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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152902
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】成形装置及び成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/44 20060101AFI20221004BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B29C45/44
B29C33/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055843
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】直井 秀晃
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AG07
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK64
4F202CK82
(57)【要約】
【課題】従来の成形装置では実現困難であった複雑な形状のアンダーカット部を有する成形品であっても、アンダーカット部から金型を容易に離型して成形品を取り出すことができる成形装置及び成形方法を提供する。
【解決手段】成形装置は、成形品の内面形状を形成する金型と、成形品から金型を離型する離型機構と、を備える。金型は、当該金型の型開き方向から見た平面視において開口を形成するように環状に配置される複数の分割コアを有し、離型機構は、開口が縮小するように分割コアを同時に移動させて、金型をアンダーカット部から離型し型開き方向に移動可能とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面にアンダーカット部を有する成形品を製造するための成形装置であって、
前記成形品の内面形状を形成する金型と、
前記成形品から前記金型を離型する離型機構と、を備え、
前記金型は、当該金型の型開き方向から見た平面視において開口を形成するように環状に配置される複数の分割コアを有し、
前記離型機構は、前記開口が縮小するように前記分割コアを同時に移動させて、前記金型を前記アンダーカット部から離型し前記型開き方向に移動可能とする、
成形装置。
【請求項2】
前記離型機構は、それぞれの前記分割コアについて、当該分割コアに隣接する2つの前記分割コアのうちの一方側に向かって並進移動させる、
請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記離型機構は、前記分割コアに動力を付与し、前記分割コアの相互の運動伝達により前記分割コアを同時に移動させる、
請求項1又は2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記分割コアの個数はn個であり、
前記開口は、前記平面視において正n角形を呈し、
前記離型機構は、それぞれの前記分割コアを、前記正n角形の辺のうちの対応する辺の法線方向に対して所定の角度θをなす方向に移動させるガイド部を有する、
請求項3に記載の成形装置。
【請求項5】
前記所定の角度θは、θ≧180°/Nをみたす、
請求項4に記載の成形装置。
【請求項6】
前記ガイド部は、前記分割コアに挿通されるガイドピンを有し、
前記ガイドピンは、前記平面視の平面に対して傾斜して配置されている、
請求項4又は5に記載の成形装置。
【請求項7】
前記離型機構は、
前記金型を前記型開き方向に移動させる駆動シャフトと、
前記駆動シャフトの前記型開き方向の運動を、当該成形装置の軸周りの周方向の運動に変換し、前記分割コアに伝達する動力伝達部と、をさらに有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の成形装置。
【請求項8】
内面にアンダーカット部を有する成形品を製造するための成形方法であって、
内側に開口が形成されるように複数の分割コアが環状に配置された金型を用いて前記成形品を形成する第1工程と、
前記開口が縮小するように前記分割コアを同時に移動させて、前記金型を前記アンダーカット部から離型する第2工程と、
を含む成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を用いて成形品を製造する成形装置及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型を用いて成形品を製造する成形装置が知られている。金型は、主として、成形品の外面(外観面)を形成するための凹部を有する第1金型(キャビティ型)と、成形品の内面を形成するための凸部を有する第2金型(コア型)と、を有する。金型を用いた成形装置の一例として、射出成形用の成形装置では、第1金型と第2金型とを嵌め併せた型閉じ状態において形成される空間に、溶融樹脂を注入し、冷却・固化させる。そして、第1金型と第2金型のうちの可動側(以下、「可動型」と称する)を型開き方向に移動させて金型を型開き状態とすることにより、成形品が取り出される。
【0003】
成形品がアンダーカット部を有しており、金型から成形品を取り出す際に、そのままの状態では可動型を型開き方向に移動させることができない場合、可動型をアンダーカット部から離型させる処理(以下、「アンダーカット処理」と称する)が必要となる。内面にアンダーカット部を有する成形品を製造する場合、例えば、メイン型とスライド型(例えば、傾斜コア)により可動型を構成し、メイン型の型開き動作に連動してスライド型を内側にスライドさせることで、アンダーカット部からスライド型を離型させる手法が採られる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57-203512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の成形装置においては、成形品のアンダーカット部からスライド型である第1ブロック及び第2ブロックを段階的に離型するために、異なるアンダーカット処理構造が設けられており、成形装置の構造が複雑である。特に、アンダーカット部が、成形品の内面において、全周にわたって連続的又は離散的に設けられている場合、特許文献1等に開示の従来のアンダーカット処理構造を適用することはスペース上の問題がある。
【0006】
本発明の目的は、従来の成形装置では実現困難であった複雑な形状のアンダーカット部を有する成形品であっても、アンダーカット部から金型を容易に離型して成形品を取り出すことができる成形装置及び成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る成形装置は、
内面にアンダーカット部を有する成形品を製造するための成形装置であって、
前記成形品の内面形状を形成する金型と、
前記成形品から前記金型を離型する離型機構と、を備え、
前記金型は、当該金型の型開き方向から見た平面視において開口を形成するように環状に配置される複数の分割コアを有し、
前記離型機構は、前記開口が縮小するように前記分割コアを同時に移動させて、前記金型を前記アンダーカット部から離型し前記型開き方向に移動可能とする。
【0008】
本発明に係る成形方法は、
内面にアンダーカット部を有する成形品を製造するための成形方法であって、
内側に開口が形成されるように複数の分割コアが環状に配置された金型を用いて前記成形品を形成する第1工程と、
前記開口が縮小するように前記分割コアを同時に移動させて、前記金型を前記アンダーカット部から離型する第2工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の成形装置では実現困難であった複雑な形状のアンダーカット部を有する成形品であっても、アンダーカット部から金型を容易に離型して成形品を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る成形装置を示す外観斜視図である。
図2図2は、成形装置の分解斜視図である。
図3図3A図3Cは、成形装置により製造される成形品を示す図である。
図4図4A図4Bは、コアユニットを示す図である。
図5図5A図5Bは、アンダーカット処理前後のコアユニットを示す図である。
図6図6A図6Bは、アンダーカット処理前後の分割コアの金型部を示す図である。
図7図7A図7Bは、分割コアの移動方向を説明するための図である。
図8図8A図8Bは、コアユニットの他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る成形装置1を示す図である。図2は、成形装置1の分解斜視図である。図3A図3Cは、成形装置1により製造される成型品100を示す図であり、図3Aは斜視図、図3Bは平面図、図3Cは断面図である。図3Bは、成形品100の内部構造(内面形状131~136及び開口111以外は省略)を透過して示しており、図3Cは、図3BにおけるA-A矢視断面を示している。
【0012】
以下において、成形装置1のコアユニット10側(成形品100の天板120側)を「上側」、成形装置1の駆動シャフト50側(成形品100の台座110側)を「下側」として説明する。成形装置1の型開き方向Dは、上下方向に一致する。
【0013】
図3A図3Cに示すように、成形品100は、台座110、天板120、及び内面形状131~136を有する部品である。
台座110は、中央に円形の開口111を有する。図示を省略するが、開口111の周縁部は、下方に向かって突出している。
天板120は、中央に円形の開口121を有する。
【0014】
内面形状131~136は、捻じれながら湾曲する凸部有し、台座110と天板120の間に、周方向に等間隔で配置されている。内面形状131~136の内側端部131a~136aは、台座110の開口111の周縁に位置し、台座110に対して鋭角に形成されている。そのため、内側端部131a~136aは、可動型であるコアユニット10を下側に移動させる際、型開き方向Dにおいてコアユニット10の下側に入り込み、いわゆるアンダーカット部となる(以下、「アンダーカット部131a~136a」と称する)。
このように、成形品100は、内面にアンダーカット部131a~136aを有している。アンダーカット部131a~136aは、台座110の開口111の周縁部に、周方向に離散的に設けられているので、従来の成形装置(例えば、特許文献1参照)を用いて形成するのは困難である。
【0015】
図1図2に示すように、成形装置1は、コアユニット10、ガイド部20、ガイドホルダー30、回転ホルダー40、及び駆動シャフト50等を備える。本実施の形態では、ガイド部20、回転ホルダー40及び駆動シャフト50により、成形品100を取り出す際に、成形品100からコアユニット10を離型して、型開き方向Dに移動可能とする離型機構RMが構成されている。具体的には、コアユニット10の開口17が縮小するように分割コア11~16を移動させることにより、コアユニット10が成形品100のアンダーカット部131a~136aから離型されるようになっている。
【0016】
コアユニット10は、成形品100の表面形状のうち、内面形状131~136のアンダーカット部131a~136aを形成する金型である。なお、図示を省略しているが、成形装置1は、成形品100のアンダーカット部131a~136a以外の形状を形成する金型を、コアユニット10とは別に備えている。
コアユニット10は、成形品100を取り出す際に、型開き方向Dに移動される可動型である。コアユニット10を下側に移動させることにより金型が型開き状態となり、成形品100を取出し可能となる。
【0017】
コアユニット10は、図4A図4Bに示すように、同一形状の6つの分割コア11~16で構成されている。図4Aは、分割コア11~16を組み付けた状態で示し、図4Bは、分割コア11~16を型開き方向Dに直交する径方向に分解した状態で示している。
【0018】
分割コア11~16は、金型部11a~16a及びガイドブロック部11b~16bを有する。金型部11a~16aは、成形品100の内面形状131~136を形成する部分である。ガイドブロック部11b~16bは、ガイド部20に支持される部分である。
【0019】
金型部11a~16aは、それぞれ、第1側面部Sa1、第2側面部Sa2、及び第3側面部Sa3を有する。
第1側面部Sa1は、型開き方向Dに延在する部分であり、平坦に形成されている。第2側面部Sa2は、隣接する金型部11a~16aの第1側面部Sa2に当接する部分であり、第1側面部Sa1と同様に、平坦に形成されている。つまり、隣接する分割コア同士は面接触しており、互いに拘束し合っている。
第3側面部Sa3は、成形品100の内面形状131~136を形成する部分である。成形品100からコアユニット10を離型するアンダーカット処理前(例えば、成型時)の状態において、隣接する金型部11a~16aの第3側面部Sa3同士は、隙間なく滑らかに接続される。第3側面部Sa3のうち第2側面部Sa2に連設されている凹部により、成形品100のアンダーカット部131a~136aが形成される。
【0020】
ガイドブロック部11b~16bは、それぞれ、型開き方向Dに延在する第1ブロック面Sb1及び第2ブロック面Sb2を有する。ガイドブロック部11b~16bには、第2ブロック面Sb2から所定方向に向かって貫通するピン挿通孔11c~16cが形成されている。ピン挿通孔11c~16cの延在方向は、ガイドピン21~26の延在方向と一致する。
【0021】
分割コア11~16は、型開き方向Dから見た平面視(以下、単に「平面視」と称する)において開口17を形成するように環状に配置されている。具体的には、金型部11a~16aの第1側面部Sa1における第2側面部Sa2と当接していない非当接部分により、開口17が形成されている。本実施の形態では、コアユニット10が6つの分割コア11~16で構成されているので、開口17は、正六角形を呈する。
【0022】
なお、開口17は、厳密に正六角形を呈していなくてもよい。例えば、第1側面部Sa1は、少なくとも、アンダーカット処理の前後の状態において第2側面部Sa2と当接する当接部分が平坦に形成されていればよく、非当接部分は部分的に曲面形状に形成されていてもよい。また、第1側面部Sa1及び第2側面部Sa2の当接部分は、全体として平坦に形成されていればよく、局所的に凹みや切欠きが形成されていてもよい。このような場合も、第1側面部Sa1と第2側面部Sa2とが平面的に当接している部分を含む平面で規定される空間の平面視形状(ここでは六角形)を、開口17の形状として扱えばよい。
【0023】
ガイド部20は、ガイドピン21~26及びコアホルダー27を有する。ガイド部20は、分割コア11~16を、所定の移動方向に移動させる。分割コア11~16の移動方向は、例えば、開口17の正六角形の辺のうちの対応する辺の法線方向に対する角度θを用いて規定される。
【0024】
コアホルダー27は、コアユニット10を収容するコア収容部271を有する。コア収容部271は、平面視において、コアユニット10のガイドブロック部11b~16bの平面視形状に沿う星形六角形状を呈する。コア収容部271の内面は、アンダーカット処理前の状態(図5A参照)において、分割コア11~16の第1ブロック面Sb1及び第2ブロック面Sb2と当接する。
【0025】
ガイドピン21~26は、コアホルダー27に固定され、それぞれ、分割コア11~16のピン挿通孔11c~16cに挿通されて、分割コア11~16を所定方向に移動可能に支持する。ガイドピン21~26の延在方向は、平面視においては、コアホルダー27のコア収容部271のガイド面271a(図5A等参照)と平行である。また、本実施の形態では、ガイドピン21~26は、型開き方向Dに直交する平面に対して傾斜して配置されており、分割コア11~16を平面視において内側に向かって移動させると同時に、下側にも移動させるようになっている。これにより、アンダーカット処理時に、分割コア11~16と成形品100の膨出部122とが干渉するのを防止することができる。
【0026】
ガイドホルダー30は、コアホルダー27の下端に固定され、コアホルダー27を支持する。ガイドホルダー30の内側に、回転ホルダー40及び駆動シャフト50の上部が収容される。また、ガイドホルダー30は、下部に設けられたフランジ部によって、成形品100の台座110の下面を形成する金型(図示略)を保持する。
【0027】
回転ホルダー40は、コアユニット10の下方に配置され、駆動シャフト50の型開き方向Dにおける運動を、成形装置1の軸周りの周方向の回転運動に変換して分割コア11~16に伝達する。
【0028】
駆動シャフト50は、コア保持部51及びシャフト本体52を有する。駆動シャフト50は、駆動源(図示略)に接続され、型開き方向Dに移動可能に構成されている。
コア保持部51は、コアユニット10の開口17に挿入され、コアユニット10の組み付け状態を保持する。また、コア保持部51の上面は、成形品100の天板120を形成する金型として機能する。
シャフト本体52には、例えば、回転ホルダー40に係合する係合ピンが設けられている。係合ピンを介して、シャフト本体52の直線運動が回転運動に変換され、回転ホルダー40に伝達される。なお、直線運動を回転運動に変換する機構には、公知の技術を適用することができる。駆動シャフト50が全体的に型開き方向Dに移動することにより、成形装置1は、型閉じ状態から型開き状態に移行する。
【0029】
アンダーカット処理前の状態では、それぞれの分割コア11~16にガイドピン21~26が挿通されるとともに、コアユニット10の開口17に駆動シャフト50のコア保持部が挿入される。これにより、分割コア11~16の第1ブロック面Sb1及び第2ブロック面Sb2がコアホルダー27のコア収容部271の内面と当接し、コアユニット10の組付け状態及び姿勢が保持される(図5A参照)。
【0030】
アンダーカット処理前の状態でコアユニット10を含む金型のキャビティに溶融樹脂が注入され、成形品100が形成される(第1工程)。分割コア11~16の金型部11a~16aにより、成形品100の内面形状131~136が形成される。特に、金型部11a~16aの第3側面部Sa3のうち、第2側面部Sa2に連接される部分により、アンダーカット部131a~136aが形成される(図6A参照)。図6Aでは、金型部11a~16aにおけるアンダーカット部131a~136aを形成する部分を、網掛けで示している。
【0031】
そして、開口17が縮小するように分割コア11~16を同時に移動させることにより、コアユニット10がアンダーカット部131a~136aから離型される(第2工程)。具体的には、アンダーカット処理時には、駆動シャフト50が型開き方向Dに移動する。駆動シャフト50のコア保持部51がコアユニット10から抜けると、分割コア11~16が内側に移動可能な状態となる。駆動シャフト50がさらに型開き方向Dに移動すると、係合ピンを介して動力が回転ホルダー40に伝達され、回転ホルダー40を周方向Rに回転させる。
【0032】
分割コア11~16は、回転ホルダー40の回転運動を受けて、ガイドピン21~26に沿って移動する(図5B参照)。つまり、分割コア11~16は、それぞれ、当該分割コアに隣接する2つの分割コアのうちの一方(ここでは、反時計回り方向に隣接している分割コア)に向かって並進移動する。
このとき、分割コア11~16の第1ブロック面Sb1は、コアホルダー27のガイド面271aに沿って摺動し、第2ブロック面Sb2は、コア収容部271の内面から離間する(図5B参照)。分割コア11~16は、互いに当接しているので、それぞれの分割コア11~16の姿勢が保持されたまま所定方向に並進移動する。つまり、分割コア11~16は、駆動シャフト50及び回転ホルダー40によって付与された動力を受けて、相互の運動伝達により同時に移動する。その結果、開口17が内側に窄まり、分割コア11~16の第3側面部Sa3は、アンダーカット部131a~136aから離型される(図6B参照)。これにより、コアユニット10を型開き方向Dに移動可能となる。成形装置1の可動側を一体的に型開き方向Dに移動させることで、成形品100が取り出される。
【0033】
図7A図7Bは、分割コア11~16の移動方向M1~M6を説明するための図である。図7A図7Bは、平面視において、分割コア11~16の第1側面部Sa1及び第2側面部Sa2が直線状を呈し、成形品100の内面が円形状を呈する場合について、模式的に示している。
【0034】
図7A図7Bに示すように、分割コア11~16は、ガイド部20によって規制されている方向、すなわち、それぞれの第1側面部Sa1の法線方向N1~N6に対して角度θをなす移動方向M1~M6に沿って移動する。
【0035】
それぞれの分割コア11~16の変位量をLとした場合、分割コア11は、法線方向N1に対してL・cosθ、第1側面部Sa1に沿う方向にL・sinθだけ変位することになる。分割コア11の法線方向N1における変位は分割コア12に対して影響する一方、第1側面部Sa1に沿う方向における変位は、分割コア12に対して影響しない。したがって、法線方向N1における分割コア12の変位が、L・sinθ以上であれば、分割コア11、12は互いに干渉しないことになる。
【0036】
ここで、開口17の平面視形状である六角形の外角をAとすると、分割コア12の移動方向M2と分割コア11の法線方向N1とのなす角は、(A-θ)で表される。よって、法線方向N1における分割コア12の変位は、L・cos(A-θ)で表される。
【0037】
これより、分割コア11、12が互いに干渉しないための条件は、L・cos(A-θ)≧L・sinθとなる。0°<θ,(A-θ)<90°であり、正n角形(nは分割コアの個数)の外角Aは360°/nで与えられるので、前記条件は、θ≧180°/nとなる。したがって、正六角形の場合は、θ≧30°(=180°/6)であれば、分割コア11、12は、互いに干渉せずに移動することができる。この条件は、隣接する分割コア11~16のすべての組み合わせについていえる。
【0038】
特に、θ=30°のとき、分割コア11、12の法線方向N1における変位量は同じになるので、分割コア11の第1側面部Sa1は分割コア12の第2側面部Sa2に沿って摺動することになる。一方、θ>30°の場合、分割コア11、12は、互いに干渉せずに移動可能であるが、分割コア11の第1側面部Sa1と分割コア12の第2側面部Sa2との間の隙間が形成されることになる。
なお、角度θが大きすぎると、分割コア11~16の第3側面部Sa3と成形品100の内面形状131~136とが干渉しやすくなるが、成形品100の内面形状131~136によっても干渉を回避することができるので、角度θの上限は、一義的には定まらない。
【0039】
このように、本実施の形態に係る成形装置1は、内面にアンダーカット部131a~136aを有する成形品100を製造するための成形装置であって、成形品100の内面形状131~136を形成するコアユニット10(金型)と、成形品100からコアユニット10を離型する離型機構RMと、を備える。コアユニット10は、型開き方向Dから見た平面視において開口17を形成するように環状に配置される複数の分割コア11~16を有する。離型機構RMは、開口17が縮小するように分割コア11~16を同時に移動させて、コアユニット10をアンダーカット部131a~136aから離型し型開き方向Dに移動可能とする。
【0040】
また、実施の形態に係る成形方法は、内面にアンダーカット部131a~136aを有する成形品100を製造するための成形方法であって、内側に開口17が形成されるように複数の分割コア11~16が環状に配置されたコアユニット10(金型)を用いて成形品100を形成する第1工程と、開口17が縮小するように分割コア11~16を同時に移動させて、コアユニット10をアンダーカット部131a~136aから離型する第2工程と、を含む。
【0041】
実施の形態に係る成形装置1及び成形方法によれば、分割コア11~16の移動によりコアユニット10の開口が縮小するので、従来の成形装置では実現困難であった複雑な形状のアンダーカット部131a~136aを有する成形品100であっても、アンダーカット部131a~136aからコアユニット10を容易に離型して成形品100を取り出すことができる。したがって、成形品100の生産性が高まり、成形品100を大量生産する場合に好適である。
【0042】
また、成形装置1において、離型機構RMは、それぞれの分割コア11~16について、当該分割コア11~16に隣接する2つの分割コアのうちの一方側に向かって並進移動させる。
これにより、分割コア11~16は、隣接する分割コア同士が干渉しないように動くととなり、その結果、開口17を内側に窄ませつつ縮小させることができる。
【0043】
また、成形装置1において、離型機構RMは、分割コア11~16に動力を付与し、分割コア11~16の相互の運動伝達により分割コア11~16を同時に移動させる。
これにより、分割コア11~16を同時に移動させるための離型機構RMの構造を簡易化することができる。
【0044】
また、成形装置1において、分割コア11~16の個数は6個(n個)であり、開口17は、平面視において正六角形(正n角形)を呈し、離型機構RMは、それぞれの分割コア11~16を、正六角形の辺のうちの対応する辺の法線方向N1~N6に対して所定の角度θをなす方向に移動させるガイド部20を有する。
これにより、分割コア11~16を、姿勢が保持されたまま確実に所望の移動方向M1~M6に移動させることができ、アンダーカット部131a~136aからコアユニット10を容易に離型することができる。
【0045】
また、成形装置1において、所定の角度θは、θ≧30°(θ≧180°/N)をみたす。これにより、分割コア11~16同士の干渉を防止でき、確実にアンダーカット処理を行うことができる。
【0046】
また、成形装置1において、ガイド部20は、分割コア11~16に挿通されるガイドピン21~26を有し、ガイドピン21~26は、型開き方向Dに直交する平面に対して傾斜して配置されている。
これにより、成形品100のように中央に膨出部122を有し、分割コア11~16を平面内で移動させることができない場合にも対応することができる。
【0047】
また、成形装置1において、離型機構RMは、コアユニット10(金型)を型開き方向Dに移動させる駆動シャフト50と、駆動シャフト50の型開き方向Dの運動を、当該成形装置1の軸周りの周方向Rの運動に変換し、分割コア11~16に伝達する回転ホルダー40(動力伝達部)と、をさらに有する。
これにより、成形品100からコアユニット10を離型するための型開き方向Dへの移動動作を利用して、アンダーカット部131a~136aからコアユニット10が解放されるので、装置構成を簡易化することができる。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0049】
例えば、離型機構RMは、実施の形態で示した構成に限定されず、分割コア11~16を同時に移動して開口17を縮小させる構成を有していればよい。また、離型機構RMは、分割コア11~16の相互の運動伝達により分割コア11~16を同時に移動させる構成ではなく、分割コア11~16をそれぞれ独立して移動させる構成を有していてもよい。
【0050】
また、分割コア11~16は、第3側面部Sa3の形状など、部分的に異なる構成を有していてもよい。第3側面部Sa3の形状は、成形品の内面形状に即して設計される。例えば、本発明は、周方向に連続的にアンダーカット部が設けられる成形品にも対応することができる。
【0051】
また、コアユニット10を構成する分割コアの個数は、6個に限定されず、4個以上であれば、互いに干渉することなく同時に移動させることができる。特に、分割コアの個数を5~7個とした場合、互いに干渉することなくスムーズに分割コアを同時に移動させ、成形品Pから離型させることができる。図8Aに示すように、分割コアCの個数を5個とした場合、分割コアCの移動方向Mを規定する角度θはθ=36°(=180°/5)であることが好ましい。また、図8Bに示すように、分割コアCの個数を7個とした場合、移動方向Mを規定する角度θは、θ=25.71°(=180°/7)であることが好ましい。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 成形装置
10 コアユニット(金型)
11~16 分割コア
17 開口
20 ガイド部
30 ガイドホルダー
40 回転ホルダー(動力伝達部)
50 駆動シャフト
100 成形品
131~136 内面形状
131a~136a アンダーカット部
D 型開き方向
RM 離型機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8