(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015277
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】溝用異物捕集器
(51)【国際特許分類】
E03F 5/14 20060101AFI20220114BHJP
E03F 5/04 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
E03F5/14
E03F5/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117998
(22)【出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000230836
【氏名又は名称】日本興業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502366295
【氏名又は名称】株式会社アルサスエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱本 剛
(72)【発明者】
【氏名】亀山 剛史
(72)【発明者】
【氏名】桂 泰二
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063CA02
2D063DB05
(57)【要約】
【課題】流体中から異物を分離する性能が低下しにくい溝用異物捕集器を提供する。
【解決手段】溝G内に設置して流れる流体中から異物を分離し取り除く溝用異物捕集器1において、下流側に配置する後壁部3と、この後壁部3に接続する略筒状の筒壁部4を備える有底筒状の箱状部10を有しており、後壁部3を流体中の固体を分離する第一スクリーン部として形成すると共に、この第一スクリーン部3が分離可能な大きさの異物を通過可能に設けた第二スクリーン部2をその上流側に配置する。外形が大きな異物を第二スクリーン部2で分離し、より小さな異物を第一スクリーン部3で分離するようになされるので、第一スクリーン部3の目詰まりが抑制され、異物を分離する性能が低下しにくい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字溝等の溝内に設置して流れる雨水等の流体中から異物を分離し取り除く溝用異物捕集器であって、
前記流体の下流側に配置される後壁部と、該後壁部に接続する略筒状の筒壁部を備える有底筒状の箱状部を有し、該箱状部は、少なくとも前記後壁部が流体中の固体を分離する第一スクリーン部として形成されており、
前記箱状部には、第一スクリーン部と間隔をあけて上流側に配置された第二スクリーン部が形成され、該第二スクリーン部は前記第一スクリーン部が流体中から分離可能な大きさの異物が通過可能に形成されていることを特徴とする溝用異物捕集器。
【請求項2】
前記第一スクリーン部と第二スクリーン部との間に第三スクリーン部が形成され、
該第三スクリーン部は前記第一スクリーン部が流体中から分離可能な大きさの異物が通過可能に形成されると共に、前記第二スクリーン部を通過可能な大きさの異物を液中から分離可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の溝用異物捕集器。
【請求項3】
前記第三スクリーン部は、流体の上流側から下流側へ至るほど上方へ向かう傾斜状に設けられた傾斜部を備え、
前記筒壁部の上面を構成する上壁部は、該上壁部の他の部位よりも通過する流体の抵抗を小さく設けた流通部が形成されると共に、該流通部が前記傾斜部の真上に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の溝用異物捕集器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、U字溝等の溝内を流れる雨水からゴミ等の異物を分離し取り除くための溝用異物捕集器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
U字溝などを流れる雨水には枯れ葉やゴミなどの異物が含まれていることが多い。例えば、人工芝生を敷設した競技場などの近傍に設けた側溝には、流れ込む雨水の中に、芝葉を模した人工芝生のパイル糸の破片や、パイル糸間に充填された砂や合成樹脂の粒などが含まれている場合がある。
【0003】
雨水中に含まれるゴミなどの異物を取り除くため、溝内に網などのスクリーン部材を設置する手法は従来から利用されており、このようなスクリーン部材について種々の発明が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、あみ7を備えるごみとりかごをU字溝の中に設置する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されるごみとりかごは、開口する入口2を汚水3の上流側へ向けてU字溝1内に設置することで、汚水3中に含まれるごみ4を分離してかご内に残すように設けているが、ごみなどの異物があみの目を塞ぐと異物を分離する性能が急速に低下する場合があった。
【0007】
本発明は、流体中から異物を分離する性能が低下しにくい溝用異物捕集器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
【0009】
即ち、本発明に係る溝用異物捕集器は、U字溝等の溝内に設置して流れる雨水等の流体中から異物を分離し取り除く溝用異物捕集器であって、前記流体の下流側に配置される後壁部と、該後壁部に接続する略筒状の筒壁部を備える有底筒状の箱状部を有し、該箱状部は、少なくとも前記後壁部が流体中の固体を分離する第一スクリーン部として形成されており、前記箱状部には、第一スクリーン部と間隔をあけて上流側に配置された第二スクリーン部が形成され、該第二スクリーン部は前記第一スクリーン部が流体中から分離可能な大きさの異物が通過可能に形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る溝用異物捕集器によれば、流体の下流側に配置する後壁部と、この後壁部に接続する略筒状の筒壁部を備える有底筒状の箱状部を備え、前記後壁部を流体中の固体を分離する第一スクリーン部として形成するので、溝内に設置して流れる雨水等の流体中から異物を分離し取り除くことができる。
【0011】
また、第一スクリーン部から間隔をあけた上流側に第二スクリーン部を形成し、前記第一スクリーン部が流体中から分離可能な大きさの異物をこの第二スクリーン部が通過可能に形成するので、外形が大きな異物を第二スクリーン部で分離し、より小さな異物を前記第一スクリーン部で分離するようになされる。これにより、大きな異物による前記第一スクリーン部の目詰まりが抑制され、異物を分離する溝用異物捕集器の性能が低下しにくい。
【0012】
また、前記第一スクリーン部と第二スクリーン部との間に第三スクリーン部を形成し、この第三スクリーン部を前記第一スクリーン部が流体中から分離可能な大きさの異物を通過可能に形成すると共に、前記第二スクリーン部を通過可能な大きさの異物を液中から分離可能に形成すれば、前記各スクリーン部がそれぞれ大きさの異なる異物を分離するようになされるので、より大きな異物による前記第一スクリーン部や第三スクリーン部の目詰まりが抑制されるので、好ましい。
【0013】
また、流体の上流側から下流側へ至るほど上方へ向かう傾斜状に設けた傾斜部を前記第三スクリーン部に備えさせ、前記筒壁部の上面を構成する上壁部に、この上壁部の他の部位よりも通過する流体の抵抗を小さく設けた流通部を形成すると共に、この流通部を前記傾斜部の真上に配置すれば、溝内を流れる流体の流量が増加したときに、前記第三スクリーン部へ至った流体の流れが傾斜部によって上方へ向かい、前記流通部から箱状部の外側へ流れるようになされるので、前記第一スクリーン部が流体から受ける負荷が低減するので、好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の溝用異物捕集器によれば、流体中から異物を分離する性能が低下しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る溝用異物捕集器の実施の一形態を示す正面図である。
【
図5】
図2の上壁部と内壁部を回転させた状態を示す左側面図である。
【
図6】
図1の溝用異物捕集器へ取り付ける閉塞部材の一例を示す正面図である。
【
図7】
図6の閉塞部材を
図1の溝用異物捕集器へ取り付けた状態を示す正面図である。
【
図8】
図7の溝用異物捕集器を溝内へ設置させた状況を示す正面図である。
【
図10】本発明に係る溝用異物捕集器の実施の他の一形態を示す正面図である。
【
図14】
図11の溝用異物捕集器から上壁部を取り外した状態を示す図である。
【
図17】
図10の溝用異物捕集器へ閉塞部材を取り付けた状態を示す正面図である。
【
図18】
図17の溝用異物捕集器を溝内へ設置させた状況を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
【0017】
図面において、符号1は、溝用異物捕集器を示す。なお、以下では、
図1~4において、正面図である
図1の図中左右方向を幅方向とし、幅方向に対して垂直な図中上下方向を縦方向とし、前記幅方向及び縦方向に対して垂直な方向を前後方向として説明を行う。
【0018】
図1~4に示す溝用異物捕集器1は内側が中空の略矩形箱形に形成している。この溝用異物捕集器1は、後面を構成する後壁部3と、この後壁部3の端部に接続して前方側に延出する略矩形筒状の筒壁部4を備える箱状部10を有しており、前方に開口する箱状部10の開口部分に溝用異物捕集器1の前面を構成する前壁部2を配置して設けている。これら後壁部3、箱状部10、及び前壁部2は、それぞれ金属板で形成しており、具体的にはステンレス鋼板で形成している。
【0019】
前記筒壁部4は、溝用異物捕集器1の下面を構成する底壁部42と、幅方向両側の側面をそれぞれ構成する各側壁部43とを、1個の平板部材を略U字形状に曲げ加工して形成している。この略U字形状の上方の開口部分を塞ぐように矩形板状の上壁部41を配置して取り付けることで、前記筒壁部4を略矩形筒状に形成している。
【0020】
図4に示すように、前記上壁部41は、前記底壁部42や各側壁部43に対して前後方向の大きさを小さく設け、その後端を前記後壁部3の近傍にヒンジH1を介して取り付けている。即ち、前記上壁部41の前方には、箱状部10の内側と外側とが連通する矩形の開口Sが設けられている。
【0021】
前記上壁部41は、前方に至るほど下方へ向かう傾斜部41aを前端部分に備えており、傾斜部41aは箱状部10の内側へ入り込むように配置されている。
【0022】
また、前記上壁部41は、縦方向に貫通する開口部41bを形成している。開口部41bは直径1.5mmの円形の貫通孔であり、上壁部41の略全面に亘るように多数設けている。尚、
図4においては、開口部41bを一部だけ図示して、図面を簡略化している。
【0023】
図1に示すように、前記前壁部2には前後方向へ貫通する開口部21を形成している。開口部21は一辺の大きさが25mmの正方形状に形成しており、開口部21が前壁部2の略全面に亘るように多数配置して設けている。
【0024】
図3に示すように、前記後壁部3には前後方向に貫通する開口部31を形成している。開口部31は直径1.5mmの円形の貫通孔であり、後壁部3の略全面に亘るように多数設けている。尚、
図3においては、開口部31を一部だけ図示して、図面を簡略化している。
【0025】
図2に示すように、前記各側壁部43には、貫通孔状の開口部43aを形成している。開口部43aは直径1.5mmの円形の貫通孔であり、各側壁部43及び前記底壁部42の略全面に亘るように多数設けている。尚、
図2においては、開口部43aを一部だけ図示して、図面を簡略化している。
【0026】
箱状部10の内側には、板状の内壁部5を設けている。内壁部5は、後方に向かって上り勾配の傾斜状に設けた傾斜部51と、この傾斜部51の上端から後方へ向けて延設された延設部52とを備えており、前記傾斜部51の下端を底壁部42の前端近傍へヒンジH2を介して取り付けている。即ち、前記内壁部5は、前記底壁部42の上面から斜め後方へ向けて起立するように設けている。
【0027】
前記内壁部5の傾斜部51と延設部52には、貫通孔状の開口部53をその板面の略前面に亘るように多数設けており、各開口部53は直径2mmの円形の貫通孔に形成している。即ち、前記内壁部5の各開口部53は、その開口部分の大きさを、後壁部3の前記開口部31よりも大きく形成し、前壁部2の前記開口部21よりも小さく形成している。また、前記内壁部5の各開口部53は、その開口部分の大きさを、上壁部41の前記開口部41bや、各側壁部43の前記開口部43aよりも大きく形成している。
【0028】
尚、
図4においては、開口部53を一部だけ図示して、図面を簡略化している。また、
図1においては、内壁部5の図示を省略して、図面を簡略化している。
【0029】
図1~4に示す前記溝用異物捕集器1は、雨水などの流体が流れる溝内に設置し、流体中に含まれるゴミなどの異物を除去するように設けている。
【0030】
具体的には、前記前壁部2と後壁部3を、それぞれ流体Wの流れの上流側と下流側へ向けて溝内に設置することで、
図2に示すように、上流側から流れる前記流体Wが前壁部2の前記開口部21を通じて箱状部10の内側へ入り、更に前記内壁部5の開口部53を通過して、後壁部3の開口部31や筒壁部4の各開口部41b、43aを通過して箱状部10の外側へ流体Wが流出するように設けている。このとき、開口部31を形成した前記後壁部3や、開口部21を形成した前記前壁部2は、流体W中から異物を分離するスクリーン部として機能する。即ち、前記後壁部3は開口部31の開口部分よりも大きな異物を流体Wから分離する第一スクリーン部として機能し、前記前壁部2は開口部21の開口部分よりも大きな異物を流体Wから分離する第二スクリーン部として機能する。また、前記内壁部5の後方において、各開口部41b、43aを設けた前記筒壁部4も後壁部3と同様に第一スクリーン部として機能する。
【0031】
以上により、前記溝用異物捕集器1は、前記開口部21よりも小さく、前記開口部31や前記各開口部41b、43aよりも大きな異物を流体Wから分離して、箱状部10の内側に残留させる。
【0032】
開口部53を形成した前記内壁部5は、前記第一スクリーン部や第二スクリーン部と同様に、流体Wから異物を分離する第三スクリーン部として機能する。具体的には、前記内壁部5は、前記開口部53よりも大きな異物を流体Wから分離して、内壁部5の前方側に残留させる。このように内壁部5を設けて異物を分離させることで、これらの異物による後壁部3や、筒壁部4の前記各開口部の目詰まりを抑制し、前記第一スクリーン部における異物を分離する性能が維持されるように設けている。
【0033】
前記内壁部5は、その高さ寸法を筒壁部4のそれよりも低く形成しており、その上端部分に配置される前記延設部52が前記上壁部41と底壁部42との中間くらいの位置に配置させている。内壁部5をこのように設けることで、設置させた溝用異物捕集器1を通過する流体Wの流量が増加して内壁部5の上端よりも上方に至る場合に、流体Wの一部W1が内壁部5の上方を越えてその後方へ流れ込むようになされる。これによって、流体が接触することによって内壁部5が受ける流体Wの抵抗が低減される。また、流体Wの液面が内壁部5の上端よりも下方に位置する場合でも、流体Wの流速が大きいときには、流体Wの一部が内壁部5の傾斜部51に沿って上方へ流れ、内壁部5の上方を越えてその後方へ流れ込むようになされるので、内壁部5が受ける流体の抵抗が低減される。
【0034】
前記溝用異物捕集器1は、前記ヒンジH1を軸として上壁部41を回転させることができる。また、前記ヒンジH2を軸として内壁部5を回転させることができる。
図5は
図2の上壁部41と内壁部5を回転させた状態を示す左側面図である。このように上壁部41と内壁部5を移動させることで、流体から分離させた筒壁部4の内側に残留する異物を取り除く作業を容易に実施できる。
【0035】
図6は
図1の溝用異物捕集器1へ取り付ける閉塞部材Cの一例を示す正面図であり、
図7は
図6の閉塞部材Cを
図1の溝用異物捕集器1へ取り付けた状態を示す正面図である。
図6に示す閉塞部材Cは、外形を略J字形状に設けた平板状部材であり、横長円形状の貫通孔c1を縦方向に間隔をあけて2個1組で形成している。
【0036】
閉塞部材Cは、前記各貫通孔c1へ挿通させたねじB1の雄ねじ部分を、前記前壁部2へ設けた雌ねじ孔Fへ螺結させて、前壁部2へ取り付けるように設けている。
【0037】
図7に示すように、溝用異物捕集器1へ取り付けた閉塞部材Cは、その外縁が前記側壁部43の外面よりも幅方向外側へ突出するように配置される。前記閉塞部材Cは、溝用異物捕集器1を溝内へ設置させたときに、溝の内側面と側壁部43の外面との間の隙間を流れる流体の流通を阻害することで、流体が溝用異物捕集器1の内側へ流れ込むように促す。
【0038】
図8は
図7の溝用異物捕集器1を溝G内へ設置させた状況を示す正面図であり、
図9は
図8の側面の概要を示す図である。
【0039】
図9において、前記溝Gは、図中右方向から左方向へ流体が流れるように設けられている。
図8、9に示す溝Gは、断面略U字形状のコンクリート製の長尺体で形成した所謂U字溝である。溝Gの上部には、幅方向外側へ窪むように形成した段部g2を形成しており、この段部g2の上面に蓋体Lを載置させて、溝Gの上部の開口部分を塞いでいる。
【0040】
図8、9に示す溝用異物捕集器1は、溝Gの底面g1の上面に載置して設置している。
図8に示すように、溝G内に溝用異物捕集器1を設置した状態において、前壁部2へ取り付けて幅方向外方へ突出する前記閉塞部材Cの外縁が、溝Gの内側面の近傍に配置される。閉塞部材Cを備えることにより、溝G内を流れる流体が側壁部43の外側側方を流れにくくなされ、前壁部2の開口部21を通じて箱状部10の内側へより多く流れ込むようになされる。
【0041】
また、前記溝用異物捕集器1は、上壁部41の上方へ突出する取っ手Tを前壁部2に取り付けて設けることで、溝Gへの設置や取り外しを容易に行うことができる。
【0042】
図8、9に示す溝用異物捕集器1は、後壁部3へ取り付けた取付部材8によって、溝G内での移動を規制している。前記取付部材8は、上方に配置した溝係合部85と下方に配置した捕集器接続部81を備え、別体に形成した両部材を蝶ねじからなるねじB2で連結している。前記捕集器接続部81は、その下部を後壁部3へ当接させて溝用異物捕集器1へ取り付けている。前記溝係合部85は、略T字形状に形成しており、その上部を、幅方向に間隔をあけて配置される溝Gの各段部g2の上に掛け渡すようにして、溝Gへ係合させて取り付けている。また、溝係合部85は、溝Gへ取り付けた前記各蓋体Lの間に配置させており、溝Gの長手方向への移動が規制されるように取り付けている。
【0043】
上記のように取付部材8を設けることで、溝G内へ設置させた溝用異物捕集器1の溝G内での移動が規制されるので、溝G内を流れる流体に溝用異物捕集器1が押し流されるような状況を防止できる。
【0044】
また、前記ねじB2を螺脱させ、前記捕集器接続部81を溝係合部85から分離させることで、設置した溝用異物捕集器1を溝G内から容易に取り外すことができる。
【0045】
図8、9に示す溝用異物捕集器1は、溝G内に収納した状態において、前記上壁部41で構成される上面と溝Gの上部との間に隙間が生じるように形成している。具体的には、前記上壁部41が溝Gの前記底面g1と前記段部g2とのおおよそ中間の位置くらいに配置されるように設けている。このように溝用異物捕集器1を設けることで、溝G内を流れる雨水などの流体の流量が増加して水位が上昇したときに、流体が上壁部41を越えて溝用異物捕集器1の上方を流れていくようになされるので、溝用異物捕集器1が流れを堰き止めて流体が溝Gからあふれ出るような状況が生じにくくなされる。
【0046】
また、前記溝用異物捕集器1は、溝G内を流れる流体の流量や流速が増加したとき、流体の一部が内壁部5の傾斜部51に沿って上方へ流れ、内壁部5の上方を越えてその後方へ流れ込むように設けているが、更に流体の流量や流速が増加したときに、傾斜部51の前方で上方へ流れる流体の一部が開口Sを通過して上壁部41の上方を流れるように設けている。このように流体が開口Sを通過することで、溝用異物捕集器1が流体から受ける抵抗を低減することができる。また、前記上壁部41の前方の端部に傾斜部41aを設けることで、開口Sを通過して上壁部41の上方へ至る流体の流れを促すことができる。
【0047】
前記溝用異物捕集器1は、雨水などが流れる側溝などの溝内に設置してゴミなどの異物を捕集するように設けており、一例として人工芝生の敷設場所の近傍に設けた側溝に設置して好適に利用できる。
【0048】
一般的な人工芝生は、シート状の基布に芝葉を模したパイル糸を植設する構成のものが多く、テニスやサッカーなどのスポーツを行う競技場などの用途として人工芝生を屋外に敷設する場合には、合成樹脂やゴムなどからなる弾性粒や珪砂などの硬質粒などの粒体を前記パイル糸間に一定の厚みで充填する構造がよく利用される。このような人工芝生の敷設場所へ雨が降ると、前記パイル糸が千切れた破片や前記粒体が流れ出る雨水に含まれて外部へ流出する。このように雨水に含まれて流れ出るパイル糸の破片や粒体は、外部環境へ排出された後に所謂マイクロプラスチックを生じる要因となる虞があった。
【0049】
そこで、人工芝生の敷設場所の近傍に設けた側溝内に前記溝用異物捕集器1を設置することで、枯れ葉などの比較的外形が大きな異物は前記前壁部2で雨水などの流体から分離し、合成樹脂やゴムなどからなる前記弾性粒やパイル糸の破片などは前壁部の開口部21を通過させた後に前記内壁部5や後壁部3や筒壁部4で流体から分離させて箱状部10内へ残留させることができる。
【0050】
【0051】
図10~
図13に示す溝用異物捕集器1は、
図1~4に示す前記溝用異物捕集器1と同様に、内側が中空の略矩形箱形に形成しており、後面を構成する後壁部3と、この後壁部3の端部に接続して前方側に演延出する略矩形筒状の筒壁部4を備える箱状部10と、前方に開口する箱状部10の開口部分に前面を構成する前壁部2を配置して設けている。
【0052】
前壁部2は、内側に大きな開口22を備える略Cの字型の平板形状に形成しており、この開口22を通じて上流側から流れる流体が箱状部10の内側へ入るように設けている。
【0053】
尚、
図10においては、後述する内壁部6や内壁部7の図示を省略して、図面を簡略化している。
【0054】
前記筒壁部4は、溝用異物捕集器1の下面を構成する底壁部42と、幅方向両側の側面をそれぞれ構成する各側壁部43とを、1個の平板部材を略U字形状に曲げ加工して形成している。この略U字形状の上方の開口部分を塞ぐように矩形板状の上壁部41を配置して取り付けることで、前記筒壁部4を略矩形筒状に形成している。
【0055】
前記後壁部3は、
図1~4に示す前記溝用異物捕集器1と同様に、丸孔形状の開口部31を略全面に亘るように多数形成しており、前記各開口部31は直径1mmの円形貫通孔に形成している。前記後壁部3は、開口部31の開口部分よりも大きな異物を流体から分離する第一スクリーン部として機能する。
【0056】
また、筒壁部4の前記底壁部42及び各側壁部43は、
図1~4に示す前記溝用異物捕集器1と同様に、1個の平板部材を略U字形状に曲げ加工して形成しており、丸孔形状の開口部43aを各側壁部43及び前記底壁部42の略全面に亘るように多数設けている。前記開口部43aは、後壁部3に設けた前記開口部31と同じ形状である、直径1mmの円形貫通孔に形成している。
【0057】
前記上壁部41は、前記底壁部42や各側壁部43と別体に設けた略矩形板状に形成しており、その前後方向の大きさを前記底壁部42や各側壁部43より小さく設けている。前記各側壁部43の上端には幅方向へ折れ曲がり内側へ突出する縁部43bをそれぞれ形成しており、前記上壁部41は、上方から貫通させたねじB3の雄ねじ部分を、前記縁部43bへ螺結させて取り付けている。即ち、前記ねじB3を縁部43bから螺脱させることで、上壁部41を溝用異物捕集器1から取り外すことができる。
【0058】
図14は
図11の溝用異物捕集器1から上壁部41を取り外した状態を示す図である。
【0059】
図14に示すように上壁部41を取り外すことで、箱状部10の内側に残留する異物を容易に取り出すことができるようになされる。
【0060】
図11や
図13に示すように、前記上壁部41はその後端が前記後壁部3の近傍に位置するように配置しており、前記上壁部41の前方に箱状部10の内側と外側とが連通する矩形の開口Sを形成している。
【0061】
前記上壁部41は、前方に至るほど上方へ向かう傾斜部41aを前端部分に備えており、傾斜部41aは箱状部10から外側上方へ突出するように配置されている。
【0062】
また、前記上壁部41には、縦方向に貫通する開口部41bを形成している。開口部41bは前記開口部43aと同一の大きさと形状であり、上壁部41の略全面に亘るように多数設けている。尚、
図13においては、開口部41bを一部だけ図示して、図面を簡略化している。
【0063】
箱状部10の内側には、板状の内壁部6を配置して設けている。内壁部6は、前記前壁部2の後方に間隔をあけて配置しており、上壁部41の前記傾斜部41aの下方に位置させている。
【0064】
【0065】
内壁部6はその外形を前記筒壁部4の内側形状に対応する外形に形成しており、底壁部42から縦方向上方へ垂直に立設させている。具体的には、内壁部6は、下側や幅方向側の端部を底壁部42や各側壁部43の内側面へ当接させ、その上端を前記各側壁部43の上端付近に配置させている。
【0066】
図15に示すように、前記内壁部6には前後方向へ貫通する矩形孔状の開口部61を8個形成している。最大の大きさを縦40mm、横40mmに設けた開口部61を略全面に亘るように配置して形成した内壁部6は、各開口部61の開口部分よりも大きな異物を流体から分離する第二スクリーン部として機能する。
【0067】
箱状部10の内側には、板状の内壁部7を配置して設けている。内壁部7は、前記内壁部6の後方に間隔をあけて配置し、底壁部42から縦方向上方へ垂直に立設させている。
【0068】
【0069】
内壁部7はその外形を前記筒壁部4の内側形状に対応する外形に形成しており、下側や幅方向側の端部を底壁部42や各側壁部43の内側面へ当接させている。また内壁部7は縦方向の大きさを筒壁部4よりも小さく形成しており、具体的には筒壁部4の上下の大きさの3分の2程度に形成している。
【0070】
図16に示すように、前記内壁部7には前後方向へ貫通する開口部71を略全面に亘り多数形成している。各開口部71はそれぞれ直径7mmの円形孔状に形成しており、その開口部分の大きさを前記後壁部3の前記開口部31よりも大きく形成し、前記内壁部6の前記開口部61よりも小さく形成している。また、前記内壁部7の各開口部71は、その開口部分の大きさを、上壁部41の前記開口部41bや、各側壁部43や底壁部42の前記開口部43aよりも大きく形成している。
【0071】
開口部71を略全面に亘り形成した内壁部7は、各開口部71の開口部分よりも大きな異物を流体から分離する第三スクリーン部として機能する。
【0072】
尚、前記内壁部7の後方において、各開口部41b、43aを設けた前記筒壁部4も後壁部3と同様に第一スクリーン部として機能する。
【0073】
図10~13に示す溝用異物捕集器1は、
図1~4に示す前記溝用異物捕集器1と同様に、雨水などの流体が流れる溝内に設置し、上流側から下流側へ間隔をあけて配置した前記第二スクリーン部、第三スクリーン部、及び第一スクリーン部で流体中の異物をそれぞれ分離させるように設けている。
【0074】
上流側に配置させた第二スクリーン部である内壁部6から、第三スクリーン部である内壁部7、第一スクリーン部である後壁部3へ至るほど、形成した開口部の大きさが小さくなるように設けることで、上流側に配置したスクリーン部でより大きな異物を分離させ、下流側のスクリーン部の開口部の目詰りを抑制して、流体から異物を分離する性能が維持されるように設けている。
【0075】
第二スクリーン部となされる前記内壁部6で流体から分離された異物は、箱状部10の内側において内壁部6の前方側の底壁部42上に残留する。この異物が残留する内壁部6の前側上方には、前記開口Sが配置されているので、溝用異物捕集器1から上壁部41を取り外すことなく残留した異物を開口Sから容易に取り除くことができる。
【0076】
前記箱状部10は、上壁部41の傾斜部41aを外側上方へ突出するように設けることで、溝内を流れる流体の液面が筒状部分の上面を越えるほど流量が増加した場合でも、前記傾斜部41aに形成した開口部41bで異物を分離させることができる。傾斜部41aで分離された異物は液面が低下した後に下方の底壁部42上に残留するので、前記開口Sなどから除去できる。
【0077】
第三スクリーン部となされる前記内壁部7は、縦方向の大きさを筒壁部4よりも小さく形成することで、内壁部7の上端と上壁部41との間に隙間を設けている。内壁部7をこのように設けることで、設置させた溝用異物捕集器1を通過する流体の流量が増加して内壁部7の上端よりも上方に至る場合に、流体の一部が内壁部7の上方を越えてその後方へ流れ込むようになされる。即ち、流体の流量の増加に伴う流体と内壁部7との接触面積の増加が抑制されるので、内壁部7が受ける流体の抵抗が小さくなる。
【0078】
第三スクリーン部となされる前記内壁部7や、第一スクリーン部となされる前記後壁部3で流体から分離された異物は、それぞれ前方側の底壁部42上に残留する。このように筒壁部4の内側に残留する異物は、
図14に示すように溝用異物捕集器1から上壁部41を取り外すことで、筒壁部4の内側から容易に除去できる。
【0079】
図10に示すように、前記前壁部2には雌ねじ孔Fを設けている。この雌ねじFは、
図1に示す前壁部2の前記雌ねじ孔Fと同様に、対応する位置に貫通孔c1を形成した閉塞部材Cを取り付けるためのものである。
【0080】
図17は
図10の溝用異物捕集器1へ閉塞部材Cを取り付けた状態を示す正面図である。
【0081】
図17に示す閉塞部材Cは、その外形と、貫通孔c1の配置とが若干異なること以外は、
図6に示す前記閉塞部材Cと同様である。
【0082】
閉塞部材Cを前壁部2へ取り付けることで、溝用異物捕集器1を溝G内へ設置させたときに、溝Gの内側面と側壁部43の外面との間の隙間へ流れ込む流体の流通を阻害し、前壁部2の開口部21から溝用異物捕集器1の内側へ流体が流れ込むように促すことができる。
【0083】
【0084】
図18、19に示す溝Gは、その上部に段部g2を備えていないこと以外は、
図8、9に示す前記溝Gと同様のU字溝であり、上部の開口部分を塞ぐ蓋体Lを溝Gの上端面に載置させて設置している。
【0085】
図18、19に示す溝用異物捕集器1は、
図8、9に示す前記溝用異物捕集器1と同様に、溝Gの底面g1の上面に載置して設置している。
【0086】
図18に示すように、流体が流れる溝G内側の空間部分において、筒壁部4の上面を構成する上壁部41から延出して突出する傾斜部41aが、筒壁部4の上方の空間部分を塞ぐように配置される。このように設けた傾斜部41aにより、液面が筒壁部4の上面部分を越えるほど流体の流量が増加した場合でも、筒壁部4の内側へ入り込まずに上方を流れる流体から異物を分離させることができる。
【0087】
図18、19に示す溝用異物捕集器1は、溝G内での移動を規制する部材を直接取り付けておらず、蓋体Lへ取り付けて後方へ間隔をあけて配置させた規制部材9によってその移動を規制している。前記規制部材9は、その上端を蓋体Lへ接続し、下方へ突出するように設けた棒状部材であり、その下端を後壁部3に対応する位置に配置させている。
【0088】
上記のように規制部材9を設けることで、溝G内を流れる流体の流量が増加し溝用異物捕集器1が下流側へ流されるようにして移動したときに、後壁部3が当接して規制部材9の位置を越える後方への移動を規制する。
【0089】
尚、本発明に係る溝用異物捕集器1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0090】
例えば、前記各溝用異物捕集器1の筒壁部4の筒壁には、第一スクリーン部となされる後壁部3の開口部31と同一形状の開口部41bや開口部43aを形成しているが、これに限るものではなく、開口部31と異なる形状に形成してもよい。この場合、筒壁部4に形成する各開口部は、第一スクリーン部に形成する開口部よりも小さな大きさに形成することで、第一スクリーン部で分離可能な異物がこれらの開口部を通じて外側へ流出することを防止できるので、好ましい。
【0091】
また、前記開口部41bや開口部43aは、筒壁部4の略全面に形成しているが、これに限るものではなく、筒壁部4の一部にのみ形成してもよく、筒壁部4に開口部を形成しなくてもよい。
【0092】
また、第一スクリーン部として機能する後壁部3の開口部31や、その上流側に配置した第二スクリーン部や第三スクリーン部にそれぞれ設けた開口部は、上記実施形態の構成に限るものではなく、上流側に配置するスクリーン部に形成する開口部の大きさを下流側より大きく形成すれば、その形状や大きさを変更してもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 溝用異物捕集器
10 箱状部
2 前壁部
21 開口部
3 後壁部
31 開口部
4 筒壁部
41 上壁部
41a 傾斜部
42 底壁部
43 側壁部
5 内壁部
51 傾斜部
52 延設部
53 開口部
6 内壁部
61 開口部
7 内壁部
71 開口部
8 取付部材
81 捕集器接続部
85 溝係合部
9 規制部材
C 閉塞部材
c1 貫通孔
G 溝
g1 底面
g2 段部
H1 ヒンジ
H2 ヒンジ
S 開口
T 取っ手