(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152711
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】配管構造
(51)【国際特許分類】
F16L 23/02 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
F16L23/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055577
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】富永 靖人
【テーマコード(参考)】
3H016
【Fターム(参考)】
3H016AA05
3H016AB03
3H016AC01
(57)【要約】
【課題】周囲部品との干渉を避けつつ、内部に流体が溜まることを防ぐ配管構造を提供する。
【解決手段】配管11とボルト15が挿入されるボス部12とを備える配管構造10において、ボス部12の先端部の直上に位置する配管11の下部の一部とその先端部とが一体化されて重なり、ボス部12の突出長L1は、先端12aが配管11の内周面における最下点18を超えるとともに最側点19を超えない位置に配置される長さであり、配管11の下部は、最下点18を境にして管壁が管径方向外側から内側に向かって凸の膨らみ20を有する堰部21と、管壁が管径方向内側から外側に向かって凸の弧状を成す迂回部22とが並ぶ構造である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に沿って配置された配管と、この配管の下方に配置されるとともに前記壁面から前記配管の管軸方向に交差する方向に突出して、その先端からねじが挿入されるボス部とを備える配管構造において、
前記ボス部の先端部の直上に位置する前記配管の下部の一部とその先端部とが一体化されて重なり、
前記ボス部の前記壁面から前記先端までの突出長は、前記先端が前記ボス部の直上に位置する前記配管の内周面における最下点を超えるとともに前記最下点から前記直交する方向に最も離間した前記配管の内周面における最側点を超えない位置に配置される長さであり、
前記配管の下部は、前記最下点を境にして管壁が管径方向外側から内側に向かって凸の膨らみを有する堰部と、管壁が管径方向内側から外側に向かって凸の弧状を成す迂回部とが並ぶことを特徴とする配管構造。
【請求項2】
前記膨らみが形成された前記配管の内周面は前記膨らみの頂点から前記最下点の側の終端に向かって下方に傾斜した第一斜面を有する請求項1に記載の配管構造。
【請求項3】
前記第一斜面はその終端が前記最下点の手間に配置される請求項2に記載の配管構造。
【請求項4】
前記堰部は前記配管の内周面の全域が前記最下点に向かって下方に傾斜した斜面を有する請求項2または3に記載の配管構造。
【請求項5】
前記膨らみが形成された前記配管の内周面は管軸方向に対して流線型を成す請求項1~4のいずれか1項に記載の配管構造。
【請求項6】
前記堰部は前記配管の外周面に前記交差する方向に直交する平坦面を有し、この平坦面が前記ボス部の先端の一部を構成して前記ねじの座面が当接する構成である請求項1~5のいずれか1項に記載の配管構造。
【請求項7】
前記堰部は前記配管の外周面が前記ボス部に挿抜される前記ねじと非干渉に構成される請求項1~6のいずれか1項に記載の配管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管構造に関し、より詳細には、配管とその配管を組み付けるボス部とを備えた配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
EGR通路(排気再循環通路)の中途位置に凝縮水が溜まると、排気成分を含有する凝縮水によりEGR通路を構成する配管が腐食することが知られている。これに関して、EGR通路を上流側から下流側に向かって下方に傾斜させて中途位置に凝縮水が溜まることを回避する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開番号WO2013/021779
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの壁面に沿って配置される配管は、配管の上下に連結させたボス部(溶接ナットともいう)にボルトなどのねじが挿入されて固定されている。配管の形状を維持するために配管からボス部を離間させるとボス部が他の部品と干渉するおそれがあるため、配管とボス部と間は極力近接させることが望ましい。しかしながら、ボルトなどのねじによる締結作業を考慮すると、配管の外周面とボス部の外周面とが接する距離までしか近接させることができない。
【0005】
一方、他の部品との干渉を避けるために、配管の形状を変更してボス部どうしの間の距離を短くすることは可能である。しかし、ボス部の周辺の配管の形状のみを変更すると、その部分を境にして前後の配管の形状と異なる形状になる。それ故、その境の部分に凝縮水が溜まるおそれがある。また、その境の部分の形状を配管の全体の形状に適用するにはコストが高くなることに加えて、円筒管の形状を対象とした装置を配管の中途位置に組み込むことができなくなる。
【0006】
本開示の目的は、周囲部品との干渉を避けつつ、内部に流体が溜まることを防ぐ配管構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明の一態様の配管構造は、壁面に沿って配置された配管と、この配管の下方に配置されるとともに前記壁面から前記配管の管軸方向に交差する方向に突出して、その先端からねじが挿入されるボス部とを備える配管構造において、前記ボス部の先端部の直上に位置する前記配管の下部の一部とその先端部とが一体化されて重なり、前記ボス部の前記壁面から前記先端までの突出長は、前記先端が前記ボス部の直上に位置する前記配管の内周面における最下点を超えるとともに前記最下点から前記直交する方向に最も離間した最側点を超えない位置に配置される長さであり、前記配管の下部は、前記最下点を境にして管壁が管径方向外側から内側に向かって凸の膨らみを有する堰部と、管壁が管径方向内側から外側に向かって凸の弧状を成す迂回部とが並ぶことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、配管とボス部とが一体化して重なることで、配管とボス部とが近接し、周辺部品への干渉を回避することができる。さらに、本発明の一態様によれば、配管とボス部とが近接することで生じる配管の形状を変更した部位と変更しない部位とが配管の最下点を境にして存在する。それ故、形状を変更した部位に留まろうとする流体は変更しない部位へと流れ込むことになるため、配管の内部に流体が溜まることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の配管構造を例示する斜視図である。
【
図2】
図1の斜線で示す断面を拡大した断面図である。
【
図3】
図1の膨らみのXZ平面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示における配管構造の実施形態について説明する。図中において、X方向は配管11の管軸方向を、Y方向は配管11の管軸方向に直交する方向で、各々のボス部12~14およびボルト15の軸方向を、Z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。図中の白抜き矢印は再循環排気の流れを示す。図中では、構成が分かり易いように部材の寸法を変化させており、必ずしも実際に製造するものとは一致させていない。
【0011】
本開示においてねじとは円柱体の側面に螺旋状の溝を設けた雄ねじを示すものとする。実施形態においては、ねじとしてボルト15を採用している。また、そのねじが挿入されるボス部12~14の穴は特に断りが無い場合に円筒面に螺旋状の溝が直に形成されて雄ねじと螺合する雌ねじを有するもの、あるいは、その穴に中央部分に雄ねじと螺合する雌ねじが形成された開口部を有するナットが嵌め込またものを示すものとする。
【0012】
図1に例示するように、実施形態の配管構造10は図示しないエンジンの排気再循環通路の一部を構成する配管11がボス部12~14にボルト15を螺合してエンジンの側面に組み付けるものである。排気再循環通路は図示しない排気通路から吸気通路に排気を再循環する通路である。排気再循環通路を流通する再循環排気は、図示しない排気通路から分岐した連通配管1および流量調節弁2を経由して屈曲配管16、配管11の順に流れる。連通配管1は流量調節弁2に向かって下方に傾斜している。流量調節弁2は図示しないバタフライ弁を有して構成される。
【0013】
配管構造10は、配管11、ボス部12~14、屈曲配管16、および、フランジ17を備えて構成される。配管11はX方向に延在する円管で構成され、その先端が図中の点線で示す屈曲配管16に連通する。ボス部12~14はフランジ17からY方向に突出する。ボス部12~14はX方向視で円環柱体を成す。ボス部12~14はその先端からボルト15が挿入される。ボス部12~14は屈曲配管16の先端を囲む。ボス部12は配管11の直下に配置され、ボス部13は配管11の直上に配置され、ボス部14はそれ以外に配置される。フランジ17は屈曲配管16の先端の全周から管径方向に張り出した板状を成す。本開示において、壁面とは配管11の外周面が接する面であり、ボス部12~14が突出する面を示す。本実施形態において、壁面はフランジ17のY方向手前側に向いた面とする。配管11および屈曲配管16と連通配管1とは、Y方向に積層したフランジ17、流量調節弁2のハウジング、および、フランジ3のそれぞれがボルト15により締結されて、連通する。
【0014】
図2に例示するように、配管構造10は配管11の下部の一部とボス部12の先端部とが一体化されて重なり、配管11の下部が、最下点18を境にして、膨らみ20の形成された堰部21と迂回部22とが並んで構成される。
【0015】
配管11の下部は配管11においてZ方向下側の部位を示し、ボス部12の先端部は先端12aを含むY方向左側の部位を示す。配管11の下部の一部とはボス部12の先端部の直上に位置する部位である。
【0016】
本開示において一体化とは、各々の部材が継ぎ目なく連結された状態を示す。本実施形態の配管構造10は、配管11、ボス部12~14、屈曲配管16、および、フランジ17のそれぞれが一体化されて構成される。配管構造10としては、液体の金属材料を鋳型に流し込んで製造された鋳物が例示される。
【0017】
配管11の下部の一部とボス部12の先端部とが一体化して重なるとは、一体化されて重なった部位の管径方向の厚さの最小値D1が、一体化による影響を受けていない部分における配管11の管厚D2とボス部12の環幅D3とを加算した値よりも小さくなる状態を示す。一体化して重なったその部分は、配管11とボス部12との共用の部分となり、配管11の内周面とボス部12の先端12aとボス部12のボルト15が挿入される部分とを有する。最小値D1は管厚D2と環幅D3との大きい方の値まで小さくすることが可能である。本実施形態において最小値D1は環幅D3を採用している。
【0018】
最下点18はYZ平面における横断面視でボス部12の直上の配管11の内周面において最も下に位置する部位を示す点である。最下点18は配管構造10が組み付けられたエンジンが車両に搭載された状態で最も下に位置する部位を示す点である。最側点19はYZ平面における横断面視でボス部12の直上の配管11の内周面において最下点18からY方向に最も離間した位置する部位を示す点であり、最も図中左側に位置する部位を示す点である。
【0019】
膨らみ20は配管11の管壁が管径方向外側から内側に向かって凸に膨らんで成る。膨らみ20が形成された配管11の管壁は、内周面が凸み、外周面が凹む。膨らみ20が形成された配管11の内周面は、長軸がX方向に向いた楕円形を長軸を軸にして回転させた回転楕円体を長軸を通過する平面で半割にした形状を成す。膨らみが形成された外周面は、ボス部12の先端12aの先に柱軸方向がX方向に向いた円柱体を成す空間が保持されるように、その空間に沿った形状を成す。膨らみ20はその内周面に頂点23、第一斜面24、第一斜面24の終端25、および、第二斜面26を有する。膨らみ20はその外周面に平坦面27および湾曲面28を有する。
【0020】
膨らみ20は、他の部位の内周面よりも配管11の下部とボス部12の先端部とが一体化して重なること、および、ボス部12の突出長L1が、先端12aが最下点18を超える位置、かつ、配管11の最側点19を超えない位置に配置される長さであることにより形成される。膨らみ20はボルト15を締結するための空間を確保するために設けられる窪み20が配管11の外周面に形成されることで形成される。
【0021】
突出長L1はフランジ17のY方向左側に向いた面からボス部12の先端12aまでの長さである。本開示において、最下点18を超える位置とは最下点18を通るYZ平面における鉛直線を超える位置である。また、最側点19を超えない位置とは最側点19を通るYZ平面における鉛直線を超えない位置である。
【0022】
堰部21は配管11の下部が最下点18を通過するXZ平面で区分された部位のうち、膨らみ20が形成された部位である。迂回部22は配管11の下部が最下点18を通過するXZ平面で区分された部位のうち、膨らみ20が形成されていない部位である。迂回部22は配管11の管壁が管径方向内側から外側に向かって凸の弧状を成している。迂回部22は配管11の内周面が円筒面であることが望ましい。
【0023】
頂点23は膨らみ20の内周面において最も配管11の内側に位置する部位を示す。
【0024】
第一斜面24は膨らみ20が形成された配管11の内周面であり、頂点23から膨らみ20の終端のうちの最下点18の側の終端25に向かって下方に傾斜する面である。第一斜面24は半割の回転楕円体を長軸を通過する平面でさらに切断した形状の面である。図中に示すように、第一斜面24は、頂点23を通過するYZ平面における横断面において、頂点23から最下点18に向かって下方に傾斜する面である。
【0025】
第一斜面24の終端25は最下点18の手前に配置される。第一斜面24は膨らみ20が形成された配管11の内周面であり、内周面が管径方向外側から内側に向かって凸むことで形成される斜面である。膨らみ20が存在しない他の配管11の内周面は管径方向内側から外側に向かって凹むことで形成される円筒面である。第一斜面24の終端25は配管11の内周面が内側に向かって凸む部分と外側に向かって凹む部分の境界である。
【0026】
第二斜面26は膨らみ20が形成された配管11の内周面であり、頂点23を介して第一斜面24の反対側に位置し、膨らみ20の終端のうちの最下点18の側の反対側の終端から頂点23に向かって下方に傾斜する面である。第二斜面26は半割の回転楕円体を長軸を通過する平面でさらに切断した形状の面である。図中に示すように、第二斜面26は、頂点23を通過するYZ平面における横断面において、頂点23に向かって下方に傾斜する面である。
【0027】
堰部21は最下点18に向かって第二斜面26および第一斜面24が管周方向に並ぶ。堰部21は内周面の全域が最下点18に向かって下方に傾斜した斜面となる。図中のように、その斜面の中途位置に頂点23が介在する場合も、同様に、その斜面は最下点18に向かって下方に傾斜する。
【0028】
平坦面27は膨らみ20が形成された配管11の外周面であり、X方向に垂直で平坦な面である。平坦面27はボス部12の先端12aの一部を構成する。平坦面27はボルト15がボス部12に挿入されるとボルト15の座面15aに当接する面である。
【0029】
湾曲面28は膨らみ20が形成された配管11の外周面であり、Z方向下側から上側に向かって凸の円筒面を成す。湾曲面28はボス部12の先端12aから先に形成される円柱体の空間の内側に突出しない面である。つまり、湾曲面28はボス部12に対して挿抜されるボルト15と非干渉である。
【0030】
膨らみ20が形成された部分のYZ平面における断面における配管11の開口面積は膨らみ20が形成されていない部分のYZ平面における断面における開口面積と等しい。最下点18を通過する鉛直線から図中右側部分はその開口形状が半円形状を成し、その開口面積は半円の面積と等しい。最下点18を通過する鉛直線から図中左側部分の開口形状は膨らみ20が形成された分、最側点19の近傍が管径方向内側から外側に向かって膨らんだ形状を成し、その開口面積は最下点18を通過する鉛直線から図中右側部分の開口面積と等しい。
【0031】
図3に例示するように、膨らみ20が形成された配管11の内周面はX方向に対して流線型であることが望ましい。本開示において流線型とは配管11の内部をX方向に流れる流体の流れが堰き止められない形状を示す。本実施形態の膨らみ20が形成された内周面は回転楕円体を半割にした形状であり、頂点23から膨らみ20の終端29に向かって下方に傾斜する。XZ平面における膨らみ20の終端29どうしの間は、ボス部12の直径よりも長く、終端29はボス部12の外周よりも外側の位置に配置される。
【0032】
以上のように本開示の配管構造10によれば、配管11の下部とボス部12の先端部とを一体化して重なることで、配管11とボス部12とを近接させることができる。それ故、周辺部品への干渉を回避することができる。さらに、本開示の配管構造10によれば、配管11とボス部12とを近接させることで生じる配管11の形状を変更した堰部21と形状を変更しない迂回部22とが配管11の最下点18を境にして存在する。それ故、堰部21に留まろうとする流体は迂回部22へと流れ込むことになるため、配管11の内部に流体が溜まることを回避することができる。
【0033】
流体を再循環排気による凝縮水として説明する。再循環排気に含まれる水分が凝縮した凝縮水は流量調節弁2に向かって下方に傾斜した連通配管1に沿って流れ、流量調節弁2を通過して屈曲配管16および配管11に流入する。屈曲配管16を通過した凝縮水は配管11の膨らみ20の先端に衝突してもその流れが妨げられることなく、膨らみ20を避けて配管11の最下点18に流れ込む。このように、凝縮水が溜まることを回避できるため、凝縮水による配管11の内部の腐食を抑制することができる。
【0034】
配管構造10によれば、配管11とボス部12とを近接させるとともに配管11の形状を円筒管形状に近い形状にすることで、他の配管の形状を変更することなく、円筒管の形状を対象とした装置を配管の中途位置に組み込むことができる。本実施形態において円筒管の形状を対象とした装置はバタフライ弁が内蔵された流量調節弁2である。
【0035】
突出長L1が最下点18を超えない位置に先端12aが配置される長さの場合に、ボルト15を締結するための空間を確保するには、最下点18も含む配管11の下部の大部分の内周面を上方に変形させる必要がある。それ故、その変形させた部分はそれよりも上流側の部位に対して堰となり、屈曲配管16から流れてくる凝縮水が溜まることになる。また、突出長L1が最側点19を超える位置に先端12aが配置される長さの場合に、ボルト15およびボス部12のY方向の長さを伸ばすことになる。それ故、伸びた分だけ重量が増加することになる。また、長さが伸びたボス部は配管11に一体化されていない他のボス部14よりも長くなることで、各々のボス部12~14で共通のボルト15を使用することができなくなる。
【0036】
そこで、本開示の配管構造10は、ボス部12の突出長L1は先端12aが最下点18を超えるとともに最側点19を超えない位置に配置される長さにする。これにより、最下点18を境にした堰部21と迂回部22とを形成可能となり、前述したように凝縮水の溜まりを回避可能となる。また、配管構造10の重量の増加も抑制することができる。加えて、各々のボス部12~14で共通のボルト15を使用することができる。
【0037】
突出長L1は最下点18を通る鉛直線と最側点19を通る鉛直線との中間地点を通る鉛直線よりも最下点18の側となる位置に先端12aが配置される長さがより好ましい。これにより、ボルト15およびボス部12の長さを短くなり、その分、軽量化を図るには有利になる。
【0038】
膨らみ20が形成された配管11の内周面は膨らみ20の頂点23から最下点18の側の終端25に向かって下方に傾斜する第一斜面24を有することが望ましい。これにより、配管構造10を鋳造により製造する場合に配管11の内部に詰められた中子を取り出しやすくなり、膨らみ20が形成された配管11の製造に手間を掛けずにその製造に要する時間の増加を回避することができる。同様に、膨らみ20の第一斜面24の反対側の第二斜面26はその終端から頂点23に向かって下方に傾斜することで、中子を取り出しやすくなっている。
【0039】
第一斜面24の最下点18の側の終端25は最下点18の手前に位置することが望ましい。第一斜面24の終端25が最下点18の手前に位置すると、その終端25から最下点18までの配管11の内周面は、迂回部22と同様に管径方向内側から外側に向かって凸の円筒面となる。終端25が最下点18に位置すると、配管11に流れ込んだ凝縮水が堰部21に堰き止められて迂回部22に流れ込まないおそれがある。そこで、終端25を最下点18の手前に位置させることで、凝縮水を確実に迂回部22に流すことが可能となる。頂点23を通るYZ平面において終端25が最下点18の手前に位置することから、そのX方向前後の終端25はより最下点18の手前に位置することになる。
【0040】
堰部21は配管11の内周面の全域が最下点18に向かって下方に傾斜した斜面を有することが望ましい。これにより、凝縮水が膨らみ20の先端に勢いよく衝突して、膨らみ20に乗り上げても、乗り上げたその凝縮水は斜面により、最下点18に向かって流れることになる。これにより、堰部21に凝縮水が溜まる状態を回避することができる。
【0041】
膨らみ20が形成された配管11の内周面はX方向に対して流線型を成すことが望ましい。内側に凸む部分が流線型を成すことで、凝縮水が円滑に流れるとともに再循環排気に対する抵抗も少なくなる。
【0042】
堰部21の平坦面27がボルト15の座面15aに当接することは、配管11とボス部12とが近接することを意味する。このように、平坦面27がボス部12の先端12aの一部を構成するように、配管11とボス部12とを近接させることで、配管構造10がコンパクトになる。
【0043】
堰部21の配管11の外周面はボルト15のボス部12に対する挿抜に対して非干渉となることで、ボルト15の締結作業の阻害が回避される。
【0044】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の配管構造10は特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0045】
本開示の配管構造10は、配管11が排気再循環通路の一部を構成する配管に限定されずに、配管11の内部が腐食する要因となる流体が流れる配管に適用することが可能である。例えば、そのような配管としてはエキゾーストマニホールドが例示される。なお、配管構造10はエンジンに搭載されるものに限定されるものではなく、配管を壁面に取り付けるボス部が配管の下方に位置する構造であればボイラーなどの他の機関にも適用可能である。
【0046】
配管構造10は配管11とこの配管11の下方に配置されたボス部12とを備えて構成されていれば、実施形態で例示した他のボス部13、14、屈曲配管16、および、フランジ17が必ずしも必須ではない。ボス部12はボルト15が挿抜可能であればよく、その外周形状が特に限定されるものではない。ボス部12に挿抜されるボルト15の軸方向も配管11の管軸方向に直交する方向に限定されるものではなく、管軸方向に交差するものであれば適用可能である。
【0047】
配管構造10はボス部13の先端部の直下に位置する配管11の上部の一部とその先端部とが一体化されて重なる。配管構造10はボス部13の突出長がボス部12と同様の長さである。配管構造10は、配管11の上部が、最上点を境にして管壁が管径方向外側から内側に向かって凸の膨らみを有する部分と、管壁が管径方向内側から外側に向かって凸の弧状を成す部分とが並んで構成される。実施形態の配管構造10は、配管11の上方に配置されたボス部13もボス部12と同様に配管11に近接させている。このように、配管11の上下のボス部12、13どうしの間を縮めることで、配管構造10が他の部材に干渉することを回避するには有利になる。なお、配管11とボス部13とが一体化して重なることで形成される膨らみは凝縮水が溜まることがないため、特にその形状が限定されるものではない。
【0048】
膨らみ20の形状は配管11を流れる流体の流れに関して上流側に配置される先端がその流体を堰き止めることなく、かつ、鋳造の中子が取り出しやすい形状であれば、実施形態の形状に限定されるものではない。例えば、膨らみ20の形状としては、柱軸方向が管軸方向に向いた半円柱でその半円形状の先端面が管径方向内側から外側に見て、最下点18に向かって傾斜した形状が例示される。また、膨らみ20の末端は流体に衝突することがなく、その部分の形状も特に限定されるものではない。膨らみ20が形成された配管11の内周面は曲面で形成されることが望ましいが、前述の条件を満たす限りにおいて曲面で形成されなくてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 配管構造
11 配管
12~14 ボス部
15 ボルト
17 フランジ
20 膨らみ
21 堰部
22 迂回部
23 頂点
24 第一斜面
25 終端
26 第二斜面
27 平坦面
28 湾曲面