(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152634
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】伝動ベルト
(51)【国際特許分類】
F16G 1/08 20060101AFI20221004BHJP
F16G 1/28 20060101ALI20221004BHJP
F16G 5/20 20060101ALI20221004BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20221004BHJP
C08L 77/10 20060101ALI20221004BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F16G1/08 Z
F16G1/08 C
F16G1/28 A
F16G5/20 A
C08L21/00
C08L77/10
C08K7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055475
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上月 潤二
(72)【発明者】
【氏名】木村 勝起
(72)【発明者】
【氏名】松田 和朗
(72)【発明者】
【氏名】米田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芳史
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB013
4J002AC001
4J002AC091
4J002BB151
4J002CF003
4J002CL003
4J002CL062
4J002FA042
4J002FA043
4J002FD012
4J002FD013
4J002FD140
4J002FD150
4J002GM00
(57)【要約】
【課題】高性能の伝動ベルトを提供する。
【解決手段】伝動ベルトBは、ベルト本体11の少なくとも一部分111が、ゴム成分と、繊維径が1μm以下のナノファイバと、繊維径が10μm以上のパラ系アラミド短繊維とを含有するとともに、列理方向がベルト幅方向となるように設けられた架橋ゴム組成物で形成されている。前記架橋ゴム組成物は、パラ系アラミド短繊維の含有量が、ゴム成分100質量部に対して20質量部よりも多く、且つ25℃における列理方向の貯蔵たて弾性係数の反列理方向の貯蔵たて弾性係数に対する比が12以上である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体の少なくとも一部分が、ゴム成分と、繊維径が1μm以下のナノファイバと、繊維径が10μm以上のパラ系アラミド短繊維と、を含有するとともに、列理方向がベルト幅方向となるように設けられた架橋ゴム組成物で形成された伝動ベルトであって、
前記架橋ゴム組成物は、前記パラ系アラミド短繊維の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して20質量部よりも多く、且つ25℃における列理方向の貯蔵たて弾性係数の反列理方向の貯蔵たて弾性係数に対する比が12以上である伝動ベルト。
【請求項2】
請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
前記ナノファイバの繊維長の繊維径に対する比が300以上5000以下である伝動ベルト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された伝動ベルトにおいて、
前記パラ系アラミド短繊維の繊維長の繊維径に対する比が30以上500以下である伝動ベルト。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記架橋ゴム組成物における前記ナノファイバの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して1質量部以上5質量部以下である伝動ベルト。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記架橋ゴム組成物の25℃における列理方向の貯蔵たて弾性係数が900MPa以上である伝動ベルト。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記伝動ベルトがVベルト又はVリブドベルトである伝動ベルト。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載された伝動ベルトにおいて、
前記伝動ベルトが歯付ベルト又は平ベルトである伝動ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維径が1μm以下のナノファイバを補強材料として用いることが知られている。例えば、特許文献1には、VベルトのV側面を構成する圧縮ゴム層を、ゴム成分と、ポリエチレンテレフタレート繊維のナノファイバと、パラ系アラミド短繊維とを含有する架橋ゴム組成物で形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、高性能の伝動ベルトを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ベルト本体の少なくとも一部分が、ゴム成分と、繊維径が1μm以下のナノファイバと、繊維径が10μm以上のパラ系アラミド短繊維とを含有するとともに、列理方向がベルト幅方向となるように設けられた架橋ゴム組成物で形成された伝動ベルトであって、前記架橋ゴム組成物は、前記パラ系アラミド短繊維の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して20質量部よりも多く、且つ25℃における列理方向の貯蔵たて弾性係数の反列理方向の貯蔵たて弾性係数に対する比が12以上である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ベルト本体の少なくとも一部分を形成する架橋ゴム組成物が、ナノファイバとパラ系アラミド短繊維とを含有するとともに、列理方向がベルト幅方向となるように設けられ、加えて、パラ系アラミド短繊維の含有量がゴム成分100質量部に対して20質量部よりも多く、且つ25℃における列理方向の貯蔵たて弾性係数の反列理方向の貯蔵たて弾性係数に対する比が12以上であることにより高性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】実施形態に係るダブルコグドVベルトの一片の斜視図である。
【
図1B】実施形態に係るダブルコグドVベルトの一部分の縦断面図である。
【
図1C】実施形態に係るダブルコグドVベルトの横断面図である。
【
図2A】実施形態のダブルコグドVベルトを用いた変速装置の構成を示す横断面図である。
【
図2B】実施形態のダブルコグドVベルトを用いた変速装置の構成を示す縦断面図である。
【
図4A】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第1の説明図である。
【
図4B】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第2の説明図である。
【
図4C】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第3の説明図である。
【
図4D】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第4の説明図である。
【
図4E】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第5の説明図である。
【
図4F】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第6の説明図である。
【
図4G】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第7の説明図である。
【
図4H】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における成形・架橋工程の第8の説明図である。
【
図5A】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における幅カット・V側面形成工程の第1の説明図である。
【
図5B】実施形態のダブルコグドVベルトの製造方法における幅カット・V側面形成工程の第2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1A乃至Cは、実施形態に係るダブルコグドVベルトB(伝動ベルト)を示す。実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、例えば、自動二輪の変速装置等に用いられるエンドレスの動力伝達部材である。
【0010】
実施形態に係るダブルコグドVベルトBの横断面形状は、内周側部分が上底よりも下底の方が短い台形に形成されているとともに、外周側部分が横に細長い矩形に形成されている。実施形態に係るダブルコグドVベルトBのベルト長さは例えば700mm以上1000mm以下である。ベルト幅は例えば10mm以上36mm以下である。ベルト厚さは例えば13mm以上16mm以下である。
【0011】
実施形態に係るダブルコグドVベルトBの内周側には、下コグCLがベルト長さ方向に沿って一定ピッチで配設されている。下コグCLの縦断面外郭は、正弦波形状に形成されている。実施形態に係るダブルコグドVベルトBの外周側には、上コグCUがベルト長さ方向に沿って一定ピッチで配設されている。上コグCUの縦断面外郭は、台形状に形成されている。
【0012】
実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、ゴム部材のベルト本体11と、繊維部材の補強布12及び心線13とを備える。ベルト本体11は、内周側の圧縮ゴム層111と、外周側の伸張ゴム層112と、それらの間の接着ゴム層113とを有する。補強布12は、圧縮ゴム層111の内周面を被覆して下コグCLを構成するように設けられている。心線13は、接着ゴム層113のベルト厚さ方向の中間部に埋設されているとともに、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように設けられている。
【0013】
圧縮ゴム層111の両側には、プーリ接触面となるV側面111aが構成されている。V側面111aがなす横断面におけるV角度は、例えば27°以上33°以下である。
【0014】
V側面111aを構成する部分である圧縮ゴム層111は、架橋ゴム組成物Xで形成されている。架橋ゴム組成物Xは、ゴム成分と、ナノファイバと、パラ系アラミド短繊維とを含有する。
【0015】
ゴム成分としては、例えば、エチレン-α-オレフィンエラストマー(EPDM,EPR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H-NBR)等が挙げられる。ゴム成分は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、エチレン-α-オレフィンエラストマー(EPDM,EPR)又はクロロプレンゴム(CR)を含むことがより好ましい。
【0016】
ゴム成分がエチレン-α-オレフィンエラストマーを含む場合、そのエチレン含量は、優れた耐久性を得る観点から、好ましくは45質量%以上55質量%以下、より好ましくは50質量%以上53質量%以下である。ゴム成分がEPDMを含む場合、そのジエン成分は、優れた耐久性を得る観点から、エチリデンノルボルネン(ENB)であることが好ましく、そのジエン含量(ENB含量)は、同様の観点から、好ましくは6質量%以上12質量%以下、より好ましくは7質量%以上8質量%以下である。
【0017】
ゴム成分がエチレン-α-オレフィンエラストマーを含む場合、そのエチレン-α-オレフィンエラストマーの125℃におけるムーニー粘度は、パラ系アラミド短繊維の配合量が多い場合でも優れた混練加工性を得る観点から、好ましくは20ML1+4(125℃)以上35ML1+4(125℃)以下、より好ましくは25ML1+4(125℃)以上30ML1+4(125℃)以下である。ゴム成分がクロロプレンゴムを含む場合、そのクロロプレンゴムの100℃におけるムーニー粘度は、パラ系アラミド短繊維の配合量が多い場合でも優れた混練加工性を得る観点から、好ましくは35ML1+4(100℃)以上50ML1+4(100℃)以下、より好ましくは40ML1+4(100℃)以上45ML1+4(100℃)以下である。ムーニー粘度は、JISK6300に基づいて測定される。
【0018】
ナノファイバは、繊維径D1が1μm以下(1000nm以下)の微細繊維である。ナノファイバの繊維径D1は、好ましくは300nm以上1000nm以下、より好ましくは500nm以上900nm以下である。ナノファイバの繊維長L1は、好ましくは0.3mm以上5mm以下、より好ましくは0.5mm以上1.5mm以下である。ナノファイバの繊維長L1の繊維径D1に対する比(L1/D1:アスペクト比)は、好ましくは300以上5000以下、より好ましくは1200以上2000以下、更に好ましくは1350以上1500以下である。
【0019】
ナノファイバとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維(以下「PET繊維」という。)やポリアミド繊維(6-ナイロン繊維,6,6-ナイロン繊維)などの合成繊維のナノファイバ;セルロースナノファイバなどの天然由来繊維のナノファイバ等が挙げられる。ナノファイバは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、PET繊維のナノファイバを含むことがより好ましい。
【0020】
架橋ゴム組成物Xにおけるナノファイバの含有量A1は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上5質量部以下、より好ましくは2質量部以上3質量部以下である。架橋ゴム組成物Xにおけるナノファイバの体積含有率B1は、好ましくは0.8体積%以上1.5体積%以下、より好ましくは0.9体積%以上1.1体積%以下である。
【0021】
パラ系アラミド短繊維は、繊維径D2が10μm以上である。パラ系アラミド短繊維の繊維径D2は、好ましくは10μm以上20μm以下、より好ましくは11μm以上13μm以下である。パラ系アラミド短繊維の繊維径D2のナノファイバの繊維径D1に対する比(D2/D1)は、好ましくは10以上70以下、より好ましくは15以上20以下である。パラ系アラミド短繊維のフィラメントの繊度は、好ましくは1dtex以上5dtex以下、より好ましくは1.4dtex以上1.6dtex以下である。
【0022】
パラ系アラミド短繊維の繊維長L2は、好ましくは1mm以上10mm以下、より好ましくは2mm以上4mm以下である。パラ系アラミド短繊維の繊維長L2は、ナノファイバの繊維長L1よりも長いことが好ましい。パラ系アラミド短繊維の繊維長L2のナノファイバの繊維長L1に対する比(L2/L1)は、好ましくは1.1以上5以下、より好ましくは2.5以上3.5以下である。
【0023】
パラ系アラミド短繊維の繊維長L2の繊維径D2に対する比(L2/D2:アスペクト比)は、好ましくは30以上500以下、より好ましくは200以上300以下である。パラ系アラミド短繊維のアスペクト比(L2/D2)は、ナノファイバのアスペクト比(L1/D1)よりも小さいことが好ましい。パラ系アラミド短繊維のアスペクト比(L2/D2)のナノファイバのアスペクト比(L1/D1)に対する比(L2/D2/L1/D1)は、好ましくは0.1以上0.5以下、より好ましくは0.15以上0.2以下である。
【0024】
パラ系アラミド短繊維としては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維及びコポリパラフェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド短繊維が挙げられる。市販のポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維としては、例えば、帝人社製のトワロン並びにデュポン社製のケブラー29、ケブラー49、ケブラー119、及びケブラー129が挙げられる。市販のコポリパラフェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド短繊維としては、帝人社製のテクノーラが挙げられる。パラ系アラミド短繊維は、これらのうちの一方又は両方を含むことが好ましい。パラ系アラミド短繊維は、架橋ゴム組成物X内においてフィブリル化して補強効果を高めていることが好ましく、かかる観点から、フィブリル化が容易なポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維を含むことがより好ましい。
【0025】
架橋ゴム組成物Xにおけるパラ系アラミド短繊維の含有量A2は、ゴム成分100質量部に対して20質量部よりも多く、好ましくは23質量部以上40質量部以下、より好ましくは27質量部以上30質量部以下である。パラ系アラミド短繊維の含有量A2は、ナノファイバの含有量A1よりも多いことが好ましい。パラ系アラミド短繊維の含有量A2のナノファイバの含有量A1に対する比(A2/A1)は、好ましくは10以上16以下、より好ましくは11以上12以下である。ナノファイバ及びパラ系アラミド短繊維の含有量の和(A1+A2)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは24質量部以上45質量部以下、より好ましくは29質量部以上33質量部以下である。
【0026】
架橋ゴム組成物Xにおけるパラ系アラミド短繊維の体積含有率B2は、好ましくは10体積%以上13体積%以下、より好ましくは11体積%以上12.4体積%以下である。パラ系アラミド短繊維の体積含有率B2は、ナノファイバの体積含有率B1よりも大きいことが好ましい。パラ系アラミド短繊維の体積含有率B2のナノファイバの体積含有率B1に対する比(B2/B1)は、好ましくは8以上15以下、より好ましくは9以上10以下である。ナノファイバ及びパラ系アラミド短繊維の体積含有率の和(B1+B2)は、好ましくは10体積%以上15体積%以下、より好ましくは12.5体積%以上13.5体積%以下である。
【0027】
架橋ゴム組成物Xでは、ナノファイバ及びパラ系アラミド短繊維が、ゴム成分に分散するとともに、列理方向に配向している。架橋ゴム組成物Xは、そのナノファイバ及びパラ系アラミド短繊維の配向方向である列理方向がベルト幅方向となるように設けられている。
【0028】
架橋ゴム組成物Xは、その他、後述の複合材料におけるナノファイバ以外の部分を構成する熱可塑性樹脂、カーボンブラックなどの補強材、可塑剤、加工助剤等を含有していてもよい。
【0029】
架橋ゴム組成物Xは、架橋剤として有機過酸化物が用いられてゴム成分が架橋していてもよく、また、架橋剤として硫黄が用いられてゴム成分が架橋していてもよく、さらに、架橋剤として有機過酸化物及び硫黄が併用されてゴム成分が架橋していてもよい。ゴム成分がCRを含む場合、架橋剤として酸化マグネシウム等の金属酸化物が用いられてゴム成分が架橋していてもよい。
【0030】
架橋ゴム組成物Xの25℃における列理方向の貯蔵たて弾性係数E’1の反列理方向の貯蔵たて弾性係数E’2に対する比(E’1/E’2)は、12以上であって、好ましくは15以上20以下、より好ましくは17以上18以下である。架橋ゴム組成物Xの25℃における列理方向の貯蔵たて弾性係数E’1は、JIS K6394:2007に基づいて、歪み1%時の荷重の1.3倍の荷重を負荷したときの歪みを平均歪みとし、歪み振幅0.1%、周波数10Hz、及び試験温度25℃として引張方法により測定される。反列理方向の貯蔵たて弾性係数E’2は、平均歪み5%、歪み振幅1%、周波数10Hz、及び試験温度25℃として引張方法により測定される。
【0031】
架橋ゴム組成物Xの25℃における列理方向の貯蔵たて弾性係数E’1は、好ましくは900MPa以上1250MPa以下、より好ましくは1000MPa以上1100MPa以下である。25℃における反列理方向の貯蔵たて弾性係数E’2は、好ましくは50MPa以上70MPa以下、より好ましくは55MPa以上65MPa以下である。
【0032】
伸張ゴム層112及び接着ゴム層113は、架橋ゴム組成物で形成されている。伸張ゴム層112及び接着ゴム層113は、圧縮ゴム層111と同一の架橋ゴム組成物Xで形成されていてもよい。
【0033】
補強布12は、例えば、合成繊維や天然繊維で形成された織布、編物、不織布等で構成されている。補強布12は、ベルト本体11に対する接着性を付与するための接着処理が施されていることが好ましい。なお、同様の構成の補強布が伸張ゴム層112の外周面も被覆するように設けられていてもよい。
【0034】
心線13は、合成繊維で形成された撚り糸等で構成されている。心線13は、ベルト本体11に対する接着性を付与するための接着処理が施されていることが好ましい。
【0035】
以上の構成の実施形態に係るダブルコグドVベルトBでは、V側面111aを構成する部分である圧縮ゴム層111を形成する架橋ゴム組成物Xが、ナノファイバとパラ系アラミド短繊維とを含有するとともに、列理方向がベルト幅方向となるように設けられている。そして、架橋ゴム組成物Xは、パラ系アラミド短繊維の含有量A2がゴム成分100質量部に対して20質量部よりも多く、且つ25℃における列理方向の貯蔵たて弾性係数の反列理方向の貯蔵たて弾性係数に対する比が12以上である。これにより、実施形態に係るダブルコグドVベルトBによれば、高性能を得ることができる。具体的には、ベルト幅方向に相対的に高剛性であることからプーリからの側圧への対抗性が優れるとともに、ベルト長さ方向に相対的に低剛性であることから耐屈曲性が優れ、それによって高効率を得ることができる。
【0036】
図2A及びBは、実施形態に係るダブルコグドVベルトBを用いた自動二輪車等の変速装置20を示す。
【0037】
この変速装置20は、回転軸が平行になるように配置された駆動プーリ21及び従動プーリ22を備える。そして、実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、それら駆動プーリ21及び従動プーリ22の間に巻き掛けられている。
【0038】
駆動プーリ21及び従動プーリ22は、それぞれ軸方向に移動不能な固定シーブ211,221と、軸方向に移動可能な可動シーブ212,222とを有する。そして、これらの駆動プーリ21及び従動プーリ22のそれぞれにおける固定シーブ211,221と、可動シーブ212,222との間に、実施形態に係るダブルコグドVベルトBが嵌まるV溝23が構成されている。
【0039】
V溝23は、固定シーブ211,221に対して可動シーブ212,222が近づく方向に移動すると、溝幅が狭くなる。このとき、実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、V溝23内を外周側に押し上げられてベルトピッチラインL1,L2の巻き掛かり径、つまり、プーリ径が大きくなる。一方、V溝23は、固定シーブ211,221に対して可動シーブ212,222が離れる方向に移動すると、溝幅が広くなる。このとき、実施形態に係るダブルコグドVベルトBは、V溝23内を内周側に沈み込んでプーリ径が小さくなる。
【0040】
以上の構成により、この変速装置20では、駆動プーリ21のプーリ径が小さく且つ従動プーリ22のプーリ径が大きい低速モードと、駆動プーリ21のプーリ径が大きく且つ従動プーリ22のプーリ径が小さい高速モードとの間で、駆動プーリ21及び従動プーリ22のプーリ径の比を変化させ、それによりダブルコグドVベルトBを介して、駆動プーリ21の回転速度を、従動プーリ22に連続的に変速して伝達する。
【0041】
次に、実施形態に係るダブルコグドVベルトBの製造方法について
図3及び4A乃至Jに基づいて説明する。
【0042】
<部材準備工程>
部材準備工程では、まず、ゴム成分と、
図3に示すような熱可塑性樹脂Rの海及びナノファイバFの収束体の多数の島の海島構造を有する複合材料Mと、パラ系アラミド短繊維と、その他のゴム配合剤とを混練することにより、ゴム成分にナノファイバ及びパラ系アラミド短繊維が分散した塊状の未架橋ゴム組成物の混練物を調製する。
【0043】
次いで、その塊状の未架橋ゴム組成物の混練物を圧延することにより、圧縮ゴム層111を形成するための未架橋ゴムシートを作製する。なお、未架橋ゴムシートは、圧延方向である列理方向にナノファイバ及びパラ系アラミド短繊維が配向したものとなる。
【0044】
ここで、複合材料Mは、熱可塑性樹脂Rの海ポリマー中に、ナノファイバFが互いに独立し且つ並列して島状に存在したコンジュゲート繊維をロッド状に切断したものである。複合材料Mの外径は、例えば10μm以上100μm以下である。複合材料Mの長さは、ナノファイバFの繊維長L1と同一であって、好ましくは0.3mm以上5mm以下、より好ましくは0.5mm以上1.5mm以下である。
【0045】
熱可塑性樹脂Rとしては、例えば、ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂Rは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂Rは、混練時にゴム成分に拡散するので、ゴム成分との相溶性が高いことが好ましい。したがって、可塑性樹脂Rは、ゴム成分が低極性の場合には、低極性のポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂等を含むことが好ましい。特に、ゴム成分がエチレン-α-オレフィンエラストマー(EPDM,EPR)を含む場合には、熱可塑性樹脂Rは、ポリエチレン樹脂を含むことが好ましい。また、熱可塑性樹脂Rは、ゴム成分がニトリルゴム(NBR)のような高極性の場合には、高極性のポリエチレン樹脂にマレイン酸などの極性基を導入して変性したもの、ナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂等を含むことが好ましい。
【0046】
複合材料MにおけるナノファイバFの含有量は、例えば30質量%以上95質量%以下である。複合材料MにおけるナノファイバFの本数は、例えば10本以上1000本以下である。
【0047】
同様に、伸張ゴム層112を形成するための未架橋ゴムシート、及び接着ゴム層113を形成するための未架橋ゴムシートも作製する。また、補強布12及び心線13にそれぞれ所定の接着処理を行う。
【0048】
<成形・架橋工程>
成形・架橋工程では、まず、
図4Aに示すように、第1円筒型311の外周面上に、補強布12及び圧縮ゴム層111を形成するための未架橋ゴムシート111’を順に巻き付けて下コグ成形体40’を成形する。このとき、補強布12を、第1円筒型311の外周の周方向に連設された下コグ形成溝311aに沿うように設ける。また、未架橋ゴムシート111’を、その列理方向が第1円筒型311の軸方向、したがって、ベルト幅方向となるように設ける。
【0049】
次いで、
図4Bに示すように、第1円筒型311上の下コグ成形体40’に、内周面が平滑な第1ゴムスリーブ312を被せ、それを加硫缶内に配置して密閉するとともに、加硫缶内に高温及び高圧の蒸気を充填し、その状態を所定時間だけ保持する。このとき、未架橋ゴムシート111’が流動して下コグ形成溝311aに圧入されるとともに、その架橋が半分程度進行し、且つ補強布12と複合化し、
図4Cに示すような内周側に下コグC
Lが形成された円筒状の下コグ複合体40が成型される。
【0050】
次いで、加硫缶内から蒸気を排出して密閉を解き、第1円筒型311を取り出すとともに第1ゴムスリーブ312を外して冷却した後、
図4Dに示すように、第1円筒型311上に成型された下コグ複合体40の外周部を刃物で削って厚みを調整する。
【0051】
次いで、第1円筒型311から下コグ複合体40を脱型した後、4Eに示すように、それを第2円筒型321に外嵌めする。このとき、下コグ複合体40を、その下コグCLが第2円筒型321の外周の周方向に連設された下コグ嵌合溝321aに嵌まるように設ける。
【0052】
次いで、
図4Fに示すように、第2円筒型321上の下コグ複合体40上に、接着ゴム層113を形成するための未架橋ゴムシート113’を巻き付け、その上から心線13を螺旋状に巻き付け、その上から更に接着ゴム層113を形成するための未架橋ゴムシート113’及び伸張ゴム層112を形成するための未架橋ゴムシート112’を順に巻き付けて未架橋スラブS’を成形する。
【0053】
次いで、
図4Gに示すように、未架橋スラブS’に第2ゴムスリーブ322を被せ、それを加硫缶内に配置して密閉するとともに、加硫缶内に高温及び高圧の蒸気を充填し、その状態を所定時間だけ保持する。このとき、下コグ複合体40の本架橋が進行する。それと同時に、接着ゴム層113を形成するための未架橋ゴムシート113’も架橋が進行して心線13と複合化する。また、伸張ゴム層112を形成するための未架橋ゴムシート112’が流動して第2ゴムスリーブ322の内周の周方向に連設された上コグ形成溝322aに圧入されるとともに、その架橋が進行する。そして、
図4Hに示すように、全体が一体化されて円筒状のベルトスラブSが成型される。
【0054】
<幅カット・V側面形成工程>
加硫缶内から蒸気を排出して密閉を解き、第2円筒型321を取り出すとともに第2ゴムスリーブ322を外して冷却した後、第2円筒型321からベルトスラブSを脱型する。
【0055】
そして、
図5Aに示すように、ベルトスラブSを所定幅に幅切りした後、
図5Bに示すように、両側面を刃物で切断してV側面111aを形成することにより実施形態に係るダブルコグドVドベルトBを得る。
【0056】
なお、上記実施形態では、ダブルコグドVドベルトBを示したが、特にこれに限定されるものではなく、下コグだけを有するシングルコグドVベルトであってもよく、また、コグを有さないローエッジVベルトであってもよい。また、VリブのV側面を構成する部分が架橋ゴム組成物Xで形成されたVリブドベルトであってもよく、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、ベルト本体の少なくとも一部分が架橋ゴム組成物Xで形成された歯付ベルトや平ベルトであってもよく、高性能を得ることができる。具体的には、これらの場合、架橋ゴム組成物Xは、列理方向がベルト幅方向及び反列理方向がベルト長さ方向となるように設けられ、ベルト幅方向に相対的に高剛性であることからベルト幅方向における反りを抑制することができるとともに、ベルト長さ方向に相対的に低剛性であることから小さな力で屈曲させてプーリに巻き掛けることができ、その結果、長時間に渡って安定したベルト走行性能を得ることができる。
【実施例0057】
(架橋ゴム組成物)
以下の実施例1乃至3及び比較例1乃至4の架橋ゴム組成物を作製した。それぞれの構成については表1及び2にも示す。
【0058】
<実施例1>
バンバリーミキサーに、ゴム成分のEPDM(T7241 JSR社製、エチレン含量:52質量%、ENB含量:7.7質量%、ムーニー粘度:27ML1+4(125℃))を投入するとともに、このゴム成分100質量部に対して、FEFカーボンブラック(シーストSO 東海カーボン社製)50質量部、炭化水素系可塑剤(サンパー2280 サン石油社製)5質量部、加工助剤のステアリン酸(ステアリン酸S50 新日本理化社製)1質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛(酸化亜鉛3種 堺化学社製)5質量部、共架橋剤のトリメチロールプロパントリメタクリレート(ハイクロスM 精工化学社製)2質量部、及び共架橋剤のN,N’-m-フェニレンビスマレイミド(バルノックPM 大内新興化学工業社製)3質量部を投入して混練した後、ゴム成分100質量部に対して複合材料(ポリエチレン樹脂-PETナノファイバ(ナノフロント)複合材料 帝人フロンティア社製)3.6質量部を投入し、それらを複合材料に含まれるポリエチレン樹脂の融点よりも高い温度で更に混練した。
【0059】
次いで、バンバリーミキサーから塊状の未架橋ゴム組成物の混練物を排出して一旦冷却した後、それを、ゴム成分100質量部に対して、パラ系アラミド短繊維のポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維(ケブラー119 デュポン社製)37質量部、及び架橋剤の有機過酸化物(パーヘキサ25B-40 日本油脂社製、純度40質量%)7.4質量部(有効成分3質量部)とともに再びバンバリーミキサーに投入して混練した。
【0060】
続いて、バンバリーミキサーから塊状の未架橋ゴム組成物の混練物を排出し、それをカレンダーロールにより圧延して未架橋ゴムシートを得た。
【0061】
そして、得られた未架橋ゴムシートをプレス成型することによりシート状の架橋ゴム組成物を作製した。このシート状の架橋ゴム組成物を実施例1とした。
【0062】
ここで、上記で用いた複合材料は、ポリエチレン樹脂の海と、1200本のPET繊維のナノファイバの島との海島構造を有する。
【0063】
複合材料におけるポリエチレン樹脂の含有量は30質量%及びナノファイバの含有量は70質量%である。したがって、ゴム成分100質量部に対するポリエチレン樹脂の含有量は1.1質量部及びナノファイバの含有量A1は2.5質量部である。
【0064】
複合材料の外径は30μm及び長さは1mmである。したがって、PET繊維のナノファイバの繊維長L1は1mmである。繊維径D1は700nmである。パラ系アラミド短繊維のポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維の繊維径D2は12μmである。繊維長L2は3mmである。
【0065】
実施例1の架橋ゴム組成物におけるナノファイバの体積分率B1は0.87体積%及びパラ系アラミド短繊維の体積分率B2は12.5体積%である。
【0066】
<実施例2>
バンバリーミキサーに、ゴム成分のEPDMを投入するとともに、このゴム成分100質量部に対して、ISAFカーボンブラック(シースト6 東海カーボン社製)40質量部、プロセスオイル10質量部、加工助剤のステアリン酸0.25質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛5質量部、共架橋剤のN,N’-m-フェニレンビスマレイミド4質量部、共架橋剤のアミルフェノールジサルファイド重合物(サンセラーAP 三新化学工業社製)1質量部、共架橋剤のジメタクリル酸亜鉛(アクターZMA 川口化学工業社製)20質量部を投入して混練した後、ゴム成分100質量部に対して複合材料3.6質量部を投入し、それらを複合材料に含まれるポリエチレン樹脂の融点よりも高い温度で更に混練した。
【0067】
次いで、バンバリーミキサーから塊状の未架橋ゴム組成物の混練物を排出して一旦冷却した後、それを、ゴム成分100質量部に対して、パラ系アラミド短繊維のポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維28質量部、架橋剤の硫黄(セイミOT 日本乾溜工業社製)0.5質量部、及び架橋剤の有機過酸化物(ペロキシモンF-40 日本油脂社製、純度40質量%)7質量部(有効成分2.8質量部)とともに再びバンバリーミキサーに投入して混練した。
【0068】
続いて、バンバリーミキサーから塊状の未架橋ゴム組成物の混練物を排出し、それをカレンダーロールにより圧延して未架橋ゴムシートを得た。
【0069】
そして、得られた未架橋ゴムシートをプレス成型することによりシート状の架橋ゴム組成物を作製した。このシート状の架橋ゴム組成物を実施例2とした。
【0070】
実施例2の架橋ゴム組成物におけるナノファイバの体積分率B1は1.06体積%及びパラ系アラミド短繊維の体積分率B2は10.11体積%である。
【0071】
<実施例3>
バンバリーミキサーに、ゴム成分のCR(スカイプレン505 東ソー社製、ムーニー粘度42ML1+4(100℃))を投入するとともに、このゴム成分100質量部に対して、FEFカーボンブラック50質量部、エステル系可塑剤のDOS5.4質量部、加工助剤のステアリン酸0.6質量部、共架橋剤のN,N’-m-フェニレンビスマレイミド6質量部、及び加硫促進剤のテトラメチルチウラムジスルフィド(ノクセラーTT 大内新興化学工業社製)2質量部を投入して混練した後、ゴム成分100質量部に対して複合材料3.6質量部を投入し、それらを複合材料に含まれるポリエチレン樹脂の融点よりも高い温度で更に混練した。
【0072】
次いで、バンバリーミキサーから塊状の未架橋ゴム組成物の混練物を排出して一旦冷却した後、それを、ゴム成分100質量部に対して、パラ系アラミド短繊維のコポリパラフェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド短繊維(テクノーラ 帝人社製)26質量部、及び架橋剤の酸化マグネシウム(キョウワマグ150 協和化学工業社製)5.4質量部とともに再びバンバリーミキサーに投入して混練した。
【0073】
続いて、バンバリーミキサーから塊状の未架橋ゴム組成物の混練物を排出し、それをカレンダーロールにより圧延して未架橋ゴムシートを得た。
【0074】
そして、得られた未架橋ゴムシートをプレス成型することによりシート状の架橋ゴム組成物を作製した。このシート状の架橋ゴム組成物を実施例3とした。
【0075】
パラ系アラミド短繊維のコポリパラフェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド短繊維の繊維径D2は12μmである。繊維長L2は3mmである。
【0076】
実施例3の架橋ゴム組成物におけるナノファイバの体積分率B1は1.39体積%及びパラ系アラミド短繊維の体積分率B2は12.4体積%である。
【0077】
<比較例1>
パラ系アラミド短繊維として、ポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維に代えて、コポリパラフェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド短繊維を用いるとともに、その含有量を、ゴム成分100質量部に対して21.4質量部とし、且つ複合材料を用いなかったことを除いて実施例1と同一構成のシート状の架橋ゴム組成物を作製した。このシート状の架橋ゴム組成物を比較例1とした。
【0078】
<比較例2>
パラ系アラミド短繊維のポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維の含有量を、ゴム成分100質量部に対して22.1質量部とし、且つ複合材料を用いなかったことを除いて実施例1と同一構成のシート状の架橋ゴム組成物を作製した。このシート状の架橋ゴム組成物を比較例2とした。
【0079】
<比較例3>
パラ系アラミド短繊維のポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維の含有量を、ゴム成分100質量部に対して40質量部とし、且つ複合材料を用いなかったことを除いて実施例1と同一構成のシート状の架橋ゴム組成物を作製した。このシート状の架橋ゴム組成物を比較例3とした。
【0080】
<比較例4>
複合材料を用いなかったことを除いて実施例3と同一構成のシート状の架橋ゴム組成物を作製した。このシート状の架橋ゴム組成物を比較例4とした。
【0081】
【0082】
【0083】
(試験方法)
実施例1乃至3及び比較例1乃至4のそれぞれの架橋ゴム組成物について、JIS K6394:2007に基づいて、歪み1%時の荷重の1.3倍の荷重を負荷したときの歪みを平均歪みとし、歪み振幅0.1%、周波数10Hz、及び試験温度25℃として引張方法により列理方向の貯蔵たて弾性係数E’1を測定した。また、平均歪み5%、歪み振幅1%、周波数10Hz、及び試験温度25℃として引張方法により反列理方向の貯蔵たて弾性係数E’2を測定した。そして、列理方向の貯蔵たて弾性係数E’1の反列理方向の貯蔵たて弾性係数E’2に対する比(E’1/E’2)を求めた。測定には、RHEOLOGY社の粘弾性試験機を用いた。
【0084】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。これによれば、EPDMをゴム成分としてナノファイバ及びパラ系アラミド短繊維を含有する実施例1及び2では、E’1/E’2が非常に高いことが分かる。このことから、これらを用いて、列理方向がベルト幅方向及び反列理方向がベルト長さ方向にそれぞれ対応するように、VベルトにおけるV側面を構成する部分を形成すれば、ベルト幅方向が相対的に高剛性であることからプーリからの側圧への対抗性が優れるとともに、ベルト長さ方向が相対的に低剛性であることから耐屈曲性が優れ、それによって高効率を期待することができる。一方、ナノファイバを含有しない比較例1乃至3では、実施例1及び2よりもE’1/E’2が低いことが分かる。
【0085】
CRをゴム成分とした場合でも、ナノファイバ及びパラ系アラミド短繊維を含有する実施例3では、E’1/E’2が非常に高いことが分かる。一方、ナノファイバを含有しない比較例4では、実施例3よりもE’1/E’2が低いことが分かる。