(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152672
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20221004BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221004BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221004BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M10/052
H01M4/36 C
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055527
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑弥
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】草野 亮介
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017BB13
5H017CC01
5H017EE07
5H017HH08
5H029AJ14
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5H029AM02
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5H029AM04
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5H050CA01
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5H050CB11
5H050DA04
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA13
5H050GA22
5H050HA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】短時間で効率良く電解液を電極活物質層に行き渡らせることができるリチウムイオン電池の製造方法を提供する。
【解決手段】電極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆された被覆電極活物質粒子を有する電極活物質層を形成する電極活物質層形成工程と、上記電極活物質層に40~110℃の電解液を注液する電解液注入工程と、を備えることを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆された被覆電極活物質粒子を有する電極活物質層を形成する電極活物質層形成工程と、
前記電極活物質層に40~110℃の電解液を注液する電解液注入工程と、を備えることを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項2】
前記電極活物質層は樹脂集電体と接しており、
前記電解液注入工程において、前記樹脂集電体と接している前記電極活物質層に対して電解液が注入され、
前記樹脂集電体を構成する樹脂の融点が150~230℃である請求項1に記載のリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項3】
前記電極活物質層形成工程では、樹脂集電体の上に電極活物質層を塗布し、
前記電解液注入工程において、前記樹脂集電体と接している前記電極活物質層に対して電解液が注入され、
前記樹脂集電体を構成する樹脂の融点が150~230℃である請求項1に記載のリチウムイオン電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高出力密度な二次電池として、近年様々な用途に多用されている。特に、電極の導電性を向上させることを目的として、高分子化合物を含む被覆層で被覆された被覆電極活物質粒子を有する電極活物質層を備えるリチウムイオン電池(例えば、特許文献1)は、その電極の作製方法上、大面積(200cm2以上)の電極作製が可能であり、定置型の大型電池としての利用も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極の大型化が進む昨今、作業効率向上の要請はますます強くなっている。しかし、被覆電極活物質粒子を含む電極組成物を塗布、加圧して作成した電極活物質層に電解液を注液する際に、電極活物質層が空隙を多く含む構造であるため、電解液を電極活物質層に行き渡らせるのに時間がかかり、作業効率が下がるという課題があった。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、短時間で効率良く電解液を電極活物質層に行き渡らせることができるリチウムイオン電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
本発明は、電極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆された被覆電極活物質粒子を有する電極活物質層を形成する電極活物質層形成工程と、上記電極活物質層に電解液を40~110℃雰囲気下で注液する電解液注入工程と、を備えることを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、短時間で効率良く電解液を電極活物質層に行き渡らせることができるリチウムイオン電池の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、リチウムイオン電池の製造方法に関する。
なお、本明細書において、リチウムイオン電池と記載する場合、リチウムイオン二次電池も含む概念とする。
【0009】
本発明のリチウムイオン電池の製造方法により製造されるリチウムイオン電池は、順に積層されたひと組の正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体からなる積層単位と電解液とを含むことが好ましい。上記のリチウムイオン電池は、単電池としての構成例である。
本明細書では、正極集電体及び負極集電体の両方、又は正極集電体及び負極集電体のいずれか一方を指して「集電体」と記載することがある。
また、本明細書では、正極活物質層及び負極活物質層の両方、又は正極活物質層及び負極活物質層のいずれか一方を指して「電極活物質層」と記載することがある。
【0010】
上記正極活物質層及び上記負極活物質層はそれぞれ、正極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆された被覆正極活物質粒子、負極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆された被覆負極活物質粒子を有する。
本明細書では、正極活物質粒子及び負極活物質粒子の両方、又は正極活物質粒子及び負極活物質粒子のいずれか一方を指して「電極活物質粒子」と記載することがある。
また、本明細書では、被覆正極活物質粒子及び被覆負極活物質粒子の両方、又は被覆正極活物質粒子及び被覆負極活物質粒子のいずれか一方を指して「被覆電極活物質粒子」と記載することがある。
【0011】
本発明のリチウムイオン電池の製造方法は、電極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆された被覆電極活物質粒子を有する電極活物質層を形成する電極活物質層形成工程と、上記電極活物質層に40~110℃の電解液を注液する電解液注入工程と、を備えることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン電池の製造方法は、電極活物質層に40~110℃の電解液を注液することにより、短時間で効率良く電解液を電極活物質層に行き渡らせることができるので、電極の作製を効率的に行うことが可能である。本発明の製造方法により、正極活物質層及び負極活物質層のいずれか一方に電解液を注液してもよいし、正極活物質層及び負極活物質層の両方に電解液を注液してもよい。
【0012】
まず電極活物質層を形成する電極活物質層形成工程について説明する。
電極活物質層が有する被覆電極活物質粒子は、電極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆されている。
上記被覆電極活物質粒子は、例えば、高分子化合物及び電極活物質粒子を混合する方法によって製造してもよく、被覆層に高分子化合物と導電剤を用いる場合には高分子化合物と導電剤とを混合して被覆材を準備したのち、該被覆材と電極活物質粒子とを混合する方法により製造してもよく、高分子化合物、導電剤、及び電極活物質粒子を一度に混合する方法によって製造してもよい。なお、電極活物質粒子と高分子化合物と導電剤とを混合する場合、混合順序には特に制限はないが、電極活物質粒子と高分子化合物とを混合した後、導電剤を加えて更に混合することが好ましい。
上記方法により、高分子化合物を含む被覆層によって電極活物質粒子の表面の少なくとも一部が被覆される。
【0013】
上記電極活物質層を形成する方法は特に限定されないが、例えば被覆電極活物質粒子を含む電極組成物を用いて形成することができる。
電極活物質層は、例えば、被覆電極活物質粒子及び少量の電解液を含む電極組成物を集電体又は基材の表面に塗布し、余分な電解液を除去する方法、被覆電極活物質粒子及び少量の電解液を含む電極組成物を基材の上で圧力を加える等して成形する方法等によって作製することができる。基材の表面に電極活物質層を形成した場合、転写等の方法によって電極活物質層を集電体と組み合わせることもできる。
なお上記の方法では電極組成物に電解液が含まれるが、後述の電解液注入工程とは異なり、電極活物質層を形成するときは電極組成物を40~110℃にする必要はない。電極活物質層を形成するときの温度は特に限定されない。
電極組成物には、必要に応じて、導電助剤、溶液乾燥型の公知の電極用バインダー(結着剤ともいう)及び粘着性樹脂が更に含まれていてもよい。なお、電極活物質層の製造に用いる導電助剤は、被覆層が含む導電剤とは別であり、被覆電極活物質粒子が有する被覆層の外部に存在し、電極活物質層中において被覆電極活物質粒子表面からの電子伝導性を向上する機能を有する。なお、電極組成物には溶液乾燥型の電極用バインダーを含まないことが好ましい。
【0014】
次に、上記電極活物質層に電解液を注液する電解液注入工程について説明する。
電解液注入工程では、上記電解液を40~110℃で電極活物質層に注液する。電解液をこの温度に調整してから電極活物質層に注液すると、短時間で効率的に電解液を電極活物質層に行き渡らせることができる。好ましくは、注液時の電解液の温度は60~105℃である。
【0015】
電解液注入工程では、電解液の粘度は特に限定されないが、短時間で効率的に電解液を電極活物質層に行き渡らせることができるので、3.0~60.0mPa・sの範囲であることが好ましい。より好ましくは4.0~45.0mPa・sである。
電解液の粘度は、JIS K7117-2:1999「プラスチック-液状、乳濁状又は分散状の樹脂-回転円時計による定せん断速度での粘度の測定方法」に準拠し、コーンプレート型回転粘度計(治具半径24mm、角度1.34°)(東機産業(株)製のTV25型粘度計)を用いて測定した値である。
【0016】
電解液注入工程において、電解液を電極活物質層に注液する注液手段としては特に限定されないが、例えばスプレーコーター、ディスペンサー等が用いられる。
【0017】
本発明の製造方法においては、基材上に形成された電極活物質層に電解液を注液することも可能であるが、集電体と接している電極活物質層に対して電解液を注液することが好ましく、より好ましくは、樹脂集電体と接している電極活物質層に対して電解液を注液する。更に好ましくは、樹脂集電体上に電極活物質層を形成し、樹脂集電体と接している電極活物質層に対して電解液を注液する。
上記樹脂集電体は、構成する樹脂の融点が150~230℃であることが好ましい。樹脂集電体を構成する樹脂の融点が上記範囲であると、注液するときの電解液の温度が40~110℃であっても、得られる電極の形状や性能にほとんど影響しない。上記樹脂集電体を構成する樹脂の融点は、より好ましくは155~225℃である。
【0018】
本発明のリチウムイオン電池の製造方法において、上記電解液注入工程で電極活物質層に電解液を注液したのち、必要に応じて集電体、セパレータ等を組み合わせた後、外周を封止することによりリチウムイオン電池を得ることができる。
【0019】
次に、本発明のリチウムイオン電池の製造方法により製造されるリチウムイオン電池の好ましい構成について説明する。
正極集電体及び負極集電体としては、樹脂集電体又は金属集電体を使用することができる。特に樹脂集電体であることが好ましい。
樹脂集電体としては、導電性フィラーと樹脂集電体の母体を構成する樹脂(マトリックス樹脂ともいう)とを含むことが好ましい。
マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA、例えばナイロン6、ナイロン6,6等)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
上記樹脂としては、融点が150~230℃であるものが好ましく、155~225℃であるものがより好ましい。具体的には、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂が好ましく、さらに好ましくはポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0020】
導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択される。
具体的には、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電性フィラーは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電性フィラーの材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
樹脂集電体は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーのほかに、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤等)を含んでいてもよい。
【0021】
正極活物質層に含まれる正極活物質粒子としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO2、LiNiO2、LiAlMnO4、LiMnO2及びLiMn2O4等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO4、LiNi1-xCoxO2、LiMn1-yCoyO2、LiNi1/3Co1/3Al1/3O2及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2)及び金属元素が3種以上である複合酸化物[例えばLiMaM’bM’’cO2(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO4、LiCoPO4、LiMnPO4及びLiNiPO4)、遷移金属酸化物(例えばMnO2及びV2O5)、遷移金属硫化物(例えばMoS2及びTiS2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0022】
負極活物質層に含まれる負極活物質粒子としては、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
上記負極活物質粒子のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質粒子の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
【0023】
上記電極活物質粒子表面の少なくとも一部を被覆する被覆層は、高分子化合物を含む。
高分子化合物としては、例えば、アクリルモノマー(a)を必須構成単量体とする重合体を含む樹脂であることが好ましい。
具体的には、被覆正極活物質粒子の被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)を含む単量体組成物の重合体であることが好ましい。上記単量体組成物において、アクリル酸(a0)の含有量は、単量体全体の重量を基準として90重量%を超え、98重量%以下であることが好ましい。被覆層の柔軟性の観点から、アクリル酸(a0)の含有量は、単量体全体の重量を基準として93.0~97.5重量%であることがより好ましく、95.0~97.0重量%であることがさらに好ましい。
被覆負極活物質粒子の被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)を含む単量体組成物の重合体であることが好ましい。上記単量体組成物において、被覆層の柔軟性の観点から、アクリル酸(a0)の含有量は、単量体全体の重量を基準として90重量%以上、95重量%以下であることが好ましい。
【0024】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)以外のカルボキシル基又は酸無水物基を有するモノマー(a1)を含有してもよい。
【0025】
アクリル酸(a0)以外のカルボキシル基又は酸無水物基を有するモノマー(a1)としては、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸等の炭素数3~15のモノカルボン酸;(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の炭素数4~24のジカルボン酸;アコニット酸等の炭素数6~24の3価~4価又はそれ以上の価数のポリカルボン酸等が挙げられる。
【0026】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、下記一般式(1)で表されるモノマー(a2)を含有してもよい。
CH2=C(R1)COOR2 (1)
[式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数4~12の直鎖又は炭素数3~36の分岐アルキル基である。]
【0027】
上記一般式(1)で表されるモノマー(a2)において、R1は水素原子又はメチル基を表す。R1はメチル基であることが好ましい。
R2は、炭素数4~12の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は、炭素数13~36の分岐アルキル基であることが好ましい。
【0028】
モノマー(a2)は、R2の基によって(a21)と(a22)に分類される。
(a21)R2が炭素数4~12の直鎖又は分岐アルキル基であるエステル化合物
炭素数4~12の直鎖アルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられる。
炭素数4~12の分岐アルキル基としては、1-メチルプロピル基(sec-ブチル基)、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基(tert-ブチル基)、1-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2-エチルペンチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,2-ジメチルヘキシル基、1,3-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、4-メチルオクチル基、5-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、1,1-ジメチルヘプチル基、1,2-ジメチルヘプチル基、1,3-ジメチルヘプチル基、1,4-ジメチルヘプチル基、1,5-ジメチルヘプチル基、1,6-ジメチルヘプチル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3-メチルノニル基、4-メチルノニル基、5-メチルノニル基、6-メチルノニル基、7-メチルノニル基、8-メチルノニル基、1,1-ジメチルオクチル基、1,2-ジメチルオクチル基、1,3-ジメチルオクチル基、1,4-ジメチルオクチル基、1,5-ジメチルオクチル基、1,6-ジメチルオクチル基、1,7-ジメチルオクチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルデシル基、2-メチルデシル基、3-メチルデシル基、4-メチルデシル基、5-メチルデシル基、6-メチルデシル基、7-メチルデシル基、8-メチルデシル基、9-メチルデシル基、1,1-ジメチルノニル基、1,2-ジメチルノニル基、1,3-ジメチルノニル基、1,4-ジメチルノニル基、1,5-ジメチルノニル基、1,6-ジメチルノニル基、1,7-ジメチルノニル基、1,8-ジメチルノニル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基、1-メチルウンデシル基、2-メチルウンデシル基、3-メチルウンデシル基、4-メチルウンデシル基、5-メチルウンデシル基、6-メチルウンデシル基、7-メチルウンデシル基、8-メチルウンデシル基、9-メチルウンデシル基、10-メチルウンデシル基、1,1-ジメチルデシル基、1,2-ジメチルデシル基、1,3-ジメチルデシル基、1,4-ジメチルデシル基、1,5-ジメチルデシル基、1,6-ジメチルデシル基、1,7-ジメチルデシル基、1,8-ジメチルデシル基、1,9-ジメチルデシル基、1-エチルデシル基、2-エチルデシル基等が挙げられる。これらの中では、特に、2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0029】
(a22)R2が炭素数13~36の分岐アルキル基であるエステル化合物
炭素数13~36の分岐アルキル基としては、1-アルキルアルキル基[1-メチルドデシル基、1-ブチルエイコシル基、1-ヘキシルオクタデシル基、1-オクチルヘキサデシル基、1-デシルテトラデシル基、1-ウンデシルトリデシル基等]、2-アルキルアルキル基[2-メチルドデシル基、2-ヘキシルオクタデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ウンデシルトリデシル基、2-ドデシルヘキサデシル基、2-トリデシルペンタデシル基、2-デシルオクタデシル基、2-テトラデシルオクタデシル基、2-ヘキサデシルオクタデシル基、2-テトラデシルエイコシル基、2-ヘキサデシルエイコシル基等]、3~34-アルキルアルキル基(3-アルキルアルキル基、4-アルキルアルキル基、5-アルキルアルキル基、32-アルキルアルキル基、33-アルキルアルキル基及び34-アルキルアルキル基等)、並びに、プロピレンオリゴマー(7~11量体)、エチレン/プロピレン(モル比16/1~1/11)オリゴマー、イソブチレンオリゴマー(7~8量体)及びα-オレフィン(炭素数5~20)オリゴマー(4~8量体)等から得られるオキソアルコールから水酸基を除いた残基のような1又はそれ以上の分岐アルキル基を含有する混合アルキル基等が挙げられる。
【0030】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物(a3)を含有してもよい。
エステル化合物(a3)を構成する炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノール等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0031】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)のうちの少なくとも1つとを含む単量体組成物の重合体であることが好ましく、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、エステル化合物(a21)及びエステル化合物(a3)のうちの少なくとも1つとを含む単量体組成物の重合体であることがより好ましく、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)のうちのいずれか1つとを含む単量体組成物の重合体であることがさらに好ましく、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、エステル化合物(a21)及びエステル化合物(a3)のうちのいずれか1つとを含む単量体組成物の重合体であることが最も好ましい。
被覆層を構成する高分子化合物としては、例えば、モノマー(a1)としてマレイン酸を用いた、アクリル酸及びマレイン酸の共重合体、モノマー(a2)としてメタクリル酸2-エチルヘキシルを用いた、アクリル酸及びメタクリル酸2-エチルヘキシルの共重合体、エステル化合物(a3)としてメタクリル酸メチルを用いた、アクリル酸及びメタクリル酸メチルの共重合体等が挙げられる。
【0032】
モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)の合計含有量は、正極活物質粒子及び負極活物質粒子の体積変化抑制等の観点から、単量体全体の重量を基準として2.0~9.9重量%であることが好ましく、2.5~7.0重量%であることがより好ましい。
【0033】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体の塩(a4)を含有しないことが好ましい。
【0034】
重合性不飽和二重結合を有する構造としてはビニル基、アリル基、スチレニル基及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
アニオン性基としては、スルホン酸基及びカルボキシル基等が挙げられる。
重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体はこれらの組み合わせにより得られる化合物であり、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸及び(メタ)アクリル酸が挙げられる。
なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
アニオン性単量体の塩(a4)を構成するカチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0035】
また、被覆層を構成する高分子化合物は、物性を損なわない範囲で、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)、モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)と共重合可能であるラジカル重合性モノマー(a5)を含有してもよい。
ラジカル重合性モノマー(a5)としては、活性水素を含有しないモノマーが好ましく、下記(a51)~(a58)のモノマーを用いることができる。
【0036】
(a51)炭素数13~20の直鎖脂肪族モノオール、炭素数5~20の脂環式モノオール又は炭素数7~20の芳香脂肪族モノオールと(メタ)アクリル酸から形成されるハイドロカルビル(メタ)アクリレート
上記モノオールとしては、(i)直鎖脂肪族モノオール(トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール等)、(ii)脂環式モノオール(シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘプチルアルコール、シクロオクチルアルコール等)、(iii)芳香脂肪族モノオール(ベンジルアルコール等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0037】
(a52)ポリ(n=2~30)オキシアルキレン(炭素数2~4)アルキル(炭素数1~18)エーテル(メタ)アクリレート[メタノールのエチレンオキサイド(以下EOと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート、メタノールのプロピレンオキサイド(以下POと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート等]
【0038】
(a53)窒素含有ビニル化合物
(a53-1)アミド基含有ビニル化合物
(i)炭素数3~30の(メタ)アクリルアミド化合物、例えばN,N-ジアルキル(炭素数1~6)又はジアラルキル(炭素数7~15)(メタ)アクリルアミド(N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジベンジルアクリルアミド等)、ジアセトンアクリルアミド
(ii)上記(メタ)アクリルアミド化合物を除く、炭素数4~20のアミド基含有ビニル化合物、例えばN-メチル-N-ビニルアセトアミド、環状アミド[ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えば、N-ビニルピロリドン等)]
【0039】
(a53-2)(メタ)アクリレート化合物
(i)ジアルキル(炭素数1~4)アミノアルキル(炭素数1~4)(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]
(ii)4級アンモニウム基含有(メタ)アクリレート{3級アミノ基含有(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]の4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等}
【0040】
(a53-3)複素環含有ビニル化合物
ピリジン化合物(炭素数7~14、例えば2-又は4-ビニルピリジン)、イミダゾール化合物(炭素数5~12、例えばN-ビニルイミダゾール)、ピロール化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニルピロール)、ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニル-2-ピロリドン)
【0041】
(a53-4)ニトリル基含有ビニル化合物
炭素数3~15のニトリル基含有ビニル化合物、例えば(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアルキル(炭素数1~4)アクリレート
【0042】
(a53-5)その他の窒素含有ビニル化合物
ニトロ基含有ビニル化合物(炭素数8~16、例えばニトロスチレン)等
【0043】
(a54)ビニル炭化水素
(a54-1)脂肪族ビニル炭化水素
炭素数2~18又はそれ以上のオレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン等)、炭素数4~10又はそれ以上のジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等)等
【0044】
(a54-2)脂環式ビニル炭化水素
炭素数4~18又はそれ以上の環状不飽和化合物、例えばシクロアルケン(例えばシクロヘキセン)、(ジ)シクロアルカジエン[例えば(ジ)シクロペンタジエン]、テルペン(例えばピネン及びリモネン)、インデン
【0045】
(a54-3)芳香族ビニル炭化水素
炭素数8~20又はそれ以上の芳香族不飽和化合物、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン
【0046】
(a55)ビニルエステル
脂肪族ビニルエステル[炭素数4~15、例えば脂肪族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメトキシアセテート)]
芳香族ビニルエステル[炭素数9~20、例えば芳香族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えばビニルベンゾエート、ジアリルフタレート、メチル-4-ビニルベンゾエート)、脂肪族カルボン酸の芳香環含有エステル(例えばアセトキシスチレン)]
【0047】
(a56)ビニルエーテル
脂肪族ビニルエーテル[炭素数3~15、例えばビニルアルキル(炭素数1~10)エーテル(ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2-エチルヘキシルエーテル等)、ビニルアルコキシ(炭素数1~6)アルキル(炭素数1~4)エーテル(ビニル-2-メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、3,4-ジヒドロ-1,2-ピラン、2-ブトキシ-2’-ビニロキシジエチルエーテル、ビニル-2-エチルメルカプトエチルエーテル等)、ポリ(2~4)(メタ)アリロキシアルカン(炭素数2~6)(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等)]、芳香族ビニルエーテル(炭素数8~20、例えばビニルフェニルエーテル、フェノキシスチレン)
【0048】
(a57)ビニルケトン
脂肪族ビニルケトン(炭素数4~25、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン)、芳香族ビニルケトン(炭素数9~21、例えばビニルフェニルケトン)
【0049】
(a58)不飽和ジカルボン酸ジエステル
炭素数4~34の不飽和ジカルボン酸ジエステル、例えばジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)
【0050】
ラジカル重合性モノマー(a5)を含有する場合、その含有量は、単量体全体の重量を基準として0.1~3.0重量%であることが好ましい。
【0051】
被覆層を構成する高分子化合物の重量平均分子量の好ましい下限は3,000、より好ましい下限は5,000、さらに好ましい下限は7,000である。一方、上記高分子化合物の重量平均分子量の好ましい上限は100,000、より好ましい上限は70,000である。
【0052】
被覆層を構成する高分子化合物の重量平均分子量は、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記)測定により求めることができる。
装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
溶媒:オルトジクロロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する)、テトラヒドロフラン
標準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED-B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:135℃
【0053】
被覆層を構成する高分子化合物は、公知の重合開始剤{アゾ系開始剤[2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等]、パーオキサイド系開始剤(ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等)等}を使用して公知の重合方法(塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等)により製造することができる。
重合開始剤の使用量は、重量平均分子量を好ましい範囲に調整する等の観点から、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%、さらに好ましくは0.1~1.5重量%であり、重合温度及び重合時間は重合開始剤の種類等に応じて調整されるが、重合温度は好ましくは-5~150℃、(より好ましくは30~120℃)、反応時間は好ましくは0.1~50時間(より好ましくは2~24時間)で行われる。
【0054】
溶液重合の場合に使用される溶媒としては、例えばエステル(炭素数2~8、例えば酢酸エチル及び酢酸ブチル)、アルコール(炭素数1~8、例えばメタノール、エタノール及びオクタノール)、炭化水素(炭素数4~8、例えばn-ブタン、シクロヘキサン及びトルエン)、アミド(例えばDMF)及びケトン(炭素数3~9、例えばメチルエチルケトン)が挙げられ、重量平均分子量を好ましい範囲に調整する等の観点から、その使用量はモノマーの合計重量に基づいて好ましくは5~900重量%、より好ましくは10~400重量%、さらに好ましくは30~300重量%であり、モノマー濃度としては、好ましくは10~95重量%、より好ましくは20~90重量%、さらに好ましくは30~80重量%である。
【0055】
乳化重合及び懸濁重合における分散媒としては、水、アルコール(例えばエタノール)、エステル(例えばプロピオン酸エチル)、軽ナフサ等が挙げられ、乳化剤としては、高級脂肪酸(炭素数10~24)金属塩(例えばオレイン酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウム)、高級アルコール(炭素数10~24)硫酸エステル金属塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、エトキシ化テトラメチルデシンジオール、メタクリル酸スルホエチルナトリウム、メタクリル酸ジメチルアミノメチル等が挙げられる。さらに安定剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を加えてもよい。
溶液又は分散液のモノマー濃度は好ましくは5~95重量%、より好ましくは10~90重量%、さらに好ましくは15~85重量%であり、重合開始剤の使用量は、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%である。
重合に際しては、公知の連鎖移動剤、例えばメルカプト化合物(ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン等)及び/又はハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル等)を使用することができる。
【0056】
被覆層を構成する高分子化合物は、該高分子化合物をカルボキシル基と反応する反応性官能基を有する架橋剤(A’){好ましくはポリエポキシ化合物(a’1)[ポリグリシジルエーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリントリグリシジルエーテル等)及びポリグリシジルアミン(N,N-ジグリシジルアニリン及び1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル))等]及び/又はポリオール化合物(a’2)(エチレングリコール等)}で架橋してなる架橋重合体であってもよい。
【0057】
架橋剤(A’)を用いて被覆層を構成する高分子化合物を架橋する方法としては、電極活物質粒子を、被覆層を構成する高分子化合物で被覆した後に架橋する方法が挙げられる。具体的には、電極活物質粒子と被覆層を構成する高分子化合物を含む樹脂溶液を混合し脱溶剤することにより、被覆電極活物質粒子を製造した後に、架橋剤(A’)を含む溶液を該被覆電極活物質粒子に混合して加熱することにより、脱溶剤と架橋反応を生じさせて、被覆層を構成する高分子化合物が架橋剤(A’)によって架橋される反応を電極活物質粒子の表面で起こす方法が挙げられる。
加熱温度は、架橋剤の種類に応じて調整されるが、架橋剤としてポリエポキシ化合物(a’1)を用いる場合は好ましくは70℃以上であり、ポリオール化合物(a’2)を用いる場合は好ましくは120℃以上である。
【0058】
被覆層は、高分子化合物の他に、更に導電剤とセラミック粒子とを含んでいてもよい。
導電剤としては、樹脂集電体に含まれる導電性フィラーとして例示したものと同じもの等を用いることができる。
【0059】
セラミック粒子としては、金属炭化物粒子、金属酸化物粒子、ガラスセラミック粒子等が挙げられる。
【0060】
金属炭化物粒子としては、例えば、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC)、炭化モリブデン(Mo2C)、炭化チタン(TiC)、炭化タンタル(TaC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ジルコニウム(ZrC)等が挙げられる。
【0061】
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化スズ(SnO2)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、酸化インジウム(In2O3)、Li2B4O7、Li4Ti5O12、Li2Ti2O5、LiTaO3、LiNbO3、LiAlO2、Li2ZrO3、Li2WO4、Li2TiO3、Li3PO4、Li2MoO4、Li3BO3、LiBO2、Li2CO3、Li2SiO3や、ABO3(但し、Aは、Ca、Sr、Ba、La、Pr及びYからなる群より選択される少なくとも1種であり、Bは、Ni、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Mo、Ru、Rh、Pd及びReからなる群より選択される少なくとも1種)で表されるペロブスカイト型酸化物粒子等が挙げられる。
金属酸化物粒子としては、電解液と被覆正極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制する観点から、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、及び、四ほう酸リチウム(Li2B4O7)が好ましい。
【0062】
セラミック粒子としては、電解液と被覆正極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制する観点から、ガラスセラミック粒子であることが好ましい。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
ガラスセラミック粒子としては、菱面体晶系を有するリチウム含有リン酸化合物であることが好ましく、その化学式は、LixM”2P3O12(X=1~1.7)で表される。
ここでM”はZr、Ti、Fe、Mn、Co、Cr、Ca、Mg、Sr、Y、Sc、Sn、La、Ge、Nb、Alからなる群より選ばれた1種以上の元素である。また、Pの一部をSi又はBに、Oの一部をF、Cl等で置換してもよい。例えば、Li1.15Ti1.85Al0.15Si0.05P2.95O12、Li1.2Ti1.8Al0.1Ge0.1Si0.05P2.95O12等を用いることができる。
また、異なる組成の材料を混合又は複合してもよく、ガラス電解質等で表面をコートしてもよい。又は、熱処理によりNASICON型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の結晶相を析出するガラスセラミック粒子を用いることが好ましい。
ガラス電解質としては、特開2019-96478号公報に記載のガラス電解質が挙げられる。
【0064】
ここで、ガラスセラミック粒子におけるLi2Oの配合割合は酸化物換算で8質量%以下であることが好ましい。
NASICON型構造でなくとも、Li、La、Mg、Ca、Fe、Co、Cr、Mn、Ti、Zr、Sn、Y、Sc、P、Si、O、In、Nb、Fからなり、LISICON型、ぺロブスカイト型、β-Fe2(SO4)3型、Li3In2(PO4)3型の結晶構造を、持ち、Liイオンを室温で1×10-5S/cm以上伝導する固体電解質を用いても良い。
【0065】
上述したセラミック粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
セラミック粒子の体積平均粒子径は、エネルギー密度の観点及び電気抵抗値の観点から、1~1000nmであることが好ましく、1~500nmであることがより好ましく、1~150nmであることがさらに好ましい。
本明細書において体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
【0067】
セラミック粒子の重量割合は、被覆正極活物質粒子の重量を基準として0.5~5.0重量%であることが好ましい。
セラミック粒子を上記範囲で含有することにより、電解液と被覆正極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制することができる。
セラミック粒子の重量割合は、被覆正極活物質粒子の重量を基準として2.0~4.0重量%であることがより好ましい。
【0068】
上記電極活物質層には、必要に応じて、導電助剤、溶液乾燥型の公知の電極用バインダー(結着剤ともいう)及び粘着性樹脂が更に含まれていてもよい。
導電助剤としては、樹脂集電体に含まれる導電性フィラーの具体例として上述したもの等が挙げられる。
【0069】
溶液乾燥型の電極用バインダー(PVDF系バインダー、SBR系バインダー及びCMC系バインダー等)は、高分子化合物を溶媒に溶解または分散して用いられるものであって、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士及び活物質と集電体とを強固に接着固定するものであり、溶媒成分を揮発させた電極用バインダーは粘着性を有さない。
従って、溶液乾燥型の電極用バインダーと粘着性樹脂とは異なる材料である。
また、電極活物質層には溶液乾燥型の電極用バインダーを含まないことが好ましい。
溶液乾燥型の電極用バインダーを含まない電極活物質層は、被覆電極活物質の非結着体からなるといえる。
【0070】
粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、及び、特開平10-255805公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。
なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を含まない状態で粘着性(水、溶剤、熱などを使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。
【0071】
セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン製フィルムの微多孔膜、多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルム、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用セパレータが挙げられる。
【0072】
電解液としては、公知のリチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び溶媒を含有する公知の電解液を使用することができる。
【0073】
電解質としては、公知の電解液に用いられている電解質が使用でき、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4及びLiN(FSO2)2等の無機アニオンのリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2及びLiC(CF3SO2)3等の有機アニオンのリチウム塩が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiN(FSO2)2である。
【0074】
溶媒としては、公知の電解液に用いられている非水溶媒が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン及びこれらの混合物を用いることができる。
【0075】
ラクトン化合物としては、5員環(γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトン等)及び6員環(δ-バレロラクトン等)のラクトン化合物等が挙げられる。
【0076】
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート(EC)及びブチレンカーボネート(BC)等が挙げられる。
鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート及びジ-n-プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0077】
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。
【0078】
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサン等が挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0079】
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸トリ(トリパーフルオロエチル)、2-エトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン、2-トリフルオロエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン及び2-メトキシエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン等が挙げられる。
【0080】
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。アミド化合物としては、DMF等が挙げられる。スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等が挙げられる。
【0081】
これらの溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
電解液中の電解質の濃度は、1.2~5.0mol/Lであることが好ましく、1.5~4.5mol/Lであることがより好ましく、1.8~4.0mol/Lであることがさらに好ましく、2.0~4.0mol/Lであることが特に好ましい。
このような電解液は、適当な粘性を有するので、被覆電極活物質粒子間に液膜を形成することができ、被覆電極活物質粒子に潤滑効果(被覆電極活物質粒子の位置調整能力)を付与することができる。
【実施例0083】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0084】
製造例1 被覆用高分子化合物の作製
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF150部を仕込み、75℃に昇温した。次いで、アクリル酸91部、メタクリル酸メチル9部及びDMF50部を配合した単量体組成物と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.3部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8部をDMF30部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで、80℃に昇温して反応を3時間継続し、樹脂濃度30%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して150℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行い、DMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の被覆用高分子化合物を得た。
【0085】
製造例2 電解液A(2M LiFSI)の作製
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(EC:PCの体積比率3:7)にLiFSI(LiN(FSO2)2)を2.0mol/Lの割合で溶解させて電解液Aを作製した。
【0086】
製造例3 電解液B(4M LiFSI)の作製
プロピレンカーボネート(PC)にLiFSI(LiN(FSO2)2)を4.0mol/Lの割合で溶解させて電解液Bを作製した。
【0087】
製造例4 被覆正極活物質粒子の作製
被覆用高分子化合物1部をDMF3部に溶解し、被覆用高分子化合物溶液を得た。
正極活物質粒子(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末、体積平均粒子径4μm)84部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、被覆用高分子化合物溶液9部を2分間かけて滴下し、さらに5分間撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電剤であるアセチレンブラック[デンカ(株)製デンカブラック(登録商標)]3部及びガラスセラミック粒子1[商品名:リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスLICGCTMPW-01(1μm)、株式会社オハラ製]4部を分割しながら2分間で投入し、30分間撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、被覆正極活物質粒子を得た。
【0088】
製造例5 樹脂集電体1(正極用PP)の作製
2軸押出機にて、ポリプロピレン[商品名「サンアロマーPC630C」、融点:155℃、サンアロマー(株)製]70部、アセチレンブラック(商品名「デンカブラック」(株)デンカ製)25部及び分散剤[商品名「ユーメックス1001」、三洋化成工業(株)製]5部を200℃、200rpmの条件で溶融混練して樹脂混合物を得た。
得られた樹脂混合物を、Tダイ押出しフィルム成形機に通して、それを延伸圧延することで、膜厚100μmの樹脂集電体用導電性フィルムを得た。次いで、得られた樹脂集電体用導電性フィルムを200×100mmの長方形となるように切断し、樹脂集電体1(正極用PP)を得た。
【0089】
製造例6 樹脂集電体2(PA)の作製
ポリプロピレンの代わりにナイロン6[商品名「アミラン(登録商標)CM1007」、融点:225℃、東レ社製]70部を用いた以外は製造例5と同様にして、樹脂集電体2(PA)を得た。
【0090】
製造例7 樹脂集電体3(負極用PP)の作製
「サンアロマーPC630C」の代わりに「サンアロマーPC684S」(ポリプロピレン、融点:165℃、サンアロマー(株)製)30部、ニッケルフィラー(商品名「Type255」、Vale製)65部及び分散剤[商品名「ユーメックス1001」、三洋化成工業(株)製]5部を用いた以外は製造例5と同様にして、樹脂集電体3(負極用PP)を得た。
【0091】
製造例8 金属集電体の作製
負極用金属集電体として市販の電池用電解銅箔を200×100mmの長方形となるように切断し、金属集電体を得た。
【0092】
製造例9 リチウムイオン電池用正極1の作製
電解液Aを42部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製ドナカーボ・ミルドS-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]4.2部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで5分間混合し、続いて上記電解液A30部と上記の被覆正極活物質粒子206部を追加した後、更にあわとり練太郎で2000rpmで2分間混合し、上記電解液A20部を更に追加した後、あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、更に上記電解液Aを2.3部追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで2分間行い、正極活物質層用スラリーを作製した。得られた正極活物質層用スラリーを目付量が80mg/cm2となるよう、上記樹脂集電体1の片面に塗布し、1.4MPaの圧力で約10秒プレスし、厚さが340μmのリチウムイオン電池用正極1(184×84mmの長方形)を作製した。
【0093】
製造例10 リチウムイオン電池用正極2の作製
電解液Aの代わりに電解液Bを用いた以外は製造例9と同様にして、リチウムイオン電池用正極2を作製した。
【0094】
製造例11 リチウムイオン電池用正極3の作製
樹脂集電体1の代わりに樹脂集電体2を用いた以外は製造例9と同様にして、リチウムイオン電池用正極3を作製した。
【0095】
製造例12 リチウムイオン電池用正極4の作製
電解液Aの代わりに電解液Bを用いた以外は製造例11と同様にして、リチウムイオン電池用正極4を作製した。
【0096】
製造例13 被覆負極活物質粒子の作製
被覆用高分子化合物1部をDMF3部に溶解し、被覆用高分子化合物溶液を得た。
負極活物質粒子(ハードカーボン粉末、体積平均粒子径25μm)76部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、被覆用高分子化合物溶液9部を2分間かけて滴下し、さらに5分間撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電剤であるアセチレンブラック[デンカ(株)製デンカブラック(登録商標)]9部、カーボンナノファイバー[帝人(株)製]2部及びガラスセラミック粒子(商品名「リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスLICGCTMPW-01(1μm)」[株式会社オハラ製]、体積平均粒子径1000nm)4部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、被覆負極活物質粒子を得た。
【0097】
製造例14 リチウムイオン電池用負極1の作製
電解液A42部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製ドナカーボ・ミルドS-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]4.2部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで5分間混合し、続いて上記電解液A30部と上記の被覆負極活物質粒子206部を追加した後、更にあわとり練太郎で2000rpmで2分間混合し、上記電解液A20部を更に追加した後、あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、更に上記電解液Aを2.3部追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで2分間行い、負極活物質層用スラリーを作製した。得られた負極活物質層用スラリーを目付量が80mg/cm2となるよう、上記樹脂集電体3の片面に塗布し、1.4MPaの圧力で約10秒プレスし、厚さが340μmのリチウムイオン電池用負極1(190×90mmの長方形)を作製した。
【0098】
製造例15 リチウムイオン電池用負極2の作製
電解液Aの代わりに電解液Bを用いた以外は製造例14と同様にして、リチウムイオン電池用負極2を作製した。
【0099】
製造例16 リチウムイオン電池用負極3の作製
樹脂集電体3の代わりに樹脂集電体2を用いた以外は製造例15と同様にして、リチウムイオン電池用負極3を作製した。
【0100】
製造例17 リチウムイオン電池用負極4の作製
樹脂集電体3の代わりに製造例8の金属集電体を用いた以外は製造例14と同様にして、リチウムイオン電池用負極4を作製した。
【0101】
実施例1
上記で作製したリチウムイオン電池用正極1の正極活物質層が上面になるように載置した。上記で作製した電解液A35mLを60℃に加熱し、注液装置としてディスペンサーSDP520(株式会社サンエイテック製)にスプレーバルブSV91(株式会社サンエイテック製)とヘイシンモーノポンプ(型番:汎用シリーズNE型)を組み合わせて用い、電解液Aを正極活物質層に注液した。注液後、正極活物質層表面に観察される電解液Aが正極活物質層に行き渡って正極活物質層表面から消失するまでの時間(消失時間)を測定した。結果を表1に示す。
【0102】
実施例2~10及び比較例1~5
電極及び電解液の種類と温度を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様に電極活物質層に電解液を注液し、消失時間を測定した。結果を表1に示す。
【0103】
【0104】
表1に示すように、電解液を40~105℃で注液した実施例1~10は、25℃で注液を行った比較例1~2及び4~5と比べて、短い時間で電極活物質層に電解液を行き渡らせることができた。電解液を115℃に加熱して注液を行った比較例3は、集電体が変形して電極を作製することができなかった。
【0105】
次に、表2に示すとおり、上記の実施例及び比較例で電解液を注液したリチウムイオン電池用正極及びリチウムイオン電池用負極にセパレータを組み合わせて封止し、試験例1~8のリチウムイオン電池を作製した。セパレータとしては、セルガード製#3501を用いた。得られた試験例1~8のリチウムイオン電池について、DCR(直流抵抗)及び初回クーロン効率を求めた。結果を表2に示す。
【0106】
<DCR(直流抵抗)の測定>
25℃の条件下において、リチウムイオン電池を0.1Cで上限電圧3.62V(充電深度(SOC:state of charge)が約50%)まで定電流定電圧充電を行った(停止条件:定電圧モードで電流値が0.01C未満)。その後、30秒間、0.1Cの定電流放電を行った。そして、定電流放電過程における放電開始直前のセル電圧(V1)および放電10秒後のセル電圧(V2)を用いて、以下の式に基づいて、DCR(直流抵抗、Direct Current Resistance)を測定した。
DCR=(V1-V2)/I×S
I:放電時の電流値
S:電極面積
【0107】
<初回クーロン効率>
上記の測定で得られた初回充電容量と初回放電容量を用い、以下の式で初回クーロン効率を算出した。
[初回クーロン効率(%)]=[初回放電容量]÷[初回充電容量]×100
【0108】
【0109】
表2の結果から、実施例の正極及び/又は負極を用いた試験例1~6のリチウムイオン電池は、時間をかけて作製した比較例の正極及び負極を用いた試験例7~8のリチウムイオン電池と比較して、電池性能に差がないことが分かった。電解液注液時の電解液温度が高くても、得られるリチウムイオン電池の電池性能に問題がないことが分かった。
本発明のリチウムイオン電池の製造方法は、特に、大型のリチウムイオン電池の電極に電解液を効率よく注液する方法として有用であり、電気特性に優れた大型のリチウムイオンを製造することが可能である。