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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152765
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】評価装置および評価方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20221004BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20221004BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20221004BHJP
   G16Y 10/25 20200101ALI20221004BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20221004BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20221004BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
A61M25/10
G16Y10/25
G16Y20/20
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055662
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】谷 貴城
(72)【発明者】
【氏名】津川 城
(72)【発明者】
【氏名】木村 政稔
(72)【発明者】
【氏名】厨子 洋一
【テーマコード(参考)】
3C100
4C267
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA70
3C100BB11
3C100BB27
4C267AA06
4C267HH11
5L049CC04
(57)【要約】
【課題】計測値について上限値または下限値のみが規定されている評価項目を適切に評価する。
【解決手段】評価装置(101)は、計測値についての上限値のみが規定されている場合には、計測値が上限値から該上限値より小さい第1所定値までの範囲では評価値が最適値に近づき、計測値が第1所定値以下の範囲では評価値が最適値で一定となる評価関数に基づいて評価値を算出し、計測値についての下限値のみが規定されている場合には、計測値が下限値から該下限値より大きい第2所定値までの範囲では評価値が最適値に近づき、評価値が第2所定値以上の範囲では評価値が最適値で一定となる第3評価関数に基づいて評価値を算出する評価部(13)を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の上限値および下限値が規定された第1評価項目に関する第1計測値、および、該製品の上限値および下限値のいずれか一方のみが規定された第2評価項目に関する第2計測値、の少なくともいずれか一方を取得する取得部と、
前記第1計測値から前記第1評価項目に関する第1評価値を算出し、前記第2計測値から前記第2評価項目に関する第2評価値を算出する評価部と、を備え、
前記評価部は、
前記第1計測値についての上限値および下限値が規定されている場合には、前記上限値と前記下限値との間において第1最適値となる第1評価関数を用いて前記第1評価値を算出し、
前記第2計測値についての上限値のみが規定されている場合には、前記第2計測値が前記上限値から該上限値より小さい第1所定値までの範囲では前記第2評価値が第2最適値に近づき、前記第2計測値が前記第1所定値以下の範囲では前記第2評価値が前記第2最適値で一定となる第2評価関数に基づいて前記第2評価値を算出し、
前記第2計測値についての下限値のみが規定されている場合には、前記第2計測値が前記下限値から該下限値より大きい第2所定値までの範囲では前記第2評価値が第3最適値に近づき、前記第2評価値が前記第2所定値以上の範囲では前記第2評価値が前記第3最適値で一定となる第3評価関数に基づいて前記第2評価値を算出する、
評価装置。
【請求項2】
前記第1所定値および前記第2所定値は、過去に製造された複数の前記製品の前記第2評価項目に関する計測値の群に基づいて決定される、
請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
前記計測値の群に対してクラスタリングを行い、所定の閾値以上外れた計測値を前記計測値の群から除去する、
請求項2に記載の評価装置。
【請求項4】
前記第1所定値は、前記計測値の群における最大値、平均値、中央値、期待値、および所定の推定アルゴリズムを用いて算出された推定値のうちのいずれかである、
請求項2または3に記載の評価装置。
【請求項5】
前記第2所定値は、前記計測値の群における最小値、平均値、中央値、期待値、および所定の推定アルゴリズムを用いて算出された推定値のうちのいずれかである、
請求項2または3に記載の評価装置。
【請求項6】
前記製品は、第1製造条件により製造された第1製品、および前記第1製造条件とは異なる第2製造条件により製造された第2製品を含み、
前記第1製品の前記第1評価項目および前記第2評価項目のそれぞれについて規定されている規格と、前記第2製品の前記第1評価項目および前記第2評価項目のそれぞれについて規定されている規格とが異なる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の評価装置。
【請求項7】
評価対象が、前記第1評価項目および前記第2評価項目のいずれであるかを、該製品について規定されている規格に基づいて判定する判定部を備え、
前記評価部は、評価対象が前記第2評価項目である場合、前記第2計測値についての下限値のみが規定されているか、上限値のみが規定されているかに応じて前記第2評価関数と前記第3評価関数とを切り替えて、前記第2評価値を算出する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の評価装置。
【請求項8】
前記製品は、バルーンカテーテルである、
請求項1から7のいずれか1項に記載の評価装置。
【請求項9】
前記第1評価項目は、バルーンカテーテルの寸法を含み、前記第2評価項目は、バルーンカテーテルの強度および製造コストの少なくとも一方を含む、
請求項8に記載の評価装置。
【請求項10】
製品の上限値および下限値が規定された第1評価項目に関する第1計測値、および、該製品の上限値および下限値のいずれか一方のみが規定された第2評価項目に関する第2計測値、の少なくともいずれか一方を取得する取得ステップと、
前記第1計測値から前記第1評価項目に関する第1評価値を算出し、前記第2計測値から前記第2評価項目に関する第2評価値を算出する評価ステップと、を含み、
前記評価ステップにおいて、
前記第1計測値についての上限値および下限値が規定されている場合には、前記上限値と前記下限値との間において第1最適値となる第1評価関数を用いて前記第1評価値を算出し、
前記第2計測値についての上限値のみが規定されている場合には、前記第2計測値が、前記上限値から該上限値より小さい第1所定値までの範囲では前記第2評価値が第2最適値に近づき、前記第2評価値が前記第1所定値以下の範囲では前記第2評価値が前記第2最適値で一定となる第2評価関数に基づいて前記第2評価値を算出し、
前記第2計測値についての下限値のみが規定されている場合には、前記第2計測値が、前記下限値から該下限値より大きい第2所定値までの範囲では前記第2評価値が第3最適値に近づき、前記第2評価値が前記第2所定値以上の範囲では前記第2評価値が前記第3最適値で一定となる第3評価関数に基づいて前記第2評価値を算出する、
評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造された製品の品質を評価する評価装置および評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品に要求される品質と、製造工程における製造条件との間には複雑な関係があるため、製品の品質を安定させることは容易ではない場合がある。
【0003】
近年ではAIを活用して、製造する製品の品種に応じた最適な製造条件を予測し、その条件に基づき製造を行うことが試みられている。たとえば、特許文献1には、機械学習したコンピュータの予測モジュールを用いて、最適な製造条件を予測し、その条件に基づき製造を行う技術が開示されている。また、特許文献2には、製造造条件を学習的に策定された評価関数に基づき最適化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-30683号公報
【特許文献2】特開2004-326200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、製品の品質は、複数の評価項目について多面的に評価される場合があり、製品の品質を評価するために、評価項目毎に評価値が算出される。ここで、複数の評価項目について共通の評価関数(例えば、二次関数)を適用すれば、各評価項目に関して算出した評価値に基づいて、製品の品質を総合的に評価することが可能である。
【0006】
しかし、評価項目には、要求される規格において、上限値および下限値が規定されているもの、および、上限値または下限値のみが規定されているものが含まれ得る。このような場合には、算出した評価値に基づいて、製品の品質を総合的に評価することは容易ではない。なぜなら、上限値および下限値の両方が規定されている評価項目に対しては適用可能な評価関数が、上限値または下限値のみが規定されている評価項目に対しては適用できないからである。
【0007】
本発明の一態様は、上限値または下限値のみが規定されている評価項目に対しても、上限値および下限値の両方が規定されている評価項目の評価値と同等に取り扱うことができる評価値を算出できる評価装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価装置は、製品の上限値および下限値が規定された第1評価項目に関する第1計測値、および、該製品の上限値および下限値のいずれか一方のみが規定された第2評価項目に関する第2計測値、の少なくともいずれか一方を取得する取得部と、前記第1計測値から前記第1評価項目に関する第1評価値を算出し、前記第2計測値から前記第2評価項目に関する第2評価値を算出する評価部と、を備え、前記評価部は、前記第1計測値についての上限値および下限値が規定されている場合には、前記上限値と前記下限値との間において第1最適値となる第1評価関数を用いて前記第1評価値を算出し、前記第2計測値についての上限値のみが規定されている場合には、前記第2計測値が前記上限値から該上限値より小さい第1所定値までの範囲では前記第2評価値が第2最適値に近づき、前記第2計測値が前記第1所定値以下の範囲では前記第2評価値が前記第2最適値で一定となる第2評価関数に基づいて前記第2評価値を算出し、前記第2計測値についての下限値のみが規定されている場合には、前記第2計測値が前記下限値から該下限値より大きい第2所定値までの範囲では前記第2評価値が第3最適値に近づき、前記第2評価値が前記第2所定値以上の範囲では前記第2評価値が前記第3最適値で一定となる第3評価関数に基づいて前記第2評価値を算出することを特徴としている。
【0009】
本発明の一態様に係る評価方法は、製品の上限値および下限値が規定された第1評価項目に関する第1計測値、および、該製品の上限値および下限値のいずれか一方のみが規定された第2評価項目に関する第2計測値、の少なくともいずれか一方を取得する取得ステップと、前記第1計測値から前記第1評価項目に関する第1評価値を算出し、前記第2計測値から前記第2評価項目に関する第2評価値を算出する評価ステップと、を含み、前記評価ステップにおいて、前記第1計測値についての上限値および下限値が規定されている場合には、前記上限値と前記下限値との間において第1最適値となる第1評価関数を用いて前記第1評価値を算出し、前記第2計測値についての上限値のみが規定されている場合には、前記第2計測値が、前記上限値から該上限値より小さい第1所定値までの範囲では前記第2評価値が第2最適値に近づき、前記第2評価値が前記第1所定値以下の範囲では前記第2評価値が前記第2最適値で一定となる第2評価関数に基づいて前記第2評価値を算出し、前記第2計測値についての下限値のみが規定されている場合には、前記第2計測値が、前記下限値から該下限値より大きい第2所定値までの範囲では前記第2評価値が第3最適値に近づき、前記第2評価値が前記第2所定値以上の範囲では前記第2評価値が前記第3最適値で一定となる第3評価関数に基づいて前記第2評価値を算出することを特徴とする。
【0010】
本発明の各態様に係る評価装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記評価装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記評価装置をコンピュータにて実現させる評価装置の評価制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、上限値または下限値のみが規定されている評価項目に対しても、上限値および下限値の両方が規定されている評価項目の評価値と同等に取り扱うことができる評価値を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係る評価装置の要部構成を示すブロック図である。
図2図1に示す評価装置で実現する評価方法を示すフローチャートである。
図3図1に示す評価装置で評価する評価項目と、当該評価項目に関する計測値の上限値・下限値との関係の一例を示した表である。
図4図1に示す評価装置が使用する評価関数のうち、計測値について上限値および下限値が規定された場合の評価関数の一例を示す図である。
図5図1に示す評価装置が使用する評価関数のうち、計測値について上限値のみが規定された場合の評価関数の一例を示す図である。
図6図1に示す評価装置が使用する評価関数のうち、計測値について下限値のみが規定された場合の評価関数の一例を示す図である。
図7】クラスタリングによる異常値の除去方法の一例を説明する図である。
図8】クラスタリングによる異常値の除去方法の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0014】
(評価装置の構成)
図1に基づいて評価装置101の構成を説明する。図1は、評価装置101の要部構成の一例を示すブロック図である。評価装置101は、評価装置101の各部を統括して制御する制御部10、評価装置101が使用する各種データを記憶する記憶部20、評価装置101に対する計測値の入力を受け付ける入力部30、および評価装置101が評価値を出力する際に用いる出力部40を備えている。出力部40の出力態様は特に限定されず、例えば表示出力であってもよいし、印字出力であってもよいし、音声出力であってもよい。また、制御部10には、取得部11、判定部12、評価部13が含まれている。
【0015】
なお、記憶部20と入力部30と出力部40は、評価装置101に外付けされた装置であってもよい。また、制御部10に含まれるブロックの一部について、その機能を評価装置101と通信可能な他の装置に持たせて、制御部10から当該ブロックを省略してもよい。例えば、評価部13の機能を他の装置に持たせてもよい。この場合、評価装置101は、当該他の装置が生成した評価値を取得して出力部40から出力すればよい。
【0016】
取得部11は、入力部30から入力される製品(評価対象)の各評価項目に関する計測値を取得する。具体的には、取得部11は、製品の上限値および下限値が規定された第1評価項目に関する第1計測値、および、製品の上限値および下限値のいずれか一方のみが規定された第2評価項目に関する第2計測値、の少なくともいずれか一方を取得する。なお、計測値は、第1計測値であるか、第2計測値であるかを識別するための識別情報と共に、入力部30から入力され取得部11によって取得される。識別情報は、製品の規格から規定された第1評価項目および第2評価項目のいずれであるかを示す情報である。
【0017】
判定部12は、取得部11が取得した計測値が第1計測値か第2計測値かを判定する。ここで、判定部12は、取得部11が計測値と共に取得した識別情報から、取得部11が取得した計測値が第1計測値であるか、第2計測値であるかを判定する。
【0018】
評価部13は、判定部12が判定した計測値から対応する評価項目の評価値を算出し、算出した評価値を出力部40に送る。ここで、評価部13における評価値の算出方法は、取得した計測値の種類、すなわち第1計測値か第2計測値かによって異なる。
【0019】
具体的には、評価部13は、第1計測値についての上限値および下限値が規定されている場合には、前記上限値と前記下限値との間において第1最適値となる第1評価関数(例えば、二次関数)を用いて前記第1評価値を算出する第1評価値算出処理を実行する。
【0020】
また、評価部13は、第2計測値についての上限値のみが規定されている場合には、第2評価関数に基づいて第2評価値を算出する第2評価値算出処理を実行し、第2計測値についての下限値のみが規定されている場合には、第3評価関数に基づいて第2評価値を算出する第3評価値算出処理を実行する。ここで、第2評価関数は、第2評価値が上限値から該上限値より小さい第1所定値までの範囲では第2評価値が第2最適値に近づき、第2計測値が第1所定値以下の範囲では第2評価値が第2最適値で一定となる関数である。一方、第3評価関数は、第2計測値が下限値から該下限値より大きい第2所定値までの範囲では第2評価値が第3最適値に近づき、第2評価値が第2所定値以上の範囲では第2評価値が第3最適値で一定となる関数である。
【0021】
ここで、評価部13は、取得した計測値が第2計測値である場合、第2計測値についての上限値のみが規定されているか、下限値のみが規定されているかに応じて、第2評価関数と第3評価関数とを切り替えて、第2評価値を算出してもよい。これにより、評価部13は、取得した計測値が第2計測値であれば自動的に第2評価関数または第3評価関数の何れかの評価関数によって第2評価値を算出することができる。
【0022】
なお、第2計測値についての上限値のみが規定されているか、下限値のみが規定されているかについての情報は、第2評価項目毎に紐付けされた状態で、記憶部20に記憶されている。従って、評価部13は、取得した計測値が第2計測値であれば、記憶部20から上記情報を読取ることで、第2評価関数または第3評価関数を自動的に切替えて、第2評価値を算出する。評価部13における評価値算出処理の流れについて以下に説明する。
【0023】
(評価値算出処理:評価方法)
図2は、図1に示す評価装置101における評価値の算出処理の流れを示すフローチャートである。図2に示すように、まず、評価装置101は、計測値を取得する(ステップS11:取得ステップ)。ここでは、取得部11が入力部30に入力された計測値を取得する。次に、評価装置101は、取得した計測値が第1計測値か否かを判定する(ステップS12)。ここでは、判定部12が、取得部11が計測値と共に取得した識別情報に基づき、計測値が第1計測値または第2計測値の何れであるかを判定する。判定部12が取得した計測値が第1計測値であると判定(YES)すれば、ステップS13(評価ステップ)に移行して、評価部13によって第1評価値算出処理が実行される。ここで、第1評価算出処理では、計測値について上限値および下限値の両方が規定された第1評価関数を用いて第1評価値の算出を行なう。第1評価関数としては、例えば図4に示すような上限値・下限値が規定された二次関数を用いる。
【0024】
一方、ステップS12において、判定部12が、取得した計測値が第1計測値でないと判定(NO)すれば、当該計測値は第2計測値であるとし、ステップS14(評価ステップ)に移行して、評価部13によって第2評価値算出処理が実行される。ここで、第2評価算出処理では、2種類の評価関数を用いて第2評価値を算出する。具体的には、評価部13が、記憶部20から、第2計測値についての上限値のみが規定されているか、下限値のみが規定されているかについての情報を読出し、取得した第2計測値について上限値のみが規定されていれば、第2評価関数を用い、取得した第2計測値について下限値のみが規定されていれば、第3評価関数を用いて第2評価値を算出する。第2評価関数としては、図5に示すような上限値のみが規定された関数を用いる。第3評価関数としては、図6に示すような下限値のみが規定された関数を用いる。
【0025】
最後に、評価装置101は、ステップS13またはステップS14において算出した評価値を出力する(ステップS15)。ここでは、評価部13は、第1計測値に基づいた評価値または第2計測値に基づいた評価値の何れか一方を出力部40に出力する。
【0026】
(実施例)
図3は、図1に示す評価装置101で評価する製品の評価項目と、当該評価項目に関する計測値の上限値・下限値との関係の一例を示した表である。図4は、第1評価項目の評価をするための評価関数を示し、図5および図6は、第2評価項目の評価をするための評価関数を示す。ここでは、製品としてバルーンカテーテルを例に説明する。
【0027】
バルーンカテーテルの場合、評価項目として外径、内径、耐圧がある。図3に示すように、外径は、下限値および上限値が規定された第1評価項目に相当し、内径は、上限値のみ規定された第2評価項目に相当し、耐圧は、下限値のみが規定された第2評価項目に相当する。
【0028】
一例において、バルーンカテーテルの外径は、図3に示すように、上限値1.55mm、下限値1.45mmに規定される。この場合、例えば図4に示す関数、すなわち、上限値1.55mmと下限値1.45mmとの間において第1評価値が第1最適値となる第1評価関数を用いて、外径の計測値(第1計測値)から評価値(第1評価値)を算出する。図4に示す関数において、計測値1.5mmが最高評価(-1.0)評価となる。よって、最高評価を示す計測値1.5mmが第1評価関数における第1最適値となる。ここでは、外径1.45mmと1.55mmとが評価の臨界値0.0として、第1最適値である最高評価-1.0に近づく程、計測値の評価が高いものとする。
【0029】
一例において、バルーンカテーテルの内径は、図3に示すように、上限値0.66mmのみが規定されている。この場合、例えば図5に示す関数、すなわち、内径の計測値(第2計測値)が上限値0.66mmから当該上限値0.66mmより小さい第1所定値(実績最小値)までの範囲では第2評価値が第2最適値(-0.5)に近づき、内径の計測値(第2計測値)が第1所定値(実績最小値)以下の範囲では第2評価値が前記第2最適値(-0.5)で一定となる第2評価関数を用いて、内径の計測値(第2計測値)から評価値(第2評価値)を算出する。図5に示す関数において、内径0.66mmが評価の臨界値0.0として、第2最適値である評価-0.5に近づく程、計測値の評価が高いものとする。
【0030】
一例において、バルーンカテーテルの耐圧は、図3に示すように、下限値2.23Mpaのみが規定されている。この場合、例えば図6に示す関数、すなわち、耐圧の計測値(第2計測値)が下限値2.23Mpaから当該下限値2.23Mpaより小さい第2所定値(実績最大値)までの範囲では第2評価値が第3最適値(-1.0)に近づき、耐圧の計測値(第2計測値)が第2所定値(実績最大値)以下の範囲では第2評価値が前記第3最適値(-1.0)で一定となる第3評価関数を用いて、耐圧の計測値(第2計測値)から評価値(第2評価値)を算出する。図6に示す関数において、耐圧2.23Mpaが評価の臨界値0.0として、第3最適値である評価-1.0に近づく程、計測値の評価が高いものとする。なお、耐圧の計測値は、バルーンカテーテルの外形、内径、材料から算出されるものである。
【0031】
なお、バルーンカテーテルの場合、第1評価項目は、外径以外のバルーンカテーテルの寸法(内径以外)を含んでいてもよく、第2評価項目は、バルーンカテーテルの強度および製造コストの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0032】
(第1所定値、第2所定値)
第1所定値、第2所定値は、以下のように決定されてもよい。すなわち、第1所定値および前記第2所定値は、過去に製造された複数の製品(バルーンカテーテル)の第2評価項目(内径、耐圧)に関する計測値の群に基づいて決定されてもよい。第1所定値は、計測値の群における最大値、平均値、中央値、期待値、および、所定の推定アルゴリズムを用いて算出された推定値のうちのいずれかであればよい。また、第2所定値は、計測値の群における最小値、平均値、中央値、期待値、および推定値のうちのいずれかであればよい。なお、推定値の算出には、例えば、ベイズ推定や最尤推定などの推定アルゴリズムが用いられ得る。
【0033】
ここまでの説明では、同じ製造条件で製造された単一品種の製品の評価項目について評価する場合を想定して、評価値を算出する例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、異なる製造条件で製造された多品種の製品のそれぞれの評価項目について評価する場合であっても、同様に評価値を算出することができる。換言すれば、第1製造条件により製造された第1製品、および第1製造条件とは異なる第2製造条件により製造された第2製品についての評価項目について評価する場合であっても、単一品種についての評価項目について評価する場合と同様に評価値を算出することができる。ここで、第1製品の第1評価項目および第2評価項目のそれぞれについて規定されている規格と、第2製品の第1評価項目および第2評価項目のそれぞれについて規定されている規格とが異なっていてもよい。
【0034】
ところで、過去に製造された複数の製品の第2評価項目に関する計測値の群の中には、所定値を求める際に相応しくない値(異常値)が存在する場合がある。そこで、計測値の群に対してクラスタリングを行い、所定の閾値以上外れた計測値(異常値)を計測値の群から除去してもよい。例えば、単一品種の製品の評価項目について評価する場合を想定し、且つ、第2評価項目が製品(バルーンカテーテル)の耐圧であるの場合、クラスタリングを行なうことで、計測値の群は、図7に示すように、計測値が、一軸で表現される所定の範囲(下限値と仮想上限値との間)に存在する第1群71と、仮想上限値を超えて存在する第2群72とに分けられる。この第2群72に含まれる計測値を異常値として検出することができる。ここでは、第2評価項目として製品の耐圧の例を示しているため、下限値は規格により規定されているが、上限値は規定されていない。このため、上述したように、過去に製造された複数の製品の耐圧に関する計測値の群に基づいて決定した値を仮想上限値として規定する。
【0035】
また、多品種の製品の評価項目について評価する場合を想定した場合であっても、単一品種の製品の評価項目について評価する場合と同様に、クラスタリングを行うことで、計測値の群から異常値を検出することができる。ここで、多品種として2品種の製品の評価項目について評価する場合を想定し、且つ、第2評価項目を耐圧とした場合、一方の品種を低耐圧の品種、他方の品種を高耐圧の品種とする。低耐圧の品種では、図8に示すように、耐圧の上限値は規定されているが、下限値は規定されていないため、仮想下限値を規定する。一方、高耐圧の品種では、図8に示すように、耐圧の下限値は規定されているが、上限値は規定されていないため、仮想下限値を規定する。このような2品種の製品の評価項目について評価する場合、クラスタリングを行なうことで、計測値の群は、図8に示すように、計測値が、二軸で表現される2つの所定の範囲に存在する。すなわち、低耐圧の品種では、上限値と仮想下限値との間に存在する計測値の群である第1群81と、仮想下限値を超えてさらに低い耐圧を示した計測値の群である第2群82とに分けられる。一方、高耐圧の品種では、下限値と仮想上限値との間に存在する計測値の群である第1群83と、仮想上限値を超えてさらに高い耐圧を示した計測値の群である第2群84とに分けられる。この場合には、第2群82および第2群84に含まれる計測値を異常値として検出することができる。
【0036】
ここで、クラスタリングでは、k-means法などの公知のアルゴリズムを適用可能である。
【0037】
また、計測値群から異常値を検出するためのアルゴリズムとしては、例えば、One Class SVM(Support Vector Machine)が適用可能である。異常値の検出方法としては、他に、(i)ガウス分布の標準偏差を用いる方法、(ii)箱ひげ図における「第一四分位数-1.5×IQR(四分位範囲:interquartile range)」をひげの下限として設定し、「第三四分位数+1.5×IQR」をひげの上限として設定する方法、などを用いることができる。
【0038】
(効果)
上記構成の評価装置101を用いることで、上限値または下限値のみが規定されている評価項目に対しても、上限値および下限値の両方が規定されている評価項目の評価値と同等に取り扱うことができる評価値を算出できるので、多品種少量生産をする際の計測値の評価を適切に行なうことができる。
【0039】
〔ソフトウェアによる実現例〕
評価装置(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部10に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0040】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0041】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0042】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0043】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10 制御部
11 取得部
12 判定部
13 評価部
20 記憶部
30 入力部
40 出力部
101 評価装置
図1
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図8