(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152748
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】被覆パイプの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 53/50 20060101AFI20221004BHJP
B29C 63/06 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B29C53/50
B29C63/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055633
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】梅田 一徳
(72)【発明者】
【氏名】横山 康晴
【テーマコード(参考)】
4F209
4F211
【Fターム(参考)】
4F209AA04
4F209AD08
4F209AD12
4F209AD17
4F209AG03
4F209AG08
4F209AG20
4F209NA13
4F209NB02
4F209NB11
4F209NG02
4F209NJ11
4F209NL02
4F211AA04
4F211AG03
4F211AG08
4F211AG20
4F211SA01
4F211SC01
4F211SD01
4F211SJ11
4F211SP21
(57)【要約】
【課題】引き取り後の被覆発泡材の収縮率を抑制することができる発泡材被覆パイプの製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂パイプ2と発泡材シート4とをそれぞれ連続してフォーマー6に送り出し、該発泡材シート4を丸めて樹脂パイプ2を包囲し、該発泡材シート4の幅方向の側端部を加熱融解したのち、前記フォーマー6において該側端部同士を融着接合することにより、樹脂パイプを連続被覆する被覆パイプ8の製造方法樹脂パイプの速度に対する計測された発泡材被覆パイプの速度の差を2%以内にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂パイプと発泡材シートとをそれぞれ連続してフォーマーに送り出し、
該発泡材シートを丸めて樹脂パイプを包囲し、
該発泡材シートの幅方向の側端部を加熱融解したのち、前記フォーマーにおいて該側端部同士を融着接合することにより、樹脂パイプを連続被覆する発泡材被覆パイプの製造方法において、
円筒状フォーマーに通す前の樹脂パイプを一定速度で送るための送り機と、該送り機と円筒状フォーマーとの間で樹脂パイプの送り速度を計測する第1計速器と、引き取り機から送り出された発泡材被覆パイプの送り速度を被覆材外面で計測する第2計速器とを設置し、
第1計速器で計測された樹脂パイプの速度に対する第2計速器で計測された発泡材被覆パイプの速度の差を2%以内にすることを特徴とする発泡材被覆パイプの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂パイプ送り機の送り速度設定値をVa,第1計速器で計測した樹脂パイプの送り速度をVb、引き取り機の設定速度をVc、第2計測器で計測した発泡材被覆パイプの送り速度をVdとした場合、
Va=Vb=Vd,Vc>Vd
を満足させるようにすることを特徴とする請求項1の発泡材被覆パイプの製造方法。
【請求項3】
ライン速度を10m/分以上とすることを特徴とする請求項1又は2の発泡材被覆パイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂パイプの周りを樹脂発泡材(保温材)で被覆した発泡材被覆パイプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
給水・給湯用のパイプとして、特に寒冷地用のパイプとして、樹脂パイプの周りを樹脂発泡材で被覆した被覆パイプが用いられている。
【0003】
この被覆パイプの製造方法として、パイプ及び発泡材シート(シート状発泡材)を連続的に送りながら円筒状フォーマーに通し、シート状の発泡材で樹脂パイプの周りを覆い、シートの両端部(合わせ端面)を熱融着により接合し、発泡材被覆パイプを引き取り機で連続的に引き取る方法が採用されている。
【0004】
この方法では、円筒状フォーマーを通過させることによって、発泡材シートを円筒形状に成形する。そのため、特に、口径サイズの小さな発泡材被覆パイプや口径サイズに比較して厚肉の発泡材シートでパイプを被覆する場合は、発泡材シートが円筒状フォーマーを通過する際の抵抗が大きくなる。これにより、フォーマーから出てきた被覆発泡材が引き取り機の引き取り力により引き伸ばされる。引き延ばされた被覆発泡材は、引き取り機を通過した後、樹脂パイプ長手方向に収縮する。なお、樹脂パイプの単位長さに対する被覆発泡材の収縮長さの比率を、以下、被覆発泡材の収縮率と称する。
【0005】
かかる被覆発泡材の収縮を抑制する方法として、円筒状フォーマーを短くし通過抵抗を下げる方法や、引き取り速度を下げる方法があるが、円筒状フォーマーを短くすることによる冷却不足での融着接合面の剥がれや引き取り速度を下げることでの生産効率の低下という問題点があった。
【0006】
このような問題点を解決するために、フォーマーの内径側にローレット加工やねじ加工を施し、フォーマーと被覆材との間の接触面積を減らし通過抵抗を低減させる方法(実開平6-55728)、フォーマーの内径側に複数のガイドローラーを配し通過抵抗を低減させる方法(特開2003-127220)、発泡材外面のフォーマー内径側との間にライナーやテープを配し通過抵抗を低減させる方法(特許5271131,特開平07-241905)等が提案されている。
【0007】
しかしながら、このような方法ではフォーマーの構造が複雑で部品点数も多くなるため、口径サイズ毎に対応したフォーマー製作の時間や費用がかかる。また、通過抵抗や融着圧着,接合に関係するフォーマー内径寸法調整の追加工が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平6-55728号公報
【特許文献2】特開2003-127220号公報
【特許文献3】特許第5271131号公報
【特許文献4】特開平07-241905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、引き取り後の被覆発泡材の収縮率を抑制することができる発泡材被覆パイプの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の被覆パイプの製造方法は、樹脂パイプと発泡材シートとをそれぞれ連続してフォーマーに送り出し、該発泡材シートを丸めて樹脂パイプを包囲し、該発泡材シートの幅方向の側端部を加熱融解したのち、前記フォーマーにおいて該側端部同士を融着接合することにより、樹脂パイプを連続被覆する発泡材被覆パイプの製造方法において、円筒状フォーマーに通す前の樹脂パイプを一定速度で送るための送り機と、該送り機と円筒状フォーマーとの間で樹脂パイプの送り速度を計測する第1計速器と、引き取り機から送り出された発泡材被覆パイプの送り速度を被覆材外面で計測する第2計速器とを設置し、第1計速器で計測された樹脂パイプの速度に対する第2計速器で計測された発泡材被覆パイプの速度の差を2%以内にすることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様では、前記樹脂パイプ送り機の送り速度設定値をVa,第1計速器で計測した樹脂パイプの送り速度をVb、引き取り機の設定速度をVc、第2計測器で計測した発泡材被覆パイプの送り速度をVdとした場合、Va=Vb=Vd,Vc>Vdを満足させるようにする。
【0012】
本発明の一態様では、ライン速度(樹脂パイプ送り速度)を10m/分以上とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の被覆パイプの製造方法によると、樹脂パイプと発泡材シートとをそれぞれ連続してフォーマーに送り出し、該発泡材シートを丸めて樹脂パイプを包囲し、該発泡材シートの幅方向の側端部を加熱融解したのち、前記フォーマーにおいて該側端部同士を融着接合することにより、樹脂パイプを連続被覆する発泡材被覆パイプの製造方法において、フォーマーと引き取り機との間において、樹脂パイプの外面に被覆された発泡材シート(被覆発泡材)を樹脂パイプよりも速く送ることで、円筒状フォーマー内で遅れていた発泡材シート(被覆発泡材)を寄り戻し、引き取り機から出た時点では樹脂パイプと発泡材シート(被覆発泡材)との速度を概一致させる。これにより、被覆発泡材の収縮率が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に係る被覆パイプの製造方法を示す側面図である。
【
図2】(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ
図1のIIa-IIa、IIb-IIb、IIc-IIc及びIId-IId断面図である。
【
図3】実施の形態に係る被覆パイプの製造方法を説明する模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の被覆パイプの製造方法の一態様では、樹脂パイプと発泡材シートとをそれぞれ連続してフォーマーに送り出し、フォーマーの導入部で発泡材シートを円筒状に丸めて発泡材シートで樹脂パイプの周りを包囲し、該発泡材シートの幅方向の側端部(合わせ端面)を加熱融解したのち、フォーマーにおいて、対向したこれらの側端部同士を融着接合することにより、被覆パイプを連続的に製造する。
【0016】
本発明では、樹脂パイプとしては、直径が5~50mm特に10~30mmのポリオレフィン製のものが好適である。発泡材シートとしては、厚みが3~20mm特に5~10mmのポリオレフィン製のものが好適である。ポリオレフィンとしては、架橋ポリエチレン、架橋されていないポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0017】
次に、
図1~3を参照して、かかる発泡材被覆パイプの製造方法について説明する。
【0018】
押出成形加工により製造された樹脂パイプ2と予め発泡加工され外側にフィルム加工された帯状の発泡材シート4がそれぞれ巻回された巻物原反1,3が製造工程ライン上流側にセットされている。樹脂パイプ送り機10によって巻物原反1から連続的に引き出されて送られる樹脂パイプ2に、巻物原反3から連続的に引き出された発泡材シート4を沿わせる。そして、フォーマー6の導入部において、
図2(b)のように、発泡材シート4を丸めながら発泡材シート4で樹脂パイプ2を包囲する。
【0019】
円筒状フォーマー6に入る直前で発泡材シート4の1対の側端部(合わせ端面)を加熱ヒータ5で加熱して融解し、発泡材シート4の端部同士を突き合わせるように円筒状フォーマー6の内孔に通して絞りながら合わせ端面同士を押し付けて圧着接合する。これにより、樹脂パイプ2の周囲が発泡材シート4よりなる被覆発泡材で被覆された被覆パイプ8が形成され、円筒状フォーマー6を通過して出てくる。円筒状フォーマー6から出て来た被覆パイプ8が引き取り機7で連続的に引き取られて製造工程下流の巻取機9で巻き取られる。
【0020】
この被覆パイプ製造装置には、樹脂パイプ2の送り速度の計測器11、被覆パイプ8の引き取り速度の計測器12、その他品質管理に必要な計測装置と、送り機10及び引き取り機7の送り速度及び引き取り速度を制御する(具体的には、駆動モーターの回転速度を制御する)制御装置等が設けられている。なお、引き取り速度の計測器12は、被覆パイプ8の被覆発泡材外面の速度を計測する。
【0021】
樹脂パイプ2は、樹脂パイプ送り機10によって一定の速度で送られる。前述の通り、発泡材シート4は樹脂パイプ2と共に送られ、樹脂パイプ2の周りに丸められ、円筒状フォーマー6に入る直前で発泡材シート4の送り方向に沿う両側辺部が加熱ヒータ5で加熱融解され、円筒状フォーマー6内で該両側辺部同士が圧着され、円筒状フォーマー6内を通過する。
【0022】
前述の通り、円筒状フォーマー6内では、フォーマー6内の内壁と発泡材シート4が接触しながら進むため、発泡材シート4はフォーマー6内の内壁による接触抵抗により減速し、樹脂パイプ2の速度よりも遅くなる。このため、フォーマー6から出てきた被覆発泡材が引き取り機7の引き取り力により引き伸ばされる。引き延ばされた被覆発泡材は、引き取り機7を通過した後、樹脂パイプ2の長手方向に収縮する。
【0023】
そこで、本実施の形態では、引き取り機7による引き取り速度を樹脂パイプ2の送り速度よりも大きくし、フォーマー6と引き取り機7との間において、樹脂パイプ2の外面に被覆された発泡材シート4の表面を樹脂パイプ2の速度よりも速く送ることで、円筒状フォーマー6内で遅れていた発泡材シート4(被覆発泡材)を寄り戻し(遅れを取り戻し)、引き取り機7から出た時点では樹脂パイプ2と発泡材シート4(被覆発泡材)との速度を概一致させる(両者の差を樹脂パイプ2の送り速度の2%以内とする)ことで、被覆発泡材の収縮率を抑制する。
【0024】
好ましくは、樹脂パイプ送り機10の送り速度設定値をVa、計速器11で計測した樹脂パイプ2の送り速度をVb、引き取り機7の設定速度をVc、計測器12で計測した発泡材被覆パイプ8の送り速度をVdとした場合、
Va=Vb=Vd,Vc>Vd
を満足させるように調整する。これにより、引き取り機7により外側の被覆発泡材シート4のみを寄り戻すことができる。
【0025】
引き取り機7においては、被覆発泡材がズレないように全体を強固にチャックする方法が一般的通常であるが、本実施の形態では、チャック力を適度に緩めることにより、発泡材シート4の先送りを妨げないようにする。
【0026】
なお、仮に引き取り機7において、樹脂パイプ2と被覆発泡材とがズレないように全体を強固にチャックする一般的通常方法で行った場合は、被覆発泡材だけでなく樹脂パイプ2も強固にチャックされてしまうため、[引き取り機の設定速度(Vc)]=[計速器で計測した樹脂パイプの送り速度(Vb)]となってしまう。そのため、引き取り機7により被覆発泡材4のみを寄り戻そうと、引き取り機の設定速度(Vc)>樹脂パイプ送り機の送り速度設定値(Va)をしようとした場合、Vc=Vb>Vaのため、計速器で計測した樹脂パイプの[送り速度(Vb)]>[樹脂パイプ送り機の送り速度設定値(Va)]となってしまい、樹脂パイプ送り機と樹脂パイプとの間で滑り(スリップ)が起きない限りは成立しなくなる。樹脂パイプ送り機と樹脂パイプとの間で滑り(スリップ)が起きた場合は、被覆発泡材長さの長さ基準となる樹脂パイプの長さが変動することになり、被覆発泡材の収縮率が不安定になってしまう。
【0027】
本発明は、ライン速度10m/分以上の高速条件において、より優れた収縮率抑制効果を発揮する。これは、ライン速度が速くなると、より円筒状フォーマー6を通過する際の抵抗が増すためである。
【実施例0028】
[実施例1,2、比較例1~3]
図1~3に示す装置を用いて種々の送り速度で被覆パイプを製造し、製造された発泡材被覆パイプにおける被覆材の収縮率を測定した。結果を表1に示す。
【0029】
本実施例及び比較例では、パイプサイズ10A(外径13mm)の架橋ポリエチレン製樹脂パイプ、厚み10mmのポリエチレン製発泡材シートを用いた。
【0030】
比較例1及び2は、従来の発泡材被覆パイプの製造方法に係る。
【0031】
実施例1及び2は、本発明の方法に係るものであり、計測された樹脂パイプの速度(Vb)に対して、計測された発泡材被覆パイプの速度(Vd)の差を0%とした場合を示す。
【0032】
比較例3は、計測された樹脂パイプの速度(Vb)に対して、計測された発泡材被覆パイプの速度(Vd)の差を6.2%とした場合を示す。
【0033】
【0034】
表1の通り、実施例1及び2では比較例3よりも被覆発泡材の収縮率が抑制される。