(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152628
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】伝動ベルト
(51)【国際特許分類】
F16G 1/08 20060101AFI20221004BHJP
F16G 5/20 20060101ALI20221004BHJP
F16G 1/28 20060101ALI20221004BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20221004BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20221004BHJP
C08L 81/04 20060101ALI20221004BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20221004BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F16G1/08 Z
F16G1/08 C
F16G5/20 A
F16G1/28 A
C08L21/00
C08K7/02
C08L81/04
C08K5/098
C08K3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055467
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 勝起
(72)【発明者】
【氏名】米田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芳史
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB012
4J002AC001
4J002AC091
4J002BB151
4J002CF002
4J002CL002
4J002CN023
4J002DA037
4J002EG046
4J002FA042
4J002FD012
4J002FD017
4J002FD020
4J002FD143
4J002FD150
4J002FD206
4J002GM00
(57)【要約】
【課題】高性能の伝動ベルトを提供する。
【解決手段】伝動ベルトBは、ベルト本体11の少なくとも一部分111が架橋ゴム組成物で形成されている。前記架橋ゴム組成物は、ゴム成分と、ナノファイバと、短繊維と、アミルフェニルジサルファイド重合物とを含有する未架橋ゴム組成物の架橋物で構成されている。前記架橋ゴム組成物では、前記ナノファイバ及び前記短繊維がベルト幅方向に配向している。前記未架橋ゴム組成物における前記アミルフェニルジサルファイド重合物の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して5質量部以下である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体の少なくとも一部分が架橋ゴム組成物で形成された伝動ベルトであって、
前記架橋ゴム組成物は、ゴム成分と、繊維径が1μm以下のナノファイバと、繊維径が5μm以上の短繊維と、アミルフェニルジサルファイド重合物と、を含有する未架橋ゴム組成物の架橋物で構成されており、
前記架橋ゴム組成物では、前記ナノファイバ及び前記短繊維がベルト幅方向に配向しており、
前記未架橋ゴム組成物における前記アミルフェニルジサルファイド重合物の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して5質量部以下である伝動ベルト。
【請求項2】
請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
前記未架橋ゴム組成物における前記ナノファイバの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して1質量部以上5質量部以下である伝動ベルト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された伝動ベルトにおいて、
前記未架橋ゴム組成物における前記短繊維の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して20質量部以上40質量部以下である伝動ベルト。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記未架橋ゴム組成物がジメタクリル酸亜鉛を含有する伝動ベルト。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記未架橋ゴム組成物がカーボンブラックを含有する伝動ベルト。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記伝動ベルトがVベルト又はVリブドベルトである伝動ベルト。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記伝動ベルトが歯付ベルト又は平ベルトである伝動ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維径が1μm以下のナノファイバを補強材料として用いることが知られている。例えば、特許文献1には、VベルトのV側面を構成する圧縮ゴム層を、ゴム成分と、ポリエチレンテレフタレート繊維のナノファイバと、パラ系アラミド短繊維とを含有する架橋ゴム組成物で形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、高性能の伝動ベルトを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ベルト本体の少なくとも一部分が架橋ゴム組成物で形成された伝動ベルトであって、前記架橋ゴム組成物は、ゴム成分と、繊維径が1μm以下のナノファイバと、繊維径が5μm以上の短繊維と、アミルフェニルジサルファイド重合物とを含有する未架橋ゴム組成物の架橋物で構成されており、前記架橋ゴム組成物では、前記ナノファイバ及び前記短繊維がベルト幅方向に配向しており、前記未架橋ゴム組成物における前記アミルフェニルジサルファイド重合物の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して5質量部以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ベルト本体の少なくとも一部分を形成する架橋ゴム組成物が、ゴム成分と、繊維径が1μm以下のナノファイバと、繊維径が5μm以上の短繊維と、アミルフェニルジサルファイド重合物とを含有する未架橋ゴム組成物の架橋物で構成されており、この架橋ゴム組成物では、ナノファイバ及び短繊維がベルト幅方向に配向しており、未架橋ゴム組成物におけるアミルフェニルジサルファイド重合物の含有量がゴム成分100質量部に対して5質量部以下であることにより高性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】実施形態に係るダブルコグドVベルトの一片の斜視図である。
【
図1B】実施形態に係るダブルコグドVベルトの一部分の縦断面図である。
【
図1C】実施形態に係るダブルコグドVベルトの横断面図である。
【
図3A】実施形態のダブルコグドVベルトを用いた変速装置の構成を示す横断面図である。
【
図3B】実施形態のダブルコグドVベルトを用いた変速装置の構成を示す縦断面図である。
【
図4A】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第1の説明図である。
【
図4B】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第2の説明図である。
【
図4C】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第3の説明図である。
【
図4D】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第4の説明図である。
【
図4E】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第5の説明図である。
【
図4F】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第6の説明図である。
【
図4G】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第7の説明図である。
【
図4H】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第8の説明図である。
【
図5A】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における幅カット・V側面形成工程の第1の説明図である。
【
図5B】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における幅カット・V側面形成工程の第2の説明図である。
【
図6A】ベルト走行試験機の低速レイアウトを示す図である。
【
図6B】ベルト走行試験機の高速レイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1A乃至Cは、実施形態に係るダブルコグドVベルトB(伝動ベルト)を示す。実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、例えば、自動二輪、自動四輪、又はその他の汎用機械の変速装置等に用いられるエンドレスの動力伝達部材である。
【0010】
実施形態に係るダブルコグドVベルトBの横断面形状は、内周側部分が上底よりも下底の方が短い台形に形成されているとともに、外周側部分が横に細長い矩形に形成されている。実施形態に係るダブルコグドVベルトBのベルト長さは例えば700mm以上1000mm以下である。ベルト幅は例えば10mm以上36mm以下である。ベルト厚さは例えば13mm以上16mm以下である。
【0011】
実施形態に係るダブルコグドVベルトBの内周側には、下コグCLがベルト長さ方向に沿って一定ピッチで配設されている。下コグCLの縦断面外郭は、正弦波形状に形成されている。実施形態に係るダブルコグドVベルトBの外周側には、上コグCUがベルト長さ方向に沿って一定ピッチで配設されている。上コグCUの縦断面外郭は、台形状に形成されている。
【0012】
実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、ゴム部材のベルト本体11と、繊維部材の補強布12及び心線13とを備える。ベルト本体11は、内周側の圧縮ゴム層111と、外周側の伸張ゴム層112と、それらの間の接着ゴム層113とを有する。補強布12は、圧縮ゴム層111の内周面を被覆して下コグCLを構成するように設けられている。心線13は、接着ゴム層113のベルト厚さ方向の中間部に埋設されているとともに、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように設けられている。
【0013】
圧縮ゴム層111の両側には、プーリ接触面となるV側面111aが構成されている。V側面111aがなす横断面におけるV角度は、例えば27°以上33°以下である。
【0014】
V側面111aを構成する部分である圧縮ゴム層111は、架橋ゴム組成物Xで形成されている。架橋ゴム組成物Xは、未架橋ゴム組成物Yの架橋物で構成されている。
【0015】
未架橋ゴム組成物Yは、ゴム成分と、ナノファイバと、短繊維と、共架橋剤のアミルフェニルジサルファイド重合物とを含有する。
【0016】
ゴム成分としては、例えば、エチレン-α-オレフィンエラストマー(EPDM,EPR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H-NBR)等が挙げられる。ゴム成分は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、優れた耐久性を得る観点から、エチレン-α-オレフィンエラストマー(EPDM,EPR)又はクロロプレンゴム(CR)を含むことがより好ましい。
【0017】
ゴム成分がエチレン-α-オレフィンエラストマーを含む場合、そのエチレン含量は、優れた耐久性を得る観点から、好ましくは45質量%以上55質量%以下、より好ましくは50質量%以上53質量%以下である。ゴム成分がEPDMを含む場合、そのジエン成分は、優れた耐久性を得る観点から、エチリデンノルボルネン(ENB)であることが好ましく、そのジエン含量(ENB含量)は、同様の観点から、好ましくは6質量%以上12質量%以下、より好ましくは7質量%以上8質量%以下である。
【0018】
ナノファイバは、繊維径d1が1μm以下(1000nm以下)の微細繊維である。ナノファイバの繊維径d1は、優れた耐久性を得る観点から、好ましくは10nm以上1000nm以下、より好ましくは300nm以上900nm以下、更に好ましくは500nm以上800nm以下である。ナノファイバの繊維長l1は、同様の観点から、好ましくは0.3mm以上5mm以下、より好ましくは0.5mm以上1.5mm以下である。ナノファイバの繊維長l1の繊維径d1に対する比(l1/d1:アスペクト比)は、同様の観点から、好ましくは300以上100000以下、より好ましくは1000以上5000以下、更に好ましくは1200以上2000以下、より更に好ましくは1350以上1500以下である。
【0019】
ナノファイバとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維(以下「PET繊維」という。)やポリアミド繊維(6-ナイロン繊維,6,6-ナイロン繊維)などの合成繊維のナノファイバ;セルロースナノファイバなどの天然由来繊維のナノファイバ等が挙げられる。ナノファイバは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、優れた耐久性を得る観点から、PET繊維のナノファイバを含むことがより好ましい。
【0020】
未架橋ゴム組成物Yにおけるナノファイバの含有量Aは、優れた耐久性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上5質量部以下、より好ましくは2質量部以上3質量部以下である。
【0021】
未架橋ゴム組成物Yは、ナノファイバが、ゴム成分に、
図2に示すような熱可塑性樹脂Rの海及びナノファイバFの収束体の多数の島の海島構造を有する複合材料Mの形態で配合されることが好ましい。この場合、未架橋ゴム組成物Yは、混練により熱可塑性樹脂Rが溶融してゴム成分に拡散するため、ナノファイバFを、ゴム成分に分散した状態で含有することとなる。
【0022】
この複合材料Mは、熱可塑性樹脂Rの海ポリマー中に、ナノファイバFが互いに独立し且つ並列して島状に存在したコンジュゲート繊維をロッド状に切断したものである。複合材料Mの外径は、例えば10μm以上100μm以下である。複合材料Mの長さは、ナノファイバFの繊維長l1と同一であって、好ましくは0.3mm以上5mm以下、より好ましくは0.5mm以上1.5mm以下である。
【0023】
熱可塑性樹脂Rとしては、例えば、ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂Rは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂Rは、混練時にゴム成分に拡散するので、ゴム成分との相溶性が高いことが好ましい。したがって、可塑性樹脂Rは、ゴム成分が低極性の場合には、低極性のポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂等を含むことが好ましい。特に、ゴム成分がエチレン-α-オレフィンエラストマー(EPDM,EPR)を含む場合には、熱可塑性樹脂Rは、ポリエチレン樹脂を含むことが好ましい。また、熱可塑性樹脂Rは、ゴム成分がニトリルゴム(NBR)のような高極性の場合には、高極性のポリエチレン樹脂にマレイン酸などの極性基を導入して変性したもの、ナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂等を含むことが好ましい。
【0024】
複合材料MにおけるナノファイバFの含有量は、例えば30質量%以上95質量%以下である。複合材料MにおけるナノファイバFの本数は、例えば10本以上2000本以下である。
【0025】
短繊維としては、例えば、パラ系アラミド短繊維、メタ系アラミド短繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール短繊維、ナイロン6短繊維、ナイロン6,6短繊維、ナイロン4,6短繊維、ポリエチレンテレフタレート短繊維、ポリエチレンナフタレート短繊維等が挙げられる。短繊維は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、優れた耐久性を得る観点から、パラ系アラミド短繊維を含むことがより好ましい。
【0026】
パラ系アラミド短繊維としては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維及びコポリパラフェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド短繊維が挙げられる。市販のポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維としては、例えば、帝人社製のトワロン、並びにデュポン社製のケブラー29、ケブラー49、ケブラー119が挙げられる。市販のコポリパラフェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド短繊維としては、帝人社製のテクノーラが挙げられる。短繊維は、フィブリル化して高い補強効果を発現することが好ましく、かかる観点から、フィブリル化が容易なポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維を含むことが更に好ましい。
【0027】
短繊維の繊維径d2は、優れた耐久性を得る観点から、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは11μm以上13μm以下である。短繊維の繊維径d2のナノファイバの繊維径d1に対する比(d2/d1)は、同様の観点から、好ましくは10以上70以下、より好ましくは15以上20以下である。短繊維のフィラメントの繊度は、同様の観点から、好ましくは1dtex以上5dtex以下、より好ましくは1.4dtex以上1.6dtex以下である。
【0028】
短繊維の繊維長l2は、優れた耐久性を得る観点から、好ましくは1mm以上10mm以下、より好ましくは2mm以上3.5mm以下である。短繊維の繊維長l2は同様の観点から、ナノファイバの繊維長l1よりも長いことが好ましい。短繊維の繊維長l2のナノファイバの繊維長l1に対する比(l2/l1)は、同様の観点から、好ましくは1.1以上5以下、より好ましくは2.5以上3.5以下である。
【0029】
短繊維の繊維長l2の繊維径d2に対する比(l2/d2:アスペクト比)は、優れた耐久性を得る観点から、好ましくは20以上700以下、より好ましくは200以上300以下である。短繊維のアスペクト比(l2/d2)は、同様の観点から、ナノファイバのアスペクト比(l1/d1)よりも小さいことが好ましい。短繊維のアスペクト比(l2/d2)のナノファイバのアスペクト比(l1/d1)に対する比(l2/d2/l1/d1)は、同様の観点から、好ましくは0.1以上0.5以下、より好ましくは0.15以上0.2以下である。
【0030】
未架橋ゴム組成物Yにおける短繊維の含有量Bは、優れた耐久性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上40質量部以下、より好ましくは25質量部以上30質量部以下である。
【0031】
未架橋ゴム組成物Yにおける短繊維の含有量Eは、優れた耐久性を得る観点から、ナノファイバの含有量Aよりも多いことが好ましい。短繊維の含有量Bのナノファイバの含有量Aに対する比(B/A)は、同様の観点から、好ましくは10以上16以下、より好ましくは11以上12以下である。
【0032】
未架橋ゴム組成物Yにおけるナノファイバ及び短繊維の含有量の和(A+B)は、優れた耐久性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは24質量部以上45質量部以下、より好ましくは29質量部以上33質量部以下である。
【0033】
未架橋ゴム組成物Yにおけるアミルフェノールジサルファイド重合物の含有量Cは、ゴム成分100質量部に対して5質量部以下であり、優れた耐久性を得る観点から、好ましくは0.2質量部以上3質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上1.5質量部以下である。
【0034】
未架橋ゴム組成物Yにおけるアミルフェノールジサルファイド重合物の含有量Cは、優れた耐久性を得る観点から、ナノファイバの含有量Aよりも少ないことが好ましい。アミルフェノールジサルファイド重合物の含有量Cのナノファイバの含有量Aに対する比(C/A)は、同様の観点から、好ましくは0.08以上2以下、より好ましくは0.3以上0.5以下である。
【0035】
未架橋ゴム組成物Yにおけるアミルフェノールジサルファイド重合物の含有量Cは、優れた耐久性を得る観点から、短繊維の含有量Bよりも少ないことが好ましい。アミルフェノールジサルファイド重合物の含有量Cの短繊維の含有量Bに対する比(C/B)は、同様の観点から、好ましくは0.007以上0.18以下、より好ましくは0.03以上0.04以下である。
【0036】
未架橋ゴム組成物Yは、優れた耐久性を得る観点から、共架橋剤のジメタクリル酸亜鉛を含有することが好ましい。未架橋ゴム組成物Yにおけるジメタクリル酸亜鉛の含有量Dは、優れた耐久性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上40質量部以下、より好ましくは15質量部以上25質量部以下である。
【0037】
未架橋ゴム組成物Yにおけるジメタクリル酸亜鉛の含有量Dは、優れた耐久性を得る観点から、ナノファイバの含有量Aよりも多いことが好ましい。ジメタクリル酸亜鉛の含有量Dのナノファイバの含有量Aに対する比(D/A)は、同様の観点から、好ましくは4以上16以下、より好ましくは6以上10以下である。
【0038】
未架橋ゴム組成物Yにおけるジメタクリル酸亜鉛の含有量Dの短繊維の含有量Bに対する比(D/B)は、同様の観点から、好ましくは0.5以上1.1以下、より好ましくは0.6以上0.8以下である。ジメタクリル酸亜鉛の含有量Dは、同様の観点から、短繊維の含有量Bよりも少ないことが好ましい。
【0039】
未架橋ゴム組成物Yにおけるジメタクリル酸亜鉛の含有量Dは、優れた耐久性を得る観点から、アミルフェノールジサルファイド重合物の含有量Cよりも多いことが好ましい。ジメタクリル酸亜鉛の含有量Dのアミルフェノールジサルファイド重合物の含有量Cに対する比(D/C)は、同様の観点から、好ましくは4以上100以下、より好ましくは15以上25以下である。
【0040】
未架橋ゴム組成物Yにおけるアミルフェノールジサルファイド重合物及びジメタクリル酸亜鉛の含有量の和(C+D)は、優れた耐久性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上45質量部以下、より好ましくは15質量部以上25質量部以下である。
【0041】
未架橋ゴム組成物Yは、優れた耐久性を得る観点から、カーボンブラックを含有することが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF等のファーネスブラックが挙げられる。カーボンブラックは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、優れた耐久性を得る観点から、ISAFを含むことがより好ましい。
【0042】
カーボンブラックの算術平均粒子径は、優れた耐久性を得る観点から、好ましくは18nm以上30nm以下、より好ましくは20nm以上23nm以下である。カーボンブラックの算術平均粒子径は、電子顕微鏡観察により測定される100個のカーボンブラックの粒子径の数平均として求められる。
【0043】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、優れた耐久性を得る観点から、好ましくは95m2/g以上150m2/g以下、より好ましくは115m2/g以上125m2/g以下である。カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2017に基づいて測定される。
【0044】
未架橋ゴム組成物Yにおけるカーボンブラックの含有量Eは、ゴム成分100質量部に対して25質量部以上70質量部以下であり、優れた耐久性を得る観点から、好ましくは30質量部以上60質量部以下、より好ましくは35質量部以上45質量部以下である。
【0045】
未架橋ゴム組成物Yにおけるカーボンブラックの含有量Eは、優れた耐久性を得る観点から、ナノファイバの含有量Aよりも多いことが好ましい。カーボンブラックの含有量Eのナノファイバの含有量Aに対する比(E/A)は、同様の観点から、好ましくは8以上24以下、より好ましくは14以上18以下である。
【0046】
未架橋ゴム組成物Yにおけるカーボンブラックの含有量Eは、優れた耐久性を得る観点から、短繊維の含有量Bよりも多いことが好ましい。カーボンブラックの含有量Eの短繊維の含有量Bに対する比(E/B)は、同様の観点から、好ましくは1.05以上2以下、より好ましくは1.3以上1.5以下である。
【0047】
未架橋ゴム組成物Yにおけるカーボンブラックの含有量Eは、優れた耐久性を得る観点から、アミルフェノールジサルファイド重合物の含有量Cよりも多いことが好ましい。カーボンブラックの含有量Eのアミルフェノールジサルファイド重合物の含有量Cに対する比(E/C)は、同様の観点から、好ましくは8以上200以下、より好ましくは30以上50以下である。
【0048】
未架橋ゴム組成物Yがジメタクリル酸亜鉛及びカーボンブラックの両方を含有する場合、カーボンブラックの含有量Eは、優れた耐久性を得る観点から、ジメタクリル酸亜鉛の含有量Dと同一、又は、ジメタクリル酸亜鉛の含有量Dよりも多いことが好ましい。カーボンブラックの含有量Eのジメタクリル酸亜鉛の含有量Dに対する比(E/D)は、同様の観点から、好ましくは1以上3以下、より好ましくは1.5以上2.5以下である。
【0049】
未架橋ゴム組成物Yがジメタクリル酸亜鉛及びカーボンブラックの両方を含有する場合、ジメタクリル酸亜鉛及びカーボンブラックの含有量の和(D+E)は、優れた耐久性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは40質量部以上70質量部以下、より好ましくは50質量部以上65量部以下、更に好ましくは57質量部以上63質量部以下である。
【0050】
未架橋ゴム組成物Yは、架橋剤として、硫黄を含有していてもよく、また、有機過酸化物を含有していてもよく、さらに、硫黄及び有機過酸化物の両方を含有していてもよい。ゴム成分がCRを含む場合、未架橋ゴム組成物Yは、架橋剤として、酸化マグネシウム等の金属酸化物を含有していてもよい。
【0051】
未架橋ゴム組成物Yは、その他、複合材料MにおけるナノファイバF以外の部分を構成する熱可塑性樹脂R、可塑剤、加工助剤等を含有していてもよい。
【0052】
なお、未架橋ゴム組成物Yにおけるナノファイバ、カーボンブラック、及びパラ系アラミド短繊維等の含有量は、実質的には架橋ゴム組成物Xにおける含有量と一致する。しかしながら、共架橋剤及び架橋剤は、架橋ゴム組成物Xでは、架橋のためにゴム成分に取り込まれる、又は、ゴム成分の架橋のために消費される。そのため、共架橋剤及び架橋剤の含有量は、架橋前の未架橋ゴム組成物Yにおいてのみ特定される。
【0053】
圧縮ゴム層111を形成する架橋ゴム組成物Xは、その列理方向がベルト幅方向及び反列理方向がベルト長さ方向にそれぞれ対応するように設けられている。したがって、架橋ゴム組成物Xでは、ナノファイバ及び短繊維が、ゴム成分に分散するとともに、列理方向に配向している。
【0054】
架橋ゴム組成物Xの25℃における反列理方向の切断時伸びEBは、優れた耐久性を得る観点から、好ましくは60%以上100%以下、より好ましくは65%以上95%以下である。この切断時伸びEBは、JIS K6251:2017に基づいて測定される。
【0055】
架橋ゴム組成物Xの25℃における列理方向の貯蔵たて弾性係数E’は、優れた耐久性を得る観点から、好ましくは900MPa以上、より好ましくは920MPa以上である。この貯蔵たて弾性係数E’は、JIS K6394:2007に基づいて、歪み1%時の荷重の1.3倍の荷重を負荷したときの歪みを平均歪みとし、歪み振幅0.1%、周波数10Hz、及び試験温度25℃として引張方法により測定される。
【0056】
伸張ゴム層112及び接着ゴム層113は、架橋ゴム組成物で形成されている。伸張ゴム層112及び接着ゴム層113は、圧縮ゴム層111と同一の架橋ゴム組成物Xで形成されていてもよい。
【0057】
補強布12は、例えば、合成繊維や天然繊維で形成された織布、編物、不織布等で構成されている。補強布12は、ベルト本体11に対する接着性を付与するための接着処理が施されていることが好ましい。なお、同様の構成の補強布が伸張ゴム層112の外周面も被覆するように設けられていてもよい。
【0058】
心線13は、合成繊維で形成された撚り糸等で構成されている。心線13は、ベルト本体11に対する接着性を付与するための接着処理が施されていることが好ましい。
【0059】
以上の構成の実施形態に係るダブルコグドVベルトBによれば、V側面111aを構成する部分である圧縮ゴム層111を形成する架橋ゴム組成物Xが、ゴム成分と、ナノファイバと、短繊維と、アミルフェニルジサルファイド重合物とを含有する未架橋ゴム組成物Yの架橋物で構成されており、架橋ゴム組成物Xでは、ナノファイバ及び短繊維がベルト幅方向に配向しており、未架橋ゴム組成物Yにおけるアミルフェニルジサルファイド重合物の含有量がゴム成分100質量部に対して5質量部以下であることにより高性能を得ることができる。具体的には、低速及び高速のいずれでベルト走行しても優れた耐久性を得ることができる。
【0060】
図3A及びBは、実施形態に係るダブルコグドVベルトBを用いた自動二輪車等の変速装置20を示す。
【0061】
この変速装置20は、回転軸が平行になるように配置された駆動プーリ21及び従動プーリ22を備える。そして、実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、それら駆動プーリ21及び従動プーリ22の間に巻き掛けられている。
【0062】
駆動プーリ21及び従動プーリ22は、それぞれ軸方向に移動不能な固定シーブ211,221と、軸方向に移動可能な可動シーブ212,222とを有する。そして、これらの駆動プーリ21及び従動プーリ22のそれぞれにおける固定シーブ211,221と、可動シーブ212,222との間に、実施形態に係るダブルコグドVベルトBが嵌まるV溝23が構成されている。
【0063】
V溝23は、固定シーブ211,221に対して可動シーブ212,222が近づく方向に移動すると、溝幅が狭くなる。このとき、実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、V溝23内を外周側に押し上げられてベルトピッチラインL1,L2の巻き掛かり径、つまり、プーリ径が大きくなる。一方、V溝23は、固定シーブ211,221に対して可動シーブ212,222が離れる方向に移動すると、溝幅が広くなる。このとき、実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、V溝23内を内周側に沈み込んでプーリ径が小さくなる。
【0064】
以上の構成により、この変速装置20では、駆動プーリ21のプーリ径が小さく且つ従動プーリ22のプーリ径が大きい低速モードと、駆動プーリ21のプーリ径が大きく且つ従動プーリ22のプーリ径が小さい高速モードとの間で、駆動プーリ21及び従動プーリ22のプーリ径の比を変化させ、それによりダブルコグドVベルトBを介して、駆動プーリ21の回転速度を、従動プーリ22に連続的に変速して伝達する。
【0065】
次に、実施形態に係るダブルコグドVベルトBの製造方法について
図4A乃至H及び
図5A乃至Bに基づいて説明する。
【0066】
<部材準備工程>
部材準備工程では、まず、ゴム成分に、
図2に示す熱可塑性樹脂Rの海及びナノファイバFの収束体の多数の島の海島構造を有する複合材料Mを配合して混練する。このとき、複合材料Mの熱可塑性樹脂Rが溶融してゴム成分に拡散するとともに、ナノファイバFがゴム成分に分散する。その後、カーボンブラックと、ジメタクリル酸亜鉛と、その他のゴム配合剤とを更に配合して混練することにより、塊状の未架橋ゴム組成物Yを調製する。
【0067】
次いで、その塊状の未架橋ゴム組成物Yを圧延することにより、圧縮ゴム層111を形成するための未架橋ゴムシートを作製する。なお、未架橋ゴムシートは、圧延方向である列理方向にナノファイバが配向したものとなる。
【0068】
同様に、伸張ゴム層112を形成するための未架橋ゴムシート、及び接着ゴム層113を形成するための未架橋ゴムシートも作製する。また、補強布12及び心線13にそれぞれ所定の接着処理を行う。
【0069】
<成形・架橋工程>
成形・架橋工程では、まず、
図4Aに示すように、第1円筒型311の外周面上に、補強布12及び圧縮ゴム層111を形成するための未架橋ゴムシート111’を順に巻き付けて下コグ成形体40’を成形する。このとき、補強布12を、第1円筒型311の外周の周方向に連設された下コグ形成溝311aに沿うように設ける。また、未架橋ゴムシート111’を、その列理方向が第1円筒型311の軸方向、したがって、ベルト幅方向となるように設ける。
【0070】
次いで、
図4Bに示すように、第1円筒型311上の下コグ成形体40’に、内周面が平滑な第1ゴムスリーブ312を被せ、それを加硫缶内に配置して密閉するとともに、加硫缶内に高温及び高圧の蒸気を充填し、その状態を所定時間だけ保持する。このとき、未架橋ゴムシート111’が流動して下コグ形成溝311aに圧入されるとともに、その架橋が半分程度進行し、且つ補強布12と複合化し、
図4Cに示すような内周側に下コグC
Lが形成された円筒状の下コグ複合体40が成型される。
【0071】
次いで、加硫缶内から蒸気を排出して密閉を解き、第1円筒型311を取り出すとともに第1ゴムスリーブ312を外して冷却した後、
図4Dに示すように、第1円筒型311上に成型された下コグ複合体40の外周部を刃物で削って厚みを調整する。
【0072】
次いで、第1円筒型311から下コグ複合体40を脱型した後、4Eに示すように、それを第2円筒型321に外嵌めする。このとき、下コグ複合体40を、その下コグCLが第2円筒型321の外周の周方向に連設された下コグ嵌合溝321aに嵌まるように設ける。
【0073】
次いで、
図4Fに示すように、第2円筒型321上の下コグ複合体40上に、接着ゴム層113を形成するための未架橋ゴムシート113’を巻き付け、その上から心線13を螺旋状に巻き付け、その上から更に接着ゴム層113を形成するための未架橋ゴムシート113’及び伸張ゴム層112を形成するための未架橋ゴムシート112’を順に巻き付けて未架橋スラブS’を成形する。
【0074】
次いで、
図4Gに示すように、未架橋スラブS’に第2ゴムスリーブ322を被せ、それを加硫缶内に配置して密閉するとともに、加硫缶内に高温及び高圧の蒸気を充填し、その状態を所定時間だけ保持する。このとき、下コグ複合体40の本架橋が進行する。それと同時に、接着ゴム層113を形成するための未架橋ゴムシート113’も架橋が進行して心線13と複合化する。また、伸張ゴム層112を形成するための未架橋ゴムシート112’が流動して第2ゴムスリーブ322の内周の周方向に連設された上コグ形成溝322aに圧入されるとともに、その架橋が進行する。そして、
図4Hに示すように、全体が一体化されて円筒状のベルトスラブSが成型される。
【0075】
<幅カット・V側面形成工程>
加硫缶内から蒸気を排出して密閉を解き、第2円筒型321を取り出すとともに第2ゴムスリーブ322を外して冷却した後、第2円筒型321からベルトスラブSを脱型する。
【0076】
そして、
図5Aに示すように、ベルトスラブSを所定幅に幅切りした後、
図5Bに示すように、両側面を刃物で切断してV側面111aを形成することにより実施形態に係るダブルコグドVベルトBを得る。
【0077】
なお、上記実施形態では、ダブルコグドVベルトBを示したが、特にこれに限定されるものではなく、下コグだけを有するシングルコグドVベルトであってもよく、また、コグを有さないローエッジVベルトであってもよい。また、VリブのV側面を構成する部分が架橋ゴム組成物Xで形成されたVリブドベルトであってもよく、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、ベルト本体の少なくとも一部分が架橋ゴム組成物Xで形成された歯付ベルトや平ベルトであってもよく、高性能を得ることができる。具体的には、これらの場合、架橋ゴム組成物Xは、ナノファイバ及び短繊維がベルト幅方向に配向し、ベルト幅方向に相対的に高剛性であることからベルト幅方向における反りを抑制することができるとともに、ベルト長さ方向に相対的に低剛性であることから小さな力で屈曲させてプーリに巻き掛けることができ、その結果、長時間に渡って安定したベルト走行性能を得ることができる。
【実施例0078】
(架橋ゴム組成物及びダブルコグドVベルト)
以下の実施例1乃至5及び比較例1乃至6の架橋ゴム組成物及びダブルコグドVベルトを作製した。それぞれの構成については表1及び2にも示す。
【0079】
<実施例1>
バンバリーミキサーに、ゴム成分のEPDM(T7241 JSR社製、エチレン含量:52質量%、ENB含量:7.7質量%)を投入するとともに、このゴム成分100質量部に対してポリエチレン樹脂-PETナノファイバの複合材料(ナノフロント 帝人フロンティア社製)3.6質量部を投入し、それらを複合材料に含まれるポリエチレン樹脂の融点よりも高い温度で混練した。その後、ゴム成分100質量部に対して、ISAFカーボンブラック(シースト6 東海カーボン社製、算術平均粒子径:22nm、窒素吸着比表面積:119m2/g)40質量部、プロセスオイル(サンパー2280 サン石油社製)10質量部、加工助剤のステアリン酸(ステアリン酸S50 新日本理化社製)0.25質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛(酸化亜鉛3種 堺化学社製)5質量部、共架橋剤のジメタクリル酸亜鉛(アクターZMA 川口化学工業社製)20質量部、共架橋剤のアミルフェノールジサルファイド重合物(サンセラーAP 三新化学工業社製)1質量部、及び共架橋剤のN,N’-m-フェニレンビスマレイミド(バルノックPM 大内新興化学工業社製)4質量部を更に投入して混練した。
【0080】
次いで、バンバリーミキサーから塊状の未架橋ゴム組成物の混練物を排出して一旦冷却した後、それを、ゴム成分100質量部に対して、パラ系アラミド短繊維のポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維(ケブラー119 デュポン社製)28質量部、並びに架橋剤の硫黄(セイミOT 日本乾溜工業社製)0.5質量部及び架橋剤の有機過酸化物(ペロキシモンF-40 日本油脂社製、純度40質量%)7質量部(有効成分2.8質量部)とともに再びバンバリーミキサーに投入して混練した。
【0081】
続いて、バンバリーミキサーから塊状の未架橋ゴム組成物の混練物を排出し、それをカレンダーロールにより圧延して未架橋ゴムシートを得た。
【0082】
そして、得られた未架橋ゴムシートをプレス成型することによりシート状の架橋ゴム組成物を作製した。また、得られた未架橋ゴムシートを用いて圧縮ゴム層を形成した上記実施形態と同様の構成のダブルコグドVベルトを作製した。これらのシート状の架橋ゴム組成物及びダブルコグドVベルトを実施例1とした。
【0083】
ここで、上記で用いた複合材料は、ポリエチレン樹脂の海と、1200本のPET繊維のナノファイバの島との海島構造を有する。
【0084】
複合材料におけるポリエチレン樹脂の含有量は30質量%及びナノファイバの含有量は70質量%である。したがって、ゴム成分100質量部に対するポリエチレン樹脂の含有量は1.1質量部及びナノファイバの含有量は2.5質量部である。
【0085】
複合材料の外径は30μm及び長さは1mmである。したがって、PET繊維のナノファイバの繊維長l1は1mmである。繊維径d1は700nmである。パラ系アラミド短繊維のポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維の繊維径d2は12μmである。繊維長l2は3mmである。
【0086】
また、ダブルコグドVベルトの伸張ゴム層及び接着ゴム層は、EPDMをゴム成分とする架橋ゴム組成物で形成した。心線は、PET繊維の撚り糸で構成した。補強布は、PET繊維の織布で構成した。
【0087】
<実施例2>
N,N’-m-フェニレンビスマレイミドを用いなかったことを除いて実施例1と同様にシート状の架橋ゴム組成物及びダブルコグドVベルトを作製し、それらを実施例2とした。
【0088】
<実施例3>
ISAFカーボンブラックの含有量をゴム成分100質量部に対して30質量部とするとともに、共架橋剤のジメタクリル酸亜鉛の含有量もゴム成分100質量部に対して30質量部としたことを除いて実施例1と同様にシート状の架橋ゴム組成物及びダブルコグドVベルトを作製し、それらを実施例3とした。
【0089】
<実施例4>
アミルフェノールジサルファイド重合物の含有量をゴム成分100質量部に対して0.2質量部としたことを除いて実施例1と同様にシート状の架橋ゴム組成物及びダブルコグドVベルトを作製し、それらを実施例4とした。
【0090】
<実施例5>
アミルフェノールジサルファイド重合物の含有量をゴム成分100質量部に対して5質量部としたことを除いて実施例1と同様にシート状の架橋ゴム組成物及びダブルコグドVベルトを作製し、それらを実施例5とした。
【0091】
<比較例1>
アミルフェノールジサルファイド重合物及び硫黄を用いなかったことを除いて実施例1と同様にシート状の架橋ゴム組成物及びダブルコグドVベルトを作製し、それらを比較例1とした。
【0092】
<比較例2>
ポリエチレン樹脂-PETナノファイバの複合材料、アミルフェノールジサルファイド重合物、及び硫黄を用いなかったことを除いて実施例1と同様にシート状の架橋ゴム組成物及びダブルコグドVベルトを作製し、それらを比較例2とした。
【0093】
<比較例3>
ポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維を用いなかったことを除いて実施例1と同様にシート状の架橋ゴム組成物及びダブルコグドVベルトを作製し、それらを比較例3とした。
【0094】
<比較例4>
ジメタクリル酸亜鉛の含有量をゴム成分100質量部に対して40質量部とし、アミルフェノールジサルファイド重合物及び硫黄を用いなかったことを除いて実施例1と同様にシート状の架橋ゴム組成物及びダブルコグドVベルトを作製し、それらを比較例4とした。
【0095】
<比較例5>
ISAFカーボンブラックの含有量をゴム成分100質量部に対して20質量部とするとともに、ジメタクリル酸亜鉛の含有量をゴム成分100質量部に対して40質量部とし、且つアミルフェノールジサルファイド重合物及び硫黄を用いなかったことを除いて実施例1と同様にシート状の架橋ゴム組成物及びダブルコグドVベルトを作製し、それらを比較例5とした。
【0096】
<比較例6>
アミルフェノールジサルファイド重合物の含有量をゴム成分100質量部に対して10質量部としたことを除いて実施例1と同様にシート状の架橋ゴム組成物及びダブルコグドVベルトを作製し、それらを比較例6とした。
【0097】
【0098】
【0099】
(試験方法)
<切断時伸びEB>
実施例1乃至5及び比較例1乃至6のそれぞれのシート状の架橋ゴム組成物について、JIS K6251:2017に基づいて、25℃における反列理方向の切断時伸びEBを測定した。
【0100】
<貯蔵たて弾性係数E’>
実施例1乃至5及び比較例1乃至6のそれぞれのシート状の架橋ゴム組成物について、JIS K6394:2007に基づいて、引張方法により25℃における貯蔵たて弾性係数E’を測定した。測定条件は、歪み1%時の荷重の1.3倍の荷重を負荷したときの歪みを平均歪みとし、歪み振幅0.1%、周波数10Hz、及び試験温度25℃とした。
【0101】
<ベルト走行試験>
図6A及びBは、ベルト走行試験機50を示す。ベルト走行試験機50は、駆動プーリ51及び従動プーリ52を備える。駆動プーリ51及び従動プーリ52のそれぞれは、試験対象のダブルコグドVベルトBの心線中心位置での巻き掛け径が可変となるように構成されている。また、従動プーリ52は、ダブルコグドVベルトBに一定のベルト張力を発生させるように、定荷重DW(デッドウエイト)を負荷できるように構成されている。
【0102】
実施例1乃至5及び比較例1乃至6のそれぞれのダブルコグドVベルトについて、まず、
図6Aに示すように、ダブルコグドVベルトBを、その心線中心位置での巻き掛け径が99mmとなるように駆動プーリ51に巻き掛けるとともに、その心線中心位置での巻き掛け径が263mmとなるように従動プーリ52に巻き掛け、且つ従動プーリ52に1800Nの定荷重DWを負荷してベルト張力を発生させることにより低速レイアウトを構成し、その後、雰囲気温度30℃下で、駆動プーリ51を7500rpmで回転させて低速のベルト走行を開始した。そして、ダブルコグドVベルトが切断するまでベルト走行を行い、ベルト走行開始から切断までの時間を低速ベルト寿命とした。なお、ベルト走行の最長時間を200時間とした。
【0103】
また、
図6Bに示すように、ダブルコグドVベルトBを、その心線中心位置での巻き掛け径が210mmとなるように駆動プーリ51に巻き掛けるとともに、その心線中心位置での巻き掛け径が165mmとなるように従動プーリ52に巻き掛け、且つ従動プーリ52に2300Nの定荷重DWを負荷してベルト張力を発生させることにより高速レイアウトを構成し、その後、雰囲気温度100℃下で、駆動プーリ51を9400rpmで回転させて高速のベルト走行を開始した。そして、ダブルコグドVベルトが切断するまでベルト走行を行い、ベルト走行開始から切断までの時間を高速ベルト寿命とした。なお、ベルト走行の最長時間を50時間とした。
【0104】
(試験結果)
試験結果を表3に示す。表3によれば、実施例1乃至5によれば、低速及び高速のいずれのベルト走行でも優れた耐久性が得られることが分かる。一方、比較例1乃至6では、低速及び高速のいずれのベルト走行でも、優れた耐久性が得られていないことが分かる。
【0105】