(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152783
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ガイドプーリユニット及びドア駆動装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/643 20150101AFI20221004BHJP
E05F 15/655 20150101ALI20221004BHJP
E05F 11/54 20060101ALI20221004BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
E05F15/643
E05F15/655
E05F11/54 A
B60J5/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055687
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中野 必士
(72)【発明者】
【氏名】柴山 智志
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA16
2E052EC01
(57)【要約】
【課題】ハウジング及びカバーの構成を簡素化できるガイドプーリユニットを提供する。
【解決手段】ガイドプーリユニット300は、第1ケーブル61及び第2ケーブル62が巻き掛けられる第1ガイドプーリ310及び第2ガイドプーリ320と、第1ガイドプーリ310及び第2ガイドプーリ320を回転可能に支持するハウジング340と、ハウジング340とともに第1ガイドプーリ310及び第2ガイドプーリ320を覆うカバー350と、第1ガイドプーリ310及び第2ガイドプーリ320の間であって、ハウジング340とカバー350との間に配置される経路形成部材360と、を備える。経路形成部材360は、第1ケーブル61の移動経路としてカバー350と対向する部分に設けられる第1ガイド溝361と、第2ケーブル62の移動経路としてハウジング340と対向する部分に設けられる第2ガイド溝362と、を有する。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールを有する車体と、前記レールに沿って移動するドアと、を備える車両に適用され、ドラムが一方向に回転するときに巻き取られる第1ケーブル及び前記ドラムが他方向に回転するときに巻き取られる第2ケーブルを前記レールの両端部に向けてそれぞれ案内するガイドプーリユニットであって、
前記ドラムから延びる前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルが巻き掛けられる第1ガイドプーリと、
前記第1ガイドプーリから延びる前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルが巻き掛けられる第2ガイドプーリと、
前記第1ガイドプーリ及び前記第2ガイドプーリを回転可能に支持するハウジングと、
前記ハウジングとともに前記第1ガイドプーリ及び前記第2ガイドプーリを覆うカバーと、
前記第1ガイドプーリ及び前記第2ガイドプーリの間であって、前記ハウジングと前記カバーとの間に配置される経路形成部材と、を備え、
前記経路形成部材は、前記第1ケーブルの移動経路として前記カバーと対向する部分に設けられる第1ガイド溝と、前記第2ケーブルの移動経路として前記ハウジングと対向する部分に設けられる第2ガイド溝と、を有する
ガイドプーリユニット。
【請求項2】
前記カバーは、前記第1ガイド溝を進む前記第1ケーブルを前記第1ガイドプーリに向けて案内する第1ガイド面と、前記第2ガイド溝を進む前記第2ケーブルを前記第1ガイドプーリに向けて案内する第2ガイド面と、の少なくとも一方を有する
請求項1に記載のガイドプーリユニット。
【請求項3】
前記経路形成部材は、前記カバーに向かって延びる複数の係合軸を有し、
前記カバーは、複数の前記係合軸がそれぞれ挿入される複数の係合孔を有する
請求項1又は請求項2に記載のガイドプーリユニット。
【請求項4】
前記第1ガイドプーリ及び前記第2ガイドプーリの回転軸線の延びる方向からの平面視において、
前記カバーにおいて、複数の前記係合孔のうち少なくとも1つの前記係合孔は、前記第1ガイドプーリの回転軸線及び前記第2ガイドプーリの回転軸線を結んだ線分と重なって位置している
請求項3に記載のガイドプーリユニット。
【請求項5】
締結部材が挿通されるカラーを備え、
前記経路形成部材は、前記第1ガイド溝及び前記第2ガイド溝からずれた位置に前記カラーを保持する保持孔を有する
請求項1~請求項4の何れか一項に記載のガイドプーリユニット。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか一項に記載のガイドプーリユニットと、
前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルと、
前記ドラムと、前記ドラムを回転可能に支持する支持パネルと、前記ドラムを駆動する駆動部と、を有するドラムユニットと、
前記ドラムから延びる前記第1ケーブルを前記第1ガイドプーリに向けて案内する第1中継プーリと、前記ドラムから延びる前記第2ケーブルを前記第1ガイドプーリに向けて案内する第2中継プーリと、前記第1中継プーリ及び前記第2中継プーリを回転可能に支持するベースプレートと、を有する中継プーリユニットと、を備える
ドア駆動装置。
【請求項7】
前記ドラムユニットは、前記第1中継プーリに向けて延びる前記第1ケーブルを保護する第1ケーブルガイドと、前記第2中継プーリに向けて延びる前記第2ケーブルを保護する第2ケーブルガイドと、を有し、
前記第1ケーブルガイドの第1端及び前記第2ケーブルガイドの第1端は、前記支持パネルに係合し、前記第1ケーブルガイドの第2端及び前記第2ケーブルガイドの第2端は、前記ベースプレートに係合する
請求項6に記載のドア駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドプーリユニット及びドア駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ドア開口部を有する車体と、ドア開口部を開閉するスライドドアと、スライドドアを駆動するドア駆動装置と、を備える車両が開示されている。車体は、スライドドアの移動方向を規定するアッパレール、センターレール及びロアレールを有する。スライドドアは、アッパレール、センターレール及びロアレールに沿って移動することにより、ドア開口部を開閉する。
【0003】
ドア駆動装置は、第1端がセンターレールの前端付近に固定される第1ケーブルと、第1端がセンターレールの後端付近に固定される第2ケーブルと、を有する。さらに、ドア駆動装置は、第1ケーブル及び第2ケーブルの一方を巻き取るとともに他方を繰り出すドラムユニットと、ドラムユニットから延びる第1ケーブル及び第2ケーブルをセンターレールの前端及び後端に案内するガイドプーリユニットと、を有する。
【0004】
ガイドプーリユニットは、ドラムユニットから延びる第1ケーブル及び第2ケーブルが巻き掛けられる2つのプーリと、回転軸線を離した状態で2つのプーリを収容する収容部材と、を有する。収容部材には、2つのプーリの間で第1ケーブルを案内する第1配索経路と、2つのプーリの間で第2ケーブルを案内する第2配索経路と、が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなガイドプーリユニットにおいて、収容部材は、第1配索経路及び第2配索経路が設けられる樹脂カバーと、樹脂カバーとともに2つのプーリを覆う金属ハウジングと、を含んで構成されている。つまり、上記のようなガイドプーリユニットは、樹脂カバーに第1配索経路及び第2配索経路を設ける点で、樹脂カバーの形状が複雑になりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するガイドプーリユニットは、レールを有する車体と、前記レールに沿って移動するドアと、を備える車両に適用され、ドラムが一方向に回転するときに巻き取られる第1ケーブル及び前記ドラムが他方向に回転するときに巻き取られる第2ケーブルを前記レールの両端部に向けてそれぞれ案内するガイドプーリユニットであって、前記ドラムから延びる前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルが巻き掛けられる第1ガイドプーリと、前記第1ガイドプーリから延びる第1ケーブル及び前記第2ケーブルが巻き掛けられる第2ガイドプーリと、前記第1ガイドプーリ及び前記第2ガイドプーリを回転可能に支持するハウジングと、前記ハウジングとともに前記第1ガイドプーリ及び前記第2ガイドプーリを覆うカバーと、前記第1ガイドプーリ及び前記第2ガイドプーリの間であって、前記ハウジングと前記カバーとの間に配置される経路形成部材と、を備え、前記経路形成部材は、前記第1ケーブルの移動経路として前記カバーと対向する部分に設けられる第1ガイド溝と、前記第2ケーブルの移動経路として前記ハウジングと対向する部分に設けられる第2ガイド溝と、を有する。
【0008】
上記構成のガイドプーリユニットにおいて、第1ガイド溝及び第2ガイド溝を有する経路形成部材は、ハウジングともカバーとも別体に構成される。このため、ガイドプーリユニットにおいて、ハウジング及びカバーの構成が簡素化される。さらに、経路形成部材において、第1ガイド溝はハウジングと対向する部分に設けられ、第2ガイド溝はカバーと対向する部分に設けられる。このため、例えば、カバーのハウジングと対向する部分に第1ガイド溝及び第2ガイド溝の双方を設ける比較例に比較して、第1ガイド溝及び第2ガイド溝を形成しやすくなる。
【0009】
上記ガイドプーリユニットにおいて、前記カバーは、前記第1ガイド溝を進む前記第1ケーブルを前記第1ガイドプーリに向けて案内する第1ガイド面と、前記第2ガイド溝を進む前記第2ケーブルを前記第1ガイドプーリに向けて案内する第2ガイド面と、の少なくとも一方を有することが好ましい。
【0010】
第1ガイド面を有するカバーを備えるガイドプーリユニットは、第1ケーブルが配索されるときに、次のような効果を得ることができる。すなわち、第1ガイド溝を進む第1ケーブルが、第1ガイド面によって、第1ガイドプーリに導かれやすくなる。このため、ガイドプーリユニットは、第1ケーブルの配索が容易となる。
【0011】
上記ガイドプーリユニットにおいて、前記経路形成部材は、前記カバーに向かって延びる複数の係合軸を有し、前記カバーは、複数の前記係合軸がそれぞれ挿入される複数の係合孔を有することが好ましい。
【0012】
上記構成のガイドプーリユニットは、経路形成部材の係合軸をカバーの係合孔に挿入させることにより、カバーに対して経路形成部材を位置決めできる。
前記第1ガイドプーリ及び前記第2ガイドプーリの回転軸線の延びる方向からの平面視において、複数の前記係合孔のうち少なくとも1つの前記係合孔は、前記第1ガイドプーリの回転軸線及び前記第2ガイドプーリの回転軸線を結んだ線分と重なって位置していることが好ましい。
【0013】
上記構成のガイドプーリユニットは、カバーに対して経路形成部材を位置決めした状態において、第1ガイドプーリ及び第2ガイドプーリと第1ガイド溝及び第2ガイド溝との相対的な位置関係がずれにくくなる。このため、ガイドプーリユニットは、第1ケーブル及び第2ケーブルの配索がより容易となる。
【0014】
上記ガイドプーリユニットは、締結部材が挿通されるカラーを備え、前記経路形成部材は、前記第1ガイド溝及び前記第2ガイド溝からずれた位置に前記カラーを保持する保持孔を有することが好ましい。
【0015】
例えば、カバーがカラーを保持する保持孔を有する比較例の場合、経路形成部材にカラーを通す挿通孔を設ける必要がある。これに対し、上記構成のガイドプーリユニットは、経路形成部材にカラーを保持する保持孔を有する。ここで、カラーの外径が一定であれば、上記構成の経路形成部材の保持孔の内径は、比較例の経路形成部材の挿通孔の内径よりも小さくなる。したがって、ガイドプーリユニットは、経路形成部材に設ける孔の内径を小さくできる分、第1ガイド溝及び第2ガイド溝の配置の自由度を高めることができる。
【0016】
上記課題を解決するドア駆動装置は、上述したガイドプーリユニットと、前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルと、前記ドラムと、前記ドラムを回転可能に支持する支持パネルと、前記ドラムを駆動する駆動部と、を有するドラムユニットと、前記ドラムから延びる前記第1ケーブルを前記第1ガイドプーリに向けて案内する第1中継プーリと、前記ドラムから延びる前記第2ケーブルを前記第1ガイドプーリに向けて案内する第2中継プーリと、前記第1中継プーリ及び前記第2中継プーリを回転可能に支持するベースプレートと、を有する中継プーリユニットと、を備える。
【0017】
上記ドア駆動装置は、上述したガイドプーリユニットと同等の作用効果を得ることができる。
上記ドア駆動装置において、前記ドラムユニットは、前記第1中継プーリに向けて延びる前記第1ケーブルを保護する第1ケーブルガイドと、前記第2中継プーリに向けて延びる前記第2ケーブルを保護する第2ケーブルガイドと、を有し、前記第1ケーブルガイドの第1端及び前記第2ケーブルガイドの第1端は、前記支持パネルに係合し、前記第1ケーブルガイドの第2端及び前記第2ケーブルガイドの第2端は、前記ベースプレートに係合することが好ましい。
【0018】
上記構成のドア駆動装置は、支持パネル及びベースプレートに係合する第1ケーブルガイド及び第2ケーブルガイドで第1ケーブル及び第2ケーブルを保護できる。つまり、ドア駆動装置は、支持パネルとベースプレートとの間で延びる第1ケーブル及び第2ケーブルを簡易な構成で保護できる。
【発明の効果】
【0019】
上記構成のガイドプーリユニットは、ハウジング及びカバーの構成を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態に係るドア駆動装置を備える車両の模式図。
【
図4】上記車両のセンターヒンジユニットの平面図。
【
図6】上記ドア駆動装置のドラムユニットの分解斜視図。
【
図7】上記ドア駆動装置のドラムユニットの分解斜視図。
【
図8】上記ドア駆動装置の中継プーリユニットの分解斜視図。
【
図9】上記ドア駆動装置の中継プーリユニットの分解斜視図。
【
図10】上記ドア駆動装置のガイドプーリユニットの分解斜視図。
【
図11】上記ドア駆動装置のガイドプーリユニットの分解斜視図。
【
図12】上記ドア駆動装置のガイドプーリユニットの平面図。
【
図13】上記ドア駆動装置の中継プーリユニットの断面図。
【
図14】上記ドア駆動装置のガイドプーリユニットの底面図。
【
図15】上記ドア駆動装置のガイドプーリユニットの平面図。
【
図16】上記ドア駆動装置のドラムユニットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、一実施形態に係るドア駆動装置を備える車両について説明する。
<車両10>
図1に示すように、車両10は、側部にドア開口部21を有する車体20と、ドア開口部21を開閉するスライドドア30と、スライドドア30を駆動するドア駆動装置50と、を備える。
【0022】
以降の説明では、車両10の幅方向を「幅方向」ともいい、車両10の前後方向を「前後方向」ともいい、車両10の上下方向を「上下方向」ともいう。また、幅方向において、車両10の内側に向かう方向を内方ともいい、幅方向において、車両10の外側に向かう方向を外方ともいう。図面中において、幅方向はX軸の延びる方向であり、前後方向はY軸の延びる方向であり、上下方向はZ軸の延びる方向である。
【0023】
<車体20>
図1に示すように、車体20は、スライドドア30の移動方向を規定するアッパレール22、センターレール23及びロアレール24を備える。アッパレール22、センターレール23及びロアレール24は、前後方向に延びている。詳しくは、アッパレール22、センターレール23及びロアレール24は、上下方向における平面視において、前方に向かって直線状に延びた後、前方に向かうにつれて幅方向における内方に向かうように円弧状に延びている。アッパレール22は、ドア開口部21の上方に設置され、センターレール23は、ドア開口部21の後方に設置され、ロアレール24は、ドア開口部21の下方に設置されている。センターレール23は、上下方向において、アッパレール22及びロアレール24の間に位置している。
【0024】
<スライドドア30>
図1及び
図2に示すように、スライドドア30は、ドア開口部21を塞ぐドア本体40と、車体20との接続部位を構成するアッパヒンジユニット32、センターヒンジユニット33及びロアヒンジユニット34と、を備える。
【0025】
図3に示すように、ドア本体40は、アウターパネル41及びインナーパネル42を有する。アウターパネル41及びインナーパネル42は、薄い板状をなしている。アウターパネル41及びインナーパネル42の間には、各種の部品を収容するための内部空間43となっている。インナーパネル42は、幅方向における内方に向かって貫通する収容孔44と、後方に向かって貫通する露出孔45と、を有する。収容孔44は、ドア駆動装置50の一部を内部空間43に配置するための孔である。露出孔45は、内部空間43に配置されるドア駆動装置50の一部をドア本体40の後方に通すための孔である。
【0026】
図1に示すように、アッパヒンジユニット32は、ドア本体40の前端寄りの位置であって、上端寄りの位置に固定されている。センターヒンジユニット33は、ドア本体40の後端寄りの位置であって、上下方向における中間部に固定されている。ロアヒンジユニット34は、ドア本体40の前端寄りの位置であって、下端寄りの位置に固定されている。
【0027】
図2及び
図4に示すように、センターヒンジユニット33は、ドア本体40に固定される固定ヒンジ35と、固定ヒンジ35に揺動可能に支持される可動ヒンジ36と、可動ヒンジ36に回転可能に支持される2つのガイドローラ37及びロードローラ38と、を有する。2つのガイドローラ37の回転軸線及びロードローラ38の回転軸線は直交している。
図4に示すように、2つのガイドローラ37及びロードローラ38は、センターレール23に係合している。2つのガイドローラ37及びロードローラ38は、スライドドア30が開閉作動するとき、センターレール23に沿って移動する。このとき、2つのガイドローラ37は、センターレール23の長手方向と直交する方向にドア本体40が移動することを制限し、ロードローラ38は、ドア本体40の自重を支える。
【0028】
図示を省略するが、アッパヒンジユニット32及びロアヒンジユニット34は、センターヒンジユニット33と略同一な構成である。つまり、ドア本体40は、アッパヒンジユニット32、センターヒンジユニット33及びロアヒンジユニット34と、を介して、車体20に支持されている。そして、アッパヒンジユニット32、センターヒンジユニット33及びロアヒンジユニット34が、アッパレール22、センターレール23及びロアレール24に対してそれぞれ移動することにより、スライドドア30が移動する。
【0029】
<ドア駆動装置50>
図5に示すように、ドア駆動装置50は、第1ケーブル61及び第2ケーブル62と、ドラムユニット100と、中継プーリユニット200と、ガイドプーリユニット300と、を備える。ドア駆動装置50において、ドラムユニット100及び中継プーリユニット200は、スライドドア30のインナーパネル42に固定される。ガイドプーリユニット300は、スライドドア30のセンターヒンジユニット33の可動ヒンジ36に固定される。
【0030】
第1ケーブル61及び第2ケーブル62について説明する。
第1ケーブル61及び第2ケーブル62は、スライドドア30を開閉作動させるための動力を伝達する動力伝達部材である。第1ケーブル61の第1端は、センターレール23の前端付近に固定され、第2ケーブル62の第1端は、センターレール23の後端付近に固定されている。第1ケーブル61の第2端及び第2ケーブル62の第2端は、ドラムユニット100に向かって延びている。
【0031】
ドラムユニット100について説明する。
図6及び
図7に示すように、ドラムユニット100は、第1ケーブル61及び第2ケーブル62を巻き取るドラム110と、ドラム110を駆動する駆動部120と、駆動部120が組み付けられる支持パネル130と、を備える。ドラムユニット100は、ドラム110を覆うドラムカバー140と、駆動部120ごと支持パネル130を覆うパネルカバー150と、第1ケーブル61及び第2ケーブル62をそれぞれ保護するケーブルガイド161,162と、を備える。
図5に示すように、ドラムユニット100は、パネルカバー150とケーブルガイド161,162との隙間を塞ぐキャップ170と、パネルカバー150とインナーパネル42との隙間を塞ぐシール部材180と、を備える。
【0032】
図6及び
図7に示すように、ドラム110は、円柱状をなしている。ドラム110には、第1ケーブル61の第2端及び第2ケーブル62の第2端が固定されている。ドラム110は、第1ケーブル61及び第2ケーブル62を巻き取っている。ドラム110の回転軸線は、支持パネル130の板厚方向に延びている。ドラム110において、第1ケーブル61の巻取方向は、第2ケーブル62の巻取方向の逆方向である。このため、ドラム110が一方向に回転する場合、第1ケーブル61が巻き取られ、第2ケーブル62が繰り出される。一方、ドラム110が一方向の逆方向である他方向に回転する場合、第2ケーブル62が巻き取られ、第1ケーブル61が繰り出される。なお、第1ケーブル61の第2端及び第2ケーブル62の第2端は、ドラム110の内部で繋がっていてもよい。
【0033】
駆動部120は、モータ121と、ドラム110を駆動する出力軸122と、駆動部120の構成要素を収容するモータケース123と、を有する。図示を省略するが、駆動部120は、モータ121の回転軸の動力を出力軸122に伝達する伝達機構を有する。出力軸122は、ドラム110に連結している。このため、出力軸122が回転する場合、ドラム110が回転する。モータケース123は、モータ121を支持したり、不図示の伝達機構を収容したりしている。
【0034】
支持パネル130は、金属製の板状部材である。支持パネル130は、例えば、金属板をプレス加工することにより成形される。支持パネル130は、駆動部120を支持する本体部131と、スライドドア30に固定される複数の固定部132と、中継プーリユニット200に向かって延びる延設部133と、ケーブルガイド161,162を支持する屈曲部134と、を有する。
【0035】
本体部131には、ねじ、ボルト及びリベットなどの締結部材を用いて、駆動部120が固定されている。本体部131は、駆動部120の出力軸122を通すための挿通孔135を有する。この点で、本体部131は、駆動部120を介して、ドラム110を回転可能に支持しているといえる。固定部132は、締結部材を介して、インナーパネル42に固定される。このため、固定部132は、インナーパネル42に沿うように湾曲したり屈曲したりしていることが好ましい。屈曲部134は、延設部133の先端から延設部133の板厚方向に延びている。屈曲部134は、2つの切り欠き136を有する。
【0036】
ドラムカバー140は、例えば、射出成形される樹脂部品である。ドラムカバー140は、締結部材により、駆動部120とともに支持パネル130に固定されている。こうして、ドラムカバー140は、ドラム110とドラム110から延びる第1ケーブル61及び第2ケーブル62とを覆っている。また、ドラムカバー140は、出力軸122の先端を回転可能に支持することが好ましい。
【0037】
パネルカバー150は、例えば、射出成形される樹脂部品である。パネルカバー150は、第1底壁151と、第1底壁151から第1底壁151の板厚方向にずれて位置する第2底壁152と、第1底壁151の外縁から延びる第1側壁153と、第2底壁152の外縁から延びる第2側壁154と、を有する。
【0038】
第1底壁151及び第1側壁153によって囲まれる空間には、駆動部120が部分的に収まっている。第2底壁152及び第2側壁154によって囲まれる空間には、第1ケーブル61及び第2ケーブル62と支持パネル130とドラムカバー140とケーブルガイド161,162とが部分的に収まっている。パネルカバー150の大部分は、ドア駆動装置50がスライドドア30に搭載されるときに、スライドドア30の内部空間43に位置する。つまり、パネルカバー150は、ドア駆動装置50がスライドドア30に搭載されるときに、インナーパネル42の収容孔44を塞ぐ。
【0039】
図6に示すように、第2底壁152は、円柱状をなす第1突出部155と、四角柱状をなす第2突出部156と、を有する。
図6では、1つの第2突出部156のみしか図示されていないが、第2底壁152は、2つの第2突出部156を有する。第1突出部155及び2つの第2突出部156は、第2底壁152から第2側壁154と同方向に延びている。第2底壁152の正面視において、第1突出部155は、2つの第2突出部156の間に位置している。第1側壁153は、第1側壁153の先端面から延びる複数の係止爪157を有する。複数の係止爪157は、弾性変形しながら支持パネル130に係止する。こうして、パネルカバー150は、いわゆるスナップフィットにより、支持パネル130に装着される。なお、パネルカバー150が支持パネル130に装着される状況下では、第1突出部155は、支持パネル130の延設部133に接触し、2つの第2突出部156は、ケーブルガイド161,162にそれぞれ接触する。第2側壁154は、板厚方向に貫通する2つの挿通孔158を有する。
【0040】
第1ケーブルガイド161及び第2ケーブルガイド162は、円筒状をなしている。ケーブルガイド161,162の内径は、第1ケーブル61及び第2ケーブル62を円滑に通すことのできる大きさであることが好ましい。ケーブルガイド161,162は、例えば、金属材料及び樹脂材料などの比較的剛性の高い材料により成形される。
【0041】
ケーブルガイド161,162は、周方向に延びる3つの係合溝163,164,165を有する。3つの係合溝163,164,165は、ケーブルガイド161,162の軸方向に間隔をあけて位置している。ケーブルガイド161,162の第1端部は、支持パネル130の屈曲部134の切り欠き136に収まる。このとき、ケーブルガイド161,162の係合溝163には、支持パネル130の屈曲部134が係合する。その結果、ケーブルガイド161,162は、支持パネル130の屈曲部134の板厚方向に対して移動不能となる。
【0042】
支持パネル130にパネルカバー150が装着された状況下では、ケーブルガイド161,162は、パネルカバー150の2つの挿通孔158を通る。また、同状況下では、支持パネル130の屈曲部134の切り欠き136の開口は、パネルカバー150の第2突出部156で塞がれる。このため、ケーブルガイド161,162の第1端部は、支持パネル130の屈曲部134の板厚方向と交差する方向に移動不能となる。言い換えれば、ケーブルガイド161,162の第1端が支持パネル130の屈曲部134から脱落しなくなる。
【0043】
図5に示すように、キャップ170は、ドーム状をなしている。キャップ170には、ケーブルガイド161,162が挿通している。このとき、キャップ170は、ケーブルガイド161,162の係合溝164に係合している。キャップ170は、スライドドア30の内部空間43に雨などの液体が進入したときに、当該液体が挿通孔158を通ってインナーパネル42の内側に到達するのを防ぐ。
【0044】
図6及び
図7に示すように、シール部材180は、パネルカバー150の第1側壁153及び第2側壁154の縁に沿って配置されている。インナーパネル42にドラムユニット100が固定される状況下において、シール部材180は、インナーパネル42とパネルカバー150との間で潰れる。こうして、シール部材180は、スライドドア30の内部空間43に雨などの液体が進入したときに、当該液体が収容孔44を通ってインナーパネル42の内側に到達するのを防ぐ。
【0045】
中継プーリユニット200について説明する。
図8及び
図9に示すように、中継プーリユニット200は、第1ケーブル61の向きを変更する第1中継プーリ210と、第2ケーブル62の向きを変更する第2中継プーリ220と、を備える。中継プーリユニット200は、第1中継プーリ210及び第2中継プーリ220をそれぞれ支持する第1支軸231及び第2支軸232と、第1支軸231及び第2支軸232を支持するベースプレート240と、を備える。中継プーリユニット200は、ベースプレート240とともに第1中継プーリ210及び第2中継プーリ220を覆うケース250と、インナーパネル42の露出孔45を封止するシール部材260と、を備える。
【0046】
第1中継プーリ210及び第2中継プーリ220は、円板状をなしている。第1中継プーリ210は、周方向に延びる周溝211を有し、第2中継プーリ220は、周方向に延びる周溝221を有する。第1中継プーリ210の周溝211には第1ケーブル61が収まり、第2中継プーリ220の周溝221には第2ケーブル62が収まる。第1中継プーリ210は、第1支軸231に回転可能に支持され、第2中継プーリ220は、第2支軸232に回転可能に支持されている。
【0047】
ベースプレート240は、板状をなしている。ベースプレート240は、例えば、金属板をプレス加工することにより成形される。ベースプレート240は、第1中継プーリ210に面する第1支持部241と、第2中継プーリ220に面する第2支持部242と、第1支持部241から延びる第1延設部243と、第2支持部242から延びる第2延設部244と、を有する。ベースプレート240は、第1延設部243から屈曲して延びる第1屈曲部245と、第2延設部244から屈曲して延びる第2屈曲部246と、スライドドア30のインナーパネル42に固定される複数の固定部247と、を有する。
【0048】
第1支持部241は、第2支持部242に対して傾いている。第1支持部241には、第1支軸231の第1端が固定され、第2支持部242には、第2支軸232の第1端が固定されている。このため、第1支軸231の軸線は、第2支軸232の軸線に対して傾いている。また、こうした点で、第1支持部241は、第1支軸231を介して第1中継プーリ210を支持し、第2支持部242は、第2支軸232を介して第2中継プーリ220を支持しているといえる。第1延設部243は、第1支持部241との境界部分が板厚方向に膨らんでいる。第1延設部243は、第1中継プーリ210に第1ケーブル61を案内するガイド面248を有する。
【0049】
第1屈曲部245及び第2屈曲部246は、切り欠き249を有する。第1屈曲部245の切り欠き249には、第1ケーブルガイド161の第2端部が収まっている。このとき、第1屈曲部245は、第1ケーブルガイド161の係合溝165に係合する。その結果、第1ケーブルガイド161は、第1屈曲部245の板厚方向に対する変位が制限される。同様に、第2屈曲部246の切り欠き249には、第2ケーブルガイド162の第2端部が収まっている。このとき、第2屈曲部246は、第2ケーブルガイド162の係合溝165に係合する。その結果、第2ケーブルガイド162は、第2屈曲部246の板厚方向に対する変位が制限される。複数の固定部247は、締結部材を介して、インナーパネル42に固定される。このため、固定部247は、インナーパネル42の形状に沿うように湾曲していることが好ましい。
【0050】
ケース250は、第1中継プーリ210及び第2中継プーリ220を覆う主壁251と、ケーブルガイド161,162をそれぞれ覆う第1包囲壁252及び第2包囲壁253と、を有する。ケース250は、第1ケーブル61及び第2ケーブル62をガイドプーリユニット300に向けて案内するガイド部254と、シール部材260を押さえる押さえ部255と、ガイドプーリユニット300を把持する把持部256と、を有する。
【0051】
主壁251は、第1支軸231の第2端及び第2支軸232の第2端を支持している。この点で、第1支軸231は、ベースプレート240とケース250とに両端が支持され、第2支軸232は、ベースプレート240とケース250とに両端が支持されている。主壁251は、ベースプレート240の第1支持部241及び第2支持部242とともに、第1中継プーリ210及び第2中継プーリ220を覆っている。
【0052】
第1包囲壁252及び第2包囲壁253は、主壁251から延びている。第1包囲壁252及び第2包囲壁253の延設方向と直交する断面形状は、略C字状をなしている。第1包囲壁252は、ベースプレート240の第1延設部243及び第1屈曲部245を三方から覆い、第2包囲壁253は、ベースプレート240の第2延設部244及び第2屈曲部246を三方から覆っている。このとき、第1包囲壁252は、第1ケーブルガイド161が係止する第1屈曲部245の切り欠き249の開口を覆い、第2包囲壁253は、第2ケーブルガイド162が係止する第2屈曲部246の切り欠き249の開口を覆いっている。こうして、第1包囲壁252及び第2包囲壁253は、ベースプレート240からケーブルガイド161,162が脱落することを抑制している。
【0053】
押さえ部255は、スライドドア30のインナーパネル42の露出孔45の周辺部位に応じた形状をなしている。押さえ部255は、シール部材260を保持するための爪形状などを有することが好ましい。押さえ部255には、ガイド部254を通ってガイドプーリユニット300に向かう第1ケーブル61及び第2ケーブル62が挿通している。把持部256は、押さえ部255から延びている。把持部256の先端は、二股に分岐している。平面視において、把持部256は、円弧状に湾曲している。
【0054】
シール部材260は、ケース250の押さえ部255と略同様な板状をなしている。シール部材260は、ゴム又は樹脂などのエラストマーによって成形される。シール部材260には、ケース250の把持部256と第1ケーブル61及び第2ケーブル62とが挿通している。駆動部120がスライドドア30に搭載されるときに、シール部材260は、ケース250の押さえ部255とインナーパネル42の露出孔45の周辺部位との間で押し潰される。こうして、シール部材260は、スライドドア30の内部空間43に雨などの液体が進入したときに、当該液体が露出孔45を通ってインナーパネル42の内側に到達するのを防ぐ。
【0055】
ガイドプーリユニット300について説明する。
図10及び
図11に示すように、ガイドプーリユニット300は、第1ケーブル61が巻き掛けられる第1ガイドプーリ310と、第2ケーブル62が巻き掛けられる第2ガイドプーリ320と、を有する。ガイドプーリユニット300は、第1ガイドプーリ310及び第2ガイドプーリ320をそれぞれ支持する第1支軸331及び第2支軸332と、第1支軸331及び第2支軸332を支持するハウジング340と、を有する。ガイドプーリユニット300は、ハウジング340とともに第1ガイドプーリ310及び第2ガイドプーリ320を覆うカバー350と、第1ガイドプーリ310及び第2ガイドプーリ320の間に配置される経路形成部材360と、経路形成部材360に嵌合する2つのカラー370と、を備える。
【0056】
第1ガイドプーリ310及び第2ガイドプーリ320は、円板状をなしている。第1ガイドプーリ310は、軸方向に並ぶ2つの周溝311,312を有し、第2ガイドプーリ320は、軸方向に並ぶ2つの周溝321,322を有する。第1ガイドプーリ310において、周溝311には第1ケーブル61が収まり、周溝312には第2ケーブル62が収まる。同様に、第2ガイドプーリ320において、周溝321には第1ケーブル61が収まり、周溝322には第2ケーブル62が収まる。第1ガイドプーリ310は、第1支軸331に回転可能に支持され、第2ガイドプーリ320は、第2支軸332に回転可能に支持されている。第2ガイドプーリ320は、第1ケーブル61をセンターレール23の前端部に向けて案内し、第2ケーブル62をセンターレール23の後端部に向けて案内する。つまり、第2ガイドプーリ320は、第1ケーブル61及び第2ケーブル62を、センターレール23の両端部に向けてそれぞれ案内している。
【0057】
ハウジング340は、板状をなしている。ハウジング340は、例えば、金属板をプレス加工することにより成形される。ハウジング340は、長円形状をなす底壁341と、底壁341の外縁の一部から底壁341と交差する方向に延びる側壁342と、を有する。
【0058】
底壁341は、板厚方向に貫通する2つの固定孔343を有する。2つの固定孔343は、ガイドプーリユニット300をセンターヒンジユニット33の可動ヒンジ36に締結する締結部材の通る孔である。底壁341において、2つの固定孔343の周辺部位は、他の部位よりも板厚方向にずれている。底壁341には、第1支軸331の第1端及び第2支軸332の第1端が固定されている。この点で、底壁341は、第1支軸331及び第2支軸332を介して、第1ガイドプーリ310及び第2ガイドプーリ320を回転可能に支持しているといえる。
【0059】
カバー350は、例えば、射出成形される樹脂部品である。カバー350は、長円形状をなす上壁351と、上壁351から延びる環状壁352と、上壁351から環状壁352とは逆方向に延びる複数の係合壁353、第1ガイド壁354及び第2ガイド壁355と、を有する。
【0060】
上壁351は、平面視において、ハウジング340の底壁341と略同一形状をなしている。上壁351は、ハウジング340の底壁341とともに、第1ガイドプーリ310及び第2ガイドプーリ320を覆っている。上壁351は、第1支軸331の第2端及び第2支軸332の第2端を支持している。この点で、第1支軸331は、ハウジング340とカバー350とに両端が支持され、第2支軸332は、ハウジング340とカバー350とに両端が支持されている。上壁351は、板厚方向に貫通する2つの係合孔356a,356b及び2つの挿通孔357を有する。2つの係合孔356a,356bは、経路形成部材360をカバー350に対して位置決めするための孔である。係合孔356aは、丸孔であり、係合孔356bは、長孔である。係合孔356bの長手方向は、2つの係合孔356a,356bの中心同士を結んだ方向である。2つの挿通孔357は、カラー370を通すための孔である。このため、2つの挿通孔357の内径は、カラー370の外径よりも大きくなっている。
【0061】
環状壁352は、環状をなしている。環状壁352の回転軸線は、第1支軸331の回転軸線と一致している。環状壁352は、先端がフランジ状をなしている。環状壁352は、中継プーリユニット200の把持部256に把持される。環状壁352が把持部256に把持されることにより、ガイドプーリユニット300及び中継プーリユニット200が一体化する。ただし、ガイドプーリユニット300は、把持部256に把持されていても、第1支軸331の回転軸線を中心として、中継プーリユニット200に対して相対回転可能である。
【0062】
複数の係合壁353は、ハウジング340の側壁342に係合する。第1ガイド壁354及び第2ガイド壁355は、平面視において、第2ガイドプーリ320の外形に沿って延びている。第1ガイド壁354及び第2ガイド壁355は、第2ガイドプーリ320を収容する空間を形成している。詳しくは、第1ガイド壁354は、第2ガイドプーリ320の周溝321とともに第1ケーブル61が通る経路を形成し、第2ガイド壁355は、第2ガイドプーリ320の周溝322とともに第2ケーブル62が通る経路を形成している。以降の説明では、第1ガイド壁354及び第2ガイド壁355のうち、第2ガイドプーリ320を向く面を内側面ともいう。
【0063】
図11に示すように、第1ガイド壁354の内側面は、第1ガイドプーリ310から第2ガイドプーリ320に向かって進む第1ケーブル61を案内する第1ガイド面354aを含む。第1ガイド壁354の内側面のうち、第1ガイド面354aを除く部分は、第2ガイドプーリ320の外周面に沿って延びている。これに対し、第1ガイド面354aは、第2ガイドプーリ320の外周面に対して傾いている。同様に、第2ガイド壁355の内側面は、第1ガイドプーリ310から第2ガイドプーリ320に向かって進む第2ケーブル62を案内する第2ガイド面355aを含む。第2ガイド壁355の内側面のうち、第1ガイド面354aを除く部分は、第2ガイドプーリ320の外周面に沿って延びている。これに対し、第2ガイド面355aは、第2ガイドプーリ320の外周面に対して傾いている。
【0064】
図12に示すように、ガイドプーリユニット300の平面視において、カバー350の係合孔356aは、第1ガイドプーリ310の回転軸線A1及び第2ガイドプーリ320の回転軸線A2を結んだ線分からずれた位置に位置している。一方、カバーの係合孔356bは、第1ガイドプーリ310の回転軸線A1及び第2ガイドプーリ320の回転軸線A2を結んだ線分と重なった位置に位置している。また、カバー350の2つの係合孔356a,356bの中心同士を結んだ線分と、第1ガイドプーリ310の回転軸線A1及び第2ガイドプーリ320の回転軸線A2を結んだ線分と、の間をなす角度は小さいことが好ましい。
【0065】
経路形成部材360は、例えば、射出成形される樹脂部品である。経路形成部材360は、厚さを有するため、適宜に肉盗みが設けられることが好ましい。経路形成部材360は、第1ケーブル61の移動経路を構成する第1ガイド溝361と、第2ケーブル62の移動経路を構成する第2ガイド溝362と、2つのカラー370をそれぞれ保持する2つの保持孔363と、を有する。経路形成部材360は、カバー350の2つの係合孔356a,356bにそれぞれ係合する2つの係合軸364a,364bと、第1ガイドプーリ310及び第2ガイドプーリ320に付着する異物を掻き取る4つの爪部365,366と、を有する。
【0066】
第1ガイド溝361は、ハウジング340と対向する部分に設けられ、第2ガイド溝362は、カバー350と対向する部分に設けられている。第1ガイド溝361を第2ガイド溝362に向けて投影すると、第1ガイド溝361及び第2ガイド溝362は、交差している。2つの保持孔363は、経路形成部材360を貫通している。2つの保持孔363は、第1ガイド溝361及び第2ガイド溝362の双方に干渉しないように、第1ガイド溝361及び第2ガイド溝362からずれて位置している。また、2つの保持孔363は、第2ガイド溝362の延びる方向に間隔をあけて位置している。2つの保持孔363の内径は、カバー350の2つの挿通孔357の内径よりも小さくなっている。
【0067】
2つの係合軸364a,364bは、円柱状をなしている。2つの係合軸364a,364bの軸線は、2つの保持孔363の軸線と同じ方向に延びている。つまり、2つの係合軸364a,364bは、カバー350に向かって延びている。2つの係合軸364a,364bがカバー350の2つの係合孔356a,356bにそれぞれ挿入されることにより、経路形成部材360とカバー350との相対的な位置関係が定まる。なお、一方の係合孔356bが長孔である点で、2つの係合軸364a,364bの軸間距離に製造上の誤差が発生していても、2つの係合軸364a,364bがカバー350の2つの係合孔356a,356bにそれぞれ挿入できない事態が回避される。
【0068】
4つの爪部365,366は、2つの係合軸364a,364bの軸線と直交する方向に延びている。2つの爪部365は、第1ガイドプーリ310の2つの周溝311,312に向かってそれぞれ延び、2つの爪部366は、第2ガイドプーリ320の2つの周溝321,322に向かってそれぞれ延びている。爪部365,366は、周溝に異物が付着しているガイドプーリが回転するときに、当該異物を掻き取る構成である。
【0069】
経路形成部材360は、第1ガイドプーリ310及び第2ガイドプーリ320の間であって、ハウジング340とカバー350との間に配置される。こうして、経路形成部材360の第1ガイド溝361は、第1ガイドプーリ310の周溝311と第2ガイドプーリ320の周溝321とに接続する。同様に、経路形成部材360の第2ガイド溝362は、第1ガイドプーリ310の周溝312と第2ガイドプーリ320の周溝322とに接続する。
【0070】
カラー370は、円筒状をなしている。カラー370は、樹脂材料又は金属材料により成形される。本実施形態において、カラー370の外径は、経路形成部材360の保持孔363の内径よりも大きくなっている。つまり、2つのカラー370は、経路形成部材360の2つの保持孔363に圧入されている。なお、他の実施形態において、カラー370は、経路形成部材360に対してインサート成形してもよい。ガイドプーリユニット300が組み立てられた状態では、カラー370の軸方向における一端面は、ハウジング340の底壁341に接し、カラー370の軸方向における他端面は、カバー350の上壁351から僅かに飛び出る。
【0071】
図4に示すように、ガイドプーリユニット300は、センターヒンジユニット33の可動ヒンジ36に下方から固定される。詳しくは、ガイドプーリユニット300は、カラー370を通る締結部材により、カバー350を上方に向けた状態で、可動ヒンジ36に固定される。このとき、カラー370の軸方向における端面が可動ヒンジ36に接するため、カバー350と可動ヒンジ36との間には僅かな隙間が生じる。
【0072】
本実施形態の作用について説明する。
詳しくは、ドア駆動装置50の製造方法について説明する。
ドア駆動装置50の製造方法は、第1組立工程と、配索工程と、巻取工程と、第2組立工程を備える。
【0073】
第1組立工程は、第1ケーブル61及び第2ケーブル62とドラムユニット100のドラムカバー140とを除き、ドラムユニット100、中継プーリユニット200及びガイドプーリユニット300を組み立てる工程である。配索工程は、ドラムユニット100、中継プーリユニット200及びガイドプーリユニット300の順に第1ケーブル61及び第2ケーブル62を通す工程である。巻取工程は、ドラムユニット100のドラム110に第1ケーブル61の第2端及び第2ケーブル62の第2端を固定した状態で、第1ケーブル61及び第2ケーブル62の一方を巻き取る工程である。第2組立工程は、ドラムユニット100において、ドラムカバー140を支持パネル130に固定する工程である。
【0074】
以下、配索工程について詳しく説明する。なお、第1ケーブル61の配索と第2ケーブル62の配索は略同様であるため、第1ケーブル61の配索について説明する。
ドラムユニット100において、第1ケーブル61の先端は、第1ケーブルガイド161に挿入される。続いて、第1ケーブル61の先端は、第1ケーブルガイド161を通過する。こうして、第1ケーブル61の先端は、中継プーリユニット200に到達する。
【0075】
図13に示すように、中継プーリユニット200において、第1ケーブル61は、ベースプレート240とケース250との間を第1中継プーリ210に向かって進む。ここで、ベースプレート240はガイド面248を有するため、第1ケーブル61の先端が第1中継プーリ210とベースプレート240との間に導かれにくい。言い換えれば、第1ケーブル61の先端は、第1中継プーリ210の周溝211に向かって導かれやすい。こうして、第1ケーブル61は、第1中継プーリ210に巻き掛けられる。第1中継プーリ210に巻き掛けられた第1ケーブル61は、ケース250のガイド部254及び押さえ部255とシール部材260を通過した後、ガイドプーリユニット300に向かう。こうして、第1ケーブル61の先端は、ガイドプーリユニット300に到達する。
【0076】
図14に示すように、ガイドプーリユニット300において、第1ケーブル61は、第1ガイドプーリ310とカバー350の係合壁353との間を進む。詳しくは、第1ケーブル61は、第1ガイドプーリ310の周溝311を進む。つまり、第1ケーブル61は、第1ガイドプーリ310に巻き掛けられる。第1ガイドプーリ310に巻き掛けられた第1ケーブル61は、経路形成部材360の第1ガイド溝361を進む。ここで、第1ガイド溝361は、第1ガイドプーリ310の周方向に延びるため、第1ケーブル61は、円滑に第1ガイド溝361に導かれる。
【0077】
その後、第1ケーブル61は、第2ガイドプーリ320とカバー350の第1ガイド壁354との間を進む。ここで、第1ガイド壁354は、第1ガイド面354aを有するため、第1ケーブル61の先端は、経路形成部材360と第1ガイド壁354との隙間に導かれたり、第1ガイド壁354の端部に突き当たったりしにくい。言い換えれば、第1ケーブル61の先端は、第2ガイドプーリ320の周溝321に導かれやすい。こうして、第1ケーブル61は、第2中継プーリ220に巻き掛けられる。なお、
図14に示すガイドプーリユニット300は、ハウジング340の図示を省略している。
【0078】
本実施形態の効果について説明する。
(1)第1ガイド溝361及び第2ガイド溝362を有する経路形成部材360は、ハウジング340ともカバー350とも別体に構成される。このため、ハウジング340とカバー350との構成が簡素化される。さらに、経路形成部材360において、第1ガイド溝361は、ハウジング340と対向する部分に設けられ、第2ガイド溝362は、カバー350と対向する部分に設けられる。このため、例えば、カバーのハウジングと対向する部分に第1ガイド溝及び第2ガイド溝を設ける比較例に比較して、第1ガイド溝361及び第2ガイド溝362を形成しやすくなる。
【0079】
(2)カバー350は、第1ガイド溝361を進む第1ケーブル61を第1ガイドプーリ310に向けて案内する第1ガイド面354aと、第2ガイド溝362を進む第2ケーブル62を第1ガイドプーリ310に向けて案内する第2ガイド面355aと、を有する。このため、第1ガイド溝361を進む第1ケーブル61が、第1ガイド面354aによって、第1ガイドプーリ310に導かれやすくなる。同様に、第2ガイド溝362を進む第2ケーブル62が、第2ガイド面355aによって、第2ガイドプーリ320に導かれやすくなる。このため、ガイドプーリユニット300は、第1ケーブル61及び第2ケーブル62の配索が容易となる。中継プーリユニット200のベースプレート240のガイド面248も、カバー350の第1ガイド面354a、第2ガイド面355aと同様に機能する。
【0080】
(3)経路形成部材360は、2つの係合軸364a,364bを有し、カバー350は、2つの係合軸364a,364bがそれぞれ挿入される2つの係合孔356a,356bを有する。このため、ガイドプーリユニット300は、経路形成部材360の係合軸364a,364bをカバー350の係合孔356a,356bにそれぞれ挿入させることにより、カバー350に対して経路形成部材360を位置決めできる。また、2つの係合孔356a,356bのうち、一方の係合孔356aは丸孔であり、他方の係合孔356bは長孔である。このため、2つの係合軸364a,364bの軸線間距離に製造誤差が含まれていても、2つの係合軸364a,364bが2つの係合孔356a,356bにそれぞれ挿入できない事態が回避される。
【0081】
(4)ガイドプーリユニット300の平面視において、係合孔356bは、第1ガイドプーリ310の回転軸線A1及び第2ガイドプーリ320の回転軸線A2を結んだ線分と重なった位置に設けられる。このため、カバー350に対して経路形成部材360を位置決めした状態において、第1ガイドプーリ310及び第2ガイドプーリ320と第1ガイド溝361及び第2ガイド溝362との相対的な位置関係がずれにくくなる。したがって、ガイドプーリユニット300は、第1ケーブル61及び第2ケーブル62が配索されるときに、第1ケーブル61及び第2ケーブル62を通しやすくなる。
【0082】
(5)例えば、カバーがカラー370を保持する保持孔を有する比較例の場合、経路形成部材にカラー370を通す挿通孔を設ける必要がある。これに対し、ガイドプーリユニット300は、経路形成部材360にカラー370を保持する保持孔363を有する。ここで、カラー370の外径が一定であれば、経路形成部材360の保持孔363の内径は、比較例の経路形成部材の挿通孔の内径よりも小さくなる。したがって、ガイドプーリユニット300は、経路形成部材360に設ける孔の内径を小さくできる分、第1ガイド溝361及び第2ガイド溝362の配置の自由度を高めることができる。
【0083】
詳しくは、
図15に示すように、第2ガイド溝362をカラー370に近付けることができるため、第2ガイドプーリ320をセンターレール23の近くに配置できる。すると、スライドドア30が開閉作動されるときに、第1ケーブル61及び第2ケーブル62がセンターレール23に沿って延びる状態を維持しやすい。その結果、第1ケーブル61及び第2ケーブル62を介して、駆動部120の動力が車体20に効率良く伝わりやすくなる。
【0084】
(6)ドア駆動装置50をスライドドア30に搭載するとき、ドラムユニット100の支持パネル130は、スライドドア30のインナーパネル42に締結部材で締結される。その結果、ドラムユニット100のパネルカバー150がインナーパネル42に押し付けられ、シール部材180が潰れる。こうして、パネルカバー150とインナーパネル42との間の隙間が塞がれる。このとき、
図16に示すように、パネルカバー150は、インナーパネル42の第1突出部155を押す。このため、パネルカバー150の上部をインナーパネル42に押し付けることができ、インナーパネル42とシール部材180との間に隙間が生じにくくなる。
【0085】
(7)ドア駆動装置50は、支持パネル130及びベースプレート240に係合する第1ケーブルガイド161及び第2ケーブルガイド162で第1ケーブル61及び第2ケーブル62を保護できる。また、第1ケーブルガイド161及び第2ケーブルガイド162は、単純な筒状部材である。したがって、ドア駆動装置50は、ドラムユニット100と中継プーリユニット200との間で延びる第1ケーブル61及び第2ケーブル62を簡易な構成で保護できる。
【0086】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ガイドプーリユニット300において、カラー370は、カバー350に嵌合させてもよい。
【0087】
・ガイドプーリユニット300の平面視において、第1ガイドプーリ310の回転軸線A1及び第2ガイドプーリ320の回転軸線A2を結んだ線分上に、カバー350の係合孔356bが位置していなくてもよい。つまり、カバー350の係合孔356a,356bは、上記線分上からずれて位置していてもよい。
【0088】
・ガイドプーリユニット300において、経路形成部材360は、ハウジング340に対して位置決めするための軸及び孔を有してもよい。この場合、経路形成部材360は、カバー350に対して位置決めしなくてもよい。
【0089】
・ガイドプーリユニット300は、第1ガイド面354a及び第2ガイド面355aのうち一方のみを備えてもよい。
・ガイドプーリユニット300は、同一軸線回りに個別に回転する2つの第1ガイドプーリ310を備えてもよい。この場合、第1ケーブル61及び第2ケーブル62は、2つの第1ガイドプーリ310に対して同様に巻き掛けられることが好ましい。この場合、第1ケーブル61及び第2ケーブル62は、上記実施形態のように、第1ガイドプーリ310及び第2ガイドプーリ320の間で交差するように配索されなくなる。
【0090】
・配索工程は、第1ケーブル61及び第2ケーブル62を、ガイドプーリユニット300、中継プーリユニット200及びドラムユニット100の順に配索してもよい。この場合、第1ケーブル61及び第2ケーブル62をガイドする構成について、設ける位置を変更することが好ましい。
【0091】
・ドラムユニット100のパネルカバー150に設けられる孔及び形状は、ドア駆動装置50をスライドドア30に搭載するときに、ドラムユニット100のインナーパネル42に対する位置合わせに用いてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10…車両
20…車体
21…ドア開口部
22…アッパレール(レールの一例)
23…センターレール(レールの一例)
24…ロアレール(レールの一例)
30…スライドドア
40…ドア本体
50…ドア駆動装置
61…第1ケーブル
62…第2ケーブル
100…ドラムユニット
110…ドラム
120…駆動部
130…支持パネル
140…ドラムカバー
150…パネルカバー
161…第1ケーブルガイド
162…第2ケーブルガイド
200…中継プーリユニット
210…第1中継プーリ
220…第2中継プーリ
231…第1支軸
232…第2支軸
240…ベースプレート
250…ケース
260…シール部材
300…ガイドプーリユニット
310…第1ガイドプーリ
320…第2ガイドプーリ
331…第1支軸
332…第2支軸
340…ハウジング
350…カバー
354…第1ガイド壁
354a…第1ガイド面
355…第2ガイド壁
355a…第2ガイド面
356a,356b…係合孔
357…挿通孔
360…経路形成部材
361…第1ガイド溝
362…第2ガイド溝
363…保持孔
364a,364b…係合軸
370…カラー