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特開2022-152831ベンゾオキサジン系化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152831
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ベンゾオキサジン系化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 265/16 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
C07D265/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055759
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 敦
(72)【発明者】
【氏名】古川 誉士夫
(57)【要約】
【課題】反応時間、生成物の収率、および環境負荷に優れる、ベンゾオキサジン系化合物の新たな製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るベンゾオキサジン系化合物の製造方法は、フェノールと、所定のジアミンと、パラホルムアルデヒドとの混合物を加熱して反応させる反応工程を含み、上記混合物の固形分濃度が80~100重量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フェノールと、(B)下記一般式(1)で示されるジアミンと任意成分としてのモノアミンとを含むアミン系組成物と、(C)パラホルムアルデヒドとの混合物を加熱して反応させる反応工程を含み、上記混合物の固形分濃度が80~100重量%である、ベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【化1】
式(1)中、R1は下記一般式(2)で示される。
【化2】
式(2)中、L1およびL3がO(エーテル結合)であり、L2はO(エーテル結合)、C=O、SO、C(CH、C(CF、またはCHのいずれかであり、p、q、r、s、tが0または1である。ただし、p+q+r+s+t≧1であり、s=0の場合はpまたはqが0、t=0の場合はqまたはrが0である。
【請求項2】
上記反応工程において、加熱温度が90℃以上である、請求項1に記載のベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【請求項3】
上記反応工程において、加熱時間が5時間以下である、請求項1または2に記載のベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【請求項4】
上記混合物は、(D)沸点が100℃以上である溶媒を、0重量%より多く、20重量%より少ない量含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【請求項5】
上記溶媒(D)が、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、1,4-ジオキサン、トルエン、酢酸n-ブチル、および炭酸ジエチルからなる群より選択される1種以上である、請求項4に記載のベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【請求項6】
上記反応工程が終了した時点において、生成物の固形分濃度が100重量%未満の場合に、当該生成物を洗浄する精製工程をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【請求項7】
上記ジアミンの融点が、60℃以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の、ベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【請求項8】
上記ジアミンが、下記式(3)~(16)の化合物から選択される1種類以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の、ベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【化3】
【請求項9】
(A1)フェノールを含むモノフェノール系組成物と、(B1)ジアミンと任意成分としてのモノアミンとを含むアミン系組成物と、(C)パラホルムアルデヒドとの混合物を、または、(A2)ビスフェノールを含むフェノール系組成物と、(B2)アニリンを含むモノアミン系組成物と、(C)パラホルムアルデヒドとの混合物を、加熱して反応させる反応工程を含み、上記混合物の固形分濃度が80~100重量%である、ベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾオキサジン系化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベンゾオキサジン系化合物は、溶液を用いた方法(溶液法)によって主に合成されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定のビスフェノール化合物とホルムアルデヒドとの混合物に、1級アミンを徐々に加えながら反応させる、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物の製造方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、特定のビスフェノール化合物と、パラホルムアルデヒドと、アミン化合物とを特定の溶媒の存在下で混合および熱処理する製造方法が開示されている。
【0005】
さらに、非特許文献1には、ジアミンとフェノールとをトルエン/エタノール中にて反応させる、ポリベンゾオキサジンの製造方法が開示されている。
【0006】
一方で、溶媒を用いないベンゾオキサジン系化合物の製造方法も存在している。例えば特許文献3には基質としてフェノールと、パラホルムアルデヒドと、m-クレゾールとを使用した、ベンゾオキサジンモノマーの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-217941号公報
【特許文献2】特開2012-126900号公報
【特許文献3】米国公開特許2017/0166537号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Sarychev et al. "Benzoxazine monomers based on aromatic diamines and investigation of their polymerization by rheological and thermal methods" J Appl Polym Sci. 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したベンゾオキサジン系化合物の製造方法は、反応時間、生成物の収率、環境負荷の面において、改善の余地があった。本発明の一実施形態は上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、従来の製造方法と比べて、反応時間が短く、従来と同等以上のベンゾオキサジン系化合物の収率であり、また、溶媒を使用する従来の製造方法に比べて、本製造方法では使用する溶媒が少ないことにより環境負荷が低い、ベンゾオキサジン系化合物の新たな製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、フェノールと、特定の構造を有するジアミンと、パラホルムアルデヒドと、を溶液法よりも高い固形分濃度にて加熱反応させることにより、従来よりも反応時間、生成物の収率、および環境負荷に優れる方法によりベンゾオキサジン系化合物の製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明の一態様は、以下の構成を含む。
【0011】
<1>(A)フェノールと、(B)下記一般式(1)で示されるジアミンと任意成分としてのモノアミンとを含むアミン系組成物と、(C)パラホルムアルデヒドとの混合物を加熱して反応させる反応工程を含み、上記混合物の固形分濃度が80~100重量%である、ベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【0012】
【化1】
【0013】
式(1)中、R1は下記一般式(2)で示される。
【0014】
【化2】
【0015】
式(2)中、L1およびL3がO(エーテル結合)であり、L2はO(エーテル結合)、C=O、SO、C(CH、C(CF、またはCHのいずれかであり、p、q、r、s、tが0または1である。ただし、p+q+r+s+t≧1であり、s=0の場合はpまたはqが0、t=0の場合はqまたはrが0である。
【0016】
<2>上記反応工程において、加熱温度が90℃以上である、<1>に記載のベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【0017】
<3>上記反応工程において、加熱時間が5時間以下である、<1>または<2>に記載のベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【0018】
<4>上記混合物は、(D)沸点が100℃以上である溶媒を、0重量%より多く、20重量%より少ない量含む、<1>~<3>のいずれかに記載のベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【0019】
<5>上記溶媒(D)が、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、1,4-ジオキサン、トルエン、酢酸n-ブチル、および炭酸ジエチルからなる群より選択される1種以上である、<4>に記載のベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【0020】
<6>上記反応工程が終了した時点において、生成物の固形分濃度が100重量%未満の場合に、反応生成物を洗浄する精製工程をさらに含む、<1>~<5>のいずれかに記載のベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【0021】
<7>上記ジアミンの融点が、60℃以上である、<1>~<6>のいずれかに記載の、ベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【0022】
<8>上記ジアミンが、下記式(3)~(16)の化合物から選択される1種類以上である、<1>~<6>のいずれかに記載の、ベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【0023】
【化3】
【0024】
<9>(A1)フェノールを含むモノフェノール系組成物と、(B1)ジアミンと任意成分としてのモノアミンを含むアミン系組成物と、(C)パラホルムアルデヒドとの混合物を、または、(A2)ビスフェノールを含むフェノール系組成物と、(B2)アニリンを含むモノアミン系組成物と、(C)パラホルムアルデヒドとの混合物を、加熱して反応させる反応工程を含み、上記混合物の固形分濃度が80~100重量%である、ベンゾオキサジン系化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、従来の方法に比べて、反応時間を短くし、生成物の収率を向上させ、環境負荷を低減できる、ベンゾオキサジン系化合物の新たな製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔1.ベンゾオキサジン系化合物の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る、ベンゾオキサジン系化合物の製造方法(以下、本製造方法とも称する。)は、(A)フェノールと、(B)下記一般式(1)で示されるジアミンと任意成分としてのモノアミンとを含むアミン系組成物と、(C)パラホルムアルデヒドとの混合物を加熱して反応させる反応工程を含み、上記混合物の固形分濃度が80~100重量%である。ここで、(B)アミン系組成物は、下記一般式(1)で示されるジアミンを30~100重量%、モノアミンを70~0重量%含むものであり、好ましくは下記一般式(1)で示されるジアミンを50~100重量%、モノアミンを50~0重量%含むものであり、より好ましくは下記一般式(1)で示されるジアミンを70~100重量%、モノアミンを30~0重量%含むものである。
【0027】
【化4】
【0028】
式(1)中、R1は下記一般式(2)で示される。
【0029】
【化5】
【0030】
式(2)中、L1およびL3がOであり、L2はO、C=O、SO、C(CH、C(CF、またはCHのいずれかであり、p、q、r、s、tが0または1である。ただし、p+q+r+s+t≧1であり、s=0の場合はpまたはqが0、t=0の場合はqまたはrが0である。
【0031】
本発明者らは上述した通り、ベンゾオキサジン系化合物を製造する際に、溶媒の使用量を減らし、原料の固形分濃度(SC)を従来の溶液法よりも高い80~100重量%とすることによって、反応時間を短くし、かつ得られるベンゾオキサジン系化合物の収量を増やすことに成功した。また、これにより副生成物、あるいは未反応物の量を低減可能であり、結果としてパラホルムアルデヒドの消費量が増加する。このような着想に基づいて、ベンゾオキサジン系化合物を製造する技術は、従来にはなかったものであり、驚くべきことである。
【0032】
なお、本明細書中、「環境負荷が低い」ことは、反応工程終了時に残存しているパラホルムアルデヒドの割合に基づいて評価することができる。反応工程終了時に残存しているパラホルムアルデヒドが少ない程、環境負荷が低いと評価できる。また、それとは別に、「環境負荷が低い」とは、ベンゾオキサジン系化合物を製造する際の、溶媒の使用量が少なくて済むことも意味する。
【0033】
<1-1.反応工程>
本製造方法は、(A)フェノールと、(B)上記一般式(1)で示されるジアミンを含むアミン系組成物と、(C)パラホルムアルデヒドとの混合物を加熱して反応させる反応工程を有する。
【0034】
上記反応工程は例えば、原料である、(A)フェノールと、(B)アミン系組成物と、(C)パラホルムアルデヒドとを混合し、混合物とした後、三口フラスコ等に投入し、加熱することによって実施される。
【0035】
上記反応工程において、(B)アミン系組成物がジアミンのみからなる場合は、(A)フェノール:上記ジアミン:(C)パラホルムアルデヒドのモル比率は、2:1:4~2:1:6であることが好ましい。モル比率が上記範囲であれば、生成物の収率に優れる。ここで、(B)アミン系組成物がモノアミンを含む場合は、2モルのモノアミンを1モルのジアミンとして換算し、ジアミンとのモル数を合算したうえで、モル比率を計算すれば良い。また、アミン系組成物の添加順序としては、ジアミンとモノアミンを同時添加し反応させても良いし、モノアミンを先に添加し一部反応を行った後にジアミンを添加してもよい。モノアミンを先に添加した場合、ジアミンとパラホルムアルデヒドとの反応によるゲルの発生を抑制することができる。
【0036】
上記反応工程において、加熱温度は、90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましく、130℃以上が最も好ましい。加熱反応時の温度が80℃以上であれば、本製造方法において使用される上記ジアミンの融点を上回り得るため、上記ジアミンを溶融させることが可能となり、反応工程の効率が向上する。加熱反応時の温度の上限は特に限定されないが、例えば250℃以下であってもよい。
【0037】
上記反応工程において、加熱時間は、5時間以下が好ましく、4時間以下がより好ましく、3時間以下がさらに好ましく、2時間以下が最も好ましい。上記反応工程を行う時間が上記範囲内であれば、従来の製造方法よりも短時間であるため、ベンゾオキサジン系化合物の製造効率が向上する。上記加熱時間の下限は、十分に原料の加熱反応を行うことができれば特に限定されないが、例えば20分以上であってもよい。
【0038】
上記反応工程における加熱時間を決定する方法は、特に限定されないが、例えば、原料である(A)フェノールの消費量に基づいて決定することができる。(A)フェノールの消費量に基づいて上記加熱時間を決定する場合、(A)フェノールが90%以上消費されると予測される時間を加熱時間としてもよい。(A)フェノールの消費量は1H-NMRによって測定することができる。
【0039】
上記反応工程においては、上記混合物を加熱しながら撹拌することが好ましい。撹拌は、例えば、撹拌翼、マグネチックスターラーまたは振盪機などによって行うことができるがこれに限らない。
【0040】
上記反応工程を実施する前に、あらかじめ上記混合物を予備加熱しておいてもよい。予備加熱を行うことにより、(A)フェノールと、(B)上記ジアミンを含むアミン系組成物とが分散しやすくなる。予備加熱温度は特に限定されないが、例えば30~70℃程度であってもよい。
【0041】
本製造方法の反応工程において、SCは80重量%より多く、100重量%未満であることがより好ましく、85~99重量%であることがさらに好ましく、90~98重量%が最も好ましい。本明細書中「固形分濃度(SC)」とは、本製造方法における、(B)上記ジアミンを含むアミン系組成物、(A)フェノール、(C)パラホルムアルデヒドが全て固体になっていると仮定した場合の、混合物中の固形物の割合である。本製造方法の反応工程において、SCが80重量%以上であれば、原料が高濃度になるため、反応に要する時間が短くなり、得られるベンゾオキサジン系化合物の収量が向上する。本製造方法の反応工程において、SCは例えば溶媒を上記混合物中に添加することによって調整することができる。
【0042】
本製造方法の反応工程において、上記混合物は、(D)沸点が100℃以上である溶媒を、0重量%より多く、20重量%より少ない量含むことが好ましい。上記溶媒(D)の使用量は、1~15重量%がより好ましく、2~10重量%がさらに好ましい。上記溶媒(D)の使用量が20重量%より少なければ、原料が高濃度になるため、反応に要する時間が短くなり、得られるベンゾオキサジン系化合物の収量が向上する。また、上記溶媒(D)の使用量が0重量%より多ければ、以下のような優位性がある。例えば通常の溶融法(溶媒を用いない製法)の反応温度では溶融しない、すなわち融点の高い原料を使用することができる。また、溶融法においてそれぞれの原料は溶融するが、組み合わせると不均一相となるため反応が進みにくい原料も存在し得る。上記溶媒の使用量が0重量%より多ければ、そのような原料の組み合わせも使用することができる。
【0043】
上記溶媒(D)の沸点は、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。上記溶媒(D)の沸点が上記範囲であれば、上記加熱反応中、反応物中の溶媒(D)が蒸発せず、溶媒(D)が反応物中に存在し続けるため、反応の安定性に優れる。
【0044】
上記溶媒(D)は有機溶媒、あるいは水性溶媒のいずれであってもよいが、上述した沸点の観点から、有機溶媒であることが好ましい。
【0045】
上記溶媒(D)としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、1,4-ジオキサン、トルエン、酢酸n-ブチル、および炭酸ジエチルからなる群より選択される1種以上であってもよい。この中でも、原料の溶解性が高い観点から上記溶媒(D)はNMPであることが好ましい。
【0046】
(ジアミン)
本製造方法において使用される(B)アミン系組成物は、以下の一般式(1)で表されるジアミンを含む。
【0047】
【化6】
【0048】
式(1)中、R1は下記一般式(2)で示される。
【0049】
【化7】
【0050】
式(2)中、L1およびL3がOであり、L2はO、C=O、SO、C(CH、C(CF、またはCHのいずれかであり、p、q、r、s、tが0または1である。ただし、p+q+r+s+t≧1であり、s=0の場合はpまたはqが0、t=0の場合はqまたはrが0である。
【0051】
上記ジアミンは、アミノ基がR1に対して、パラ位、オルト位、メタ位のいずれであってもよい。また、各アミノ基はR1に対して同じ配位であってもよいし、異なる配位であってもよい。すなわち、例えば、両方のアミノ基がR1に対してパラ位であってもよいし、一方のアミノ基がメタ位、もう一方のアミノ基がパラ位であってもよい。これらの中では、両方のアミノ基がR1に対してパラ位であるか、両方のアミノ基がR1に対してメタ位であるか、一方のアミノ基がメタ位でありもう一方のアミノ基がパラ位であることが好ましい。また、両方のアミノ基がR1に対してパラ位であるか、一方のアミノ基がメタ位でありもう一方のアミノ基がパラ位であることがより好ましい。さらに、両方のアミノ基がR1に対してパラ位であることが最も好ましい。
【0052】
上記式(2)において、L1、L2、およびL3の配位は特に限定されない。すなわち、式(1)の場合と同様に、L1およびL3が、L2に対してパラ位、オルト位、メタ位のいずれであってもよい。
【0053】
上記式(2)において、p~tは0または1である。上記p~tのうち、値が0である部分は、炭素同士の単結合となる。すなわち、例えばqが0である場合は、L2の両隣のベンゼン環の炭素同士が単結合する。この場合も配位は特に限定されない。すなわち、L3が結合したベンゼン環が、L1に対して、パラ位、オルト位、メタ位のいずれであってもよい。また、上記式(2)において、p+q+r+s+t≧1である。すなわち、p~tの全てが0にはならない。すなわち、上記式(1)のベンゼン環同士が直接結合することはない。
【0054】
上記式(2)において、s=0の場合、pまたはqが0となる。また、t=0の場合は、qまたはrが0となる。すなわち、L1(エーテル結合)とL2が連続することはなく、L2とL3(エーテル結合)が連続することもない。
【0055】
上記ジアミンは、融点が60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。ジアミンの融点が上記範囲であれば、反応性に優れるため、ベンゾオキサジン系化合物の製造効率が向上する。上記ジアミンの融点の上限は特に限定されないが、現実的には250℃以下であってもよい。
【0056】
上記ジアミンは、具体的には、以下の化合物から選択される1種類以上であってもよい。
【0057】
1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン〔RODA〕(下記式(3)、融点:115.0~119.0℃)
【0058】
【化8】
【0059】
3,4’-ジアミノジフェニルエーテル〔3,4’-ODA〕(下記式(4)、融点:67~71℃)
【0060】
【化9】
【0061】
3,3’-メチレンジアニリン〔3,3’-MDA〕(下記式(5)、融点:82.0~85.0℃)
【0062】
【化10】
【0063】
4,4’-メチレンジアニリン〔4,4’-MDA〕(下記式(6)、融点:91.0~94.0℃)
【0064】
【化11】
【0065】
1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン〔TPE-M〕(下記式(7)、融点:107.0~109.0℃)
【0066】
【化12】
【0067】
2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン〔BAPP〕(下記式(8)、融点:128.0~131.0℃)
【0068】
【化13】
【0069】
4,4’-ジアミノジフェニルエーテル〔4,4’-ODA〕(下記式(9)、融点:190.0~194.0℃)
【0070】
【化14】
【0071】
4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル〔BAPB〕(下記式(10)、融点:196.0~200.0℃)
【0072】
【化15】
【0073】
4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル〔3,3’-BAPB〕(下記式(11))
【0074】
【化16】
【0075】
3,3’-ジアミノベンゾフェノン〔3,3’-DABP〕、(下記式(12)、融点:149.0~156.0℃)
【0076】
【化17】
【0077】
4,4’-ジアミノベンゾフェノン〔4,4’-DABP〕、(下記式(13)、融点:245.0~249.0℃)
【0078】
【化18】
【0079】
3,3’-スルホニルジアニリン〔3,3’-DDS〕(下記式(14)、融点:170~173℃)
【0080】
【化19】
【0081】
4,4’-スルホニルジアニリン〔4,4’-DDS〕(下記式(15)、融点:175~177℃)
【0082】
【化20】
【0083】
ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン〔BAPS〕(下記式(16))
【0084】
【化21】
【0085】
上述した化合物の中でも、原料の融点が100℃~250℃の間にあることによる取り扱い性、得られるベンゾオキサジン系化合物の安定性および反応性、それから得られる硬化物の耐熱性および機械物性などの観点から、上記ジアミンは、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン〔RODA〕であることが好ましい。
【0086】
(モノアミン)
本製造方法において、モノアミンを使用する場合、例えば、アニリン、トルイジン類、キシリジン類、エチルアニリン類、エチニルアニリン類、クロロアニリン類、ブロモアニリン類、ニトロアニリン類、アミノフェノール類、アミノクレゾール類、アミノベンジルアルコール類、アニシジン類、フェネチジン類、アミノベンズアルデヒド類、アミノベンゾニトリル類、アミノビフェニル類、アミノフェニルフェニルエーテル類、アミノベンゾフェノン類、アミノフェニルフェニルスルフィド類、アミノフェニルフェニルスルホン類、ナフチルアミン類、アミノ-ナフトール類、アミノアントラセン類などの芳香族モノアミンを使用することができる。融点などには特に制限が無い。
【0087】
この中でも、取り扱い性、得られるベンゾオキサジン系化合物の安定性および反応性、それから得られる硬化物の耐熱性および機械物性などの観点から、アニリンまたはエチニルアニリン類が好ましい。モノアミンがエチニルアニリン類の場合、エチニル部位の熱架橋により硬化物の熱的特性をより向上させることが期待できる。
【0088】
(その他)
本製造方法において、(A)フェノールは、ベンゼン環にヒドロキシ基が1つだけ結合した、モノフェノールである。
【0089】
また、(C)パラホルムアルデヒドは、以下の一般式(17)によって表すことができる。
【0090】
【化22】
【0091】
<1-2.精製工程>
本製造方法は、上記反応工程が終了した時点において、生成物のSCが100重量%未満の場合に、当該生成物を洗浄する精製工程をさらに含んでもよい。上記精製工程は、上記生成物中に含まれる溶媒を除去するために実施される。
【0092】
上記精製工程において、上記生成物を洗浄する液体は特に限定されないが、例えば、水、アルカリ性溶液、および/または酸性溶液等であってもよい。上記アルカリ性溶液としては特に限定されないが、例えばNaOH水溶液等であってもよい。上記酸性溶液としては特に限定されないが、例えばHCl水溶液等であってもよい。洗浄にはいずれの溶液を用いてもよく、洗浄の順番も特に限定されない。すなわち、例えばアルカリ溶液による洗浄を行った後、水により洗浄してもよく、水による洗浄を行った後、アルカリ溶液により洗浄してもよい。また、アルカリ性溶液で洗浄した後、酸性溶液で洗浄してもよい。この中では、アルカリ溶液による洗浄、または水による洗浄が好ましく、アルカリ溶液による洗浄と水による洗浄とを組み合わせることがより好ましい。
【0093】
上記精製工程を行う前に、反応工程において得られた生成物を、クロロホルム等の溶媒を用いて希釈してもよい。なお、希釈に使用した溶媒は精製工程が終了した後に、減圧留去等によって除去することができる。
【0094】
<1-3.その他>
本製造方法は、(A1)フェノールを含むモノフェノール系組成物と、(B1)ジアミンと任意成分としてのモノアミンを含むアミン系組成物と、(C)パラホルムアルデヒドとの混合物、あるいは、(A2)ビスフェノールを含むフェノール系組成物と、(B2)アニリンを含むモノアミン系組成物と、(C)パラホルムアルデヒドとの混合物を、加熱して反応させる反応工程を含み、上記混合物のSCが80~100重量%である、ベンゾオキサジン系化合物の製造方法であってもよい。
【0095】
本製造方法の反応工程において、SCは80重量%より多く100重量%未満であることがより好ましく、85~99重量%であることがさらに好ましく、90~98重量%が最も好ましい。
【0096】
<1-3-1>
(A1)と(B1)と(C)との混合物を用いる場合について、以下に説明する。
【0097】
本製造方法の反応工程において、SCが100重量%である場合には、(A1)フェノールを含むモノフェノール系組成物は、フェノールのみからなることが好ましい。また、SCが80重量%以上、100重量%未満である場合には、(A1)フェノールを含むモノフェノール系組成物は、フェノールを51~100重量%、フェノール以外のモノフェノールを49~0重量%含むものであり、好ましくはフェノールを70~100重量%、フェノール以外のモノフェノールを30~0重量%含むものであり、より好ましくはフェノールを80~100重量%、フェノール以外のモノフェノールを20~0重量%含むものであり、最も好ましくはフェノールを90~100重量%、フェノール以外のモノフェノールを10~0重量%含むものである。
【0098】
上記の、フェノール以外のモノフェノールとしては、芳香環にフェノール性のヒドロキシル基を1つ以上有するものであり、例えばクレゾール類、3-メトキシフェノール類、4-エトキシフェノール類、フルオロフェノール類、フルオロクレゾール類、エチニルフェノール類、シアノフェノール類、ヒドロキシベンズアルデヒド類、ジメチルフェノール類、エチルフェノール類、ヒドロキシベンジルアルコール類、ヒドロキシベンゼンチオール類、クロロフェノール類、アリルフェノール類、ナフトール類、ニトロナフトール類、ヒドロキシピレンなどが挙げられ、融点などには特に制約が無い。この中でも、取り扱い性、得られるベンゾオキサジン系化合物の安定性および反応性、それから得られる硬化物の耐熱性および機械物性などの観点から、エチニルフェノール類が好ましい。モノフェノールがエチニルフェノールの場合、エチニル部位の熱架橋により硬化物の熱的特性をより向上させることが期待できる。
【0099】
なお、(A1)フェノールを含むモノフェノール系組成物と(B1)ジアミンと任意成分としてのモノアミンを含むアミン系組成物を使用する場合の条件、ならびに反応工程におけるSC、および加熱条件については、〔1.ベンゾオキサジン系化合物の製造方法〕において記載した通りである。
【0100】
<1-3-2>
(A2)と(B2)と(C)との混合物を用いる場合について、以下に記載する。
【0101】
本製造方法において、(A2)ビスフェノールを含むフェノール系組成物としてビスフェノールのみを使用する場合、ビスフェノール:アニリンおよびモノアミン:パラホルムアルデヒドのモル比率は、1:2:4~1:2:6であることが好ましい。ここで、(A2)ビスフェノールを含むフェノール系組成物がモノフェノールを含む場合は、2モルのモノフェノールを1モルのビスフェノールとして換算し、ビスフェノールとのモル数を合算したうえで、モル比率を計算すれば良い。
【0102】
(モノフェノール)
(A2)ビスフェノールを含むフェノール系組成物は、ビスフェノールを30~100重量%、モノフェノールを70~0重量%含むものであり、好ましくはビスフェノールを50~100重量%、モノフェノールを50~0重量%含むものであり、より好ましくはビスフェノールを70~100重量%、モノフェノールを30~0重量%含むものである。
【0103】
本製造方法において、ビスフェノールを使用する場合、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称:ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン等のビス(ヒドロキシアリール)アリールアルカン類;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4’-ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;4,4’-ジヒドロキシジフェニル等のジヒドロキシジフェニル類等を使用することができる。この中でも、原料の融点が100℃~250℃の間にあることによる取り扱い性、得られるベンゾオキサジン系化合物の安定性および反応性、それから得られる硬化物の耐熱性および機械物性などの観点から、ビスフェノールAが好ましい。
【0104】
上記の、モノフェノールとしては、芳香環にフェノール性のヒドロキシル基を1つ以上有するものであり、例えばフェノール、クレゾール類、3-メトキシフェノール類、4-エトキシフェノール類、フルオロフェノール類、フルオロクレゾール類、エチニルフェノール類、シアノフェノール類、ヒドロキシベンズアルデヒド類、ジメチルフェノール類、エチルフェノール類、ヒドロキシベンジルアルコール類、ヒドロキシベンゼンチオール類、クロロフェノール類、アリルフェノール類、ナフトール類、ニトロナフトール類、ヒドロキシピレンなどが挙げられ、融点などには特に制約が無い。この中でも取り扱い性、得られるベンゾオキサジン系化合物の安定性および反応性、それから得られる硬化物の耐熱性および機械物性などの観点から、フェノールまたはエチニルフェノール類が好ましい。エチニルフェノールの場合、エチニル部位の熱架橋により硬化物の熱的特性をより向上させることが期待できる。
【0105】
(B2)アニリンを含むモノアミン系組成物は、アニリンを51~100重量%、アニリン以外のモノアミンを49~0重量%含むものであり、好ましくはアニリンを70~100重量%、アニリン以外のモノアミンを30~0重量%含むものであり、より好ましくはアニリンを80~100重量%、アニリン以外のモノアミンを20~0重量%含むものであり、最も好ましくはアニリンを90~100重量%、アニリン以外のモノアミンを10~0重量%含むものである。
【0106】
上記の、アニリン以外のモノアミンとしては、例えばトルイジン類、キシリジン類、エチルアニリン類、エチニルアニリン類、クロロアニリン類、ブロモアニリン類、ニトロアニリン類、アミノフェノール類、アミノクレゾール類、アミノベンジルアルコール類、アニシジン類、フェネチジン類、アミノベンズアルデヒド類、アミノベンゾニトリル類、アミノビフェニル類、アミノフェニルフェニルエーテル類、アミノベンゾフェノン類、アミノフェニルフェニルスルフィド類、アミノフェニルフェニルスルホン類、ナフチルアミン類、アミノ-ナフトール類、アミノアントラセン類などの芳香族モノアミンなどが挙げられ、融点などには特に制約が無い。この中でも、取り扱い性、得られるベンゾオキサジン系化合物の安定性および反応性、それから得られる硬化物の耐熱性および機械物性などの観点から、エチニルアニリン類が好ましい。モノアミンがエチニルアニリン類の場合、エチニル部位の熱架橋により硬化物の熱的特性をより向上させることが期待できる。
【0107】
〔2.ベンゾオキサジン系化合物〕
本製造方法により製造されるベンゾオキサジン系化合物(以下、本ベンゾオキサジン系化合物とも称する。)は、下記式(17)によって表される化合物である。
【0108】
【化23】
【0109】
上記式(17)中、R1は原料として使用したジアミンによって決定される。すなわち、R1は上記式(2)で示されるとも言える。例えば、式(3)で表される1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンを上記ジアミンとして用いた場合、下記一般式(18)で表されるベンゾオキサジン系化合物が得られる。
【0110】
【化24】
【0111】
本ベンゾオキサジン系化合物のガラス転移温度(Tg)は、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。本ベンゾオキサジン系化合物のTgが110℃以上であれば、本ベンゾオキサジン系化合物が耐熱性に優れると言える。Tgの上限は特に限定されないが、現実的には300℃以下であってもよい。本明細書中「ガラス転移温度(Tg)」は、本ベンゾオキサジン系化合物を加熱により硬化させた、硬化物がガラス転移する温度を意味する。
【0112】
本ベンゾオキサジン系化合物の硬化温度(Tc)は、270℃以下が好ましく、260℃以下がより好ましく、250℃以下がさらに好ましい。本ベンゾオキサジン系化合物のTcが270℃以下であれば、本ベンゾオキサジン系化合物から硬化物を製造することが容易となる。本明細書中「硬化温度(Tc)」は、未硬化の本ベンゾオキサジン系化合物が、加熱により硬化する温度を意味する。
【0113】
本ベンゾオキサジン系化合物の5%重量減少温度(Td5)は、290℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましく、310℃以上がさらに好ましい。本ベンゾオキサジン系化合物が290℃以上であれば、本ベンゾオキサジン系化合物が耐熱性に優れると言える。本明細書中「5%重量減少温度(Td5)」は、未硬化の本ベンゾオキサジン系化合物が硬化する環境下で測定した、本ベンゾオキサジン系化合物が熱分解し、重量が5%減少した時点での温度を意味する。
【0114】
本ベンゾオキサジン系化合物は、電子部品、プリント配線板用積層板およびプリント配線板、半導体封止材料、半導体搭載モジュール等の電子材料、自動車または車輛、航空機部品、建築部材、工作機械等に好適に用いることができる。これらの中でも特に、耐熱性を必要とする部品に使用され得る。
【0115】
具体的には、例えば、上記部品の成形材料、または半導体封止材料とする場合、本ベンゾオキサジン系化合物をそのまま、あるいは必要に応じて充填材、離型剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤等を添加して、用いることができる。また、本ベンゾオキサジン系化合物に溶剤等を加えてワニス化し、これをガラスクロス等の基材に含浸させ、加熱乾燥することにより、積層板用プリプレグを作製することができる。更に、このプリプレグを金属箔と共に加熱加圧してプリント配線板用積層板を作製し、更に当該積層板上に回路を形成することによって、プリント配線板を作製することができる。こうして作製したプリント配線板は耐熱性、および機械特性等に優れるため、半導体搭載基板等として好適に用いられる。
【0116】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0117】
以下に本発明を説明するための実施例および比較例を示すが、これによって本発明を限定するものではない。まず、各物性の測定方法は次のとおりとした。
【0118】
〔測定方法〕
(1.ガラス転移温度(Tg))
粉末形状の未硬化物について、示差走査熱量(DSC)を、示差熱走査熱量計 DSC7000X(日立ハイテク製)を用いて測定した。具体的には、窒素気流下(40mL/min)、昇温速度10℃/minの条件でDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線の変曲点における接線と、ベースラインとの交点の温度を、Tgとした。なお、Tgとしては、DSCの2ndスキャンの数値を採用した。
【0119】
(2.硬化温度(Tc))
DSCとして1stスキャンの数値を採用したこと以外は、Tgと同様にして、Tcを算出した。
【0120】
(3.熱分解温度(Td5))
粉末形状の未硬化物について、日立ハイテク製、商品名「TG/DTA6300」を用いた熱重量分析(TGA)法により、昇温速度10℃/minの条件で5%重量減少温度(Td5)を評価した。なお、Td5としては、N気流下で測定した示差熱分析(TG-DTA)の数値を採用した。
【0121】
〔実施例1〕
1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン2.193g(0.0075mol)、フェノール1.412g(0.015mol)、パラホルムアルデヒド1.081g(0.036mol)を三口フラスコに投入し、130℃で加熱撹拌して、30分反応させた。なお、加熱時間は、1H-NMRにより算出した、原料であるフェノールの消費率が約93%となる時間に基づいて決定している。溶媒を使用していないので、固形分濃度(SC)は100重量%とした。
【0122】
加熱反応後、クロロホルムを80ml加え、生成物を溶解させた。その後、1NのNaOH水溶液80mlで3回、純水80mlで3回洗浄を行った後、クロロホルム層の溶媒を40℃で減圧留去した。その後、60℃にて6時間真空乾燥し、上記式(18)のベンゾオキサジン系化合物の粉末を得た。
【0123】
得られたベンゾオキサジン系化合物の粉末について、GPCにより分子量を測定したところ、標準ポリスチレン換算で、数平均分子量(Mn)は930、重量平均分子量(Mw)は1752であった。
【0124】
〔実施例2〕
1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン2.193g(0.0075mol)、フェノール1.412g(0.015mol)、パラホルムアルデヒド1.081g(0.036mol)、N-メチルピロリドン0.247gを三口フラスコに投入し、130℃で加熱撹拌して、60分反応させた。なお、加熱時間は実施例1と同様に決定した。固形分濃度(SC)は、上記のジアミン・フェノール・アルデヒドが全て固体になったと仮定した数値で算出した。SC=95重量%であった。
【0125】
反応後、クロロホルムを30ml加え、生成物を希釈し、純水30mlで5回洗浄した。その後、1NのNaOH水溶液30mlで3回、純水30mlで3回洗浄を行った後、クロロホルム層の溶媒を40℃で減圧留去した。その後、60℃にて6時間真空乾燥し、上記式(18)のベンゾオキサジン系化合物の粉末を得た。
【0126】
得られたベンゾオキサジン系化合物の粉末について、GPCにより分子量を測定したところ、標準ポリスチレン換算で数平均分子量(Mn)は859、重量平均分子量(Mw)は1947であった。
【0127】
〔実施例3〕
1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン2.193g(0.0075mol)、フェノール1.412g(0.015mol)、パラホルムアルデヒド1.081g(0.036mol)、N-メチルピロリドン1.172gを三口フラスコに投入し、130℃で加熱撹拌して、120分反応させた。なお、加熱時間は実施例1と同様に決定した。固形分濃度(SC)は、実施例2と同様に算出した。SC=80重量%であった。
【0128】
反応後、クロロホルムを30ml加え、生成物を希釈し、純水30mlで5回洗浄した。その後、1NのNaOH水溶液100mlで3回、純水100mlで3回洗浄を行った。続いて、0.1N HCl水溶液100mlで3回洗浄した後、純水100mlで3回洗浄して、クロロホルム層の溶媒を40℃で溶媒を減圧留去した。その後、60℃にて6時間真空乾燥し、上記式(18)のベンゾオキサジン系化合物の粉末を得た。
【0129】
得られたベンゾオキサジン系化合物の粉末について、GPCにより分子量を測定したところ、標準ポリスチレン換算で数平均分子量(Mn)は1325、重量平均分子量(Mw)は5215であった。
【0130】
〔比較例1〕
1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン2.195g(0.0075mol)、フェノール1.413g(0.015mol)、37%ホルマリン2.925g(0.036mol)、酢酸エチル1.285gを三口フラスコに投入し、80℃で加熱撹拌して25時間反応させた。なお、加熱時間は実施例1と同様に決定した。固形分濃度(SC)は、実施例2と同様に算出した。SC=60重量%であった。
【0131】
反応後、クロロホルムを80ml加え、生成物を希釈し、1NのNaOH水溶液80mlで3回、純水40mlで3回洗浄を行った後、クロロホルム層を40℃で溶媒を減圧留去した。その後、60℃にて6時間真空乾燥し、上記式(18)のベンゾオキサジン系化合物の粉末を得た。
【0132】
得られたベンゾオキサジン系化合物の粉末について、GPCにより分子量を測定したところ、標準ポリスチレン換算で数平均分子量(Mn)は980、重量平均分子量(Mw)は2029であった。
【0133】
〔結果〕
実施例1~3および比較例1における、反応時の加熱条件と、得られた上記式(18)のベンゾオキサジン系化合物の粉末のDSCおよびTGAにより熱特性を評価した結果とを、表1に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
表1より、SCが80~100重量%である実施例1~3の加熱時間は、SCが60重量%である比較例1の加熱時間と比較して、非常に短いことが分かった。また、実施例1~3のベンゾオキサジンは、従来の溶液法によって得られた比較例1のベンゾオキサジンと比較して、Tg、TcおよびTd5において、同等の性能を有することが分かった。したがって、本製造方法は、従来の製造方法よりも短時間でベンゾオキサジン系化合物を製造可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、ベンゾオキサジン系化合物の製造方法として好適に利用することができる。