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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152871
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】コンパレータ
(51)【国際特許分類】
   H03K 5/08 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
H03K5/08 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055805
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 淳一
【テーマコード(参考)】
5J039
【Fターム(参考)】
5J039DA05
5J039DB11
5J039DC02
5J039KK16
5J039KK17
5J039KK18
5J039LL01
5J039MM16
(57)【要約】
【課題】コンパレータにおいて入力電圧の過電圧に対して保護する。
【解決手段】コンパレータ10では、入力電圧VINがトランジスタ26のベースBに入力され、トランジスタ28のベースBに分圧回路32から基準電圧VREFが印加されることで、基準電圧VREFに対する入力電圧VINに応じた出力電圧VOUTを出力する。また、コンパレータ10には、分圧回路32と接地端子18Cとの間に過電圧検知回路40が配置されており、過電圧検知回路40は、入力電圧VINが予め設定した制限電圧を越えた際に、基準電圧VREFを上昇させる。これにより、コンパレータ10は、入力電圧VINの過電圧に対してトランジスタ26の電圧VEBが大きくなるのが抑制され、入力電圧VINの過電圧から保護される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1トランジスタと第2トランジスタとが対で設けられ、前記第2トランジスタのベースに入力される基準電圧に対する前記第1トランジスタのベースに入力される入力電圧の差分に応じた電圧を出力する差動部と、
前記第2トランジスタのベースに前記基準電圧を印加する電圧生成部と、
前記入力電圧が予め設定した制限電圧を越えた際に、前記第2トランジスタのベースに印加される前記基準電圧を上昇させる過電圧検知部と、
を含むコンパレータ。
【請求項2】
前記電圧生成部は、一方が所定電圧の電源側に接続され、他方が接地側に接続され、前記所定電圧を互いの抵抗値に応じて分圧して前記第2トランジスタのベースに印加する一対の分圧抵抗を含み、
前記過電圧検知部は、前記入力電圧が前記制限電圧を越えた際に、前記分圧抵抗の接地側を開放することで前記基準電圧を上昇させる請求項1に記載のコンパレータ。
【請求項3】
前記過電圧検知部は、
前記入力電圧が前記制限電圧に達したか否かを検知する電圧検知部と、
前記電圧検知部により前記入力電圧が前記制限電圧に達したことが検知されることで、前記分圧抵抗の接地側を接地状態から非接地状態に切換えるスイッチング部と、
を備える請求項2に記載のコンパレータ。
【請求項4】
前記過電圧検知部は、
前記入力電圧に応じて変化する電流値を検知し、該電流値が前記制限電圧に応じて設定した電流値に達したか否かを検知する電流検知部と、
前記電流検知部により前記制限電圧に応じて設定した電流値に達したことが検知されることで、前記分圧抵抗の接地側を接地状態から非接地状態に切換えるスイッチング部と、
を備える請求項2に記載のコンパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つのPNP型トランジスタにより構成された差動回路と、2つのNPN型トランジスタにより構成された電流ミラー回路とが用いられたコンパレータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-281769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンパレータは、例えば、車両等において各種の信号回路などの電気回路に用いられている。図6には、一般的構成のコンパレータの主要部が回路図にて示されている。
【0005】
このコンパレータ100は、PNP型のトランジスタ102A、102Bを用いたカレントミラー回路と、NPN型のトランジスタ104A、104Bを用いた差動回路(差動増幅回路)とが接続されて構成されている。コンパレータ100には、トランジスタ104AのベースBに入力信号(入力電圧)VINが入力され、トランジスタ104BのベースBに電圧Vを抵抗106A、106Bにより分圧した基準電圧VREFが入力される。これにより、コンパレータ100では、トランジスタ102BのコレクタCとトランジスタ104BのコレクタCとの接続点から基準電圧VREFに対する入力電圧VINに応じた信号(信号電圧)がインバータ108に出力され、基準電圧VREFに対する入力信号VINの高/低に応じてHi/Lo(例えば、5v/0v)が切換る出力電圧VOUTが出力される。
【0006】
一方、入力電圧VINは、サージ等の影響を受けることがあり、入力電圧VINは、サージ等の影響を受けることで電圧Vに比して高電圧となることがある。コンパレータ100では、入力電圧VINが高電圧となると基準電圧VREF側のトランジスタ104Bのベース-エミッタ間の電位差が大きくなる(電圧VEBが高くなる)。これにより、電圧VEBがトランジスタ104Bのベース-エミッタ間の定格電圧を越えてしまうと、トランジスタ104Bが破損するなどの動作に影響を及ぼす。ここから、コンパレータには、入力電圧の過電圧に対する保護が要求されることがある。
【0007】
本発明は、上記事実を鑑みて成されたものであり、入力電圧の過電圧に対して保護されたコンパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様のコンパレータは、第1トランジスタと第2トランジスタとが対で設けられ、前記第2トランジスタのベースに入力される基準電圧に対する前記第1トランジスタのベースに入力される入力電圧の差分に応じた電圧を出力する差動部と、前記第2トランジスタのベースに前記基準電圧を印加する電圧生成部と、前記入力電圧が予め設定した制限電圧を越えた際に、前記第2トランジスタのベースに印加される前記基準電圧を上昇させる過電圧検知部と、を含む。
【0009】
第2の態様のコンパレータは、第1の態様において、前記電圧生成部は、一方が所定電圧の電源側に接続され、他方が接地側に接続され、前記所定電圧を互いの抵抗値に応じて分圧して前記第2トランジスタのベースに印加する一対の分圧抵抗を含み、前記過電圧検知部は、前記入力電圧が前記制限電圧を越えた際に、前記分圧抵抗の接地側を開放することで前記基準電圧を上昇させる。
【0010】
第3の態様のコンパレータは、第2の態様において、前記過電圧検知部は、前記入力電圧が前記制限電圧に達したか否かを検知する電圧検知部と、前記電圧検知部により前記入力電圧が前記制限電圧に達したことが検知されることで、前記分圧抵抗の接地側を接地状態から非接地状態に切換えるスイッチング部と、を備える。
【0011】
第4の態様のコンパレータは、第2の態様において、前記過電圧検知部は、前記入力電圧に応じて変化する電流値を検知し、該電流値が前記制限電圧に応じて設定した電流値に達したか否かを検知する電流検知部と、前記電流検知部により前記制限電圧に応じて設定した電流値に達したことが検知されることで、前記分圧抵抗の接地側を接地状態から非接地状態に切換えるスイッチング部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の態様では、差動部が第2トランジスタのベースに入力される基準電圧に対する第1トランジスタのベースに入力される入力電圧の差分に応じた電圧を出力する。また、電圧生成部は、第2トランジスタのベースに基準電圧を印加する。
【0013】
ここで、過電圧検知部は、入力電圧が予め設定した制限電圧を越えた際に、第2トランジスタのベースに印加される基準電圧を上昇させる。これにより、入力電圧に制限電圧を超える過電圧が生じても、第2トランジスタを保護できる。
【0014】
第2の態様では、一対の分圧抵抗において、一方が所定電圧の電源側に接続され、他方が接地側に接続されて、所定電圧を互いの抵抗値に応じて分圧して生成された基準電圧が第2トランジスタのベースに印加される。過電圧検知部は、入力電圧が予め設定した制限電圧を越えた際に、分圧抵抗の接地側を開放することで基準電圧を上昇させる。これにより、第2トランジスタを効果的に保護できる。
【0015】
第3の態様では、過電圧検知部の電圧検知部が、入力電圧が制限電圧に達したか否かを検知し、入力電圧が制限電圧に達したことが検知されると、スイッチング部により分圧抵抗の接地側が接地状態から非接地状態に切換えられる。これにより、第2トランジスタを一層効果的に保護できる。
【0016】
第4の態様では、過電圧検知部の電流検知部が、入力電圧に応じて変化する電流値が制限電圧に応じて設定した電流値に達したか否かを検知し、制限電圧に応じて設定した電流値に達したことが検知されると、スイッチング部により分圧抵抗の接地側が接地状態から非接地状態に切換えられる。これにより、第2トランジスタを一層効果的に保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係るコンパレータを示す回路図である。
図2】コンパレータに設けられる過電圧検知回路を示す回路図である。
図3】過電圧検知回路の入力信号に対する電圧変化の一例を示す線図である。
図4】過電圧検知回路の他の一例を示す回路図である。
図5図4の過電圧検知回路の入力信号に対する電圧変化の一例を示す線図である。
図6】一般的なコンパレータを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1には、本実施形態に係るコンパレータ10の概略構成が回路図にて示されている。
【0019】
図1に示すように、コンパレータ10は、差動部としての差動増幅部12、カレントミラー部14及びバッファ部16を備えている。コンパレータ10では、差動増幅部12及びカレントミラー部14にバイポーラのトランジスタが用いられている。
【0020】
車両などには、電気回路としてECU等が設けられており、本実施形態に係るコンパレータ10は、ECU等に設けられ、ECU等に入力される信号(直流電圧の信号)の電圧又は電圧変化を、例えば、Hi/Loの2値に変換して出力する。
【0021】
コンパレータ10には、電源端子18Aに車両のバッテリを電源とする電圧Vが供給され、電源端子18BにECU等から所定の直流電圧(以下、電圧VCCとする)が供給されると共に、接地(GND)端子18Cが接地されている。コンパレータ10は、電圧V、VCCが供給されて動作する。なお、電圧Vは、例えば、車両のバッテリ等から供給される12v~16v程度の電圧とされており、電圧VCCは、5vとされている。
【0022】
また、コンパレータ10には、入力端子20A、及び出力端子20Bが設けられており、コンパレータ10では、入力端子20Aに入力される入力信号(入力電圧VIN)に応じた出力信号(出力電圧VOUT)を出力端子20Bから出力する。この際、コンパレータ10への入力電圧VINは、Lo(Lowレベル)において約0vとなり、Hi(Hiレベル)において電圧Vと略同様の電圧(通常は、約12v~16v)となっている。また、コンパレータ10の出力電圧VOUTは、Lo(Lowレベル)において約0vとなり、Hi(Hiレベル)において電圧VCC(約5v)と略同様の電圧となっている。
【0023】
カレントミラー部14には、PNP型のトランジスタ22、24が対で用いられており、トランジスタ22、24は、各々のエミッタEが電源端子18Aに接続されている。また、トランジスタ22、24は、互いのベースBがトランジスタ22のコレクタCに接続されている。
【0024】
差動増幅部12は、入力側の第1トランジスタとしてのNPN型のトランジスタ26、基準側の第2トランジスタとしてのNPN型のトランジスタ28、電流源30及び電圧生成部としての分圧回路32を含んでいる。電流源30は、一側がトランジスタ26、28の各々のエミッタEに接続され、他側が接地(接地端子18Cに接続)されている。
【0025】
コンパレータ10では、トランジスタ26のコレクタCがトランジスタ22のコレクタCに接続され、トランジスタ28のコレクタCがトランジスタ24のコレクタC及びバッファ部16の一次側に接続されている。また、コンパレータ10では、トランジスタ26のベースBが所与の抵抗値R1の保護抵抗(抵抗器)34を介して入力端子20Aに接続されている。これにより、トランジスタ26には、入力電圧VINに応じた電圧がベースBに印加される。
【0026】
また、コンパレータ10では、トランジスタ28のベースBが分圧回路32に接続されており、コンパレータ10では、分圧回路32により生成された基準電圧VREFがトランジスタ28のベースBに印加される。分圧回路32には、分圧抵抗として所与の抵抗値R2の抵抗(抵抗器)36Aと所与の抵抗値R3の抵抗36Bが用いられている。抵抗36A、36Bは、各々の一側がトランジスタ28のベースBに接続されており、抵抗36Aは、他側が電源端子18Aに接続され、抵抗36Bは、他側が接地端子18Cに電気的に接続可能とされている。
【0027】
これにより、コンパレータ10では、基準電圧VREFに対する入力電圧VINに応じた電圧がバッファ部16に出力される。また、コンパレータ10では、抵抗36Bが電気的に接地状態とされることで、抵抗36Aの抵抗値R2と抵抗36Bの抵抗値R2とにより電圧Vが分圧された電圧が基準電圧VREFとしてトランジスタ28のベースBに印加される。さらに、コンパレータ10では、抵抗36Bの接地側が開放されて抵抗36Bが接地端子18Cと電気的に切離された非接地状態とされることで、略電圧VCCの電圧が基準電圧VREFとしてトランジスタ28のベースBに印加される。
【0028】
したがって、コンパレータ10では、トランジスタ26のベースBに入力される入力電圧VINに応じた電圧と、トランジスタ28のベースBに入力される基準電圧VREFの大小関係(高低関係)に応じた電圧がバッファ部16に入力される。
【0029】
本実施形態では、抵抗36Aの抵抗値R2と抵抗36Bの抵抗値R3とが同様(R2=R3)とされており、抵抗36Bが接地状態とされることで、トランジスタ28のベースBには、基準電圧VREFとしてV/2(VREF=V/2)の電圧が印加される。また、保護抵抗34は、通常の電圧範囲において入力電圧VINがHiとなることで、分圧回路32により分圧された基準電圧VREF(VREF=V/2)よりも僅かに高い電圧がトランジスタ26のベースBに入力されるように抵抗値R1が設定されている。
【0030】
バッファ部16には、電圧VCCによって動作するインバータ38が配置されている。インバータ38は、入力側(一次側)がトランジスタ28のコレクタCに接続され、出力側(二次側)が出力端子20Bに接続されている。インバータ38は、差動増幅部12から出力される電圧に対してHi/Loを反転させた出力電圧VOUTを出力する。
【0031】
一方、コンパレータ10には、過電圧検知部としての過電圧検知回路40が設けられている。過電圧検知回路40は、分圧回路32の抵抗36Bと接地端子18Cとの間に配置されていると共に、入力端子20A(入力端子20Aと保護抵抗34との間)に接続されている。過電圧検知回路40は、入力電圧VINを検知し、検知した入力電圧VINが予め設定している電圧(制限電圧V)に達すると、抵抗36Bと接地端子18Cとの間を、電気的な接続状態から非接続状態に切換えることで、基準電圧VREFを変更させる。
【0032】
図2には、過電圧検知回路40の概略構成が回路図にて示されている。
図2に示すように、過電圧検知回路40は、電圧検知部42及びスイッチング部44を備えている。電圧検知部42には、定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)46が用いられている。定電圧ダイオード46は、各々のカソードK側が入力端子20A側とされ、アノードA側が接地端子18C側とされて、ツェナー電圧が制限電圧Vに応じた電圧となるように複数が直列接続されている。また、電圧検知部42には、定電圧ダイオード46と接地端子18Cとの間に所与の抵抗値R4の抵抗48が直列接続されている。
【0033】
これにより、電圧検知部42では、入力電圧VINが上昇して制限電圧Vに達すると定電圧ダイオード46と抵抗48との間が所定の電圧に上昇する。なお、抵抗48は、二つの抵抗を直列接続し、2つの抵抗の抵抗値に応じて分圧された電圧が二つの抵抗の間に生じるようにしてもよい。
【0034】
スイッチング部44は、インバータ50、及びN型MOSトランジスタが用いられたスイッチング素子としてのトランジスタ(電界効果トランジスタ)52を備えており、スイッチング部44は、電圧VCCにより動作される。
【0035】
スイッチング部44では、インバータ50の入力側が定電圧ダイオード46のアノードAと抵抗48との間に接続されている。また、トランジスタ52は、ゲートGがインバータ50の出力側に接続されている。また、トランジスタ52は、ソースSが接地端子18Cに接続されると共に、ドレインDが抵抗36B(図1参照)の接地側に接続されており、トランジスタ52は、分圧回路32における抵抗36Bと接地端子18Cとの間に配置されている。
【0036】
これにより、過電圧検知回路40では、入力電圧VINが制限電圧Vに達していない状態では、インバータ50の出力がHiとなってトランジスタ52がオンされている。分圧回路32は、トランジスタ52がオンされていることで抵抗36Bが接地状態とされる。また、過電圧検知回路40では、入力電圧VINが制限電圧Vに達すると、インバータ50の出力がLoとなってトランジスタ52がオフする。分圧回路32は、トランジスタ52がオフすることで抵抗36Bが非接地状態とされる。
【0037】
このように構成されているコンパレータ10では、電圧V及び電圧Vより低い電圧VCCにより動作し、入力電圧VINが電圧Vの範囲で変化する際は、過電圧検知回路40のトランジスタ52がオンしている。
【0038】
すなわち、過電圧検知回路40では、予め制限電圧Vが設定されており、制限電圧Vに応じたツェナー電圧が得られるように複数の定電圧ダイオード46が直列接続されている。過電圧検知回路40では、定電圧ダイオード46と抵抗48との間の電圧が低電圧(例えば、0v)となることでインバータ50の出力がHi(約5v)となって、トランジスタ52がオンする。
【0039】
これにより、コンパレータ10では、分圧回路32の抵抗36Bが接地状態とされて、トランジスタ28のベースBに所定の基準電圧VREF(VREF=V/2)が印加される。
【0040】
また、コンパレータ10では、入力電圧VINが入力されることで、基準電圧VREFに対する入力電圧VINに応じた出力電圧VOUTを出力する。この際、コンパレータ10では、例えば、入力電圧VINがHi(略電圧V)とLo(0v)とに変化することで、Hi(約5v)とLo(0v)とに変化する出力電圧VOUTを出力する。しかも、コンパレータ10では、電圧Vが分圧されて基準電圧VREFが設定されているので、電圧Vが変動して入力電圧IN(Hiの電圧)が変動しても、基準電圧VREFに対する入力電圧VINに応じた適正な出力電圧VOUTを出力できる。
【0041】
ところで、サージ等が発生すると、入力電圧VINが電圧Vに比して高圧(高い電圧)となることがある。入力電圧VINが高圧となった場合、トランジスタ26のベースBには、保護抵抗34により降圧された電圧が印加されるが、それでも、入力電圧VINが通常の電圧範囲の場合に比して高い電圧が印加される。このため、トランジスタ26のエミッタEの電圧が上昇し、トランジスタ28のエミッタEの電圧も上昇する。
【0042】
これにより、ベースBに基準電圧VREFが印加されるトランジスタ28では、ベースB-エミッタE間の電位差(電圧VEB)が大きくなり、電圧VEBが耐圧に達してしまう可能性が生じる。
【0043】
図3には、入力電圧VINに対する過電圧検知回路40における電圧V1、及び基準電圧VREFの変化の概略が線図にて示されている。なお、図面では、縦軸が電圧(v)とされ、横軸が時間とされている。また、コンパレータ10では、入力電圧VINが40vにおいてトランジスタ26のベースBの電圧が17vとなるものとし、制限電圧Vを39vとしている。
【0044】
前記したようにコンパレータ10の過電圧検知回路40では、入力電圧VINが制限電圧Vに達していない状態では、定電圧ダイオード46と抵抗48との間の電圧(インバータ50に入力される電圧)がLo(約0v)となっている。これにより、図3に示すように、過電圧検知回路40では、インバータ50から出力される電圧V1がHi(V1=5v)となってトランジスタ52がオンしている。コンパレータ10では、過電圧検知回路40のトランジスタ52がオンしていることで、トランジスタ28のベースBに印加される基準電圧VREFが電圧V/2となっている。
【0045】
ここで、入力電圧VINが上昇して制限電圧Vに達すると、過電圧検知回路40では、定電圧ダイオード46と抵抗48との間の電圧(インバータ50に入力される電圧)がHiとなって、インバータ50から出力される電圧V1が低下(Lo、0v)するので、トランジスタ52がオフする。
【0046】
コンパレータ10では、過電圧検知回路40のトランジスタ52がオフすることで、抵抗36Bが非接地状態(抵抗36Bと接地端子18Cとの間が電気的に開放された状態)となり、基準電圧VREFが電圧V/2から電圧Vに上昇される(変更される)。これにより、コンパレータ10では、トランジスタ28のベースBの電圧が上昇されるので、電圧VEBの上昇が抑制されて、電圧VEBが耐圧を超えてしまうのが防止される。
【0047】
すなわち、過電圧検知回路40が設けられていない場合に、入力電圧VINが40vとなって、トランジスタ26のエミッタEの電圧が16.3vとなっていると、トランジスタ28のエミッタEの電圧も16.3vとなる。この際、トランジスタ28のベースBの基準電圧VREFが8vであると、トランジスタ28では、電圧VEBが8.3vに達してしまう。このため、トランジスタ28の電圧VEBの定格が5vであれば、トランジスタ28のベースB-エミッタE間には、定格を大きく超える電位差が生じる。
【0048】
これに対して、コンパレータ10では、入力電圧VINが制限電圧Vに達すると、過電圧検知回路40が、トランジスタ28のベースBに印加する基準電圧VREFが上昇するように変更する。この際、基準電圧VREFが電圧V(例えば16v)に変更されるので、トランジスタ28では、電圧VEBが0.3v程度となる(電圧Vが12vであっても電圧VEBは4.3v)。
【0049】
このように、過電圧検知回路40は、入力電圧VINが制限電圧Vに達すると、トランジスタ28のベースBに印加する基準電圧VREFが上昇するように変更させるので、入力電圧VINが上昇することにより、トランジスタ28の電圧VEBが上昇してしまうのを抑制できる。これにより、過電圧検知回路40は、コンパレータ10を入力電圧VINの過電圧に対して保護できる。
【0050】
また、過電圧検知回路40では、入力電圧VINが制限電圧Vに達すると、トランジスタ28のベースBに印加する基準電圧VREFを電圧V/2から電圧Vに上昇させるので、コンパレータ10を入力電圧VINの過電圧に対して効果的に保護できる。
【0051】
さらに、過電圧検知回路40では、制限電圧Vに応じたツェナー電圧が得られるように複数の定電圧ダイオード46を直列接続している。これにより、過電圧検知回路40では、入力電圧VINが制限電圧Vに達したことを的確に検知してトランジスタ52をオフできるので、コンパレータ10を入力電圧VINの過電圧に対して一層効果的に保護できる。しかも、過電圧検知回路40では、入力電圧VINが制限電圧Vより低下すると、トランジスタ52がオンするので、入力電圧VINに応じた出力電圧VOUTを出力でき、過電圧が解消されることで、コンパレータ10の出力電圧VOUTを自動復帰させることができる。
【0052】
一方、過電圧検知回路40では、入力電圧VINが制限電圧Vに達した際の電圧によってトランジスタ52をオフさせた。しかしながら、過電圧検知部は、入力電圧に応じて変化する電流値を検知し、検知した電流値が制限電圧に応じて設定した電流値(又は電流値に対応する電圧値)に達したか否かを検知して、スイッチング素子をオフするようにしてもよい。
【0053】
〔変形例〕
次に、本実施形態の変形例に係る過電圧検知部としての過電圧検知回路60を説明する。過電圧検知回路60は、コンパレータ10において過電圧検知回路40に代えて用いられており、過電圧検知回路60は電圧VCCにより動作される。
【0054】
図4には、変形例に係る過電圧検知回路60の概略構成が回路図にて示されている。また、図5には、変形例に係る入力電圧VINに対する電圧変化が線図にて示されている。なお、図5では、縦軸が電圧(v)とされ、横軸が時間とされている。また、コンパレータ10では、入力電圧VINが40vにおいてトランジスタ26のベースBの電圧が17vとなるものとし、制限電圧Vを39vとしている。
【0055】
電流検知部62には、カレントミラー回路64及びインバータ66が用いられている。カレントミラー回路64には、N型MOSトランジスタ(電界効果トランジスタ)が用いられたトランジスタ68、70、及び各々が所与の抵抗値R5、R6とされた抵抗72、74が配置されている。
【0056】
カレントミラー回路64では、抵抗72の一側が入力端子20Aに接続され、抵抗72の他側がトランジスタ68のドレインDに接続されている。また、カレントミラー回路64では、抵抗74の一端が電源端子18Bに接続され、抵抗74の他側がトランジスタ70のドレインDに接続されている。また、トランジスタ68、70は、各々のソースSが接地端子18Cに接続され、各々のゲートGがトランジスタ68のドレインDに接続されている。
【0057】
これにより、カレントミラー回路64では、入力電圧VINに応じたドレイン電流としての電流I1がトランジスタ68に生じ、トランジスタ68の電流I1に応じたドレイン電流としての電流I2がトランジスタ70に生じる。
【0058】
また、電流検知部62のインバータ66は、入力側がトランジスタ70のドレインD(抵抗74とドレインDとの間)に接続され、出力側がスイッチング部44のインバータ50の入力側に接続されている。
【0059】
電流検知部62では、入力電圧VINが上昇することで電流I1が増加し、電流I1の増加に応じて電流I2が増加する。また、電流検知部62では、電流I2が増加することでトランジスタ70のドレイン電圧としての電圧V2が低下する。これにより、電流検知部62では、入力電圧VINが制限電圧Vに達した際には、電流I2の電流値が制限電圧Vに応じた電流値となり、電圧V2が制限電圧Vに応じた電圧値(電圧VLOW)に低下する。
【0060】
ここで、電流検知部62のインバータ66は、電圧V2が制限電圧Vに応じて設定された電圧VLOWまで低下することで、Lo(0v)となっていた出力電圧がHi(電圧BCC)となる。スイッチング部44では、インバータ66の出力がHiとなることで、インバータ50の出力がLoとなってトランジスタ52がオフする。
【0061】
このように構成されている過電圧検知回路60では、入力電圧VINが電圧Vの範囲で変化する際は、トランジスタ52がオンしている。すなわち、図5に示すように、過電圧検知回路60では、制限電圧Vに対応する電流I2における電圧VLOW(電圧V2の電圧値)が設定されている。このため、過電圧検知回路60では、電圧V2が電圧VLOWより高い範囲では、インバータ66の出力がLoとなって、インバータ50の出力がHiとなることでトランジスタ52がオンする。これにより、コンパレータ10では、分圧回路32の抵抗36Bが接地状態とされて、トランジスタ28のベースBに所定の基準電圧VREF(VREF=V/2)が印加される。
【0062】
ここで、入力電圧VINが上昇して制限電圧Vに達すると、過電圧検知回路60では、入力電圧VINの上昇に応じて増加した電流I2により、インバータ66に入力される電圧V2が電圧VLOWに低下する。これにより、過電圧検知回路60では、インバータ66の出力がHiとなって、インバータ50から出力される電圧V1が低下(Lo、0v)するのでトランジスタ52がオフする。コンパレータ10では、トランジスタ52がオフすることで、トランジスタ28のベースBの電圧が上昇されるので、電圧VEBの上昇が抑制されて、電圧VEBが耐圧を超えてしまうのが防止される。
【0063】
このように、過電圧検知回路60は、入力電圧VINが制限電圧Vに達すると、トランジスタ28のベースBに印加する基準電圧VREFが上昇するように変更させる。これにより、過電圧検知回路60では、入力電圧VINが上昇することにより、トランジスタ28の電圧VEBが上昇してしまうのを抑制でき、コンパレータ10を入力電圧VINの過電圧に対して保護できる。
【0064】
また、過電圧検知回路60では、入力電圧VINに応じて変化する電流I2により入力電圧VINが制限電圧Vに達したことを的確に検知して、トランジスタ52をオフできるので、コンパレータ10を入力電圧VINの過電圧に対して一層効果的に保護できる。しかも、過電圧検知回路60では、入力電圧VINが制限電圧Vより低下すると、トランジスタ52がオンするので、入力電圧VINに応じた出力電圧VOUTを出力でき、過電圧が解消されることで、コンパレータ10の出力電圧VOUTを自動復帰させることができる。
【0065】
なお、以上説明した本実施形態では、過電圧検知回路40の電圧検知部42に定電圧ダイオード46を用いた。しかしながら、電圧検知部は、入力電圧が制限電圧に達したか否かを検知できる構成であればよく、定電圧ダイオードを用いた構成に限らない。
【0066】
また、変形例では、過電圧検知回路60の電流検知部62にカレントミラー回路64及びインバータ66を用いた。しかしながら、電流検知部は、入力電圧に応じて変化する電流値を検知し、制限電圧に応じた設定した電流値に達したか否かを検知できる構成であればよく、カレントミラー回路及びインバータを用いた構成に限らない。
【0067】
さらに、本実施形態及び変形例には、スイッチング部44にトランジスタ52を設けた。しかしながら、スイッチング素子は、電界効果トランジスタに限らず、バイポーラトランジスタであってもよく、分圧抵抗と接地端子との間を電気的な開閉状態にできる構成であればよい。
【0068】
また、本実施形態及び変形例では、トランジスタ26、28にバイポーラトランジスタを用いた。しかしながら、第1及び第2トランジスタには、MOSFETなどの電界効果トランジスタが用いられてもよく、この場合、トランジスタのベースBには、電界効果トランジスタのゲートGが対応されればよい。
【0069】
また、本発明に係る技術は、コンパレータに限らず、基準電圧に対する入力電圧の大小に応じた信号を出力する差動部(差動増幅部)を備えた差動増幅回路等に適用できる。
【符号の説明】
【0070】
10・・・コンパレータ、12・・・差動増幅部(差動部)、26・・・トランジスタ(第1トランジスタ)、28・・・トランジスタ(第2トランジスタ)、32・・・分圧回路(電圧生成部)、36A、36B・・・抵抗(分圧抵抗)、40、60・・・過電圧検知回路(過電圧検知部)、42・・・電圧検知部、44・・・スイッチング部、62・・・電流検知部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6