(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152789
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】電磁波透過カバー及び電磁波透過カバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20221004BHJP
H01Q 1/42 20060101ALI20221004BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G01S7/03 246
H01Q1/42
H05B3/20 316
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055695
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】道家 真一
【テーマコード(参考)】
3K034
5J046
5J070
【Fターム(参考)】
3K034AA02
3K034AA15
3K034BB08
3K034BB14
3K034HA09
3K034JA10
5J046RA14
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AE01
5J070AE09
5J070AF03
5J070AF05
5J070AF06
5J070AK40
(57)【要約】
【課題】端子部を発熱部に低コストで簡単に接合する。
【解決手段】ミリ波透過カバー15のカバー本体部17は、ミリ波透過性を有する樹脂材料を成形することにより形成されたカバー基材18と、カバー基材18の前方に隣接するヒータフィルム21とを備える。ヒータフィルム21は、電磁波透過性を有するフィルム基材22と、フィルム基材22よりも後方に帯状に形成され、かつ通電により発熱する発熱部24とを備える。発熱部24の後面の一部は、ヒータフィルム21から露出している。カバー本体部17は、さらに、導電性材料により形成され、かつ発熱部24よりも後方に配置されて、発熱部24の後面のうち露出された箇所(露出面24a)に接合される端子部33を備える。カバー基材18は、端子部33が発熱部24に接合された状態のヒータフィルム21よりも後方に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を送信及び受信する装置が搭載された乗物に適用され、かつ前記電磁波の送信方向における前記装置の前方に配置されるカバー本体部を有する電磁波透過カバーであって、
前記カバー本体部は、電磁波透過性を有する樹脂材料を成形することにより形成されたカバー基材と、前記送信方向における前記カバー基材の前方に隣接するヒータフィルムとを備え、
前記ヒータフィルムが、電磁波透過性を有するフィルム基材と、前記送信方向における前記フィルム基材よりも後方で帯状に形成され、かつ通電により発熱する発熱部とを備え、
前記送信方向における前記発熱部の後面の一部は、前記ヒータフィルムから露出されており、
前記カバー本体部は、さらに、導電性材料により形成され、かつ前記送信方向における前記発熱部よりも後方に配置されて、前記発熱部の前記後面のうち露出された箇所に接合される端子部を備え、
前記カバー基材は、前記端子部が前記発熱部に接合された状態の前記ヒータフィルムの前記送信方向における後側に形成されている電磁波透過カバー。
【請求項2】
前記カバー基材は、前記端子部の前記発熱部に対する接合部分を覆った状態で形成されている請求項1に記載の電磁波透過カバー。
【請求項3】
前記ヒータフィルムは、前記送信方向における前記フィルム基材の後面に接着層を有し、
前記発熱部は前記接着層上に形成されており、
前記ヒータフィルムと前記カバー基材との間には断熱層が形成されている請求項1又は2に記載の電磁波透過カバー。
【請求項4】
電磁波を送信及び受信する装置が搭載された乗物に適用され、かつ前記電磁波の送信方向における前記装置の前方に配置されるカバー本体部を有し、
前記カバー本体部が、電磁波透過性を有する樹脂製のカバー基材と、前記送信方向における前記カバー基材の前方に隣接するヒータフィルムとを備え、
前記ヒータフィルムが、電磁波透過性を有するフィルム基材と、前記送信方向における前記フィルム基材よりも後方で帯状に形成され、かつ通電により発熱する発熱部とを備え、
前記カバー本体部が、さらに、導電性材料により形成され、かつ前記送信方向における前記発熱部よりも後方に配置されて、前記発熱部に接合される端子部を備える電磁波透過カバーを製造する方法であって、
前記送信方向における前記発熱部の後面の一部を露出させた状態の前記ヒータフィルムを作成するヒータフィルム作成工程と、
前記発熱部の前記後面のうち露出された箇所に前記端子部を接触させた状態で、前記端子部を前記発熱部に接合する端子部接合工程と、
前記発熱部に前記端子部が接合された前記ヒータフィルムをインサート部材として、前記送信方向における前記ヒータフィルムよりも後方に前記カバー基材をインサート成形するカバー基材成形工程と
を備える電磁波透過カバーの製造方法。
【請求項5】
前記端子部接合工程では、前記端子部と前記ヒータフィルムとに対し、前記送信方向に延びるかしめピンを挿通させ、前記かしめピンの端部を潰すことにより、前記端子部を前記発熱部に接合させる請求項4に記載の電磁波透過カバーの製造方法。
【請求項6】
前記端子部接合工程では、前記端子部をはんだ付けにより前記発熱部に接合させる請求項4に記載の電磁波透過カバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波透過カバー及びその電磁波透過カバーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波レーダ装置が組込まれた車両では、同装置からミリ波が車外へ向けて送信される。先行車両、歩行者等を含む車外の物体に当たって反射されたミリ波は、上記ミリ波レーダ装置によって受信される。そして、ミリ波レーダ装置では、送信及び受信されたミリ波により、上記物体の認識、車両と物体との距離や相対速度の検出が行なわれる。
【0003】
上記車両では、ミリ波の送信方向におけるミリ波レーダ装置の前方に、ミリ波を透過する電磁波透過カバーが配置される。
ここで、上記電磁波透過カバーに氷雪が付着するとミリ波が減衰され、ミリ波レーダ装置の検出性能が低下する問題がある。そこで、ヒータフィルムを付加した電磁波透過カバーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ヒータフィルムは、フィルム基材の一方の面に、銅等の導電性発熱材料からなる発熱部とカバー層とを積層し、他方の面に接着層を積層することにより形成されている。発熱部は、帯状をなし、かつ一定のパターンで配線されるように、フィルム基材上に形成されている。
【0005】
上記電磁波透過カバーによると、発熱部が通電により発熱する。そのため、電磁波透過カバーに氷雪が付着しても、発熱部が発した熱によって氷雪を融解させ、氷雪の付着に起因するミリ波の減衰を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記電磁波透過カバーでは、外部の機器から発熱部に電力を供給するために、ヒータフィルム及び機器のそれぞれに、互いを電気的に接続する端子部が必要となる。
ところが、上記特許文献1には、端子部を発熱部に接合する構造について記載がない。従って、例えば、ヒータフィルムをインサート部材として、カバー基材をインサート成形する場合、そのインサート成形の後に、端子部を発熱部に接合させようとすると、次の懸念がある。すなわち、端子部の発熱部との接合に際し、ヒータフィルムから発熱部を露出させる必要がある。この露出のために、ヒータフィルムの一部、例えば、フィルム基材、カバー層等を削る等、複雑な作業が必要となることが予想される。この場合には、低コストで電磁波透過カバーを製造することが難しい。そのため、端子部を発熱部に対し低コストで簡単に接合できる電磁波透過カバー及びその製造方法が望まれている。
【0008】
こうした要望は、上記装置がミリ波とは異なる電磁波、例えば、近赤外線を送信及び受信する場合に、電磁波の送信方向における装置の前方に配置される電磁波透過カバーに対しても同様になされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する電磁波透過カバーは、電磁波を送信及び受信する装置が搭載された乗物に適用され、かつ前記電磁波の送信方向における前記装置の前方に配置されるカバー本体部を有する電磁波透過カバーであって、前記カバー本体部は、電磁波透過性を有する樹脂材料を成形することにより形成されたカバー基材と、前記送信方向における前記カバー基材の前方に隣接するヒータフィルムとを備え、前記ヒータフィルムが、電磁波透過性を有するフィルム基材と、前記送信方向における前記フィルム基材よりも後方で帯状に形成され、かつ通電により発熱する発熱部とを備え、前記送信方向における前記発熱部の後面の一部は、前記ヒータフィルムから露出されており、前記カバー本体部は、さらに、導電性材料により形成され、かつ前記送信方向における前記発熱部よりも後方に配置されて、前記発熱部の前記後面のうち露出された箇所に接合される端子部を備え、前記カバー基材は、前記端子部が前記発熱部に接合された状態の前記ヒータフィルムの前記送信方向における後側に形成されている。
【0010】
上記の構成によれば、カバー基材の樹脂成形前に、端子部が発熱部の後面のうち、露出された箇所に接合される。この場合には、カバー基材が樹脂成形された後に端子部を発熱部に接合させる場合に比べ、同端子部を発熱部に接合させる際に受ける制約が少なくなる。すなわち、ヒータフィルムの一部、例えば、フィルム基材、カバー層等を削らなくても、発熱部をヒータフィルムから露出させることが容易である。これに伴い、上記のように露出した発熱部に端子部を接合させることが容易となる。
【0011】
そして、端子部が発熱部に接合されたヒータフィルムの後方にカバー基材が樹脂成形される。すると、ヒータフィルムとカバー基材とが一体となったカバー本体部を有する電磁波透過カバーが得られる。
【0012】
上記電磁波透過カバーにおいて、前記カバー基材は、前記端子部の前記発熱部に対する接合部分を覆った状態で形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、端子部が発熱部に接合された後に、カバー基材が形成されることで、その端子部の発熱部に対する接合部分がカバー基材によって覆われる。
【0013】
また、端子部の発熱部との接合部分へ水が浸入する現象が、同接合部分を覆うカバー基材によって規制される。
上記電磁波透過カバーにおいて、前記ヒータフィルムは、前記送信方向における前記フィルム基材の後面に接着層を有し、前記発熱部は前記接着層上に形成されており、前記ヒータフィルムと前記カバー基材との間には断熱層が形成されていることが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、カバー基材を形成する樹脂材料の種類によっては、同カバー基材の樹脂成形時の熱がヒータフィルムに伝わり、ヒータフィルムが熱の影響を受ける。フィルム基材が熱により軟化し、接着層が発熱部をフィルム基材に接着する力が低下し、発熱部がフィルム基材から剥がれるおそれがある。
【0015】
この点、上記の構成によるように、ヒータフィルムとカバー基材との間に断熱層が形成されると、同断熱層が断熱効果を発揮することで、カバー基材の樹脂成形時にヒータフィルムに伝わる熱が少なくなる。ヒータフィルムが受ける熱の影響が小さくなり、発熱部がフィルム基材から剥がれる現象が抑制される。
【0016】
上記課題を解決する電磁波透過カバーの製造方法は、電磁波を送信及び受信する装置が搭載された乗物に適用され、かつ前記電磁波の送信方向における前記装置の前方に配置されるカバー本体部を有し、前記カバー本体部が、電磁波透過性を有する樹脂製のカバー基材と、前記送信方向における前記カバー基材の前方に隣接するヒータフィルムとを備え、前記ヒータフィルムが、電磁波透過性を有するフィルム基材と、前記送信方向における前記フィルム基材よりも後方で帯状に形成され、かつ通電により発熱する発熱部とを備え、前記カバー本体部が、さらに、導電性材料により形成され、かつ前記送信方向における前記発熱部よりも後方に配置されて、前記発熱部に接合される端子部を備える電磁波透過カバーを製造する方法であって、前記送信方向における前記発熱部の後面の一部を露出させた状態の前記ヒータフィルムを作成するヒータフィルム作成工程と、前記発熱部の前記後面のうち露出された箇所に前記端子部を接触させた状態で、前記端子部を前記発熱部に接合する端子部接合工程と、前記発熱部に前記端子部が接合された前記ヒータフィルムをインサート部材として、前記送信方向における前記ヒータフィルムよりも後方に前記カバー基材をインサート成形するカバー基材成形工程とを備える。
【0017】
上記の方法によれば、電磁波透過カバーの製造に際し、ヒータフィルム作成工程、端子部接合工程及びカバー基材成形工程が順に行なわれる。
ヒータフィルム作成工程では、電磁波透過性を有するフィルム基材と、フィルム基材よりも後方に位置する発熱部とを備え、発熱部の後面の一部を露出させた状態のヒータフィルムが作成される。
【0018】
端子部接合工程では、端子部が、発熱部の後面のうち露出された箇所に接触させられた状態で、同発熱部に接合される。
このように、カバー基材の樹脂成形前に、端子部が発熱部に接合される。この場合には、カバー基材が樹脂成形された後に端子部を発熱部に接合させる場合に比べ、同端子部を発熱部に接合させる際に受ける制約が少なくなる。すなわち、ヒータフィルムの一部、例えば、フィルム基材、カバー層等を削らなくても、発熱部をヒータフィルムから露出させることが容易である。これに伴い、上記のように発熱部の後面のうち露出された箇所に端子部を接合させることが容易となる。
【0019】
カバー基材成形工程では、発熱部に端子部が接合されたヒータフィルムがインサート部材とされて、ヒータフィルムよりも後方にカバー基材がインサート成形される。すると、ヒータフィルムとカバー基材とが一体となったカバー本体部を有する電磁波透過カバーが得られる。
【0020】
上記電磁波透過カバーの製造方法において、前記端子部接合工程では、前記端子部と前記ヒータフィルムとに対し、前記送信方向に延びるかしめピンを挿通させ、前記かしめピンの端部を潰すことにより、前記端子部を前記発熱部に接合させることが好ましい。
【0021】
上記の方法によれば、端子部接合工程では、端子部及びヒータフィルムの両者に対し、かしめピンが挿通される。そして、かしめピンのうち、端子部及びヒータフィルムから出た端部が潰されることにより、端子部が発熱部に接合される。
【0022】
上記電磁波透過カバーの製造方法において、前記端子部接合工程では、前記端子部をはんだ付けにより前記発熱部に接合させることが好ましい。
上記の方法によれば、端子部接合工程では、端子部がはんだ付けされることにより、発熱部に接合される。すなわち、端子部及び発熱部の間と、周辺部分とに対し、はんだ合金が溶かされて付着される。その後、はんだ合金が硬化することで、はんだ接合部が形成される。このはんだ接合部により、端子部が発熱部に接合される。
【発明の効果】
【0023】
上記電磁波透過カバー及び電磁波透過カバーの製造方法によれば、端子部を発熱部に低コストで簡単に接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態のミリ波透過カバーの部分断面図。
【
図2】
図1のミリ波透過カバーにおける端子部の断面図。
【
図3】
図1のミリ波透過カバーにおけるコネクタの断面図。
【
図4】第1実施形態のミリ波透過カバーを製造する途中の形態を示す部分断面図。
【
図5】同じく、第1実施形態のミリ波透過カバーを製造する途中の形態を示す部分断面図。
【
図6】同じく、第1実施形態のミリ波透過カバーを製造する途中の形態を示す部分断面図。
【
図7】同じく、第1実施形態のミリ波透過カバーを製造する途中の形態(中間体)を示す部分断面図。
【
図8】第2実施形態のミリ波透過カバーの部分断面図。
【
図9】第3実施形態のミリ波透過カバーの部分断面図。
【
図10】第4実施形態のミリ波透過カバーの部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、電磁波透過カバーを車両用のミリ波透過カバーに具体化した第1実施形態について、
図1~
図7を参照して説明する。
【0026】
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、
図1~
図7では、ミリ波透過カバーにおける各部を認識可能な大きさとするために、縮尺を適宜変更して各部を示している。この点は、第2実施形態を示す
図8についても、また、第3実施形態を示す
図9についても、さらには第4実施形態を示す
図10についても同様である。
【0027】
図1に示すように、車両10の前端部の車幅方向における中央部分には、電磁波を送信及び受信する装置として、前方監視用のミリ波レーダ装置11が搭載されている。
図1では、ミリ波レーダ装置11の一部のみが図示されている。ミリ波レーダ装置11は、電磁波におけるミリ波を、車外のうち前方へ向けて送信し、かつ、車外の物体に当たって反射されたミリ波を受信する機能を有する。ミリ波とは、波長が1mm~10mmであり、周波数が30GHz~300GHzである電波をいう。
【0028】
なお、上述したように、ミリ波レーダ装置11が車両10の前方に向けてミリ波を送信することから、ミリ波レーダ装置11によるミリ波の送信方向は、車両10の後方から前方へ向かう方向である。ミリ波の送信方向における前方は、車両10の前方と概ね合致し、同送信方向における後方は車両10の後方と概ね合致する。そのため、以後の記載では、ミリ波の送信方向における前方を単に「前方」、「前」等といい、同送信方向における後方を単に「後方」、「後」等というものとする。
【0029】
ミリ波レーダ装置11の前方には、ミリ波透過カバー15が配置されている。ミリ波透過カバー15は、その前面が車両10の前方を向き、かつ後面が車両10の後方を向くように、起立した状態で配置される。ミリ波透過カバー15の前面は、同ミリ波透過カバー15の意匠面16を構成している。
【0030】
ミリ波透過カバー15の主要部は、カバー本体部17によって構成されている。
図1は、カバー本体部17の一部を拡大して示している。カバー本体部17は、カバー基材18、ヒータフィルム21及び前基材19を備えている。
【0031】
カバー基材18及び前基材19は、いずれも電磁波透過性としてのミリ波透過性を有する樹脂材料を用いて樹脂成形することによって形成されている。カバー基材18及び前基材19の形成に用いられる各樹脂材料は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。第1実施形態では、前基材19は、PC(ポリカーボネート)樹脂によって形成され、カバー基材18は、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合)樹脂によって形成されている。
【0032】
ヒータフィルム21は、カバー基材18と前基材19との間に配置されており、上記樹脂製のカバー基材18の前方に隣接する箇所に位置している。ヒータフィルム21は、フィルム基材22、接着層23、発熱部24及びレジスト層25を備えている。
【0033】
フィルム基材22は、ヒータフィルム21の骨格部分をなす部分であり、ミリ波透過性を有する樹脂材料であって、前基材19の樹脂材料とは異なる種類の樹脂材料によって形成されている。第1実施形態では、フィルム基材22は、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂によって形成されている。
【0034】
接着層23は、発熱部24をフィルム基材22に接着する機能を有している。接着層23としては、OCA(OPTICAL CLEAR ADHESIVE)と呼ばれるフィルム状の光学粘着シートが用いられてもよい。
【0035】
発熱部24は、導電性発熱材料からなる箔によって形成されている。発熱部24は、フィルム基材22よりも後方で帯状に形成されており、通電により発熱する。第1実施形態では、発熱部24は銅箔によって形成されている。発熱部24は、所定の配線パターン、例えば、互いに平行に延びる複数の直線部と、隣り合う直線部の端部同士を連結する複数の連結部とを備える配線パターンで配線されるように、接着層23上に形成されている。
【0036】
レジスト層25は、絶縁材料からなり、接着層23上であって、発熱部24の多くの部分の周りに形成されている。ただし、発熱部24のうち、後述する一対の端子部33が接合される予定の箇所にはレジスト層25は形成されていない。すなわち、発熱部24の一部の後方には、レジスト層25のない領域が2箇所設けられている。これらの領域では、発熱部24の後面が、ヒータフィルム21から露出している。発熱部24の後面のうち、上記のように露出した2箇所を、同後面の他の箇所と区別するために、それぞれ露出面24aというものとする。
【0037】
フィルム基材22と前基材19との間にはバインダ層26が形成されている。バインダ層26は、前基材19の樹脂成形時に、溶融状態の樹脂材料から熱が伝わり、圧力が加わることで、接着力を発揮して、前基材19とフィルム基材22との密着性を高める機能を有している。なお、フィルム基材22が前基材19と同一種類の樹脂材料によって形成される場合には、前基材19とフィルム基材22とが密着するため、バインダ層26は省略可能である。
【0038】
レジスト層25とカバー基材18との間には、上記バインダ層26と同様のバインダ層27が形成されている。バインダ層27は、カバー基材18の樹脂成形時に、溶融状態の樹脂材料から熱が伝わり、圧力が加わることで、接着力を発揮して、カバー基材18とレジスト層25との密着性を高める機能を有している。
【0039】
カバー本体部17は、さらにコネクタ31を備えている。コネクタ31は、上記発熱部24に対し電力を供給するための機器100のコネクタ101が脱着可能に結合される部材である。コネクタ31は、コネクタハウジング32及び一対(
図1では一方のみ図示)の端子部33を備えている。
【0040】
図1及び
図3に示すように、コネクタハウジング32は、電気絶縁性を有する材料によって形成されている。コネクタハウジング32の前部32fは、カバー本体部17の内部であって、発熱部24よりも後方に埋設されている。コネクタハウジング32の後部32rは、後面が開放された筒状をなし、カバー基材18から後方へ突出している。
【0041】
図1及び
図2に示すように、両端子部33は、それぞれ導電性を有する金属材料が導電性材料として用いられて、互いに同一の形状となるように形成されている。両端子部33は、発熱部24よりも後方において、露出面24aに沿う方向のうち、紙面に直交する方向へ互いに離間した状態で配置されている。
【0042】
各端子部33は、基部34、接続部35及び被結合部36を備えている。端子部33毎の基部34は、楕円柱状等の塊状をなしている。端子部33毎の接続部35は平板状をなし、基部34の前端部から、発熱部24の露出面24aに沿う方向へ延びている。端子部33毎の基部34の前面、及び接続部35の前面は、対応する露出面24aに接触している。端子部33毎の被結合部36は、平板状又は棒状をなし、基部34から後方へ延びている。
【0043】
図1及び
図3に示すように、各端子部33において、基部34と被結合部36の前部とは、上記前部32fによって被覆されている。端子部33毎の被結合部36の後部は、筒状の上記後部32r内に位置している。
【0044】
図3及び
図4に示すように、端子部33毎の接続部35には貫通孔37があけられている。また、ヒータフィルム21において、上記貫通孔37の前方となる箇所には、貫通孔38が貫通孔37に連通した状態であけられている。そして、
図1に示すように、貫通孔37,38の組合わせ毎に、前後方向に延びるかしめピン39が挿通されている。各かしめピン39の端部が押し潰されて拡径されることにより、端子部33毎の接続部35が、対応する露出面24aにおいて発熱部24に接合されている。
【0045】
なお、上記コネクタ31には、市販されている一般的なコネクタと同様、ゴム等の弾性材料によって形成された止水部材(図示略)が設けられている。
さらに、カバー基材18は、両端子部33が発熱部24に接合された状態のヒータフィルム21よりも後方に形成されている。カバー基材18は、両端子部33の発熱部24に対する接合部分と、上記前部32fとを覆っている。
【0046】
ミリ波透過カバー15は、上記カバー本体部17のほかに、同カバー本体部17を車両10に取付けるための取付部(図示略)等を備えている。
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用について、ミリ波透過カバー15の製造方法とともに説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
【0047】
ミリ波透過カバー15は、コネクタ作成工程、ヒータフィルム作成工程、端子部接合工程、バインダ層形成工程、前基材成形工程及びカバー基材成形工程を経ることによって形成される。
【0048】
<コネクタ作成工程>
コネクタ作成工程では、導電性を有する金属材料が用いられて、
図2に示す端子部33が加工される。加工された一対の端子部33をインサート部材として、コネクタハウジング32がインサート成形される。すると、
図3に示すように、各端子部33の一部がコネクタハウジング32によって被覆されたコネクタ31が得られる。
【0049】
<ヒータフィルム作成工程>
図4に示すように、ヒータフィルム作成工程では、フィルム基材22の後面に上記OCAが貼付けられることによって、接着層23が形成される。
【0050】
接着層23上に導電性発熱材料からなる箔、ここでは銅箔が、ロール等で押付けられて貼付けられる。
次に、接着層23を介してフィルム基材22に貼付けられた箔に対し、パターニング加工が行なわれる。パターニング加工は、フォトリソグラフィー及び光学マスクのプロセスを行なうことで、接着層23上の箔のうち、不要な部分を除去することで、帯状をなし、かつ所定の配線パターンで配線された発熱部24を形成する加工法である。
【0051】
発熱部24のうち各露出面24aを有する箇所と、フィルム基材22及び接着層23とに対し貫通孔38があけられる。
接着層23上であって、発熱部24の周りにソルダーレレジスト等が塗布されることによってレジスト層25が形成される。この際、発熱部24のうち各露出面24aを有する箇所にはレジスト層25が形成されない。すると、発熱部24の後面の一部(2箇所)が露出面24aとして露出した状態のヒータフィルム21が得られる。なお、レジスト層25の形成後に各貫通孔38があけられてもよい。
【0052】
<端子部接合工程>
図5に示すように、端子部接合工程では、端子部33毎の接続部35の前面及び基部34の前面が、発熱部24の対応する露出面24aに接触させられた状態で、各端子部33が、発熱部24に接合される。この接合に際しては、各端子部33の貫通孔37と、ヒータフィルム21の対応する貫通孔38とに対し、かしめピン39が挿通される。そして、各かしめピン39のうち、各端子部33及びヒータフィルム21から出た端部が押し潰されることにより、各端子部33が接続部35において、発熱部24に対し締結(かしめ固定)される。このかしめ固定により、各端子部33が発熱部24に接合される。
【0053】
このように、カバー基材18の樹脂成形前に、両端子部33が発熱部24に接合される。カバー基材18が樹脂成形された後に各端子部33を発熱部24に接合させる場合に比べ、同端子部33を発熱部24に接合させる際に受ける制約が少なくなる。すなわち、ヒータフィルム21の一部、例えば、フィルム基材22、接着層23等を削らなくても、発熱部24をヒータフィルム21から露出させることが容易である。これに伴い、上記のように発熱部24の各露出面24aに各端子部33を接合させることが容易となる。
【0054】
<バインダ層形成工程>
図6に示すように、バインダ層形成工程では、フィルム基材22の前面に対しバインダ層26が形成され、レジスト層25の後面に対しバインダ層27が形成される。バインダ層26,27は、例えば、粉体塗装、スクリーン印刷等を行なうことによって形成することができる。なお、バインダ層27は、コネクタ31の前部の周りであって、各露出面24aの周りとなる箇所には形成されない。
【0055】
<前基材成形工程>
図7に示すように、前基材成形工程では、上記のように発熱部24に一対の端子部33が接合され、かつバインダ層26,27が形成されたヒータフィルム21をインサート部材として、前基材19がインサート成形される。すると、前基材19がフィルム基材22に対しバインダ層26を介して接着された中間体40が得られる。
【0056】
<カバー基材成形工程>
図1に示すように、カバー基材成形工程では、上記中間体40をインサート部材として、カバー基材18がインサート成形される。すると、ヒータフィルム21を含む中間体40とカバー基材18とが一体となったカバー本体部17を有する、目的とするミリ波透過カバー15が得られる。
【0057】
このミリ波透過カバー15は、取付部において車両に取付けられる。上記ミリ波透過カバー15のコネクタ31に対し、機器100のコネクタ101が結合されることで、発熱部24が両端子部33を介して機器100に対し電気的に接続される。
【0058】
ところで、ミリ波透過カバー15の意匠面16に氷雪が付着した場合には、電力が機器100のコネクタ101、ミリ波透過カバー15のコネクタ31における両端子部33を介して発熱部24に供給される。発熱部24は、通電されると発熱する。発熱部24が発した熱の一部は、ミリ波透過カバー15の意匠面16に伝達される。この熱により、意匠面16に付着している氷雪が融解され、氷雪によるミリ波の減衰が抑制される。
【0059】
また、
図1に示すミリ波レーダ装置11からミリ波が送信されると、そのミリ波は、ミリ波透過カバー15におけるカバー本体部17の各部を透過する。透過したミリ波は、先行車両、歩行者等を含む車両前方の物体に当たって反射された後、再びカバー本体部17を透過し、ミリ波レーダ装置11によって受信される。ミリ波レーダ装置11では、送信及び受信された上記ミリ波に基づき、物体の認識や、車両10と同物体との距離、相対速度等の検出が行われる。
【0060】
第1実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・ヒータフィルムの一形態として、第1実施形態とは異なり、ヒータ線をフィルム基材上に配線したタイプのヒータフィルムが知られている。ヒータ線は、銅等の導電性発熱材料からなる線状の発熱部と、ウレタン樹脂等の樹脂材料からなり、かつ発熱部を被覆する被覆部とからなる。
【0061】
上記タイプのヒータフィルムでは、被覆部が、端子部の発熱部に対する電的接続の妨げとなる。そのため、端子部を発熱部に接続する際には、被覆部のうち、接合部分に対応する箇所を、削り取る、溶かす等して除去する必要がある。しかし、この作業は繁雑である。
【0062】
これに対し、第1実施形態では、上述したように、発熱部24として、導電性発熱材料からなる箔によって形成されたものが用いられている。この箔は、被覆部によって被覆されておらず、露出している。そのため、被覆部を削り取る等の面倒な作業を行なわなくてすむ。これに伴い、ミリ波透過カバー15の製造コストを低減することができる。
【0063】
・前基材19及びカバー基材18を形成する樹脂材料の種類に応じて、バインダ層26,27を形成する材料の種類を変えることが可能である。適切な種類の材料を選択し使用することで、前基材19及びカバー基材18を形成する樹脂材料の種類に拘わらず、ヒータフィルム21と前基材19とを一体成形し、ヒータフィルム21とカバー基材18とを一体成形することができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、電磁波透過カバーを車両用のミリ波透過カバーに具体化した第2実施形態について、
図8を参照して説明する。
【0065】
上述した第1実施形態では、一対の端子部33とコネクタハウジング32とによってコネクタ31を構成した。そして、各端子部33を、コネクタ31の構成部材の一部として発熱部24に接合させた。
【0066】
これに対し、第2実施形態のミリ波透過カバー50では、一対の端子部51が、コネクタハウジング32を伴うことなく単独で、対応する露出面24aにおいて発熱部24に接合されている。両端子部51は、導電性を有する金属材料からなる板材によって形成されている。各端子部51は、接続部52及び被結合部53を備えている。端子部51毎の接続部52は、発熱部24の露出面24aに沿う方向へ延びていて、対応する露出面24aに接触している。端子部51毎の被結合部53は、接続部52の一方の端部から後方へ延びている。
【0067】
各端子部51の発熱部24に対する接合は、第1実施形態と同様、かしめピン39を用いたかしめ固定によってなされている。
樹脂製のカバー基材18において、両端子部51の周辺箇所には、後面が開放された凹部54が形成されている。
【0068】
第2実施形態では、コネクタハウジング32が用いられないため、止水対策が別途必要となる。各かしめピン39によって各端子部51を発熱部24にかしめ固定した箇所及びその周辺部分が露出しているからである。
【0069】
そこで、上記凹部54内であって、両端子部51の発熱部24に対する接合部分の周囲には、その接合部分への水の浸入を規制する止水部55が設けられている。止水部55は、上記接合部分の周囲にポッティング材を充填することにより形成されている。ここで、ポッティング材とは、一般に、電気回路等を、衝撃や振動、あるいは湿気や腐食から保護することを目的として、電気回路全体を埋め込む充填材であり、ゴム状、ゲル状等をなす。ポッティング材としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。止水部55は、上記接合部分に直接接触し、同接合部分を後方から覆っている。
【0070】
止水部55は、凹部54内の前部に設けられている。凹部54内の止水部55よりも後方部分は空洞となっている。この空洞部分に機器100のコネクタ101(
図1参照)を嵌め込むことで、発熱部24が両端子部51を介し、機器100に電気的に接続される。
【0071】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
第2実施形態のミリ波透過カバー50は、以下の点を除き、第1実施形態と同様の工程を経ることにより製造される。
【0072】
・コネクタ作成工程に代えて、端子部51を加工する工程が行なわれる。
・端子部接合工程では、コネクタ31に代えて一対の端子部51が用いられ、発熱部24の対応する露出面24aに対し、各端子部51の接続部52がかしめ固定される。
【0073】
・カバー基材成形工程において、凹部54を有するカバー基材18がインサート成形される。
・カバー基材成形工程の後に、凹部54にポッティング材を充填して止水部55を形成する工程が行なわれる。
【0074】
従って、第2実施形態は、構成及び製造工程の点で第1実施形態と若干異なるものの、第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
(第3実施形態)
次に、電磁波透過カバーを車両用のミリ波透過カバーに具体化した第3実施形態について、
図9を参照して説明する。
【0075】
第3実施形態のミリ波透過カバー60では、各端子部51を、発熱部24の対応する露出面24aに対し、はんだ付けにより接合させている。
上記以外の構成は第2実施形態と同様である。そのため、第2実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0076】
なお、上記はんだ付けは、端子部接合工程において、かしめ固定に代えて行なわれる。すなわち、各端子部51の接続部52及び発熱部24の間と、周辺部分とに対し、はんだ合金が溶かされて付着される。その後、はんだ合金が硬化することで、はんだ接合部61が形成される。このはんだ接合部61により、各接続部52が発熱部24の対応する露出面24aに対し接合される。
【0077】
上記の点で、各端子部51が、端子部接合工程において、発熱部24に対し、かしめ固定により接合される第2実施形態と異なっている。
上記のように、はんだ合金からなるはんだ接合部61によって各端子部51の発熱部24に対する接合が行なわれることから、フィルム基材22、接着層23及び発熱部24に貫通孔38が不要となる。
【0078】
従って、第3実施形態によると、第2実施形態と同様の作用及び効果が得られる。この場合にも、各端子部51の発熱部24に対する接合部分を覆う止水部55によって、止水を行なうことができる。
【0079】
(第4実施形態)
次に、電磁波透過カバーを車両用のミリ波透過カバーに具体化した第4実施形態について、
図10を参照して説明する。
【0080】
第4実施形態のミリ波透過カバー70では、カバー基材18が融点の高いPC樹脂によって形成されている。この場合には、カバー基材18をインサート成形する際に、溶融状態の樹脂材料(PC樹脂)の熱が、ヒータフィルム21に伝わり、同ヒータフィルム21が熱の影響を受ける。フィルム基材22が熱により軟化し、接着層23によって発熱部24をフィルム基材22に接着する力が低下し、発熱部24がフィルム基材22から剥がれるおそれがある。
【0081】
そこで、第4実施形態では、ヒータフィルム21のバインダ層27とカバー基材18との間に断熱層71が形成されている。断熱層71としては、エアロゲルの一種であるエアロシリカゲルを含有したものが用いられてもよい。エアロゲルは、ゲル中に含まれる溶媒を超臨界乾燥により気体に置換した多孔性の物質である。なかでも、エアロシリカゲルは、内部に網目状の微細構造を有しており、熱伝導率が低く、優れた断熱性を有している。また、断熱層71として、中空のマイクロカプセルを含有したものが用いられてもよい。
【0082】
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第4実施形態によると、第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。そのほかにも、次の作用及び効果が得られる。
【0083】
すなわち、断熱層71が断熱効果を発揮することで、カバー基材18の樹脂成形時にヒータフィルム21に伝わる熱が少なくなる。ヒータフィルム21が受ける熱の影響が小さくなり、発熱部24がフィルム基材22から剥がれる現象が抑制される。
【0084】
なお、断熱のために、バインダ層27よりも後方に、上記断熱層71に代えて、バッカーと呼ばれる裏打ちシートを配置することも考えられる。このバッカーにより、カバー基材18のインサート成形時に、溶融状態の樹脂材料の熱がバインダ層27、レジスト層25及び接着層23に伝達されるのを抑制できる。反面、カバー本体部17のうち、前基材19とカバー基材18とによって挟まれた部分の厚みが、バッカーのシートの分増える。
【0085】
この点、第4実施形態によれば、断熱層71として、上記エアロシリカゲル、マイクロカプセル等を含有したものを用いることで、同断熱層71をバッカー(裏打ちシート)よりも薄く形成することが可能である。従って、カバー本体部17のうち、前基材19とカバー基材18とによって挟まれた部分の厚みを小さくできる。
【0086】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0087】
・一対の端子部33をコネクタ31の構成部材の一部として用いた第1実施形態でも第3実施形態と同様に、端子部接合工程において、各端子部33の接続部35をはんだ付けにより発熱部24に接合させてもよい。
【0088】
・第4実施形態において、新たに断熱層71を設ける代わりに、バインダ層27及びレジスト層25の少なくとも一方に、上述したエアロシリカゲル、マイクロカプセル等が含有されてもよい。このようにしても、第4実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0089】
・第4実施形態における断熱層71は、第2実施形態におけるミリ波透過カバー50、及び第3実施形態におけるミリ波透過カバー60に設けられてもよい。
・上記ミリ波透過カバー15,50,60,70は、車両のエンブレム、オーナメント、マーク等に具体化することができる。
【0090】
・上記電磁波透過カバーは、車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置が搭載された車両であれば適用可能である。この場合、装置が送信及び受信する電磁波には、ミリ波のほかにも、近赤外線等の電磁波が含まれる。
【0091】
・車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置は、前方監視用以外にも、後方監視用、前側方監視用、又は後側方監視用の装置であってもよい。この場合、電磁波透過カバーは、電磁波の送信方向における上記装置の前方に配置される。
【0092】
・電磁波透過カバーは、電磁波を送信及び受信する装置が、車両とは異なる種類の乗物、例えば、電車、航空機、船舶等の乗物に搭載された場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
10…車両(乗物)
11…ミリ波レーダ装置(装置)
15,50,60,70…ミリ波透過カバー(電磁波透過カバー)
17…カバー本体部
18…カバー基材
21…ヒータフィルム
22…フィルム基材
23…接着層
24…発熱部
33,51…端子部
39…かしめピン
71…断熱層