(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152833
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 6/365 20071001AFI20221004BHJP
B60K 6/405 20071001ALI20221004BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20221004BHJP
F16H 48/06 20060101ALI20221004BHJP
F16D 1/06 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B60K6/365 ZHV
B60K6/405
B60K6/48
F16H48/06
F16D1/06 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055761
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】横山 久人
(72)【発明者】
【氏名】永井 康介
(72)【発明者】
【氏名】清水 康平
【テーマコード(参考)】
3D202
3J027
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202EE10
3D202EE21
3D202EE23
3D202FF13
3D202FF15
3J027FA02
3J027FA04
3J027FA08
3J027FA37
3J027FB01
3J027GB02
3J027GB09
3J027GC13
3J027GC22
3J027GD02
3J027GD04
3J027GD08
(57)【要約】
【課題】出力部材側から大きな荷重が伝達される場合にも、分配用差動歯車機構の各ギヤの支持部に過大な荷重がかかるのを回避することができるとともにギヤどうしの噛み合いを適正な状態に保つことができる車両用駆動装置を実現する。
【解決手段】サンギヤ(31)が、入力部材(10)又は入力部材と同軸上に配置された回転軸に支持され、被駆動ギヤ(36)及び出力ギヤ(50)が、ケース(9)に支持され、キャリヤ(32)と出力ギヤ(50)とが、相対回転が規制されるとともに互いの回転軸心のずれが許容される連結部(55)を介して連結されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
回転電機と、
前記回転電機の駆動力が伝達される駆動ギヤと、
サンギヤ、キャリヤ、及びリングギヤを備えた分配用差動歯車機構と、
受動ギヤを有し、前記分配用差動歯車機構と前記出力部材との間の動力伝達を行う伝達機構と、
前記回転電機、前記駆動ギヤ、前記分配用差動歯車機構、及び前記伝達機構を収容するケースと、を備え、
前記サンギヤが、前記入力部材と駆動連結され、
前記キャリヤが、前記受動ギヤに噛み合う出力ギヤと一体的に回転するように連結され、
前記リングギヤが、前記駆動ギヤに噛み合う被駆動ギヤと一体的に回転するように連結され、
前記入力部材、前記分配用差動歯車機構、及び前記被駆動ギヤが、第1軸上に配置され、
前記回転電機が、前記第1軸とは異なる第2軸上に配置され、
前記受動ギヤが、前記第1軸及び前記第2軸とは異なる第3軸上に配置され、
前記サンギヤが、前記入力部材又は前記入力部材と同軸上に配置された回転軸に支持され、
前記被駆動ギヤ及び前記出力ギヤが、前記ケースに支持され、
前記キャリヤと前記出力ギヤとが、相対回転が規制されるとともに互いの回転軸心のずれが許容される連結部を介して連結されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記連結部が、前記キャリヤが備える第1嵌合部と、前記出力ギヤが備える第2嵌合部とが、径方向に隙間を有する状態でスプライン嵌合して構成されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記リングギヤと前記被駆動ギヤとが、一体的に形成されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記被駆動ギヤは、第1軸受を介して前記ケースに支持され、
前記第1軸に直交する径方向に沿う径方向視で、前記連結部と前記第1軸受とが重複するように配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記出力ギヤは、第2軸受を介して前記ケースに支持され、
前記第1軸に直交する径方向に沿う径方向視で、前記出力ギヤと前記第2軸受とが重複するように配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、回転電機と、分配用差動歯車機構とを備えた車両用駆動装置が利用されている。このような車両用駆動装置の一例が、特表2020-525358号公報(特許文献1)に開示されている。以下、この「背景技術」の説明において、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
この車両用駆動装置は、内燃機関(3)に駆動連結される入力部材(8)と、車輪に駆動連結される出力部材(31,32)と、回転電機(4)と、回転電機の駆動力が伝達される駆動ギヤ(第2トランスミッション入力シャフト9と一体回転するギヤ)と、サンギヤ(13)、キャリヤ(12)、及びリングギヤ(11)を備えた分配用差動歯車機構(10)と、受動ギヤ(第2サンギヤ22と一体回転するギヤ)を有し、分配用差動歯車機構と出力部材との間の動力伝達を行う伝達機構(19)とを備えている。そして、キャリヤと、受動ギヤに噛み合う出力ギヤ(第1キャリヤ12と一体回転するギヤ)とが、一体回転するように連結されている。
【0004】
特許文献1の車両用駆動装置において、軸方向に並ぶキャリヤと出力ギヤとが一体的に形成されている場合には、出力ギヤに対して当該出力ギヤを傾かせるような大きな荷重が出力部材側から伝達されると、出力ギヤと一体的に形成されたキャリヤを介して、分配用差動歯車機構の回転要素どうしの位置関係が崩れてしまう。その結果、サンギヤやリングギヤの支持部に過大な荷重がかかったり、分配用差動歯車機構におけるギヤどうしの噛み合いが悪化したりするおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、出力部材側から大きな荷重が伝達された場合にも、分配用差動歯車機構の各ギヤの支持部に過大な荷重がかかるのを回避することができるとともにギヤどうしの噛み合いを適正な状態に保つことができる車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る車両用駆動装置は、
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
回転電機と、
前記回転電機の駆動力が伝達される駆動ギヤと、
サンギヤ、キャリヤ、及びリングギヤを備えた分配用差動歯車機構と、
受動ギヤを有し、前記分配用差動歯車機構と前記出力部材との間の動力伝達を行う伝達機構と、
前記回転電機、前記駆動ギヤ、前記分配用差動歯車機構、及び前記伝達機構を収容するケースと、を備え、
前記サンギヤが、前記入力部材と駆動連結され、
前記キャリヤが、前記受動ギヤに噛み合う出力ギヤと一体的に回転するように連結され、
前記リングギヤが、前記駆動ギヤに噛み合う被駆動ギヤと一体的に回転するように連結され、
前記入力部材、前記分配用差動歯車機構、及び前記被駆動ギヤが、第1軸上に配置され、
前記回転電機が、前記第1軸とは異なる第2軸上に配置され、
前記受動ギヤが、前記第1軸及び前記第2軸とは異なる第3軸上に配置され、
前記サンギヤが、前記入力部材又は前記入力部材と同軸上に配置された回転軸に支持され、
前記被駆動ギヤ及び前記出力ギヤが、前記ケースに支持され、
前記キャリヤと前記出力ギヤとが、相対回転が規制されるとともに互いの回転軸心のずれが許容される連結部を介して連結されている。
【0008】
この構成によれば、出力ギヤがケースに支持されているので、当該出力ギヤに対して受動ギヤから大きな荷重が作用しても、回転軸が傾いたり径方向にずれたりすることが規制される。また、仮に出力ギヤの回転軸が多少傾いたり径方向に多少ずれたりしても、キャリヤと出力ギヤとは、相対回転が規制されるとともに互いの回転軸心のずれが許容される状態で連結されているので、出力ギヤの回転軸心のずれがキャリヤに伝わりにくい。よって、キャリヤの姿勢を安定化させることができる。さらに、被駆動ギヤ及びそれと一体回転するリングギヤがケースに支持され、サンギヤが入力部材又はそれと同軸上に配置された回転軸に支持されているので、リングギヤ及びサンギヤの姿勢も安定化させることができる。このように、本構成によれば、出力部材側から大きな荷重が伝達される場合にも、分配用差動歯車機構の姿勢を安定化させることができる。よって、分配用差動歯車機構の各ギヤの支持部に過大な荷重がかかることを回避できるとともに、ギヤどうしの噛み合いを適正な状態に保つことができる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】大荷重が作用したときの出力ギヤ及び分配用差動歯車機構の状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両用駆動装置1は、内燃機関EGに駆動連結される入力部材10と、車輪Wに駆動連結される出力部材78と、回転電機20と、分配用差動歯車機構30と、伝達機構60と、出力用差動歯車機構75とを備えている。また、車両用駆動装置1は、第1係合装置15と、第2係合装置40と、アイドルギヤ25とをさらに備えている。これらは、駆動装置ケース9(
図2を参照;以下、単に「ケース9」と言う。)内に収容されている。なお、出力部材78の一部は、ケース9の外部に露出している。
【0012】
本実施形態において、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いる。
【0013】
また、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を意味する。この概念には、2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態や、2つの回転要素が1つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態が含まれる。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等)が含まれても良い。
【0014】
また、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の両方に交わる領域が存在することを意味する。
【0015】
本実施形態では、入力部材10、分配用差動歯車機構30、第1係合装置15、及び第2係合装置40は、第1軸X1上に配置されている。回転電機20は、第1軸X1とは異なる第2軸X2上に配置されている。伝達機構60は、第1軸X1及び第2軸X2とは異なる第3軸X3上に配置されている。出力用差動歯車機構75は、第1軸X1~第3軸X3とは異なる第4軸X4上に配置されている。アイドルギヤ25は、第1軸X1~第4軸X4とは異なる第5軸X5に配置されている。
【0016】
これらの第1軸X1~第5軸X5は、互いに平行に配置されている。本実施形態では、これらの第1軸X1~第5軸X5に平行な方向を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側(本例では分配用差動歯車機構30に対して内燃機関EGが配置される側)を「軸方向第1側L1」とするとともに、その反対側である軸方向Lの他方側(回転電機20が配置される側)を「軸方向第2側L2」とする。
【0017】
入力部材10は、内燃機関EGに駆動連結される。内燃機関EGは、燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。本実施形態では、内燃機関EGは、車輪Wの第1の駆動力源として機能する。入力部材10は、ダンパDを介して、内燃機関EGの出力軸である内燃機関出力軸Eoに駆動連結されている。ダンパDは、伝達されるトルクの変動を減衰するための装置である。入力部材10は、内燃機関出力軸Eo及びダンパDと一体回転するように連結されている。入力部材10は、分配用差動歯車機構30の径方向内側を貫通して、分配用差動歯車機構30に対して軸方向第2側L2側まで延びている。入力部材10は、第1係合装置15を介して、分配用差動歯車機構30に駆動連結されている。
【0018】
第1係合装置15は、入力部材10と分配用差動歯車機構30(本例ではサンギヤ31)との間の動力伝達を断接する。本実施形態では、第1係合装置15は、入力部材10と分配用差動歯車機構30の回転要素の1つであるサンギヤ31との間の動力伝達を断接する。第1係合装置15としては、入力部材10側の回転要素である入力要素と、分配用差動歯車機構30側の回転要素である出力要素とを備え、これらの係合圧に応じて係合の状態(係合状態/解放状態)が制御される摩擦係合装置を用いることができる。第1係合装置15は、分配用差動歯車機構30に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0019】
第1係合装置15の係合状態で、入力部材10と分配用差動歯車機構30のサンギヤ31とが一体回転するように連結される。また、第1係合装置15の解放状態で、入力部材10と分配用差動歯車機構30のサンギヤ31との間で駆動力の伝達が遮断される。なお、第1係合装置15はスリップ係合状態となることも可能であり、このスリップ係合状態で、入力部材10と分配用差動歯車機構30のサンギヤ31とが相対回転する状態でこれらの間で駆動力が伝達される。
【0020】
回転電機20は、車輪Wの第2の駆動力源として機能する。回転電機20は、蓄電装置(図示せず)に蓄えられた電力により力行して駆動力を発生し、或いは、内燃機関EGの駆動力又は車輪W側から伝達される駆動力により発電して蓄電装置を充電する。回転電機20は、非回転部材であるケース9(
図2を参照)に固定されたステータ21と、ステータ21に対して径方向内側に配置されて回転自在に支持されたロータ22とを有する。
【0021】
回転電機20のロータ22は、ロータ軸23と一体回転するように連結されている。ロータ軸23は、ロータ22から軸方向第1側L1に延びている。ロータ軸23の軸方向第1側L1の端部には、回転電機出力ギヤ24が形成されている。回転電機出力ギヤ24は、アイドルギヤ25に噛み合っている。回転電機20の駆動力は、ロータ軸23を介して回転電機出力ギヤ24に伝達され、さらにアイドルギヤ25に伝達される。本実施形態では、アイドルギヤ25が「駆動ギヤ」に相当する。アイドルギヤ25は、分配用差動歯車機構30が有する複合ギヤ形成部材35の外周面に形成された外周ギヤ36に噛み合っている。
【0022】
分配用差動歯車機構30は、サンギヤ31、キャリヤ32、及びリングギヤ33の3つの回転要素を備えている。本実施形態の分配用差動歯車機構30は、シングルピニオン型の遊星歯車機構で構成されている。サンギヤ31は、入力部材10と駆動連結されている。サンギヤ31は、中空軸17及び第1係合装置15を介して入力部材10と駆動連結されている。キャリヤ32は、サンギヤ31及びリングギヤ33の両方にそれぞれ噛み合う複数のピニオンギヤ32pを回転自在に支持するとともに、出力ギヤ50と一体的に回転するように連結されている。出力ギヤ50は、第1伝達ドリブンギヤ61に噛み合っている。リングギヤ33は、外周ギヤ36と一体的に回転するように連結されている。外周ギヤ36は、アイドルギヤ25に噛み合うとともに、アイドルギヤ25とは異なる周方向の位置で第2伝達ドリブンギヤ62にも噛み合っている。本実施形態では、外周ギヤ36が「被駆動ギヤ」に相当する。
【0023】
第2係合装置40は、サンギヤ31、キャリヤ32、及びリングギヤ33のうちから選択される2つの間の動力伝達を断接する。本実施形態では、第2係合装置40は、キャリヤ32とリングギヤ33との間の動力伝達を断接するように構成されている。第2係合装置40としては、ソレノイド、電動機、油圧シリンダ等のアクチュエータによって係合状態と解放状態とを切り替え可能に構成された噛合い式係合装置(ドグクラッチ)を用いることができる。第2係合装置40は、分配用差動歯車機構30に対して軸方向第1側L1に配置されており、軸方向Lにおける分配用差動歯車機構30とダンパDとの間に配置されている。
【0024】
図2に示すように、第2係合装置40はスリーブ部材41を備えており、このスリーブ部材41は、径方向におけるキャリヤ32の第2延設部32Bと複合ギヤ形成部材35の第2筒状部38との間を軸方向Lに延びる筒状に形成されている。そして、スリーブ部材41の内周面には内向き係合部42が形成され、外周面には外向き係合部43が形成されている。内向き係合部42は、キャリヤ32の第2延設部32Bに形成された外向き係合部32eと、軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合する。外向き係合部43は、複合ギヤ形成部材35の第2筒状部38に形成された内向き係合部38eと、軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合する。
【0025】
第2係合装置40は、スリーブ部材41の内向き係合部42がキャリヤ32の外向き係合部32eに係合するとともに外向き係合部43が複合ギヤ形成部材35の内向き係合部38eに係合した状態で、係合状態となる。第2係合装置40の係合状態で、キャリヤ32とリングギヤ33とが一体回転する状態となり、これにより、サンギヤ31も含めて、分配用差動歯車機構30の3つの回転要素が一体回転する状態となる。また、第2係合装置40は、スリーブ部材41の内向き係合部42とキャリヤ32の外向き係合部32eとの係合が解除された状態で、解放状態となる。第2係合装置40の解放状態で、分配用差動歯車機構30の3つの回転要素が相対回転可能な状態となる。
【0026】
図1に示すように、伝達機構60は、分配用差動歯車機構30と出力部材78との間の動力伝達を行う。本実施形態の伝達機構60は、上述した出力ギヤ50と、上述した外周ギヤ36と、第1伝達ドリブンギヤ61と、第2伝達ドリブンギヤ62と、伝達軸63と、伝達出力ギヤ68と、伝達係合装置70とを備えている。第1伝達ドリブンギヤ61及び第2伝達ドリブンギヤ62は、伝達軸63と相対回転可能な状態で当該伝達軸63に支持されている。本実施形態では、第1伝達ドリブンギヤ61は、伝達軸63に対して回転可能に支持された第1ギヤ形成部材65の外周面に形成されている。第1伝達ドリブンギヤ61は、第1伝達ドライブギヤとしての出力ギヤ50に噛み合っている。本実施形態では、第1伝達ドリブンギヤ61が「受動ギヤ」に相当する。また、第2伝達ドリブンギヤ62は、伝達軸63に対して回転可能に支持された第2ギヤ形成部材66の外周面に形成されている。第2伝達ドリブンギヤ62は、第2伝達ドライブギヤとしての外周ギヤ36に噛み合っている。
【0027】
伝達出力ギヤ68は、伝達軸63と一体的に回転するように当該伝達軸63に連結されている。本実施形態では、伝達出力ギヤ68は、伝達軸63の外周面に形成されている。伝達出力ギヤ68は、第2伝達ドリブンギヤ62が形成された第2ギヤ形成部材66に対して軸方向第1側L1に配置されている。伝達出力ギヤ68は、出力用差動歯車機構75の差動入力ギヤ76に噛み合っている。
【0028】
伝達係合装置70は、分配用差動歯車機構30と出力部材78との間の動力伝達の状態を切り替える。本実施形態では、
図2に示すように、伝達軸63と一体的に回転するように当該伝達軸63に連結された連結部材64の外周面に、外向き係合部64eが形成されている。また、外周面に第1伝達ドリブンギヤ61が形成された第1ギヤ形成部材65に、外向き係合部65eが形成されている。また、外周面に第2伝達ドリブンギヤ62が形成された第2ギヤ形成部材66に、外向き係合部66eが形成されている。外向き係合部64e,65e,66eは、互いに同径同ピッチの外歯の係合部となっている。
【0029】
また、伝達係合装置70はスリーブ部材71を備えており、このスリーブ部材71は、連結部材64の径方向の外側を覆う筒状に形成されている。そして、スリーブ部材71の内周面には、それぞれが外歯の外向き係合部64e,65e,66eに噛み合う内歯の内向き係合部72が形成されている。内向き係合部72と、外向き係合部64e,65e,66eとは、軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合する。
【0030】
伝達係合装置70は、スリーブ部材71の内向き係合部72が連結部材64の外向き係合部64eと第1ギヤ形成部材65の外向き係合部65eとに亘って係合した状態(第1係合状態)で、第1伝達ドリブンギヤ61と伝達出力ギヤ68とを一体回転するように連結する。この状態で、伝達係合装置70は、出力ギヤ50から伝達される駆動力を伝達出力ギヤ68に伝達する。また、伝達係合装置70は、スリーブ部材71の内向き係合部72が連結部材64の外向き係合部64eと第2ギヤ形成部材66の外向き係合部66eとに亘って係合した状態(第2係合状態)で、第2伝達ドリブンギヤ62と伝達出力ギヤ68とを一体回転するように連結する。この状態で、伝達係合装置70は、外周ギヤ36から伝達される駆動力を伝達出力ギヤ68に伝達する。伝達出力ギヤ68は、出力用差動歯車機構75の差動入力ギヤ76に噛み合っている。
【0031】
伝達係合装置70は、スリーブ部材71の内向き係合部72が連結部材64の外向き係合部64eだけに係合し、第1ギヤ形成部材65の外向き係合部65e及び第2ギヤ形成部材66の外向き係合部66eには係合しない状態で、ニュートラル状態(解放状態)となる。伝達係合装置70のニュートラル状態では、分配用差動歯車機構30側からの駆動力(出力ギヤ50及び外周ギヤ36から伝達される駆動力)は、伝達出力ギヤ68には伝達されない。
【0032】
なお、本実施形態では、出力ギヤ50は外周ギヤ36よりも小径であり、それに対応して、第1伝達ドリブンギヤ61は第2伝達ドリブンギヤ62よりも大径となっている。このため、伝達係合装置70の第1係合状態で、相対的に減速比が大きい低速段が形成され、伝達係合装置70の第2係合状態で、相対的に減速比が小さい高速段が形成される。すなわち、本実施形態では、伝達機構60は、2つの変速段を形成可能な変速機を含んで構成されている。
【0033】
図1に示すように、出力用差動歯車機構75は、差動入力ギヤ76を備えている。出力用差動歯車機構75は、差動入力ギヤ76に入力される分配用差動歯車機構30側からの回転及び駆動力を、一対の出力部材78に分配して伝達する。一対の出力部材78は、それぞれ車輪Wに駆動連結されている。このように、分配用差動歯車機構30側から伝達される回転及び駆動力が、伝達機構60を介して出力用差動歯車機構75に伝達され、さらに出力用差動歯車機構75により一対の出力部材78に分配され、さらに一対の車輪Wに伝達される。これにより、車両用駆動装置1は、内燃機関EG及び回転電機20の少なくとも一方の駆動力を車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。
【0034】
上述したように、本実施形態の車両用駆動装置1は、
入力部材10とサンギヤ31との間の動力伝達を断接する第1係合装置15と、
サンギヤ31、キャリヤ32、及びリングギヤ33のうちから選択される2つの間の動力伝達を断接する第2係合装置40と、を備えるとともに、
伝達機構60は、分配用差動歯車機構30と出力部材78との間の動力伝達の状態を切り替える伝達係合装置70を備える。
【0035】
この構成によれば、第1係合装置15、第2係合装置40、及び伝達係合装置70のそれぞれの係合の状態を個別に制御することで、その組み合わせに応じて複数の走行モードを実現することができる。例えば第1係合装置15を解放状態とすることで、回転電機20の駆動力を車輪Wに伝達させて車両を走行させる電動走行モードを実現できる。また、例えば第1係合装置15及び第2係合装置40を係合状態とすることで、少なくとも内燃機関EGの駆動力を車輪Wに伝達させて車両を走行させるパラレル走行モードを実現できる。また、例えば第1係合装置15を係合状態とし、第2係合装置40を解放状態とすることで、回転電機20で充電しながら内燃機関EGの駆動力を車輪Wに伝達させて車両を走行させるスプリットモード又は電気トルクコンバータモードを実現できる。
【0036】
図2に示すように、サンギヤ31は、軸方向Lに沿って延びる筒状の中空軸17の軸方向第1側L1に設けられたサンギヤ形成部18の外周面に形成されている。中空軸17は、その径方向内側を入力部材10が軸方向Lに貫通する状態で、入力部材10に外装されている。中空軸17は、入力部材10に対して相対回転可能な状態で(但し、一体回転しても良い)、当該入力部材10に支持されている。これにより、サンギヤ31も、入力部材10に支持されている。
【0037】
リングギヤ33は、円環板状の複合ギヤ形成部材35の中央穴部の内周面に形成されている。本実施形態では、複合ギヤ形成部材35の外周面に外周ギヤ36が形成されており、この複合ギヤ形成部材35にリングギヤ33と外周ギヤ36とが一体的に形成されている。複合ギヤ形成部材35において、リングギヤ33と外周ギヤ36とは、第1軸X1に直交する径方向に沿う径方向視(以下、単に「径方向視」と言う。)で、互いに重複するように形成されている。
【0038】
複合ギヤ形成部材35は、軸方向Lにおけるリングギヤ33及び外周ギヤ36が形成された本体部分に対してそれぞれ軸方向Lに突出する、第1筒状部37と第2筒状部38とを有している。第1筒状部37は、軸方向第2側L2に向かって突出するように形成されている。第2筒状部38は、軸方向第1側L1に向かって突出するように形成されている。第2筒状部38の内周面には、上述したように第2係合装置40のスリーブ部材41の外向き係合部43に係合する内向き係合部38eが形成されている。
【0039】
リングギヤ33及び外周ギヤ36が形成された複合ギヤ形成部材35は、ケース9に支持されている。複合ギヤ形成部材35は、第1軸受81を介してケース9に支持されている。本実施形態では、複合ギヤ形成部材35は、一対の第1軸受81を介して回転可能な状態でケース9に支持されている。
【0040】
ここで、ケース9は、車両用駆動装置1の各構成部品の外周を覆う周壁部(図示せず)と、軸方向第2側L2の端部を覆う第1端部支持壁(図示せず)と、軸方向第1側L1の端部を覆う第2端部支持壁(図示せず)とを有する。また、ケース9は、その収容空間内に設けられて各構成部品を支持するための中間支持壁として、
図2に示すように、第1中間支持壁91と第2中間支持壁96とを有している。第1中間支持壁91は、分配用差動歯車機構30に対して軸方向第2側L2に配置されており、第2中間支持壁96は、分配用差動歯車機構30に対して軸方向第1側L1に配置されている。
【0041】
第1中間支持壁91は、軸方向Lに沿って延びる2つの筒状部として、内側筒状部92と外側筒状部93とを有している。内側筒状部92は、入力部材10及び中空軸17の外周を取り囲むように配置されている。外側筒状部93は、内側筒状部92よりも大径に形成され、内側筒状部92と同軸に配置されている。外側筒状部93は、出力ギヤ50の外周を取り囲むように配置されている。また、本実施形態では、外側筒状部93は、内側筒状部92に比べて軸方向Lの長さが長く(すなわち、より長く軸方向第1側L1まで延びるように)形成されている。
【0042】
第2中間支持壁96は、軸方向Lに沿って延びる筒状部97を有している。筒状部97は、入力部材10及び第2係合装置40のスリーブ部材41の外周を取り囲むように配置されている。また、第2中間支持壁96の筒状部97は、第1中間支持壁91の外側筒状部93と同程度の径に形成されている。
【0043】
なお、第1中間支持壁91の内側筒状部92及び外側筒状部93、並びに第2中間支持壁96の筒状部97は、それぞれ、周方向に連続するように形成されていても良いし、周方向の一部が切り欠かれて形成されていても良い。
【0044】
複合ギヤ形成部材35は、軸方向第2側L2では、第1筒状部37と外側筒状部93との間に配置された第1軸受81(一対の第1軸受81のうちの一方)により、ケース9を構成する第1中間支持壁91に回転可能に支持されている。また、複合ギヤ形成部材35は、軸方向第1側L1では、第2筒状部38と筒状部97との間に配置された第1軸受81(一対の第1軸受81のうちの他方)により、ケース9を構成する第2中間支持壁96に回転可能に支持されている。
【0045】
キャリヤ32は、複数のピニオンギヤ32pを回転自在に支持する本体部から軸方向Lに沿って延びる2つの延設部として、第1延設部32Aと第2延設部32Bとを有している。第1延設部32Aは、軸方向第2側L2に向かって延びるように形成されている。キャリヤ32は、この第1延設部32Aによって出力ギヤ50と一体回転するように連結されている。第2延設部32Bは、軸方向第1側L1に向かって延びるように形成されている。第2延設部32Bは、入力部材10の外周を取り囲むように配置され、当該入力部材10によって支持されている。第2延設部32Bには、上述したように第2係合装置40のスリーブ部材41の内向き係合部42に係合する外向き係合部32eが形成されている。
【0046】
キャリヤ32(第1延設部32A)と出力ギヤ50とは、相対回転が規制されるとともに互いの回転軸心のずれが許容される連結部55を介して連結されている。本実施形態では、
図3に示すように、キャリヤ32の第1延設部32Aの内周面に、スプライン歯からなる第1嵌合部34が形成されている。一方、出力ギヤ50が外周面に形成された出力ギヤ形成部材51は、軸方向第1側L1に延びる延設部51Aを有しており、この延設部51Aの外周面に、スプライン歯からなる第2嵌合部52が形成されている。そして、連結部55は、キャリヤ32(第1延設部32A)に備えられる第1嵌合部34と、出力ギヤ50(延設部51A)に備えられる第2嵌合部52とが、径方向に隙間を有する状態でスプライン嵌合して構成されている。
【0047】
出力ギヤ50は、ケース9に支持されている。出力ギヤ50は、第2軸受82を介してケース9に支持されている。本実施形態では、出力ギヤ50は、軸方向Lに並んで配置された2つの第2軸受82を介して回転可能な状態でケース9に支持されている。出力ギヤ50は、第1中間支持壁91の内側筒状部92に外嵌された第2軸受82により、ケース9を構成する第1中間支持壁91に回転可能に支持されている。
【0048】
このように、本実施形態の車両用駆動装置1は、
内燃機関EGに駆動連結される入力部材10と、
車輪Wに駆動連結される出力部材78と、
回転電機20と、
回転電機20の駆動力が伝達されるアイドルギヤ25と、
サンギヤ31、キャリヤ32、及びリングギヤ33を備えた分配用差動歯車機構30と、
第1伝達ドリブンギヤ61を有し、分配用差動歯車機構30と出力部材78との間の動力伝達を行う伝達機構60と、
回転電機20、アイドルギヤ25、分配用差動歯車機構30、及び伝達機構60を収容するケース9と、を備え、
サンギヤ31が、入力部材10と駆動連結され、
キャリヤ32が、第1伝達ドリブンギヤ61に噛み合う出力ギヤ50と一体的に回転するように連結され、
リングギヤ33が、アイドルギヤ25に噛み合う外周ギヤ36と一体的に回転するように連結され、
入力部材10、分配用差動歯車機構30、及び外周ギヤ36が、第1軸X1上に配置され、
回転電機20が、第1軸X1とは異なる第2軸X2上に配置され、
第1伝達ドリブンギヤ61が、第1軸X1及び第2軸X2とは異なる第3軸X3上に配置され、
サンギヤ31が、入力部材10に支持され、
外周ギヤ36及び出力ギヤ50が、ケース9に支持され、
キャリヤ32と出力ギヤ50とが、相対回転が規制されるとともに互いの回転軸心のずれが許容される連結部55を介して連結されている。
【0049】
この構成によれば、出力ギヤ50がケース9に支持されているので、当該出力ギヤ50に対して第1伝達ドリブンギヤ61から大きな荷重が作用しても、回転軸が傾いたり径方向にずれたりすることが規制される。また、仮に出力ギヤ50の回転軸が多少傾いたり径方向に多少ずれたりしても、キャリヤ32と出力ギヤ50とは、相対回転が規制されるとともに互いの回転軸心のずれが許容される状態で連結されているので、出力ギヤ50の回転軸心のずれがキャリヤ32に伝わりにくい(
図4を参照)。よって、キャリヤ32の姿勢を安定化させることができる。さらに、外周ギヤ36及びそれと一体回転するリングギヤ33がケース9に支持され、サンギヤ31が入力部材10に支持されているので、リングギヤ33及びサンギヤ31の姿勢も安定化させることができる。このように、本構成によれば、出力部材78側から大きな荷重が伝達される場合にも、分配用差動歯車機構30の姿勢を安定化させることができる。よって、分配用差動歯車機構30の各ギヤの支持部に過大な荷重がかかることを回避できるとともに、ギヤどうしの噛み合いを適正な状態に保つことができる。
【0050】
また、連結部55が、キャリヤ32が備える第1嵌合部34と、出力ギヤ50が備える第2嵌合部52とが、径方向に隙間を有する状態でスプライン嵌合して構成されている。
【0051】
この構成によれば、キャリヤ32と出力ギヤ50とが相対回転が規制されるとともに互いの回転軸心のずれが許容される状態を適切に実現できる。
【0052】
本実施形態では、上記のとおり出力部材78側から大きな荷重が伝達される場合にも、分配用差動歯車機構30の各回転要素の姿勢を安定化させることができる。よって、分配用差動歯車機構30の各回転要素には、過大な荷重が作用した場合にそれを逃がすための構造を設ける必要がない。このため、リングギヤ33と外周ギヤ36とが、一体的に形成されている構成を採用することが可能であり、実際、本実施形態ではそのような一体構造が採用されている。これにより、低コスト化を図ることができる。
【0053】
図3に示すように、第1嵌合部34と第2嵌合部52とがスプライン嵌合してなる連結部55は、第2軸受82よりも軸方向第1側L1に配置されている。また、連結部55は、第2軸受82よりも径方向外側であって、第1軸受81よりも径方向内側に配置されている。そして、連結部55は、第1軸受81の径方向内側において、径方向視で第1軸受81と重複するように配置されている。本実施形態では、連結部55は、一対の第1軸受81のうち、軸方向第2側L2に位置する、複合ギヤ形成部材35の第1筒状部37に外嵌されている方の第1軸受81と径方向視で重複するように配置されている。
【0054】
なお、一対の第1軸受81のうち、軸方向第1側L1に位置する、複合ギヤ形成部材35の第2筒状部38に外嵌されている方の第1軸受81は、アイドルギヤ25を回転可能に支持する第3軸受83と径方向視で重複するように配置されている(
図2を参照)。
【0055】
出力ギヤ50は、第1軸受81よりも軸方向第2側L2に配置されている。また、出力ギヤ50は、第2軸受82よりも径方向外側であって、第1軸受81よりも径方向内側に配置されている。そして、出力ギヤ50は、第2軸受82の径方向外側において、径方向視で第2軸受82と重複するように配置されている。
【0056】
このように、
外周ギヤ36は、第1軸受81を介してケース9に支持され、
第1軸X1に直交する径方向に沿う径方向視で、連結部55と第1軸受81とが重複するように配置されている。
【0057】
また、
出力ギヤ50は、第2軸受82を介してケース9に支持され、
第1軸X1に直交する径方向に沿う径方向視で、出力ギヤ50と第2軸受82とが重複するように配置されている。
【0058】
これらの構成によれば、径方向視で連結部55と第1軸受81とが重複する分、及び/又は、径方向視で出力ギヤ50と第2軸受82とが重複する分、車両用駆動装置1を軸方向Lに小型化することができる。
【0059】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、連結部55が、キャリヤ32が備える第1嵌合部34と出力ギヤ50が備える第2嵌合部52とが径方向に隙間を有する状態でスプライン嵌合して構成されている例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、少なくともキャリヤ32と出力ギヤ50とが、相対回転が規制されるとともに互いの回転軸心のずれが許容される状態となれば、連結部55が例えばセレーション係合や、キーとキー溝との係合等によって構成されても良い。
【0060】
(2)上記の実施形態では、リングギヤ33と外周ギヤ36とが一体的に形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、リングギヤ33と外周ギヤ36とが別体として形成されて、これらが相対回転が規制されるとともに互いの回転軸心のずれが許容される状態で連結されていても良い。この場合において、リングギヤ33と外周ギヤ36との連結部が、径方向に隙間を有する状態でスプライン嵌合して構成されると好適である。また、当該連結部が、例えばセレーション係合や、キーとキー溝との係合等によって構成されても良い。
【0061】
(3)上記の実施形態では、回転電機20の駆動力が、回転電機出力ギヤ24及びそれに噛み合うアイドルギヤ25を介して、分配用差動歯車機構30の外周ギヤ36に伝達される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば回転電機出力ギヤ24が外周ギヤ36に直接噛み合い、回転電機20の駆動力が回転電機出力ギヤ24だけを介して外周ギヤ36に伝達されるように構成されても良い。この場合、回転電機出力ギヤ24が「駆動ギヤ」に相当する。
【0062】
(4)上記の実施形態では、径方向視で連結部55と第1軸受81とが重複するように配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、連結部55と第1軸受81とが、軸方向Lにおける互いに異なる位置に配置されても良い。
【0063】
(5)上記の実施形態では、径方向視で出力ギヤ50と第2軸受82とが重複するように配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、出力ギヤ50と第2軸受82とが、軸方向Lにおける互いに異なる位置に配置されても良い。
【0064】
(6)上記の実施形態では、サンギヤ31が入力部材10に支持されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、サンギヤ31が、入力部材10と同軸上に配置された回転軸に支持されても良い。例えば、サンギヤ31がサンギヤ形成部材の外周面に形成され、そのサンギヤ形成部材が入力部材10に外装された中空軸17に支持されていても良い。このように、本実施形態の車両用駆動装置1においては、サンギヤ31が、入力部材10又は入力部材10と同軸上に配置された回転軸に支持された構成であって良い。
【0065】
(7)上記の実施形態では、分配用差動歯車機構30がシングルピニオン型の遊星歯車機構で構成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、分配用差動歯車機構30がダブルピニオン型やラビニヨ型等の他の形式の遊星歯車機構で構成されても良い。
【0066】
(8)上記の実施形態では、伝達機構60が、外周ギヤ36と、出力ギヤ50と、第1伝達ドリブンギヤ61と、第2伝達ドリブンギヤ62と、伝達軸63と、伝達出力ギヤ68と、伝達係合装置70とを備え、平行2軸式の変速機を含むように構成されている例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば伝達機構60が遊星歯車機構とクラッチ及びブレーキとを備える遊星歯車式の変速機を含むように構成されても良い。また、伝達機構60が、変速比或いは変速段を変更可能な変速機を備えず、変速比が固定のカウンタギヤ機構や減速機等のギヤ機構を含んで構成されても良い。
【0067】
(9)上記の実施形態では、車両用駆動装置1が回転電機20を1つだけ備えている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、車両用駆動装置1が回転電機20とは別の第2回転電機を備えていても良い。この場合、第2回転電機は、車両用駆動装置1の動力伝達経路における伝達係合装置70よりも車輪W側の回転部材に駆動力を伝達するように設けられると良い。
【0068】
(10)上記の実施形態では、車両用駆動装置1が一対の車輪Wのみを駆動するように構成されている例を想定して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば車両用駆動装置1が、上述した駆動ユニット(ここでは「第1駆動ユニット」と言う。)とは別に、他の車輪Wを駆動する第2駆動ユニットをさらに備えて構成されても良い。この場合、第2駆動ユニットは、他の車輪Wの駆動力源として、回転電機20とは別の第2回転電機を備える構成することができる。
【0069】
(11)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1:車両用駆動装置、9:ケース、10:入力部材、15:第1係合装置、17:中空軸、18:サンギヤ形成部、20:回転電機、21:ステータ、22:ロータ、23:ロータ軸、24:回転電機出力ギヤ、25:アイドルギヤ(駆動ギヤ)、30:分配用差動歯車機構、31:サンギヤ、32:キャリヤ、32A:第1延設部、32B:第2延設部、32e:外向き係合部、32p:ピニオンギヤ、33:リングギヤ、34:第1嵌合部、35:複合ギヤ形成部材、36:外周ギヤ(被駆動ギヤ)、37:第1筒状部、38:第2筒状部、38e:内向き係合部、40:第2係合装置、41:スリーブ部材、42:内向き係合部、43:外向き係合部、50:出力ギヤ、51:出力ギヤ形成部材、51A:延設部、52:第2嵌合部、55:連結部、60:伝達機構、61:第1伝達ドリブンギヤ(受動ギヤ)、62:第2伝達ドリブンギヤ、63:伝達軸、64:連結部材、64e:外向き係合部、65:第1ギヤ形成部材、65e:外向き係合部、66:第2ギヤ形成部材、66e:外向き係合部、68:伝達出力ギヤ、70:伝達係合装置、71:スリーブ部材、72:内向き係合部、75:出力用差動歯車機構、76:差動入力ギヤ、78:出力部材、81:第1軸受、82:第2軸受、83:第3軸受、91:第1中間支持壁、92:内側筒状部、93:外側筒状部、96:第2中間支持壁、97:筒状部、D:ダンパ、EG:内燃機関、Eo:内燃機関出力軸、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側、W:車輪、X1:第1軸、X2:第2軸、X3:第3軸、X4:第4軸、X5:第5軸