(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152760
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ナット脱落防止構造及びそのナット
(51)【国際特許分類】
F16B 41/00 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
F16B41/00 D
F16B41/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055653
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000237167
【氏名又は名称】富士フィルター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】後野 達哉
(57)【要約】
【課題】ナットの脱落防止を図る。
【解決手段】
第1の態様では、ナットが柱体の底面から延びる軸体の外周面に雄ねじを有して構成され、軸体の雄ねじを締結対象部材(15)の貫通孔(16)に形成された雌ねじに螺合させたとき、柱体が締結対象部材(15)に着座するまでに雄ねじと雌ねじとの螺合が解除されるようにする。第2の態様では、ナットが、貫通孔(16)に挿通された軸体の一端に柱体を配置し他端に対向柱体を配置して、柱体を含む第1ナットと対向柱体を含む第2ナットとに分割して構成され、第1及び第2ナットが螺着結合されるようにする。第3の態様では、ナットが、柱体の底面から延びる複数の弾性アームを有するとともに、弾性アームが貫通孔(16)の内周面と接触して弾性アームを内方に弾性変形させる突起部を有して構成され、柱体が締結対象部材(15)に着座するまでに突起部が貫通孔(16)を抜け出るようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱体、及び、該柱体の底面から延び、外周面に雄ねじを有する軸体を有して構成され、前記軸体から前記柱体に向けてボルトを挿入するための第1貫通孔を有し、前記第1貫通孔の内周面に前記ボルトが螺合する第1雌ねじを有するナットと、
前記軸体の挿通を許容し且つ前記柱体の挿通を遮断する大きさの第2貫通孔を有し、前記第2貫通孔の内周面に前記雄ねじが螺合する第2雌ねじを有する締結対象部材と、
を備え、
前記ナットを前記締結対象部材に保持させるために前記第2貫通孔に螺合した前記軸体を螺着方向に回転させたときに、前記柱体が前記締結対象部材に着座するまでに前記第2雌ねじと前記雄ねじとの螺合が解除されるように、前記雄ねじの螺設位置が設定された、ナット脱落防止構造。
【請求項2】
一端に柱体の底面が接続され他端に対向柱体の底面が接続された軸体を有して構成され、前記対向柱体から前記軸体を経て前記柱体へ向けてボルトを挿入するための第1貫通孔を有し、前記第1貫通孔の内周面に前記ボルトが螺合する雌ねじを有するナットと、
前記軸体の挿通を許容し且つ前記柱体及び前記対向柱体の挿通を遮断する大きさの第2貫通孔を有し、前記第2貫通孔の貫通長さが前記柱体から前記対向柱体までの長さよりも短い締結対象部材と、
を備え、
前記ナットは前記柱体を全て含む第1ナットと前記対向柱体を全て含む第2ナットとに分割され、前記ナットを前記締結対象部材に保持させるために前記第1ナットと前記第2ナットとが螺着により結合される、ナット脱落防止構造。
【請求項3】
柱体を有して構成され、前記柱体の底面から上面へ向けてボルトを挿入するための第1貫通孔を有し、前記第1貫通孔の内周面に前記ボルトが螺合する雌ねじを有し、前記第1貫通孔の周囲の前記底面から前記第1貫通孔の貫通方向に延びる弾性変形可能な複数の弾性アームを有するナットと、
前記複数の弾性アームの挿通を許容し且つ前記柱体の挿通を遮断する大きさの第2貫通孔を有する締結対象部材と、
を備え、
前記複数の弾性アームは、前記ナットを前記締結対象部材に保持させるために前記第2貫通孔に挿通されるときに前記第2貫通孔の内周面と接触して前記弾性アームを内方に向けて弾性変形させる突起部を有し、前記突起部は、前記柱体が前記締結対象部材に着座するまでに前記第2貫通孔を抜け出るように形成された、ナット脱落防止構造。
【請求項4】
ケーシングと、
前記ケーシングの内部空間を上側の一次側空間と下側の二次側空間とに仕切る隔壁と、
前記一次側空間と前記二次側空間とを連通する連通路と、
前記一次側空間において前記連通路を囲んで前記隔壁に配置固定された受け部材と、
筒状に形成され、一端を前記受け部材で受けて前記一端の開口が前記連通路と接続されるフィルターユニットと、
を備えた濾過装置において、
前記締結対象部材は、前記フィルターユニットの他端開口を閉塞する押さえ部材であり、前記ボルトの基端部が、前記隔壁、前記受け部材又は前記ケーシングに固定され、前記ナットは、前記ボルトの先端部と螺合して回転することで、前記押さえ部材を介して前記フィルターユニットを前記受け部材に向けて押圧するように構成された、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載のナット脱落防止構造。
【請求項5】
前記ナットを前記押さえ部材に保持させてなるナット付押さえ部材は、前記連通路を通過しないように、前記連通路と干渉する形状又は大きさに決められた、請求項4に記載のナット脱落防止構造。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1つに記載のナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナット脱落防止構造及びそのナットに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の装置においてナットとボルトとの螺合により締結対象部材の締結を行うことが知られている。この装置としては、例えば非特許文献1に記載されるように、上下に区画された2つの空間を有し、上方の一次側空間に流入した流体を筒状の濾材で外方から内方へ通過させて濾過し、濾材内方から下方の二次側空間へ濾過済み流体を流出させる濾過装置が知られている。かかる濾過装置では、濾材の下端を濾過装置に据え付けた受け部材で受けるとともに濾材の上端を押さえ部材で押さえ、押さえ部材を貫通して突出する据付ボルトに螺合したナットを螺着方向に回転させることで、受け部材と押さえ部材との間で濾材を固定している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“Vessels and Housings for Aviation Fuel Filtration”, p.12, [online], Velcon Filters, LLC, [令和3年3月24日検索], インターネット<URL: https://promo.parker.com/parkerimages/promosite/Parker%20Velcon/UNITED%20STATES/Literature%20and%20Media/VEL2178-CAT-Aviation-Vessels-and-Housings.pdf> 英語
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非特許文献1の濾過装置には、交換や洗浄の目的で濾材の脱着を高頻度に(例えば数時間に一度)行うものがあり、濾過装置が濾材を多数(例えば百本以上)有する場合には、その脱着作業が極めて煩雑となることが想定される。
【0005】
また、非特許文献1の濾過装置には、有害な油や化学薬品等を濾過の対象流体とするものがあるため、濾材の脱着作業時に作業者保護の観点から保護手袋等の安全保護具の着用が求められ、作業性が著しく低下することが想定される。
【0006】
これらの想定を前提として、非特許文献1の濾過装置において濾材の脱着作業を行った場合には、ナットや、これに付随する座金及びパッキンといった比較的小さな部品が、誤って濾過装置のケーシング内に落下し、二次側空間に紛れ込んでしまうことが予想される。作業者が、二次側空間に紛れ込んだナット等を認識していたとしても、隔壁や配管類を取り外して回収しなければならず、多数の濾材を高頻度に脱着する必要がある濾過装置では本来の濾過時間をさらに圧迫するおそれがある。また、作業者が、二次側空間に紛れ込んだナット等をそもそも認識していなければ、二次側空間に放置されたナット等が排出用ポートから濾過済み流体とともに排出されて、下流に設置された吸い込みポンプ等の機器の破損等を招くおそれがある。
【0007】
このように、種々の装置においてナットをボルトに螺合させて行う締結作業中にナット等が装置内に落下してしまうと、装置の運転に様々な影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は以上のような問題点に鑑み、ナットの脱落防止を図るナット脱落防止構造及びそのナットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るナット脱落防止構造の第1の態様では、柱体、及び、この柱体の底面から延び、外周面に雄ねじを有する軸体を有して構成され、軸体から柱体に向けてボルトを挿入するための第1貫通孔を有し、第1貫通孔の内周面にボルトが螺合する第1雌ねじを有するナットと、軸体の挿通を許容し且つ柱体の挿通を遮断する大きさの第2貫通孔を有し、第2貫通孔の内周面に雄ねじが螺合する第2雌ねじを有する締結対象部材と、を備え、ナットを締結対象部材に保持させるために第2貫通孔に螺合した軸体を螺着方向に回転させたときに、柱体が締結対象部材に着座するまでに第2雌ねじと雄ねじとの螺合が解除されるように、雄ねじの螺設位置が設定されている。
【0010】
本発明に係るナット脱落防止構造の第2の態様では、一端に柱体の底面が接続され他端に対向柱体の底面が接続された軸体を有して構成され、対向柱体から軸体を経て柱体へ向けてボルトを挿入するための第1貫通孔を有し、第1貫通孔の内周面にボルトが螺合する雌ねじを有するナットと、軸体の挿通を許容し且つ柱体及び対向柱体の挿通を遮断する大きさの第2貫通孔を有し、第2貫通孔の貫通長さが柱体から対向柱体までの長さよりも短い締結対象部材と、を備え、ナットは柱体を全て含む第1ナットと対向柱体を全て含む第2ナットとに分割され、ナットを締結対象部材に保持させるために第1ナットと第2ナットとが螺着により結合される。
【0011】
本発明に係るナット脱落防止構造の第3の態様では、柱体を有して構成され、柱体の底面から上面へ向けてボルトを挿入するための第1貫通孔を有し、第1貫通孔の内周面にボルトが螺合する雌ねじを有し、第1貫通孔の周囲の底面から第1貫通孔の貫通方向に延びる弾性変形可能な複数の弾性アームを有するナットと、複数の弾性アームの挿通を許容し且つ柱体の挿通を遮断する大きさの第2貫通孔を有する締結対象部材と、を備え、複数の弾性アームは、ナットを締結対象部材に保持させるために第2貫通孔に挿通されるときに第2貫通孔の内周面と接触して弾性アームを内方に向けて弾性変形させる突起部を有し、突起部は、柱体が締結対象部材に着座するまでに第2貫通孔を抜け出るように形成されている。
【0012】
また、本発明に係るナットは、上記第1~第3の態様に係るナット脱落防止構造のそれぞれにおけるナットである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るナット脱落防止構造及びそのナットによれば、ナットの脱落防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係るナット脱落防止構造を適用した濾過装置の一例を示す模式断面図である。
【
図2】同ナット脱落防止構造のナットを模式的に示し、(a)平面図、(b)側面図、(c)A-A線断面図である。
【
図3】同ナット脱落防止構造の座金を示す模式断面図である。
【
図4】同ナット脱落防止構造のパッキンを示す模式断面図である。
【
図5】同ナット脱落防止構造の押さえ部材を示す模式断面図である。
【
図6】同ナット脱落防止構造を説明する模式断面図である。
【
図7】第2実施形態のナット脱落防止構造の第1ナットを模式的に示し、(a)平面図、(b)側面図、(c)B-B線断面図である。
【
図8】同ナット脱落防止構造の第2ナットを模式的に示し、(a)平面図、(b)側面図、(c)C-C線断面図である。
【
図9】同ナット脱落防止構造を説明する模式断面図である。
【
図10】第3実施形態のナット脱落防止構造のナットを模式的に示し、(a)平面図、(b)側面図、(c)D-D線断面図である。
【
図11】同ナット脱落防止構造のナットの装着過程を示す模式断面図である。
【
図12】同ナット脱落防止構造を説明する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1~
図7を参照して、第1実施形態に係るナット脱落防止構造について説明する。
図1は、ナット脱落防止構造を適用した濾過装置の一例を模式的に示す。濾過装置1は、ケーシング2に、濾過の対象となる各種流体(以下、「対象流体」という)を濾過するフィルターユニット3を収容して構成される。対象流体としては、河川水、湖沼水若しくは海水、各種装置の冷却水若しくはプロセス液等の産業一般に用いられる液体、潤滑油若しくはディーゼル燃料油等の油、化学工場等で使用される各種原料気体、又は、船舶のバラスト水等がある。
【0017】
ケーシング2は、濾過装置の外殻をなす有底筒状体4aの上端開口が蓋板4bで閉塞されて構成され、内部に密閉された空間が形成される。ケーシング2の内部は隔壁5によって上下2つの空間に仕切られ、上側の空間は一次側空間6として用いられ、下側の空間は二次側空間7として用いられる。一次側空間6には、これとケーシング2の外部とを有底筒状体4aを貫いて連通する導入用ポート8を介して対象流体が導入される。この一次側空間6にフィルターユニット3が配置され、フィルターユニット3で対象流体を濾過して得られた濾過済み流体は、隔壁5を貫いて一次側空間6と二次側空間7とを連通する連通路9を介して、二次側空間7へ送られる。二次側空間7からは、これとケーシング2の外部とを有底筒状体4aを貫いて連通する排出用ポート10を介して濾過済み流体が排出される。
【0018】
フィルターユニット3は、上下方向に軸線が延びる円筒状のフィルターエレメント11を有し、フィルターエレメント11の径方向外方(一次側空間6)から径方向内方へ向けて対象流体が通過することで濾過が行われる。フィルターエレメント11の軸線方向における両端部の開口には、それぞれ全周にわたって環状のガスケット12,13が取り付けられている。フィルターユニット3は、下端部開口に取り付けられたガスケット12を受ける受け部材14と、上端部に取り付けられたガスケット13を押さえる押さえ部材15と、の間に挟持される。
【0019】
受け部材14は、隔壁5に固定され、ガスケット12と当接してフィルターユニット3を下方から受ける受け面を有するとともに、この受け面の一部に連通路9と接続される開口を有する部材である。例えば、受け部材14は、有底短円筒体にその下端底部を穿設して管状体を接続した略漏斗状に形成され、管状体の連通路9への圧入や溶接等によって、管状体の外周面が連通路9の内周面に全周にわたって密着しつつ隔壁5に常時固定されている。受け部材14は、その有底短円筒体の上端開口からガスケット12を受け、有底短円筒体の内底面及び内周面がガスケット12と密接に当接する。これにより、フィルターエレメント11の径方向内方と径方向外方(一次側空間6)との間でフィルターエレメント11の下端開口を介した流体流通が遮断されるようになっている。
【0020】
押さえ部材15は、ガスケット13と当接してフィルターユニット3を上方から押さえる押さえ面を有するとともに、この押さえ面の一部に穿設された貫通孔16を有する部材である。例えば、押さえ部材15は、有底短円筒体を上下逆にした略逆椀状に形成され、その有底短円筒体の下端開口からガスケット13を押さえ、有底短円筒体の内底面及び内周面がガスケット13と密接に当接する。また、貫通孔16は後述のナット等によって閉塞される。これにより、フィルターエレメント11の径方向内方と径方向外方(一次側空間6)との間でフィルターエレメント11の上端開口を介した流体流通が遮断されるようになっている。
【0021】
受け部材14には、これにフィルターユニット3及び押さえ部材15を締結するときに、その締結力に対する反力(張力)が伝達されるテンションボルト17が、受け部材14の管状体開口を閉塞しない支持部材18を介して固定される。テンションボルト17は、ガスケット12を受け部材14で受けた状態のフィルターエレメント11の径方向内方を上方に向けて延び、ガスケット13を押さえる押さえ部材15を貫通する貫通孔16を通って押さえ部材15より上方へ突出する。テンションボルト17の少なくとも先端部には、軸線周りに螺旋状の雄ねじが形成されている。なお、テンションボルト17は、受け部材14を介さずに、隔壁5に直接固定されてもよい。また、テンションボルト17がフィルターエレメント11の径方向外方で上下方向に延びる場合には、テンションボルト17はケーシング2に直接固定されてもよい。
【0022】
押さえ部材15の上方に突出したテンションボルト17の雄ねじ部にはナット19が螺合する。ナット19をテンションボルト17の雄ねじ部に螺合させて螺着方向に回転させると、押さえ部材15を介してフィルターユニット3が受け部材14へ向けて押圧されて、受け部材14にフィルターユニット3及び押さえ部材15が締結される。かかる締結は、フィルターエレメント11の表面に顕著なたわみが発生しないように行われる。
【0023】
テンションボルト17に螺合したナット19の底面と押さえ部材15との間には、平座金やばね座金等の環状の座金20がテンションボルト17を囲んで配置される。また、テンションボルト17に螺合したナット19の底面と押さえ部材15との間には、ナット19の底面と押さえ部材15との間を介したフィルターエレメント11の内外間の流体流通を遮断するための環状のパッキン21が、テンションボルト17を囲んで配置される。なお、テンションボルト17の雄ねじ部とナット19の雌ねじ部との間の隙間をシールテープ等のシール材で埋めてもよい。
【0024】
上記のように構成される濾過装置1には、交換や洗浄の目的でフィルターユニット3の脱着を高頻度に(例えば数時間に一度)行うものがあり、濾過装置1がフィルターユニット3を多数(例えば百本以上)有する場合には、その脱着作業が極めて煩雑となることが想定される。また、濾過装置1には有害な油や化学薬品等を対象流体とするものがあるため、作業者保護の観点から、フィルターユニット3の脱着作業時に保護手袋等の安全保護具の着用が作業者に求められ、作業性が著しく低下することが想定される。このような想定を前提としてフィルターユニット3の脱着作業を行った場合、特に、ナット19、座金20、パッキン21(以下、「ナット19等」という)といった比較的小さな部品が誤ってケーシング2の内部に落下し、連通路9を通って二次側空間7に紛れ込んでしまうことが予想される。作業者が、二次側空間7に紛れ込んだナット19等を認識していたとしても、隔壁5や配管類を取り外して回収しなければならず、多数のフィルターユニット3を高頻度に脱着する必要がある濾過装置1では本来の濾過時間をさらに圧迫するおそれがある。また、作業者が、二次側空間7に紛れ込んだナット19等をそもそも認識していなければ、二次側空間7に放置されたナット19等が排出用ポート10から濾過済み流体とともに排出されて、下流に設置された吸い込みポンプ等の機器の破損を招くおそれがある。このため、濾過装置1では、ナット19等の脱落防止を図る脱落防止構造が採用され、フィルターユニット3の脱着作業時にはナット19等を押さえ部材15に保持するようにしている。
【0025】
次に、
図2~
図6を参照して、第1実施形態に係るナット脱落防止構造の具体的内容について説明する。
図2はナット19の構造を模式的に示し、
図3は座金20の構造を模式的に示し、
図4はパッキン21の構造を模式的に示し、
図5は押さえ部材15の構造を模式的に示し、
図6はナット19の脱落防止構造を模式的に示す。
【0026】
図2に示すように、ナット19は、断面正六角形状の正六角柱体22と、正六角柱体22の底面23から正六角柱体22と軸線を共通にして外方へ延びる断面円形状の軸体24と、で概略構成される。軸体24は、軸線方向からみて全体が正六角柱体22に含まれる断面を有している。正六角柱体22と軸体24とは一体成形されるか、あるいは、正六角柱体22の底面23に軸体24が溶接等で接合されてもよい。軸体24の外周面には、正六角柱体22の底面23より長さLの位置から軸体24の先端25の方向へ、軸線周りに螺旋状の雄ねじ26が形成されている。長さLは、座金20及びパッキン21の各厚さと貫通孔16の貫通長さとの合計値よりも大きい値である。雄ねじ26の外径d1は、軸体24のうち長さLの範囲における外径d2よりも大きい値である。ナット19において、軸体24から正六角柱体22に向けてテンションボルト17を挿入するための断面円形状の貫通孔27が、正六角柱体22及び軸体24をこれらと軸線を共通にして貫通形成されている。貫通孔27の内周面には軸線周りに螺旋状の雌ねじが形成され、テンションボルト17の雄ねじと螺合するようになっている。
【0027】
図3に示すように、環状の座金20の内周面には、ナット19の軸体24における雄ねじ26と螺合する雌ねじ28が形成されている。座金20の雌ねじ28の内径d3は、当然、軸体24の雄ねじ26の外径d1より小さい値に設定されているが、さらに、軸体24のうち長さLの範囲における外径d2よりも大きい値に設定されている。このような雌ねじ28を有する座金20は、その雌ねじ28が軸体24の雄ねじ26に対して螺着方向に回転すると、軸体24のうち長さLの範囲にまで挿通される。また、座金20は、軸体24のうち長さLの範囲にまで挿通されると、雄ねじ26と雌ねじ28とが干渉して軸体24からの脱落が阻害される。したがって、座金20は、軸体24のうち長さLの範囲において遊嵌状態でナット19に保持される。
【0028】
図4に示すように、環状のパッキン21の内径d4は、軸体24のうち長さLの範囲における外径d2より大きい値であり、かつ、ナット19の軸体24における雄ねじの外径d1未満の値である。パッキン21が軟質ゴム等の弾性材料で形成されている場合には、パッキン21は、弾性変形することで、軸体24の雄ねじ26を越えて、軸体24のうち長さLの範囲にまで挿通される。また、パッキン21は、軸体24のうち長さLの範囲にまで挿通されると、パッキン21の内径縁部が雄ねじ26と干渉して軸体24からの脱落が阻害される。したがって、パッキン21は、軸体24のうち長さLの範囲において遊嵌状態でナット19に保持される。
【0029】
図示省略するが、パッキン21が、テフロン(登録商標)等の樹脂や硬質ゴムといった変形が比較的困難な材質で形成されている場合には、座金20のように、内周面29に雄ねじ26と螺合する雌ねじを形成してもよい。この雌ねじの内径d4は、当然、軸体24の雄ねじ26の外径d1より小さい値に設定されるが、さらに、軸体24のうち長さLの範囲における外径d2よりも大きい値に設定される。このような雌ねじを有するパッキン21でも、座金20と同様に、軸体24のうち長さLの範囲において遊嵌状態でナット19に保持される。
【0030】
図5に示すように押さえ部材15に形成された貫通孔16は、軸体24の挿通を許容するが、正六角柱体22の挿通を遮断する大きさを有している。貫通孔16の内周面には、ナット19の軸体24における雄ねじ26と螺合する雌ねじが形成されている。貫通孔16の雌ねじの内径d5は、当然、軸体24の雄ねじ26の外径d1より小さい値に設定されているが、さらに、軸体24のうち長さLの範囲における外径d2よりも大きい値に設定されている。
【0031】
図6に示すように、押さえ部材15の貫通孔16の雌ねじに対して、座金20及びパッキン21を保持したナット19の軸体24の雄ねじ26が螺着する。雄ねじ26をさらに螺着方向に回転させていくと、正六角柱体22が座金20に着座するまでに、貫通孔16の雌ねじと軸体24の雄ねじ26との螺合が解除され、貫通孔16には軸体24が長さLの範囲に至るまで挿通される。貫通孔16に軸体24が長さLの範囲に至るまで挿通されると、貫通孔16の雌ねじと軸体24の雄ねじ26との干渉により、押さえ部材15からのナット19の脱落が阻害されるので、ナット19は遊転自在に押さえ部材15に保持される。これにより、座金20及びパッキン21も押さえ部材15に保持される。このようにナット19等を押さえ部材15に保持させてなるナット付押さえ部材は、連通路9を通過しないように、連通路9と干渉する形状又は大きさに設計されている。
【0032】
押さえ部材15にナット19等を保持させる作業は、フィルターユニット3の装着作業前の事前準備として、ナット19等を落下しても問題にならない場所、特に、ケーシング2の内部にナット19等を落下させるおそれがない場所で行われる。そして、フィルターユニット3の装着作業では、押さえ部材15に保持されたナット19の雌ねじをテンションボルト17の雄ねじに螺合させて螺着方向に回転させることで、押さえ部材15を下端開口からフィルターユニット3の上端部に嵌合させる。一方、フィルターユニット3の取り外し作業では、ナット19の雌ねじをテンションボルト17の雄ねじに対して螺脱方向に回転させることで、ナット19等が保持された状態で押さえ部材15がフィルターユニット3から離脱する。
【0033】
このようなナット脱落防止構造によれば、押さえ部材15の貫通孔16の雌ねじとこれに螺合するナット19の雄ねじ26との干渉により押さえ部材15からのナット19等の脱落防止を図ることができる。したがって、フィルターユニット3の脱着作業時に、ナット19等を押さえ部材15に保持しておくことが可能となるので、ナット19等が誤ってケーシング2の内部に落下して、二次側空間7に紛れこむおそれは著しく減少する。
【0034】
また、フィルターユニット3の脱着作業は、上記のように、ナット19等を押さえ部材15に保持してなるナット付押さえ部材を用いて行うことができる。したがって、ナット付押さえ部材が誤ってケーシング2の内部に落下しても、連通路9との干渉により二次側空間7に紛れ込むおそれが著しく減少するばかりでなく、発見及び回収が容易となる。
【0035】
さらに、ナット付押さえ部材からナット19等を取り外す場合には、貫通孔16の雌ねじに対してナット19の雄ねじ26を螺脱方向に回転させるだけでよい。このため、押さえ部材15に対するナットのカシメ止めや溶接・接着でナットの脱落防止を図る場合と比較すると、ナット19の取り外し工数やナット19自体の損傷が顕著に減少する。したがって、ナット19等の再利用が容易となるばかりでなく、パッキン21を交換する場合にはその交換も容易に行うことができる。
【0036】
〔第2実施形態〕
図7~
図9を参照して、第2実施形態に係るナット脱落防止構造の具体的内容について説明する。なお、本実施形態に係るナット脱落防止構造は、濾過装置1において、ナット19を第1ナット30及び第2ナット31に置き換えて適用されるものである。このため、第1ナット30及び第2ナット31並びにこれらに付随する構成を除き、濾過装置1と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略ないし簡略化する。
【0037】
図7は第1ナット30の構造を模式的に示し、
図8は第2ナット31の構造を模式的に示し、
図9は第1ナット30の脱落防止構造を模式的に示す。
【0038】
図7に示すように、第1ナット30は、正六角柱体32を有して構成され、正六角柱体32には、底面33からこれと反対側の頂面34に向けてテンションボルト17を挿入するための断面円形状の貫通孔35が、正六角柱体32と軸線を共通にして貫通形成されている。第1ナット30には、貫通孔35の内周面のうち頂面34側にテンションボルト17と螺合する谷径d8の上部雌ねじが形成され、貫通孔35の内周面のうち底面33側に上部雌ねじの谷径d8よりも大きな内径d9の下部雌ねじが底面33から深さL1まで形成されている。
【0039】
図8に示すように、第2ナット31は、押さえ部材15からの第1ナット30の脱落防止を図るための部品であり、概ね上記のナット19を上下逆にした外形を有する。すなわち、第2ナット31は、断面正六角形状の正六角柱体36と、正六角柱体36の底面37から正六角柱体36と軸線を共通にして長さL2まで外方へ延びる断面円形状かつ外径d10の軸体38と、が一体に構成されてなる。軸体38は、全体が軸線方向からみて正六角柱体36に含まれる断面を有している。軸体38の外周面には、軸体38の先端39から長さL1の位置まで、軸体38の軸線周りに螺旋状かつ外径d11の雄ねじ40が形成されている。この雄ねじ40が、第1ナット30において底面33から深さL1まで形成された内径d9の雌ねじと螺合し、これにより、正六角柱体36は正六角柱体32と対向する。上記の長さL2は、座金20及びパッキン21の各厚さと貫通孔16の貫通長さとの合計値に長さL1を加算した値よりも大きい値である。第2ナット31において、正六角柱体36から軸体38に向けてテンションボルト17を挿入するための断面円形状の貫通孔41が、正六角柱体36及び軸体38をこれらと軸線を共通にして貫通形成されている。貫通孔41の内径d12は、第1ナット30の上部雌ねじの谷径d8よりも大きい値である。
【0040】
図示省略するが、環状の座金20の内径d3、環状のパッキン21の内径d4、及び、押さえ部材15の貫通孔16の内径d5は、軸体38のうち雄ねじ40が形成されていない範囲の外径d10より大きく、かつ、雄ねじ40の外径d11より大きい値である。ただし、押さえ部材15の貫通孔16の内径d5は、軸体38の挿通を許容するが、正六角柱体32,36の挿通を遮断する大きさに制限される。なお、押さえ部材15の貫通孔16の内周面、及び、座金20の内周面には雌ねじを形成しなくてもよい(
図9参照)。
【0041】
図9に示すように、押さえ部材15の上面には、パッキン21、座金20、第1ナット30(以下、「第1ナット30等」という)がこの順番で重畳配置される。そして、第2ナット31の軸体38を、押さえ部材15の貫通孔16、パッキン21、座金20にこの順番で挿通させ、第1ナット30の下部雌ねじに第2ナット31の雄ねじ40を螺着させる。第1ナット30の下部雌ねじに第2ナット31の雄ねじ40が螺着すると、第1ナット30の底面33から第2ナット31の底面37までの長さは、座金20及びパッキン21の各厚さと貫通孔16の貫通長さとの合計値よりも大きくなる。また、第1ナット30の下部雌ねじに第2ナット31の雄ねじ40が螺着すると、第2ナット31の正六角柱体36の底面37と貫通孔16の開口縁部との干渉により、押さえ部材15からの第1ナット30の脱落が阻害される。このため、第1ナット30は遊転自在に押さえ部材15に保持されるとともに、座金20及びパッキン21も遊嵌状態で押さえ部材15に保持される。このように第1ナット30等を押さえ部材15に保持させてなるナット付押さえ部材は、一次側空間6から連通路9を通過して二次側空間7へ落下しないように、連通路9と干渉する形状又は大きさに設計されている。
【0042】
このようなナット脱落防止構造によれば、押さえ部材15の貫通孔16の開口縁部と第1ナット30に貫通孔16を介して螺着された第2ナット31の正六角柱体36との干渉により第1ナット30等の脱落防止を図ることができる。したがって、フィルターユニット3の脱着作業時に、第1ナット30等を押さえ部材15に保持しておくことが可能となるので、第1ナット30等が誤ってケーシング2の内部に落下して、二次側空間7に紛れ込むおそれは著しく減少する。
【0043】
また、フィルターユニット3の脱着作業は、上記のように、第1ナット30等を押さえ部材15に保持してなるナット付押さえ部材を用いて行うことができる。したがって、ナット付押さえ部材が誤ってケーシング2の内部に落下しても、連通路9との干渉により二次側空間7に紛れ込むおそれが著しく減少するばかりでなく、発見及び回収が容易となる。
【0044】
さらに、ナット付押さえ部材から第1ナット30等を取り外す場合には、第1ナット30の下部雌ねじに対して第2ナット31の雄ねじ40を螺脱方向に回転させるだけでよい。このため、押さえ部材15に対するナットのカシメ止めや溶接・接着でナットの脱落防止を図る場合と比較すると、第1ナット30の取り外し工数や第1ナット30自体の損傷が顕著に減少する。したがって、第1ナット30等の再利用が容易となるばかりでなく、パッキン21を交換する場合にはその交換も容易に行うことができる。
【0045】
〔第3実施形態〕
図10~
図12を参照して、第3実施形態に係るナット脱落防止構造の具体的内容について説明する。なお、本実施形態に係るナット脱落防止構造は、濾過装置1において、ナット19をナット42に置き換えて適用されるものである。このため、ナット42及びこれらに付随する構成を除き、濾過装置1と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略ないし簡略化する。
【0046】
図10はナット42の構造を模式的に示し、
図11はナット42の押さえ部材15に対する装着過程を模式的に示し、
図12はナット42の脱落防止構造を模式的に示す。
【0047】
図10に示すように、ナット42は、貫通孔16への挿通が遮断される断大きさの正六角柱体43を有して構成される。正六角柱体43には、底面44からこれと反対側の上面45に向けてテンションボルト17を挿入するための断面円形状の貫通孔46が、正六角柱体43と軸線を共通にして貫通形成されている。貫通孔46の内周面には軸線周りに螺旋状の雌ねじが形成され、テンションボルト17の雄ねじと螺合するようになっている。
【0048】
ナット42では、正六角柱体43の底面44のうち、貫通孔46の周囲、かつ、正六角柱体43の軸線を中心とする直径d13の円内から、軸線方向で断面一様に外方へ延びる弾性アーム47が複数(図中では6本)立設している。直径d13は、座金20の内径d3、パッキン21の内径d4、及び、押さえ部材15の貫通孔16の内径d5より小さい値である。このように直径d13を設定していることで、複数の弾性アーム47が、座金20、パッキン21及び貫通孔16を挿通できるようにしている。弾性アーム47は、その径方向の厚さが周方向の厚さよりも薄くなって、弾性変形により先端48が主に径方向へ移動するようになっている。
【0049】
弾性アーム47には、正六角柱体43の底面44より長さL3の位置から先端48の方向において、径方向外面から径方向外方へ突出し、最大突出位置が正六角柱体22の軸線を中心とする直径d14の円にまで至る突起部49が形成されている。長さL3は、座金20及びパッキン21の各厚さと貫通孔16の貫通長さとの合計値よりも大きい値である。直径d14は、座金20の内径d3、パッキン21の内径d4、及び、押さえ部材15の貫通孔16の内径d5より大きい値である。なお、押さえ部材15の貫通孔16の内周面、及び、座金20の内周面には雌ねじを形成しなくてもよい(
図11又は
図12参照)。また、突起部49は、弾性アーム47が、座金20、パッキン21及び押さえ部材15の貫通孔16に挿通されるときに、それぞれと干渉することを条件に、弾性アーム47の全てに形成されなくてもよい。
【0050】
図11に示すように、弾性アーム47は、弾性変形によって先端48が径方向内方に移動することで、突起部49の最大突出位置が径方向内方へ後退し、座金20、パッキン21及び押さえ部材15の貫通孔16に挿通される。
【0051】
そして、
図12に示すように、正六角柱体43が座金20に着座したときには、弾性アーム47の突起部49が貫通孔16を通過して押さえ部材15の下方にまで抜け出ている。これは、正六角柱体43の底面44から突起部49までの長さL3が、座金20及びパッキン21の各厚さと貫通孔16の貫通長さとの合計値よりも大きいからである。また、正六角柱体43が座金20に着座したときには、突起部49と貫通孔16の開口縁部との干渉により、押さえ部材15からのナット42の脱落が阻害される。このため、ナット42は遊転自在に押さえ部材15に保持されるとともに、座金20及びパッキン21も遊嵌状態で押さえ部材15に保持される。このように、ナット42、座金20及びパッキン21(以下、「ナット42等」という)を押さえ部材15に保持させてなるナット付押さえ部材は、一次側空間6から連通路9を通過して二次側空間7へ落下しないように、連通路9と干渉する形状又は大きさに設計されている。
【0052】
このようなナット脱落防止構造によれば、押さえ部材15の貫通孔16の開口縁部と正六角柱体43の底面に立設した複数の弾性アーム47の突起部49との干渉により、ナット42等の脱落防止を図ることができる。したがって、フィルターユニット3の脱着作業時に、ナット42等を押さえ部材15に保持しておくことが可能となるので、ナット42等が誤ってケーシング2の内部に落下して、二次側空間7に紛れ込むおそれは著しく減少する。
【0053】
また、フィルターユニット3の脱着作業は、上記のように、ナット42等を押さえ部材15に保持してなるナット付押さえ部材を用いて行うことができる。したがって、ナット付押さえ部材が誤ってケーシング2の内部に落下しても、連通路9との干渉により二次側空間7に紛れ込むおそれが著しく減少するばかりでなく、発見及び回収が容易となる。
【0054】
さらに、ナット付押さえ部材からナット42等を取り外す場合には、弾性変形により弾性アーム47の先端48を径方向内方に移動させて、突起部49が貫通孔16の開口縁部と干渉しない状態にしてナット42を引き抜けばよい。このため、押さえ部材15に対するナットのカシメ止めや溶接・接着でナットの脱落防止を図る場合と比較すると、ナット42の取り外し工数やナット42自体の損傷が顕著に減少する。したがって、ナット42等の再利用が容易となるばかりでなく、パッキン21を交換する場合にはその交換も容易に行うことができる。
【0055】
以上、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、以下のように種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【0056】
ナット19,42、第1ナット30、第2ナット31において、正六角柱体22,32,36,43に代えて、貫通孔16の貫通方向に直交する断面が、座金20の内径d3、パッキン21の内径d4、貫通孔16の内径d5でそれぞれ規定される円よりも大きい他の柱体を用いてもよい。他の柱体としては、スパナ等の工具と嵌合して回転トルクを加えることができる外側面形状、あるいは、マイナスドライバ等の工具が嵌合して回転トルクを加えることができる溝が形成された頂面を有していればよい。
【0057】
図6を参照すると、フィルターユニット3の取り外し作業において、ナット19の雌ねじをテンションボルト17の雄ねじに対して螺脱方向に回転させると、貫通孔16の雌ねじとナット19の雄ねじ26とが再び螺合して、ナット19が貫通孔16から脱落するおそれがある。このため、ナット19において貫通孔27の雌ねじの巻き方向と雄ねじ26の巻き方向とを互いに逆にし、これらの巻き方向に対応して、貫通孔16の雌ねじの巻き方向とテンションボルト17の雄ねじの巻き方向とを互いに逆にしてもよい。
【0058】
ナット19,42、第1ナット30の脱落防止構造において、座金20及びパッキン21を省略してもよい。この場合、特にナット19の脱落防止構造では、雄ねじ26を螺着方向に回転させたときに、正六角柱体22が押さえ部材15に着座するまでに、貫通孔16の雌ねじと軸体24の雄ねじ26との螺合が解除されるように、長さLが決められる。
【0059】
第1ナット30と第2ナット31とが正六角柱体32と軸体38との螺合位置を境に分割可能であるが、第1ナット30と第2ナット31との分割位置は上記の螺合位置に限られない。例えば、第1ナット30が正六角柱体32と軸体38の上部とを含み、第2ナット31が正六角柱体36と軸体38の下部とを含む構成であれば、軸体38の上部と軸体38の下部との螺合位置を第1ナット30と第2ナット31の分割位置とすることができる。要するに、一端に正六角柱体32の底面33が接続され、他端に正六角柱体36の底面37が接続された軸体38を有して構成されたナットにおいて、第1ナット30が正六角柱体32を全て含み、第2ナット31が正六角柱体36を全て含むように分割されていればよい。
【0060】
テンションボルト17が螺合する雌ねじは、貫通孔27の内周面のうちの一部、貫通孔35,41の内周面のうちの一部、貫通孔46の内周面のうちの一部に形成されてもよい。
【0061】
環状の座金20の内周面には、ナット19の軸体24における雄ねじ26と螺合する雌ねじ28が形成されなくてもよい。この場合の座金20の内径d3は、軸体24の雄ねじ26の外径d1より大きい値に設定される。
【0062】
突起部49は、弾性アーム47が、座金20、パッキン21及び押さえ部材15の貫通孔16に挿通されるときに、それぞれと干渉して弾性アーム47が内方に弾性変形することを条件に、弾性アーム47の全てに形成されなくてもよい。
【0063】
上記第1~第3実施形態におけるナット脱落防止構造は、濾過装置1の押さえ部材15を対象としたものに限らず、化学プラントや発電所等においてナットの脱落防止が重要となる様々な装置において適用可能である。
【0064】
また、上記の第1~第3実施形態で説明した各技術的思想及びこれから採り得る種々の変形態様は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合せて使用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…濾過装置、3…フィルターユニット、14…受け部材、15…押さえ部材、16…貫通孔(押さえ部材)、17…テンションボルト、19,42…ナット、20…座金、21…パッキン、22,32,36,43…正六角柱体、24,38…軸体、26…雄ねじ(正六角柱体)、27,35,41,46…貫通孔(ナット)、28…雌ねじ(座金)、30…第1ナット、31…第2ナット、44…底面、45…上面、47…弾性アーム、49…突起部