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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152862
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】トーチ
(51)【国際特許分類】
   F23D 3/18 20060101AFI20221004BHJP
   F21L 17/00 20060101ALI20221004BHJP
   F23D 3/02 20060101ALI20221004BHJP
   F23D 3/08 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F23D3/18 P
F21L17/00
F23D3/02 Z
F23D3/18 A
F23D3/08 610A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055793
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000107055
【氏名又は名称】シルバー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】平松 直人
(57)【要約】
【課題】形状にかかわらず安全を確保したトーチを提供する。
【解決手段】トーチ1aは、液体の燃料FUが充填される容器2と、容器2外に導出される着火部41と容器2内の燃料FUに浸漬される浸漬部42をそれぞれ上端及び下端に有する紐状の芯4と、を備え、着火部41の容器2外への露出量を調整する露出量調整部5を更に備える。露出量調整部5は、着火部41に灯された炎の大きさを調整して同炎を消火する。この構成によれば、トーチ1aが横倒しになったとき等には露出量調整部5により炎が消火されるので、トーチ1aの形状にかかわらず、例えば、トーチ1aを省スペース且つ長筒状のスタイリッシュなものにしても安全を確保することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の燃料が充填される容器と、前記容器外に導出される着火部と前記容器内の燃料に浸漬される浸漬部をそれぞれ上端及び下端に有する紐状の芯と、を備えたトーチであって、
前記着火部の前記容器外への露出量を調整する露出量調整部を更に備え、
前記露出量調整部は、前記着火部に灯された炎の大きさを調整して同炎を消火することを特徴とするトーチ。
【請求項2】
前記露出量調整部は、前記着火部を露出させた状態で前記芯の周囲を保持する筒状の保持パイプと、前記保持パイプの周囲に摺接して前記着火部まで移動可能となった消火部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のトーチ。
【請求項3】
前記消火部は、前記容器の底部が所定のトーチ設置箇所から離れたときに自動で前記着火部まで移動することを特徴とする請求項2に記載のトーチ。
【請求項4】
前記消火部は、円環状に形成され、前記トーチが横倒しになったときに作用する遠心力によって前記着火部まで移動することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のトーチ。
【請求項5】
前記消火部は、上下方向に沿って伸縮するスプリングと、前記スプリングの上端に載置された重りと、前記スプリングが圧縮された状態で前記重りを係止する係止部と、前記重りの上端に配設され前記保持パイプの周囲に摺接した消火パイプと、を有し、前記トーチが横倒しになったときの遠心力などによって前記重りが前記係止部を押し広げ前記重りの係止が外れるように構成するとともに、
前記消火パイプは、前記係止部による前記重りの係止が外れたときに、前記スプリングの弾性復元力によって前記着火部まで移動することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のトーチ。
【請求項6】
前記消火部は、前記容器の底部に設けられ上下方向に沿って伸縮するスプリングと、前記スプリングの周囲を覆うパイプと、前記スプリング及びパイプの上端に固定されたスプリング受けと、前記スプリング受けの上端に配設され前記保持パイプの周囲に摺接した消火パイプと、を有し、
前記パイプは、下端にマグネットを有し、前記マグネットの磁力によって前記スプリングが圧縮された状態で外部磁性体に吸着し、
前記消火パイプは、前記トーチが横倒しになったときや持ち上げられて、前記マグネットと外部磁性体との磁力吸着がなくなったときに、前記スプリングの弾性復元力によって前記着火部まで移動することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のトーチ。
【請求項7】
前記容器は、その外周面上端にねじ山を有し、
前記露出量調整部は、前記容器に上側から被せられる蓋体を更に有し、
前記蓋体は、該蓋体の内周面下端に設けられ前記容器のねじ山と螺合するねじ溝と、前記蓋体の上面に設けられ前記着火部の周囲を覆う調整体と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のトーチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夜間灯や非常灯として用いられるトーチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から夜間灯や非常灯に用いられるトーチとして、液体燃料が充填された容器と、この液体燃料に浸漬された浸漬部及び外部に導出された着火部をそれぞれ下端部及び上端部に有する芯と、を備え、浸漬部から毛細管現象により吸い上げた液体燃料を着火部で燃焼させるものが知られている。このようなトーチは、転倒による火災や火傷の発生を抑制して安全を確保するために、一般的に接地面積を大きくした扁平な形状に形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3154527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなトーチは、安全を確保するために接地面積を大きくしたが故に場所を取り、また、スタイリッシュとは言えない。また、接地面積を大きくした扁平な形状に形成して、いくら倒れにくくしても地震や激しい衝撃があるとトーチは飛んだり倒れたりしてしまい、燃焼が継続することで火災等の危険性がぬぐえなかった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、形状にかかわらず安全を確保したトーチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体の燃料が充填される容器と、前記容器外に導出される着火部と前記容器内の燃料に浸漬される浸漬部をそれぞれ上端及び下端に有する紐状の芯と、を備えたトーチであって、前記着火部の前記容器外への露出量を調整する露出量調整部を更に備え、前記露出量調整部は、前記着火部に灯された炎の大きさを調整して同炎を消火することを特徴とする。
【0007】
前記露出量調整部は、前記着火部を露出させた状態で前記芯の周囲を保持する筒状の保持パイプと、前記保持パイプの周囲に摺接して前記着火部まで移動可能となった消火部と、を有することが好ましい。
【0008】
前記消火部は、前記容器の底部が所定のトーチ設置箇所から離れたときに自動で前記着火部まで移動することが好ましい。
【0009】
前記消火部は、円環状に形成され、前記トーチが横倒しになったときに作用する遠心力によって前記着火部まで移動することが好ましい。
【0010】
前記消火部は、上下方向に沿って伸縮するスプリングと、前記スプリングの上端に載置された重りと、前記スプリングが圧縮された状態で前記重りを係止する係止部と、前記重りの上端に配設され前記保持パイプの周囲に摺接した消火パイプと、を有し、前記トーチが横倒しになったときの遠心力などによって前記重りが前記係止部を押し広げ前記重りの係止が外れるように構成するとともに、前記消火パイプは、前記係止部による前記重りの係止が外れたときに、前記スプリングの弾性復元力によって前記着火部まで移動することが好ましい。
【0011】
前記消火部は、前記容器の底部に設けられ上下方向に沿って伸縮するスプリングと、前記スプリングの周囲を覆うパイプと、前記スプリング及びパイプの上端に固定されたスプリング受けと、前記スプリング受けの上端に配設され前記保持パイプの周囲に摺接した消火パイプと、を有し、前記パイプは、下端にマグネットを有し、前記マグネットの磁力によって前記スプリングが圧縮された状態で外部磁性体に吸着し、前記消火パイプは、前記トーチが横倒しになったときや持ち上げられて、前記マグネットと外部磁性体との磁力吸着がなくなったときに、前記スプリングの弾性復元力によって前記着火部まで移動することが好ましい。
【0012】
前記容器は、その外周面上端にねじ山を有し、前記露出量調整部は、前記容器に上側から被せられる蓋体を更に有し、前記蓋体は、該蓋体の内周面下端に設けられ前記容器のねじ山と螺合するねじ溝と、前記蓋体の上面に設けられ前記着火部の周囲を覆う調整体と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トーチが横倒しになったとき等には露出量調整部により炎が消火されるので、トーチ形状にかかわらず、例えば、トーチを省スペース且つ長筒状のスタイリッシュなものにしても安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るトーチ1aの分解斜視図。
図2】上記トーチ1aの断面斜視図。
図3】(a)(b)は、上記トーチ1aを構成する着火部付近の拡大断面図。
図4】(a)(b)は、上記トーチ1aの動作を示す断面図。
図5】(a)(b)は、上記トーチ1aの更なる動作を示す断面図。
図6】本発明の第2実施形態に係るトーチ1bの分解斜視図。
図7】上記トーチ1bの断面斜視図。
図8】(a)(b)は、上記トーチ1bの動作を示す断面図。
図9】(a)(b)は、上記トーチ1bの更なる動作を示す断面図。
図10】本発明の第3実施形態に係るトーチ1cの分解斜視図。
図11】上記トーチ1cの断面斜視図。
図12】(a)(b)は、上記トーチ1cの動作を示す断面図。
図13】(a)(b)は、上記トーチ1cの更なる動作を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るトーチについて図1乃至図5を参照して説明する。図1及び図2に示すように、トーチ1aは、パラフィンオイル等の液体の燃料FUが充填される容器2と、容器2の栓を成す栓体3と、栓体3を通して容器2内に挿入される芯4と、を備える。
【0016】
容器2は、長筒状、図例では有底円筒状に形成され、その外周面上端には後述する蓋体8と螺合するためのねじ山21が周設されている。栓体3は、容器2の上面開口22を塞ぐ円盤状に形成され、その外周面に周設された弾性パッキン31と、栓体3の中心を貫通して設けられた穴32と、を有する。弾性パッキン31は、栓体3を上面開口22に嵌め込んだときに容器2の内周面に弾性変形してフィットし、燃料FUが容器2から漏れ出すのを防ぐ。穴32は、後述する保持パイプ6の円筒部61が挿通される大きさに形成されている。芯4は、紐状に形成され、その上端に外部に導出されて着火される着火部41を有し、その下端に燃料FUに浸漬される浸漬部42を有する。
【0017】
また、トーチ1aは、着火部41の容器2外への露出量を調整する露出量調整部5を更に備える。露出量調整部5は、着火部41に灯された炎の大きさを調整して同炎を消火するものであって、芯4の周囲を保持する保持パイプ6と、保持パイプ6の周囲に摺接して着火部41まで移動可能となった消火部7と、容器2に上側から被せられる蓋体8と、を有する。
【0018】
保持パイプ6は、円筒状に形成され芯4の周囲を覆う円筒部61と、円筒部61の上端に設けられ円筒部61の軸方向(以下、図例に従って上下方向という)に直交する方向(以下、水平方向という)に拡がる円板状のフランジ62と、を有する。保持パイプ6は、その上端から着火部41を導出させた状態で芯4を保持している。なお、図1では芯4と保持パイプ6が同程度の長さとなっているが、実際には図2に示すように、芯4は保持パイプ6よりも長く、浸漬部42が保持パイプ6の下端から大きくはみ出している。
【0019】
消火部7は、有底円環状に形成され、その底面に保持パイプ6の円筒部61を通すための穴7aを有する。蓋体8は、円板状の天板81と、天板81の周縁から下方に伸びる周壁82と、を有する円形キャップ状に形成されている。天板81の中央には、保持パイプ6の円筒部61を通すための穴83が設けられている。また、周壁82の内周面下端側には、容器2のねじ山21と螺合するねじ溝84が周設されている。
【0020】
ねじ溝84をねじ山21と完全に螺合させると、蓋体8の天板81は、栓体3の上面に当接するように構成されている(図2参照)。このとき、保持パイプ6は、その上端(フランジ62)が天板81から上方に突出した状態で穴83、32に挿通され、穴32に挿通されることで栓体3に対して位置ずれしないように固定されている。消火部7は、穴7aに保持パイプ6の円筒部61を挿通した状態で天板81上に載置され、保持パイプ6の天板81からの突出高さとほぼ同じ高さを有する。
【0021】
図3(a)に示すように、消火部7の穴7aの直径は、蓋体8の穴83の直径とほぼ同一となっている。そして、これら穴7a、83の直径は、円筒部61の直径よりも大きく、且つフランジ62の直径よりも小さくなっている。これにより、図3(b)に示すように、消火部7及び蓋体8は、消火部7の内底面7bがフランジ62に当接するまで上方にスライド移動可能となると共に、円筒部61からの抜け落ちが防止される。このとき、保持パイプ6からの消火部7の突出高さHは、保持パイプ6からの着火部41の突出高さhよりも高くなるように構成されている。
【0022】
次に、上記のように構成されたトーチ1aの動作について図4及び図5を参照して説明する。図4(a)に示すように、ねじ山21とねじ溝84を完全に螺合させた状態で所定のトーチ設置箇所Pに載置されたトーチ1aでは、消火部7の高さが保持パイプ6の突出高さとほぼ同じになっているので、芯4の着火部41は完全に外部に露出している。そのため、着火部41は、周囲に存在する空気(酸素)を十分に消費しながら芯4で吸い上げた燃料FUを燃焼させ、大きな炎Fを与える。
【0023】
この状態から、図4(b)に示すように、トーチ1aが横倒しになって容器2の底部23がトーチ設置箇所Pから離れたとすると、このときにトーチ1aに作用する遠心力によって消火部7は、その内底面7bがフランジ62に当接するまで保持パイプ6に沿って自動で着火部41の方にスライド移動する。そうすると、保持パイプ6からの消火部7の突出高さが保持パイプ6からの着火部41の突出高さよりも高くなっているので、消火部7の内壁が着火部41の周囲を完全に覆った状態となる。このような状態では、着火部41に十分な空気が供給されなくなるので炎が消える。
【0024】
また、図4(a)に示したねじ山21とねじ溝84を完全に螺合させた状態から、図5(a)に示すように、ねじ山21とねじ溝84の螺合を少し緩めると、容器2に対して蓋体8が上方に移動する。これに伴い、蓋体8の天板81上に載置された消火部7も上方に移動し、消火部7の内壁が着火部41の周囲を覆い始める。そうすると、着火部41に供給される空気の量が少なくなって炎Fが小さくなる。
【0025】
そして、図5(b)に示すように、消火部7の内底面7bがフランジ62に当接するまでねじ山21とねじ溝84の螺合を緩めると、消火部7の内壁が着火部41の周囲を完全に覆った状態となり、着火部41に十分な空気が供給されなくなって炎が消える。このように、消火部7は、着火部41の周囲を覆う度合いを変えることで着火部41への空気供給量を調整する調整体としても機能する。
【0026】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るトーチについて図6乃至図9を参照して説明する。図6及び図7に示すように、トーチ1bは、上述したトーチ1aとほぼ同一の容器2及び芯4を備える一方、トーチ1aとは栓体3及び露出量調整部5(保持パイプ6、消火部7及び蓋体8)の形状を異にする。以下ではトーチ1aと相違する構成について説明し、同一の構成についてはトーチ1aと同一の符号を付して重複した説明は避ける。
【0027】
栓体3は、容器2の上面開口22を塞ぐ有底円筒状に形成され、その底面に穴33を有する。穴33は、芯4が挿通される大きさに形成され、芯4の栓体3に対する位置ずれを防止した状態で芯4を固定している。保持パイプ6は、フランジを有さず、単に円筒部61から成る。円筒部61は、その外径が穴33の直径よりも大きくなるように構成され、穴33の縁に固定されている。
【0028】
蓋体8は、トーチ1aの蓋体8に加えて調整体85を有する。調整体85は、穴83と同径の円筒状に形成され、穴83と連通して天板81の上面中央に配置されている。調整体85の天板81からの突出高さは、ねじ山21とねじ溝84を完全に螺合させた状態では、調整体85の上端から保持パイプ6の上端及び着火部41がはみ出て(図7参照)、ねじ山21とねじ溝84との螺合を緩めていくと、調整体85の内壁により着火部41の周囲が覆われるように調整されている。
【0029】
消火部7は、上下方向に沿って伸縮するスプリング71と、スプリング71の上端に載置された重り72と、重り72を係止する係止部73と、重り72の上端に配設された消火パイプ74と、を有する。スプリング71、重り72及び係止部73は、栓体3と蓋体8の天板81とにより囲まれた領域に収容されている。
【0030】
スプリング71は、保持パイプ6の周囲に巻回されている。重り72は、円環状に形成され、その中央に保持パイプ6が挿通される穴72aを有する。穴72aは、スプリング71の伸縮に伴って、重り72が保持パイプ6に沿って上下方向にスライド移動できるような大きさに構成されている。
【0031】
係止部73は、互いに同一形状を有する4つの板ばねにより構成されている。各々の板ばねは、下端側から順に、略半円弧状に形成され水平方向一側に凸となった第1屈曲部73aと、第1屈曲部73aの上端を成す引っかかり部73bと、引っかかり部73bから上方に伸びて水平方向一側に凸となった略(1/4)円弧状の第2屈曲部73cと、第2屈曲部73cの上端から水平方向一側とは反対側に向かって直線的に伸びる直線部73dと、を有する。4つの板ばねは、互いに90度ずつ角度を隔てた状態で、各々の第1屈曲部73aの下端において一体化されている。係止部73は、この一体化部分に保持パイプ6を挿通させるための穴73eを有し、一体化部分の下面を介して栓体3の内底面に固定されている。また、一体化部分の上面には、スプリング71の下端が固定されている。
【0032】
消火パイプ74は、保持パイプ6の周囲に摺接するような円筒状に形成された円筒部74aと、円筒部74aの外周面に設けられ直線部73dの先端が嵌り込む窪み74bと、円筒部74aの下端から水平方向に拡がる円板状のフランジ74cと、を有する。消火パイプ74は、フランジ74cの下面を介して重り72の上端に配設されている。
【0033】
トーチ1bの使用時に係止部73は、スプリング71をばね弾性力に逆らって圧縮した状態で、重り72及びフランジ74cを引っかかり部73bにより上方から押え付けている。換言すれば、係止部(板ばね)73の弾性力は、重り72及び消火パイプ74を上方へ押し上げようとするスプリング71の弾性復元力よりも強く、重り72及び消火パイプ74は、引っかかり部73bによって上方に移動しないように係止されている。また、このとき、係止部73は、直線部73dを消火パイプ74の窪み74bに嵌め込むことでも、消火パイプ74の上方への移動を規制している。このような状態で、消火パイプ74の上端は、調整体85の上端から僅か下方に位置するように構成されている。
【0034】
次に、上記のように構成されたトーチ1bの動作について図8及び図9を参照して説明する。図8(a)に示すように、ねじ山21とねじ溝84を完全に螺合させた状態でトーチ設置箇所Pに載置されたトーチ1bでは、芯4の着火部41は完全に外部に露出している。そのため、着火部41は、周囲に存在する空気を十分に消費して燃料FUを燃焼させ、大きな炎Fを与える。
【0035】
この状態から、図8(b)に示すように、トーチ1bが横倒しになって容器2の底部23がトーチ設置箇所Pから離れたとすると、このときにトーチ1bに作用する遠心力とスプリング71の弾性復元力との合力が係止部(板ばね)73の弾性力に打ち勝ち、重り72及び消火パイプ74のフランジ74cが引っかかり部73b(係止部73)を押し広げて重り72及びフランジ74cの係止が外れると共に、直線部73dが消火パイプ74の窪み74bから外れるようになっている。これにより、消火パイプ74は、フランジ74cが直線部73dに当接するまで保持パイプ6に沿って自動でスライド移動する。このとき、円筒部74aの端部は、調整体85の先端から飛び出して、着火部41の周囲を完全に覆った状態となるように構成されている。その結果、着火部41に十分な空気が供給されなくなって炎が消える。
【0036】
また、図8(a)に示したねじ山21とねじ溝84を完全に螺合させた状態から、図9(a)に示すように、ねじ山21とねじ溝84の螺合を少し緩めると、容器2に対して蓋体8が上方に移動する。これに伴い、調整体85の内壁が着火部41の周囲を覆い始めると、着火部41に供給される空気の量が少なくなって炎Fが小さくなる。そして、図9(b)に示すように、調整体85の内壁が着火部41の周囲を完全に覆うまでねじ山21とねじ溝84の螺合を緩めると、着火部41に十分な空気が供給されなくなって炎が消える。
【0037】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るトーチについて図10乃至図13を参照して説明する。図10及び図11に示すように、トーチ1cは、上述したトーチ1bとほぼ同一の容器2、芯4及び蓋体8を備える一方、トーチ1bとは栓体3、保持パイプ6及び消火部7の形状を異にする。以下ではトーチ1bと相違する構成について説明し、同一の構成についてはトーチ1bと同一の符号を付して重複した説明は避ける。
【0038】
栓体3は、円板状の天板34と、天板34の周縁から下方に伸びる周壁35と、を有する円形キャップ状に形成されている。天板34の中央には、後述する消火パイプ78の円筒部78aを通すための穴36が設けられている。穴36の大きさは、穴36を通って円筒部78aが上下方向に移動可能となるように、円筒部78aの外径よりも大きく構成されている。
【0039】
保持パイプ6は、円筒部61と、円筒部61の下端に設けられ栓体3に固定される固定部63と、を有する。固定部63は、水平方向に拡がる4つの固定片64から成る。4つの固定片64は、互いに90度ずつ角度を隔てて配置され、ねじ止めや接着等により周壁35の下端に固定される。このとき、円筒部61の上端は、調整体85の上端から僅かにはみ出すように構成されている(図11参照)。
【0040】
消火部7は、上下方向に沿って伸縮するスプリング75と、上下方向に配設されスプリング75の周囲を覆うパイプ76と、スプリング75及びパイプ76の上端に固定されたスプリング受け77と、スプリング受け77の上端に配設された消火パイプ78と、を有する。スプリング75は、その下端が容器2の内底部に固定された状態で、上下方向に配設されスプリング75の周囲を覆うスプリングパイプ75aにより支持されている。スプリングパイプ75aの下端も、容器2の内底部に固定されている。
【0041】
パイプ76は、上下方向に伸びる円筒状に形成された円筒部76aと、円筒部76aの下端から水平方向に拡がる台座部76bと、台座部76bの下面に固定されたマグネット76cと、を有する。円筒部76aは、台座部76bを貫通して設けられ、パイプ76がスプリングパイプ75aに対して上下方向にスライド移動可能となるようにスプリングパイプ75aの周囲を覆っている。マグネット76cは、容器2の底部23を介して外部磁性体Mに磁力で吸着する。外部磁性体Mは、トーチ設置箇所Pとして機能する。
【0042】
スプリング受け77は、円盤状に形成され、その下面にスプリング75及びパイプ76の上端が嵌り込んで固定される第1凹部77aを有し、その上面に消火パイプ78(後述する伸長部78c)の下端が嵌り込んで固定される第2凹部77bを有する。
【0043】
消火パイプ78は、上下方向に伸びる円筒状に形成された円筒部78aと、円筒部78aの下端から外方に向かって円板状に拡がった円板部78bと、円板部78bの周縁から互いに90度ずつ角度を隔てて下方に伸長した4つの伸長部78cと、を有する。互いに隣接する伸長部78c間の隙間78dは、固定片64の各々が上下方向に移動可能に入り込める大きさとなっている。
【0044】
トーチ1cの使用時にパイプ76及びスプリング受け77は、スプリング75をばね弾性力に逆らって圧縮した状態で、マグネット76cの磁力により外部磁性体Mに吸着している。換言すれば、マグネット76cと外部磁性体Mとの間の磁力が、パイプ76及びスプリング受け77を上方へ押し上げようとするスプリング75の弾性復元力よりも強いので、スプリング75は、圧縮された状態に維持されている。このとき、スプリング受け77の上端に固定された消火パイプ78は、各々の隙間78dに固定片64が入り込んだ状態で、消火パイプ78の上端が円筒部61の上端の僅か下方に位置するように配置されている。
【0045】
次に、上記のように構成されたトーチ1cの動作について図12及び図13を参照して説明する。図12(a)に示すように、マグネット76cと外部磁性体Mとの間の磁力によりトーチ1cを外部磁性体Mに吸着させ、且つねじ山21とねじ溝84を完全に螺合させた状態では、芯4の着火部41は完全に外部に露出している。そのため、着火部41は、周囲に存在する空気を十分に消費して、大きな炎Fを与える。
【0046】
この状態から、図12(b)に示すように、トーチ1cが横倒しになって容器2の底部23が外部磁性体Mから離れると、外部磁性体Mとマグネット76cとの磁力吸着がなくなって圧縮されていたスプリング75が弾性復元し、パイプ76、スプリング受け77及び消火パイプ78がスプリングパイプ75aに沿って自動でスライド移動する。そうすると、消火パイプ78の先端が着火部41の周囲を完全に覆うように構成されており、これにより、着火部41に十分な空気が供給されなくなって炎が消える。このとき、消火パイプ78の隙間78dに固定部63の固定片64が入り込んでいるので、消火パイプ78及びパイプ76が、それぞれ円筒部61及びスプリングパイプ75aに沿って正確にスライド移動することが保証される。なお、このような動作は、トーチ1cが横倒しになったときに限らず、例えば、トーチ1cが持ち上げられて外部磁性体Mとの磁力吸着がなくなったときにも起こり得る。
【0047】
また、図12(a)に示したねじ山21とねじ溝84を完全に螺合させた状態から、図13(a)に示すように、ねじ山21とねじ溝84の螺合を少し緩めると、容器2に対して蓋体8が上方に移動する。これに伴い、調整体85の内壁が着火部41の周囲を覆い始めると、着火部41に供給される空気の量が少なくなって炎Fが小さくなる。そして、図13(b)に示すように、調整体85の内壁が着火部41の周囲を完全に覆うまでねじ山21とねじ溝84の螺合を緩めると、着火部41に十分な空気が供給されなくなって炎が消える。
【0048】
上記のように本発明よれば、例えば、家庭内で夜間灯や非常灯として使用していたトーチ1a、1b、1cを誤って横倒しにしてしまったとしても、露出量調整部5により炎Fが自動で消火される。そのため、トーチ1a、1b、1cの形状にかかわらず、例えば、長筒状の容器2を採用することでトーチ1a、1b、1cを省スペース且つスタイリッシュなものにしても、火災や火傷の発生を防いで安全を確保することができる。また、容器2と蓋体8との螺合度合いを調整するという簡単な操作で炎Fの大きさを調整することができるので、操作性が良い。
【0049】
なお、本発明に係るトーチは、上記実施形態に限定されず種々の変形が可能である。例えば、容器の形状は円筒状に限定されず、角柱状或いは扁平状に形成されてもよい。また、クリック機構を利用して蓋体を容器に対して段階的に移動可能としてもよいし、蓋体を容器に対して摺接固定する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1a、1b、1c トーチ
2 容器
21 ねじ山
23 (容器の)底部
4 芯
41 着火部
42 浸漬部
5 露出量調節部
6 保持パイプ
7 消火部
71、75 スプリング
72 重り
73 係止部
74、78 消火パイプ
76 パイプ
76c マグネット
77 スプリング受け
8 蓋体
84 ねじ溝
85 調整体
F 炎
FU 燃料
M 外部磁性体
P トーチ設置箇所
図1
図2
図3
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図13