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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152867
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】光学式測距装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
G01C3/06 110A
G01C3/06 110Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055799
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小松 雅弘
【テーマコード(参考)】
2F112
【Fターム(参考)】
2F112AA01
2F112AA09
2F112AD06
2F112BA06
2F112CA12
2F112DA02
2F112DA09
2F112DA15
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA01
2F112FA45
(57)【要約】
【課題】対象物までの距離を正確に測定する。
【解決手段】本発明に係る光学式測距装置10は、対象物4との距離を測定する光学式測距装置であって、参照光1を出射する光出力部11と、測定光2を出射する光走査部12と、測定光2と参照光1の対象物4からの反射光3を受光する受光部13とを備え、測定光2の焦点を対象物4の表面で走査し、参照光1の焦点に一致するときの光走査部12の角度より、距離を算出する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物との距離を測定する光学式測距装置であって、
参照光を出射する光出力部と、
測定光を出射する光走査部と、
前記測定光と前記参照光の前記対象物からの反射光を受光する受光部と
を備え、
前記測定光の焦点を前記対象物の表面で走査し、前記参照光の焦点に一致するときの前記光走査部の走査角より、前記距離を算出する
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項2】
前記測定光と前記参照光それぞれが対象物に照射する光路が同一面上にある
ことを特徴とする請求項1に記載の光学式測距装置。
【請求項3】
前記光出力部が、光源と光分岐部とを有し、
前記光分岐部が、前記光源からの光を、第1の光と第2の光に分岐し、
前記光走査部が、光反射部で前記第2の光を反射して、前記測定光として前記対象物に照射し、
前記第1の光を、前記参照光として前記対象物に照射する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学式測距装置。
【請求項4】
前記光走査部が、他の光源を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学式測距装置。
【請求項5】
前記受光部が、測角センサを有する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学式測距装置。
【請求項6】
前記光走査部の走査駆動部が、1軸駆動型MEMSである
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光学式測距装置。
【請求項7】
対象物との距離を測定する光学式測距方法であって、
測定光を前記対象物に照射するステップと、
参照光を前記対象物に照射するステップと、
前記測定光と前記参照光との前記対象物からの反射光を受光するステップと、
前記対象物の表面において、前記測定光を走査し、前記測定光の焦点が前記参照光の焦点に一致するときの前記測定光の走査角を検出するステップと、
前記測定光の走査角から前記距離を算出するステップと
を備える光学式測距方法。
【請求項8】
前記距離を、式(A)より算出することを特徴とする請求項7に記載の光学式測距方法。
D = L・tanθ (A)
ここで、Dは前記距離、Lは前記測定光の出射位置と前記参照光の出射位置との距離、θは前記走査角である。
【請求項9】
前記距離の補正される距離を、式(B)より算出することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の光学式測距方法。
d= D・cos(|α-β|/2) (B)
ここで、dは前記距離の補正される距離、αは前記測定光の走査角、βは前記反射光の受光強度が最大となるときの受光角度である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物までの距離を光学的に測定する光学式測距装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的に対象物との距離を測定する光学式測距装置において、測定原理に位相差式、TOF(Time Of Flight)式、三角測量式を用いるものが知られている。その中で、三角測量式を用いる光学式測距装置の構成例30は、図11(a)に示すように、発光素子31と、受光素子33と、発光レンズ32と、受光レンズ34とを備え、対象物4に光301を照射し、その反射光302を受光して、対象物4までの距離を測定する(例えば、特許文献1)。
【0003】
三角測量式測距方法の光学系において、図11(a)に示すように、光源31からの光301は発光レンズ32を透過して対象物4に照射される。対象物4に反射された光302は、受光レンズ34により集光され受光素子33に結像する。
【0004】
対象物4からの反射光302が受光素子33へ角度θで入射する場合、光源31と結像位置との距離Lとして、光源31と対象物4との距離D0は式(1)により算出される。
【0005】
D0 = L0・tanθ (1)
【0006】
例えば、図11(a)に示すように、対象物4がZ1の位置にある場合には、D01=L01・tanθ01である。
【0007】
この光学系において、対象物4が、光源31と対象物4とを結ぶ光軸上を移動するときには(例えば、位置Z1から位置Z2)、式(1)により、光源31と対象物4との距離D0を算出することができる。例えば、対象物4がZ2の位置にある場合には、D02=L02・tanθ02である。
【0008】
例えば、レベル計において光学式測距装置を用いて、液槽内の液面Z1の高さD01から液面Z2の高さD02への変化を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-37276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、光源31と対象物4とを結ぶ光軸を対象物4の表面の垂直方向と完全平行方向に設定することは困難である。図11(b)に示すように、光源31と対象物4とを結ぶ光軸が、対象物4の表面の垂直方向と任意の角度θxを有する場合、式(1)の関係が成立しない。
【0011】
その結果、角度θxの値を正確に取得できない場合、式(1)により光源31と対象物4との距離D01を算出することができず、対象物4との距離を正確に測定することは困難であった。
【0012】
さらに、対象物4が、図11(b)に示すように、光源31と対象物4とを結ぶ光軸以外の方向に移動する場合には、対象物4との距離D02を正確に測定することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る光学式測距装置は、対象物との距離を測定する光学式測距装置であって、参照光を出射する光出力部と、測定光を出射する光走査部と、前記測定光と前記参照光の前記対象物からの反射光を受光する受光部とを備え、前記測定光の焦点を前記対象物の表面で走査し、前記参照光の焦点に一致するときの前記光走査部の走査角より、前記距離を算出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る光学式測距装置は、前記測定光と前記参照光それぞれが対象物に照射する光路が同一面上にあってもよい。
【0015】
また、本発明に係る光学式測距装置は、前記光出力部が、光源と光分岐部とを有し、前記光分岐部が、前記光源からの光を、第1の光と第2の光に分岐し、前記光走査部が、光反射部で前記第2の光を反射して、前記測定光として前記対象物に照射し、前記第1の光を、前記参照光として前記対象物に照射してもよい。
【0016】
また、本発明に係る光学式測距装置は、前記光走査部が、他の光源を有してもよい。
【0017】
また、本発明に係る光学式測距装置は、前記受光部が、測角センサを有してもよい。
【0018】
また、本発明に係る光学式測距装置は、前記光走査部の走査駆動部が、1軸駆動型MEMSであってもよい。
【0019】
また、本発明に係る光学式測距方法は、対象物との距離を測定する光学式測距方法であって、測定光を前記対象物に照射するステップと、参照光を前記対象物に照射するステップと、前記測定光と前記参照光との前記対象物からの反射光を受光するステップと、前記対象物の表面において、前記測定光を走査し、前記測定光の焦点が前記参照光の焦点に一致するときの前記測定光の走査角を検出するステップと、前記測定光の走査角から前記距離を算出するステップとを備える。
【0020】
また、本発明に係る光学式測距方法は、前記距離を、式(A)より算出してもよい。
【0021】
D = L・tanθ (A)
【0022】
ここで、Dは前記距離、Lは前記測定光の出射位置と前記参照光の出射位置との距離、θは前記走査角である。
【0023】
また、本発明に係る光学式測距方法は、前記距離の補正される距離を、式(B)より算出してもよい。
【0024】
d = D・cos(|α-β|/2) (B)
【0025】
ここで、dは前記距離の補正される距離、αは前記測定光の走査角、βは前記反射光の受光強度が最大となるときの受光角度である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、対象物までの距離を正確に測定できる光学式測距装置および方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光学式測距装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係る光学式測距装置の光学系の一例を示す概略図である。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態に係る光学式測距装置における光走査部の一例を示す概略図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態に係る光学式測距方法を示すフローチャート図である。
図5図5は、本発明の第1の実施の形態に係る光学式測距装置および方法の効果を説明するための図である。
図6図6は、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る光学式測距装置の光学系の一例を示す概略図である。
図7図7は、本発明の第1の実施の形態の変形例2に係る光学式測距装置の光学系の一例を示す概略図である。
図8図8は、本発明の第2の実施の形態に係る光学式測距装置の構成を示すブロック図である。
図9図9は、本発明の第2の実施の形態に係る光学式測距装置の光学系の一例を示す概略図である。
図10図10は、本発明の第2の実施の形態の変形例に係る光学式測距装置の光学系の一例を示す概略図である。
図11図11は、従来の光学式測距装置の光学系の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態に係る光学式測距装置10について、図1図5を参照して説明する。
【0029】
<光学式測距装置の構成>
本実施の形態に係る光学式測距装置10は、図1に示すように、光出力部11と、光走査部12と、受光部13と、制御部14とを備える。ここで、光出力部11は、光源111と光分岐部112とを有する。また、光走査部12は走査駆動部122と光反射部121とを有する。
【0030】
制御部14は、光源111を駆動する光源駆動電源141と、光走査部12の走査駆動部122を制御する光走査制御部142と、解析部143とを備える。
【0031】
解析部143は受光部13と光走査制御部142と接続され、対象物までの距離を算出する(後述)。
【0032】
図2に、光学式測距装置10の光学系を示す。光学式測距装置10では、光源に半導体レーザ111、光分岐部にハーフミラー112、受光部にCMOS撮像素子13を用いる。また、光走査部の走査駆動部にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)122、光反射部にミラー121を用い、いわゆるMEMSミラー12を用いる。
【0033】
半導体レーザ111から出射される光はハーフミラー112に入射され、第1の光1と第2の光1_2に分岐される。第1の光は、参照光1として、光出力部11における光分岐部(ハーフミラー)112から出射され、半導体レーザ111からハーフミラー112の光軸の延長線上で被測定物体表面(以下、「対象物」という。)4に照射される。ここで、参照光1がハーフミラー112から出射される位置が、光出力部11の出射位置、換言すれば参照光1の出射位置である。
【0034】
第2の光1_2は、MEMSミラー12で反射された後、測定光2として対象物4に照射される。ここで、測定光2がMEMSミラー12で反射され出射される位置が、測定光2の出射位置である。
【0035】
このように、参照光1は光軸方向を固定し、測定光2はMEMSミラー12を駆動することにより経時的に光軸方向を変える。ここで、測定光2は参照光1とねじれの関係になく、平行にならない限り必ず交差するようにする。すなわち、対象物4に照射される測定光2の光路と参照光1の光路は同一面上にある。
【0036】
各々の光は対象物4で乱反射され、その一部がCMOS撮像素子13によって受光される。したがって、CMOS撮像素子13では、測定光2と参照光1それぞれが対象物4を照射する点が輝点として観測される。
【0037】
ここで、MEMS122は、一例として、1軸駆動型MEMSであり、図3に示すように、第1軸120に対して回動可能に形成された可動部124を支持する固定フレーム123とを備える。可動部124に光反射部であるミラー121が搭載される。
【0038】
また、固定フレーム123の両側には、第1軸120の垂直方向に均一な磁場を形成するための第1の磁石(N極)128_1及び第2の磁石(S極)128_2がそれぞれ配置される。例えば、第1の磁石(N極)128_1のN極が固定フレーム123と対向して配置され、第2の磁石(S極)128_2のS極が固定フレーム123と対向して配置される。第1の磁石(N極)128_1及び第2の磁石(S極)128_2は、例えば、永久磁石または電磁石で形成できる。
【0039】
可動部124は、第1軸120方向に可動部124の両側に形成された第1の梁125を介して固定フレーム123内に接続されている。
【0040】
また、可動部124には、可動部124を、第1軸120を中心軸として回動させるための駆動コイル126が配置される。例えば、駆動コイル126は、可動部124の面内で複数回周回するように巻かれて構成され、その一端は第1の梁125を介して固定フレーム123の第1の電極127_1に接続され、他端は第1の梁125を介して固定フレーム123の第2の電極127_2に接続される。
【0041】
駆動コイル126には、可動部124を駆動させるための信号が印加される。駆動コイル126に信号が印加されれば、第1の磁石(N極)128_1及び第2の磁石(S極)128_2により形成された磁場と、及び駆動コイル126に流れる電流とにより発生したローレンツ力が、可動部124を駆動させる。
【0042】
ここで、可動部124と第1の梁125とは、それぞれ信号の周波振動に適した質量及び弾性剛性を有するように設計される。
【0043】
このように、可動部124は、第1軸120を中心軸として回動する。その結果、可動部124に搭載されるミラー121が回動するので、ミラー121に反射する光が対象物4上を走査される。
【0044】
<光学式測距方法>
本実施の形態に係る光学式測距方法について、図4を参照して説明する。図4は、光学式測距方法を示すフローチャート図である。
【0045】
初めに、光学式測距装置10において、測定光2と参照光1とを対象物4に照射する(ステップ151)。各光線が対象物4の別の位置に照射される(合焦状態にない)とき、CMOS撮像素子13では複数の輝点が観測される。
【0046】
次に、光走査部12(走査駆動部122)を駆動して、対象物4の表面で測定光2を走査する(ステップ152)。
【0047】
次に、対象物4の表面で、測定光2の焦点を参照光1との焦点と一致させる(ステップ153)。その結果、CMOS撮像素子13でより明るい1点の輝点が観測される点が検出される。このとき、対象物4の表面で参照光1と測定光2とが合焦状態にある。図2中の矢印3は、合焦状態における参照光1と測定光2の対象物での反射光を示す。
【0048】
例えば、CMOS撮像素子13で受光される光強度が最大となるときを合焦状態として検出できる。または、目視により合焦状態を観測してもよい。
【0049】
次に、この合焦状態での光走査部12の走査角θを検出する。ここで、光走査部の走査角θは、MEMSミラー12表面に対する光(第2の光)1_2の入射方向と反射方向(測定光2の出射方向)とがなす角度であり、「測定光の走査角」ともいう。
【0050】
光走査部12の走査角θを検出するとき、光走査部12を所定の速度で揺動させ、合焦状態となる瞬間を検出してもよい、または、合焦状態で光走査部12を停止して走査角を検出してもよい。
【0051】
または、CMOS撮像素子13で測定光2による焦点位置と参照光1による焦点位置との距離を測定して、この距離がゼロまたは所定の値以下になるように、光走査部12にフィードバックして、距離がゼロまたは所定の値以下の状態を合焦状態として、光走査部12の走査角θを検出してもよい。
【0052】
最後に、式(2)より、光出力部11の出射位置(ハーフミラー112の出射位置)から対象物4までの距離Dを算出する。ここで、測定光2の出射位置と参照光1の出射位置との距離をLとする。
【0053】
D = L・tanθ (2)
【0054】
ここで、測定光2と参照光1に異なる波長の光を用いて、合焦状態をそれぞれの光の合成色として検出してもよい。例えば、測定光2に赤色光、参照光1に青色光を用いる場合、合焦状態はそれぞれの光の合成色である紫色として検出される。これにより、目視での測定精度(S/N比)を改善できる。
【0055】
<効果>
以上のように、本実施の形態に係る光学式測距装置および方法によれば、対象物4までの距離を正確に測定できる。
【0056】
とくに、以下の通り、光出力部11から対象物4への光照射方向が、対象物4の表面に対する垂直方向から任意の角度を有する場合でも、対象物4までの距離を正確に測定できる。
【0057】
図5(a)に示すように、参照光1が任意の角度θx1で対象物4に照射される。参照光1が対象物4の表面で焦点P1を形成するときに、光走査部12を駆動して測定光2の焦点を対象物4の表面で走査させて、測定光2の焦点と参照光1の焦点が一致する光走査部12の走査角θ1を検出する。
【0058】
光走査部12とハーフミラー112との距離すなわち測定光2の出射位置と参照光1の出射位置との距離をLとして、式(2)により、参照光1と平行方向での光出力部11の出射位置(ハーフミラー112の出射位置)から対象物4までの距離D1を算出できる。
【0059】
また、参照光1(光源111からの光)の照射方向と対象物4が移動する方向とが任意の角度を有する場合、対象物4までの距離の変化を正確に測定できる。
【0060】
図5(b)に示すように、対象物4がZ1の位置からZ2の位置に移動するとき、参照光1が任意の角度θx2で対象物4に照射される。参照光1が対象物4の表面で焦点P2を形成するときに、光走査部12を駆動して測定光2の焦点を対象物4の表面で走査させて、測定光2の焦点と参照光1の焦点が一致する光走査部12の走査角θ2を検出する。
【0061】
光走査部12とハーフミラー112との距離すなわち測定光2の出射位置と参照光1の出射位置との距離をLとして、式(2)により、参照光1と平行方向での光出力部11の出射位置(ハーフミラー112の出射位置)から対象物4までの距離D2を算出できる。
【0062】
本実施の形態に係る光学式測距装置および方法では、測定光2と参照光1を用いて、参照光1の光軸を固定して固定軸として設定して、測定光2の光軸を変化させて固定軸との角度を検出する。
【0063】
これにより、光出力部11からの照射方向と対象物4が移動する方向とが任意の角度を有する場合でも、参照光1と平行方向での光出力部11から対象物4までの距離を正確に測定することができる。このように、光出力部11から対象物4までの相対的な距離の変化を正確に測定することができる。
【0064】
<変形例1>
本実施の形態の変形例1に係る光学式測距装置および方法について、図6(a)、(b)を参照して説明する。
【0065】
上述の通り、第1の実施の形態では、参照光1と平行方向での光出力部11の出射位置(ハーフミラー112の出射位置)から対象物4までの距離Dを算出できるが、対象物4の垂直方向におけるハーフミラー112から対象物4までの距離(距離の絶対値)を取得することはできない。
【0066】
本変形例では、参照光1と平行方向での光出力部11の出射位置(ハーフミラー112の出射位置)から対象物4までの距離Dに基づき、対象物4の垂直方向におけるハーフミラー112から対象物4までの距離(距離の絶対値)を算出できる。詳細を以下に説明する。
【0067】
本変形例に係る光学式測距装置10_2は、第1の実施の形態と同様に、光出力部11と、光走査部と、受光部13と、制御部14とを備える。ここで、光出力部11は、光源111と光分岐部112とを有する。
【0068】
図6(a)、(b)に、光学式測距装置10_2の光学系を示す。光学式測距装置10_2では、光源に半導体レーザ111、光分岐部にハーフミラー112、光走査部にMEMSミラー12、受光部にCMOS撮像素子13を用いる。さらに、受光部13は、測角センサ(角度計測センサ)を有する。
【0069】
半導体レーザ111から出射される光はハーフミラー112に入射され、第1の実施の形態と同様に、参照光1と測定光2に分岐され、参照光1は直接対象物4に照射され、測定光2はMEMSミラー12で反射されて対象物4に照射される。
【0070】
図6(a)に示すように、参照光1が対象物4に垂直に入射され光走査部12の走査角(測定光2の走査角)αで合焦状態となる場合、測定光2の対象物4への入射角がπ/2-αとなり、対象物4で乱反射される測定光のうち反射角π/2-αで反射する光3が最大の強度で受光部13で受光される。
【0071】
このとき、測定光2(および参照光1)の反射光3の受光部13への入射方向と、光出力部11(光分岐部)の出射位置と光走査部12の出射位置とを結ぶ線との平行方向とがなす角度(以下、「受光角度」という。)βはαである。
【0072】
一方、図6(b)に示すように、参照光1が対象物4の垂直方向に任意の角度θをもって入射され光走査部12の走査角αで合焦状態となる場合、測定光2が対象物4への入射角がπ/2-α+θとなり、対象物4で乱反射される測定光のうち反射角π/2-α+θで反射する光3が最大の強度で受光部13で受光される。このときの測定光2(および参照光1)の反射光3の受光部13への入射角度βはα-2θである。
【0073】
このように、参照光1が対象物4の垂直方向に任意の角度θをもって入射する場合、合焦状態で測定光2(および参照光1)の反射光3の受光部13への入射角度βはα-2θとなり、その変化分|α-β|は2θである。したがって、参照光1の入射方向と対象物4の垂直方向との角度θは、θ=|α-β|/2より算出される。
【0074】
したがって、対象物4の垂直方向における光出力部11の出射位置から対象物4までの距離dは、式(2)により算出される距離(参照光1と平行方向で光出力部11の出射位置から対象物4までの距離)Dを用いて、式(3)により算出される。
【0075】
d = D・cosθ (3)
【0076】
このように、本変形例に係る光学式測距装置および方法によれば、参照光1と平行方向での対象物4までの距離Dを補正して、対象物4の垂直方向における光出力部11の出射位置から対象物4までの距離(距離の絶対値)dを算出できる。
【0077】
<変形例2>
本実施の形態の変形例2に係る光学式測距装置および方法について、図7(a)、(b)を参照して説明する。図7(a)では、本変形例をわかりやすく説明するために、対象物に照射される参照光の経路のみを示す。
【0078】
本変形例では、図7(a)に示すように、参照光1が、図中x方向だけではなく、図中y方向に任意の角度をもって、対象物4に入射する場合において、垂直方向における対象物4までの距離(距離の絶対値)dの算出について説明する。
【0079】
本変形例に係る光学式測距装置10_3は、第1の実施の形態と同様に、光出力部11と、光走査部と、受光部13と、制御部14とを備える。ここで、光出力部11は、光源111と光分岐部112とを有する。
【0080】
図7(b)に、光学式測距装置10_3の光学系を示す。光学式測距装置10_3では、光源に半導体レーザ(第1の半導体レーザ)111、光分岐部にハーフミラー112、第1の光走査部12_1としてMEMS、第2の光走査部としてMEMSミラー12_2、受光部13にCMOS撮像素子を用いる。さらに、第1の光走査部12_1は、補助光源としての半導体レーザを備える。また、受光部13は、測角センサ(角度計測センサ)を有する。
【0081】
ここで、第1の光走査部12_1は、光分岐部112から第2の光走査部12_2への方向に対して所定の角度(本変形例では90°)で距離L1の位置に配置される。
【0082】
第1の実施の形態の変形例1と同様に、半導体レーザ111から出射される光はハーフミラー112で分岐され、参照光1は直接対象物4に照射され、測定光(第2の測定光)2_2はMEMSミラー12_2で反射されて対象物4に照射される。この参照光1と測定光2_2との合焦状態において、対象物4での反射光を受光部13で受光して、図7(a)に示すθ1を算出する。
【0083】
また、第1の光走査部12_1において補助光源(半導体レーザ)から出射する光を測定光(第1の測定光)2_1として対象物4に照射してMEMSにより走査する。その結果得られる参照光1と測定光2_1との合焦状態より、図7(a)に示すθ2を算出する。
【0084】
したがって、対象物4の垂直方向における光出力部11の出射位置から対象物4までの距離dは、式(2)により算出される距離(参照光1と平行方向で光出力部11の出射位置から対象物4までの距離)Dと、角度θ1、θ2を用いて、式(4)により算出される。
【0085】
d = D’・cosθ2 = D・cosθ1・cosθ2 (4)
【0086】
このように、本変形例に係る光学式測距装置および方法によれば、対象物4の垂直方向における光出力部11の出射位置から対象物4までの距離(距離の絶対値)を、さらに精度よく算出できる。
【0087】
本変形例では、第1の光走査部12_1における補助光源(半導体レーザ)からの出射光を第1の測定光として用いる例を示したが、これに限らない。第1の光走査部12_1としてMEMSミラーを用い、別に備える他の補助光源(半導体レーザ)からの出射光をMEMSミラーに反射させて、第1の測定光として用いてもよい。また、別に備える他の光分岐部で半導体レーザ(第1の半導体レーザ)111の出射光を分岐して用いてもよい。
【0088】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態に係る光学式測距装置について、図8、9を参照して説明する。
【0089】
<光学式測距装置の構成>
本実施の形態に係る光学式測距装置20は、図8に示すように、光出力部21と、光走査部22と、受光部23と、制御部24とを備える。ここで、光出力部21は、光源(第1の光源)211を有する。また、光走査部22では、走査駆動部222に他の光源(第2の光源)221が搭載される。
【0090】
制御部24は、第1の光源211を駆動する第1の光源駆動電源241と、第2の光源221を駆動する第2の光源駆動電源242と、光走査部22を制御する光走査制御部243と、解析部244とを備える。
【0091】
解析部244は受光部23と光走査制御部243と接続され、対象物までの距離を算出する(後述)。
【0092】
図9に、光学式測距装置20の光学系を示す。光学式測距装置20では、第1の光源に半導体レーザ211、光走査部の走査駆動部にMEMS222、MEMS222に搭載される第2の光源に半導体レーザ221、受光部にCMOS撮像素子23を用いる。
【0093】
半導体レーザ211から出射される光は、参照光1として、対象物4に照射される。ここで、参照光1が半導体レーザ211から出射される位置が、参照光1の出射位置である。
【0094】
MEMS222に搭載される半導体レーザ221から出射される光は、測定光2として対象物4に照射される。ここで、測定光2が半導体レーザ221から出射される位置が、測定光2の出射位置である。
【0095】
このように、参照光1は光軸方向を固定し、測定光2はMEMS222を駆動することにより、MEMS222に搭載される半導体レーザ221の出射光の光軸方向を経時的に変える。ここで、測定光2は参照光1とねじれの関係になく、平行にならない限り必ず交差するようにする。すなわち、対象物4に照射される測定光2の光路と参照光1の光路は同一面上にある。
【0096】
各々の光は対象物4の表面で乱反射され、その一部がCMOS撮像素子23によって受光される。したがって、CMOS撮像素子23では、測定光2と参照光1それぞれが対象物4を照射する点が輝点として観測される。
【0097】
MEMS222は、第1の実施の形態と同様の1軸駆動型MEMSであり、可動部に搭載される半導体レーザ221が回動するので、半導体レーザから出射される光が対象物4上を走査される。
【0098】
本実施の形態に係る光学式測距方法では、第1の実施の形態と同様に、対象物4の表面で参照光1と測定光2とが合焦状態となるときの測定光2の走査角θを検出して、式(2)より、半導体レーザ211の出射位置から対象物4までの距離Dを算出する。
【0099】
本実施の形態に係る光学式測距方法によれば、第1の実施の形態と同様に、対象物4までの距離を正確に測定できる。
【0100】
とくに、光出力部21(半導体レーザ211)から対象物4への光照射方向が、対象物4の表面に対する垂直方向から任意の角度を有する場合でも、対象物4までの距離を正確に測定できる。
【0101】
また、光出力部21からの照射方向と対象物4が移動する方向とが任意の角度を有する場合でも、参照光1と平行方向での光出力部21から対象物4までの距離を正確に測定することができる。このように、光出力部21から対象物4までの相対的な距離の変化を正確に測定することができる。
【0102】
<変形例>
本実施の形態の変形例に係る光学式測距装置について、図10(a)、(b)を参照して説明する。
【0103】
本変形例に係る光学式測距装置20_2は、第2の実施の形態と同様に、光出力部21と、光走査部22と、受光部23と、制御部24とを備える。ここで、光出力部21は、光源(第1の光源)211を有する。また、光走査部22では、走査駆動部に他の光源(第2の光源)221が搭載される。
【0104】
図10(a)、(b)に、光学式測距装置20_2の光学系を示す。光学式測距装置20_2では、第1の光源に半導体レーザ211、光走査部22の走査駆動部にMEMS222、MEMS222に搭載される第2の光源に半導体レーザ221、受光部にCMOS撮像素子23を用いる。さらに、受光部23は、測角センサ(角度計測センサ)を有する。
【0105】
第1の半導体レーザ211から出射される光は、参照光1として対象物4に照射される。MEMS222に搭載される第2の半導体レーザ221から出射される光は、測定光2として対象物4に照射される。第2の半導体レーザ221からの光は、MEMS222を駆動させることにより走査される。
【0106】
図10(a)に示すように、参照光1が対象物4に垂直に入射され光走査部22の走査角(測定光2の走査角)αで合焦状態となる場合、測定光2の対象物4への入射角がπ/2-αとなり、対象物4で乱反射される測定光のうち反射角π/2-αで反射する光3が最大の強度で受光部23で受光される。このとき、受光部23での受光角度βはαである。
【0107】
一方、図10(b)に示すように、参照光1が対象物4の垂直方向に任意の角度θをもって入射され光走査部22の走査角αで合焦状態となる場合、測定光2が対象物4への入射角がπ/2-α+θとなり、対象物4で乱反射される測定光のうち反射角π/2-α+θで反射する光3が最大の強度で受光部23で受光される。このときの測定光2(および参照光1)の反射光3の受光部23への入射角度βはα-2θである。
【0108】
このように、参照光1が対象物4の垂直方向に任意の角度θをもって入射する場合、合焦状態で測定光2(および参照光1)の反射光3の受光部23への入射角度βはα-2θとなり、その変化分|α-β|は2θである。したがって、参照光1の入射方向と対象物4の垂直方向との角度θは、θ=|α-β|/2より算出される。
【0109】
したがって、対象物4の垂直方向における光出力部21の出射位置から対象物4までの距離dは、式(2)により算出される距離(参照光1と平行方向で光出力部21の出射位置から対象物4までの距離)Dを用いて、式(3)により算出される。
【0110】
このように、本変形例に係る光学式測距装置および方法によれば、参照光1と平行方向での対象物4までの距離Dを補正して、対象物4の垂直方向における光出力部21の出射位置から対象物4までの距離(距離の絶対値)dを算出できる。
【0111】
さらに、第1の実施の形態の変形例2と同様に、他の測定光(第2の測定光)を用いて、式(4)より、さらに精度よく対象物4の垂直方向における光出力部21の出射位置から対象物4までの距離(距離の絶対値)を算出できる。
【0112】
本実施の形態および変形例では、MEMSに搭載される第2の光源の出射光を測定光として用いる例を示したが、これに限らず、第2の光源の出射光をMEMSミラーに反射させて測定光として用いてもよい。
【0113】
本発明の実施の形態では、例えば非合焦状態(測定光と参照光とが平行な場合など)での受光強度を初期値として、合焦状態での受光強度と初期値(非合焦状態での受光強度)との差分を観測することにより、受光感度を改善でき、測定精度を改善できる。
【0114】
また、測距装置と対象物との距離が、受光部での受光感度を十分に確保できる程度に近距離である場合には、光源の光量(強度)を低減でき、省電力化できる。
【0115】
また、測定光と参照光とをレンズや鏡を用いて集光することでより遠距離での測定が可能になる。
【0116】
また、測距装置と対象物との距離が比較的短距離であれば、光源に半導体レーザではなくLEDを用いてもよい。
【0117】
また、測距装置と対象物との距離が遠距離の場合、対象物上での測定光と参照光との輝点は小さくなるが、距離に応じて光径を拡大することにより合焦状態を容易に検出できる。
【0118】
また、受光部を望遠鏡に搭載することで、遠距離での合焦状態を精度よく測定できる。
【0119】
また、受光部は、光源から対象物までの測定光の光路と参照光の光路が構成する平面上に配置されなくてもよい。また、受光部は、CMOS撮像素子に限らず、CCD撮像素子などの画像センサ、光位置検出センサなどを用いてもよい。
【0120】
また、光分岐部はハーフミラーに限らず、プリズムやビームスプリッタなどを用いてもよい。
【0121】
また、光走査部の走査駆動部はMEMSに限らず、アクチュエータなどを用いてもよい。
【0122】
また、本発明の実施の形態に係る光学的測距装置は、外乱光がない状態でも利用できる。外乱光がある場合、参照光および測定光としてパルス変調光を用い、受光器にその高周波変調と同じ周波数を通過帯域とする狭帯域のバンドパスフィルタを用いることで外乱光耐性を向上することができる。
【0123】
本発明の実施の形態では、光学式測距装置の構成、製造方法などにおいて、各構成部の構造、寸法、材料等の一例を示したが、これに限らない。光学式測距装置の機能を発揮し効果を奏するものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、液槽内の液面の高さを測定するレベル計の他、自動車を含む機械分野における安全操作(運転)、工業分野における測定機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 参照光
2 測定光
3 反射光
4 被測定物体表面(対象物)
10 光学式測距装置
11 光出力部
111 光源
112 光分岐部
12 光走査部
121 光反射部
122 走査駆動部
13 受光部
14 制御部
141 光源駆動電源
142 光走査制御部
143 解析部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11