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特開2022-152640図面画像処理装置、プレカット加工装置及び画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152640
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】図面画像処理装置、プレカット加工装置及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20221004BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20221004BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055482
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】390017385
【氏名又は名称】宮川工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155549
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 敏之
(72)【発明者】
【氏名】宮川 嘉隆
(72)【発明者】
【氏名】新宅 英二
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DA01
5B146DA05
5B146DA06
5B146DE12
5B146DL08
5B146EA07
5B146EC02
(57)【要約】
【課題】 プレカット加工データを効率良く生成することを可能とする図面画像処理装置、プレカット加工装置及び画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】 プレカット加工システム10の画像解析サーバ20には、画像データ入力部21により入力された設計図面の原画像から、建築物の構成部材Cの配置位置に対応した配置データを出力する配置位置情報出力部と、画像データ入力部21により入力された設計図面の原画像から、構成部材Cの配置位置情報に対応する配置位置に構成部材Cが配置されるように設計図面を変換した変換画像に対応する変換画像データを出力する変換画像情報出力部とが設けられている。このため、作業者は、変換画像データの上に、配置データに対応する構成部材Cが配置された状況を視認しながら加工データの生成に必要な図面データを作成することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物を製造するための設計図面を原画像として入力する入力部と、
前記入力部により入力された原画像から、前記建築物の構成部材の配置位置に対応した配置位置情報を出力する配置位置情報出力部と、
前記入力部により入力された原画像から、前記構成部材の前記配置位置情報に対応する配置位置に前記構成部材が配置されるように前記設計図面を変換した変換画像に対応する変換画像情報を出力する変換画像情報出力部とを備えていることを特徴とする図面画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の図面画像処理装置によって出力される前記変換画像情報と、前記配置位置情報とを用いて生成した加工データに基づいて建築物の構成部材の切削加工を行うことを特徴とするプレカット加工装置。
【請求項3】
請求項1に記載の図面画像処理装置によって出力される情報、又は、請求項2に記載のプレカット加工装置の加工データの生成に利用可能な情報として、前記原画像から、前記配置位置情報と、前記変換画像情報とを出力する処理を、コンピュータによって実行させることを可能とする画像処理プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレカット加工データを効率良く生成することを可能とする図面画像処理装置、プレカット加工装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建物を構成する構成部材(部品)を予め工場で加工する、いわゆるプレカット加工を行う装置(プレカット加工装置)が知られている。プレカット加工装置を用いると、丸鋸やカッター等の加工具によってプレカット工場で予め切削加工を行って部品を製造しておくことができ、建築現場での作業効率を高めることができる。プレカット加工装置による部品の加工に利用可能な加工データ(プレカット加工データ)は、建築物の平面図(例えば、木造住宅の間取り図)を元に生成することができ、CADソフトで作成されたCADデータを利用して加工データを生成する技術も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-49313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プレカット工場に対して必ずしもCADデータが提供されるとは限らず、紙図面しか提供されない場合も未だに多い。CADデータが提供されない場合には、作業者が、紙図面を元に、図面データを入力し直し、その入力し直した図面データから加工データを生成しなければならない。この紙図面を元にして加工データを生成する場合、CADデータが提供される場合と比較して多くの時間を要したり、また、紙図面から図面データを作成する際の入力ミスによって建築物の構成部材が設計者の意図通りに製造されなくなってしまう可能性があった。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、作業工数の削減および構成部材の製造ミスの低減を実現することが可能な図面画像処理装置、プレカット加工装置及び画像処理プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1に記載の図面画像処理装置は、
建築物を製造するための設計図面を原画像として入力する入力部と、
前記入力部により入力された原画像から、前記建築物の構成部材の配置位置に対応した配置位置情報を出力する配置位置情報出力部と、
前記入力部により入力された原画像から、前記構成部材の前記配置位置情報に対応する配置位置に前記構成部材が配置されるように前記設計図面を変換した変換画像に対応する変換画像情報を出力する変換画像情報出力部とを備えていることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載のプレカット加工装置は、請求項1に記載の図面画像処理装置によって出力される前記変換画像情報と、前記配置位置情報とを用いて生成した加工データに基づいて建築物の構成部材の切削加工を行うことを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の画像処理プログラムは、請求項1に記載の図面画像処理装置によって出力される情報、又は、請求項2に記載のプレカット加工装置の加工データの生成に利用可能な情報として、前記原画像から、前記配置位置情報と、前記変換画像情報とを出力する処理を、コンピュータによって実行させることを可能とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、変換図面画像と、配置位置情報とを利用して、加工データを生成することができるので、作業工数の削減および構成部材の製造ミスの低減を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のプレカット加工システムの一例を示す模式図
図2】(A)は設計図面の一例の模式図、(B)は紙図面の模式図
図3】(A)はネットワークを介したシステムの構成を例示した図、(B)は画像解析サーバのブロック図
図4】プレカット工場PCでの処理を示したフローチャート
図5】(A)は変換画像データの一例、(B)は配置データの一例、(c)は変換画像データと配置データとを用いたCAD操作画面の一例
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明のプレカット加工システム10の一例を機能部毎に示した模式図である。また、図2(A)は、建築物の設計図面の一例を模式的に示した図であり、図2(B)は、設計図面を紙に印刷した紙図面の模式図である。
【0012】
プレカット加工システム10は、プレカット加工を用いて建築物の構成部材(部品)を製造可能なシステムであり、紙図面を元に、プレカット加工に利用可能な加工データ(プレカット加工データ)を効率良く生成可能としたシステムである。
【0013】
プレカット加工システム10は、図1に示すように、画像解析サーバ20と、プレカット工場PC30と、プレカット加工装置40とを含めて構成されている。画像解析サーバ20は、図面画像処理装置として機能する装置であり、設計図面の原画像の画像データを元に、構成部材の配置データ(配置位置情報)と変換画像データ(変換画像情報)とを出力可能に構成されている。これらのデータを用いて作業者が加工データを生成することにより、紙図面しか提供されない状況においてプレカット工場での作業者の作業効率を高めることができる。
【0014】
画像解析サーバ20は、図1に示すように、画像データ入力部21と、画像解析部22と、配置位置抽出部23と、画像変形度抽出部24と、入力画像変換部25とを備えている。画像解析サーバ20には、画像データ入力部21を介して、画像データとしての設計図面の原画像が入力可能に構成される。
【0015】
設計図面は、建築物を製造するために必要な図面であり、平面図(伏図)、側面図など複数の図面によって構成される。図2(A)には、設計図面の一例として、建築物の1階の伏図を例示している。設計図面には、構成部材Cとしての柱C1、壁C2、扉C3及び窓C4、寸法線S1、種別情報S2などが含められ、建築物の製造に必要な部品(構成部材C)の仕様を決定可能な各種情報が描画(記録)されている。図2(A)には、一例として、柱C1は、黒い四角で表示され、壁C2が太線で囲われた領域によって表示され、扉C3及び窓C4が細線によって表示される場合を例示している。
【0016】
なお、本実施形態の説明においては、理解の容易のために、設計図面を簡略化して模式的に示し、また、柱C1や壁C2を示す符号を一部省略している。また、設計図面に設定される構成部材Cは、建築物の大きさや形を特定するのに必要な情報が含められたものであるのに対して、プレカット加工装置40で製造される部品としての構成部材Cは、接合部の形状や断面サイズなど詳細な仕様が決定されていて、形状の細部が具現化されているため設計図面と異なる部分があったり、壁C2のような構成部材Cでは1つの構成部材Cが複数の部品で構成される場合もあるが、本実施形態の説明においては、設計図面における構成部材Cと、部品として製造される構成部材Cのいずれについても、構成部材Cと称して説明する。
【0017】
設計図面は、コンピュータで動作可能なCADソフトによって製図(作図)されるものであり、コンピュータで内部的に記憶される情報(内部データ)としては、柱C1や壁C2等の構成部材Cが縦横の座標上にズレなく配置される。設計者は、各構成部材Cの長さや幅が建築物に対応した形や大きさとなるように、コンピュータの表示画面上に構成部材Cを表示しながら製図作業をし、設計が完了すると、紙図面に図面データを出力したり、DXFデータのようなCADソフトの共通形式によって図面データ(CADデータ)を出力する。
【0018】
ここで、設計図面を紙に印刷した場合には、印刷用紙の入力される向きのズレや、印刷の精度によって、内部データとは異なった縮尺や大きさ、縦横比で図面データが印刷されてしまったり、図面データが紙の外形に対して傾いて印刷されてしまう場合がある。図2(B)には、図2(A)の設計図面が、紙の外形に対して、右下がりに傾くようにして印刷されている場合を例示している。また、建築物の上下方向と左右方向の長さが、図2(A)においては、いずれも「XXX」として一致した長さに設定されているものの、縦方向の方が短くなるように変形して印刷された場合を例示している。紙図面は、コピー機で複写したり、ファクシミリで転送した場合に、更に変形してしまう場合がある。プレカット加工システム10においては、紙図面に設計図面の変形や傾きがある場合に、変形や傾きのない設計図面に近い変換画像データを生成し、この変換画像データを、プレカット工場の作業者が図面データの作成に利用可能としている。
【0019】
画像データ入力部21は、設計図面を画像データとして入力可能な装置によって構成される。例えば、画像データ入力部21は、紙図面を画像データとして読み込み可能なスキャナや撮影装置によって構成される。画像データ入力部21によって入力された画像データは、原画像として記憶装置に記憶され、画像解析部22での解析が行われる。なお、画像データ入力部21は、ファクシミリ等の電話回線を用いる通信機器によって構成してもよいし、JPEGやGIF、PDF等の画像データを受信可能な通信機器によって構成してもよい。また、画像データ入力部21によって入力される原画像としての画像データは、縦横の多数のピクセルを組み合わせたビットマップ画像に対応するラスタ形式であってもよいし、長さや方向の情報を含むベクタ形式であってもよい。
【0020】
画像解析部22は、原画像に、構成部材C、寸法線S1、及び、種別情報S2が含まれているか判定し、構成部材C、寸法線S1、及び、種別情報S2が、原画像に含まれている場合には、それぞれに対応した識別情報を付加する。例えば、画像解析部22は、構成部材Cの柱C1には、「C1」、壁C2には、「C2」、寸法線S1には、「S1」、種別情報S2には、「S2」というように、各部位に対して、種類別に設定された別々の識別情報としての文字情報を付加する。
【0021】
なお、識別情報の付加としては、各識別情報に対応した複数層のレイヤーに、各識別情報に対応した各部位が個別に配置されるようにレイヤー情報を付加してもよいし、各識別情報に対応した各部位に個別の色を付加した色付き画像に原画像を変換可能とする色情報を付加してもよい。また、画像解析部22において、必ずしも上記した部位のみに識別情報を付加する必要はなく、上記した部位の一部にのみ(例えば、構成部材Cは柱C1にのみ)識別情報を付加してもよいし、上記した各部位とは別の部位を含むように構成してもよい。
【0022】
例えば、上記した各部位とは別の部位として、部屋の名称を示す文字列(例えば、「LDK」や「洗面所」)や、柱C1の高さや部屋の面積を示す文字列(例えば、「H=850」や「14畳」)、或いは、洗面所や浴室などの具体的な仕様を示す文字列等に対して識別情報を付加してもよい。そして、これらの文字列の情報は、文字認識機能を用いて抽出し、画像でなく文字列のデータとして、画像解析サーバ20からプレカット工場PC30へ出力してもよく、この場合には、文字列のデータと文字列が表示されていた位置データとを組み合わせて出力することが好ましい。これにより、プレカット工場において作業者が、わざわざ文字を入力し直す時間を短縮することができる。
【0023】
種別情報S2は、建築物の構成部分の種別を示す情報であり、例えば、窓C4の種別を窓C4の近くに表示する場合が例示される。種別情報S2は、設計図面において予め決められた規則に従って記録され、例えば、窓C4の種別に対応した種別情報S2は、上下方向に4段に区画された表の中に、上から順に、型式、大きさ、開閉方向、高さ位置などの情報が記録される。なお、図2及び図5において、種別情報S2を構成する文字列の表示は省略している。また、種別情報S2は、窓C4の種別に限らず、扉C3の種別や、室内に設置される棚の種別など、他の構成部分の種別を示す情報を含めてもよい。
【0024】
配置位置抽出部23は、設計図面における構成部材Cの配置位置を計測(推測)して配置データとして抽出する。構成部材Cの配置位置は、設計図面の座標と基準長さを推測することで、配置データとして抽出することができる。例えば、配置位置抽出部23は、寸法線S1に含まれる数値データと、寸法線S1の長さを抽出して計測することで、画像データの単位長さ(例えば、1メートルの単位長さに対する画像のピクセル数の比率)を計測する。これにより、2次元画像に含まれる構成部材Cの配置位置に対応した数値データを、長さを含めた配置データとして抽出することができる。なお、寸法線S1として、縦方向の寸法線S1と、横方向の寸法線S1といった複数の寸法線S1から、画像データの各方向における単位長さを各々計測することが好ましい。これにより、原画像が縦方向と横方向で異なる縮尺で変形している場合などにおいても、高い精度で基準長さを推測することができる。
【0025】
また、配置位置抽出部23は、1つの基準とする構成部材C(例えば、画像データの中で、最も左側で一番下側に位置する柱C1)を基準に、寸法線S1に沿った方向を座標の軸として、他の構成部材Cの配置位置を計測し、配置データ(数値データ)として記憶する。例えば、紙データの水平方向に対して、設計図面の水平方向は、右下がりに僅かに傾いた角度に設定された軸とし、設計図面の垂直方向は、垂直より上方側が右側に僅かに傾いた角度に設定された軸とした、新たな座標を、設計図面の座標として、各柱C1や壁C2の配置位置を記憶する。これにより、設計図面に対応した配置位置に、柱C1や壁C2が位置する位置情報を、原画像から抽出することができる。
【0026】
なお、構成部材Cの配置データは、寸法線S1を用いて基準長さや新しい座標の傾き等を抽出する必要はなく、これに代えて、または、これに加えて、他の方法を利用するようにしてもよく、例えば、柱C1の一般的な配置間隔の基準となる長さ(例えば、木造住宅における910mmの長さ)を用いて設計図面の基準長さを抽出してもよいし、柱C1の配置位置や壁C2の連続する方向を用いて新たな座標を記憶するようにしてもよい。また、画像データに、設計図面のスケール(縮尺)に対応した文字列や基準長さを表す線画が含まれる場合には、文字認識機能を用いて文字列を識別して基準長さの数値データを抽出し、線画の長さを計測することで設計図面の基準長さを推測して、配置データを抽出してもよい。また、画像データに、設計図面の縦横の座標の軸方向に対応した線画(例えば、一定間隔毎に表示された基準線)が含まれている場合には、その線画の方向を設計図面の座標の軸として配置データを抽出してもよい。
【0027】
画像変形度抽出部24は、原画像と、設計図面とのズレを変換数値データとして抽出する。変換数値データは、画像データと設計図面とのズレに対応した数値データによって構成され、例えば、縮尺、縦横の長さ比、或いは、傾きの角度などを組み合わせて構成される。変換数値データの抽出は、配置位置抽出部23と同様、寸法線S1の数値データと長さや、柱C1の一般的な配置間隔の基準長さ、壁C2の連続する方向などを用いて抽出することができる。なお、変換数値データの抽出は、上記した方法に限らず、上記した方法の少なくとも一部の方法と他の方法(例えば、矩形の部位が台形状に変形した度合いを数値データとして抽出する方法)を組み合わせて行うようにしてもよい。
【0028】
入力画像変換部25は、画像変形度抽出部24で抽出された変換数値データを用いて、原画像を変換した変換画像データを生成する。例えば、プレカット工場PC30に入力した際に、設計図面の下絵として利用可能なように、原画像の図面データの変形が補正された画像(例えば、傾きの角度が補正されて設計図面と略一致した画像)となるように、入力画像変換部25は、変換画像データを生成する。
【0029】
なお、変換画像データには、配置データにおける座標の原点位置(例えば、全ての柱C1のうち一番左側で、下側に位置する柱C1の中心位置)に対応する情報を基準位置として含めるなど、配置データと関連を持たせることが可能な関連情報を含めることが好ましい。関連情報は、変換画像データ内に、関連情報に対応した位置に専用の色情報を付加するなど、変換画像データの一部として構成してもよいし、関連情報に相当する配置位置の数値データを付加するなど、変換画像データとは別のデータにより構成してもよい。変換画像データに関連情報を含めることにより、変換画像データと、配置データによって特定される構成部材Cの配置位置との関係を、プレカット工場PC30において特定し易くすることができる。
【0030】
配置位置抽出部23で抽出された配置データと、入力画像変換部25で生成された変換画像データは、画像解析サーバ20から出力されて、プレカット工場PC30に入力される。図1には、配置位置抽出部23の機能の一部として配置データが出力され、入力画像変換部25の機能の一部として変換画像データが出力される場合を例示している。プレカット工場PC30には、プレカット加工データ生成部31としてのCAD/CAMプログラムが記憶されており、CAD/CAMプログラムを用いて、作業者がプレカット加工装置40で利用可能な加工データを生成する。生成された加工データは、プレカット工場PC30からプレカット加工装置40へ出力される。
【0031】
プレカット加工装置40に入力された加工データは、加工具の種類や動作、位置等を決定して駆動機構を制御する駆動制御部41に入力される。この加工データを元に、駆動制御部41がプレカット加工装置40を制御し、建築物の構成部材Cの製造が行われる。
【0032】
次に、プレカット加工システム10の各種機能を実現する処理を実行可能なコンピュータの構成例について、図3を参照して説明する。図3(A)は、ネットワークを介したコンピュータの構成を例示した図であり、図3(B)は画像解析サーバ20の一例を示したブロック図である。
【0033】
プレカット工場PC30は、例えば、プレカット加工装置40が設置されるプレカット工場に設けられ、建築物の紙図面がプレカット工場に届けられると、建築物に必要な構成部材Cが製造される。画像解析サーバ20は、プレカット工場とは別の箇所に設置され、例えば、加工データを生成するCAD/CAMプログラムの製造メーカーに設置されたパーソナルコンピュータ(PC)によって構成される。プレカット工場PC30と、画像解析サーバ20とは、情報通信が可能なネットワーク(例えば、インターネット回線T)を通じて接続され、紙図面の画像データ、配置データ及び変換画像データの送受信が可能に構成される。
【0034】
画像解析サーバ20は、図3(B)に示すように、例えば、本体としての筐体101内に、演算処理装置としてのCPU102、演算データを一時的に記憶するRAM103、ROM104、補助記憶装置としてのハードディスク装置(HDD105)、入出力インターフェース(I/O106)等が設置され、各部位がバスラインによって接続されて構成される。HDD105には、学習モデル107や、各種の部材データ108、制御プログラム109等が記憶される。図1で示した画像データ入力部21、画像解析部22、配置位置抽出部23、画像変形度抽出部24及び入力画像変換部25の各機能は、学習モデル107、部材データ108及び制御プログラム109とを組み合わせて構成される。
【0035】
また、画像解析サーバ20は、データを送受信可能な通信モデム等の入出力装置111、キーボードやマウス等の操作部112、液晶ディスプレイ等の表示部113を備えている。画像解析サーバ20の管理者は、画像解析サーバ20の設定として、例えば、紙図面の画像データが入出力装置111を通じて入力されると、その入力を契機に制御プログラムが動作するように設定しておく。これにより、画像データ入力部21、画像解析部22、配置位置抽出部23、画像変形度抽出部24及び入力画像変換部25の各機能が発揮され、入力された紙図面の画像データ(原画像)に対応した配置データ及び変換画像データが、入出力装置111を通じてプレカット工場PC30へ向けて出力される。
【0036】
学習モデル107は、設計図面に設定された構成部材Cや寸法線S1、種別情報S2の形から、構成部材Cの種別を特定可能に、柱C1や、壁C2に対応する図形データが登録されたデータによって構成される。構成部材Cの表示方法は、必ずしも単一の方法で統一されてなく、CADソフトの種類や住宅メーカーに応じた異なる種類が利用されている場合があり、この場合には、それらの複数の種類の表示方法に対応した図形データが学習モデル107として登録される。また、柱C1や壁C2を組み合わせて部屋として識別することで、柱C1や壁C2の配置位置を正確に識別し易くすることができ、柱C1や壁C2を組み合わせた学習モデル107としての図形データが登録される。学習モデル107の図形データとしては、テンプレートとして構成部材C等のパターンデータを設定しておいて、その形状を検索するパターンマッチングを用いる構成であってもよいし、入力される可能性のあるモデル画像と、そのモデル画像が入力された場合に出力される構成部材Cの種別や配置データなどの教師データとを組み合わせた生成ネットワークを用いる構成であってもよい。
【0037】
ここで、画像解析サーバ20は、プレカット工場PC30とは別のコンピュータに設けられ、1つの画像解析サーバ20を利用して、多数のプレカット工場に設置された多数のプレカット工場PC30と接続することができる。この場合には、画像解析サーバ20においては、原画像から配置データ及び変換画像データを出力する機会を増加させることができるので、設計図面と、配置データ及び変換画像データとの正確性(一致の程度)を検証する機会を増やすことができる。このため、学習モデル107や、各種の部材データ108、制御プログラム109の内容を改善する機会を増やすことができ、高品質の配置データ及び変換画像データを出力可能とすることができる。この学習モデル107等の改善のために、プレカット工場PC30において作成し直した図面データが画像解析サーバ20に送信され、送信された図面データと原画像との組み合わせに基づいて学習モデル107等が更新される構成としてもよい。
【0038】
なお、画像解析サーバ20の各種機能部位は、必ずしもプレカット工場PC30とは別のコンピュータに設ける必要はなく、画像解析サーバ20に記憶された学習モデル107や部材データ108、制御プログラム109をプレカット工場PC30に記憶させ、プレカット工場PC30が、配置データ(配置位置情報)及び変換画像データ(変換画像情報)を出力可能な図面画像処理装置として機能するように構成してもよい。
【0039】
次に、図4及び図5を参照して、プレカット工場PC30における作業者の作業について説明する。図4は、プレカット工場PC30での処理を示したフローチャートである。また、図5(A)は、変換画像データの一例を示し、図5(B)は配置データの一例を示し、図5(C)は変換画像データと配置データとを用いたCAD/CAMソフトの操作画面の一例を示している。
【0040】
プレカット工場PC30は、画像解析サーバ20と同様、CPU、ROM、RAM、HDD、入出力装置、キーボード等の操作部、表示部等を組み合わせたパーソナルコンピュータによって構成されている。プレカット工場PC30には、CAD/CAMソフトの制御プログラムがHDDに記憶され、CAD/CAMソフトを用いてプレカット加工装置40に利用可能な加工データを生成することができ、その加工データを生成するための図面データを作成可能に構成される。
【0041】
画像解析サーバ20からプレカット工場PC30に、紙図面の画像データに対応した配置データ及び変換画像データが送信された状況において、作業者は、図4に示す順序で加工データを生成する処理を進める。まず、作業者は、CAD/CAMソフトの制御プログラムを開始し、変換画像データを読み込む操作を行う(S11)。変換画像データは、図5(A)に示すように、柱C1や壁C2などが、水平方向及び垂直方向に並んだ状態となっており、読み込まれた画像データが表示部に表示される。
【0042】
S11の処理後、構成部材Cとしての柱C1及び壁C2の配置データを読み込む操作を行う(S12)。配置データは、構成部材Cとして出力を設定した全ての柱C1や壁C2が正確に抽出される場合があるが、必ずしも正確に抽出されるとは限らず、一部の構成部材Cの抽出が漏れていたり、配置位置がずれていたり、余分な柱C1や壁C2が抽出されてしまう場合も起こり得る。図5(B)には、柱C1や壁C2の一部に抽出の漏れがあった場合を例示している。
【0043】
S12の処理後、プレカット工場PC30の表示部(操作画面)に対して、図5(C)に示すように、構成部材Cの配置データに対応する配置位置に構成部材Cが配置され、その構成部材Cの配置位置に重なるように、変換画像データを表示する(S13)。この操作画面の画像表示としては、例えば、変換画像データは、点線で表示されたり、薄い色で表示可能に、作業者が選択操作を可能としておくことが好ましい。また、変換画像データには、構成部材Cの配置データにおける基準位置(例えば、全ての柱C1のうち一番左側で、下側に位置する柱C1の中心位置)のデータを含ませておくことが好ましい。これにより、CAD/CAMソフトにおいて、変換画像データに表示された構成部材Cに対して、配置データで入力された構成部材Cが重なる位置に配置することができる。作業者は、変換画像データに重なった構成部材Cの配置状況を元に、正確に抽出されなかった構成部材Cの配置位置などを容易に認識することができる。
【0044】
S13の処理後、構成部材Cの配置位置として、正確に抽出されなかった構成部材Cの配置位置を追加、削除および位置の修正をするなどの操作を行う(S14)。作業者は、変換画像データを視認することで、紙図面に含まれる情報を確認することができるので、紙図面を参照しなくても、構成部材Cの配置位置が正しくなるように変更操作を進めることができる。
【0045】
ここで、紙図面(原画像)に、部屋の名称や、柱C1の高さ、洗面所や浴室などの具体的な仕様等を示す文字列が含まれていた場合で、画像解析サーバ20から文字列のデータが出力されていた場合には、プレカット工場PC30の表示部には、原画像において文字列が表示されていた位置や、その位置に近い位置に、出力されてきた文字列のデータを表示する制御を行うことが好ましい。これにより、作業者は、原画像の中に含まれていた文字列を、入力操作することなく、選択操作によって入力することができる。
【0046】
紙図面に含まれた情報の中で、加工データの生成に必要な情報の全てが図面データに含まれるように、構成部材Cの配置位置の変更などを終えた後、プレカット加工データを生成する操作を行う(S15)。この操作により、構成部材Cの断面形状や接合部分の詳細な形状が決定されたプレカット加工データが生成される。このプレカット加工データを出力する操作を行うと(S16)、プレカット加工装置40の駆動制御部41にプレカット加工データが送信され、プレカット加工を用いた構成部材Cの製造が実施可能となる(図1参照)。
【0047】
このように、プレカット加工システム10の画像解析サーバ20には、画像データ入力部21により入力された設計図面の原画像から、建築物の構成部材Cの配置位置に対応した配置データを出力する配置位置情報出力部と、画像データ入力部21により入力された設計図面の原画像から、構成部材Cの配置位置情報に対応する配置位置に構成部材Cが配置されるように設計図面を変換した変換画像に対応する変換画像データを出力する変換画像情報出力部とが設けられている。このため、作業者は、変換画像データの上に、配置データに対応する構成部材Cが配置された状況を視認しながら加工データの生成に必要な図面データを作成し直すことができる。よって、わざわざ紙図面と操作画面との両方を視認しながら作業を進める場合と比較して、短時間で図面データを作成することができ、また、誤った入力操作を防止し易くすることができる。よって、作業者の作業工数の削減および構成部材Cの製造ミスの低減を実現することができる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものであり、例えば、以下に記載するように変形して実施してもよい。
【0049】
上記実施形態においては、配置位置情報として、配置データを数値データで出力する場合について例示したが、必ずしも配置位置情報を数値データで出力する必要はなく、これに代えて、または、これに加えて、ラスタ画像やベクタ画像といった画像データを用いて出力してもよいし、CADソフトやプレカット加工の業界において一般的に利用されているファイル形式を用いて出力してもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、変換画像情報として、変換画像データを出力する場合について例示したが、必ずしも変換画像情報を画像データで出力する必要はなく、原画像に対しての設計図面のズレに対応した数値情報を出力してもよい。この場合であっても、プレカット工場PC30において、原画像に対して、変換画像情報としての数値情報を利用することで、設計図面に対応した向きや大きさに画像データを変換した変換画像データを生成し、作図作業に利用可能とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、この発明は、プレカット加工データを効率良く生成することを可能とする図面画像処理装置、プレカット加工装置及び画像処理プログラムに適している。
【符号の説明】
【0052】
10:プレカット加工システム、
20:画像解析サーバ(図面画像処理装置)
21:画像データ入力部(入力部)
22:画像解析部
23:配置位置抽出部(配置位置情報出力部)
24:画像変形度抽出部
25:入力画像変換部(変換画像情報出力部)
40:プレカット加工装置

図1
図2
図3
図4
図5