(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152743
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】廃水処理装置、および、廃水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/06 20060101AFI20221004BHJP
C02F 3/34 20060101ALI20221004BHJP
C02F 3/00 20060101ALI20221004BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20221004BHJP
C02F 3/20 20060101ALI20221004BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C02F3/06
C02F3/34 101B
C02F3/34 101A
C02F3/00 G
B01D53/22
C02F3/20 Z
C02F1/44 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055623
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松島 加奈
(72)【発明者】
【氏名】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】奥野 健太
【テーマコード(参考)】
4D003
4D006
4D029
4D040
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003AB09
4D003EA03
4D003EA05
4D003EA16
4D003EA19
4D003EA30
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4D040BB02
4D040BB42
4D040BB52
4D040BB82
(57)【要約】
【課題】従来の微生物を用いた廃水処理装置では、窒素化合物を含有する廃水を効率的に処理することができなかった。
【解決手段】廃水処理装置(100)は、廃水を処理する反応槽(51)と、反応槽(51)中で、廃水に浸漬して配置される気体供給体(10)と、を含む。気体供給体(10)は、酸素を含む気体を内側から廃水に供給し、かつ、硝化菌を廃水に接する外側表面に担持する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝化菌に酸素を供給して、窒素化合物を含有する廃水を処理する廃水処理装置であって、
廃水を処理する反応槽と、
前記反応槽中で、廃水に浸漬して配置される気体供給体と、を含み、
前記気体供給体は、前記酸素を含む気体を内側から廃水に供給し、かつ、前記硝化菌を廃水に接する外側表面に担持する、
廃水処理装置。
【請求項2】
前記気体供給体は、前記廃水に接する外側表面に防水透気膜を備える、
請求項1に記載の廃水処理装置。
【請求項3】
前記防水透気膜は、微生物粘着性である、
請求項2に記載の廃水処理装置。
【請求項4】
前記気体供給体は複数である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の廃水処理装置。
【請求項5】
気体供給体を設置した反応槽に、窒素化合物を含有する廃水を導入して、廃水を処理する、廃水処理方法であって、
前記反応槽に、廃水と、硝化菌を含む微生物製剤とを供給し、前記気体供給体を廃水に浸漬させ、
廃水に浸漬された前記気体供給体の内側に酸素を含むガスを供給し、前記ガスを前記気体供給体の外側表面に移動させ、前記硝化菌に供給する、
廃水処理方法。
【請求項6】
前記気体供給体は、廃水に接する外側表面に防水透気膜を備える、
請求項5に記載の廃水処理方法。
【請求項7】
前記防水透気膜は、微生物粘着性である、
請求項6に記載の廃水処理方法。
【請求項8】
前記気体供給体は複数である、
請求項5~7のいずれか1項に記載の廃水処理方法。
【請求項9】
前記反応槽に、最初に廃水を供給する時に、同時に、前記硝化菌を供給する、
請求項5~8のいずれか1項に記載の廃水処理方法。
【請求項10】
前記硝化菌を初期馴養時、活性汚泥量に対し、50wt%供給する、
請求項5~9のいずれか1項に記載の廃水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒素化合物を含有する廃水を反応槽に導入し、硝化菌に酸素を供給して、前記廃水を処理する廃水処理装置、および、廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
好気性微生物を用いた廃水処理が知られている。しかし、微生物を用いた廃水処理において、窒素化合物の生分解反応(硝化反応、脱窒反応)は、その反応を阻害する有機物であるBOD物質(BOD原因物質)が除去されたあとに始まる。そのため、有機物除去と窒素化合物除去を同時に行うことは困難であるという課題がある。
【0003】
特許文献1に記載された廃水処理方法では、酸素供給を膜内より行うことで、膜表面に好気性の硝化菌、その外層(排水側)に脱窒菌が定着し、同一槽内で硝化脱窒(窒素除去)が可能である。しかし、硝化菌は他の微生物や脱窒菌にと比較して増殖速度が非常に遅く、窒素化合物以外にも汚濁物質が存在する場合、硝化菌以外の菌が増殖してしまう。さらに、MABRでは、酸素供給方向と有機物供給方向が逆向きである為に微生物膜の剥離が抑制されるが、微生物膜の新生、更新も起こりにくく、一度形成された微生物膜は長期間にわたって維持されるため、前述の状態では、硝化反応が十分に進行しなくなるという問題がある。
【0004】
特許文献2、及び特許文献3に記載された処理方法では、中空糸表面に硝化菌、又は脱窒菌のいずれか一方を担持し、硝化、又は脱窒に係る微生物の馴養期間を短縮している。しかし、中空糸を利用する方法では、細孔付近にしか酸素供給されず、有効表面積を保つためにバイオフィルムを剥離させるために曝気する必要があり、脱窒のための高い嫌気度を保つことが困難であるため、硝化槽と脱窒槽を別々に設置する必要がある。窒素化合物の二段階の分解工程、則ち硝化反応と脱窒反応を別々の槽で行うため、反応槽設置スペースおよびコストが高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-104007公報
【特許文献2】特許第5039093号公報
【特許文献3】特許第3474476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の微生物を用いた廃水処理装置では、窒素化合物を含有する廃水を効率的に処理することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1観点の廃水処理装置は、硝化菌に酸素を供給して、窒素化合物を含有する廃水を処理する廃水処理装置であって、
廃水を処理する反応槽と、
前記反応槽中で、廃水に浸漬して配置される気体供給体と、を含み、
前記気体供給体は、前記酸素を含む気体を内側から廃水に供給し、かつ、前記硝化菌を廃水に接する外側表面に担持する。
【0008】
第2観点の廃水処理装置は、第1観点の廃水処理装置であって、前記気体供給体は、前記廃水に接する外側表面に防水透気膜を備える。
【0009】
第3観点の廃水処理装置は、第2観点の廃水処理装置であって、前記防水透気膜は、微生物粘着性である。
【0010】
第4観点の廃水処理装置は、第1観点~第3観点のいずれかの廃水処理装置であって、前記気体供給体は複数である。
【0011】
第5観点の廃水処理方法は、気体供給体を設置した反応槽に、窒素化合物を含有する廃水を導入して、廃水を処理する、廃水処理方法であって、
前記反応槽に、廃水と、硝化菌を含む微生物製剤とを供給し、前記気体供給体を廃水に浸漬させ、
廃水に浸漬された前記気体供給体の内側に酸素を含むガスを供給し、前記ガスを前記気体供給体の外側表面に移動させ、前記硝化菌に供給する。
【0012】
第6観点の廃水処理方法は、第5観点の廃水処理方法であって、前記気体供給体は、廃水に接する外側表面に防水透気膜を備える。
【0013】
第7観点の廃水処理方法は、第6観点の廃水処理方法であって、前記防水透気膜は、微生物粘着性である。
【0014】
第8観点の廃水処理方法は、第5観点~第7観点の廃水処理方法であって、前記気体供給体は複数である。
【0015】
第9観点の廃水処理方法は、第5観点~第8観点の廃水処理方法であって、前記反応槽に、最初に廃水を供給する時に、同時に、前記硝化菌を供給する。
【0016】
第10観点の廃水処理方法は、第5観点~第9観点の廃水処理方法であって、前記反応槽に、最初に廃水を供給する時に、同時に、前記硝化菌を供給する。
【発明の効果】
【0017】
本実施形態の気体供給体を用いた廃水処理装置では、馴養初期に硝化菌を投入することで、気体供給体表面の微生物支持層に硝化菌と脱窒菌の両方が担持され、1つの槽内で窒素化合物の除去を効率的に行うことができ槽設置スペースおよびコストを抑えることができる。
【0018】
更には、無孔膜は膜表面全体から酸素が供給できるので、有効膜に比べ酸素供給面で有利である。さらに、中空糸は有効表面積を保つためにバイオフィルムを剥離させるために曝気するが、平板ではその必要がない。そのため、バイオフィルム外のシートから離れた領域の槽内の嫌気度を高く保つことができるため、高い脱窒性能が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の廃水処理装置100の鉛直断面図である。
【
図2】第1実施形態の廃水処理装置100の水平断面図である。
【
図3】第1実施形態の廃水処理装置100の鉛直断面図である。
図1と直交する断面を示す。
【
図4】第1実施形態の気体供給体10の鉛直断面図である。
【
図5】
図4の気体供給体10を構成する気体送出層12を示す斜視図である。
【
図6】
図1の廃水処理装置100の廃水処理槽51内の廃水中に浸漬された気体供給体10の防水透気膜21の表面に形成される微生物集合体、および微生物による少なくとも1つの有機物質または窒素源の分解について説明する模式図である。
【
図7】本発明に係る気体供給体に含まれる気体送出層の構成を示す分解斜視図である。
【
図8】本発明に係る気体供給体に含まれる気体送出層を示す斜視図である。
【
図9】第2実施形態の気体供給体10aの鉛直断面図である。
【
図10】第2実施形態の変形例の気体供給体10aの鉛直断面図である。
【
図11】第3実施形態の廃水処理装置100bの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
(窒素化合物含有廃水処理装置100)
本実施形態の窒素化合物含有廃水処理装置100は、微生物(硝化菌)の働きを利用して、窒素化合物含有廃水中の少なくとも1つの窒素化合物成分を分解して廃水の浄化処理を行う。
図1に示すように、窒素化合物含有廃水処理装置100は、窒素化合物含有廃水処理槽51と、システム50とを備えている。
【0021】
(窒素化合物含有廃水処理槽51)
図1または
図2に示すように、窒素化合物含有廃水処理槽51は、窒素化合物含有廃水Wが貯留される有底の容器であって、互いに対向する側面に流入口51aと流出口51bとが設けられている。本実施形態では、流入口51aと流出口51bとが常時開放されている。窒素化合物含有廃水Wは、流入口51aから、流入口51aに対向する位置に配置された流出口51bに向かって、連続的、もしくは、断続的に供給される(
図3の一点鎖線矢印は、窒素化合物含有廃水Wの流れを示している)。窒素化合物含有廃水処理槽51の容積については、特に限定されないが、例えば、1m
3以上10,000m
3以下の容積であればよい。
【0022】
(システム50)
システム50は、供給体ユニット52と、気体供給源53とを備えている。
【0023】
(供給体ユニット52)
図1に示すように、供給体ユニット52は、気体供給体10がユニット化されたものであり、窒素化合物含有廃水処理槽51の内部に配置される。
図1では、供給体ユニット52は、平行に配列された複数の気体供給体10によって構成されている。供給体ユニット52は、使用時において、各気体供給体10の上端部分を除いた部分が窒素化合物含有廃水W中に浸漬されるように配置される。
【0024】
(気体供給体10)
気体供給体10は、
図4または6に示すように、気体送出層12と、防水透気膜21とを含む。供給体ユニット52を構成する各気体供給体10は、窒素化合物含有廃水処理槽51の窒素化合物含有廃水W中に浸漬された状態で、開口21bから供給された気体を、窒素化合物含有廃水W中に供給する構造体である。気体供給体10を介して窒素化合物含有廃水W中に供給される気体としては、窒素化合物含有廃水W中の好気性微生物の活性化を促すために、酸素を含む気体であることが好ましい。具体的には、空気であってもよいし、純酸素であってもよい。図示の例では、気体供給源53からの気体が開口21bに供給されるようになっており、気体供給源53として送気装置等を用いることができる。なお製造コストを安価に抑える観点から、気体供給源53を使用せずに、開口21bから大気中の空気をそのまま気体供給体10に取り入れてもよい。
図2に示すように、各気体供給体10は、平板状の部材であって、上下方向(深さ方向)と横方向(水平方向)とに沿って面が展開されるように配置されている。これにより、窒素化合物含有廃水Wとの接触面積が効率的に確保される。また、流入口51aと流出口51bとを結ぶ直線に対して、各気体供給体10の側面が平行になるように各気体供給体10が配置されることで、流入口51aから窒素化合物含有廃水処理槽51内に供給される窒素化合物含有廃水Wは、流出口51bに向けて円滑に流れる。なお、供給体ユニット52を構成する気体供給体10の数は、必ずしも複数である必要はなく、単数であってもよい。気体供給体10の間隔を、「気体供給体10の厚みを含まない、隣り合う2つの気体供給体10の外面の間の間隔」と定義すると、気体供給体10の間隔は、5mm以上200mm以下であることが好ましい。気体供給体10の間隔が5mm未満である場合には、防水透気膜21上に増殖する微生物によって目詰まりを起こす虞がある。気体供給体10の間隔が200mmを超える場合には、廃水との接触効率が悪くなり、廃水処理性能が向上しにくくなる可能性がある。なお上記問題を確実に回避するために、気体供給体10の間隔を15mm以上50mm以下とすることがより好ましい。
図4は、気体供給体10の鉛直断面図である。
図4に示すように、気体供給体10は、気体送出層12と、防水透気膜21とを備えており、防水透気膜21によって構成される袋の中に気体送出層12が配置される。前記袋は、2枚の防水透気膜21,21を重ね合わせて、これら防水透気膜21,21の3方の端部を接着したものであり、上端部(気体送出層12における気体供給側の端部)に開口21b(
図4参照)を有している。そして開口21bから気体送出層12が袋の内部に挿入されることで、気体送出層12の外周は防水透気膜21によって覆われている。なお開口21bの位置あるいは形状は限定されず、例えば各端部(袋の上辺、底辺、横辺(縦のライン)も含む)の一部が開口とされてもよい。
【0025】
(防水透気膜21)
防水透気膜21は、最外側層が液体(廃水)に接触するように液体中(廃水中)に浸漬された状態で、内側(気体送出層12側)に供給される酸素を外側へ透過させることで、酸素を液体中(廃水中)に供給する。当該防水透気膜21は、気体供給体10が窒素化合物含有廃水処理槽51内に浸漬された状態において、内側(気体送出層12)から外側(廃水W)へ空気を透過させ、かつ外側(窒素化合物含有廃水W)から内側(気体送出層12)へ廃水を透過させない特性を有する。これにより、窒素化合物含有廃水W中の好気性微生物は、
図6に示すように、継続的に空気(酸素)が供給される防水透気膜21の表面21aに集まってくる。よって、防水透気膜21の表面21aに微生物が付着して、バイオフィルム214が形成される。そして、窒素化合物含有廃水Wに含まれるか、もしくは表面21aに保持されている微生物の働きによって、水中に溶解、もしくは分散している微小個体状の有機物、もしくは窒素化合物が分解されて、廃水が浄化される。防水透気膜21は、基材211と、気体透過性無孔層212とを含むことが好ましい。図示の例では、防水透気膜21は、基材211、気体透過性無孔層212、微生物支持層213の順に積層されている。なお図示の例とは異なり、防水透気膜21は、気体透過性無孔層212、基材211、微生物支持層213の順に積層されたものであってもよい。
【0026】
(基材211)
基材211は、熱可塑性樹脂から形成される微多孔膜である。前記微多孔膜とは、微細な貫通孔を多数設けた膜である。基材211の素材として、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリメチルペンテン、ポリテトラフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデンを含めたフッ素樹脂、ポリブタジエン、ポリ(ジメチルシロキサン)を含めたシリコーンベースのポリマー、およびこれらの材料のコポリマーから選ばれるポリマー材料を含む等を含んでもよい。微多孔膜である基材211の製造方法は、特に限定されないが、例えば、相分離法、延伸開孔法、溶解再結晶法、粉末焼結法、発泡法、溶剤抽出のいずれかによって、基材211を製造できる。また基材211は、自己組織化ハニカム微多孔膜であってもよい。基材211の厚みは、10um~500umであることが好ましく、50um~200umであることがより好ましい。基材211の厚さは、JIS1913:2010一般不織布試験方法6.1厚さの測定方法で測定される値である。基材211の細孔径は、気体透過性無孔層の欠陥を防止する観点から、0.01um~50umであることが好ましく、高い強度と気体透過性を保持する観点から、0.1um~30umであることがより好ましい。前記細孔径は、表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、その観察像から以下に示す方法により求めた細孔径である。観察倍率は、観察する対象物の細孔径が適切に算出できる倍率であれば、任意の倍率で観察することができる。
【0027】
(細孔径を求める方法)
SEM観察で得られた像について、2値化処理を行い、画像解析的に、細孔径を算出する。算出の際には、細孔径は楕円近似を行い、楕円の長軸の長さを細孔径として、その平均値を評価する。或いは、基材211の細孔径は、毛管凝縮法による細孔径分布測定(パームポロシメトリ)から求められる平均細孔径であると定義される。パームポロシメトリでは、試料にかける気体の測定圧力を徐々に増加させていく際に測定される気体の透過流量から、大気圧と測定圧力との差圧と、気体透過流量との関係を求める、細孔径を求めるには、試料を表面張力が既知の湿潤液に浸漬した後の湿潤サンプルにて測定されるウェットカーブと、乾燥した資料で測定されるドライカーブを求める。それぞれ、所定の圧力範囲で徐々に圧力を増加させていくことにより、試料内の貫通細孔径に関する情報を得ることができる。平均細孔径はウェットカーブと、ドライカーブの1/2の傾きの曲線(ハーフドライカーブ)が交わる点Xを求め、これを方程式、d=2860×γ/DPに代入して求める。前記方程式において、dは平均細孔径(mm)、γは湿潤液の表面張力(dynes/cm)、DPは点Xにおける大気圧と気体圧力との差圧(Pa)である。測定は、Porous Materials社製、パームポロメーター(CFP-1500-AEC)を用いることができる。試験条件としては例えば、試験温度は室温(20℃±5℃)、湿潤液はGalwick(表面張力15.7dynes/cm)、加圧気体は圧縮空気、用いる試料の直径は33mm、供給圧力最大値は250psi、差圧の上昇速度は4psi/分で測定することができる。湿潤サンプル作成の際には、サンプルが浸漬されている湿潤液をデシケータに入れ、脱気することでサンプルを十分に湿潤させることができる。
【0028】
(気体透過性無孔層212)
気体透過性無孔層212とは、前記基材の孔より径の小さい細孔径の孔を有するか、もしくは、孔の径を検出できず、かつ、気体を透過可能な層である。気体透過性無孔層212の細孔径は、基材211の細孔径と同様の方法で測定できる。気体透過性無孔層212を透過する前記気体としては、酸素、二酸化炭素、窒素、水素、メタノール、エタノール等のアルコール類や有機溶剤、もしくはそれらの混合ガスが挙げられる。微生物を効果的に育成、活動させる観点から、前記気体は、酸素か、酸素を含む混合ガスであることが好ましい。気体透過性はJIS K 7126に定めた方法で測定できる。気体透過性無孔層212は、熱可塑性樹脂でもよく、熱硬化性樹脂でもよい。当該熱硬化性樹脂は、熱硬化する樹脂であってもよく、紫外線の照射で硬化する樹脂であってもよい。また、有機過酸化物架橋、付加反応架橋、縮合架橋により硬化する樹脂であってもよい。気体透過性無孔層212の素材としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂および、これらの材料のコポリマーから選ばれる熱硬化性ポリマーを含んでもよい。また、(Si-O-Si)n(n=整数)のシロキサン骨格を有するポリ(ジメチルシロキサン)などのシリコーンベースのシリコーン樹脂を用いることができる。これらの中でも、特に、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂を用いることが好ましい。上記のポリウレタン樹脂としては、「アサフレックス 825」(旭化成社製)、「ペレセン 2363-80A」、「ペレセン 2363-80AE」、「ペレセン 2363-90A」、「ペレセン 2363-90AE」、(以上、ダウ・ケミカル社製)、「ハイムレンY-237NS」(大日精化工業社製)を用いることができる。シリコーン系樹脂やシリコーンポリマー、またはそれらを得るためのシリコーン系樹脂組成物の配合、組成は特に限定されない。シリコーン系樹脂組成物に用いられるモノマーは1官能基、2官能基、3官能基、4官能基のいずれでもよく、単独で用いても、2種類以上を用いてもよい。モノマーとしてハロゲン化アルキルシラン、不飽和基含有シラン、アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシラン等を用いてもよい。用いられるモノマーとしては、例えば次の化学式で表されるモノマーが挙げられる。HSiCl3、SiCl4、MeSiHCl2、Me3SiCl、MeSiCl3、Me2SiCl2、Me2HSiCl、PhSiCl3、Ph2SiCl2、MePhSiCl2、Ph2MeSiCl、CH2=CHSiCl3、Me(CH2=CH)SiCl2、Me2(CH2=CH)SiCl、(CF3CH2CH2)MeSiCl2、(CF3CH2CH2)SiCl3、CH18H37SiCl3(化学式中で「=」は二重結合を、「Me」はメチル基を、「Ph」はフェニル基を表す)。前記モノマーは単独で用いても、2種類以上を用いてもよい。他の有機基としては、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基等のアラルキル基等を用いてもよい。これらの中でも、メチル基、フェニル基またはこれら両者の組み合わせが好ましい。メチル基、フェニル基またはこれら両者の組み合わせである成分は、合成が容易であり、化学的安定性が良好であるからである。また、特に耐溶剤性が良好なポリオルガノシロキサンを用いようとする場合には、更にメチル基、フェニル基またはこれら両者の組み合わせと3,3,3-トリフルオロプロピル基との組み合わせであることが好ましい。また、前記シリコーン系樹脂組成物には、オルガノアルコキシシランが含まれていてもよい。オルガノアルコキシシランとしては、例えば次の化学式で表される化合物が挙げられ、単独で用いても2種類以上を用いてもよい。Me3SiOCH3、Me2Si(OCH3)2、MeSi(OCH3)3、Si(OCH3)4、Me(C2H5)Si(OCH3)2、C2H5Si(OCH3)3、C10H21Si(OCH3)3、PhSi(OCH3)3、Ph2Si(OCH3)2、MeSiOC2H5、Me2Si(OC2H5)2、Si(OC2H5)4、C2H5Si(OC2H5)3、PhSi(OC2H5)3、Ph2Si(OC2H5)2。さらに、前記シリコーン系樹脂組成物には、オルガノシラノールが含まれていてもよい。オルガノシラノールとしては、例えば次の化学式で表される化合物が挙げられ、単独で用いても2種類以上を用いてもよい。Me3SiOH、Me2Si(OH)2、MePhSi(OH)2、(C2H5)3SiOH、Ph2Si(OH)2、Ph3SiOH。シリコーン系樹脂に用いられるシリコーンポリマーを得るための反応方法としては例えば、クロロシランの加水分解、環状ジメチルシロキサンオリゴマーの開環重合等の過程を経てもよい。用いるポリマーとしては例えば、ジメチル系ポリマー、メチルビニル系ポリマー、メチルフェニルビニル系ポリマー、メチルフロロアルキル系ポリマー当が挙げられる。シリコーンポリマーを硬化させる方法、すなわち反応(加硫)させてシリコーン系樹脂を得る方法は特に限定されない。加熱加硫、室温加硫でもよい。反応前の状態として、ミラブル型シリコーン系樹脂組成物、液状ゴム型シリコーン系樹脂組成物のどちらを用いてもよい。ミラブル型シリコーン系樹脂組成物に使用されるポリマーは重合度が4000~10000程度のポリマーが好適に使用される。また、1液型でも2液型でもよい。反応方法としては例えば、シラノール基(Si-OH)間の脱水縮合反応、シラノール基と加水分解性基間の縮合反応、メチルシリル基(Si-CH3)、ビニルシリル基(Si-CH=CH2)の有機過酸化物による反応、ビニルシリル基とヒドロシリル基(Si-H)との付加反応、紫外線による反応、電子線による反応等を用いてもよい。
【0029】
(微生物支持層213)
微生物支持層213は、その表面もしくは内部に微生物を保持する層である。微生物支持層213の素材としては、例えば、メッシュ、織布、不織布、発泡体、又は微多孔膜等の多孔性シートが挙げられる。多孔性シートの素材は、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、メチルセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、パラ系およびメタ系アラミド、ポリアリレート、炭素繊維、ガラス繊維、アルミニウム繊維、スチール繊維、セラミック等が挙げられる。微生物付着性と加工性を考慮すると、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、炭素繊維が好ましい。微生物支持層213の目付量は2g/m2以上、500g/ m2以下であることが好ましく、10g/ m2以上200g/m2以下であることがより好ましい。微生物支持層213の目付量はJIS1913:2010一般不織布試験方法6.2単位面積当たりの質量で測定される値である。微生物支持層213の目付量が2g/m2以上であることにより、表面に凹凸が生じるため微生物支持層213に微生物が保持しやすくなるという効果を得ることができる。また、微生物支持層213の目付量が500g/m2以下であることにより、微生物支持層213の内部に微生物が育成可能な空間が生じるため微生物が保持しやすくなり、前記空間により酸素を微生物に供給しやすくなるという効果を得ることができる。微生物支持層213の厚みは、5um以上、2000um以下であることが好ましく、20um以上500um以下であることがより好ましい。微生物支持層213の厚さはJIS1913:2010一般不織布試験方法6.1厚さの測定方法で測定される値である。
【0030】
防水透気膜21は、気体透過性無孔層212を有し、液透過性測定試験により得られる液透過度が1以下であることを特徴とする。
【0031】
(液透過性測定試験)
(1)50mm角の防水透気膜21における、処理水と接する面と反対側の面に、50mm角のポリエチレンテレフタレート樹脂製不織布(目付量は220~300g/mm2)を積層して試験片とし、当該試験片を10個用意する。(2)10個の試験片それぞれにおける不織布側の面がガラス板と接するようにガラス板に載せ、試験片の四隅を、幅10mmのテープによりガラス板に固定する。(3)各々の試験片の処理水に接する側の面の上に、イオン交換水にパーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩を0.7質量%及びアルラレッド(CAS No.:25956-17-6)を0.3質量%で溶解した試験液10mLを、試験片からはみ出ないようにピペットで一度に滴下する。(4)各々の試験片を、温度25±5℃、湿度50±10%の条件下で18時間静置する。(5)試験液が試験片を透過したことを、ガラス板側から確認できる試験片の個数を透過度とする。尚、上記(1)の工程において防水透気膜21と不織布とを積層する方法としては、両者を単に重ねるのみでよい。上記(2)の工程において試験片を固定する方法としてより具体的には、試験片の頂点に該当する四隅を、10mm角のテープにより固定する方法を挙げることができる。上記(3)の工程において、試験液が多いために、滴下した際に試験片からはみ出すことが避けられない場合には、試験液の量を半分に減らし試験を実施することも好ましい。
【0032】
(気体送出層12)
図5は、気体送出層12を示す斜視図である。気体送出層12は、中空板状部材であり、紙、樹脂、金属のいずれかから形成される。気体送出層12とは、第1端側から供給された気体を第1方向に沿って送出する気体流路Sを有する構造体である。気体供給源53(
図1)からの気体は、送気部31aを経由して気体送出層12の下端部に供給される。気体送出層12は、供給された気体を第1方向(
図5中の一点鎖線参照)に送出する気体流路Sを有しており、側面の気体通過孔13から気体を放出する。より具体的には
図5に示すように、気体送出層12は、複数の芯材12aと、表ライナ12bと、裏ライナ12cと、を有している。気体送出層12の表裏面は、板状の部材である表ライナ12bや裏ライナ12cによって構成される。複数の芯材12aは、それぞれ第1方向に延びるものであって、第1方向と直交する方向に所定の間隔をあけて配列される。これら複数の芯材12aが表ライナ12bと裏ライナ12cとの間に挟み込まれることで、表ライナ12bと裏ライナ12cとの間の空間に、芯材12aによって区画された複数の気体流路Sが形成される。また各芯材12aは、表ライナ12bおよび裏ライナ12c側から押圧された際に、表ライナ12bと裏ライナ12cとの間の空間が縮小しないように支持する支持部として機能する。
図1または
図2に示すように気体供給体10が廃水W中に浸漬された状態では、芯材12aは、気体流路Sの断面積が水圧によって縮小しないように、表ライナ12bと裏ライナ12cとの間の空間を保持する。これにより、気体送出層12(気体流路S)における気体送出量を十分に確保できる。表ライナ12bおよび裏ライナ12cには、それぞれ複数の気体通過孔13が形成されている。気体通過孔13は、表ライナ12bおよび裏ライナ12cに形成された貫通孔であり、当該気体通過孔13が気体流路Sと防水透気膜21とを連通させることで、気体流路Sを流れる気体は、防水透気膜21を介して液体中に供給される。なお例えば、気体通過孔13は、気体送出層12の成形時に形成される。或いは気体送出層12の成形後に表ライナ12bや裏ライナ12cの加工が行われることで、気体通過孔13が形成されてもよい。表ライナや裏ライナには多孔性シートが用いられてもよい。また、十分な気体供給性能が得られれば、気体送出層に多孔性シートを用いてもよい。気体送出層12を構成する各部材の素材としては、紙、セラミック、アルミニウム、鉄、プラスチック(ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、メチルセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂及びポリビニルブチラール樹脂)等が挙げられる。なお強度面が優れることから、気体送出層12の素材は、紙、アルミニウム、鉄、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩ビ樹脂、ポリエステル樹脂であることが好ましい。また材料コストを安価に抑える観点では、気体送出層12の素材として、例えば、紙、ポリオレフィン、ポリスチレン、塩ビ、ポリエステル等の樹脂、アルミニウム等の金属等を使用することが好ましい。また、気体流路Sが第1方向(
図4、5参照)に延びるように形成された段ボールを気体送出層12として使用することでも、気体送出層12の材料コストを安価に抑えることができる。当該気体送出層12の気体透過孔を形成する孔形状は、円形状、多角形状(ハニカム構造を含む)など様々な形状の孔形状とすることができる。孔形状は特に限定は無いが、多角形状が好ましく、具体的には長方形もしくは正方形が好ましい。
【0033】
(第1実施形態で変更可能な事項)
上記実施形態1では、平面状の気体供給体10を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、気体供給体10は巻回されていてもよいし、筒状に成型された気体供給体を用いてもよい。
【0034】
第1実施形態では、シート積層体からなる袋の開口21bから、気体送出層12を挿入して、気体供給体10を構成した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、気体送出層の表面にシート積層体が積層接着された構成であってもよい。接着する部位としては、シート積層体の外周部のみを接着していてもよいし、シート積層体への気体の供給が可能であれば、シート積層体と気体送出層とが全面において接着されていてもよい。
【0035】
気体送出層を構成する部材は、上記実施形態1に示した中空板状部材に限定されず、
図7に示すように変更され得る。
図7に示す気体送出層311は、ハニカム構造を有する第1構造体312と、第1構造体312のセル(気体通過孔312a)とは大きさが異なるセル(気体通過孔313a)が配置されるハニカム構造を有する第2構造体313とを、組み合わせて構成されている。
【0036】
第1実施形態では、芯材12aと表ライナ12bと裏ライナ12cとを含む気体送出層12を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば
図8に示すように、気体流路Sに沿って配置された断面視において波形の芯材412aを有し、気体通過孔413が複数形成された表ライナ412bと裏ライナ412cとの間に配置した中空板状部材412を気体送出層として用いてもよい。
【0037】
(生物脱窒法)
窒素化合物含有廃水を処理する方法として、生物脱窒法が知られている。本処理法は、アンモニア性窒素を好気条件下で微生物処理し、亜硝酸あるいは硝酸性窒素まで酸化する硝化工程と、嫌気条件下で亜硝酸、硝酸性窒素を窒素ガスとして還元除去する脱窒工程からなる。硝化工程に関与する微生物が硝化細菌であり、これらは反応槽内に十分な溶存酸素の存在が必須となる好気性細菌である。硝化細菌は、アンモニアや亜硝酸性窒素の酸化によりエネルギーを獲得し、無機炭素化合物を同化して増殖する独立栄養細菌である。気体供給体10に付着される硝化菌は、硝化反応に係る酵素を有する菌から選択することができる。このような硝化菌として、アンモニア酸化細菌(Nitrosomonas属菌、Nitrospira属菌)、亜硝酸酸化細菌(Nitrobacter属菌)等が挙げられる。Nitrosomonas属菌の代表としては、Nitrosomonas、europea、Nitrobacter属菌の代表としては、Nitrobacter agilis等が挙げられる。前記の硝化菌のうち1以上の菌が選択されて気体供給体10に付着される。脱窒に関与する微生物は、有機物の炭素源をエネルギー源とする従属栄養微生物であるが、好気条件下では酸素呼吸を行い、嫌気条件下では硝酸あるいは亜硝酸を電子受容体とした硝酸呼吸を行う通性嫌気性細菌である場合が多い。
【0038】
(硝化菌の供給方法)
硝化菌を担体に固定化する際の、気体供給体10の表面積当たりの硝化菌の接触量は、気体供給体10表面の材質や形状等によって適宜選択すればよく、例えば、窒素化合物含有廃水処理槽51の実効容積に対し気体供給体10の表面積の比率が50m2/m3の場合、硝化菌の培養液(SS測定量20000mg/L以上)を窒素化合物含有廃水処理槽51の実効容積に対し1mL/L以上、好ましくは10mL/L以上、より好ましくは100mL/L以上の割合で添加すればよい。培養液は窒素化合物含有廃水Wの供給に対して、連続的に供給されても、断続的に供給されても良い。好ましくは廃水処理槽51中の培養液濃度を一定に保持する為に連続的に供給されるほうが良い。
【0039】
(処理対象となる窒素化合物類)
処理の対象となる窒素化合物類としては、アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物、硝酸化合物が挙げられる。
【0040】
<第2実施形態>
第2実施形態の気体供給体10aは、
図9に示すように、気体透過性無孔層212aが、第1実施形態の気体透過性無孔層212と異なる点を除いて、第1実施形態の気体供給体10と同じである。第2実施形態の廃水処理装置100aは、気体供給体10aが第1実施形態の気体供給体10と異なる点を除いて、第1実施形態の廃水処理装置100と同じである。
【0041】
本実施形態の気体供給体10aは、気体送出層12と、防水透気膜210とを含む。防水透気膜210は、基材211と、気体透過性無孔層212aと、微生物支持層213とを含む。本実施形態の気体透過性無孔層212aは、微生物支持層213への微生物の付着を促進する効果も有する。
【0042】
気体透過性無孔層212aは、樹脂層を改質して形成される。樹脂層の表面改質によって樹脂層の表面の粗さと膜電位を上げられるので、防水透気膜210の表面への微生物付着性が向上する。例えば上記の表面改質処理として、グリシジルメタクリレートをグラフト重合し、さらに、ジエチルアミン、もしくは、亜硫酸ナトリウムを反応させることが行われ得る。或いは上記の表面改質処理として、グリシジルメタクリレートをグラフト重合した後に、アンモニア、もしくは、エチルアミンを反応させることが行われてもよい。その他の表面改質処理として、プラズマ処理、コロナ処理、二酸化塩素処理、等より表面に官能基を導入することで、微生物付着性が向上する。なお、気体透過性無孔層212に粘着性を付与することによって微生物支持層213を代用してもよい。言い換えると、微生物支持層213を形成しなくてもよい(第2実施形態の変形例として
図10に示す。)。このようにすれば、上記の粘着性によって、微生物付着性が向上する。粘着性の付与方法として、公知の粘着性樹脂を広く採用することが可能であり、特に限定はない。中でも、膜の粘着性を良好なものとするために、粘着剤としての機能を有する樹脂を使用することが好ましい。かかる樹脂として、具体的には、ゴム状物質である樹脂、アクリル系モノマーを必須の構成要素とするアクリル系樹脂のほか、ウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂やその粘着剤グレードの樹脂組成物も用いることが好ましい。上記ゴム状物質として具体的には、ポリブタジエン・ゴム、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体ゴム、ブチルゴム、アクリル系ゴム、スチレン・イソブチレン・ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン・アクリル酸エステル系共重合体ゴム等を例示することができる。また、ポリオレフィン系樹脂として、より具体的にはポリメチルペンテンのような酸素透過性の高い樹脂を使用してもよい。これらの樹脂は一種単独で使用してもよいし、複数種を併用した共重合体としてもよい。また、塗布の際には、トルエンやキシレン等の溶剤を混合してもよい。上記樹脂成分に加えて、粘着性を高めるために、粘着性を持つ樹脂(以下、「粘着剤」ともいう。)を添加してもよい。また、上記樹脂成分として粘着剤それ自体を採用することも好ましい。粘着剤量は、触媒及び溶媒との相溶性を向上させ、粘度調整しやすくするために、A層形成用樹脂組成物100質量%中に、10~99質量%とすることが好ましく、20~80質量%とすることがより好ましい。A層形成用樹脂組成物に含まれる粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、及びウレタン系粘着剤等が挙げられる。なお、粘着剤の種類は、酸素透過性、相溶性を考慮して選択され、シリコーン系粘着剤組成物からなることが好ましい。
【0043】
(シリコーン系粘着剤)
シリコーン系樹脂に粘着性を付与するための粘着剤として、例えば、シリコーン系粘着剤を使用することが好ましい。シリコーン系粘着剤は例えば、シリコンガムとMQレジン、有機溶剤、及びヒドロシリル基(SiH基)含有の架橋剤、並びに必要に応じて使用される硬化触媒からなっている。また、粘着性を付与するシリコーンポリマーとして例えば、MQレジンが好適に用いられる。MQレジンとは1官能基のモノマー(M単位)と4官能基のモノマー(Q単位)から合成された3次元構造をもつポリマーである。前記3次元構造を持つポリマーの分子量は好ましくは10~100000であり、より好ましくは100~10000である。各官能基のモノマーの有機基としては、メチル基を用いるのが好適であるが、付加反応型のシリコーン系樹脂の場合、アルケニル基を用いることが好適である。シリコーン系樹脂中におけるシリコーン系粘着剤の含有量はシリコーン系樹脂の強度と粘着性を両立する観点から、A層100質量%中のシリコーン系粘着剤量を、固形分換算で10~99質量%とすることが好ましく、20~80質量%とすることがより好ましく、30~80質量%とすることがさらに好ましい。本発明においては、粘着性を付与するシリコーンポリマーを得る際に、適宜、2官能基のモノマー(D単位)、3官能基のモノマー(T単位)を添加してもよく、他の官能基を有するモノマーやオリゴマーを添加してもよい。MQレジンはQ単位の縮合物の末端をM単位で封止した構造が好適に用いられる。Q単位に対するM単位のモル比は粘着性とシリコーン系樹脂の強度を両立する観点から0.4~1.2が好適であり、0.6~0.9がさらに好適である。
【0044】
(粘着性)
本明細書において粘着性を有するとは、膜を指で触った際にべたつきを感じることを意味する。より具体的には、JISZ0237-14粘着テープを用いたシート試験法の傾斜式ボールタック試験法において、傾斜角30度でボールナンバー1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。当該傾斜式ボールタック試験法により得られるボールナンバーの上限としては特に限定はなく、例えば32以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。本発明の膜が当該範囲内の粘着性を有することで、前記膜上のバイオフィルムが剥がれにくくなり、廃水処理性能が向上もしくは安定する。
【0045】
<第3実施形態>
本実施形態の窒素化合物含有廃水処理装置100bは、硝化菌の働きを利用して、窒素化合物含有廃水中の少なくとも1つの窒素化合物成分を分解して廃水の浄化処理を行う回分式の廃水処理装置である。
図11に示すように、窒素化合物含有廃水処理装置100bは、窒素化合物含有廃水処理槽510と、気体供給体10bと、を備えている
図11に示すように、窒素化合物含有廃水処理槽510は、窒素化合物含有廃水Wが貯留される有底の容器であって、処理水交換用の孔511を備えており、気体供給体10bが設置された蓋により、密閉される。処理水交換用の孔511は、栓512により密閉される。栓512は内部発生ガス抜き用の袋を備えていてもよい。窒素化合物含有廃水Wは、処理後、適宜交換される。窒素化合物含有廃水処理槽510の容積については、特に限定されないが、例えば、100mL以上1L以下の容積であればよい。
【0046】
第3実施形態の気体供給体10bは、
図11に示すように、気体送出層12を持たないことを除いて、第2実施形態の気体供給体10aと同じである。
【0047】
(実施例)
本発明を以下の実施例で説明するが、これに限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
第3実施形態の構成の廃水処理装置100bを作成した。窒素化合物含有廃水回分式処理装置は容積0.3675Lの窒素化合物含有廃水処理槽510、処理槽510に浸漬された部分の表面積が0.0049m2の気体供給体10b、1枚を下部に設置した供給部により構成される。廃水には、表1~5に示す人工下水を用いた。廃水はT-N容積負荷が約77g/m3/3dayになるように供給した。硝化菌を含む硝化反応用微生物製剤として、ナガオ株式会社製お魚さんエイド1号を用いた。お魚さんエイド1号は、初期播種活性汚泥に対し、50wt%となるよう播種した。実施例1では、気体供給体10bは廃水と接する最外層から順に微生物支持層213、気体透過性無孔層212、基材211で構成される。基材211として、住化積水フィルム株式会社製セルポアNW07Hに含まれる微多孔膜シートを使用した。基材211上に気体透過性無孔層212を形成した。気体透過性無孔層212は、メチルビニル系シリコーン樹脂、架橋剤、白金系の触媒等を混合した混合液をバーコーターを用いて塗布したのち、70°Cの雰囲気下に1時間静置することで、形成した。メチルビニル系シリコーン樹脂は粘着性樹脂を含有している。基材211に気体透過性無孔層212を積層したものをJISZ0237-14粘着テープを用いたシート試験法の傾斜式ボールタック試験法において測定した。測定結果は、傾斜角30度でボールナンバー1以上であった。気体透過性無孔層212の外側に微生物支持層213を配置した。微生物支持層213は、不織布(目付量は10g/m2、厚みは25um)を積層したものである。気体供給体は空気と触れ合うよう設置され、ここから酸素が供給される。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
(比較例1)
初期播種汚泥として活性汚泥のみを播種したこと以外は実施例1と同様である。
(比較例2)
初期播種汚泥としてお魚さんエイド1号(硝化菌)のみを播種したこと以外は実施例1と同様である。
【0055】
(窒素化合物測定方法)
公益社団法人日本下水道協会下水試験方法に記載の各窒素化合物試験方法に準拠して、それぞれの窒素化合物を測定した。
【0056】
(結果)
表6に示すように、同じS-T-N容積負荷約77g/m3/3dayである実施例1と比較例1、および比較例2を比べて、S-T-N除去率がそれぞれ61%程度と36%程度高い結果が得られた。
【0057】
【表6】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0058】
100、100a、100b 排水処理装置
10、10a、10b 気体供給体
12 気体送出層
21、210 防水透気膜
211 基材
212、212a 気体透過性無孔層
213 微生物支持層
51、510 窒素化合物含有廃水処理槽、反応槽