荒れ防止、顔へのフィット性、耳掛け紐による痛みの抑止、更にはデザイン性等々、これら様々な点が要求され、これらを全て解決するマスクの技術提供は急務といえる。
【0003】
また、マスクの着用は顔の表情を隠してしまうことから、気持ちが疲弊するという問題もある。この点について、奇麗な模様や図柄などにより華やかさや遊び心を与えたいところである。しかし、マスクの被覆体表面部分に印刷物を貼り付けるものでは濾過性能が低下してしまい、マスクとしての本来的な機能を損ね、呼吸自体もし難くなってしまう。
【0004】
なお、マスクの素材を大別すると、布マスク、不織布マスク、ウレタンマスクの3種類となり、それぞれに長所と短所を有するが、特に新型コロナウイルスやインフルエンザでは飛沫による感染が問題となっており、布やウレタンで作られたマスクに比べて、不織布マスクの方が、飛沫の飛散を抑える効果が高い傾向にあることが、国立研究開発法人「理化学研究所」(理研)によるスーパーコンピューター「富岳」を使ったシミュレーション結果に出ている。しかし、不織布マスクは使い捨てによる使用ができることから衛生的である反面、洗濯により繰り返しの使用ができず、リサイクルもできない。さらに、不織布マスクは自然に分解しないため、大量に廃棄されることに起因する海洋汚染などの環境問題も発生している。他方、ウレタンマスクは、デザイン性やフィット性が優れるものの、吐き出し飛沫量が50%、吸い込み飛沫量が60~70%と、布マスクの吐き出し飛沫量18%、吸い込み飛沫量55~65%と比較しても、飛沫感染の問題に関しては、ウレタンマスクは布マスクよりも機能的に低いことも分かっている。
【0005】
また、前記の肌荒れ等の問題に対しては、被覆体に肌に優しいオーガニックコットンを採用したマスクも登場している。しかし、オーガニックコットンに直接美しい印刷を施すことはできない。
【0006】
このような問題に鑑み、従来から、マスクに関しては種々の技術提案がなされている。例えば、発明の名称を「マスクの取り替え当て布」とする技術が開示されている(特許文献1参照)。具体的には、「不織布のプリーツ型マスク上辺付近の隙間をなくし、女性の口の部分に口紅が付くことで不快になることを防止する不織布のプリーツ型マスクに装着する当て
布を提供する。」ことを課題とし、解決手段としては、「鼻と口を被覆する立体の当て布であって、上部付近の中央部分と両端部分、に両面テープを貼ってなり、不織布のプリーツ型マスクの顔面覆い部の上辺付近の位置に装着して用いる。当て布は、たて中心部分にハサミ入れ開くことで立体形状を有し、上部の縫い代の中に中央部分は除き、綿を詰めることで、不織布のプリーツ型マスクの顔面覆い部上辺と、当て布の隙間が解消できる。当て布の材質は、ダブルガーゼまたはオーガニックコットンとする」という発明が公開され公知技術となっている。係る発明は、不織布マスクに鼻、口に接する側に取り替え可能な当て布を装着するものであり、係る当て布にオーガニックコットンを使用することが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の技術は、当て布とマスクが別体であることから両面テープを装着する必要があるなど、利便性に欠ける点があるといえる。
【0007】
また、発明の名称を「衛生マスク」とする技術が開示されている(特許文献2参照)。具体的には、「マスク本体の正面部の全体に図柄部が表示されるようにして、衛生マスクの意匠性を高めること。」を課題とし、解決手段として、「マスク生地において、使用者が装着したときに前面に露出する正面部に、所定のキャラクタが描かれたキャラクタ部と、所定の形状が描かれた模様部とから成る図柄部を、例えば昇華転写によって設ける。このマスク生地の図柄部が、マスク本体の上下の縁部及び左右方向の側縁部を介して裏側に回り込むようにして折り畳み、その内側にフィルタを介装し、口当て布を取り付けるとともに、紐部材を取り付けて衛生マスクを形成する。」という発明が公開され公知技術となっている。しかしながら、特許文献2に記載の技術は、予めマスク生地に直接に図柄部が設けられていることから、縫製等を施すと係る部分の糸目が目立ってしまうという問題を残している。
【0008】
また、発明の名称を「マスクの耳掛け紐の調整装置」とする技術が開示されている(特許文献3参照)。具体的には、「マスクの耳かけ紐の長さ調整が容易となる耳かけ紐の調整装置を提供する。」ことを課題とし、解決手段として「既製品マスクの耳かけ紐に円筒形パイプの片側に耳かけ紐の逆行を防止する鋭角な切れ込みを設けて調整装置を形成する。すなわち、耳かけ紐を円筒形パイプに必要な長さを挿入し、押し出された紐の輪を内側から押し広げると、当該紐は鋭角な切れ込みに滑り落ち、その切れ込みの谷間に保持され逆行を防止する。また、押し出された紐の輪を鋭角な切れ込みの谷間と反対方向に引っ張ると、その保持の状態は外れて何度でもやり直しができる。」という発明が公開され公知技術となっている。しかしながら、特許文献3に記載の技術は、円筒形のパイプを用いて耳掛け紐の長さを調整可能とするものであり、係る円筒状パイプが肌に当たるなど、摩擦による違和感が考えられ、付け心地が良いとは言えず、肌に優しいとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-104875号
【特許文献2】登録実用新案3145499号
【特許文献3】登録実用新案3170683号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記問題点に鑑み、飛沫の飛散防止やウイルス等の侵入を遮るのは勿論のこと、息苦しさの軽減、肌荒れ防止、顔へのフィット性、耳掛け紐による痛みの抑止、更にはデザイン性等々、これら様々な問題点を解決するマスクの技術提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
また、本発明は、印刷可能とするマスクであって、口及び鼻を被覆する被覆体と、耳掛け部とからなり、前記被覆体の外側面にポリエステル製のドライ素材を用いることで速乾性と通気性を備えると供に前記外側面に昇華転写印刷を可能とし、内側面に無染色のオーガニックコットン素材を用いることで良好な肌触り性を備えることを手段とする。
【0012】
また、本発明は、前記耳掛け部が綿素材を用いた丸紐を用い、前記被覆体の耳側後方の両側部に設けられる紐通し部に前記丸紐を通し上下から出た前記丸紐を引き解け結びにより長さを自由に調節可能とする耳掛け部長さ調整機構を備えた構成であることを手段とすることもできる。
【0013】
また、本発明は、前記外側面のドライ素材の一部または全部に昇華転写印刷された構成であることを手段とすることもできる。
【0014】
また、本発明は、前記被覆体の縫製部に用いる縫製糸にポリエステル繊維を素材とする構成であることを手段とすることもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る印刷可能マスクによれば、被覆体の外側面にポリエステル製のドライ素材を用いることから、高い速乾性と通気性を備えるという優れた効果を発揮する。
【0016】
また、本発明に係る印刷可能マスクによれば、被覆体の外側面にポリエステル製のドライ素材を用いることから、外側面に印刷可能とする優れた効果を発揮する。
【0017】
また、本発明に係る印刷可能マスクによれば、内側面に無染色のオーガニックコットン素材を用いることから、良好な肌触り性を備え、顔の肌を荒らしにくいという優れた効果を発揮する。
【0018】
また、本発明に係る印刷可能マスクによれば、素材の特徴から皺が寄りにくくアイロンが不要で何度でも洗濯が可能であるという優れた効果を発揮する。
【0019】
また、本発明に係る印刷可能マスクにおいて、被覆体の縫製部に用いる縫製糸にポリエステル繊維を素材とする構成を採用した場合には係る縫製糸にも同時に染めることができるので図柄を綺麗に隅々まで創出することが可能となるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る印刷可能マスクの基本構成を説明する基本構成説明図である。
【
図2】本発明に係る印刷可能マスクの使用状態を説明する使用状態説明図である。
【
図3】本発明に係る印刷可能マスクの耳掛け部及び耳掛け部長さ調整機構を説明する構成説明図である。
【
図4】本発明に係る印刷可能マスクの縫製部の印刷状態を示す印刷状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、衛生・医療・医学等の分野で用いる布マスクに関し、詳しくは、素材感に特徴があり、被覆部本体の外側素材にスポーツウエア等に用いられているポリエステル100%の吸汗速乾ドライ素材を採用し、被覆部本体の内側素材に綿100%のオーガニックコットンを用い、耳掛け紐は綿素材の丸紐を引き解け結びにより長さを自由に調節可能に装着し、使用状態において該丸紐の一部が耳元から下側に垂れ下がるように配置され、係る構成と素材の特徴から発揮される質感・素材感との組合せにより、外側からは滑らか且つシャープな印象を与え、内側は暖かく且つ柔らかい素材感を与え、耳掛け紐が垂れ下がることで全体的にお洒落な印象を与えるという美観まで生じさせる印刷可能マスクとしたことを最大の特徴とするものである。以下、図面に基づいて各構成を説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る印刷可能マスク1の基本構成を説明する基本構成説明図であり、
図1(a)は本発明の基本構成となる各部の配置状態を示し、
図1(b)は、ドライ素材12を用いた外側面11とオーガニックコットン14素材を用いた内側面13との二重構造によって被覆体10が構成されていることを示す断面図である。
図2は、本発明に係る印刷可能マスクの使用状態を説明する使用状態説明図である。
【0023】
印刷可能マスク1は、印刷を可能とするマスクであって、口及び鼻を被覆する被覆体10と、耳掛け部20とからなり、前記被覆体10の外側面11にポリエステル製のドライ素材12を用いることで速乾性と通気性を備えると供に前記外側面11に昇華転写印刷30を可能とし、内側面13に無染色のオーガニックコットン素材14を用いることで良好な肌触り性等を兼ね備えることを基本構成とするものである。
【0024】
被覆体10は、口及び鼻を被覆する部材であり、形状は
図2に表したような所謂立体型とすることが好適であり、右側と左側で対象となる同一形状のものを縫製によって一体化する。被覆体10の外側面11にはポリエステル100%のドライ素材12を用い、内側面13には無染色のオーガニックコットン素材14を用いている。サイズについては数種類用意することが望ましい
【0025】
外側面11は、被覆体10に速乾性と通気性を備えると供に、昇華転写印刷30を施すことを可能とする部分であり、ポリエステル100%のドライ素材12によって構成される。
【0026】
ドライ素材12は、ポリエステル100%であり、スポーツウェアなどに用いられる素材である。また、唯一、昇華転写印刷30を可能とする生地である。本発明に係る印刷可能マスク1では、被覆体10の外側面11に用いられ、オーガニックコットン素材14の内側面13と縫製されて被覆体10を構成する。
【0027】
内側面13は、被覆体10の内側面13に、無染色のオーガニックコットン素材14を用いることで良好な肌触り性を備えるものである。
【0028】
オーガニックコットン素材14は、オーガニック農産物等の生産方法についての基準に従って2~3年以上のオーガニック農産物等の生産の実践を経て、認証機関に認められた農地で、栽培に使われる農薬・肥料の厳格な基準を守って育てられた綿花のことであり、通常のオーガニックコットン製品は、紡績、織布、ニット、染色加工、縫製などの製造工程を経て最終製品となる。この全製造工程を通じて、オーガニック原料のトレーサビリティーと含有率がしっかりと確保され、化学薬品の使用による健康や環境的負荷を最小限に抑え、労働の安全や児童労働など社会的規範を守って製造したものを、オーガニックコットン製品とう。ここで、本発明に係る印刷可能マスク1では、染色工程を有さない無染色のオーガニックコットン素材14を用いるものとする。係るオーガニックコットン素材14を内側面13に用いることで、柔らかい肌触りを実現すると供に敏感な肌の方でも荒れることを少なくできるというものである。本発明に係る印刷可能マスク1では、被覆体10の内側面13に用いられ、ドライ素材12で構成される外側面11に縫製されて被覆体10を構成する。
【0029】
耳掛け部20は、被覆体10を口や鼻の周りに配置させて保持するための部材である。一般的には丸ゴム等を用いるのが通常であるが、丸ゴムであると伸縮力が耳に作用するため、長時間の使用によると耳が痛くなるといった問題がある。そこで、本発明では、伸縮力が作用しない耳掛け部20とした。具体的には、丸紐22を用い紐通し部23に挿通し、該挿通により下部から出てきた丸紐22と上部から出てきた丸紐22を引きかけ結びし、両端に止め結びや、八の字結び等によりこぶを作りストッパーとすることによって耳を引っ張ることなく被覆体10を保持する構成としたものである。
【0030】
綿素材21は、丸紐22の素材に用いられるものである。通常、綿といえば、繊維が絡まりあって塊の状態になっているものの総称を指し、綿の種類には天然繊維と合成繊維に大別できるが、本発明に係る印刷可能マスク1で用いる丸紐22の素材としては、アオイ科ワタ属から取られた天然繊維の木綿を用いる。係る天然繊維は、主原料が石油の、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタンなどの合成繊維と比べて、肌に優しく、かゆみ、かぶれ、湿疹、接触性皮膚炎など、肌荒れや肌トラブルが少ないといわれている。
【0031】
丸紐22は、丸型断面の綿素材21を用い、紐通し部23に挿通され、該挿通により、下部から出てきた丸紐22と上部から出てきた丸紐22を引きかけ結びしすることによって被覆体10を口や鼻の周りに配置させて保持するための部材である。
【0032】
紐通し部23は、被覆体10の両側後方に位置し、丸紐22を上下に挿通するための通し穴であり、耳掛け部長さ調整機構25により紐の長さを調整することによって、係る紐通し部23が伸縮し、顔の形状にフィットさせることを可能とする。
【0033】
引き解け結び24は、丸型断面の綿素材21を用いた丸紐22を紐通し部23に挿通し、該挿通により、紐通し部23の下部から出てきた丸紐22の先端部付近において、まずは丸紐22をクロスさせて輪を作り、先端を折り返し、折り返した部分を輪の中に通し、輪に通して折り返したループ部分と丸紐22のもと側を引っ張れば、引き解け結び24となる。
【0034】
耳掛け部長さ調整機構25は、丸型断面の綿素材21を用いた丸紐22を紐通し部23に挿通し、該挿通により、紐通し部23の下部から出てきた丸紐22と上部から出てきた丸紐22のうち、下部から出てきた方の丸紐22を引き解け結び24し、係る引き解け結び24によってできるループ部分に上部から出てきたもう一方の丸紐22を通すことによって耳掛け部20の長さを調整可能として被覆体10と耳との間で張力を調整する。
【0035】
昇華転写印刷30は、予め専用シートに昇華インクによるデザインをプリントした後、熱をかけることで昇華インクを気化させ、密着させたポリエステル生地にデザインを染み込ませる方法の印刷手段である。一般的なフルカラー転写プリントでは熱でデザインを貼り付けるのに対し、昇華転写印刷30は生地に染めるという印刷原理に違いがある。係る違いは本発明に係るマスクのように濾過性が要求される物品では、その性能に大きく影響を受ける。従って、一般的なフルカラー転写では口や鼻付近には印刷できず、これらを避けた位置にワンポイントのようにしか印刷できないものであったが、昇華転写印刷30は生地を染めるものであることから、被覆体10の全面に印刷することができる。また、シルクスクリーン印刷では版代に大きな費用がかかり印刷する数が少ない場合はコスト高になるのに対し、昇華転写印刷30では、版を要さず一枚の印刷から低価格で提供できるという有利な面があるものである。
【0036】
縫製部40は、
図1、
図2及び
図4に破線で示した部分であり、被覆体10において外側面11となるポリエステル製のドライ素材12と、内側面13となるオーガニックコットン素材14による二重構造を一体化するため、及び被覆体10を立体的とするため、並びに紐通し部23を形成するために、ポリエステル製の縫製糸41を用いて縫製する部分である。
【0037】
縫製糸41は、ポリエステル素材の糸状繊維である。縫製糸41にポリエステルを用いることで、昇華転写印刷30を施した場合に、縫製糸41も染められることから、縫製部40における糸目が目立たず、美しい転写が隅々まで可能となる。
【0038】
図3は、本発明に係る印刷可能マスク1の耳掛け部20及び耳掛け部長さ調整機構25を説明する構成説明図である。
図3に示すとおり、耳掛け部20は、丸型断面の綿素材21を用いた丸紐22を紐通し部23に挿通し、該挿通により、紐通し部23の下部から出てきた丸紐22と上部から出てきた丸紐22から構成される。そして、紐通し部23の下部から出てきた丸紐22の先端部付近において、まずは丸紐22をクロスさせて輪を作り、先端を折り返し、折り返した部分を輪の中に通し、輪に通して折り返したループ部分と丸紐22のもと側を引っ張れば、引き解け結び24となり、係る引き解け結び24によってできるループ部分に上部から出てきたもう一方の丸紐22を通すことによって耳掛け部20の長さを調整可能とすることによって、紐通し部23が伸縮し、顔の形状にフィットさせるとともに、被覆体10と耳との間での張力を調整する。
【0039】
図4は、本発明に係る印刷可能マスク1の縫製部40の印刷状態を示す印刷状態説明図であり、
図4(a)は、縫製部40と昇華転写印刷30とが重なる部分と重ならない部分との印刷状態を示し、
図4(b)は、その拡大図である。本発明に係る印刷可能マスク1の縫製部40に使用する縫製糸41は被覆体10の外側面11と同じポリエステル素材の繊維糸を用いるため、昇華転写印刷30と重なる部分は染色され、重ならない部分は染色されない。従って糸目が目立たず縁まで綺麗な印刷が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る印刷可能マスクによれば、飛沫によるウイルス感染を十分に防ぐ衛生マスクとしての機能を備えていることのみならず、鮮やかな印刷が施されたマスクを提供でき、マスク使用による疲弊した雰囲気を明るくすることもでき、更には、肌に優しく繰り返して使用できることからも経済的であるなど、多くの利点を有しており、飛沫感染防止を促進し、多種多様な接客業や一般家庭においての広い利用が期待できるので、産業上利用可能性は高いものと思料される。
【符号の説明】
【0041】
1 印刷可能マスク
10 被覆体と、
11 外側面
12 ドライ素材
13 内側面
14 オーガニックコットン
20 耳掛け部
21 綿素材
22 丸紐
23 紐通し部
24 引き解け結び
25 耳掛け部長さ調整機構
30 昇華転写印刷
40 縫製部
41 縫製糸
【手続補正書】
【提出日】2021-10-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷可能とするマスクであって、
口及び鼻を被覆する被覆体(10)と、
耳掛け部(20)とからなり、
前記被覆体(10)の外側面(11)にポリエステル製のドライ素材(12)を用いることで速乾性と通気性を備えると供に前記外側面(11)の一部又は全部に昇華転写印刷(30)がされ、
前記被覆体(10)の縫製部(40)に用いる縫製糸(41)にポリエステル繊維を素材とし、すべての前記縫製部(40)が縫製された後に前記昇華転写印刷(30)を行い、
内側面(13)に無染色のオーガニックコットン素材(14)を用いることで良好な肌触り性を備え、
前記耳掛け部(20)に綿素材(21)を用いた丸紐(22)を用い、前記被覆体(10)の耳側後方の両側部に設けられる紐通し部(23)に前記丸紐(22)を通し、上下から出た前記丸紐(22)の下側一箇所のみを引き解け結び(24)することで長さを自由に調節可能とする耳掛け部長さ調整機構(25)を備えたことを特徴とする印刷可能マスク(1)。