IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ いすゞ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-支持具 図1
  • 特開-支持具 図2
  • 特開-支持具 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152710
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】支持具
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20221004BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20221004BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F16B5/02 B
F02M55/02 350H
F02M37/00 321B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055576
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】局 隆史
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 知浩
【テーマコード(参考)】
3G066
3J001
【Fターム(参考)】
3G066AB02
3G066AD04
3G066BA56
3G066CD04
3J001FA01
3J001GB01
3J001HA02
3J001JA03
3J001KA14
(57)【要約】
【課題】固定作業の困難を解消して、固定作業に要する時間を短縮する支持具を提供する。
【解決手段】第一被固定面1と第二被固定面2とを有する被組付体3に、対象物4を組み付けて支持する支持具10は、第一支持部材20と第二支持部材30とを備え、第一支持部材20は、第一接合面21と第一接合穴22と、を有して第一被固定面1に固定され、第二支持部材30は、第二接合面31と第二接合穴32とを有して第二被固定面2に固定され、第二接合穴32の穴径R32は第一接合穴22の穴径R22よりも大きく、かつ、接合用ボルト13の頭部13bの外周径R13bよりも小さく、第一支持部材20および第二支持部材30は、接合用ボルト13で第一接合面21および第二接合面31が互いに面接触した状態で摺動可能に連結される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一被固定面と第二被固定面とを有する被組付体に、対象物を組み付けて支持する支持具において、
互いに別体の部材で構成されて、少なくとも一方の部材に前記対象物が組み付けられる第一支持部材と第二支持部材とを備え、
前記第一支持部材は、前記第二支持部材が有する第二接合面に面接触する第一接合面と、この第一接合面に開口端が存在して前記第二支持部材が有する第二接合穴と同軸に連通する第一接合穴と、を有して前記第一被固定面に固定され、前記第二支持部材は、前記第二接合面とこの第二接合面に開口端が存在する前記第二接合穴とを有して前記第二被固定面に固定され、
前記第一接合穴および前記第二接合穴のうちの挿入される接合用ねじの頭部の側に位置する方の接合穴の穴径は他方の接合穴の穴径よりも大きく、かつ、前記接合用ねじの頭部の外周径よりも小さく、
前記第一支持部材および前記第二支持部材は、連通した前記第一接合穴および前記第二接合穴に挿入された前記接合用ねじで前記第一接合面および前記第二接合面が互いに面接触した状態で摺動可能に連結されることを特徴とする支持具。
【請求項2】
前記第一支持部材および前記第二支持部材のそれぞれが前記第一被固定面および前記第二被固定面のそれぞれに固定された状態で、前記第一接合面および前記第二接合面のそれぞれは、前記第一被固定面および前記第二被固定面のそれぞれから離間した位置に配置され、前記第一被固定面および前記第二被固定面に対して平行かつ直交でない面で構成される請求項1に記載の支持具。
【請求項3】
前記第一支持部材は複数の前記第一接合穴を有し、前記第二支持部材は複数の前記第二接合穴を有し、連通した前記第一接合穴および前記第二接合穴の複数組のそれぞれに挿入される複数の前記接合用ねじの軸線どうしは互いに平行である請求項1または2に記載の支持具。
【請求項4】
前記第一支持部材は、前記第一被固定面に面接触する第一固定面と、この第一固定面に開口端が存在して前記第一被固定面に配置された第一被固定穴に連通する第一固定穴と、を有し、
前記第二支持部材は、前記第二被固定面に面接触する第二固定面と、この第二固定面に開口端が存在して前記第二被固定面に配置された第二被固定穴に連通する第二固定穴と、を有し、
前記第一支持部材は、連通した前記第一固定穴および前記第一被固定穴に挿入された第一固定用ねじで前記第一固定面および前記第一被固定面が互いに面接触した状態で前記被組付に固定され、
前記第二支持部材は、連通した前記第二固定穴および前記第二被固定穴に挿入された第二固定用ねじで前記第二固定面および前記第二被固定面が互いに面接触した状態で前記被組付に固定され、
前記接合用ねじの軸線は、前記第一固定用ねじの軸線および前記第二固定用ねじの軸線のそれぞれとねじれの位置にある請求項1~3のいずれか1項に記載の支持具。
【請求項5】
前記第一支持部材は、前記第一被固定面に面接触する第一固定面と、この第一固定面に開口端が存在して前記第一被固定面に配置された第一被固定穴に連通する第一固定穴と、を有し、
前記第二支持部材は、前記第二被固定面に面接触する第二固定面と、この第二固定面に開口端が存在して前記第二被固定面に配置された第二被固定穴に連通する第二固定穴と、を有し、
前記第一支持部材は、連通した前記第一固定穴および前記第一被固定穴に挿入された第一固定用ねじで前記第一固定面および前記第一被固定面が互いに面接触した状態で前記被組付に固定され、
前記第二支持部材は、連通した前記第二固定穴および前記第二被固定穴に挿入された第二固定用ねじで前記第二固定面および前記第二被固定面が互いに面接触した状態で前記被組付に固定され、
前記第一固定用ねじまたは前記第二固定用ねじの一方のねじが複数の前記接合用ねじの間を通過する請求項3に記載の支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持具に関し、より詳細には、被組付体に対して対象物を組み付けて支持する支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラケットを介して対象物を組み付ける場合に、部品ごとの公差や組み付けによる公差吸収する必要がある。これに関して、ボルトなどのねじを挿入する穴を長穴にする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-169836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、支持具には互いに同一平面上に存在しない二つの固定面に対して対象物を組み付けるものがある。例えば、高低差のある段付き面に支持具を介して対象物を組み付ける場合に、一つの面に支持具の一部を固定すると、部品ごとの公差や組み付けによる公差により、他の面の支持具との間が離間して固定作業が困難となる。
【0005】
各部品の公差や組み付けによる公差を小さくして、精度を高めれば固定作業の困難が解消される可能性があるが、各部品の公差や組み付けによる公差を小さくするにはコストが高くなるという問題がある。
【0006】
そこで、それらの公差を吸収することが求められるが、上記の特許文献1に記載の技術のように、ねじを挿入する穴を長穴にするだけでは長穴の長手方向のみの公差しか吸収できない。それ故、同一平面上に存在しない二つの固定面に対して対象物を組み付ける支持具に特許文献1に記載の技術を単純に適用しても、固定作業の困難は解消することができず、固定作業に要する時間が長くなる。
【0007】
本開示の目的は、固定作業の困難を解消して、固定作業に要する時間を短縮する支持具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の一態様の支持具は、第一被固定面と第二被固定面とを有する被組付体に、対象物を組み付けて支持する支持具において、互いに別体の部材で構成されて、少なくとも一方の部材に前記対象物が組み付けられる第一支持部材と第二支持部材とを備え、前記第一支持部材は、前記第二支持部材が有する第二接合面に面接触する第一接合面と、この第一接合面に開口端が存在して前記第二支持部材が有する第二接合穴と同軸に連通する第一接合穴と、を有して前記第一被固定面に固定され、前記第二支持部材は、前記第二接合面とこの第二接合面に開口端が存在する前記第二接合穴とを有して前記第二被固定面に固定され、前記第一接合穴および前記第二接合穴のうちの挿入される接合用ねじの頭部の側に位置する方の接合穴の穴径は他方の接合穴の穴径よりも大きく、かつ、前記接合用ねじの頭部の外周径よりも小さく、前記第一支持部材および前記第二支持部材は、連通した前記第一接合穴および前記第二接合穴に挿入された前記接合用ねじで前記第一接合面および前記第二接合面が互いに面接触した状態で摺動可能に連結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、別体で構成された第一支持部材と第二支持部材とを接合するねじが挿入される接合穴のうちの一方の穴径を大きくすることで、一方の部材の位置を他方の部材に対して動かすことが可能となる。それ故、一方の部材の位置の移動により組み付け時に生じる公差を吸収することができる。これにより、固定作業の困難が解消され、固定作業に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の支持具を例示する斜視図である。
図2図1の支持具を第一接合穴を通るXY平面で切断した断面図である。
図3図1の支持具をX方向視した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示における支持具の実施形態について説明する。図中において、X方向は第一被固定面1および第二被固定面2に直交する方向を、Y方向およびZ方向はそれらの面で互いに直交する方向で、かつ、X方向に直交する方向を、それぞれ示す。図中では、構成が分かり易いように部材の寸法を変化させており、必ずしも実際に製造するものとは一致させていない。
【0012】
以下、本開示においてねじとは円柱体の側面に螺旋状の溝を設けた雄ねじを示すものとする。実施形態においては、ねじとしてボルトを採用している。また、そのねじが挿入される穴は特に断りが無い場合に円筒面に螺旋状の溝が直に形成されて雄ねじと螺合する雌ねじを有するもの、あるいは、その穴に中央部分に雄ねじと螺合する雌ねじが形成された開口部を有するナットが嵌め込またものを示すものとする。
【0013】
図1に例示するように、実施形態の支持具10は互いに同一平面上に存在しない第一被固定面1と第二被固定面2とを有する被組付体3に対象物4を組み付けて支持するものである。被組付体3および対象物4は特に限定されるものではなく、被組付体3としてはシリンダブロックやシリンダヘッドが例示され、対象物4としては配管やサプライポンプなどの架装品が例示される。本実施形態では、被組付体3としてシリンダヘッドを採用し、対象物4として配管を採用している。
【0014】
被組付体3は、第一被固定面1と第二被固定面2が、互いに平行で、X方向に高低差のある段付き面で構成される。第一被固定面1が第二被固定面2に対して図中のX方向手前に存在している。図中において、H1は第一被固定面1と第二被固定面2との段差の高さを示す。被組付体3は、第一被固定面1に開口端が存在し、第一被固定面1からX方向に延在する第一被固定穴5と、第二被固定面2に開口端が存在し、第二被固定面2からX方向に延在する第二被固定穴6とがその内部に形成される。
【0015】
支持具10は互いに別体の部材で構成された第一支持部材20と第二支持部材30とを備え、第一支持部材20に対象物4が組み付けられて構成される。支持具10は第一支持部材20および第二支持部材30が二本の接合用ボルト13により互いの接合面が摺動可能に連結される。支持具10は、第一支持部材20が第一固定用ボルト11により第一被固定面1に固定され、第二支持部材30が第二固定用ボルト12により第二被固定面2に固定される。本開示において、別体の部材とは接合用ボルト13により互いに連結され、接合用ボルト13が取り外されるとその連結が解除される部材を示す。第一支持部材20は図中左側の部材であり、第二支持部材30は図中右側の部材である。
【0016】
以下、支持具10の状態として、第一支持部材20および第二支持部材30が接合用ボルト13により連結されたときに、第一接合穴22および第二接合穴32のそれぞれの穴の軸線が同一直線上に並んだ状態を正規状態とし、それぞれの穴の軸線が同一直線上からずれた状態を公差吸収状態とする。なお、図1では、支持具10の状態が公差吸収状態である。
【0017】
図2に例示するように、第一支持部材20は、一つの第一接合面21、二つの第一接合穴22、一つの第一固定面23、一つの第一固定穴24、および、一つの対象物固定面25を有して構成される。第二支持部材30は、一つの第二接合面31、二つの第二接合穴32、一つの第二固定面33、および、一つの第二固定穴34を有して構成される。
【0018】
第一支持部材20は、第一接合面21、第一固定面23、および、対象物固定面25を有する立体であればよく、その立体形状が特に限定されるものではない。第二支持部材30は、第二接合面31および第二固定面33を有する立体であればよく、その立体形状が特に限定されるものではない。
【0019】
第一接合面21および第二接合面31は、互いに対向し、接合用ボルト13により第一支持部材20および第二支持部材30が連結されたときに互いに面接触する。第一接合面21および第二接合面31のそれぞれは、第一支持部材20および第二支持部材30のそれぞれが被組付体3に固定された状態で、第一被固定面1および第二被固定面2から離間した位置に配置される。また、第一接合面21および第二接合面31のそれぞれは、第一被固定面1および第二被固定面2のそれぞれに対して平行かつ直交でない面で構成される。第一接合面21および第二接合面31は二本の接合用ボルト13の軸部13aがそれぞれの面を通過可能な面積を有する。第一接合面21および第二接合面31は、軸部13aどうしの間に第一固定用ボルト11が通過可能に軸部11aどうしの間が離間した状態の二本の接合用ボルト13の軸部13aがそれぞれの面を通過可能な面積を有することが望ましい。
【0020】
第一接合穴22および第二接合穴32はともに開口形状が円形状であり、互いに同軸に連通し、連通したそれぞれの穴に接合用ボルト13が挿入される。第一接合穴22は第一接合面21に対して直交する方向に延在し、第二接合穴32は第二接合面31に対して直交する方向に延在する。互いに連通する第一接合穴22および第二接合穴32は支持具10に二組形成される。本開示において、同軸に連通するとは、支持具10の状態が正規状態で、それぞれの穴の延在方向視で中心を通る軸線が同一直線上に配置された状態を意味する。第一接合穴22は第一支持部材20の内部に形成され、第一接合面21に開口端が存在し、第一接合面21から第一接合面21に対して直交する方向に延在する。第一接合穴22は第一支持部材20を貫通してもよい。第二接合穴32は第二支持部材30の内部に形成され、第二接合面31に開口端が存在し、第二接合面31から第二接合面31に対して直交する方向に延在し、第二支持部材30を貫通する。第二接合穴32は雌ねじを有さない貫通孔である。
【0021】
第一接合穴22の穴径R22は、挿入される接合用ボルト13の軸部13aの外径(図示しない)に応じて設定される。本開示において雌ねじを有する穴の穴径は雌ねじにおける谷の径を示すものとする。また、ボルトの軸部の外径は雄ねじの外径あるいは谷の径あるいは有効径を示すものとする。第二接合穴32の穴径R32は第一接合穴22の穴径R22よりも大きく、かつ、接合用ボルト13の頭部13bの外周径R13bよりも小さい。本開示において外周径R13bは接合用ボルト13の頭部13bの座面と第二支持部材30との間に別体の座金が配置される場合にその座金の外周径である。第二接合穴32の穴径R32は、支持具10が被組付体3に組み付けられたときに生じる公差の絶対値を穴径R22に加算した値よりも大きいことが望ましい。本開示において、支持具10が被組付体3に組み付けられたときに生じる公差は、第一被固定面1および第二被固定面、第一支持部材20、第二支持部材30、ならびに、第一固定用ボルト11、第二固定用ボルト12、ならびに、接合用ボルト13の各部材の公差と、それらを組み付けたときの公差とが含まれるものである。
【0022】
第一固定面23は第一支持部材20が第一固定用ボルト11により第一被固定面1に固定されたときに、第一被固定面1に面接触する面である。第一固定穴24は第一支持部材20の内部に形成され、第一固定面23に開口端が存在し、第一固定面23からX方向奥側から手前側に延在し、第一支持部材20を貫通する。第一固定穴24は第一固定面23に対して直交するX方向に延在する。第二固定面33は第二支持部材30が第二固定用ボルト12により第二被固定面2に固定されたときに、第二被固定面2に面接触する面である。第二固定穴34は第二支持部材30の内部に形成され、第二固定面33に開口端が存在し、第二固定面33からX方向奥側から手前側に延在し、第二支持部材30を貫通する。第二固定穴34は第二固定面33に対して直交するX方向に延在する。
【0023】
正規状態における第一固定面23と第二固定面33とのX方向の高低差である高さH2は、被組付体3の第一被固定面1と第二被固定面2とのX方向の高低差である高さH1に等しい。なお、図2において、第二支持部材30を示す点線が正規状態を示す。
【0024】
図3に例示するように、二本の接合用ボルト13の軸線は、第一固定用ボルト11の軸線に対してねじれの位置にあり、第二固定用ボルト12の軸線に対してもねじれの位置にある。互いに連通した第一接合穴22および第二接合穴32の二組はZ方向に離間して配置され、二本の接合用ボルト13どうしもZ方向に離間して配置される。第一固定用ボルト11は二本の接合用ボルト13の間を通過する。二本の接合用ボルト13どうしの軸部13aの離間距離L1は、第一固定用ボルト11の頭部11bの外周径R11bよりも大きい。
【0025】
対象物4を支持具10を介して被組付体3に組み付ける手順は以下のとおりである。まず、対象物4を第一支持部材20の対象物固定面25に図示しないボルトにより仮固定する。本開示において仮固定とはボルトが完全に締まる状態になる手前の仮締めの状態で固定された状態を示す。次いで、第一支持部材20を第一固定用ボルト11により第一被固定面1に仮固定する。次いで、第二支持部材30を第二固定用ボルト12により第二被固定面2に仮固定する。次いで、第一支持部材20および第二支持部材30を二本の接合用ボルト13により仮固定する。
【0026】
全ての部材の仮固定が完了すると、対象物4を第一支持部材20の対象物固定面25に図示しないボルトにより本固定する。本開示において本固定とはボルトが完全に締めた状態で固定された状態を示す。次いで、第一支持部材20を第一固定用ボルト11により第一被固定面1に本固定する。次いで、第二支持部材30を第二固定用ボルト12により第二被固定面2に本固定する。このときに、第一支持部材20と第二支持部材30とは仮固定の状態である。それ故、支持具10が被組付体3に組み付けられたときに生じる公差により第二支持部材30の第二固定面33が第二被固定面2に面接触しない状態の場合に、第二接合穴32と接合用ボルト13との間の隙間分、第二接合面31が第一接合面21に対して摺動して第二支持部材30が第一支持部材20に対して動く。この第二支持部材30の動きにより公差が吸収されて、第二固定面33が第二被固定面2に面接触する。この状態で、第一支持部材20および第二支持部材30を二本の接合用ボルト13により本固定する。
【0027】
本開示の支持具10は、別体で構成された第一支持部材20と第二支持部材30とを接合する接合用ボルト13が挿入される第二接合穴32の穴径R32が第一接合穴22の穴径R22よりも大きくすることで、第二支持部材30の位置を第一支持部材20に対して動かすことが可能となる。それ故、第二支持部材30の位置の移動により組み付け時に生じる公差を吸収することができる。これにより、固定作業の困難が解消され、固定作業に要する時間を短縮することができる。
【0028】
支持具10が被組付体3に組み付けられた状態で生じる公差によるずれは三次元的に発生する。これに関して、本実施形態の支持具10は、支持具10が被組付体3に組み付けられた状態で、第一接合面21および第二接合面31が第一被固定面1および第二被固定面2から離間し、それらの被固定面に対して平行かつ直交でない状態で配置される。これにより、第二支持部材30が三次元的に移動可能になり、三次元的に発生した公差によるずれを吸収することができる。
【0029】
各々のボルトは対象の面に対して直交する方向に挿入される状態が最も締結力が強くなるため望ましい。つまり、前述の構成を換言すると、第一接合面21および第二接合面31に対して直交する方向に挿入される接合用ボルト13の軸線と、第一被固定面1および第二被固定面2に対して直交する方向に挿入される第一固定用ボルト11および第二固定用ボルト12のそれぞれの軸線とは、互いにねじれの位置になる構成である。これにより、第二支持部材30が三次元的に移動可能になり、三次元的に発生した公差によるずれを吸収することができる。
【0030】
仮に公差によるずれがYZ平面のみに生じる場合は、第一接合面21および第二接合面31が第一被固定面1および第二被固定面2に対して平行な状態で配置されてもよい。また、公差によるずれがXZ平面のみに生じる場合は、第一接合面21および第二接合面31が第一被固定面1および第二被固定面2に対して直交する状態で配置されてもよい。
【0031】
支持具10は複数の接合用ボルト13により第一支持部材20および第二支持部材30が連結する構成であることが望ましい。複数の接合用ボルト13により連結する場合に、第一支持部材20は複数の第一接合穴22を有し、第二支持部材30は複数の第二接合穴32を有し、連通した第一接合穴22および第二接合穴32の複数組のそれぞれに挿入される複数の接合用ボルト13の軸線どうしは互いに平行であることがより望ましい。これにより、第一支持部材20および第二支持部材30を互いに固定する第一接合面21および第二接合面31どうしの密着度を向上することができる。また、複数の接合用ボルト13を備えることで、対象物4が組み付けられる第一支持部材20を三軸以上の多軸固定することができ、対象物4の組み付け時の安定度が増す。
【0032】
第一支持部材20および第二支持部材30が複数の接合用ボルト13で連結される場合に、第一固定用ボルト11はそれらの接合用ボルト13の間を通過する構成であることが好ましい。このように、接合用ボルト13が第一固定用ボルト11を跨ぐように配置されることで、第一支持部材20の固定性が増し、第一支持部材20の安定度が増す。
【0033】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の支持具10は特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0034】
被組付体3は第一被固定面1と第二被固定面2とが互いに平行で高低差のある段付き面を構成するものに限定されない。例えば、第一被固定面1と第二被固定面2とが互いに平行でない段付き面を構成するものでもよく、第一被固定面1と第二被固定面2とが互いに直に交差するものでもよい。
【0035】
また、被組付体3は第一被固定面1と第二被固定面2とが設計上、同一平面に存在するものでもよい。第一被固定面1と第二被固定面2とが設計上、同一平面上に存在していても、実際に対象物4を組み付ける際に公差による段差が生じる場合がある。この公差は、第一固定面23および第一被固定面1や第二固定面33および第二被固定面2が共加工ではないことに起因する公差である。本開示の支持具10はこの公差により生じる段差にも適用可能である。第一被固定面1と第二被固定面2とが設計上、同一平面上に存在している被組付体3に対しては、正規状態における支持具10の第一固定面23および第二固定面33の高低差である高さH2がゼロとなる。
【0036】
また、被組付体3の第一被固定面1と第二被固定面2とが同一面で歪みなどが生じない場合でも、支持具10の第一接合面21および第二接合面31に生じる公差により、第一固定面23および第二固定面33のどちらか一方と被固定面との間に隙間が生じる場合がある。本開示の支持具10は支持具10の側に生じる公差の吸収にも適用可能である。
【0037】
以上のように、本開示の支持具10は、実施形態の設計上、段差が形成された被組付体3のみに適用されるものではなく、支持具10と被組付体3に組み付けた際に生じる様々な公差を吸収可能である。
【0038】
支持具10は、第一支持部材20および第二支持部材30に加えて第三支持部材を備えて、互いに同一平面上に存在しない三つの被固定面を有する被組付体に対象物を組み付けて支持する構成にしてもよい。
【0039】
支持具10は第一支持部材20に対象物4が組み付けられる構成に限定されない。支持具10は第二支持部材30に対象物4が組み付けられる構成でもよく、第一支持部材20および第二支持部材30の両方に一つの対象物4が組み付けられる構成でもよく、さらに、それらの支持部材のそれぞれに互いに別体の二つの対象物のそれぞれが組み付けられる構成でもよい。
【0040】
支持具10は第一支持部材20の第一接合穴22の穴径R22が第二接合穴32の穴径R32よりも大きく、接合用ボルト13が図1におけるY方向奥側から手前側に向かって挿入され、その頭部13bが第一支持部材20に当接する構成としてもよい。つまり、支持具10は、挿入される接合用ボルト13の頭部13bの側に位置する方の接合穴の穴径が他方の接合穴の穴径よりも大きい構成であればよい。
【0041】
支持具10は、第二接合穴32の開口形状が円形状に限定されない。支持具10は第二支持部材30が三次元的に生じる公差を吸収可能なように三次元的に位置の移動が可能な構成であれば、第二接合穴32の開口形状が円形状以外の形状でもよい。例えば、組み付け時により公差が生じやすい方向が特定される場合に、その方向に対してのみ穴を広げてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 第一被固定面
2 第二被固定面
3 被組付体
4 対象物
10 支持具
11 第一固定用ボルト
12 第二固定用ボルト
13 接合用ボルト
20 第一支持部材
21 第一接合面
22 第一接合穴
23 第一固定面
24 第一固定穴
30 第二支持部材
31 第二接合面
32 第二接合穴
33 第二固定面
34 第二固定穴
図1
図2
図3