(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152586
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】油圧ポンプ、及び、当該油圧ポンプを備える建設機械
(51)【国際特許分類】
F04D 29/24 20060101AFI20221004BHJP
F04D 29/00 20060101ALI20221004BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20221004BHJP
H02K 7/18 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F04D29/24 A
F04D29/24 D
F04D29/00 B
E02F9/00 Z
H02K7/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055413
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】山形 拓也
【テーマコード(参考)】
3H130
5H607
【Fターム(参考)】
3H130AA04
3H130AB22
3H130AB47
3H130AC03
3H130AC08
3H130BA69C
3H130BA69H
3H130CA21
3H130CB01
3H130DA02Z
3H130DF00Z
3H130EA07A
3H130EA07C
3H130EA07D
3H130EA07H
5H607AA02
5H607BB02
5H607BB07
5H607CC01
5H607CC05
5H607DD03
5H607FF22
(57)【要約】
【課題】発電機能を持たせつつ放熱性の向上を図る油圧ポンプを提供する。
【解決手段】本発明の油圧ポンプ(5)は、ケーシング(7)と、吸入ポート(26)、入口側油路(9)、及び吐出ポート(10)を含むブロックポート(11)と、ケーシング及びブロックポートに回転可能に支持されるシャフト(12)と、シャフトに相対回動不能に結合され、シリンダ部(14a)を有するロータ(14)と、シャフトの回転に伴って回転することでシリンダ部に作動油を送り込むインペラ(8)と、シャフトの回転に伴って軸線周りに回転しつつ軸線方向に往復運動するようにシリンダ部に収容され、シリンダ部に作動油を吸入し、吐出ポートに作動油を圧送するピストン(13)と、を備え、インペラに取付けられた磁性体(28)と、ブロックポート内においてシャフトを取り囲むように配置されて磁性体に磁気的に接続された導電性のコイル(23)と、を含む発電部(20)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有するケーシングと、
作動油の入口である吸入ポート、前記吸入ポートに接続された入口側油路、及び、前記作動油の出口である吐出ポートを含んで構成され、前記ケーシングに取付けられて前記内部空間を覆うブロックポートと、
前記ケーシング及び前記ブロックポートに回転可能に支持され、前記内部空間を通って延びているシャフトと、
前記入口側油路と連通するシリンダ部を有し、前記シャフトに相対回動不能に結合されて前記内部空間に配置されたロータと、
前記ブロックポートに設けられ、前記シャフトの回転に伴って回転することで前記シリンダ部に前記作動油を送り込むように構成されたインペラと、
前記シャフトの回転に伴って前記シャフトの軸線周りに回転しつつ前記シャフトの軸線方向に往復運動するように前記シリンダ部に収容され、前記入口側油路から前記シリンダ部に前記作動油を吸入し且つ前記シリンダ部から前記吐出ポートに前記作動油を圧送するように構成されたピストンと、を備える油圧ポンプにおいて、
前記インペラに取付けられた磁性体と、前記ブロックポート内において前記シャフトを取り囲むように配置されて前記磁性体に磁気的に接続された導電性のコイルと、を含む発電部を備える、ことを特徴とする油圧ポンプ。
【請求項2】
前記インペラは、前記シャフトに相対回動不能に結合された中空円板状の台座と、前記台座から前記コイルの側に向かって立設された複数の羽と、を含んで構成されており、
前記磁性体は、前記羽の各々の少なくとも一部分として形成されている、ことを特徴とする請求項1記載の油圧ポンプ。
【請求項3】
前記ブロックポートは、前記ケーシングに取付けられる部分である本体部と、該本体部に取付けられる部分である取付部とを含んで構成されており、
前記取付部は、前記コイルを収容する収容室を有している、ことを特徴とする請求項1記載の油圧ポンプ。
【請求項4】
前記コイルは、前記シャフトの周囲に配列された複数のコイルセグメントを含み、
前記コイルセグメントの各々は、前記シャフトの軸線方向において前記磁性体の各々と対向するように配置されている、ことを特徴とする請求項3記載の油圧ポンプ。
【請求項5】
請求項1に記載の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプを駆動するエンジン及び作業装置が設けられた車体と、を備える建設機械であって、
前記油圧ポンプの前記シャフトの一方の端部は、前記エンジンに接続される接続部であり、
前記ブロックポートは、前記シャフトの他方の端部側に設けられていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ポンプに関し、特に発電機能を有する油圧ポンプに関する。また、本発明は、当該油圧ポンプを備える建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポンプ機能に加え発電機能を有する油圧ポンプが知られている。例えば特許文献1には、ガソリンエンジン等の原動機と、油圧ポンプと、当該原動機及び油圧ポンプの間に配置された発電組立体とを備える電動式油圧ポンプが記載されている。当該発電組立体は、輪状に巻かれた導線で形成されたコイルと、当該コイルの周りで回転する磁石を有するロータとを含んで構成されるマグネト発電機である。また、原動機は駆動シャフトを有し、この駆動シャフトは、油圧ポンプ及びロータの両方を駆動するように構成された適合ポンプシャフトに連結されている。このように、特許文献1に記載の電動式油圧ポンプは、原動機において発生した動力が、駆動シャフト及び適合ポンプシャフトを介して、油圧ポンプ及びマグネト発電機のロータに伝達されるように構成されている。そして、当該電動式油圧ポンプでは、原動機を駆動することで、油圧ポンプによるポンプ運転が行われつつ、マグネト発電機による発電が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発電機は稼働時に熱を発生することから、一般的に、発電機には冷却用ファン等が搭載されている。これにより、発電効率の低下が抑制されている。しかしながら、特許文献1に記載の電動式油圧ポンプでは、原動機及び油圧ポンプの両方が熱源となり、これら2つの熱源に挟まれるように発電組立体が配置されている。従って、当該電動式油圧ポンプでは、発電組立体を十分に冷却することができず、発電効率が低下する虞があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発電機能を持たせつつ放熱性の向上を図る油圧ポンプ、及び当該油圧ポンプを備える建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の油圧ポンプは、内部空間を有するケーシングと、作動油の入口である吸入ポート、前記吸入ポートに接続された入口側油路、及び、前記作動油の出口である吐出ポートを含んで構成され、前記ケーシングに取付けられて前記内部空間を覆うブロックポートと、前記ケーシング及び前記ブロックポートに回転可能に支持され、前記内部空間を通って延びているシャフトと、前記入口側油路と連通するシリンダ部を有し、前記シャフトに相対回動不能に結合されて前記内部空間に配置されたロータと、前記ブロックポートに設けられ、前記シャフトの回転に伴って回転することで前記シリンダ部に前記作動油を送り込むように構成されたインペラと、前記シャフトの回転に伴って前記シャフトの軸線周りに回転しつつ前記シャフトの軸線方向に往復運動するように前記シリンダ部に収容され、前記入口側油路から前記シリンダ部に前記作動油を吸入し且つ前記シリンダ部から前記吐出ポートに前記作動油を圧送するように構成されたピストンと、を備える油圧ポンプにおいて、前記インペラに取付けられた磁性体と、前記ブロックポート内において前記シャフトを取り囲むように配置されて前記磁性体に磁気的に接続された導電性のコイルと、を含む発電部を備える、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の建設機械は、上記油圧ポンプと、当該油圧ポンプを駆動するエンジン及び作業装置が設けられた車体と、を備え、前記油圧ポンプの前記シャフトの一方の端部は、前記エンジンに接続される接続部であり、前記ブロックポートは、前記シャフトの他方の端部側に設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の油圧ポンプは、インペラに取付けられた磁性体と、ブロックポート内においてシャフトを取り囲むように配置されて磁性体に磁気的に接続された導電性のコイルと、を含む発電部を備える。このように、発電部において熱源となるコイルは、作動油の通路(吸入ポート、入口側油路、吐出ポート)が設けられたブロックポート内に配置されている。このため、当該発電部で発電が行われる際にコイルにおいて発生した熱を、当該通路を通過する作動油に効率的に放出することができ、ひいては発電部における発電効率の低下を抑制することができる。
【0009】
また、本発明の建設機械によれば、油圧ポンプのシャフトの一方の端部は、エンジンに接続される接続部であり、ブロックポートは、シャフトの他方の端部側に設けられている。つまり、エンジン及びブロックポートはそれぞれ、シャフトの両端、即ちケーシングを挟んで互いに反対側に設けられている。このように、ブロックポートに設けられた作動油の通路(吸入ポート、入口側油路、吐出ポート)は、ケーシングを挟んでエンジンの反対側に設けられる。このため、当該通路を通過する作動油は、エンジンにおいて生じる熱の影響を受け難いため、発電時にコイルにおいて発生する熱を当該作動油に効率的に放出することができ、ひいては発電部における発電効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る油圧ポンプの全体構成を示す断面図である。
【
図2】
図1の油圧ポンプにおけるインペラの概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1の油圧ポンプの一部を分解して示す部分分解斜視図である。
【
図4】
図1の油圧ポンプにおけるコイルと磁性体との配置を模式的に示す側面図である。
【
図5】
図2のインペラの変形例を示す斜視図である。
【
図6】
図2のインペラの別の変形例を示す斜視図である。
【
図7】
図1の油圧ポンプが搭載された建設機械の全体構成を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<油圧ポンプ>
以下、図面に基づき本発明に係る油圧ポンプの実施形態について説明する。本実施形態では、斜板式の油圧ポンプ5を例に挙げて説明する。しかし、本発明に係る油圧ポンプとしては後述するインペラ8を有する態様のものであればよく、以下にて説明する斜板式の油圧ポンプ5に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る油圧ポンプ5の全体構成を示す断面図である。
図2は、
図1の油圧ポンプ5におけるインペラ8の概略構成を示す斜視図である。
図3は、
図1の油圧ポンプ5の一部を分解して示す部分分解斜視図である。
図4は、
図1の油圧ポンプ5におけるコイル23と磁性体28との配置を模式的に示す側面図である。
【0013】
図1に示すように、油圧ポンプ5は、ケーシング7と、ブロックポート11と、シャフト12と、ロータ14と、ピストン13と、インペラ8と、発電部20とを含んで構成されている。
【0014】
ケーシング7は、シャフト12の軸線方向(以下、単に「軸線方向」ともいう)において左側に開口した内部空間29を有している。ブロックポート11は、ケーシング7に軸線方向において左側から取付けられ、これにより内部空間29を覆うように構成されている。このように、ケーシング7にブロックポート11が取付けられることにより、油圧ポンプ5の外殻が形成されている。
【0015】
図1及び
図3に示すように、ブロックポート11は、ケーシング7に取付けられる部分である本体部11aと、当該本体部11aに取付けられる部分であるコイルケース25(取付部)とを含んで構成されている。ブロックポート11は、コイルケース25において、作動油の入口である吸入ポート26を有している。吸入ポート26は、コイルケース25において軸線方向に貫通して形成された孔である。また、ブロックポート11は、本体部11aにおいて、吸入ポート26に接続された入口側油路9、及び作動油の出口である吐出ポート10を有している。
【0016】
図1及び
図3に示すように、コイルケース25は、後述するコイル23を収容する複数の収容室25aを有している。収容室25aは、コイルケース25において軸線方向の左側に開口する有底筒状の複数の盲孔であり、吸入ポート26を取り囲むように形成されている。コイルケース25は、ボルト32によってカバー27とともに本体部11aに固定されており、カバー27と本体部11aとの間に配置されている。カバー27には、コイルケース25の吸入ポート26と連通するカバー貫通孔27aが形成されている。また、カバー27には、カバー貫通孔27aと連通するようにサクションホース30が取付けられている。これにより、コイルケース25の吸入ポート26は、サクションホース30及びカバー貫通孔27aを介して、作動油の供給源となる作動油タンク(図示せず)と連通する。また、吐出ポート10は、油圧ポンプ5の外部にある油圧機器に向けて延びる吐出管路31と連通している。
【0017】
図1に示すように、シャフト12は、ケーシング7及びブロックポート11に軸受け等を介して回転可能に支持されて、内部空間29を通って延びている。シャフト12の一方の端部は、ケーシング7から軸線方向に右側に突出する突出端12a(接続部)であり、シャフト12の左側(他方の端部)には、ブロックポート11が設けられている。シャフト12の突出端12aには、エンジン等の原動機が動力伝達機構等(いずれも図示せず)を介して連結される。
【0018】
図1に示すように、ロータ14は、スプライン結合によってシャフト12に相対回動不能に結合され、内部空間29に配置されている。これにより、ロータ14は、シャフト12の回転に伴って内部空間29において回転する。また、ロータ14は、本体部11aに形成された入口側油路9と連通するシリンダ部14aを有する。シリンダ部14aは、シャフト12の軸線方向に沿って形成された円筒状の孔であり、当該軸線周りに複数個配置されている。
【0019】
ピストン13は、シャフト12の回転に伴ってシャフト12の軸線周りに回転しつつシャフト12の軸線方向に往復運動するようにシリンダ部14a内に摺動可能に収容されている。具体的には、ピストン13は、シャフト12の回転即ちロータ14の回転に伴ってシリンダ部14a内を往復運動することで、吸入行程と吐出行程とを繰返すものである。ピストン13の吸入行程において、入口側油路9からシリンダ部14aに作動油が吸入される。ピストン13の吐出行程において、シリンダ部14aから吐出ポート10に作動油が圧送される。なお、ピストン13は、中空円筒状に形成されている。
【0020】
ピストン13の各々にはシュー35が取付けられている。具体的には、シュー35の各々は、ロータ14のシリンダ部14aから軸線方向の右側に突出するピストン13の端部に揺動可能に取付けられている。また、ケーシング7の内部空間29には、ピストン13及びシュー35と協働する斜板16が設けられている。当該斜板16には、その中央部にシャフト12が隙間をもって挿通される挿通穴が穿設されており、これにより斜板16は傾転可能となっている。斜板16の左側を向く面には、円盤状のカムプレート15が取付けられている。カムプレート15の平滑面には、シュー35の各々が皿ばね(図示せず)の押付力で押圧されている。これにより、ピストン13及びシュー35は、シャフト12の回転即ちロータ14の回転に伴い、カムプレート15上を摺動しながら軸線周りに回転し且つピストン13の軸線方向において往復運動する。このようにして、ピストン13の吸入行程と吐出行程が行われる。
【0021】
斜板16は傾転レバー36を含んで構成されており、当該傾転レバー36にはスライダ19が挿嵌されている。当該スライダ19は、ピストンサーボ18のスライド溝内に取付けられている。例えば、レギュレータポンプ17に作業者からの指令が電気信号で入力されると、当該レギュレータポンプ17によってピストンサーボ18に所定の油圧が形成され、これによりピストンサーボ18は所定量変位する。スライダ19は、ピストンサーボ18の変位を、傾転レバー36を介して斜板16へと伝達し、この結果、斜板16はピストンサーボ18に追従して傾転駆動される。このようにして、ピストン13の往復ストロークが変更され、ひいてはシリンダ部14aへの作動油の吸入量、シリンダ部14aからの作動油の吐出量の調整が行われる。ピストン13によってシリンダ部14aから吐出された作動油は、シリンダ部14aに連通して形成されたブロックポート11の出口側油路33及び吐出ポート10から吐出され各動作部位へ送られる。なお、ピストン13、シュー35、カムプレート15、斜板16の構成自体は公知であるため、その詳細な説明を省略する。また、ピストンサーボ18を中心とした、斜板16の傾転量調整方法も公知であるため、その詳細な説明を省略する。
【0022】
図1及び
図2に示すように、インペラ8は、ブロックポート11に設けられている。具体的には、インペラ8は、シャフト12に相対回動不能に結合されて入口側油路9に設けられている。また、インペラ8は、シャフト12の回転に伴って回転することで入口側油路9からシリンダ部14aに作動油を送り込むように構成されている。具体的には、インペラ8は、シャフト12にスプライン結合され、シャフト12の回転によって回転する中空円板状の台座21と、台座21から後述するコイル23の側(軸線方向において左側)に向かって立設された複数の羽22と、を含んで構成されている。インペラ8の羽22は、シャフト12の回転に伴って回転し、吸入ポート26からロータ14のシリンダ部14aに作動油を送り込むように構成されている。なお、インペラ8の羽22の構成自体は公知であるため、その詳細な説明を省略する。
【0023】
図1に示すように、発電部20は、インペラ8に取付けられた磁性体28と、ブロックポート11内においてシャフト12を取り囲むように配置されて磁性体28に磁気的に接続された導電性のコイル23を含む。具体的には、導電性のコイル23は、磁性体28に磁気接続されるように、ブロックポート11における吸入ポート26の周囲に取り付けられている。そして、発電部20はシャフト12の回転に伴って発電するように構成されている。
図2に示すように、磁性体28は、インペラ8の羽22の各々の少なくとも一部分として形成されている。本実施形態において、磁性体28は、羽22の一部分として形成されている。具体的には、羽22は、台座21に固定される1つの基部34と、当該基部34にのみ固定される1つの磁性体28とによって構成される。
【0024】
図3及び
図4に示すように、コイル23は、シャフト12の周囲に配列された複数のコイルセグメント24を含んでいる。コイルセグメント24は、コイルケース25の収容室25aに収容され、これによりシャフト12の回転方向に沿って軸線周りに同心円状に配置されている。
図4に示すように、コイルセグメント24の各々は、シャフト12の軸線方向において磁性体28の各々と対向するように配置されている。具体的には、コイルセグメント24は、インペラが回転した際に磁性体28がコイルの端面と向かい合うように配置されている。なお、
図3では、図面の見易さの観点から、複数のコイルセグメントのうち1つのコイルセグメントにのみ符号24を付しており、その他のコイルセグメントには符号を付していない。
【0025】
次いで、本発明の実施形態に係る油圧ポンプ5の作用、効果について説明する。本発明の実施形態に係る油圧ポンプ5は、インペラ8に取付けられた磁性体28と、ブロックポート11内においてシャフト12を取り囲むように配置されて磁性体28に磁気的に接続された導電性のコイル23と、を含む発電部20を備える。このように、発電部20において熱源となるコイル23は、作動油の通路(吸入ポート26、入口側油路9、吐出ポート10)が設けられたブロックポート11内に配置されている。このため、当該発電部20で発電が行われる際にコイル23において発生した熱を、当該通路を通過する作動油に効率的に放出することができ、ひいては発電部20における発電効率の低下を抑制することができる。
【0026】
また、発電部20におけるコイル23は、磁性体28に磁気接続されるように、ブロックポート11における吸入ポート26の周囲に取り付けられている。作動油は、油圧ポンプ5の吸入ポート26、入口側油路9、シリンダ部14a、及び吐出ポート10と通過する間に熱を蓄えるため、吸入ポート26を通過するときの作動油が、油圧ポンプ5において最も低い油温を有している。このため、当該発電部20で発電が行われる際にコイル23において発生した熱を、吸入ポート26を通過する作動油、即ち油圧ポンプ5において最も低い温度を有する作動油に効率的に放出することができ、ひいては発電部20における発電効率の低下を抑制することができる。
【0027】
また、本発明の実施形態に係る油圧ポンプ5によれば、磁性体28は、インペラ8の羽22の各々の少なくとも一部分として形成されている。このように、油圧ポンプ5のインペラ8は、羽22の形状自体を変更せずに、羽22の少なくとも一部分に磁性体28を含んで構成されている。このため、インペラ8の羽22による作動油のスムーズな流れを維持することができ、油圧ポンプ5におけるポンプ性能の低下を回避することができる。このようにして、放熱性の向上を図りつつ、ポンプ性能の低下を防止することができる。
【0028】
また、本発明の実施形態に係る油圧ポンプ5によれば、ブロックポート11は、ケーシング7に取付けられる部分である本体部11aと、当該本体部11aに取付けられる部分であるコイルケース25とを含んで構成されている。そして、コイルケース25は、コイル23を収容する収容室25aを有している。このように、本体部11aとは別部品であるコイルケース25にコイル23を収容するため、発電部20に求められる発電量に応じて、コイル23の配置及び数の自由度を高めることができる。
【0029】
また、本発明の実施形態に係る油圧ポンプ5によれば、コイル23は、シャフト12の周囲に配列された複数のコイルセグメント24を含み、当該コイルセグメント24の各々は、シャフト12の軸線方向において磁性体28の各々と対向するように配置されている。このため、発電部20に求められる発電量に応じて、コイル23を複数配置することができ、発電部20による発電量を増加させることができる。
【0030】
<変形例>
次いで、
図5及び
図6を用いて、本発明の実施形態に係るインペラ8の変形例について説明する。
図5は、
図2のインペラ8の変形例を示す斜視図である。
図6は、
図2のインペラ8の別の変形例を示す斜視図である。
図5に示すように、本発明の変形例に係るインペラ8aは、1つの磁性体28aが2つの基部34aの間に配置されて構成された羽22aを含む点で、1つの基部34と、当該基部34に固定される1つの磁性体28とによって構成される羽22を含んで構成されるインペラ8と異なる。また、
図6に示すように、本発明の別の変形例に係るインペラ8bは、全体が磁性体28bによって構成された羽22bを含む点で、上述のインペラ8と異なる。以下、上記実施形態に係るインペラ8と同じ又は類似する機能を有する構成については、当該実施形態に係る一対のインペラ8と同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0031】
図5に示すように、本変形例に係るインペラ8aは、台座21に固定される2つの基部34aと、当該基部34aの間に配置されかつ台座21に固定される1つの磁性体28aとを含んで構成されている。なお、インペラ8aにおいて、基部34a及び磁性体28aの数はこれに限定されるものではなく、例えば3つの基部34と、当該基部34aの各々の間に配置される2つの磁性体28aを含んで構成されてもよい。また、
図6に示すように、別の変形例に係るインペラ8bは、全体が磁性体28bによって構成された羽22bを含んで構成されている。
【0032】
<建設機械>
次いで、
図7に基づき、上記実施形態に係る油圧ポンプ5を搭載した油圧ショベル1(建設機械)について説明する。本実施形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベルを例に挙げて説明する。
図7は、
図1の油圧ポンプ5が搭載された油圧ショベル1の全体構成を概略的に示す斜視図である。
【0033】
図7に示すように、油圧ショベル1は、油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5を駆動するエンジン6及び作業装置4が設けられた車体と、を備える。車体とは、下部走行体2と、下部走行体2に旋回可能に取付けられた上部旋回体3とを含んで構成される部分の総称である。また、車体における上部旋回体3には、土砂の掘削作業等を行う作業装置4及びエンジン6が設けられている。また、油圧ポンプ5は上部旋回体3に設けられており、エンジン6によって駆動されて、下部走行体2、上部旋回体3、及び、作業装置4を駆動する。
【0034】
下部走行体2は、油圧ショベル1が走行可能となるように上部旋回体3を支持する所謂クローラ型の走行装置である。作業装置4は、上部旋回体3に回動可能に取付けられたブーム、当該ブームに回動可能に取付けられたアーム、及びアームに回動可能に取付けられたアタッチメントを含んで構成されている。作業装置4は、更に、ブームを駆動するブームシリンダ、アームを駆動するアームシリンダ、及びバケットを駆動するバケットシリンダを有している。上部旋回体3には、オペレータが油圧ショベル1を運転操作するための運転室が設けられている。運転室は、下部走行体2の駆動や作業装置4の操作等、油圧ショベル1の操作をオペレータが搭乗して行う操縦室である。
【0035】
エンジン6は、例えばディーゼルエンジンであり、圧油を供給する油圧ポンプ5を駆動するための駆動源として機能する。油圧ポンプ5より吐出された圧油は、下部走行体2に設けられた走行モータや上部旋回体3に設けられた旋回モータ(ともに図示せず)へ供給される。これにより、下部走行体2による油圧ショベル1の自走が可能となり、上部旋回体3が作業装置4とともに旋回軸周りで旋回可能となる。また、圧油の一部は、作業装置4に設けられたブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダへも供給される。これにより、圧油の供給度合い即ち油圧に応じてブーム、アーム、バケットが夫々駆動される。
【0036】
図1及び
図7に示すように、エンジン6は、シャフト12の一方の端部に設けられた突出端12a(接続部)に接続されている。また、ブロックポート11は、シャフト12の他方の端部側、即ちエンジン6とは反対のシャフト12の端部側に取付けられている。
【0037】
なお、油圧ポンプ5における発電部20のコイル23は、導線によって油圧ポンプ5の外部に形成された蓄電回路と接続されいる。具体的には、発電部20によって発電された電気エネルギー(交流電流)は、導線によってコイル23と接続された整流器を通過し、これにより蓄電に適した直流電流に変換される。その後、当該直流電流は、導線によって整流器と接続されたレギュレータを通過する。これにより、油圧ショベル1の動作に応じてエンジン6の駆動軸の回転数が常時変化する場合であっても、安定的な蓄電を実施することが可能になる。最終的に、生成された電気エネルギーは、導線によってレギュレータと接続されたバッテリに蓄電され、当該バッテリから各々の電気的負荷へと分配される。
【0038】
本実施形態に係る油圧ショベル1によれば、油圧ポンプ5のシャフト12の突出端12aは、エンジン6に接続される接続部であり、ブロックポート11は、シャフト12の他方の端部側に設けられている。つまり、エンジン6及びブロックポート11はそれぞれ、シャフト12の両端、即ちケーシング7を挟んで互いに反対側に設けられている。このように、ブロックポート11に設けられた作動油の通路(吸入ポート26、入口側油路9、吐出ポート10)は、ケーシング7を挟んでエンジン6の反対側に設けられる。このため、当該通路を通過する作動油は、エンジン6において生じる熱の影響を受け難いため、発電時にコイル23において発生する熱を当該作動油に効率的に放出することができ、ひいては発電部20における発電効率の低下を抑制することができる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態の説明をしたが、本発明は上記実施形態に係る油圧ポンプ5及び油圧ショベル1に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。例えば、上記実施形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【0040】
例えば、上記実施形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベルを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、ホイール式の油圧ショベル、リフトトラック、ダンプトラック、ホイールローダ、油圧クレーン、ブルドーザ等の建設機械にも広く適用することが可能である。
【0041】
また、上記実施形態では、ブロックポート11が本体部11a及びコイルケース25から構成される態様について説明した。しかし、ブロックポート11の態様はこれに限定されるものではなく、ブロックポート11の全体が本体部11aで形成されていてもよい。この場合、吸入ポート26は、本体部11aに形成される。
【符号の説明】
【0042】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 作業装置
5 油圧ポンプ
6 エンジン
7 ケーシング
8 インペラ
9 入口側油路
10 吐出ポート
11 ブロックポート
11a 本体部
12 シャフト
12a 突出端(接続部)
13 ピストン
14 ロータ
14a シリンダ部
20 発電部
21 台座
22,22a,22b 羽
23 コイル
24 コイルセグメント
25 コイルケース(取付部)
25a 収容室
26 吸入ポート
28,28a,28b 磁性体
29 内部空間