(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152767
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】通蒸型パウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
B65D81/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055664
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森田 佐保
(57)【要約】
【課題】紙剥けが生じにくい通蒸型パウチを提供する。
【解決手段】通蒸型パウチ10は、複数の層が積層された層構造を含むシート20と、シート20をシールするシール部40と、により収容物Cを収容する収容空間Sを形成する。層構造は、紙層を含む。紙層の少なくとも一部分に、易剥離層が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層が積層された層構造を含むシートと、前記シートをシールするシール部と、により収容物を収容する収容空間を形成する通蒸型パウチであって、
前記層構造は、紙層を含み、
前記紙層の少なくとも一部分に、易剥離層が形成される
通蒸型パウチ。
【請求項2】
前記シートは、第1シートおよび第2シートを含み、
前記第1シートおよび前記第2シートの少なくとも一方に前記易剥離層が形成される
請求項1に記載の通蒸型パウチ。
【請求項3】
前記易剥離層は、ニスを含む
請求項1または2に記載の通蒸型パウチ。
【請求項4】
前記シートは、易開封部をさらに備え
前記易開封部は、前記複数の層の積層方向において少なくとも一部が前記易剥離層と一致する
請求項1~3のいずれか一項に記載の通蒸型パウチ。
【請求項5】
前記収容空間の気体を放出する通蒸部をさらに含む
請求項1~4のいずれか一項に記載の通蒸型パウチ。
【請求項6】
前記収容空間内に前記収容物を収容する
請求項1~5のいずれか一項に記載の通蒸型パウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通蒸型パウチに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の層を有するシートにより構成されるパウチが知られている。複数の層の少なくとも1つに紙で構成された紙層を設ける場合がある。特許文献1は、紙層を含むパウチの構成の一例を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなパウチにおいて、開封時に紙層と他の層との剥離が好適に行われない結果、紙層内に紙剥けが生じる恐れがある。紙剥けした部分は、意匠性の低下およびパウチの内容物との接触による汚れが生じる恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の通蒸型パウチは、複数の層が積層された層構造を含むシートと、前記シートをシールするシール部と、により収容物を収容する収容空間を形成する通蒸型パウチであって、前記層構造は、紙層を含み、前記紙層の少なくとも一部分に、易剥離層が形成される。
【発明の効果】
【0006】
上記通蒸型パウチは、開封時に通蒸型パウチを構成する紙層に紙剥けが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】通蒸型パウチを構成するシートの層構造を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(通蒸型パウチが取り得る形態の一例)
(1)本開示に従う通蒸型パウチは、複数の層が積層された層構造を含むシートと、前記シートをシールするシール部と、により収容物を収容する収容空間を形成する通蒸型パウチであって、前記層構造は、紙層を含み、前記紙層の少なくとも一部分に、易剥離層が形成される。
紙層を含む通蒸型パウチにおいて、開封時に紙剥けが生じる恐れがある。紙剥けは、紙層間が剥離する現象である。紙剥けは、紙層間の剥離により紙層が毛羽立った状態および剥離した紙層が抉れた状態を含む。紙層間の剥離は、紙層と層構造を構成する他の層とが剥離せず、開封に伴う力が作用することにより生じる。この通蒸型パウチによれば、易剥離層が設けられるため、例えば開封時において紙層と層構造を構成する他の層とが容易に剥離される。このため、紙剥けが生じにくい。
【0009】
(2)前記通蒸型パウチの一例によれば、前記シートは第1シートおよび第2シートを含み、前記第1シートおよび前記第2シートの少なくとも一方に前記易剥離層が形成される。
この通蒸型パウチによれば、第1シートおよび第2シートの少なくとも一方に易剥離層が形成されるため、例えば開封時に紙剥けが生じにくい。
【0010】
(3)前記通蒸型パウチの一例によれば、前記易剥離層は、ニスを含む。
この通蒸型パウチによれば、例えば開封時に紙剥けが生じにくい。
【0011】
(4)前記通蒸型パウチの一例によれば、前記シートは、易開封部をさらに備え前記易開封部は、前記複数の層の積層方向において少なくとも一部が前記易剥離層と一致する。
この通蒸型パウチによれば、易開封部を介して容易に通蒸型パウチを開封できる。また易開封部を介して開封した場合に、紙剥けが生じにくい。
【0012】
(5)前記通蒸型パウチの一例によれば、前記収容空間の気体を放出する通蒸部をさらに含む。
この通蒸型パウチによれば、通蒸型パウチの加熱時に収容空間で発生した水蒸気を好適に外部に放出できる。
【0013】
(6)前記通蒸型パウチの一例によれば、前記収容空間内に前記収容物を収容する。
この通蒸型パウチによれば、収容物が好適に保存される。
【0014】
<実施形態>
図1~
図3を参照して、実施形態の通蒸型パウチ10について説明する。
図1は、内容物Cを収容した通蒸型パウチ10を示す。内容物Cは、加熱されることにより水蒸気を発生する被加熱物である。内容物Cの一例は、流動性を有する食品である。通蒸型パウチ10は、内容物を入れた状態で加熱可能に構成される。通蒸型パウチ10は、内容物Cから発生した水蒸気の排出が可能に構成される。通蒸型パウチ10は、外部からの空気および微生物などの侵入を抑制し、内容物Cの品質を保ちながら長期間保存できるように構成される。通蒸型パウチ10は、種々の形態を取り得る。通蒸型パウチ10が取り得る形状の例は、平袋タイプ、スタンディングタイプ、ガゼットタイプ、および、ピラータイプである。
図1に例示される通蒸型パウチ10の形状は、スタンディングタイプである。なお以下では、通蒸型パウチ10の正面視における通蒸型パウチ10の左右方向を標準幅方向XAと称し、標準幅方向XAと直交する方向を標準高さ方向XBと称する場合がある。
【0015】
通蒸型パウチ10は、パウチ本体11および底部12を含む。パウチ本体11は、収容空間Sの主要な部分を構成する。底部12は、パウチ本体11から突出するように構成される。底部12は、標準高さ方向XBにおいてパウチ本体11の下方に配置され、パウチ本体11を支持する。
【0016】
パウチ本体11および底部12の標準幅方向XAの長さは、収容される内容物Cの量、および、通蒸型パウチ10の持ち運びやすさとの関係から決められることが好ましい。一例では、パウチ本体11および底部12の標準幅方向XAの長さは140~170mmの範囲に含まれる。一例では、パウチ本体11および底部12の標準幅方向XAの長さは152mmである。
【0017】
パウチ本体11および底部12の標準高さ方向XBの長さは、収容される内容物Cの量、および、通蒸型パウチ10の持ち運びやすさとの関係から決められることが好ましい。一例によれば、パウチ本体11および底部12の高さは140~170mmの範囲に含まれる。一例では、パウチ本体11および底部12の標準高さ方向XBの長さは158mmである。パウチ本体11の標準高さ方向XBの長さは、底部12の標準高さ方向XBの長さよりも長いことが好ましい。一例では、パウチ本体11の標準高さ方向XBの長さは、113mmである。一例では、底部12の標準高さ方向XBの長さは45mmである。
【0018】
通蒸型パウチ10は、パウチ本体11および底部12を構成するシート20、シート20をシールすることにより収容空間Sを形成するシール部40、および、収容空間Sで発生した水蒸気を外部に放出するための通蒸部50を含む。
【0019】
シート20は、一例では複数で構成される。シート20は、第1シート21および第2シート22を含む。第1シート21と第2シート22とが対向するように設けられることにより、第1シート21と第2シート22との間に収容空間Sが形成される。別の例では、シート20は一枚で構成される。一枚のシート20を折りたたむことにより、収容空間Sが形成される。
【0020】
シール部40は、第1シート21と第2シート22とが分離しないようにシールする。シール部40は、収容空間Sを形成して通蒸型パウチ10の外部と区別する。シール部40は、例えば第1シート21のシーラント層33の一部分と第2シート22のシーラント層33の一部分とをヒートシールすることで形成される。シート20は、シール部40とシール部40に囲まれた部分(以下「内方部23」)とを含む。
【0021】
シール部40は、上部シール部41、下部シール部42、第1側部シール部43、および、第2側部シール部44を備える。上部シール部41は、標準高さ方向XBにおいて内方部23の上側に設けられる。下部シール部42は、標準高さ方向XBにおいて内方部23の下側に設けられる。第1側部シール部43は、標準幅方向XAにおいて内方部23の右側または左側の一方に設けられる。第2側部シール部44は、標準幅方向XAにおいて内方部23の左側または右側の他方に設けられる。
【0022】
上部シール部41における内方部23側の縁である内縁41A、下部シール部42における内方部23側の縁である内縁42A、第1側部シール部43における内方部23側の縁である内縁43A、および、第2側部シール部44における内方部23側の縁である内縁44Aは内方部23の内郭を規定する。上部シール部41における内縁41Aとは反対側の縁である外縁41B、下部シール部42における内縁42Aとは反対側の縁である外縁42B、第1側部シール部43における内縁43Aとは反対側の縁である外縁43B、および、第2側部シール部44における内縁44Aとは反対側の縁である外縁44Bは通蒸型パウチ10の外郭を規定する。
【0023】
各シール部41~44の幅は、任意に選択できる。各シール部41~44の幅は各シール部41~44の中心線の法線における内縁41A~44Aと外縁41B~44Bとの間の長さである。各シール部41~44の中心線は内縁41A~44Aと外縁41B~44Bとの間を通過する仮想の線分である。各シール部41~44の幅が部位毎に異なる場合、例えば最大の幅、または、各シール部41~44のそれぞれにおける複数の部位の幅の平均がそのシール部の幅を代表する。
【0024】
通蒸部50は、収容空間Sの圧力の上昇にともない開口し、収容空間Sの水蒸気を通蒸型パウチ10の外部に排出できるように構成される。好ましい例では、通蒸部50は、収容空間Sの圧力が所定の圧力範囲内の圧力まで上昇した場合に開口するように構成される。
【0025】
通蒸型パウチ10における通蒸部50の位置は、任意に選択できる。第1例では、通蒸部50は第1側部シール部43に設けられる。第2例では、通蒸部50は第2側部シール部44に設けられる。第3例では、通蒸部50は第1側部シール部43および第2側部シール部44の両方に設けられる。本実施形態の通蒸型パウチ10は、第2例の通蒸部50を示す。
【0026】
一例では、通蒸部50は標準高さ方向XBに関して、上部シール部41と内容物Cの上端との間に設けられる。通蒸部50は、通蒸シール部51および未シール部52を含む。一例では、通蒸シール部51は、第1側部シール部43および第2側部シール部44よりもシール強度が低くなるように構成される。別の例では、通蒸シール部51は、第1側部シール部43および第2側部シール部44よりもシール幅が狭くなるように構成される。好ましくは、通蒸シール部51は、収容空間Sに向けて突出するように構成される。通蒸シール部51のシールが収容空間Sの圧力上昇に伴い剥がれることにより、収容空間Sと未シール部52とが接続される。
【0027】
図2に示されるように、シート20は、複数の層が積層された層構造30を備える。シート20の層構造30は、第1シート21と第2シート22で同じであってもよく、異なっていてもよい。本実施形態において、第1シート21と第2シート22とは同様の層構造30を備える。パウチ本体11を構成するシート20と底部12を構成するシート20は、それぞれ同じ層構造30であってもよく、異なっていてもよい。シート20を構成する複数の層は、例えばドライラミネートにより積層される。
【0028】
層構造30は、通蒸型パウチ10の用途に応じて、強度性、耐熱性、耐水性、および、ガスバリア性などを考慮して任意の構成を含む。本実施形態では層構造30は、基材層31、中間層32、および、シーラント層33を含む。
【0029】
基材層31は、層構造30の積層方向に沿って設けられる主面を備える。主面は、第1主面31Aおよび第2主面31Bを含む。基材層31を構成する材料は、任意の材料で構成される。一例では基材層31は、紙で構成される紙層である。紙層は、再生紙または非再生紙で構成される。好ましくは、紙層は非再生紙で構成される。紙層を構成する紙の坪量は、一例では30g/m2以上である。好ましくは、紙層を構成する紙の坪量は、50g/m2以上である。紙層を構成する紙の坪量は、一例では200g/m2未満である。好ましくは、紙層を構成する紙の坪量は120g/m2未満である。
【0030】
中間層32は、層構造30の積層方向に沿って設けられる主面を備える。主面は、第1主面32Aおよび第2主面32Bを含む。中間層32を構成する材料は、任意の材料で構成される。一例では、中間層32を構成する材料は、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素等の無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル、および、ポリアミドの少なくとも1つである。別の例では、ナイロンである。
【0031】
シーラント層33は、層構造30の積層方向に沿って設けられる主面を備える。シーラント層33の主面は、第1主面33Aと第2主面33Bを含む。シーラント層33を構成する材料は、熱可塑性樹脂により構成される。熱可塑性樹脂は、例えばポリエチレンおよびポリプロピレンである。好ましくは、熱可塑性樹脂は、ポリプロピレンの中にポリエチレンが含まれるブロックポリプロピレンである。
【0032】
各層の間には、接着層34が形成される。接着層34は、任意の接着手段により構成される。一例では、接着層34は2液硬化型ウレタン系樹脂などの接着剤で構成される。別の例では、接着層34はヒートシール性を備える樹脂により構成される。接着層34は、基材層31と中間層32との間に設けられる第1接着層34Aを含む。第1接着層34Aは、基材層31の第2主面31Bと中間層32の第1主面32Aとを接着する。接着層34は、中間層32とシーラント層33との間に設けられる第2接着層34Bを含む。第2接着層34Bは、中間層32の第2主面32Bとシーラント層33の第1主面33Aとを接着する。
【0033】
層構造30は、インキ層35をさらに含む。インキ層35は、文字または図形が表示され通蒸型パウチ10の内容物Cに関する情報を表示する。内容物Cに関する情報は、内容物Cが食品である場合、適切な調理方法および食品の栄養に関する情報を含む。インキ層35は、基材層31の第1主面31Aに設けられる。インキ層35は、既知の印刷方法の中から、基材層31の印刷適性、色調などの意匠性、他の層との密着性、通蒸型パウチ10としての安全性などを考慮して適宜選択される。印刷方法は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法である。インキ層35にオーバープリントニスをさらに印刷してもよい。
【0034】
通蒸型パウチ10は、通蒸型パウチ10の開封時に層構造30に含まれる構成を剥がしやすくするための易剥離層60をさらに備える。易剥離層60は、紙層を含む層と接着層34との間に設けられる。易剥離層60は、加熱されることにより紙層を含む層と接着層34との接着を弱める。
【0035】
一例では易剥離層60は、ニス61を含む。ニス61は、紙層の表面に印刷される第1ニス61Aと第1ニス61Aに印刷される第2ニス61Bを含む。第1ニス61Aは、紙層の目止めのために用いられる。第2ニス61Bは、紙層を含む層と接着層34との易剥離のために用いられる。
【0036】
通蒸型パウチ10は、通蒸型パウチ10の開封時に開封を容易にする易開封部70をさらに備える。易開封部70は、切取線71およびノッチ72を含む。切取線71は、標準幅方向XAに沿って第1側部シール部43から第2側部シール部44の間の少なくとも一部分に設けられる。本実施形態において、切取線71は直線状に形成される。切取線71は、複数のミシン目71Aにより構成される。好ましくは、ミシン目71Aは、標準高さ方向XBにおいて複数設けられる。
【0037】
標準高さ方向XBに関する易開封部70の位置は、任意に選択できる。図示される例では、易開封部70は通蒸部50に対して下方に設けられる。易開封部70は内容物Cの上端に対して上方に設けられる。切取線71はパウチ本体11の腹部に設けられる。
【0038】
図2に示されるとおり、ミシン目71Aは、層構造30の積層方向において少なくともインキ層35および基材層31を貫通する。ミシン目71Aは、易剥離層60の積層方向において少なくとも一部分が設けられる。本実施形態において、ミシン目71Aは易剥離層60を貫通する。
【0039】
ノッチ72は、ノッチ72の先端部72Aが切取線71または切取線71を延長した仮想線上に位置するように形成される。ノッチ72は、第1側部シール部43および第2側部シール部44の少なくとも一方に形成される。
図1では、第1側部シール部43にノッチ72が形成された例を示している。
【0040】
易剥離層60が設けられる好ましい場所について説明する。易剥離層60は、層構造30の積層方向において少なくとも一部が切取線71と一致するように設けられる。易剥離層60は、さらに通蒸型パウチ10の正面視において切取線71全体を含んだ所定範囲R内に設けられることが好ましい。切取線71が設けられない場合、易剥離層60は、例えばノッチ72の先端部72Aから仮想切取線に沿って設けられることが好ましい。仮想切取線は、先端部72Aを起点として伸びる直線状の部分である。
【0041】
通蒸型パウチ10への内容物Cの充填方法の一例について説明する。充填前の通蒸型パウチ10は、各シール部41~44のうち、1つがシールされていない状態である。一例では、上部シール部41が形成されていない状態である。上部シール部41が形成される部分に開口部(図示略)が形成される。開口部から内容物Cを充填し、該当部分をヒートシールすることにより、上部シール部41が形成される。これにより、内容物Cが通蒸型パウチ10により保存される。
【0042】
実施形態の通蒸型パウチ10の作用について説明する。
通蒸型パウチ10は、内容物Cを加熱するための加熱手段により加熱される。加熱手段の一例は、電子レンジである。通蒸型パウチ10が加熱されることに伴い、内容物Cから水蒸気が発生する。収容空間Sがシール部40により閉じられているため、水蒸気の発生にともない収容空間Sの圧力が上昇する。圧力の上昇に伴い、通蒸部50の通蒸シール部51が剥がれる。このため、未シール部52を介して収容空間Sと外部とが接続される。通蒸部50から収容空間Sで発生した水蒸気が抜けることにより収容空間Sの圧力の上昇が抑制される。
【0043】
通蒸型パウチ10の加熱終了後、ユーザは易開封部70の切取線71に沿って通蒸型パウチ10を開封する。通蒸型パウチ10の紙剥けは、例えば通蒸型パウチ10の開封時において、基材層31に含まれる紙層が第1接着層34Aと好適に剥離しないことにより生じる。実施形態の通蒸型パウチ10は、基材層31に含まれる紙層に易剥離層60が設けられる。このため、紙剥けが抑制される。
【0044】
通蒸型パウチ10では、易開封部70が通蒸部50に対して下方に設けられる。この構成によれば、例えば次のような効果が得られる。通蒸型パウチ10が加熱された場合、易剥離層60が熱の影響を受けやすくなる。熱により易剥離層60のニス61の強度が低下しやすくなる。基材層31における切取線71が設けられた部分が第1接着層34Aに対して浮き上がりやすくなる。このため、紙剥けがより生じにくくなる。
【0045】
実施形態の通蒸型パウチ10によれば以下に示される効果がさらに得られる。
基材層31において紙層を構成する紙の坪量が30g/m2以上であるため、基材層31および中間層32を構成する樹脂材料が少ない場合でも、好適に通蒸型パウチ10の強度が維持できる。紙層を構成する紙の坪量が200g/m2未満であるため、通蒸型パウチ10を製造する際の種々のコストが低減される。
【0046】
<比較試験>
本開示の発明者は、実施例および比較例の通蒸型パウチ10を用いて比較試験を実施した。比較試験では、加熱処理後にノッチ72から通蒸型パウチ10を開封し紙剥けの有無を確認した。加熱処理は、600Wの電子レンジによる加熱である。加熱処理は、通蒸部50から水蒸気が抜けるまで実施した。紙剥けの有無は、目視により確認した。
図3に示される易開封部70の切取線71または仮想切取線から所定範囲Rの外に紙剥けが存在する場合に、紙剥け有と判断した。所定範囲Rは、切取線71の端部または仮想切取線から2mmの範囲である。易開封部70のノッチ72から切取線71または仮想切取線から所定範囲R内に紙剥けが存在するまたは紙剥けが所定範囲内にも存在しない場合に、紙剥け無と判断した。
【0047】
(実施例1)
実施例1の通蒸型パウチ10の構成について説明する。パウチ本体11を構成する第1シート21および第2シート22は、それぞれ同じ構成である。パウチ本体11のシート20は、基材層31を紙で構成し、中間層32をポリエチレンテレフタラートで構成し、シーラント層33を無延伸ポリプロピレンで構成した。易剥離層60は、基材層31と中間層32との間に形成した。易剥離層60は、第1ニス61Aおよび第2ニス61Bを含む。易剥離層60は、所定範囲Rをすべて含むように構成された。インキ層35には、オーバープリントニスを印刷した。ミシン目71Aは、積層方向においてオーバープリントニスから易剥離層60まで設けた。底部12を構成する第1シート21および第2シート22は、それぞれ同じ構成である。底部12のシート20は、基材層31をポリエチレンテレフタラートで構成し、中間層32をナイロンで構成し、シーラント層33を無延伸ポリプロピレンで構成した。
【0048】
(実施例2)
実施例2の通蒸型パウチ10の構成について説明する。パウチ本体11を構成する第1シート21および第2シート22は、それぞれ同じ構成である。パウチ本体11のシート20は、基材層31を紙で構成し、中間層32をポリエチレンテレフタラートで構成し、シーラント層33を無延伸ポリプロピレンで構成した。易剥離層60は、基材層31と中間層32との間に形成した。易剥離層60は、第1ニス61Aおよび第2ニス61Bを含む。インキ層35には、オーバープリントニスを印刷した。ミシン目71Aは、設けていない。底部12を構成する第1シート21および第2シート22は、それぞれ同じ構成である。底部12のシート20は、基材層31をポリエチレンテレフタラートで構成し、中間層32をナイロンで構成し、シーラント層33を無延伸ポリプロピレンで構成した。
【0049】
(実施例3)
実施例3の通蒸型パウチ10の構成について説明する。パウチ本体11を構成する第1シート21および第2シート22は、それぞれ同じ構成である。パウチ本体11のシート20は、基材層31を紙で構成し、中間層32をポリエチレンテレフタラートで構成し、シーラント層33を無延伸ポリプロピレンで構成した。易剥離層60は、基材層31と中間層32との間に形成した。易剥離層60は、第1ニス61Aおよび第2ニス61Bを含む。インキ層35に、ポリエチレンテレフタラートをさらに積層した。ミシン目71Aは、積層方向においてインキ層35から易剥離層60まで設けた。底部12を構成する第1シート21および第2シート22は、それぞれ同じ構成である。底部12のシート20は、基材層31をポリエチレンテレフタラートで構成し、中間層32をナイロンで構成し、シーラント層33を無延伸ポリプロピレンで構成した。
【0050】
(実施例4)
実施例4の通蒸型パウチ10の構成について説明する。パウチ本体11を構成する第1シート21および第2シート22は、それぞれ同じ構成である。パウチ本体11のシート20は、基材層31を紙で構成し、中間層32をポリエチレンテレフタラートで構成し、シーラント層33を無延伸ポリプロピレンで構成した。易剥離層60は、基材層31と中間層32との間に形成した。易剥離層60は、第1ニス61Aおよび第2ニス61Bを含む。インキ層35には、オーバープリントニスを印刷した。ミシン目71Aは、積層方向においてオーバープリントニスから易剥離層60まで設けた。底部12を構成する第1シート21および第2シート22は、それぞれ同じ構成である。底部12のシート20は、基材層31を紙層で構成し、中間層32をポリエチレンテレフタラートで構成し、シーラント層33を無延伸ポリプロピレンで構成した。
【0051】
(比較例1)
比較例1の通蒸型パウチ10の構成について説明する。比較例1の通蒸型パウチ10は、実施例1の通蒸型パウチ10から易剥離層60を除いた構成である。ミシン目71Aは、積層方向においてオーバープリントニスから基材層31まで設けた。
【0052】
(比較例2)
比較例2の通蒸型パウチ10の構成について説明する。比較例2の通蒸型パウチ10は、比較例1の通蒸型パウチ10においてミシン目71Aの構成を省略した。その他においては、比較例1の通蒸型パウチ10と同様である。
【0053】
(比較例3)
比較例3の通蒸型パウチ10の構成について説明する。比較例3の通蒸型パウチ10は、パウチ本体11を構成する第1シート21および第2シート22は、それぞれ同じ構成である。底部12を構成する第1シート21および第2シート22は、それぞれ同じ構成である。基材層31は、ポリエチレンテレフタラートで構成され、中間層32は、ナイロンで構成され、シーラント層33は、無延伸ポリプロピレンで構成される。比較例3の通蒸型パウチ10は、紙層、易剥離層60、および、ミシン目71Aの構成を含まない。
【0054】
以下の表1は、比較試験の結果を示す。
【0055】
【0056】
易剥離層60が設けられることで、実施例1~4の通蒸型パウチ10において紙剥けがなかった。一方で、比較例の通蒸型パウチ10では、易開封部70のミシン目71Aを設けた場合でも、紙剥けが生じた。比較例3は、紙層を含まないため紙剥けの有無の判断を実施しなかった。
【0057】
(変形例)
実施の形態に関する説明は本発明に従う通蒸型パウチが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う通蒸型パウチは、実施の形態以外に例えば以下に示される実施の形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0058】
・変形例の通蒸型パウチ10は、中間層32が紙層を含む。この場合、少なくとも第2接着層34Bに易剥離層60が形成されることが好ましい。基材層31は、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素等の無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル、および、ポリアミドの少なくとも1つである。別の例では、ナイロンである。基材層31および中間層32の両方が紙層を含んでいてもよい。この場合、基材層31および中間層32の少なくとも一方は、樹脂層を含むことが好ましい。
【0059】
・易剥離層60は、ニス61以外で構成されていてもよい。一例では、易剥離層60は、接着層34を構成する接着剤よりも弱い接着剤で構成される。好ましくは、易剥離層60は、通蒸型パウチ10の加熱により接着性が弱まる熱剥離作用を備える。
【0060】
・変形例の通蒸型パウチ10では、易開封部70が実施形態とは異なる位置に設けられる。一例では、易開封部70は通蒸部50に対して上方に設けられる。易開封部70は上部シール部41に対して下方に設けられる。
【0061】
・パウチ本体11を構成するシート20と底部12を構成するシート20との構成がそれぞれ異なるように構成してもよい。底部を構成するシート20をガゼットシートとして構成してもよい。
【0062】
基材層31は、紙層および紙以外の材料で構成される層で構成されていてもよい。この場合、紙層は第2主面31B側に形成される。紙層と第1接着層34Aとの間に易剥離層60が設けられる。
【符号の説明】
【0063】
10…通蒸型パウチ
20…シート
21…第1シート
22…第2シート
30…層構造
31…基材層
32…中間層
33…シーラント層
40…シール部
50…通蒸部
60…易剥離層
70…易開封部