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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152771
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20221004BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055672
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】樫野 竜太
(72)【発明者】
【氏名】松本 直也
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JA03
3B084JA06
3B084JC11
3B087AA02
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】乗物用シートの外観意匠性を損なわずに、乗物用シートに着座する乗員の身体の治療を行うことができるようにする。
【解決手段】乗物用シート110が、乗員Pが着座するシート本体と、治療用のマイクロ波を発生させるマイクロ波治療器150と、を備えており、マイクロ波治療器150は、マイクロ波発生部151と、マイクロ波発生部151によって発生されたマイクロ波を出力するマイクロ波出力部153と、を有しており、マイクロ波出力部153は、シート本体の内部において、乗員Pの上半身に対応する位置と下半身に対応する位置のうち少なくとも一方に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシート本体と、
治療用のマイクロ波を発生させるマイクロ波治療器と、を備えており、
前記マイクロ波治療器は、
マイクロ波発生部と、
前記マイクロ波発生部によって発生されたマイクロ波を出力するマイクロ波出力部と、を有しており、
前記マイクロ波出力部は、前記シート本体の内部において、乗員の上半身に対応する位置と下半身に対応する位置のうち少なくとも一方に設けられていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記マイクロ波出力部は、前記シート本体に対し、前記シート本体を構成する部材のうちマイクロ波の通過を妨害する部材を避けた位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記マイクロ波出力部は、指向性を有するアンテナであることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記シート本体は、
乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッションと、
乗員の背中を支持するシートバックと、を有しており、
前記マイクロ波出力部は、前記シートクッションと前記シートバックのうち少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記マイクロ波出力部は、前記シート本体の可動部を避けた位置に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記シート本体は、
骨格を構成するシートフレームと、
前記シートフレームによって支持されるパッドと、
前記シートフレーム及び前記パッドを被覆するシートカバーと、を含んで構成されており、
前記マイクロ波出力部は、前記シートカバーの内側に配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記マイクロ波出力部は、前記パッドに形成された凹部に収納されていることを特徴とする請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記シートフレームは、前記シートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームを備えており、
前記シートクッションフレームは、
左右一対のクッションサイドフレームと、
前記左右一対のクッションサイドフレームにおける前端部を連結するプレート状のパンフレームと、を有しており、
前記マイクロ波出力部は、前記パンフレームの上面に設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記シートフレームは、前記シートバックの骨格を構成するシートバックフレームを備えており、
前記シートバックフレームは、
左右一対のバックサイドフレームと、
前記左右一対のバックサイドフレームにおける上端部を連結するアッパーフレームと、を有しており、
前記マイクロ波出力部は、前記アッパーフレームの前面に設けられていることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記シートフレームは、前記シートバックの骨格を構成するシートバックフレームを備えており、
前記シートバックフレームは、
左右一対のバックサイドフレームと、
前記左右一対のバックサイドフレーム間に配置されて、乗員の腰や背中の荷重を受けるランバーサポートと、を有しており、
前記マイクロ波出力部は、前記ランバーサポートの前面に設けられていることを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を運転する乗員の健康状態が悪化した場合、車両の運転に悪影響を及ぼすおそれがあるため、乗物用シートのシートクッションやシートバックに血流センサーを設け、その計測結果に基づいて、血流や血圧等の生体情報を検出して乗員の健康状態を把握する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-168177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術においては、乗員の生体情報を検出して健康状態を把握することはできても、乗員の治療を行うことはできない。そのため、乗物用シートに着座した状態で乗員を治療できる技術の開発が求められている。
また、例えば従来公知のマイクロ波治療器は、本体装置から伸びるアームの先端に比較的大きなアンテナを取り付けた状態となっており、このようなアームを乗物用シートに搭載するには見映えに難がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、乗物用シートの外観意匠性を損なわずに、乗物用シートに着座する乗員の身体の治療を行うことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、乗物用シートであり、
乗員が着座するシート本体と、
治療用のマイクロ波を発生させるマイクロ波治療器と、を備えており、
前記マイクロ波治療器は、
マイクロ波発生部と、
前記マイクロ波発生部によって発生されたマイクロ波を出力するマイクロ波出力部と、を有しており、
前記マイクロ波出力部は、前記シート本体の内部において、乗員の上半身に対応する位置と下半身に対応する位置のうち少なくとも一方に設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乗物用シートにおいて、
前記マイクロ波出力部は、前記シート本体に対し、前記シート本体を構成する部材のうちマイクロ波の通過を妨害する部材を避けた位置に配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の乗物用シートにおいて、
前記マイクロ波出力部は、指向性を有するアンテナであることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記シート本体は、
乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッションと、
乗員の背中を支持するシートバックと、を有しており、
前記マイクロ波出力部は、前記シートクッションと前記シートバックのうち少なくとも一方に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の乗物用シートにおいて、
前記マイクロ波出力部は、前記シート本体の可動部を避けた位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の乗物用シートにおいて、
前記シート本体は、
骨格を構成するシートフレームと、
前記シートフレームによって支持されるパッドと、
前記シートフレーム及び前記パッドを被覆するシートカバーと、を含んで構成されており、
前記マイクロ波出力部は、前記シートカバーの内側に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の乗物用シートにおいて、
前記マイクロ波出力部は、前記パッドに形成された凹部に収納されていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載の乗物用シートにおいて、
前記シートフレームは、前記シートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームを備えており、
前記シートクッションフレームは、
左右一対のクッションサイドフレームと、
前記左右一対のクッションサイドフレームにおける前端部を連結するプレート状のパンフレームと、を有しており、
前記マイクロ波出力部は、前記パンフレームの上面に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項6から8のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記シートフレームは、前記シートバックの骨格を構成するシートバックフレームを備えており、
前記シートバックフレームは、
左右一対のバックサイドフレームと、
前記左右一対のバックサイドフレームにおける上端部を連結するアッパーフレームと、を有しており、
前記マイクロ波出力部は、前記アッパーフレームの前面に設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項6から9のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記シートフレームは、前記シートバックの骨格を構成するシートバックフレームを備えており、
前記シートバックフレームは、
左右一対のバックサイドフレームと、
前記左右一対のバックサイドフレーム間に配置されて、乗員の腰や背中の荷重を受けるランバーサポートと、を有しており、
前記マイクロ波出力部は、前記ランバーサポートの前面に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、治療用のマイクロ波を発生させるマイクロ波治療器のうち、マイクロ波発生部によって発生されたマイクロ波を出力するマイクロ波出力部が、シート本体において、乗員の上半身に対応する位置と下半身に対応する位置のうち少なくとも一方に設けられているので、乗員の上半身と下半身のうち少なくとも一方に対し、治療を目的としてマイクロ波を照射することができる。また、マイクロ波出力部は、シート本体の内部に設けられているので、乗物用シートの外観意匠性を損なわない。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、マイクロ波出力部は、シート本体に対し、シート本体を構成する部材のうちマイクロ波の通過を妨害する部材を避けた位置に配置されているので、乗員に向かうマイクロ波の照射が妨害されにくい。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、マイクロ波出力部は、指向性を有するアンテナであるため、マイクロ波を照射する場合に、乗員の身体の部位をピンポイントで狙えるようになる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、マイクロ波出力部は、シートクッションとシートバックのうち少なくとも一方に設けられているので、乗員の上半身と下半身のうち少なくとも一方に対し、治療を目的としてマイクロ波を照射することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、マイクロ波出力部は、シート本体の可動部を避けた位置に配置されているので、可動部が動作することによるマイクロ波出力部の性能の変動を抑制できる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、マイクロ波出力部は、シートカバーの内側に配置されているので、マイクロ波出力部が外部に露出せず、乗物用シートの外観意匠性を損なわない。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、マイクロ波出力部は、パッドに形成された凹部に収納されているので、マイクロ波出力部は、パッドに内包されるような状態となり、マイクロ波出力部によって、乗物用シートに着座する乗員の快適性が損なわれにくい。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、マイクロ波出力部は、左右一対のクッションサイドフレームにおける前端部を連結するプレート状のパンフレームの上面に設けられているので、マイクロ波出力部は、乗員の身体のうち膝(膝裏)を狙ってマイクロ波を照射することができる。つまり、乗員の下半身に対し、治療を目的としてマイクロ波を照射することができる。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、マイクロ波出力部は、左右一対のバックサイドフレームにおける上端部を連結するアッパーフレームの前面に設けられているので、乗員の身体のうち肩や脇を狙ってマイクロ波を照射することができる。つまり、乗員の上半身に対し、治療を目的としてマイクロ波を照射することができる。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、マイクロ波出力部は、左右一対のバックサイドフレーム間に配置されて、乗員の腰や背中の荷重を受けるランバーサポートの前面に設けられているので、乗員の身体のうち腰や背中を狙ってマイクロ波を照射することができる。つまり、乗員の上半身に対し、治療を目的としてマイクロ波を照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】マイクロ波治療器を搭載した乗物用シートの概要を説明する側面図である。
図2】人体における主要なマイクロ波治療対象部位を説明する図である。
図3】シートフレームに対するマイクロ波出力部の取付位置を示す斜視図である。
図4】マイクロ波出力部の取り付けに係る変形例を示す平面図である。
図5】マイクロ波出力部の取り付けに係る変形例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0028】
また、以下に説明する乗物用シートは、船舶、飛行機、スノーモービル、水上バイク等の乗物用シートを含むが、主に車両用シートを指すものとし、車両は、跨座式又は非跨座式の自動二輪車や自動車(乗用車)だけでなく、自転車、原動機付自転車、建設車両、軍用車両、産業車両、鉄道車両、その他にも耕運機やトラクター等の農業用の車両等が挙げられる。そして、乗物用シートには乗員Pが着座する。
本実施形態においては、自動車における乗物用シート110を例に挙げて説明する。
【0029】
乗物用シート110は、シート本体として、人の大腿部及び臀部を支持するシートクッション111と、下端部がシートクッション111に支持され、かつ背凭れとなるシートバック112と、シートクッション111に対してシートバック112を傾動させるリクライニング機構113と、人の頭部を支持するヘッドレスト114と、を少なくとも備える。このようなシート本体は、自動車の車体1に固定される支持ベース116によって支持されている。
また、必要に応じて、人の腕部を支持するアームレストや、人の脚部を支持するオットマン等の補助支持部が設けられる。
なお、支持ベース116は、シート本体を少なくとも前後方向(及び左右方向)にスライド移動させるスライド機構と、シート本体の高さを調節する高さ調節機構と、を有する。
【0030】
乗物用シート110は、骨格を構成するシートフレーム120と、シートフレーム120に支持されたパッドが、表皮となるシートカバーで被覆されることによって構成されている。
シートカバーは、複数のカバー部材が縫合されて構成されている。また、シートカバーは、シートクッション111及びシートバック112におけるパッドの表面に密着した状態で装着させる必要があるため、パッドの表面には、シートカバーの縫合部を収納できる凹溝が形成されている。シートカバーの縫合部は裏側(シートクッション111の場合は下方、シートバック112の場合は後方)から引っ張られる状態で凹溝に収納される。なお、シートカバーの縫合部が裏側から引っ張られる状態を維持するために、シートフレーム120に係合するクリップ等が適宜用いられている。
このようにシートカバーの縫合部がパッドの凹溝に収納されて、シートクッション111及びシートバック112の表面に凹凸(凹み)が生じた部位を、以下、吊り込み部と称する。
【0031】
シートフレーム120及びパッドには、乗物用シート110に対して様々な機能を付与するために必要な電装品や制御機器等が設けられる。シートカバーは、これら電装品や制御機器等も被覆している。
【0032】
シートフレーム120は、図3に示すように、シートクッション111の骨格を構成するシートクッションフレーム121と、シートバック112の骨格を構成するシートバックフレーム122と、ヘッドレスト114の骨格を構成するヘッドレストフレーム(図示省略)と、を備える。
【0033】
シートクッションフレーム121上にはパッドが設けられ、これらシートクッションフレーム121及びパッドは、シートカバーによって被覆される。
【0034】
シートクッションフレーム121は、左右一対のクッションサイドフレーム121a,121bと、バックパイプフレーム121cと、パンフレーム121dと、受圧部材121eと、を有する。
【0035】
左右一対のクッションサイドフレーム121a,121bは、前後方向に長尺に形成されており、後端部において、リクライニング機構113を介してシートバックフレーム122と連結される。
【0036】
バックパイプフレーム121cはパイプ材である。バックパイプフレーム121cは、上方に湾曲した左右一対のクッションサイドフレーム121a,121bの後端部間に架け渡されて、左右一対のクッションサイドフレーム121a,121bの後端部を連結している。
【0037】
パンフレーム121dは、乗員Pの荷重を受ける金属製又は樹脂製の板材からなる受圧部材であって、各クッションサイドフレーム121a,121bの前端部を連結しており、通常のドライビングポジションで着座した場合に、乗員Pの大腿部の下方に位置している。
【0038】
受圧部材121eは、例えばSバネによって構成されており、後端部がバックパイプフレーム121cに引っ掛けられ、前端部がパンフレーム121dにおける後端部に引っ掛けられている。この受圧部材121eは、通常のドライビングポジションで着座した場合に、乗員Pの臀部の下方に位置している。
【0039】
シートバックフレーム122の前側にはパッドが設けられ、これらシートバックフレーム122及びパッドは、シートバック112の表面を構成するシートカバーによって被覆される。
【0040】
シートバックフレーム122は、左右一対のバックサイドフレーム122a,122bと、アッパーフレーム122cと、ロアフレーム122dと、受圧部材122eと、一対のホルダー122fと、ランバーサポート122gと、を有する。
【0041】
左右一対のバックサイドフレーム122a,122bは、上下方向に長尺に形成されており、下端部において、リクライニング機構113を介してシートクッションフレーム121と連結される。
【0042】
アッパーフレーム122cはパイプ材であり、コ字状に折曲形成されている。そして、左右の端部(下端部)が、左右一対のバックサイドフレーム122a,122bにおける上端部に対して溶接されて接合され、各バックサイドフレーム122a,122bにおける上端部を連結している。
なお、本実施形態におけるアッパーフレーム122cはパイプ材であるとしたが、金属板を板金加工することによって形成されたものであってもよい。
【0043】
ロアフレーム122dは、金属板を板金加工することによって形成されたものであり、左右の端部が、左右一対のバックサイドフレーム122a,122bにおける下端部の後部側に対して溶接されて接合され、各バックサイドフレーム122a,122bにおける下端部を連結している。
【0044】
受圧部材122eは、例えばSバネによって構成されており、左右の端部が、左右一対のバックサイドフレーム122a,122bの左右方向内側に取り付けられている。この受圧部材122eは、通常のドライビングポジションで着座した場合に、乗員Pの背中の後方に位置している。
【0045】
一対のホルダー122fは、ヘッドレスト114におけるピラーが差し込まれるヘッドレストガイドを保持する筒状体であり、アッパーフレーム122cの中央部において左右に離間して配置されている。
【0046】
ランバーサポート122gは、受圧部材122eの前面に設けられて、左右一対のバックサイドフレーム122a,122b間に配置された板状体であり、弾性的に変形し、乗員Pの腰や背中の荷重を受けて乗員Pの正しい着座姿勢をサポートする。
このランバーサポート122gは、通常のドライビングポジションで着座した場合に、乗員Pの背中(腰を含む)の後方に位置している。
【0047】
以上のように構成された乗物用シート110には、図1に示すように、電装品として、治療用のマイクロ波を発生させるマイクロ波治療器150が設けられている。より詳細には、乗員Pに向かってマイクロ波を照射するためのアプリケータが、シート本体に対して設けられている。
マイクロ波治療器150は、マイクロ波発生部151と、マイクロ波制御部152と、アプリケータを構成するマイクロ波出力部153と、を備える。
【0048】
なお、図2は、人体における主要なマイクロ波治療対象部位を説明する図である。人体を外部から加温する場合、加温効率に優れた部位がある。例えば皮膚表層は温度を感じやすい部位であり、人は局所的に温冷感を得ることができる。また、皮膚の内側には血管があり、血流によって熱を広範囲に運搬できるため、血管が太い部位や皮膚から血管までの距離が近い部位も加温効率に優れる。つまり、人体には、温度を感じやすく、かつ、熱を広範囲に運搬するのに適した部位が存在する。そのような部位としては、首や肩P2、腰P4、脇P3(脇の下P3)などが挙げられる。
また、首や肩P2、腰P4、膝P1などの関節は、治療を要する症状が起きる場合が多く、人体における主要なマイクロ波治療対象部位とされる。
【0049】
マイクロ波発生部151は、マイクロ波制御部152によって制御される条件で、マイクロ波を発生させるものである。マイクロ波の発生は、例えばマグネトロン等のような発振器や半導体発振器を用いる従来公知の技術によって行うことができる。すなわち、当該発振器は、電場に垂直な磁場をかけることによって発振し、マイクロ波を発生させることができる。
【0050】
マイクロ波制御部152は、マイクロ波発生部151に接続されて、マイクロ波発生部151によって発生されるマイクロ波を制御し、マイクロ波出力部153から出力されるマイクロ波の調整を行うことができる。すなわち、マイクロ波の周波数や強度、照射時間などを制御し、マイクロ波出力部153から出力されるマイクロ波の調整を行う。なお、このマイクロ波制御部152は、マイクロ波出力部153と乗員Pとの距離を考慮して、乗員Pの治療目的に応じた温度まで治療対象部位を昇温する条件で制御することができる。
【0051】
なお、マイクロ波制御部152は、自動車の制御装置を構成するECU(Electronic Control Unit)と連動していてもよい。その場合、例えば自動車用ナビゲーションシステムにマイクロ波の出力を調整するボタンを表示したり、インストルメントパネル(いわゆるインパネ)周りにマイクロ波の出力を調整するスイッチを設けたりして、マイクロ波の出力を手元で制御できるようにしてもよい。
また、マイクロ波治療器150、又はECUが通信部を備えることにより、乗員Pの所持するスマートフォンやタブレット端末等の携帯情報端末からマイクロ波の出力を制御できるようにしてもよい。
【0052】
マイクロ波出力部153は、マイクロ波発生部151又はマイクロ波制御部152に対して接続線で接続されて、マイクロ波発生部151によって発生されたマイクロ波を乗員Pに向かって出力(照射)するものである。
このマイクロ波出力部153は、指向性を有するアンテナであり、乗員Pの身体の部位をピンポイントで狙えるようになっている。すなわち、本実施形態におけるマイクロ波出力部153は、例えば電磁ホーン等のように、マイクロ波が出力される開口と、当該開口の周辺に位置してマイクロ波の出力方向を規定する規定部と、を備える。上記のアプリケータは、このようなマイクロ波出力部153が筐体の内部に設けられて構成されている。
【0053】
マイクロ波出力部153は、乗員Pに向かってマイクロ波を照射することから漏洩磁界対策として、なるべく乗員Pの身体に近い場所に、かつ、乗員Pの身体までの間隔が最短となるように配置されている。
【0054】
また、マイクロ波出力部153は、シート本体に対し、シート本体を構成する部材のうちマイクロ波の通過を妨害する部材を避けた位置に配置されている。
すなわち、金属製の部材や、極端に厚みのある物体が、マイクロ波出力部153と乗員との間に配置されていると、マイクロ波の照射が妨害される場合がある。そのため、マイクロ波出力部153は、そういった部材を避けて、マイクロ波の照射が妨害されにくい場所に配置されている。より具体的には、シートフレーム120の乗員側(シートクッションフレーム121の上面側、シートバックフレーム122の前面側)に配置されている。また、マイクロ波出力部153は、パッドに形成された凹部(図資料略)に収納されており、かつ、シートカバーの内側に配置されて被覆され、乗員からは見えないようになっている。マイクロ波出力部153は、パッドに内包されるような状態で設けられることになるので、マイクロ波出力部153によって、乗物用シート110に着座する乗員Pの快適性が損なわれにくい。
【0055】
より詳細に説明すると、マイクロ波出力部153は、左右一対のクッションサイドフレーム121a,121bにおける前端部を連結するプレート状のパンフレーム121dの上面に設けられている。
本実施形態においては、二つのマイクロ波出力部153が、乗員Pの大腿部に対応して、パンフレーム121dの上面における左右に配置されている。つまり、マイクロ波出力部153の筐体における下端部が、パンフレーム121dの上面に固定されている。
このようなマイクロ波出力部153は、乗員Pの身体のうち膝P1(膝裏)を狙ってマイクロ波を照射することができる。
なお、本実施形態においては、二つのマイクロ波出力部153が、乗員Pの大腿部に対応して、パンフレーム121dの上面における左右に配置されるものとしたが、図4に示すように、一つの面積の広いマイクロ波出力部153を、パンフレーム121dの上面における左右に亘って配置してもよい。
【0056】
また、マイクロ波出力部153は、左右一対のバックサイドフレーム122a,122bにおける上端部を連結するアッパーフレーム122cの前面に設けられている。
本実施形態においては、二つのマイクロ波出力部153が、アッパーフレーム122cの前面における左右に配置されている。
このようなマイクロ波出力部153は、乗員Pの身体のうち左右両方の肩P2及び脇P3を狙ってマイクロ波を照射することができる。
なお、本実施形態におけるアッパーフレーム122cは、上記のようにパイプ材によって構成されているため、図5に示すように、パイプ取付金具154によってアッパーフレーム122cに取り付けられている。
パイプ取付金具154は、アッパーフレーム122cを保持するU字型の保持部154aと、保持部154aの両端部に一体形成された固定部154bと、を有する。そして、両方の固定部154bが、マイクロ波出力部153の筐体に固定されている。
アッパーフレーム122cがパイプ材ではなく、板状に形成されたものである場合は、当該板状のアッパーフレームの前面に、マイクロ波出力部153の筐体が固定される。
【0057】
さらに、マイクロ波出力部153は、左右一対のバックサイドフレーム122a,122b間に配置されて、乗員の腰P4や背中の荷重を受けるランバーサポート122gの前面に設けられている。
本実施形態においては、一つのマイクロ波出力部153が、乗員Pの腰P4に対応して、ランバーサポート122gの前面における下端部中央に配置されている。
このようなマイクロ波出力部153は、乗員Pの身体のうち腰P4を狙ってマイクロ波を照射することができる。
なお、本実施形態においては、一つのマイクロ波出力部153が、乗員Pの腰P4に対応して、ランバーサポート122gの前面における下端部中央に配置されるものとしたが、ランバーサポート122g前面であれば、他の箇所に、かつ複数設けられるものとしてもよい。
【0058】
また、マイクロ波出力部153は、シートクッション111の両サイドにおける盛り上がり部分であるサイドボルスター111b(土手ともいう)の箇所や、シートバック112の両サイドにおける盛り上がり部分であるサイドボルスター112bの箇所に配置されてもよい。
【0059】
また、マイクロ波出力部153は、図1に示すように、シート本体の可動部を避けた位置に配置されている。本実施形態における可動部は、上記のリクライニング機構113を指している。その他にも、上記のアームレストやオットマンの可動機構部分も可動部に該当する。つまり、乗員Pの身体における様々な部位を支持し、その身体の各部位の位置を調整する機構(リクライニング機構、アームレストの回転機構、オットマンの位置調整機構)にマイクロ波出力部153を設けると、マイクロ波出力部153から乗員Pの身体までの距離が変動し、マイクロ波出力部153の性能も変動してしまう場合がある。そのため、マイクロ波出力部153は、シート本体の可動部を避けた位置に配置されている。
【0060】
マイクロ波出力部153から乗員Pに向かってマイクロ波を照射することにより、乗員Pの体内の水分子を振動させ、深部温熱効果をもたらす。これにより、皮膚表層の加温はもちろんのこと、温められた血流によって熱を広範囲に運搬でき、血行が良くなる効果を奏する。
【0061】
なお、本実施形態においては、シートクッション111とシートバック112の双方にマイクロ波出力部153が設けられるものとしたが、シートクッション111とシートバック112のいずれか一方に設けられるものとしてもよい。
【0062】
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、治療用のマイクロ波を発生させるマイクロ波治療器150のうち、マイクロ波発生部151によって発生されたマイクロ波を出力するマイクロ波出力部153が、シート本体において、乗員Pの上半身に対応する位置と下半身に対応する位置のうち少なくとも一方に設けられているので、乗員Pの上半身と下半身のうち少なくとも一方に対し、治療を目的としてマイクロ波を照射することができる。また、マイクロ波出力部153は、シート本体の内部に設けられているので、乗物用シート110の外観意匠性を損なわない。
【0063】
また、マイクロ波出力部153は、シート本体に対し、シート本体を構成する部材のうちマイクロ波の通過を妨害する部材を避けた位置に配置されているので、乗員Pに向かうマイクロ波の照射が妨害されにくい。
【0064】
また、マイクロ波出力部153は、指向性を有するアンテナであるため、マイクロ波を照射する場合に、乗員Pの身体の部位をピンポイントで狙えるようになる。
【0065】
また、マイクロ波出力部153は、シートクッション111とシートバック112のうち少なくとも一方に設けられているので、乗員Pの上半身と下半身のうち少なくとも一方に対し、治療を目的としてマイクロ波を照射することができる。
【0066】
また、マイクロ波出力部153は、シート本体の可動部を避けた位置に配置されているので、可動部が動作することによるマイクロ波出力部153の性能の変動を抑制できる。
【0067】
また、マイクロ波出力部153は、シートカバーの内側に配置されているので、マイクロ波出力部153が外部に露出せず、乗物用シート110の外観意匠性を損なわない。
【0068】
また、マイクロ波出力部153は、パッドに形成された凹部に収納されているので、マイクロ波出力部153は、パッドに内包されるような状態となり、マイクロ波出力部153によって、乗物用シート110に着座する乗員Pの快適性が損なわれにくい。
【0069】
また、マイクロ波出力部153は、左右一対のクッションサイドフレーム121a,121bにおける前端部を連結するプレート状のパンフレーム121dの上面に設けられているので、マイクロ波出力部153は、乗員Pの身体のうち膝P1(膝裏)を狙ってマイクロ波を照射することができる。つまり、乗員Pの下半身に対し、治療を目的としてマイクロ波を照射することができる。
【0070】
また、マイクロ波出力部153は、左右一対のバックサイドフレーム122a,122bにおける上端部を連結するアッパーフレーム122cの前面に設けられているので、乗員Pの身体のうち肩P2や脇P3を狙ってマイクロ波を照射することができる。つまり、乗員Pの上半身に対し、治療を目的としてマイクロ波を照射することができる。
【0071】
また、マイクロ波出力部153は、左右一対のバックサイドフレーム122a,122b間に配置されて、乗員Pの腰P4や背中の荷重を受けるランバーサポート122gの前面に設けられているので、乗員Pの身体のうち腰P4や背中を狙ってマイクロ波を照射することができる。つまり、乗員Pの上半身に対し、治療を目的としてマイクロ波を照射することができる。
【符号の説明】
【0072】
P 乗員
P1 膝
P2 肩
P3 脇
P4 腰
1 車体
110 乗物用シート
111 シートクッション
112 シートバック
113 リクライニング機構
120 シートフレーム
121 シートクッションフレーム
121a クッションサイドフレーム
121b クッションサイドフレーム
121d パンフレーム
122 シートバックフレーム
122a バックサイドフレーム
122b バックサイドフレーム
122c アッパーフレーム
122g ランバーサポート
150 マイクロ波治療器
151 マイクロ波発生部
152 マイクロ波制御部
153 マイクロ波出力部
図1
図2
図3
図4
図5