(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152632
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ハンドル
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
B62D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055473
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】藤森 健志
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DA26
3D030DA35
3D030DA45
(57)【要約】
【課題】被覆部材の被保持体を樹脂層の広い範囲に設定可能で、かつ、外観に優れるステアリングホイールを提供する。
【解決手段】ステアリングホイール10は、溝部34を有する樹脂層28を備える。ステアリングホイール10は、シート部材41と、シート部材41に保持された被保持体51と、を有するシート状の被覆部材36を備える。シート部材41は、端末部41a,41bに一以上の切込部42a,42bが形成されている。シート部材41は、端末部41a,41bが溝部34に収容された状態で樹脂層28の表面に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝部を有する基材部と、
本体部と、この本体部に保持された被保持体と、を有するシート状の被覆部材と、を備え、
前記本体部は、端末部に一以上の切込部が形成され、この端末部が前記溝部に収容された状態で前記基材部の表面に配置されている
ことを特徴とするハンドル。
【請求項2】
被保持体は、本体部の端末部において、溝部に対して交差する方向にジグザグ状に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載のハンドル。
【請求項3】
切込部は、本体部の端末部において、被保持体のジグザグの凹部に対向する位置に形成されている
ことを特徴とする請求項2記載のハンドル。
【請求項4】
被覆部材は、複数備えられて互いの端末部同士が対向する状態で溝部に収容され、かつ、前記端末部において互いの被保持体のジグザグの凹部と凸部とが対向している
ことを特徴とする請求項2または3記載のハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被保持体を本体部に保持したシート状の被覆部材により基材部の表面を覆うハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のハンドルすなわちステアリングホイールに対して機能を追加付与することが要求されてきている。例えば、ヒータやセンサユニットなどの電気回路を構成する配線が施された被覆部材であるシートをステアリングホイールの把持部であるリム部の表皮部の下部に設定する構成が知られている。リム部は通常円環状または円弧状に形成されるため、略四角形状のシートでリム部全体を覆う場合には、複数枚のシートを、互いに端末部を繋ぎ合わせて用いる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-73225号公報 (第6-13頁、
図1-7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートは、その製造工程上、端末部から所定の距離の範囲が配線を配置できない非設定範囲が不可避的に生じるため、シートの端末部同士を繋ぎ合わせた箇所でも機能を十分に発揮できるようにすることが望まれる。また、シートの端末部同士を繋ぎ合わせた箇所においての見栄えが低下しないようにすることも求められる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、被覆部材の被保持体を基材部の広い範囲に設定可能で、かつ、外観に優れるハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のハンドルは、溝部を有する基材部と、本体部と、この本体部に保持された被保持体と、を有するシート状の被覆部材と、を備え、前記本体部は、端末部に一以上の切込部が形成され、この端末部が前記溝部に収容された状態で前記基材部の表面に配置されているものである。
【0007】
請求項2記載のハンドルは、請求項1記載のハンドルにおいて、被保持体は、本体部の端末部において、溝部に対して交差する方向にジグザグ状に配置されているものである。
【0008】
請求項3記載のハンドルは、請求項2記載のハンドルにおいて、切込部は、本体部の端末部において、被保持体のジグザグの凹部に対向する位置に形成されているものである。
【0009】
請求項4記載のハンドルは、請求項2または3記載のハンドルにおいて、被覆部材は、複数備えられて互いの端末部同士が対向する状態で溝部に収容され、かつ、前記端末部において互いの被保持体のジグザグの凹部と凸部とが対向しているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のハンドルによれば、切込部によって溝部に落とし込まれる本体部の端末部の基端側と先端側との寸法差を吸収できるため、端末部を溝部に対して深く、かつ、確実に収容できる。そのため、溝部のきわの位置まで被保持体を接近させて配置できるので、被覆部材の被保持体を基材部の広い範囲に設定可能となるとともに、溝部に落とし込まれる本体部の端末部の位置に皴やねじれが生じにくく、外観に優れる。
【0011】
請求項2記載のハンドルによれば、請求項1記載のハンドルの効果に加えて、溝部に収容される本体部の端末部においても被保持体の機能をジグザグのストロークの範囲において有効に発揮させることができる。
【0012】
請求項3記載のハンドルによれば、請求項2記載のハンドルの効果に加えて、被保持体を設定することができない本体部の端末部の非設定範囲を有効利用して、被保持体を本体部の端末部から大きく遠ざけることなく切込部を形成できる。
【0013】
請求項4記載のハンドルによれば、請求項2または3記載のハンドルの効果に加えて、一方の被覆部材の被保持体と他方の被覆部材の被保持体とが端末部の位置で大きく離れることがなく互いに略一定の間隔を保つので、溝部周辺の位置で被覆部材の被保持体の機能に偏りやむらを生じさせにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は本発明の一実施の形態のハンドルの被覆部材の端末部を模式的に示す平面図、(b)は
図5のI-I相当位置の断面図、(c)は
図4のII-II相当位置の断面図である。
【
図2】同上被覆部材の端末部を溝部側から模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図5において、10は例えば車両としての自動車の(ステアリング)ハンドルとしてのステアリングホイールである。このステアリングホイール10は、ハンドル本体であるステアリングホイール本体11、及び、このステアリングホイール本体11の乗員側に装着されるエアバッグ装置などのパッド体であるモジュール12などを備えている。なお、ステアリングホイール10は、通常傾斜した状態で車両に備えられるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、ステアリングホイール10を運転者(乗員)側から見て、矢印U方向を上側、矢印D方向を下側、車両の前側すなわち前側上方のフロントガラス側を前側あるいは背面側、車両の後側すなわち後側下方を後側、手前側あるいは正面側として説明する。
【0017】
そして、ステアリングホイール本体11は、把持部としてのリム部(グリップ部)15と、リム部15の内側に位置するボス部16と、これらリム部15とボス部16とを連結する複数の、本実施の形態では左右及び下部の3本のスポーク部17とから構成されている。リム部15は、運転者(乗員)により把持操作される部分である。リム部15は、少なくとも一部が円弧状に形成されている。本実施の形態において、リム部15は、円環状に形成されている。なお、以下、ステアリングホイール本体11の各部の上下左右などの配置は、ステアリングホイール10の中立(ニュートラル)位置を基準とする。また、ボス部16の下側部は、カバー体により覆われている。
【0018】
ステアリングホイール本体11は、芯金20を備えている。芯金20は、例えば金属製であり、ボス部16の車体側となる背面側に、ステアリングシャフトと歯合するセレーション構造を備えた略円筒状のボス23を備えているとともに、ボス23に、芯体を構成するボスプレート24が一体的に固着されている。そして、ボスプレート24から、スポーク部17に対応するスポーク芯金部25が連続して一体的に形成されている。さらに、スポーク部17のスポーク芯金部25に、リム部15に対応する把持部芯金としてのリム芯金部26が溶接などして固着されている。
【0019】
スポーク芯金部25は、放射状に設けられている。スポーク芯金部25は、必ずしもすべてのスポーク部17に対応していなくてもよく、一部のスポーク部17は、スポーク芯金部25を備えずにフィニッシャなどにより構成されていてもよい。本実施の形態において、スポーク芯金部25は、ボスプレート24の左右から突出してそれぞれリム芯金部26と連結されている。
【0020】
リム芯金部26は、リム部15の一部を構成するものである。リム芯金部26は、リム部15の形状に対応する形状に形成されている。すなわち、リム芯金部26は、リム部15の形状に応じて、例えば少なくとも一部が円弧状に形成されている。本実施の形態において、リム芯金部26は、円環状に形成されている。
【0021】
図1(b)、
図1(c)、及び、
図4に示すように、芯金20の少なくとも一部は、基材部である樹脂層28により覆われている。樹脂層28は、少なくともリム芯金部26を覆って形成されている。樹脂層28は、本実施の形態において、例えばリム芯金部26全体、及びスポーク芯金部25の一部を覆って形成されている。より詳細に、樹脂層28は、リム部15の位置でリム芯金部26を覆う把持部被覆部としてのリム被覆部31と、スポーク部17の位置で、スポーク芯金部25のリム芯金部26と連続する端部から所定距離の領域を覆うスポーク被覆部32と、を一体的に備えている。また、樹脂層28は、例えば断面略円形状に形成されている。そして、樹脂層28は、例えば軟質の発泡ポリウレタン樹脂を微細発泡させたものが使用される。例えば、樹脂層28は、図示しない成形型(金型)を用いて成形されている。成形型は、概略として、一の半型と、他の半型とを備え、これら一の半型と他の半型との間に形成されるキャビティに合成樹脂原料が充填されるようになっている。
【0022】
リム被覆部31は、リム芯金部26とともに、リム部15を構成する把持部本体部としてのリム部本体部33をなすものである。すなわち、樹脂層28は、芯金20とともに、リム部本体部33を構成している。リム部本体部33は、少なくとも一部が円弧状に形成されている。リム部本体部33は、本実施の形態において、円環状に形成されている。また、リム被覆部31には、溝部34が形成されている。溝部34は、本実施の形態において、例えばリム部本体部33に対し、リム部15の経線方向、つまりリム部15の断面の周方向(矢印Mで示す方向)に形成されている。したがって、溝部34は、ステアリングホイール10を正面から見て、放射状に位置している。溝部34は、所定幅の凹部として形成されている。溝部34は、リム部本体部33のリム被覆部31の経線方向の全周に亘り連なっている。本実施の形態において、溝部34は、例えば左右のスポーク部17の上側と下側とにそれぞれ形成されている。好ましくは、溝部34は、ステアリングホイール本体11を正面から見て、上下対称及び/または左右対称に配置される。図示される例では、溝部34は、ステアリングホイール本体11を正面からアナログ時計に見立てた場合の2時方向、4時方向、8時方向、及び10時方向などに配置されている。溝部34は、例えば樹脂層28を成形型により成形する際に同時に形成されてもよいし、樹脂層28の成形後に加工されて形成されてもよい。
【0023】
スポーク被覆部32は、リム被覆部31と連続し、リム被覆部31からスポーク芯金部25側に突出している。スポーク被覆部32は、本実施の形態において、例えば左右のスポーク部17(スポーク芯金部25)に対応する位置に形成されている。
【0024】
樹脂層28の少なくとも一部がシート状の機能部品である被覆部材36により覆われている。被覆部材36は、エレメントなどとも呼ばれ、樹脂層28のリム芯金部26を覆う位置すなわちリム被覆部31からスポーク芯金部25の一部を覆う位置すなわちスポーク被覆部32に亘って配置される。被覆部材36は、複数備えられる。本実施の形態において、被覆部材36は、一対備えられる。図示される例では、各被覆部材36が、樹脂層28のうち緯線方向(矢印Lで示す)に略半分ずつの表面範囲を覆う。
【0025】
図1(a)、
図1(b)及び
図3に示すように、被覆部材36は、シート状に形成された被覆部材本体としての本体部であるシート部材(マット部)41を備えている。シート部材41は、自然状態で長尺状に形成されている。シート部材41の長手方向の両端部である端末部41a,41bは、一方が凸状、他方が凹状に形成されている。本実施の形態においては、一方の端末部41aが凸弧状、他方の端末部41bが凹弧状となっている。好ましくは、一方の被覆部材36の一方の端末部41aと、他方の被覆部材36の他方の端末部41bと、が互いに噛み合う凹凸形状に形成されている。これら端末部41a,41bは、溝部34に落とし込まれて収容される部分である。
【0026】
また、シート部材41の端末部41a,41bには、一以上の切込部42a,42bが形成されている。切込部42a,42bは、シート部材41の長手方向に沿って端末部41a,41bに切り込まれている。切込部42a,42bは、シート部材41の外縁から内側に向かい徐々に幅狭となるように形成されている。つまり、切込部42a,42bは、シート部材41の端末部41a,41bの外縁に向かい拡開状に形成されている。図示される例では、切込部42a,42bは、三角形状に形成されている。本実施の形態において、切込部42a,42bは、それぞれシート部材41の短手方向に互いに離れて複数ずつ設定されている。シート部材41の端末部41a,41bにおいて、互いに隣り合う切込部42a,42a間及び切込部42b,42b間が、溝部34に落とし込まれて収容される小片状の落とし込み部43a,43bとして形成されている。本実施の形態において、一方の切込部42aと他方の切込部42bとは、シート部材41の短手方向に互いにずれて位置している。
【0027】
また、本実施の形態において、シート部材41は、リム被覆部31(リム部本体部33)を覆う第一被覆部45と、スポーク被覆部32の一部を覆う第二被覆部46と、を一体に備えている。第一被覆部45は、略長方形状に形成されている。第二被覆部46は、第一被覆部45の長辺から突出して形成されている。
【0028】
さらに、図示される例では、シート部材41には、第一被覆部45の両側部に、切欠部48が形成されている。これら切欠部48は、シート部材41の長手方向の中間部に配置されている。これら切欠部48間のシート部材41の部分が、溝部34に落とし込まれて収容される中間落とし込み部49となっている。本実施の形態において、切欠部48は、第一被覆部45の両長辺にそれぞれ形成されている。
【0029】
シート部材41には、被保持体51が保持される。被保持体51は、図示しない制御回路や給電源などに対して直接、または電力受け部などを介して間接的に接続される導電部である。本実施の形態では、被保持体51に通電されることにより、被覆部材36が、リム部15を把持する運転者の手指を温めるように構成されたヒータユニットとして機能する。これに限らず、被覆部材36は、被保持体51に通電されることにより運転者によるリム部15の把持(把持の有無)を検出するためのセンサユニットとして機能するものなどでもよい。
【0030】
被保持体51は、シート部材41に対して所定の面状の領域を占めるように設定されている。被保持体51が設定されている領域が、リム部15において被覆部材36の機能が作用する作用範囲となっている。被保持体51は、シート部材41の外縁から所定距離オフセットされた範囲A(
図3の網掛部分)内に位置し、この範囲Aよりもシート部材41の外縁側が所定幅の非設定範囲Bとなっている。
【0031】
非設定範囲Bは、被覆部材36の製造工程上の被保持体51の配置限界として不可避的に生じる被保持体51の配置不能部分である。特に、非設定範囲Bは、シート部材41の端末部41a,41bの位置において、シート部材41の外縁から所定距離、例えば5mm程度の幅で生じる。
【0032】
本実施の形態において、被保持体51は、線状に形成されており、一筆書き状つまり自己交差を有しない所定パターンに配置されている。また、被保持体51は、シート部材41の端末部41a,41bに対向する位置でジグザグ状に配置されている。つまり、被保持体51は、端末部41a,41bにおいて、シート部材41の短手方向に凹部52と凸部53とが交互に並ぶように形成されている。好ましくは、凹部52に対向する位置に、シート部材41の切込部42a,42bが対向して位置する。
【0033】
また、図示される例では、被保持体51は、範囲A内において、シート部材41の中間落とし込み部49の位置での配置の密度が、その他の位置での配置の密度よりも粗となっている。例えば、被保持体51は、中間落とし込み部49の位置では、中間落とし込み部49と交差する直線状などに配置されている。
【0034】
さらに、被保持体51は、シート部材41の第二被覆部46から延出される延出部55を介して制御回路や給電源などに対して端子部56を介して電気的に接続される。本実施の形態において、一対の被覆部材36の延出部55は互いに連結され、ワイヤハーネス状の接続用の端子部56が延出部55から導出されている。
【0035】
なお、被保持体51は、シート部材41とは別体の線材により形成されてシート部材41に固定されたものでもよいし、シート部材41の表面に一体的に印刷により形成されたものでもよい。
【0036】
被覆部材36は、接着剤により樹脂層28(リム部本体部33)に対して接着固定される。接着剤は、被覆部材36と樹脂層28(リム部本体部33)との少なくともいずれかに設定されている。接着剤は、被覆部材36のシート部材41の裏面側、すなわちリム部本体部33側に予め設定されていてもよいし、被覆部材36をリム部本体部33に対して貼り付ける際に塗布されてもよい。
【0037】
また、被覆部材36の表面は、
図1(b)に示す表皮部58により覆われている。表皮部58は、運転者(乗員)により直接把持される部分であり、ステアリングホイール10の加飾部である。表皮部58は、例えば天然皮革や合成皮革などの皮革、あるいは合成樹脂などによりシート状に形成されている。表皮部58は、被覆部材36を覆ってリム部本体部33に取り付けられる。例えば、表皮部58は、被覆部材36を覆って、リム部本体部33の表面全体を連続的に覆うように配置されている。本実施の形態において、表皮部58は、端末部58a,58bが溝部34の位置にそれぞれ落とし込まれて収容されて固定され、リム部15の運転者(乗員)側に、いわゆる木目込み風の線状の意匠部59を構成している。図示される例では、表皮部58は、複数、例えば一対設定される。これに限らず、表皮部58は、ウレタンなどの合成樹脂により溝部34を含む樹脂層28の表面を覆い隠すように一体的に成形されていてもよい。
【0038】
そして、ステアリングホイール10を製造する際には、まず、予め成形された芯金20を成形型にセットした後、一の半型と他の半型とを型合わせ(型閉)して形成したキャビティに対して、合成樹脂原料を攪拌混合して成形型のキャビティ内に射出する。この結果、合成樹脂原料が発泡を伴いながら反応してポリウレタンとなりつつ流動末端に向かって流れていく。
【0039】
次いで、キャビティ内で樹脂層28がリム芯金部26を覆って形成された第1中間体を、一の半型と他の半型とを型開きして成形型から脱型し、ばりなどをカットする。
【0040】
さらに、第1中間体の樹脂層28(リム部本体部33)の表面に、別途形成した被覆部材36を巻き付ける。このとき、一方の被覆部材36のシート部材41の端末部41aと他方の被覆部材36のシート部材41の端末部41bとを互いに対向させ、落とし込み部43a,43bを溝部34に落とし込んで収容するとともに、それぞれの被覆部材36の中間落とし込み部49を溝部34に落とし込んで収容する。
【0041】
このとき、溝部34は、樹脂層28(リム部本体部33)の経線方向に円弧状または環状に形成されているため、溝部34の開口縁側と底部側とでは周長が異なる。そのため、端末部41a,41bの落とし込み部43a,43bをそのまま溝部34に落とし込む場合、落とし込み部43a,43bの基端側と先端側とでの溝部34の周長差によって端末部41a,41b(落とし込み部43a,43b)を溝部34の十分奥まで挿入することができず、また、端末部41a,41bが先端側で余って皴やねじれが生じることとなる。そこで、本実施の形態では、一方の被覆部材36のシート部材41の端末部41aと他方の被覆部材36のシート部材41の端末部41bとは、
図1(c)及び
図2に示すように、切込部42a,42bにより落とし込み部43a,43bの基端側と先端側との寸法差を吸収し、端末部41a,41bの落とし込み部43a,43bを溝部34の深くへと、皴やねじれを発生させることなく綺麗に押し込むことができる。
【0042】
この状態で、各被覆部材36の被保持体51は、シート部材41の端末部41a,41bにおいて、溝部34に対して交差する方向にジグザグ状に配置され、特に凸部53が溝部34のきわ(開口縁)まで接近して位置する。また、一方の被覆部材36の被保持体51のジグザグの凹部52が、対向する他方の被覆部材36の被保持体51のジグザグの凸部53と対向する。すなわち、一方の被覆部材36の被保持体51と他方の被覆部材36の被保持体51とが樹脂層28(リム部本体部33)の緯線方向に互い違いとなった状態、つまり一方の被覆部材36の被保持体51の凹部52と他方の被覆部材36の被保持体51の凸部53とが互いに樹脂層28(リム部本体部33)の緯線方向に噛み合った状態で対向して溝部34に近接して位置する。
【0043】
この後、各被覆部材36は、接着剤により貼り付けて第1中間体の樹脂層28(リム部本体部33)の表面に固定する。さらに、被覆部材36を表皮部58により覆う。このとき、一方の表皮部58の端末部58aと他方の表皮部58の端末部58bとの表面側を互いに突き合せ、溝部34にそれぞれ落とし込んで固定し、意匠部59を形成する。
【0044】
このステアリングホイール本体11は、被覆部材36の機能部品を制御回路と電気的に接続し、モジュール12やカバー体などを取り付けて、ステアリングホイール10が完成する。
【0045】
このように、本実施の形態では、被保持体51を保持する被覆部材36のシート部材41の端末部41a,41bに一以上の切込部42a,42bを形成し、端末部41a,41bを溝部34に収容した状態で樹脂層28の表面に被覆部材36を取り付けることで、切込部42a,42bによって溝部34に落とし込まれるシート部材41,41の端末部41a,41bの落とし込み部43a,43bの基端側と先端側との寸法差を切込部42a,42bによって吸収できるため、端末部41a,41bを溝部34に対して深く、かつ、確実に収容できる。特に、対をなす被覆部材36のうち、一方の被覆部材36の端末部41aと他方の被覆部材36の端末部41bとを互いに対向させて溝部34に収容する構成の場合であっても、端末部41a,41bが、落とし込み部43a,43bの基端側と先端側との寸法差によって生じる余剰部分の皴やねじれにより互いの溝部34への挿入を阻害しにくくなる。
【0046】
そのため、溝部34のきわ(開口縁近傍)の位置まで被保持体51を接近させて配置できるので、被覆部材36の被保持体51を樹脂層28の可能な限り広い範囲に設定可能となるとともに、溝部34に落とし込まれるシート部材41の端末部41a,41bの位置に皴やねじれが生じにくく、表皮部58により覆った状態でも溝部34(意匠部59)の位置に大きな凹凸などが生じにくくなり、外観に優れる。したがって、被保持体51の機能をステアリングホイール10のリム部15全体で大きな偏りなく発揮させることができる。例えば被覆部材36をヒータユニットとする場合には、被保持体51によりリム部15全体を略均一に温めることが可能になり、性能が向上する。
【0047】
例えば、
図1(b)に示す例の場合、一方の被覆部材36の端末部41aの被保持体51と、他方の被覆部材36の端末部41bの被保持体51と、の間の距離は、溝部34の幅寸法と同等程度(5.6mm程度)となる。したがって、この距離は、一般的な人間の指一本幅の半分程度の距離に設定されるため、被覆部材36をヒータユニットとする場合でも、溝部34の近傍の位置が温まらないという感覚が生じにくい。
【0048】
しかも、従来例と比較して追加の部品が不要であり、安価に品質及び外観の向上を図ることができる。
【0049】
被保持体51をシート部材41の端末部41a,41bにおいて溝部34に対して交差する方向にジグザグ状に配置することで、溝部34に収容されるシート部材41の端末部41a,41bにおいても被保持体51の機能をジグザグのストロークの範囲において有効に発揮させることができる。例えば被覆部材36をヒータユニットとする場合には、被保持体51が溝部34のきわの位置で凹部52と凸部53とのジグザグのストロークの範囲を温めることが可能になり、性能が向上する。
【0050】
切込部42a,42bをシート部材41の端末部41a,41bにおいて被保持体51のジグザグの凹部52に対向する位置に形成することで、被保持体51を設定することができないシート部材41の端末部41a,41bの非設定範囲Bを有効利用して、被保持体51をシート部材41の端末部41a,41bから大きく遠ざけることなく切込部42a,42bを形成できる。
【0051】
また、複数の被覆部材36の互いの端末部41a,41bと端末部41b,41aとを対向させた状態で溝部34に収容する構成とし、一方の被覆部材36の端末部41a,41bと他方の被覆部材36の端末部41b,41aとで被保持体51のジグザグの凹部52と凸部53とを対向させることで、例えば凹部52と凹部52とを対向させる場合と比較して、一方の被覆部材36の被保持体51と他方の被覆部材36の被保持体51とが端末部41a,41bの位置で大きく離れることがなく互いに略一定の間隔を保つので、溝部34周辺の位置で被覆部材36の被保持体51の機能に偏りやむらを生じさせにくくなる。
【0052】
なお、一実施の形態において、被保持体としては、例えば磁石(マッサージマグネット)や加飾部材など、回路部以外のものを用いることも可能である。
【0053】
また、溝部34は、ステアリングホイール10のデザインなどに応じて、その位置や数を任意に設定できる。
【0054】
さらに、ステアリングホイール10は、3本のスポーク部17を備えた構成に限られず、2本、あるいは4本以上のスポーク部17を備えた構成などとすることもできる。
【0055】
そして、ステアリングホイール10は、自動車などの車両だけでなく、任意の乗物のステアリング用のハンドルとして用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば自動車のステアリングホイールに用いるステアリング用エレメント、そのステアリング用エレメントを備えるステアリングホイール、及びその製造方法として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 ハンドルとしてのステアリングホイール
28 基材部である樹脂層
34 溝部
36 被覆部材
41 本体部であるシート部材
41a,41b 端末部
42a,42b 切込部
51 被保持体
52 凹部
53 凸部