IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社富士通ゼネラルの特許一覧

<>
  • 特開-電動機 図1
  • 特開-電動機 図2
  • 特開-電動機 図3
  • 特開-電動機 図4
  • 特開-電動機 図5
  • 特開-電動機 図6
  • 特開-電動機 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152646
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/33 20160101AFI20221004BHJP
【FI】
H02K11/33
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055495
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】池田 雅寿
(72)【発明者】
【氏名】シポンパンクル ソムチャイ
(72)【発明者】
【氏名】パッタラワディー パーオブトン
【テーマコード(参考)】
5H611
【Fターム(参考)】
5H611AA03
5H611AA09
5H611BB01
5H611BB06
5H611BB08
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】モータの軸方向への小型化を図りつつ、回路基板とヒートシンクとの絶縁を確保できる電動機を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る電動機は、円筒状の樹脂外郭の開口端部を覆うヒートシンクと、上記樹脂外郭と上記ヒートシンクとで覆われた内部空間に配置される回路基板と、上記ヒートシンクと上記回路基板との間に配置された電気絶縁性を有する伝熱部材と、を備える。上記ヒートシンクは、上記樹脂外郭の上記開口端部と当接する円板部と、上記円板部から軸方向における上記回路基板側に向かって突出する環状突出部と、上記環状突出部よりも内径側に配置され、上記円板部から上記電子部品に向かって突出する突起部と、を有する。上記伝熱部材は、上記電子部品と上記突起部とで挟持される伝熱部と、上記伝熱部の外側に設けられ上記軸方向から見て上記電子部品の外周縁より外側に位置する周縁部と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端側に開口端部を有する円筒状の樹脂外郭と、
前記樹脂外郭と一体的に形成されたコイルおよび固定子鉄心を備える固定子と、
前記固定子の内径側に配置された回転子と、
前記樹脂外郭の前記開口端部を覆うヒートシンクと、
前記樹脂外郭と前記ヒートシンクとで覆われた内部空間に配置され、電子部品を有する回路基板と、
前記ヒートシンクと前記電子部品との間に配置された電気絶縁性を有する伝熱部材と、を備え、
前記ヒートシンクは、
前記樹脂外郭の前記開口端部と当接する円板部と、
前記円板部から前記回路基板に向かって突出する環状突出部と、
前記環状突出部よりも内径側に配置され、前記円板部から前記電子部品に向かって突出する突起部と、を有し、
前記伝熱部材は、前記電子部品と前記突起部とで挟持される伝熱部と、前記伝熱部の外側に設けられ前記軸方向から見て前記電子部品の外周縁より外側に位置する周縁部と、を有する
電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機であって、
前記突起部の前記円板部からの突出高さは、前記環状突出部の前記円板部からの突出高さよりも大きい
電動機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動機であって、
前記突起部は、前記突起部の前記軸方向に垂直な断面の面積が、前記円板部から前記電子部品に向かうにつれて小さくなる傾斜部または括れ部を有する
電動機。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の電動機であって、
前記突起部は、前記電子部品に対向する対向面を有し、
前記軸方向から見て、前記対向面の面積は、前記電子部品の面積よりも小さい
電動機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の電動機であって、
前記電子部品は、前記電子部品の外周縁を形成するリード部を含み、
前記伝熱部材の前記周縁部は、前記リード部と前記環状突出部との間の距離が最短距離となる経路上に位置する庇部を含む
電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関し、さらに詳しくは電動機に内蔵された回路基板の絶縁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動機の内部に電動機の回転駆動を制御する回路基板を備えた電動機が知られている。そしてこの回路基板は、通電により発熱する電子部品を含み、その発熱する電子部品で発生した熱を電動機の外部へ放熱する、ヒートシンクを有する電動機もまた知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、固定子鉄心をモールドする樹脂と、モータの反出力側の軸受を支持し、上記モータの反出力側の上記樹脂の端部に取り付けられた金属ブラケットと、上記金属ブラケットを介して上記樹脂の端部に固定され、上記金属ブラケットの外面に設けられた孔部に挿入可能な突起部を含む放熱フィン(ヒートシンク)と、モータ内部に配置された回路基板とを備えたブラシレスモータであって、上記突起部を、熱伝導樹脂を介して回路基板上の電子部品へ接触させる構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-131127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において、回路基板上の電子部品で発生する熱を、熱伝導樹脂を介してヒートシンクとしての放熱フィンへ伝えてモータの外部へ放出している。この電動機では、電動機の外部に露出していてユーザが触れることのできる部分(以下、「可触部」と呼ぶ)に、金属部品(ヒートシンク)が使用されている。このような場合、一般的には、外部に露出する金属部品を電気的にアース(接地)に接続することで、電動機の内部において電圧が印加される導電部分(以下、「充電部」と呼ぶ)から可触部である金属部品への放電を防止している。
【0006】
一方、可触部にヒートシンク(金属部品)が配置された電動機において、ヒートシンクを電気的にアース(接地)に接続しない(すなわち、保護アース線を備えない)場合がある。この場合、安全規格上、電動機内部の充電部(例えば回路基板)と可触部の導電部分(例えばヒートシンク)との間には十分な絶縁距離(空間距離及び沿面距離)を確保する必要がある。空間距離とは、充電部(例えば回路基板)と可触部(例えばヒートシンク)の間の、空間を通る最短距離である。また、沿面距離とは、充電部(例えば回路基板)と可触部(例えばヒートシンク)との間の、絶縁物の表面(例えば熱伝導樹脂の表面)に沿って測定した最短距離である。
【0007】
例えば、特許文献1の構造において、保護アース線を備えないと仮定すると、基板とブラケットとが離間する距離を大きくしつつ、熱伝導樹脂をモータの回転軸方向に厚くすることで、回路基板と放熱フィンとの上記絶縁距離を確保することが考えられる。しかしながら、そのために上記モータの回転軸方向への小型化が困難になる問題がある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、モータの軸方向への小型化を図りつつ、回路基板とヒートシンクとの絶縁を確保できる電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電動機は、樹脂外郭と、固定子と、回転子と、ヒートシンクと、回路基板と、伝熱部材とを備える。上記樹脂外郭は、円筒状に形成されるとともに、軸方向の一端側に開口端部を有する。上記固定子は、コイルと、固定子鉄心とを備える。上記コイルおよび上記固定子鉄心は、上記樹脂外郭と一体的に形成される。上記回転子は、上記固定子鉄心の内径側に配置される。上記ヒートシンクは、上記樹脂外郭の上記開口端部を覆う。上記回路基板は、電子部品を有するとともに、上記樹脂外郭と上記ヒートシンクとで覆われた内部空間に配置される。上記伝熱部材は、電気絶縁性を有し、上記ヒートシンクと上記電子部品との間に配置される。上記ヒートシンクは、円板部と、環状突出部と、突起部とを備える。上記円板部は、上記樹脂外郭の上記開口端部と当接する。上記環状突出部は、上記円板部から軸方向における上記回路基板側に向かって突出する。上記突起部は、上記円板部から上記電子部品に向かって突出して形成されるとともに、上記環状突出部よりも内径側に配置される。上記伝熱部材は、伝熱部と、周縁部とを有する。上記伝熱部は、上記電子部品と上記突起部とで挟持される。上記周縁部は、上記伝熱部の外側に設けられ、上記軸方向から見て上記電子部品の外周縁より外側に位置する
【0010】
上記電動機によれば、上記伝熱部材は、上記電子部品と上記突起部とで挟持されている。上記伝熱部材の周縁部は、上記突起部から見て上記電子部品の外周縁より外側に配置されている。これにより上記伝熱部の周縁部は、上記突起部からみて上記電子部品を覆っている。このため、上記電子部品と突起部との絶縁距離(空間距離及び沿面距離)を上記突起部と直交する方向に確保することができる。よって、上記軸方向の上記伝熱部材の厚みを軽減し、モータの上記軸方向の小型化を図ることができる。
【0011】
上記突起部の上記円板部からの突出高さは、上記環状突出部の上記円板部からの突出高さよりも大きくてもよい。
【0012】
上記突起部は、上記突起部の上記軸方向に垂直な断面の面積が、上記円板部から上記電子部品に向かうにつれて小さくなる傾斜部を有してもよい。
【0013】
上記突起部は、上記電子部品に対向する対向面を有し、上記軸方向から見て、上記対向面の面積は、上記電子部品の面積よりも小さくてもよい。
【0014】
上記電子部品の周縁部は、リード部を含み、上記伝熱部材の上記周縁部は上記リード部と上記環状突出部との間の距離が最短距離となる経路上に位置する庇部を含んでもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、モータの軸方向への小型化を図りつつ、回路基板とヒートシンクとの絶縁を確保できる電動機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電動機の断面図である。
図2】上記電動機における樹脂外郭の斜視図である。
図3】上記電動機におけるヒートシンクの斜視図であって、(A)は正面側斜視図、(B)は背面側斜視図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る電動機の要部を示す図であって、(A)は、ヒートシンクの突起部と電子部品との接続部を示す要部の側断面図、(B)は、ヒートシンク側から見た電子部品の平面図である。
図5】ヒートシンクの突起部と電子部品との間の絶縁距離を説明する側断面図である。
図6】上記絶縁距離の一般的な説明図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る電動機の要部の断面図であって、(A)は、空間距離を示した図、(B)は、沿面距離を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なり得ることに留意すべきである。したがって、具体的な構成部品については以下の説明を参酌して判断すべきものである。
【0018】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る電動機1の断面図である。本実施形態の電動機1は、例えば、空気調和機の室内機に搭載される送風ファンの回転駆動源に用いられる。
【0020】
[電動機の全体構成]
電動機1は、固定子鉄心21と、回転子3と、樹脂外郭10と、第1の軸受71と、第2の軸受81と、ヒートシンク4と、回路基板5とを備えている。
【0021】
固定子鉄心2は、樹脂外郭10と一体的に形成される。
回転子3は、回転シャフト6に固定され、固定子鉄心2の内径側に配置される。
樹脂外郭10は、回転シャフト6の軸心Cに平行な方向(以下、軸方向ともいう)の一端に開口端部101を有する円筒形状である。
ヒートシンク4は、樹脂外郭10の開口端部101を覆うように配置される。
回路基板5は、樹脂外郭10とヒートシンク4とで覆われた内部空間に配置される。
【0022】
以下では、例として、回転磁界を発生する円筒状の固定子2の径方向の内側に、永久磁石部31を有する円柱状の回転子3を回転可能に配置したインナーロータ型のブラシレスDCモータを電動機1として説明する。なお、電動機1は、もちろんこれに限られず、例えばアウターロータ型のブラシレスDCモータや、ACモータ等の他の電動機であってもよい。
【0023】
また以下の説明において、回転シャフト6の軸心Cは、電動機1の中心軸、つまり回転子3の回転軸でもある。径方向とは、軸心Cを通り、軸方向とは直交する方向である。また内径側とは、径方向の内側であり、外径側とは、径方向の外側である。さらに、周方向とは、軸心Cを中心とする回転方向である。
【0024】
(回転子)
回転子3は、環状の永久磁石部31と、回転子本体30とを有する。回転子本体30は、外周面と、内周面とを有する。回転子本体30の外周面には、永久磁石部31が固定される。回転子本体30の内周面には、回転シャフト6が固定される。これにより、回転子本体30と一体となって回転シャフト6が回転駆動する。
【0025】
回転子3は、上記外周面に環状に永久磁石部31が固定された表面磁石型である。永久磁石部31は、N極とS極が周方向に等間隔に交互に現れるように、複数(例えば8または10個)の永久磁石で環状に形成されている。なお、永久磁石部31は、典型的には、Nd-Fe-B系合金等の金属焼結体で形成されるが、これ以外にも、磁石粉末を樹脂で固めることで環状に形成されたプラスチックマグネットを用いてもよい。
【0026】
図1に示すように、回転子本体30は、外周側鉄心32と、絶縁部材33と、内周側鉄心34とを有する。
【0027】
外周側鉄心32は、環状に形成されており、回転子本体30の外周面を形成する。外周側鉄心32は、複数枚の電磁鋼板等の軟磁性材料からなる板の積層体である。内周側鉄心34は、環状に形成されており、回転子本体30の内周面を形成する。
内周側鉄心34は、複数枚の電磁鋼板等の軟磁性材料からなる板の積層体である。内周側鉄心34の中心には、回転シャフト6が圧入やカシメなどによって固着されている。
【0028】
絶縁部材33は、外周側鉄心32と内周側鉄心34との間を電気的に絶縁する。これにより、電動機1の固定子側の静電容量と回転子側の静電容量との差を低減して軸受71、81の電食を抑制することができる。絶縁部材33は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)などの誘電体の樹脂で形成されており、外周側鉄心32と内周側鉄心34の間に固定されている。絶縁部材33は、環状の成形体であってもよいし、外周側鉄心32と内周側鉄心34の間にインサート成形等により充填された樹脂材料であってもよい。
【0029】
(固定子)
固定子2は、円筒形状のヨーク部と同ヨーク部から内径側に延びる複数のティース部を有した固定子鉄心21と、ティース部に巻回された巻線(コイル)22と、を備えている。固定子鉄心21は、例えば複数枚の電磁鋼板等の軟磁性材料からなる板の積層体である。この固定子2(固定子鉄心21)の外周面は、樹脂外郭10で覆われている(図1参照)。固定子2は、回転子3の永久磁石部31が固定子2の固定子鉄心21に径方向に空隙(磁気ギャップ)を介して対向するように配置されている。
【0030】
(樹脂外郭)
樹脂外郭10は、絶縁性の樹脂材料で構成される。図2は、電動機1における樹脂外郭10の斜視図であり、図2に示すように、軸方向の一端側(本実施形態では回転シャフト6の反出力端部61側)に開口端部101を有する中空円筒状に形成される。ここで、反出力端部61とは、回転シャフト6の出力端部62とは反対側の端部である。出力端部62とは、電動機1の負荷側(負荷に接続される側)の端部である。
上述のように、樹脂外郭10は、固定子2と一体成形される。樹脂外郭10を構成する樹脂材料は特に限定されず、例えばBMC(Bulk Molding Compound:不飽和ポリエステル樹脂)樹脂で形成される。
【0031】
また、樹脂外郭10は、載置面9を有する。載置面9は、樹脂外郭10の内周面10a側に形成され、軸方向に垂直な平面であって、軸方向で回転子3よりも回転シャフト6の反出力端部61側に設けられる。載置面9は、後述する回路基板5を支持する。本実施形態において載置面9は、樹脂外郭10の内周面10aから内径側に突出するように設けられた段部の上記反出力端部61側の面である。載置面9は、樹脂外郭10の内周面10aに、その周方向に連続的に形成されてもよいし、その周方向に間隔をおいて複数個所に形成されてもよい。
【0032】
樹脂外郭10は、後述する第2の軸受81を収容する第2の軸受収容部82をさらに有する。第2の軸受収容部82の概形は、軸心Cを中心とする一端側が塞がれた円筒形状である。第2の軸受収容部82は、樹脂外郭10の開口端部101とは反対側の底部102に設けられている。
【0033】
(回路基板)
回路基板5は、配線基板50と、配線基板50の表面(回転シャフト6の反出力端部61側の面)に搭載された通電により発熱する電子部品51とを含む。回路基板5は、概ね円板形状であり、回路基板5の周縁部は、載置面9に支持され、例えば、接着、粘着、ネジ締結、はんだ付け等によって固定される。なお、回路基板5の周縁部に位置決め用の凸部を、そして樹脂外郭10の内周面10aに上記凸部と係合する位置決め用の凹部をそれぞれ設けてもよく、これにより回路基板5を周方向に位置決めした状態で載置面9に固定することができる。
【0034】
電子部品51は、部品本体51と、部品本体51の対向する2側面から延出するリード部511とを有する。なお、リード部511は、部品本体51の2側面から延びる場合に限られず、1側面だけから延びていても、4側面から延びていてもよい。部品本体51は、半導体素子を内蔵する合成樹脂製のパッケージ部である。リード部511は、配線基板50に電気的に接続される複数の金属製の外部端子からなり、電子部品51の外周縁の少なくとも一部を形成する。電子部品51は、主として、電源パワーIC、モータ駆動電流の制御用IC等の半導体パッケージ部品であるが、コンデンサ等の受動部品であってもよい。
【0035】
なお、配線基板50には、電子部品51のほか、電源ケーブルと接続されるコネクタ部品等の他の部品が搭載されるが、これらの図示は省略する。上記電源ケーブルは、樹脂外郭10の開口端部101の近傍にその周方向の所定角度範囲にわたって形成されたケーブル挿通部105を通して図示しない電源に接続される。
【0036】
図2に示すように載置面9には、回路基板5を貫通する複数(本例では2つ)の位置決めピン9cが設けられている。
また、樹脂外郭10の内周面10aに、回路基板5を収容する位置決め用の凹部104を部分的に設けてもよく、これによっても回路基板5を周方向に位置決めした状態で載置面9に固定することができる。
また、図2に示されるコイル22の端部221は、回路基板5に電気的に接続されるように形成され、回路基板5は、複数の位置決めピン9cにより載置面9上に位置決めされるとともに、回路基板5とコイルの端部221とのはんだ付けにより、載置面9上に固定される。
【0037】
(軸受)
図1に示すように、第1の軸受71は、外輪711、内輪712、複数のボール713等を有するボールベアリングである。第2の軸受81は、外輪811、内輪812、ボール813等を有するボールベアリングである。
【0038】
第1の軸受71の外輪711は、ヒートシンク4(第1の軸受収容部41)に固定され、第1の軸受71の内輪712は、回転シャフト6の反出力端部61側に固定される。第2の軸受81の外輪813は、樹脂外郭10(第2の軸受収容部82)に固定され、第2の軸受81の内輪812は、回転シャフト6の出力端部62に固定される。これにより、回転シャフト6は、第1の軸受71および第2の軸受81により、ヒートシンク4および樹脂外郭10に対して軸心Cのまわりに回転可能に支持される。
【0039】
(ヒートシンク)
ヒートシンク4は、第1の軸受収容部41と、円板部42と、環状突出部43と、突起部44とを有する。ヒートシンク4は、樹脂外郭10の開口端部101に取り付けられ、固定される。ヒートシンク4は、アルミニウム等の熱伝導性に優れた金属材料で形成される。ヒートシンク4は、円板部42と、環状突出部43と、突起部44とがそれぞれ一体に成形される。ヒートシンク4は、例えば、ダイカスト(鋳造)によって成型される。
【0040】
ヒートシンク4は、樹脂外郭10の開口端部101を覆うことで樹脂外郭10の内部を閉塞する蓋部材(ブラケット)としての機能と、第1の軸受71を支持する軸受収容部(ベアリングハウス)としての機能と、電動機内部の電子部品51で生じた熱を電動機外部へ放熱する放熱部材としての機能を有する。ヒートシンク4は、樹脂外郭10の開口端部101に図示しない複数のネジ部材を用いて固定される。
【0041】
図3(A)は、ヒートシンク4の内面側(図1において下面側)の斜視図であり、図3(B)はヒートシンク4の外面側(図1において上面側)の斜視図である。
【0042】
円板部42は、軸心Cを中心とする中心孔40を有する円環状の板部である。本実施形態では、円板部42の外径は、樹脂外郭10の開口端部101の外径と同一又はほぼ同一の大きさである。図3(A)、(B)に示すように、円板部42は、上面423と、その反対側の背面424とを有する。後述するように、円板部42の上面部423には、第1の軸受収容部41が形成される。円板部42の背面424には、軸方向位置決め部420、環状突出部43および突起部44が設けられる。
【0043】
環状突出部43は、円板部42の背面424側から回路基板5側に向かって突出するように形成される。また、環状突出部43は、樹脂外郭10の内周面10aに当接する径方向位置決め部430を有する。
【0044】
突起部44は、環状突出部43よりも内径側に配置され、円板部42の背面424側から回路基板5側に向かって突出し、回路基板5(本実施形態では電子部品51)に熱的に接触する。本実施形態では、図1に示すように、突起部44は、ヒートシンク4を樹脂外郭10に取り付けたとき、径方向において、第1の軸受収容部41と環状突出部43との間の領域に配置され、電子部品51と対向するように形成される。
以下、各部の詳細について説明する。
【0045】
(第1の軸受収容部)
第1の軸受収容部41は、第1の軸受71を収容する。第1の軸受収容部41は、軸心Cを中心とする一端側が塞がれた円筒形状を有し、第1の軸受71を収容する。第1の軸受収容部41は、円板部42の中心孔40の内周縁部401の上面423側に形成されている。
【0046】
(円板部)
円板部42は、軸方向位置決め部420を有する。図3(A)に示すように、軸方向位置決め部420は、円板部42の外周縁部422の背面424側に形成される。本実施形態において、外周縁部422とは、円板部42における、環状突出部43よりも外径側の領域である。
【0047】
外周縁部422より内径側の領域における円板部42の軸方向の厚みは、外周縁部422の軸方向の厚みより、薄くてもよい。外周縁部422より内径側の領域における円板部42の厚みを外周縁部422よりも薄くした場合、図3(A)に示すように、円板部42の背面424側に複数のリブ部425を設けてもよい。複数のリブ部425は、第1の軸受収容部41から環状突出部43に向かって放射状に形成される。複数のリブ部425を設けることにより、ヒートシンク4の強度を確保することができる。
【0048】
軸方向位置決め部420は、外周縁部422の背面424側に形成され、樹脂外郭10の開口端部101と当接する。図1に示すように、軸方向位置決め部420は、軸心Cの方向で開口端部101に対向する。軸方向位置決め部420は、図3(A)に示すように、外周縁部422の背面424側全域が軸心Cに直交する平面で形成されるが、この限りではない。例えば、ヒートシンク4の軸方向位置決め部420は、開口端部101に向かって突出する環状の突出部を有してもよく、樹脂外郭10の開口端部101にはその突出部と対応する環状の溝部を有していてもよい。この突出部の径方向から見た断面は、台形状であってもよいし、曲面形状であってもよい。
【0049】
図3(A)、(B)に示すように、円板部42の外周縁部422の複数個所には、ねじが挿通される孔部421が形成される。孔部421は、本実施形態では、外周縁部422に等角度間隔で3箇所設けられる。なお、外周縁部422に設けられる孔部421の数や位置は適宜変更可能であり、外周縁部422に孔部421を設けなくともよい。本実施形態では、樹脂外郭10の開口端部101には、孔部421と対向する位置に、図示しないねじ受部が形成される。ヒートシンク4は、各孔部421に挿通される複数のねじによって樹脂外郭10の開口端部101に固定される。この際、ヒートシンク4は、樹脂外郭10の開口端部101に対してその周方向に位置決めされる。
【0050】
円板部42はさらに、その周縁部422の一部に所定角度範囲にわたって形成された切欠き部426を有する。切欠き部426は、樹脂外郭10の開口端部101の近傍にわたって形成された上述のケーブル挿通部に対応する位置に設けられる。これにより、切欠き部426を、ヒートシンク4を樹脂外郭10の開口端部101に組み付けるに際して、樹脂外郭10に対する周方向の位置決めの目印として用いることができる。
【0051】
(環状突出部)
上述したように、環状突出部43は、径方向位置決め部430を有する。本実施形態では径方向位置決め部430は、樹脂外郭10の開口端部101の内周面に当接する環状突出部43の外周面に形成されている。すなわち、図1図2図3(A)に示すように、径方向位置決め部430は、樹脂外郭10の内周面10aに嵌合する円筒面を有する。
【0052】
図3(A)に示すように、環状突出部43は、円板部42の背面424に、軸心Cを中心とする円環状に形成される。図1に示すように、環状突出部43の軸心Cに平行な断面は、概ね長方形状である。また、図3(A)に示すように、環状突出部43は、切れ目なく周方向に連続的に形成されているが、この限りではなく、一部に切れ目があってもよい。
【0053】
(突起部)
上述したように、突起部44は、環状突出部43よりも内径側に配置され、円板部42の背面424から軸方向における回路基板5側に向かって突出する。
【0054】
図3(A)に示すように、本実施形態では、突起部44は回路基板5上に搭載された電子部品51に向かって突出する直方体形状のブロックである。さらに、突起部44は、電子部品51と対向する対向面441を有する。なお、突起部44の形状は、直方体形状に限られず、例えば、円柱形状であってもよい。
【0055】
図1に示されるように、突起部44の軸方向への突出高さは、環状突出部43の突出高さよりも大きく形成されるのが好ましい。ここでいう突出高さとは、円板部42の背面424を基準として軸方向の回路基板側に突出する高さである。本実施形態では、突起部44の対向面441は、環状突出部43の軸方向の先端部よりも、回路基板5に近い位置にある。突起部44の上記突出高さは、円板部42の軸方向位置決め部420が樹脂外郭10の開口端部101に当接したときに、突起部44の対向面441が電子部品51の上面に所定範囲の大きさの間隙を形成するように設定される。
【0056】
対向面441の電子部品51側から見た形状は、電子部品51の形状に合わせて形成されてもよく、例えば四角形状の平面である(図3(A)参照)。軸方向から見て、対向面441の面積は、電子部品51の面積よりも小さい。対向面441は、ヒートシンク4のダイカスト等による成形後、旋盤等により、平面に加工されてもよい。この場合、突起部44の軸方向への突出高さが環状突出部43の突出高さよりも大きく形成されているため、旋盤等による対向面441の加工時に、環状突出部43が邪魔になることを防ぐことができる。これにより、ヒートシンク4の軸方向位置決め部420と対向面441の軸方向高さを適切な寸法とすることができ、ヒートシンク4がダイカスト(鋳造)により成型される場合であっても、ヒートシンク4の軸方向の寸法ばらつきと組立ばらつきを抑えることができる。
【0057】
図4(A)は、図1における突起部44と電子部品51との間の接続部を示す拡大図である。図4(B)は、突起部44から見た電子部品51の概略平面図である。
図4(A)に示すように、電子部品51と突起部44との間には、電子部品51側から順に伝熱部材52と接着部材53が配置されている。
【0058】
伝熱部材52としては、熱伝導性が良好で、絶縁性が高いものが好ましく、例えばシリコン樹脂製の放熱シートが用いられる。接着部材53に関しても同様に、熱伝導性が良好で、絶縁性が高いものが好ましく、例えばシリコン樹脂製の接着剤が用いられる。
本実施形態では、突起部44と伝熱部材52との間に、接着部材53が設けられており、突起部44の対向面441は、伝熱部材52および接着部材53を介して電子部品51と熱的に接触する。なお、これに限らず、突起部44は、伝熱部材52に直接当接してもよい。
【0059】
接着部材52は、伝熱部材52と突起部44とを接着するだけでなく、接着部材52の変形により、突起部44と電子部品51との軸方向の位置のばらつきを吸収する。さらに、接着部材53は、ヒートシンク4が樹脂外郭10へ嵌合される際に、突起部44から電子部品51への押し付ける力を、接着部材52の変形により逃がす。これにより、突起部44と電子部品51との安定した熱的接続を確保して伝熱性を高めることができるとともに、突起部44から軸方向へ加わる力で電子部品51や回路基板5が破損するのを防止することができる。
【0060】
対向面441と電子部品51との距離は、伝熱部材52の厚みと接着部材53の厚みを足した合計の厚み以下に設定される。これにより、伝熱部材52および接着部材53を介して対向面441を電子部品51の上面に安定に接触させることができる。すなわち、対向面441と電子部品51との間での伝熱性を高めることができる。
【0061】
本実施形態ではさらに、図4(A)に示すように、突起部44の対向面441の周囲には、括れ部442が設けられる。括れ部442は、対向面441側の突起部44の周囲に形成された段部443により形成される。括れ部442は、突起部44を接着部材53に押し付けた際に、突起部44の外側にはみ出る接着部材53の一部を、括れ部442の外周面側へ逃がす。これにより、突起部44と伝熱部材52とが安定して接触するため、突起部44と伝熱部材52との間の接着強度および伝熱性の向上を図ることができる。
【0062】
(伝熱部材)
続いて、伝熱部材52の詳細について説明する。図4(B)に示すように、伝熱部材52は、軸方向から見て、電子部品51の全体を被覆できる大きさの概ね四角形状に形成される。伝熱部材52は、平面的に見て、伝熱部521、中間部522および周縁部523の3つの領域を有する。
【0063】
伝熱部521は、伝熱部材52の略中央に位置し、電子部品51と突起部44の対向面441とで挟持される領域である。伝熱部521は、突起部44と電子部品51との間の伝熱経路を形成する。中間部522は、伝熱部521と周縁部523との間に位置する、概ね矩形かつ環状の領域である。
【0064】
周縁部523は、伝熱部521の外側であって、軸方向から見て電子部品51の外周縁Lより外側に位置する矩形環状の領域である。周縁部523は、電子部品51のリード部511と接触してもよいし、非接触であってもよい。また、電子部品51の外周縁Lは、軸方向から見たときに電子部品51の全体が占める領域の境界部であって、本実施形態では図4(B)に示すように、電子部品の外形を形成する部品本体510およびリード部511を囲む仮想的な矩形枠である。
【0065】
伝熱部材52の周縁部523は、庇部524を含む。庇部524は、周縁部523の一部であって、図4(A)に示すように、電子部品51のリード部511とヒートシンク4の環状突出部43との間の距離が最短距離となる経路上に位置する。庇部524の形成範囲は特に限定されず、環状突出部43側に位置する部品本体510の側面から延出するリード部511と環状突出部43との空間距離を大きくできればよい。
【0066】
[ヒートシンクの作用]
上述のように、本実施形態のヒートシンク4は、樹脂外郭10の開口端部101と当接する軸方向位置決め部420と、樹脂外郭10の開口端部101の内周面に当接する径方向位置決め部430とを有する。このため、樹脂外郭10へのヒートシンク4の組み付けと同時に、樹脂外郭10に対してヒートシンク4が軸方向および径方向の双方向に位置決めされる。
【0067】
より具体的には、一体の部品であるヒートシンク4に、樹脂外郭10に対するヒートシンク4の軸方向の相対位置を位置決めする軸方向位置決め部420が設けられるとともに、回路基板5の電子部品51に対するヒートシンク4の軸方向の相対位置を位置決めする突起部44の対向面441が設けられる。そのため、ヒートシンク4の樹脂外郭10に対する軸方向の相対位置の精度が確保される。これにより、突起部44の対向面441と電子部品51との軸方向の相対位置のばらつき(寸法ばらつき、組立ばらつき)を抑えて、電子部品51から突起部44へと安定的に伝熱し、電動機1の外部へと十分に放熱することができる。
【0068】
また、例えば、ヒートシンク4が寸法ばらつきの大きいダイカスト成型で形成される場合であっても、軸方向位置決め部420や対向面441を旋盤による後工程で端面処理することで、ヒートシンク4の軸方向の寸法ばらつきを小さくすることができる。よって、突起部44の対向面441と電子部品51との軸方向の相対位置のばらつき(組立ばらつき)をも更に抑えて、電子部品51からヒートシンク4へと安定的に伝熱し、電動機1の外部へと十分に放熱することができる。
【0069】
また、ヒートシンク4に径方向位置決め部430が形成されていることにより、ヒートシンク4と樹脂外郭10の径方向の組立ばらつきを小さくできる。そのため、ヒートシンク4の突起部44の対向面441を、樹脂外郭10に固定された回路基板5上の電子部品51に軸方向に精度よく対向させることができる。また、第1の軸受71を軸心Cと同軸上に精度よく配置することができる。
【0070】
本実施形態によれば、ヒートシンク4と樹脂外郭10の開口端部101との間に位置決め用の別途の支持部材を必要とすることなく、樹脂外郭10に対して直接ヒートシンク4を組み付けることができる。これにより、例えば特許文献1に記載のように、軸受を支持する金属ブラケットを介して放熱フィンを樹脂外郭の端部に固定する場合と比較して、部品点数の削減および組立作業性の向上を図ることができるだけでなく、樹脂外郭に対するヒートシンクの位置決めの精度を高めることができる。
【0071】
すなわち、樹脂外郭とヒートシンク(放熱フィン)との間に上記金属ブラケットのような他の部材が介在する場合、当該金属ブラケットやヒートシンク自体の寸法ばらつき、樹脂外郭と金属ブラケットの組立ばらつき、金属ブラケットとヒートシンクの組立ばらつきなどの各種ばらつきの影響を受けて、ヒートシンクと樹脂外郭との間における軸方向および径方向の相対位置のばらつきが生じやすい。このため、回路基板とヒートシンクの突起部との距離がばらつくことで、伝熱特性が安定しないおそれがあった。
【0072】
これに対して本実施形態によれば、上記金属ブラケットを介在させることなく、ヒートシンク4を樹脂外郭10の開口端部101に直接組み付けているため、上記金属ブラケットの各種ばらつきの影響を小さくし、ヒートシンク4の突起部44を回路基板5(電子部品51)に対して高い精度で位置決めすることができる。これにより、ヒートシンク4と回路基板5(電子部品51)との間で安定した伝熱特性を確保することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、ヒートシンク4が軸受収容部41を備えているため、上記金属ブラケットを必要とすることなく第1の軸受71を支持することができる。これにより、部品点数の削減と電動機1の組立作業性の向上を図ることができる。
【0074】
[伝熱部材の作用]
上述のように本実施形態の伝熱部材52は、電子部品51と突起部44の対向面441とで挟持される伝熱部521と、伝熱部521の外側に設けられ軸方向から見て電子部品51の外周縁Lより外側に位置する周縁部523と、を有する。このため、伝熱部材52は、突起部44からみて電子部品51を上面側で覆っている。伝熱部材52が突起部44からみて電子部品51の上面側を覆っていることで、電子部品51のリード部511と突起部44との間の十分な絶縁距離(空間距離、沿面距離)を確保することができる。
【0075】
ここで、空間距離とは、2つの導電部材(充電部と可触部)間の、空間を通る最短距離である。また、沿面距離とは、2つの導電部材(充電部と可触部)間の、絶縁物の表面に沿った最短距離である。充電部とは、電動機の内部において電圧が印加されている導電部材を指す。本実施形態では、充電部として、金属製のリード部511を有する電子部品51を備える。また、可触部とは、電動機の外部に露出していてユーザが触れることのできる部材を指す。本実施形態では、可触部として、導電性の部材で形成された蓋部材4を備える。絶縁距離は、空間距離と沿面距離の両方を指す総称である。
【0076】
ここで、図5を参照して、空間距離A及び沿面距離Bについて説明する。
空間距離Aは、電子部品51の金属部であるリード部511と突起部44との間の、空間を通る最短距離である。本実施形態では、空間距離Aは、リード部511から伝熱部材52の周縁部523までの一直線からなる距離と、伝熱部材52の周縁部523から突起部44までの一直線からなる距離との和である。また図5に示すように、沿面距離Bは、伝熱部材52表面に沿って測定した電子部品51の金属部であるリード部511と突起部44との間の最短距離である。本実施形態では、沿面距離Bは、リード部511から電子部品51の部品本体510、伝熱部材52、接着部材53の順に各表面に沿った突起部44までの距離である。
【0077】
本実施形態の電動機1によれば、伝熱部材52の周縁部523が電子部品51の外周縁Lより外側に位置するため、充電部である電子部品51のリード部511と、可触部であるヒートシンク4の突起部44との絶縁距離(空間距離A、沿面距離B)を突起部44と直交する方向に延ばすことができる。これにより、軸方向の伝熱部材52の厚みの増加を抑制し、電動機1の軸方向の小型化を図ることができる。
【0078】
本実施形態の電動機1は、保護アース線を備えていないクラスII機器に分類される電子機器に相当する。クラスII機器とは、絶縁方法の違いによる製品の分類名の1つであり、感電に対する保護を、単なる基礎絶縁ではなく、二重絶縁または強化絶縁といった追加の安全対策を講じている機器で、保護接地をしていない機器である。
基礎絶縁とは、感電に対する基礎的な保護をする絶縁であり、動作電圧に応じた絶縁距離(沿面距離、空間距離)が要求される。
二重絶縁とは、基礎絶縁と付加絶縁の両方から成る絶縁である。付加絶縁とは、基礎絶縁が破壊した場合に感電に対する保護をするため、基礎絶縁に追加して施した独立の絶縁である。
強化絶縁とは、機械的、電気的に二重絶縁と同等に感電に対する保護を行なうことができる単一の絶縁である。
例えば、電子機器の安全規格の1つであるIEC(International Electro technical Commission)60335-2-40によると、クラスII機器の場合、過電圧カテゴリ:II、汚損度:3、材料グループ:IIIa、であるとき、規格値として、充電部と可触部の間の空間距離Aは3mm以上、沿面距離Bは12.6mm以上確保することが要求される。
【0079】
例えば図6に示すように、電子部品51と概ね同じ面積の伝熱部材52Bを介してヒートシンク4Bに電子部品51を接続する場合、電子部品51のリード部511とヒートシンク4Bとの間に上記規格値を満足するためには、伝熱部材52Bの厚みを大きくして電子部品51とヒートシンク4Bとの間の絶縁距離(空間距離A、沿面距離B)を確保する必要があった。しかしながら、この場合、伝熱部材52Bの厚み方向における機器の大型化や、伝熱部材52Bの厚みの増大により電子部品51とヒートシンク4Bとの間の熱抵抗の増大が避けられなかった。
【0080】
これに対して本実施形態によれば、図4(A)、(B)に示すように、伝熱部材52の周縁部523が、電子部品51の外周縁L(リード部511)より外側に位置しているため、リード部511から突起部44までの絶縁距離(空間距離A、沿面距離B)を図6に示した構造よりも長くすることができる。また、沿面距離Bも空間距離Aと同様に伝熱部材52の周縁部523を介するため、突起部44までの距離を稼ぐことができる。これにより、伝熱部材52の厚みの増大を抑制して電動機1の軸方向の小型化を図ることができるとともに、電子部品51とヒートシンク4との間の熱抵抗を軽減して電子部品51の放熱性の向上を図ることができる。
【0081】
さらに本実施形態によれば、伝熱部材52の周縁部523が庇部524を有し、この庇部524は、リード部511と環状突出部43との間の距離が最短距離となる経路上に位置している。これにより、リード部511と環状突出部43との間の絶縁距離(空間距離D)を大きくすることができる。このため、リード部511と環状突出部43との間で短絡により放電が生じるのを防止することができる。
【0082】
また、本実施形態によれば、軸方向から見て、対向面441の面積は、電子部品51の面積よりも小さいため、リード部511から突起部44までの絶縁距離、特に沿面距離Bを稼ぐことができる。これにより、軸方向に伝熱部材52を薄くすることができるので、軸方向に電動機1を小型化することができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、突起部44の対向面441の周囲には、括れ部442が設けられる。これにより、括れ部442が形成されない場合に比べ、リード部511から突起部44までの絶縁距離である、空間距離Aと沿面距離Bを稼ぐことができる。これにより、軸方向に伝熱部材52を薄くすることができるので、軸方向に電動機1を小型化することができる。
【0084】
<第2の実施形態>
図7(A),(B)は、本発明の第2の実施形態に係る電動機1Aの要部の断面図である。
以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0085】
図7(A)、(B)に示されるように、本実施形態のヒートシンク4Aは、突起部44Aが傾斜部440を有している点で、第1の実施形態と異なる。傾斜部440は、突起部44Aの軸方向に垂直な断面の面積が、円板部42Aから電子部品51に向かうにつれて小さくなる。傾斜部440は、突起部44Aが対向面441を頂部とする四角錐台形状となるように、突起部44Aの4側面にそれぞれ設けられる。なお、突起部44Aの形状は四角錐台形状に限られず、例えば、円錐台形状であってもよい。
【0086】
伝熱部材52Aは、図7(A)、(B)に示すように、伝熱部521の外側に設けられ、軸方向から見て電子部品51の外周縁Lより外側に位置する周縁部523を有する。突起部44Aからみて、電子部品51は、伝熱部材52によって覆われている。そして、第2の実施形態では、上述の傾斜部440により、リード部511から突起部44Aへの絶縁距離、特に沿面距離Bを稼ぐことができる。これにより、伝熱部材52Aを軸方向に薄くすることができるため、電動機1Bを軸方向に小型化することができる。
【0087】
<変形例>
以上の各本実施形態では、ヒートシンク4,4Aの突起部44が一つの場合を記載したが勿論これに限られず、電子部品等に合わせて複数設けられてもよい。例えば、異なる高さの電子部品が2つ以上ある場合、それぞれの高さに合わせた突起部を複数設けてもよいし、2つの同じ高さの電子部品が近くにある場合、一つの突起部で2つの電子部品に突出するように形成されてもよい。
【0088】
また以上の本実施形態では、電動機1のシャフト6の一方の端部に負荷(トルク)が設けられ、その負荷に対して出力をする片軸モータを例に説明したが、シャフト6の両端部に負荷(トルク)が設けられ、その負荷に対して出力をする両軸モータであってもよい。
【0089】
また、以上の本実施形態では、回路基板5は、樹脂外郭10の内周面10aに沿った円板形状であったが、もちろんこれに限られない。載置面9に支持できる形状であればよく、例えば、長方形状であってもよい。
【0090】
さらに以上の実施形態では、回転子本体30が外周側鉄心32、絶縁部材33および内周側鉄心34の3分割構造で構成されたが、これに限られず、単一の鉄心部材で構成されてもよい。
【0091】
また、回転子3は、実施形態のような表面磁石型に限られず、回転子本体30(回転子鉄心)に永久磁石が埋め込まれる磁石埋込穴が複数形成された埋込磁石型であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1、1A、1B…電動機
4,4A、4B…ヒートシンク(可触部)
10…樹脂外郭
101…開口端部
2…固定子
21…固定子鉄心
3…回転子
31…永久磁石部
32…外周側鉄心
33…絶縁部材
34…内周側鉄心
41…第1の軸受収容部
42,42A…円板部
43,43A…環状突出部
44、44A、44B…突起部
420,420A…軸方向位置決め部
430,430A…環状突出部
5…回路基板
51…電子部品(充電部)
52、52A…伝熱部材
511…リード部
523…周縁部
6…回転シャフト
C…軸心
L…電子部品の外周縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7