(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152906
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理システム、情報処理装置、及び作業車両
(51)【国際特許分類】
B65F 3/00 20060101AFI20221004BHJP
B65F 3/28 20060101ALI20221004BHJP
B65F 3/20 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B65F3/00 A
B65F3/00 B
B65F3/00 L
B65F3/28
B65F3/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055848
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】池上 慎也
(72)【発明者】
【氏名】松田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】清上 武伸
(72)【発明者】
【氏名】永幡 史暁
【テーマコード(参考)】
3E024
【Fターム(参考)】
3E024AA01
3E024AA07
3E024BA01
3E024CA05
3E024CA16
3E024DB03
3E024DC03
3E024EA04
3E024GA02
3E024HA02
3E024HA03
3E024HA10
3E024HB01
3E024HB07
3E024HB10
3E024HC02
3E024HC03
3E024HD01
3E024HD03
3E024HD04
3E024HD06
3E024HD10
3E024HE02
3E024HE03
(57)【要約】
【課題】作業装置の動作辞書を更新できる情報処理方法、情報処理システム、情報処理装置、及び作業車両の提供。
【解決手段】収容部への積載物の積込作業を行う作業部と、動作辞書を記憶する記憶部と、動作辞書を参照して作業部の動作を制御する制御部とを備える作業車両から、積込作業に関する作業データを取得し、取得した作業データに基づき、動作辞書を更新するための更新データを生成し、作業車両の動作辞書を更新すべく、生成した更新データを作業車両へ出力する処理をコンピュータにより実行する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部と、該収容部に対する積載物の積込作業又は降ろし作業を行う作業部と、該作業部の動作を制御する際に参照される動作辞書を記憶する記憶部と、前記動作辞書を参照して前記作業部の動作を制御する制御部とを備える作業車両から、前記積込作業又は前記降ろし作業に関する作業データを取得し、
取得した作業データに基づき、前記動作辞書を更新するための更新データを生成し、
前記作業車両が備える動作辞書を更新すべく、生成した更新データを前記作業車両向けに出力する
処理をコンピュータにより実行する情報処理方法。
【請求項2】
前記作業車両は、使用者に貸与される車両であり、
前記使用者に貸与される車両が一の作業車両から他の作業車両に切り替わる場合、前記他の作業車両用に生成された更新データを前記他の作業車両向けに出力する
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記作業車両は、使用者に貸与される車両であり、
一の作業車両の貸与先が一の使用者から他の使用者に切り替わる場合、前記他の使用者向けに生成された更新データを前記一の作業車両向けに出力する
請求項1又は請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
貸与先の使用者の識別情報を取得し、
貸与した作業車両の識別情報と、貸与先の使用者の識別情報とを関連付けて記憶する
請求項2又は請求項3に記載の情報処理方法。
【請求項5】
取得した作業データに基づき、複数種の作業車両から、使用者に貸与すべき作業車両を特定し、
特定した作業車両の情報を出力する
請求項1から請求項4の何れか1つに記載の情報処理方法。
【請求項6】
取得した作業データに基づき、作業車両の増減又は積載量の変更を提案する提案情報を出力する
請求項1から請求項5の何れか1つに記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記動作辞書は、前記作業部に対する制御設定値を含む
請求項1から請求項6の何れか1つに記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記コンピュータは、前記積込作業又は前記降ろし作業に関する作業データを入力した場合、前記作業部に対する制御設定値を出力するよう学習された更新用の学習モデルを備え、
前記更新用の学習モデルより出力される制御設定値を更新データとして前記作業車両向けに出力する
請求項7に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記動作辞書は、前記作業データを入力した場合、前記作業部に対する制御設定値を出力するよう学習された学習モデルにより構成される
請求項1から請求項8の何れか1つに記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記コンピュータは、前記積込作業又は前記降ろし作業に関する作業データを入力した場合、前記作業部に対する制御設定値を出力するよう学習された更新用の学習モデルを備え、
前記作業車両から作業データと、該作業データを入力した場合に前記更新用の学習モデルが出力すべき正解データとを取得し、
取得した作業データと正解データとを含むデータセットを訓練データに用いて、前記更新用の学習モデルを再学習し、
再学習により得られる学習モデルを更新データとして前記作業車両向けに出力する
請求項9に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記作業部は、排出シリンダと、該排出シリンダの伸縮動作により車両の前後方向に移動する排出板とを備えた排出装置を含み、
前記動作辞書は、前記排出板の移動規制設定圧、及び前記排出シリンダの伸縮動作を制御する制御弁の開放時間を規定してあり、
前記移動規制設定圧及び前記開放時間の少なくとも1つを更新するために、前記更新データを生成する
請求項1から請求項10の何れか1つに記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記作業部は、摺動シリンダと、該摺動シリンダの伸縮動作により車両の上下方向に摺動する摺動板と、揺動シリンダと、該揺動シリンダの伸縮動作により車両の前後方向に揺動する圧縮板とを備えた積込装置を含み、
前記動作辞書は、前記摺動板及び前記圧縮板の制御パターンを規定してあり、
前記制御パターンを更新するために、前記更新データを生成する
請求項1から請求項11の何れか1つに記載の情報処理方法。
【請求項13】
前記作業部は、摺動シリンダと、該摺動シリンダの伸縮動作により車両の上下方向に摺動する摺動板と、揺動シリンダと、該揺動シリンダの伸縮動作により車両の前後方向に揺動する圧縮板とを備えた積込装置を含み、
前記動作辞書は、所定の停止位置から前記摺動板を下降させる際に前記圧縮板を反転させるタイミングを規定してあり、
前記タイミングを更新するために、前記更新データを生成する
請求項1から請求項12の何れか1つに記載の情報処理方法。
【請求項14】
前記作業車両は、前記作業部の内外を撮像する撮像部と、該撮像部より得られる画像データに基づき前記作業部の内外の状況を認識する際に参照される認識辞書とを更に備え、
前記コンピュータは、前記撮像部より得られる画像データを入力した場合、前記作業部の内外の状況に関する情報を出力するよう学習された更新用の学習モデルを更に備え、
前記作業車両から前記撮像部より得られる画像データと、該画像データを入力した場合に前記更新用の学習モデルが出力すべき正解データとを取得し、
取得した作業データと正解データとを含むデータセットを訓練データに用いて、前記更新用の学習モデルを再学習し、
再学習により得られる学習モデルを前記認識辞書の更新データとして前記作業車両向けに出力する
請求項1から請求項13の何れか1つに記載の情報処理方法。
【請求項15】
前記作業データは、作業場所、積載物としての塵芥の種別、前記作業部の内外を撮像する撮像部からの画像、前記収容部に塵芥を積み込む積込装置の油圧値、前記収容部に塵芥を積み込む際の排出装置の油圧値、前記排出装置が備える排出板の位置、積み込んだ塵芥の重量、及び積込作業時における塵芥の圧縮音の少なくとも1つを含む
請求項1から請求項14の何れか1つに記載の情報処理方法。
【請求項16】
前記作業車両は、積載物の種別に応じて選択される動作辞書を備えており、積載物の種別に対する選択を受付けた場合、選択された種別に対応する動作辞書を参照して前記作業部の動作を制御する
請求項1から請求項15の何れか1つに記載の情報処理方法。
【請求項17】
積載物を運搬する作業車両と、該作業車両と通信可能に接続される情報処理装置とを含む情報処理システムであって、
前記作業車両は、
積載物を収容する収容部と、
該収容部に対する積載物の積込作業又は降ろし作業を行う作業部と、
該作業部の動作を制御する際に参照される動作辞書を記憶する記憶部と、
前記動作辞書を参照して前記作業部の動作を制御する制御部と
を備え、
前記情報処理装置は、
前記作業車両から前記積込作業又は前記降ろし作業に関する作業データを取得する取得部と、
取得した作業データに基づき、前記動作辞書を更新するための更新データを生成する生成部と、
前記作業車両が備える動作辞書を更新すべく、生成した更新データを前記作業車両向けに出力する出力部と
を備え、
前記作業車両は、
前記情報処理装置から受信した更新データに基づき、前記記憶部に記憶された動作辞書を更新する更新部
を備える情報処理システム。
【請求項18】
前記作業車両は、
前記作業車両の使用者により携帯される端末装置と通信する通信部を備え、
該通信部を通じて、積載物の種別を受付け、
前記制御部は、積載物の種別毎に用意された動作辞書を参照して、前記作業部の動作を制御する
請求項17に記載の情報処理システム。
【請求項19】
収容部と、該収容部に対する積載物の積込作業又は降ろし作業を行う作業部と、該作業部の動作を制御する際に参照される動作辞書を記憶する記憶部と、前記動作辞書を参照して前記作業部の動作を制御する制御部とを備える作業車両から、前記積込作業又は前記降ろし作業に関する作業データを取得する取得部と、
取得した作業データに基づき、前記動作辞書を更新するための更新データを生成する生成部と、
前記作業車両が備える動作辞書を更新すべく、生成した更新データを前記作業車両向けに出力する出力部と
を備える情報処理装置。
【請求項20】
積載物を収容する収容部と、
該収容部に対する積載物の積込作業又は降ろし作業を行う作業部と、
該作業部の動作を制御する際に参照される動作辞書を記憶する記憶部と、
前記動作辞書を参照して前記作業部の動作を制御する制御部と、
前記積込作業又は前記降ろし作業に関する作業データを外部装置へ出力する出力部と、
前記作業データに基づき前記動作辞書の更新データを生成するよう構成された前記外部装置から、前記動作辞書の更新データを取得する取得部と、
取得した更新データに基づき、前記記憶部に記憶された動作辞書を更新する更新部と
を備える作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、情報処理システム、情報処理装置、及び作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば積載物を運搬する作業車両の一例として、圧縮板を用いて塵芥を圧縮させつつ塵芥収容箱に積み込む積込装置を備えた塵芥収集車が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の塵芥収集車では、予め定められた動作辞書に従って積込装置の動作を制御しており、使用状況などに応じて、動作制御を柔軟に変更することはできない。
【0005】
本発明は、車載の作業装置の動作を制御する際に参照される動作辞書を更新できる情報処理方法、情報処理システム、情報処理装置、及び作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理方法は、収容部と、該収容部に対する積載物の積込作業又は降ろし作業を行う作業部と、該作業部の動作を制御する際に参照される動作辞書を記憶する記憶部と、前記動作辞書を参照して前記作業部の動作を制御する制御部とを備える作業車両から、前記積込作業又は前記降ろし作業に関する作業データを取得し、取得した作業データに基づき、前記動作辞書を更新するための更新データを生成し、前記作業車両が備える動作辞書を更新すべく、生成した更新データを前記作業車両向けに出力する処理をコンピュータにより実行する。
【0007】
本発明の一態様に係る情報処理システムは、積載物を運搬する作業車両と、該作業車両と通信可能に接続される情報処理装置とを含む情報処理システムであって、前記作業車両は、積載物を収容する収容部と、該収容部に対する積載物の積込作業又は降ろし作業を行う作業部と、該作業部の動作を制御する際に参照される動作辞書を記憶する記憶部と、前記動作辞書を参照して前記作業部の動作を制御する制御部とを備え、前記情報処理装置は、前記作業車両から前記積込作業又は前記降ろし作業に関する作業データを取得する取得部と、取得した作業データに基づき、前記動作辞書を更新するための更新データを生成する生成部と、前記作業車両が備える動作辞書を更新すべく、生成した更新データを前記作業車両向けに出力する出力部とを備え、前記作業車両は、前記情報処理装置から受信した更新データに基づき、前記記憶部に記憶された動作辞書を更新する更新部を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、収容部と、該収容部に対する積載物の積込作業又は降ろし作業を行う作業部と、該作業部の動作を制御する際に参照される動作辞書を記憶する記憶部と、前記動作辞書を参照して前記作業部の動作を制御する制御部とを備える作業車両から、前記積込作業又は前記降ろし作業に関する作業データを取得する取得部と、取得した作業データに基づき、前記動作辞書を更新するための更新データを生成する生成部と、前記作業車両が備える動作辞書を更新すべく、生成した更新データを前記作業車両向けに出力する出力部とを備える。
【0009】
本発明の一態様に係る作業車両は、積載物を収容する収容部と、該収容部に対する積載物の積込作業又は降ろし作業を行う作業部と、該作業部の動作を制御する際に参照される動作辞書を記憶する記憶部と、前記動作辞書を参照して前記作業部の動作を制御する制御部と、前記積込作業又は前記降ろし作業に関する作業データを外部装置向けに出力する出力部と、前記作業データに基づき前記動作辞書の更新データを生成するよう構成された前記外部装置から、前記動作辞書の更新データを取得する取得部と、取得した更新データに基づき、前記記憶部に記憶された動作辞書を更新する更新部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本願によれば、作業装置の動作を制御する際に参照される動作辞書を更新できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係る情報処理システムの構成を示す模式図である。
【
図2】作業車両の一例としての塵芥収集車を示す側面図である。
【
図3】塵芥収集車が備える作業装置の構成を示す側断面図である。
【
図5】塵芥収集車の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図7】事業所サーバの内部構成を示すブロック図である。
【
図8】管理サーバの内部構成を示すブロック図である。
【
図9】顧客管理テーブルの一例を示す概念図である。
【
図10】作業履歴テーブルの一例を示す概念図である。
【
図11】更新用学習モデルの構成を示す模式図である。
【
図12】更新用学習モデルの生成手順を説明するフローチャートである。
【
図13】実施の形態1に係る管理サーバが実行する処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図14】実施の形態2における動作辞書の一例を示す模式図である。
【
図15】実施の形態2に係る管理サーバが実行する処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図16】更新データ管理テーブルの一例を示す概念図である。
【
図17】実施の形態3における動作辞書の更新手順を説明するフローチャートである。
【
図18】提案処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図19】実施の形態4における動作辞書の更新手順を説明するフローチャートである。
【
図20】実施の形態5における塵芥収集車が備える動作辞書の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係る情報処理システムの構成を示す模式図である。実施の形態1に係る情報処理システムは、塵芥収集車1、事業所サーバ200、及び管理サーバ300を含む。
【0013】
積載物を運搬する作業車両の一例としての塵芥収集車1は、各所に設けられたゴミ収集所を巡回し、収集所に集められた積載物としての塵芥を収集(運搬)するための車両である。塵芥収集車1は、後述する動作辞書を参照して塵芥の積込作業を行うと共に、積込作業に関するデータ(作業データ)を収集して逐次記憶する。塵芥収集車1は、事業所サーバ200と通信するための通信手段を備える。塵芥収集車1は、収集した塵芥をゴミ処理施設にて排出した後、事業所へ戻り、収集した作業データを事業所サーバ200へ送信する。
【0014】
事業所サーバ200は、ゴミ収集業者の事業所に設置されるサーバである。事業所サーバ200は、塵芥収集車1から受信した作業データを塵芥収集車1の識別情報及び作業員の識別情報に関連付けて記憶する。事業所サーバ200は、塵芥収集車1から受信した作業データに基づいて、塵芥収集車1の作業日報DRを自動的に作成するようにしてもよい。事業所サーバ200は、インターネット網NW2などの通信ネットワークNWを介して、管理サーバ300と通信するための通信手段を備える。事業所サーバ200は、塵芥収集車1から受信した作業データを、塵芥収集車1の識別情報及び作業員の識別情報と共に管理サーバ300へ送信する。
【0015】
管理サーバ300は、管理センタに設置されるサーバである。管理センタは、各事業所が使用している塵芥収集車1を管理する機関である。管理センタは、使用者(事業所又は作業員)に対し、サブスクリプション方式又はリース方式にて塵芥収集車1を貸与してもよい。管理サーバ300は、事業所サーバ200から受信した作業データを塵芥収集車1の識別情報及び作業員の識別情報に関連付けて記憶する。管理サーバ300は、記憶した作業データに基づき、塵芥収集車1が備える動作辞書を更新するための更新データを生成し、生成した更新データを塵芥収集車1へ送信する。管理サーバ300から送信される更新データは、事業所サーバ200を経由して、塵芥収集車1に到達する。
【0016】
塵芥収集車1は、管理サーバ300から送信される更新データを事業所サーバ200経由で受信する。塵芥収集車1は、受信した更新データに基づき、動作辞書を更新する。すなわち、塵芥収集車1は、作業状況に適した動作辞書を管理サーバ300より取得することができる。塵芥収集車1は、更新後の動作辞書を用いることにより、積込作業における各種動作を最適化することができる。
【0017】
図2は作業車両の一例としての塵芥収集車1を示す側面図、
図3は塵芥収集車1が備える作業装置の構成を示す側断面図である。塵芥収集車1は、車台2と、車台2上に設けられた作業装置3とを備える。作業装置3は、塵芥投入箱4に装備される積込装置10と、塵芥収容箱5に装備される排出装置20とを備える。以下の説明において、前後、左右、上下の各方向は、塵芥収集車1の運転席に着座した作業員から見た前後、左右、上下の各方向を表す。
【0018】
塵芥収容箱5の後面には開口部51が設けられている。塵芥投入箱4は、その前面が部分的に開放されており、塵芥収容箱5と連通するように配置される。塵芥投入箱4の後面には投入口41が開口されており、塵芥投入箱4内の下方には塵芥の貯留室42が形成されている。塵芥投入箱4の内部には、投入口41より投入された塵芥を貯留室42内で押し潰して圧縮し、塵芥収容箱5に積み込むための積込装置10が装備されている。
【0019】
積込装置10は、塵芥投入箱4の前方上端部から後方下端部に向かって傾斜して敷設されるディフレクタ11と、ディフレクタ11に沿って昇降自在に設けられる摺動板12と、摺動板12の下端部に連結されて前後方向に回動可能な圧縮板13とを備える。積込装置10は、摺動板12を昇降させるためのアクチュエータとして、塵芥投入箱4の側壁と摺動板12とに連結された左右一対の昇降シリンダ12Cを備える(
図4を参照)。また、積込装置10は、圧縮板13を回動させるためのアクチュエータとして、摺動板12と圧縮板13とに連結された左右一対の回動シリンダ13Cを備える(
図4を参照)。
【0020】
積込装置10は、圧縮板13が後方に回動するように回動シリンダ13Cを駆動する反転工程(
図3の矢符Aで示す工程)と、摺動板12が下降するように昇降シリンダを駆動する下降工程(
図3の矢符Bで示す工程)と、圧縮板13が前方に回動するように回動シリンダ13Cを駆動する圧縮工程(
図3の矢符Cで示す工程)と、摺動板12が上昇するように昇降シリンダ12Cを駆動する上昇工程(
図3の矢符Dで示す工程)とを含む動作を1サイクルの動作として実行することにより、貯留室42に投入された塵芥を圧縮して塵芥収容箱5に積み込む積込作業を行う。
【0021】
圧縮工程及び上昇工程において、積込装置10に作用する圧力が閾値よりも大きい場合、インチング動作を行ってもよい。インチング動作では、摺動板12及び圧縮板13を単独で作動させたり、同時的に作動させたりすることにより、家具や電化製品等のような容易には変形しない塵芥に適宜の圧力を加え、これらの塵芥を圧縮して塵芥収容箱5に積み込むことが可能となる。
【0022】
また、積込作業において逆流防止動作を行ってもよい。通常の積込作業では、1サイクル終了後の所定位置から反転工程、下降工程、圧縮工程、及び上昇工程を経て、塵芥投入箱4に投入された塵芥を圧縮して塵芥収容箱5に積み込む。これに対し、逆流防止動作では、反転工程を行うタイミングを遅らせ、下降工程を行いつつ、反転工程を行う。この逆流防止動作により、塵芥収容箱5の開口部51の一部が摺動板12によって塞がるので、塵芥収容箱5から塵芥投入箱4への塵芥の逆流が防止される。
【0023】
排出装置20は、塵芥収容箱5の内部において前後方向に進退自在に設けられる排出板21と、この排出板21を駆動する排出シリンダ21Cとを備える。排出板21は、幅が塵芥収容箱5の内幅と略等しく、かつ、高さが塵芥収容箱5の底壁から頂壁までの高さと略等しく形成されている。塵芥収容箱5の内部空間は、排出板21によって、塵芥の収容空間5Aと非収容空間5Bとに区画される。排出シリンダ21Cは、塵芥収容箱5の非収容空間5Bに配設される。排出シリンダ21Cは、前端が塵芥収容箱5の前部に固設されたブラケット22に連結され、後端が排出板21の下部に連結されている。排出装置20は、排出シリンダ21Cの伸縮動作により、排出板21を塵芥収容箱5の内部において前後方向に往復移動させることができる。なお、
図3に示す排出シリンダ21Cは、それぞれ径の異なる3つのシリンダが組み込まれた3段式シリンダである。
【0024】
排出板21は、排出シリンダ21Cが最収縮状態において塵芥収容箱5の前部近傍まで前進し、排出シリンダ21Cが最初期伸長状態において開口部51の近傍位置まで後退するように構成される。塵芥収容箱5が空荷の場合、排出装置20は、排出シリンダ21Cを最伸長状態となるように制御し、排出板21を開口部51の近傍位置まで後退させる。この状態において積込作業が行われることにより、塵芥は圧縮された状態にて塵芥収容箱5の収容空間5Aに収容される。収容空間5Aに収容される塵芥の量が増加するにつれて、排出装置20は、排出シリンダ21Cを少しずつ短縮するように制御し、排出板21を塵芥収容箱5の前方へ移動させる。これに伴い、収容空間5Aの容積は拡大する。このように、作業装置3は、排出装置20により排出板21の位置を調整しながら、積込装置10により積込作業を行うことにより、積み込んだ塵芥を圧縮した状態で塵芥収容箱5の収容空間5Aに収容することができる。なお、排出板21の前後方向の位置は、位置センサPOSによって検知される。塵芥収容箱5に収容された塵芥を排出する降ろし作業を行う場合、排出装置20は、排出シリンダ21Cが最伸長状態となるように制御し、排出板21を塵芥収容箱5の後端位置まで移動させることによって、収容空間5Aに収容された塵芥を外部へ排出する。
【0025】
塵芥投入箱4は、塵芥収容箱5の後方にて枢軸52の回りに傾動自在に配設されており、傾動シリンダ52C(
図4を参照)の作用により開閉できるように構成されている。また、塵芥収容箱5は、塵芥投入箱4をロックするためのロック機構53を備えており、ロックシリンダ53C(
図4を参照)の作用により、塵芥投入箱4をロックできるように構成されている。
【0026】
次に、塵芥収集車1の油圧回路について説明する。
図4は塵芥収集車1の油圧回路図である。塵芥収集車1の油圧回路は、図に示していないPTO(Power Take Of)を介して車両エンジンの駆動力が伝達される油圧ポンプPと、作動油を貯留する油圧タンクTと備えており、油圧タンクT内の作動油を油圧ポンプPで吸い上げてコントロールバルブCVに供給する。コントロールバルブCVは複数の電磁制御弁を備える。コントロールバルブCVが備える電磁制御弁は、昇降シリンダ12Cを伸縮制御する電磁制御弁V1、回動シリンダ13Cを伸縮制御する電磁制御弁V2、排出シリンダ21Cを伸縮制御する電磁制御弁V3、傾動シリンダ52C及びロックシリンダ53Cを伸縮制御する電磁制御弁V4を含む。
【0027】
コントロールバルブCVが備える電磁制御弁V1~V4は、例えば6ポート3位置の電磁式の方向切換弁である。コントロールバルブCVは、後述する動作制御部140(
図5を参照)からの制御信号により、電磁制御弁V1~V4の開閉ポートを切り替え、油圧ポンプPから吐出された作動油を所望のシリンダ(昇降シリンダ12C、回動シリンダ13C、排出シリンダ21C、傾動シリンダ52C、ロックシリンダ53C)に供給するように構成されている。これにより、各シリンダの伸縮動作の切替が制御され、又は運転が停止される。コントロールバルブCVを通過した戻り側の作動油は、回収側の油圧配管RPを流通し、リターンフィルタRFによって濾過された後、油圧タンクTに回収される。
【0028】
回動シリンダ13Cの背圧側油室に接続される油路には、その油圧(積込装置10の油圧)を検知するための油圧センサPS1が接続されている。また、排出シリンダ21Cの背圧側油室に接続される油路には、ソレノイドチェック弁V、リリーフ弁R、及び油圧センサPS2が接続されている。ソレノイドチェック弁Vは、ソレノイドを有し、通常、排出シリンダ21Cの背圧側油室が油圧タンクTに連通するのを阻止する位置(遮断位置)に付勢されており、ソレノイドに通電すると、排出シリンダ21Cの背圧側油室が油圧タンクTに連通する位置(連通位置)に切り換えられる。ソレノイドチェック弁Vの開放時には、排出シリンダ21Cの背圧側油室が油圧タンクTに連通され、ソレノイドチェック弁Vの閉鎖時には、排出シリンダ21Cの背圧側油室が油圧タンクTから遮断されるように構成される。リリーフ弁Rは、排出シリンダ21Cの背圧側油室の油圧が設定値以上に達した際に、その圧油を油圧タンクTに還流させる。油圧センサPS2は、排出シリンダ21Cの背圧側油室に接続される油路に設けられ、その油圧(排出装置20の油圧)を検知するよう構成されている。
【0029】
次に、塵芥収集車1の制御系の構成について説明する。
図5は塵芥収集車1の制御系の構成を示すブロック図である。塵芥収集車1は、制御系の構成として、動作設定部120、動作制御部140、及び画像処理部160を備える。動作設定部120、動作制御部140、及び画像処理部160は、互いに情報を送受できるように構成されている。
【0030】
動作設定部120は、外部から入力された情報や記憶部121に記憶された情報に基づき、各種の動作設定を行うための処理回路であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。動作設定部120は、ROMに予め記憶されたコンピュータプログラムをRAM上に展開し、入力された情報や記憶部121に記憶された情報を参照しながらCPUが上記コンピュータプログラムを実行することにより、作業装置3などに対する動作設定を行う。ここで、動作設定とは、作業装置3の動作を制御する際に用いられる制御設定値を決定することをいう。制御設定値は、単一の値である必要はなく、塵芥収集車1の動作状況(条件)に応じて定めた制御設定値(制御パターン)を含んでもよい。動作設定部120により設定された情報は動作制御部140へ出力される。
【0031】
動作設定部120は、上記の構成に限らず、マイコンやメモリ等を備える1又は複数の処理回路であってもよい。また、動作設定部120は、日時情報を出力するクロック、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ等を備えてもよい。
【0032】
動作設定部120には、記憶部121、ゴミ種選択操作部122、表示部123、音検出部124、車載計量部125、位置取得部126、通信部127などが接続される。
【0033】
記憶部121は、例えば、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性メモリにより構成される。記憶部121には、作業装置3の動作辞書や作業時に収集したデータ(作業データ)などが記憶される。
【0034】
図6は動作辞書の一例を示す概念図である。動作辞書は、作業装置3の動作を制御する際に参照される制御設定値を含む。動作辞書では、作業装置3の動作種別毎に、作業装置3に対する制御設定値が記憶される。例えば、動作辞書には、積込作業時の排出板動作に関して、排出板21の位置(X1,X2,X3,…)に応じた制御設定値として、排出板21の移動規制設定圧(P1,P2,P3,…)、及び排出シリンダ21Cの伸縮動作を制御するソレノイドチェック弁Vの開放時間(T1,T2,T3,…)が記憶される。また、動作辞書には、積込作業におけるインチング動作に関して、油圧センサPS1の油圧値(Y1,Y2,Y3,…)に応じた制御設定値として、摺動板12の作動タイミング(Ta1,Ta2,Ta3,…)、及び圧縮板13の作動タイミング(Tb1,Tb2,Tb3,…)が記憶される。更に、動作辞書には、積込作業時における逆流防止動作に関して、塵芥の落下割り合い(Z1,Z2,Z3,…)に応じた制御設定値として、圧縮板13の反転を遅らせるタイミング(すなわち、圧縮板13の反転を開始する前に摺動板12を下降させる時間Tc1,Tc2,Tc3,…)が記憶される。なお、
図6ではテーブル形式の動作辞書を示しているが、テーブル形式に限らず、関数形式、データベース形式の動作辞書であってもよい。
【0035】
作業装置3により積込作業を行う場合、動作設定部120は、各条件下での排出板21の移動規制設定圧、及び排出シリンダ21Cの伸縮動作を制御するソレノイドチェック弁Vの開放時間を制御設定値として読み出し、動作制御部140へ出力する。動作制御部140は、動作設定部120から入力される動作設定値を参照して、排出板21の移動規制設定圧、及び排出シリンダ21Cの伸縮動作を制御することにより、積込作業時における排出板21の移動制御を行う。インチング動作及び逆流防止動作を実行する場合も同様であり、動作制御部140は、動作設定部120から入力される動作設定値を参照して、摺動板12及び圧縮板13の動作を制御すればよい。
【0036】
記憶部121に記憶される作業データは、作業場所、塵芥の種別、撮像部161より得られる画像データ、積込作業時における積込装置10の油圧値、積込作業時に排出板21を移動させる際の排出装置20の油圧値、排出装置20が備える排出板21の位置、積み込んだ塵芥の重量、及び積込作業時における塵芥の圧縮音の少なくとも1つを含む。
【0037】
ゴミ種選択操作部122は、収集すべき塵芥(ゴミ)の種別を受付けるためのスイッチを備える。塵芥が塵芥投入箱4に投入される際、若しくは投入された塵芥が塵芥収容箱5に積み込まれる際、作業員の手によってゴミ種選択操作部122が操作されことにより、収集されるゴミの種別が選択される。ゴミ種選択操作部122は、例えば、「生ゴミ」、「ペットボトル」、「木材」、「段ボール」等のゴミの種別毎に物理的なスイッチを備える。代替的に、ゴミ種選択操作部122は、押下操作する都度、種別が切り替わる切替式のスイッチ、回転操作により種別が切り替わるロータリ式のスイッチ、表示パネル上に選択項目が配置されるソフトウェアスイッチ等であってもよい。また、ゴミ種選択操作部122を搭載する代わりに、作業員が携帯するスマートフォンなどの携帯端末CPを用いて種別の選択を受付け、作業員の携帯端末CPと通信することにより、選択された種別の情報を取得する構成としてもよい。このとき、塵芥収集車1の通信部127と、作業員の携帯端末CPとは、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信技術を用いてペアリングされるとよい。ゴミ種選択操作部122によるゴミ種別の選択結果は、塵芥収集車1が事業所へ戻った後、作業データの一部として事業所サーバ200へ送信される。
【0038】
表示部123は、作業員に報知すべき情報を表示するための表示パネルを備える。表示パネルは、液晶パネルであってもよく、有機ELパネルであってもよい。表示部123は、例えば、ゴミ種選択操作部122によって選択されたゴミ種の情報を表示することができる。また、表示部123上にタッチパネルを配置することにより、ゴミ種を含む様々な選択操作や設定操作を受付けることが可能である。
【0039】
音検出部124は、塵芥投入箱4の内部に配置されるマイクなどの入力装置を備える。例えば、音検出部124は、塵芥投入箱4の一方の金属製側壁とその金属製側壁を覆うサイドカバーとの間で、塵芥投入箱4の内部底板近傍に設けられる。音検出部124は、入力装置を通じて、積込作業時に発生する圧縮音などの音を検出する。音検出部124により検出された音は、デジタル形式のデータとして記録され、動作設定部120に出力される。音検出部124により検出された音のデータは、塵芥収集車1が事業所へ戻った後、作業データの一部として事業所サーバ200へ送信される。
【0040】
車載計量部125は、塵芥収容箱5に収容された塵芥の重量を計測るための計測装置を備える。車載計量部125は、例えば、収容物による荷重が作用する部位の歪みを計測する歪センサを備え、歪センサにより計測される歪量を塵芥の重量に換算して出力する。車載計量部125により計量された塵芥の重量は、動作設定部120に出力される。車載計量部125により計量された塵芥の重量データは、塵芥収集車1が事業所へ戻った後、作業データの一部として事業所サーバ200へ送信される。
【0041】
位置取得部126は、例えばGPS受信機(Global Positioning System)を備える。位置取得部126は、GPS衛星(不図示)から送信される電波をGPS受信機により受信し、塵芥収集車1の現在位置を測位する。位置取得部126により測位された塵芥収集車1の現在位置の情報は、動作設定部120に出力される。位置取得部126を搭載する代わりに、作業員が携帯するスマートフォンなどの携帯端末CPを用いて塵芥収集車1の位置情報を計測し、作業員の携帯端末CPと通信することにより、計測された塵芥収集車1の位置情報を取得する構成としてもよい。位置取得部126が取得した塵芥収集車1の位置情報は、塵芥収集車1が事業所へ戻った後、作業データの一部として事業所サーバ200へ送信される。
【0042】
通信部127は、事業所サーバ200と無線通信を行うための通信インタフェースを備える。通信部127が備える通信インタフェースは、例えば、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標) 、ZigBee(登録商標)、ANT(登録商標)、ANT+(登録商標)などの近距離無線通信規格に準じた通信インタフェースである。通信部127は、事業所サーバ200と無線通信を行うことにより、各種のデータを事業所サーバ200から取得すると共に、積込作業に関する作業データを事業所サーバ200へ送信する。通信部127は、事業所サーバ200と近距離無線通信を行うだけでなく、作業員が携帯する携帯端末CPと近距離無線通信を行ってもよい。この場合、携帯端末CPは、3G、4G、5G、LTE(Long Term Evolution)等の移動通信規格に準じた通信インタフェースを備え、携帯端末CPが移動通信網NW1及びインターネット網NW2を通じて事業所サーバ200又は管理サーバ300とつながることにより、塵芥収集車1の作業データを携帯端末CPから事業所サーバ200又は管理サーバ300に送信する構成にしてもよい(
図1を参照)。
【0043】
動作制御部140は、動作設定部120から入力される動作設定値を参照して、作業装置3の動作を制御するための処理回路を備える。動作制御部140には、PTOスイッチ141、積込スイッチ142、排出スイッチ143、各種電磁制御弁V1~V4、ソレノイドチェック弁V、油圧センサPS1,PS2、排出板21の位置センサPOSなどが接続される。
【0044】
動作制御部140は、各種スイッチの入力操作により、積込作業又は排出作業の開始指示が与えられた場合、動作設定部120から入力される動作設定値を参照して、各種電磁制御弁V1~V4やソレノイドチェック弁Vの動作を制御することにより、塵芥の積込作業又は排出作業を実行する。
【0045】
また、動作制御部140は、積込作業又は排出作業において、摺動板12、圧縮板13、排出板21等を作動させたタイミング、積込作業時における積込装置10の油圧値(油圧センサPS1により計測される油圧値)、積込作業時における排出装置20の油圧値(油圧センサPS2により計測される油圧値)、位置センサPOSにより計測される排出板21の位置などのデータ(作業データ)を随時取得し、取得した作業データを動作設定部120へ出力する。動作設定部120に出力された作業データは、記憶部121に記憶されると共に、塵芥収集車1が事業所へ戻った後に、事業所サーバ200へ送信される。
【0046】
画像処理部160は、塵芥投入箱4の近辺に存在する人物(頭部)や作業員が装着している手袋などを認識する処理を実行するための処理回路を備える。画像処理部160には、撮像部161、及び認識辞書記憶部162が接続される。撮像部161は、積込作業が行われる塵芥投入箱4の近辺を撮像するための撮像素子を備え、撮像することによって得られた画像データを画像処理部160へ出力する。なお、撮像部161は、塵芥投入箱4の外部を撮像する撮像素子と、塵芥投入箱4の内部を撮像する撮像素子とを備えてもよい。
【0047】
認識辞書記憶部162は、認識辞書として、撮像部161より得られる画像データを入力した場合、塵芥投入箱4の近辺の状況に関する情報を出力するよう学習された学習モデルLM2を備える。学習モデルLM2は、CNN(Convolutional Neural Networks)によって構築される。代替的に、学習モデルLM2は、R-CNN(Region-based CNN)、YOLO(You Only Look Once)、SSD(Single Shot Detector)、GAN(Generative Adversarial Network)、SVM(Support Vector Machine)、決定木等に基づく学習モデルであってもよい。学習モデルLM2は、撮像部161より得られる画像データと、この画像データが示す画像内に認識対象の人物(頭部)や作業員が装着している手袋などが含まれているか否かを示すラベルデータとのデータセットを訓練データに用いて、所定の学習アルゴリズムにより学習を行うことで生成される。
【0048】
画像処理部160は、撮像部161から画像データを取得した場合、取得した画像データを学習モデルLM2に入力し、学習モデルLM2による演算を実行することにより、塵芥投入箱4の付近の状況に関する情報を取得する。画像処理部160は、学習モデルLM2から得られる情報に基づき、塵芥投入箱4の近辺に存在する人物(頭部)や作業員が装着している手袋などを認識する。なお、撮像部161より得られる画像データは、塵芥収集車1が事業所へ戻った後、作業データの一部として事業所サーバ200へ送信されてもよい。
【0049】
画像処理部160は、塵芥投入箱4の近辺に存在する人物(頭部)や作業員が装着している手袋などを認識する構成としたが、塵芥投入箱4の内部に投入された塵芥の量や、塵芥の種別や、積込装置10が反転工程の動作中に塵芥が圧縮板13の先端から下方へ落ちる動き(塵芥が逆流する動き)などを認識する構成としてもよい。この場合、認識辞書として、撮像部161より得られる画像データを入力した場合、塵芥投入箱4の内部の状況に関する情報を出力するよう学習された学習モデルが用いられる。このような学習モデルは、上述した学習モデルLM2とは別に用意され、例えば、撮像部161により塵芥投入箱4の内部を撮像して得られる画像データと、正解データとのデータセットを訓練データに用いて、所定の学習アルゴリズムにより学習を行うことで生成される。この正解データは、車載計量部125の計量結果を基に算出される塵芥の増加量や、ゴミ種選択操作部122によるゴミ種の選択結果や、圧縮板13の位置と圧縮板13の先端から下方へ落ちる塵芥との関係を含む。
画像処理部160は、撮像部161により塵芥投入箱4の内部を撮像して得られる画像データを上記学習モデルに入力し、学習モデルから得られる情報に基づき、塵芥投入箱4の内部に投入された塵芥の量や種別や塵芥逆流量などを認識する。
【0050】
次に、事業所サーバ200の構成について説明する。
図7は事業所サーバ200の内部構成を示すブロック図である。事業所サーバ200は、専用又は汎用のサーバ装置であり、制御部201、記憶部202、第1通信部203、第2通信部204、操作部205、及び表示部206を備える。
【0051】
制御部201は、CPU、ROM、RAMなどを備える。制御部201が備えるROMには、上記ハードウェア各部の動作を制御するための制御プログラム等が記憶される。制御部201内のCPUは、ROMに記憶された制御プログラム及び記憶部202に記憶された各種プログラムを実行し、上記ハードウェア各部の動作を制御する。制御部201が備えるRAMには、各種プログラムの実行中に一時的に利用されるデータが記憶される。
【0052】
なお、制御部201は、日時情報を出力するクロック、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ等の機能を備えてもよい。
【0053】
記憶部202は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などのストレージを備える。記憶部202には、制御部201に実行させる各種プログラムや、事業所が管理する塵芥収集車1の情報などを記憶する。塵芥収集車1の情報として、塵芥収集車1の使用者である作業員の情報、塵芥収集車1がゴミを収集するために巡回する巡回ルートの情報、塵芥収集車1から受信した作業データなどが記憶部202に記憶される。また、記憶部202には、塵芥収集車1から受信した作業データを基に自動的に作成される塵芥収集車1の作業日報DRが記憶されてもよい。
【0054】
第1通信部203は、塵芥収集車1と無線通信を行うための通信インタフェースを備える。第1通信部203が備える通信インタフェースは、例えば、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標) 、ZigBee(登録商標)、ANT(登録商標)、ANT+(登録商標)などの近距離無線通信規格に準じた通信インタフェースである。
【0055】
第2通信部204は、管理サーバ300と通信を行うための通信インタフェースを備える。第2通信部204が備える通信インタフェースは、インターネット網NW2などの通信ネットワークNWに接続するための通信インタフェースである。
【0056】
操作部205は、キーボード、タッチパネルなどの入力デバイスを接続するためのインタフェースを備える。制御部201は、操作部205を通じて、管理者等による各種の操作や設定を受付ける。
【0057】
表示部206は、液晶パネルや有機ELパネル等の表示デバイスを備えており、制御部201から出力される情報に基づき、管理者等に報知すべき情報を表示する。
【0058】
事業所サーバ200は、塵芥収集車1から受信した作業データを、記憶部202に記憶させると共に、第2通信部204より管理サーバ300へ送信する。
【0059】
次に、管理サーバ300の構成について説明する。
図8は管理サーバ300の内部構成を示すブロック図である。管理サーバ300は、専用又は汎用のサーバ装置であり、制御部301、記憶部302、通信部303、操作部304、及び表示部305を備える。
【0060】
制御部301は、CPU、ROM、RAMなどを備える。制御部301が備えるROMには、上記ハードウェア各部の動作を制御するための制御プログラム等が記憶される。制御部301内のCPUは、ROMに記憶された制御プログラム及び記憶部302に記憶された各種プログラムを実行し、上記ハードウェア各部の動作を制御する。制御部301が備えるRAMには、各種プログラムの実行中に一時的に利用されるデータが記憶される。
【0061】
なお、制御部301は、上記の構成に限らず、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、量子プロセッサ、揮発性又は不揮発性のメモリ等を含む1又は複数の処理回路であってもよい。また、制御部301は、日時情報を出力するクロック、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ等の機能を備えてもよい。
【0062】
記憶部302は、HDD、SSDなどのストレージを備える。記憶部302には、各種のデータやコンピュータプログラムが記憶される。記憶部302は、例えば、サブスクリプション方式又はリース方式により貸与した塵芥収集車1の識別情報と、この塵芥収集車1が貸与されている顧客(事業所若しくは作業員)の識別情報とを関連付けて記憶する顧客管理テーブルTB1を備える。
図9は顧客管理テーブルTB1の一例を示す概念図である。顧客管理テーブルTB1には、塵芥収集車1の識別情報、顧客の識別情報に加え、車種情報、貸与期間、顧客の氏名、住所、メールアドレスなどの情報が記憶される。車種情報は、例えば塵芥収集車1が積載可能な塵芥の総重量によって区別される。
【0063】
また、記憶部302は、事業所サーバ200を通じて受信した塵芥収集車1の作業データを記憶する作業履歴テーブルTB2を備える。
図10は作業履歴テーブルTB2の一例を示す概念図である。作業履歴テーブルTB2は、例えば、日時、塵芥収集車1の位置情報(収集場所)、ゴミ種別、積込作業時の排出板21の動作、インチング動作、逆流防止動作などにおける制御設定値、油圧センサPS1,PS2の油圧値、積込サイクル数、積載重量、圧縮音、撮像部161により撮像される塵芥投入箱4の内部及び外部の画像データ(各日時のフレーム画像)等を関連付けて記憶する。ここで、ゴミ種別は、ゴミ種選択操作部122を用いて作業員により選択される「生ゴミ」、「ペットボトル」、「木材」、「段ボール」等の種別を表す。積込サイクル数は、圧縮板13の反転工程、下降工程、圧縮工程、上昇工程を1サイクルとした積込動作の実行回数である。積載重量は、車載計量部125により計測される塵芥の重量である。圧縮音は、音検出部124により検出される塵芥の圧縮時の音の大きさと顕著な周波数である。画像データは、撮像部161により撮像される塵芥投入箱4の内部及び外部の画像データ(各日時に対応したフレーム画像)である。
【0064】
このような作業履歴テーブルTB2は、各塵芥収集車1に対して作成される。すなわち、作業履歴テーブルTB2は、塵芥収集車1が各所を巡回して塵芥を収集し、事業所に戻ってくるまでに収集される作業データを、塵芥収集車1の識別情報に関連付けて記録することにより作成される。なお、作業履歴テーブルTB2は、作業日毎の作業データを記録するものであってもよく、複数の作業日の作業データをまとめて記録するものであってもよい。
【0065】
また、記憶部302は、動作辞書に対する更新データを生成するための更新用学習モデルLM11を備える。
図11は更新用学習モデルLM11の構成を示す模式図である。更新用学習モデルLM11は、作業データが入力された場合、作業装置3に対する制御設定値を出力するよう学習される。学習モデルLM11は、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short-Term Memory)などにより構築される学習モデルである。代替的に、学習モデルLM11は、CNN、R-CNN、YOLO、SSD、GAN、SVM、決定木等に基づく学習モデルであってもよい。
【0066】
学習モデルLM11は、例えば、深層学習を含む機械学習の学習モデルであり、ニューラルネットワークによって構成される。学習モデルLM11は、入力層LY1、中間層LY2,LY3、及び出力層LY4を備える。
図11の例では、2つの中間層LY2,LY3を記載しているが、中間層の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0067】
入力層LY1、中間層LY2,LY3、及び出力層LY4には、1つまたは複数のノードが存在し、各層のノードは、前後の層に存在するノードと一方向に所望の重みおよびバイアスで結合されている。学習モデルLM11の入力層LY1には、入力層LY1が備えるノードの数と同数のデータが入力される。本実施の形態において、入力層LY1のノードに入力されるデータは、ゴミ種別、積込装置10付近の画像データ、油圧センサPS1,PS2の油圧値、排出板21の位置、塵芥の積載量(計測値)、塵芥の圧縮音などの作業データを含む。
【0068】
入力された作業データは、入力層LY1を構成するノードを通じて、最初の中間層LY2が備えるノードへ出力される。最初の中間層LY2に入力されたデータは、中間層LY2を構成するノードを通じて、次の中間層LY3が備えるノードへ出力される。このとき、ノード間において設定されている重み及びバイアスを含む活性化関数を用いて出力が算出される。以下同様にして、ノード間において設定される重み及びバイアスを含む活性化関数を用いた演算を実行し、出力層LY4による演算結果が得られるまで次々と後の層に伝達される。
【0069】
ここで、ノード間を結合する重み、バイアス等のパラメータは、所定の学習アルゴリズムによって学習される。各種パラメータを学習する学習アルゴリズムには、例えば誤差逆伝搬法を含む深層学習の学習アルゴリズムが用いられる。本実施の形態では、前述の作業データと、学習モデルLM11が出力すべき正解データとを含むデータセットを訓練データに用いて、作業データが入力された場合、制御設定値を出力するように、所定の学習アルゴリズムによってノード間の重み及びバイアスを含む各種パラメータが学習される。作業データと、学習モデルLM11が出力すべき正解データとを含むデータセットは、作業員の手によって選別されてもよい。例えば、作業員は、積込装置10により塵芥を圧縮する際の圧縮音が小さければ、塵芥をスムーズに圧縮して塵芥収容箱5に収容できたと判断して、そのときの制御設定値を正解データとして与えてもよい。また、管理サーバ300の制御部301が、作業履歴テーブルTB2を参照し、積込サイクル数、積載重量、圧縮音などのデータから、訓練データに用いる作業データ及び制御設定値(正解データ)を選別してもよい。例えば、制御部301は、1回のサイクルで積み込めた塵芥の重量を計算し、その重量が大きい程、塵芥をスムーズに圧縮して塵芥収容箱5に収容できたと判断して、そのときの制御設定値を正解データとして与えてもよい。また、制御部301は、塵芥を圧縮する際の圧縮音が小さければ、塵芥をスムーズに圧縮して塵芥収容箱5に収容できたと判断して、そのときの制御設定値を正解データとして与えてもよい。特に重要なポイントは、塵芥の種別を特定した場合に、最大積載量をできるだけ少ない積込サイクル数で達成できるような各制御設定値を正解データとすることである。
【0070】
更に、学習モデルLM11は、強化学習による学習モデルであってもよい。本実施の形態では、作業データに含まれる圧縮音や積載重量を基に報酬を付与し、将来にわたって得られる報酬の合計を最大化するように、強化学習における価値を学習すればよい。例えば、強化学習の1つであるQ学習では、ある環境における状態(作業データ)の下で、行動(制御設定値)を選択する価値Qを学習する。Q学習を開始する時点では、状態(作業データ)と行動(制御設定値)との組合せについて、価値Qの正しい値は全く分かっていない。そこで、ある作業データの下で様々な制御設定値を選択し、その時の行動(制御設定値)に対して与えられる報酬に基づいて報酬の合計を算出し、より良い制御設定値の選択をしていくことにより、正しい価値Qを学習する。
【0071】
出力層LY4は、演算結果として制御設定値を出力する。例えば、出力層LY4を第1ノードから第3ノードまでの3個のノードにより構成し、第1ノードから積込作業時における排出板21の制御設定値、第2ノードからインチング動作における制御設定値、第3ノードから逆流防止動作の制御設定値を出力するように構成すればよい。
【0072】
なお、学習モデルLM11の入出力は適宜設定することができる。例えば、学習モデルLM11に対する入力は、収集場所、ゴミ種別、積込装置10付近の画像データ、油圧センサPS1,PS2の油圧値、排出板21の位置、塵芥の積載量(計測値)、及び塵芥の圧縮音のうち、選択した1又は複数の作業データであってもよい。また、学習モデルLM11の出力は、積込作業時における排出板21の制御設定値、インチング動作における制御設定値、及び逆流防止動作の制御設定値のうち、選択した1つ又は2つの制御設定値であってもよい。
【0073】
管理サーバ300の通信部303は、事業所サーバ200と通信を行うための通信インタフェースを備える。通信部303が備える通信インタフェースは、インターネット網NW2などの通信ネットワークNWに接続するための通信インタフェースである。
【0074】
操作部304は、キーボード、タッチパネルなどの入力デバイスを接続するためのインタフェースを備える。制御部301は、操作部304を通じて、管理者等による各種の操作や設定を受付ける。
【0075】
表示部305は、液晶パネルや有機ELパネル等の表示デバイスを備えており、制御部301から出力される情報に基づき、管理者等に報知すべき情報を表示する。
【0076】
管理サーバ300は、単一のコンピュータである必要はなく、複数のコンピュータや周辺機器からなるコンピュータシステムであってもよい。更に、管理サーバ300は、ソフトウェアによって仮想的に構築される仮想マシンであってもよい。
【0077】
図12は更新用学習モデルLM11の生成手順を説明するフローチャートである。管理サーバ300の制御部301は、作業履歴テーブルTB2に記憶されているデータから訓練データを選択する(ステップS101)。例えば、制御部301は、塵芥をスムーズに圧縮して積み込めたと判断できる作業データ及びそのときの制御設定値を訓練データとして選択すればよい。また、作業員によって選別された訓練データが存在する場合、制御部301は、その訓練データを選択してもよい。
【0078】
制御部301は、選択した訓練データに含まれる作業データを更新用学習モデルLM11に入力し(ステップS102)、更新用学習モデルLM11による演算を実行する(ステップS103)。更新用学習モデルLM11を構成する各ノードを特徴付けるパラメータには事前に初期値が設定されているものとする。更新用学習モデルLM11の演算の結果、積込作業時における排出板21の制御設定値、インチング動作における制御設定値、及び逆流防止動作の制御設定値が得られる。
【0079】
制御部301は、更新用学習モデルLM11の演算結果を評価し(ステップS104)、更新用学習モデルLM11の学習が完了したか否かを判断する(ステップS105)。制御部301は、ステップS103の演算により得られる演算結果と、正解データとして含む制御設定値とに基づく誤差関数(目的関数、損失関数、コスト関数ともいう)を用いて、演算結果を評価することができる。制御部301は、例えば、最急降下法などの勾配降下法により誤差関数を最適化(最小化又は最大化)する課程で、誤差関数が閾値以下(又は閾値以上)となった場合、更新用学習モデルLM11の学習が完了したと判断する。
【0080】
学習が完了していないと判断した場合(S105:NO)、制御部301は、各層で用いられるノード間の重み及びバイアスを更新し(ステップS106)、処理をステップS101へ戻す。制御部301は、出力層LY4から入力層LY1に向かって、ノード間の重み及びバイアスを順次更新する誤差逆伝搬法を用いて、各ノード間の重み及びバイアスを更新することができる。
【0081】
学習が完了したと判断した場合(S105:YES)、制御部301は、学習済みの更新用学習モデルLM11が得られるので、これを記憶部302に記憶させる(ステップS107)。
【0082】
以下、動作辞書の更新手順について説明する。
図13は実施の形態1に係る管理サーバ300が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。管理サーバ300の塵芥収集車1の作業データを取得する(ステップS121)。管理サーバ300は、事業所サーバ200を通じて、塵芥収集車1の作業データを取得すればよい。取得した作業データは、作業履歴テーブルTB2に登録される。
【0083】
制御部301は、ある条件下での作業データを更新用学習モデルLM11に入力し(ステップS122)、更新用学習モデルLM11による演算を実行する(ステップS123)。演算結果として、積込作業時における排出板21の制御設定値、インチング動作における制御設定値、及び逆流防止動作の制御設定値が得られる。制御部301は、様々な条件下での作業データを更新用学習モデルLM11に入力することにより、各条件下での制御設定値を取得することができる。
【0084】
制御部301は、通信部303を通じて、更新用学習モデルLM11より得られた制御設定値を更新データとして塵芥収集車1へ送信する(ステップS124)。管理サーバ300から送信される更新データは、事業所サーバ200を通じて塵芥収集車1に到達する。塵芥収集車1は、管理サーバ300から送信される更新データ(制御設定値)を受信した場合、動作辞書として記憶されている制御設定値を、新たに受信した制御設定値に書き換えることにより、動作辞書の更新を行う。
【0085】
なお、
図13のフローチャートでは、塵芥収集車1の記憶部121の動作辞書に格納すべき制御設定値を更新データとして送信する構成としたが、管理サーバ300にて動作辞書を作成し、作成した動作辞書を更新データとして送信してもよい。この場合、記憶部121に記憶されている動作辞書を、新たに受信した動作辞書に書き換えることにより、動作辞書の更新を行う。
【0086】
また、管理サーバ300は、更新データを事業所サーバ200経由で塵芥収集車1へ送信する構成としたが、直接的に塵芥収集車1へ送信する構成としてもよい。更に、本実施の形態では、管理サーバ300において更新データを生成する構成としたが、事業所サーバ200において更新データを生成してもよい。この場合、事業所サーバ200と塵芥収集車1との間で通信を行うことによって、塵芥収集車1の動作辞書を更新すればよい。
【0087】
管理サーバ300は、更新データを塵芥収集車1へ送信するための通信部303を備える構成としたが、USBメモリなどの記録媒体に更新データを記録するための記録部を備えてもよい。更新データが記録された記録媒体は事業所に提供される。事業所サーバ200は、図に示していない読取装置を用いて、記録媒体に記録された更新データを読み取り、読み取った更新データを塵芥収集車1に送信すればよい。若しくは、塵芥収集車1に読取装置を設け、この読取装置を用いて記録媒体に記録された更新データを読み取り、読み取った更新データを基に動作辞書を更新してもよい。
【0088】
以上のように、実施の形態1では、更新用学習モデルLM11を用いて更新データが生成され、生成された更新データにより塵芥収集車1の動作辞書が更新されるので、塵芥収集車1の使用状況に応じて適切な動作制御が期待できる。
【0089】
(実施の形態2)
実施の形態2では、動作辞書を学習モデルにより構成した形態について説明する。
【0090】
図14は実施の形態2における動作辞書の一例を示す模式図である。実施の形態2における動作辞書は学習モデルLM1により構成される。本実施の形態では、管理サーバ300において事前に生成された学習モデルLM1が動作辞書として塵芥収集車1の記憶部121に記憶されているものとする。学習モデルLM1の生成手順は、前述の更新用学習モデルLM11の生成手順と同様である。学習モデルLM1は、ある条件下での作業データの入力に応じて、積込作業時における排出板21の制御設定値、インチング動作における制御設定値、及び逆流防止動作の制御設定値を出力するよう学習される。動作設定部120は、学習モデルLM1から得られる制御設定値を動作制御部140へ出力する。動作制御部140は、動作設定部120から入力される制御設定値を参照して、作業装置3(積込装置10)の動作を制御することができる。
【0091】
以下、動作辞書(学習モデルLM1)の更新手順について説明する。
図15は実施の形態2に係る管理サーバ300が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。管理サーバ300の制御部301は、作業履歴テーブルTB2に記憶されているデータから訓練データを選択する(ステップS201)。例えば、制御部301は、塵芥をスムーズに圧縮して積み込めたと判断できる作業データ及びそのときの制御設定値を訓練データとして選択すればよい。また、作業員によって選別された訓練データが存在する場合、制御部301は、その訓練データを選択してもよい。
【0092】
制御部301は、更新用学習モデルLM11を再学習するために、選択した訓練データに含まれる作業データを更新用学習モデルLM11に入力し(ステップS202)、更新用学習モデルLM11による演算を実行する(ステップS203)。更新用学習モデルLM11の演算の結果、積込作業時における排出板21の制御設定値、インチング動作における制御設定値、及び逆流防止動作の制御設定値が得られる。
【0093】
制御部301は、更新用学習モデルLM11の演算結果を評価し(ステップS204)、更新用学習モデルLM11の再学習が完了したか否かを判断する(ステップS205)。制御部301は、更新用学習モデルLM11より得られる演算結果と、正解データとして含む制御設定値とに基づく誤差関数(目的関数、損失関数、コスト関数ともいう)を用いて、演算結果を評価することができる。制御部301は、例えば、最急降下法などの勾配降下法により誤差関数を最適化(最小化又は最大化)する課程で、誤差関数が閾値以下(又は閾値以上)となった場合、更新用学習モデルLM11の再学習が完了したと判断する。
【0094】
再学習が完了していないと判断した場合(S205:NO)、制御部301は、各層で用いられるノード間の重み及びバイアスを更新し(ステップS206)、処理をステップS201へ戻す。制御部301は、出力層LY4から入力層LY1に向かって、ノード間の重み及びバイアスを順次更新する誤差逆伝搬法を用いて、各ノード間の重み及びバイアスを更新することができる。
【0095】
再学習が完了したと判断した場合(S205:YES)、制御部301は、再学習済みの更新用学習モデルLM11として記憶部302に記憶させる(ステップS207)。
【0096】
再学習が完了した場合、制御部301は、再学習後の更新用学習モデルLM11を更新データとして塵芥収集車1へ送信する(ステップS208)。管理サーバ300から送信される更新データは、事業所サーバ200を通じて塵芥収集車1に到達する。塵芥収集車1は、管理サーバ300から送信される更新データ(更新用学習モデルLM11)を受信した場合、動作辞書として記憶されている学習モデルLM1を、更新用学習モデルLM11に置き換えることにより、動作辞書の更新を行う。
【0097】
なお、本実施の形態では、管理サーバ300から塵芥収集車1へ再学習後の更新用学習モデルLM11を送信する構成したが、学習モデルLM11を規定するパラメータのみを送信する構成としてもよい。
【0098】
以上のように、実施の形態2では、更新用学習モデルLM11の再学習によって更新データが生成され、生成された更新データにより塵芥収集車1の動作辞書が更新されるので、塵芥収集車1の使用状況に応じて適切な動作制御が期待できる。
【0099】
実施の形態2では、動作辞書(学習モデルLM1)の更新手順について説明したが、認識辞書(学習モデルLM2)についても全く同様の手順にて更新することができる。すなわち、管理サーバ300において、認識辞書に対する更新データを生成するための更新用学習モデルを用意しておき、この更新用学習モデルを上記と同様の手順にて再学習することにより、更新データ(再学習後の更新用学習モデル)を生成することができる。管理サーバ300は、認識辞書の更新データとして、再学習した更新用学習モデルを塵芥収集車1へ送信する。塵芥収集車1は、管理サーバ300から送信される更新データ(更新用学習モデル)を受信した場合、認識辞書として記憶されている学習モデルLM2を再学習後の更新用学習モデルに置き換えることにより、認識辞書の更新を行う。認識辞書として、塵芥投入箱4の内部の塵芥の量や種別や塵芥逆流量を認識するための学習モデルを備える場合についても同様である。
【0100】
(実施の形態3)
実施の形態3では、使用者が塵芥収集車1を乗り換える場合、新しい塵芥収集車に動作辞書を提供する構成について説明する。
【0101】
管理サーバ300は、顧客毎及び車種毎に、更新データを生成することが可能である。管理サーバ300は、生成した顧客毎及び車種毎の更新データを、顧客の識別情報及び車種に関連付けて記憶部302に記憶させる。
図16は更新データ管理テーブルの一例を示す概念図である。更新データ管理テーブルは、顧客の識別情報及び車種に関連付けて、更新データを関連付けて記憶する。更新データは、動作辞書用の更新データと認識辞書用の更新データとを含んでもよい。また、更新データは、各動作における制御設定値を規定したテーブル又は関数であってもよく、作業データを入力した場合に制御設定値を出力するよう学習された更新用の学習モデルであってもよい。なお、新規の顧客に対しては、デフォルトの更新用学習モデルを用意しておき、転移学習などの手法を用いて、新規顧客用の更新データを生成すればよい。
【0102】
図17は実施の形態3における動作辞書の更新手順を説明するフローチャートである。管理サーバ300の制御部301は、使用者に塵芥収集車1の乗り換えが発生したか否かを判断する(ステップS301)。制御部301は、例えば、顧客管理テーブルTB1を参照し、同一の顧客識別情報に関連付けられている車両識別情報が変更されたか否かを判断することにより、塵芥収集車1の乗り換えが発生したか否かを判断することができる。乗り換えが発生していない場合(S301:NO)、制御部301は、以下の処理を行わずに本フローチャートによる処理を終了する。
【0103】
乗り換えが発生したと判断した場合(S301:YES)、制御部301は、使用者の顧客識別情報と、乗り換え後の車両識別情報を基に特定される車種とを検索キーとして、更新データ管理テーブルを検索し、送信すべき更新データを特定する(ステップS302)。
【0104】
制御部301は、特定した更新データを乗り換え先の塵芥収集車へ送信する(ステップS303)。管理サーバ300から送信される更新データは、事業所サーバ200を通じて乗り換え先の塵芥収集車に到達する。塵芥収集車は、管理サーバ300から送信される更新データを受信した場合、動作辞書として記憶されている制御設定値または学習モデルを更新データに置き換えることにより、動作辞書の更新を行う。
【0105】
以上のように、使用者が塵芥収集車1の乗り換えた場合、乗り換え先の塵芥収集車に記憶されている動作辞書を、元の塵芥収集車1にて得られる作業データに基づいて生成した更新データにより更新できるので、塵芥収集車1の乗り換えに伴う違和感を軽減できる。
【0106】
実施の形態3における管理サーバ300は、顧客管理テーブルTB1を参照し、塵芥収集車1の乗り換えの有無を判断する構成としたが、作業履歴テーブルTB2を参照して、塵芥収集車1の乗り換えを推奨したり、台数の増減を事業所に提案してもよい。
図18は提案処理の手順を説明するフローチャートである。管理サーバ300の制御部301は、作業履歴テーブルTB2を参照して、例えば月単位で1日当たりの平均積載重量を算出する(ステップS321)。制御部301は、算出した平均積載重量を基に推奨すべき塵芥収集車の車種を特定する(ステップS322)。例えば、算出した平均積載重量が現在使用している塵芥収集車の最大積載重量(定格)に近い場合、最大積載重量のより大きな車種を推奨すべき車種として特定する。逆に、算出した平均積載重量が現在使用している塵芥収集車の最大積載重量(定格)より十分に小さく、最大積載重量のより小さな車種で対応可能な場合、当該車種を推奨すべき車種として特定する。
【0107】
乗り換えを推奨する場合、制御部301は、推奨すべき塵芥収集車の情報を事業所サーバ200へ送信する(ステップS323)。なお、ステップS322で特定した車種が現在使用している塵芥収集車の車種と同一である場合、ステップS323の処理を省略することができる。
【0108】
次いで、制御部301は、作業履歴テーブルTB2を参照して、月単位の稼働時間を算出する(ステップS324)。制御部301は、算出した稼働時間が第1閾値を超えるか否かを判断し(ステップS325)、第1閾値を超えると判断した場合(S325:YES)、塵芥収集車の台数の増加を推奨する旨の情報を事業所サーバ200へ送信する(ステップS326)。
【0109】
一方、算出した稼働時間が第1閾値以下である場合(S325:NO)、制御部301は、算出した稼働時間が第2閾値未満であるか否かを判断する(ステップS327)。ここで、第2閾値<第1閾値である。算出した稼働時間が第2閾値未満であると判断した場合(S327:YES)、制御部301は、塵芥収集車の台数の減少を推奨する旨の情報を事業所サーバ200へ送信する(ステップS328)。
【0110】
なお、ステップS327において、算出した稼働時間が第2閾値以上であると判断した場合(S327:NO)、稼働時間が適切であると推定できるので、制御部301は、塵芥収集車の増減の提案を行わずに本フローチャートによる処理を終了する。
【0111】
以上の構成により、推奨すべき塵芥収集車の情報を各事業所へ通知し、塵芥収集車の乗り換えや台数の増減を提案することができる。
【0112】
(実施の形態4)
実施の形態4では、ある使用者(使用者Aとする)が使用していた塵芥収集車1を別の使用者(使用者B)に融通する場合、新たな使用者(使用者B)向けに動作辞書を更新する構成について説明する。
【0113】
図19は実施の形態4における動作辞書の更新手順を説明するフローチャートである。管理サーバ300の制御部301は、塵芥収集車1の貸与先が変更されたか否かを判断する(ステップS401)。制御部301は、例えば、顧客管理テーブルTB1を参照し、同一の車両識別情報に関連付けられている顧客識別情報が使用者Aの識別情報から使用者Bの識別情報に切り替わった場合、貸与先の変更があったと判断することができる。貸与先が変更されていない場合(S401:NO)、制御部301は、以下の処理を行わずに本フローチャートによる処理を終了する。
【0114】
貸与先の変更が発生したと判断した場合(S401:YES)、使用者Bの顧客識別情報と、使用者Aに貸与していた塵芥収集車1の車両識別情報を基に特定される車種とを検索キーとして、更新データ管理テーブルを検索し、送信すべき更新データを生成する(ステップS402)。
【0115】
制御部301は、生成した更新データを使用者Bが使用する予定の塵芥収集車1へ送信する(ステップS403)。管理サーバ300から送信される更新データは、事業所サーバ200を通じて塵芥収集車1に到達する。塵芥収集車1は、管理サーバ300から送信される更新データを受信した場合、動作辞書として記憶されている制御設定値または学習モデルを更新データに置き換えることにより、動作辞書の更新を行う。
【0116】
以上のように、塵芥収集車1の貸与先が変更された場合であっても、塵芥収集車1に記憶されている動作辞書を、新たな使用者向けに生成した更新データにより更新できるので、塵芥収集車の変更に伴う違和感を軽減できる。
【0117】
(実施の形態5)
実施の形態5では、ゴミ種別に応じて使用する動作辞書を変更する構成について説明する。
【0118】
図20は実施の形態5における塵芥収集車1が備える動作辞書の一例を示す模式図である。
図20の例では、塵芥収集車1が生ゴミ用の学習モデルLM1a、ペットボトル用の学習モデルLM1b、木材用の学習モデルLM1c、及び段ボール用の学習モデルLM1dを動作辞書として備えることを示している。
【0119】
動作設定部120は、ゴミ種選択操作部122により選択されたゴミ種別に応じて、学習モデルLM1a~LMdの何れかを選択する。動作設定部120は、選択した学習モデルLM1a(LM1b~LM1d)に作業データを入力することにより、ゴミ種別に応じて適切な制御設定値を取得することができる。
【0120】
以上のように、実施の形態5では、作業員によって選択されたゴミ種別に応じて、動作辞書を変更できるので、ゴミ種別に適した作業装置3(積込装置10)の動作制御が行える。
【0121】
本実施の形態では、塵芥収集車1への適用例について説明したが、塵芥収集車に限らず、収容部に対する積載物の積込作業又は降ろし作業を行う作業部を備えた種々の作業車両に適用可能である。例えば、ダンプトラック、脱着車、冷凍冷蔵車、液体運搬車、粉体運搬車、給水車、散水車、ミキサ車、タンクローリ、吸引車、高圧洗浄車、車両運搬車、道路維持作業車、空港作業車、荷室内搬送装置付運搬車などの任意の作業車両(特装車)にも適用可能である。
【0122】
また、本実施の形態では、作業車両として塵芥収集車1の例を出し、塵芥収集車1が備える動作辞書は積込作業を行う場合のみ適用するものであったが、本発明はこれに限らず、排出装置を使用した降ろし作業に動作辞書を適用するようにしてもよい。
【0123】
今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0124】
1 塵芥収集車(作業車両)
2 車台
3 作業装置
4 塵芥投入箱
5 塵芥収容箱
10 積込装置
11 ディフレクタ
12 摺動板
12C 昇降シリンダ
13 圧縮板
13C 回動シリンダ
20 排出装置
21 排出板
21C 排出シリンダ
120 動作設定部
140 動作制御部
160 画像処理部
200 事業所サーバ
201 制御部
202 記憶部
203 第1通信部
204 第2通信部
205 操作部
206 表示部
300 管理サーバ
301 制御部
302 記憶部
303 通信部
304 操作部
305 表示部