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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152918
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/20 20060101AFI20221004BHJP
   H01Q 3/36 20060101ALI20221004BHJP
   H01Q 1/27 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01Q21/20
H01Q3/36
H01Q1/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055865
(22)【出願日】2021-03-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省「HAPSを利用した無線通信システムに係る周波数有効利用技術に関する研究開発」に関する委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安達 尚季
【テーマコード(参考)】
5J021
5J046
【Fターム(参考)】
5J021AA08
5J021AB06
5J021DB03
5J021EA02
5J021FA06
5J021FA07
5J021HA08
5J046AA18
5J046AB03
5J046AB13
5J046NA11
5J046PA07
(57)【要約】
【課題】空中浮遊型の通信装置において、広範な通信エリアを形成すること。
【解決手段】空中浮遊型の通信装置に搭載されるアンテナ装置は、環状に配置された複数のアンテナ素子を有し、地上に第1の通信エリアを形成する第1のアレイアンテナと、環状に配置された複数のアンテナ素子を有し、第1の通信エリアの外側に第2の通信エリアを形成する第2のアレイアンテナと、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中浮遊型の通信装置に搭載されるアンテナ装置であって、
環状に配置され、地上に第1の通信エリアを形成する第1のアレイアンテナと、
環状に配置され、前記第1の通信エリアの外側に第2の通信エリアを形成する第2のアレイアンテナと、
を有するアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1のアレイアンテナは、第1の俯角を有する複数の第1の平面アレイアンテナを有し、
前記第2のアレイアンテナは、第2の俯角を有する複数の第2の平面アレイアンテナを有する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記複数の第1の平面アレイアンテナと前記複数の第2の平面アレイアンテナとは、環状に交互に配置される、
請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記複数の第2の平面アレイアンテナは、前記複数の第1の平面アレイアンテナの上または下に配置される、
請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記アンテナ装置の位置情報および姿勢情報と、地上局の位置情報とに基づいて、前記地上局が前記第1の通信エリアに位置しているか、または、前記第2の通信エリアに位置しているかを判定する制御部、をさらに有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記地上局が前記第1の通信エリアに位置していると判定した場合、前記第1のアレイアンテナを用いて、前記地上局に向けたビームフォーミング制御を行い、
前記地上局が前記第2の通信エリアに位置していると判定した場合、前記第2のアレイアンテナを用いて、前記地上局に向けたビームフォーミング制御を行う、
請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記制御部は、
さらに前記地上局が前記第1の通信エリアと前記第2の通信エリアとの境界から所定距離内に位置しているか否かを判定し、
前記地上局が前記所定距離内に位置していると判定した場合、前記第1のアレイアンテナと前記第2のアレイアンテナとのうち、前記地上局方向を向くアレイアンテナを選択し、
選択した前記アレイアンテナを用いて、前記地上局に向けたビームフォーミング制御を行う、
請求項5または6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記複数の第1の平面アレイアンテナ各々におけるアンテナ素子と、前記複数の第2の平面アレイアンテナ各々におけるアンテナ素子とにおいて、信号の周波数を変換する周波数コンバータが共用される、
請求項2から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第1のアレイアンテナおよび前記第2のアレイアンテナは、デジタルフェイズドアレイで構成される、
請求項1から8のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記第1のアレイアンテナおよび前記第2のアレイアンテナは、アナログフェイズドアレイで構成される、
請求項1から8のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記第1のアレイアンテナおよび前記第2のアレイアンテナは、アナログフェイズドアレイおよびデジタルフェイズドアレイで構成される、
請求項1から8のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
空中浮遊型の通信装置に搭載されるアンテナ装置であって、
環状に配置され、地上に第1の通信エリアを形成する第1のサブアレイアンテナと、
環状に配置され、前記第1の通信エリアの外側に第2の通信エリアを形成する第2のサブアレイアンテナと、を有するアレイアンテナ、
を有するアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高高度プラットフォーム局(HAPS:High Altitude Platform Station)といった、空中浮遊型の中継装置が知られている。
【0003】
空中浮遊型の中継装置に搭載されるアンテナ装置としては、ビームフォーミング可能なフェーズドアレイアンテナが知られている。また、特許文献1の図30には、複数の平面アレイアンテナを備えた6角錐形状のアンテナ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】特開2020-080459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HAPS等の空中浮遊型の中継装置では、より広範な通信エリアの形成が望まれている。
【0006】
本開示の非限定的な実施例は、空中浮遊型の通信装置において、広範な通信エリアを形成するアンテナ装置の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施例は、空中浮遊型の通信装置に搭載されるアンテナ装置であって、環状に配置され、地上に第1の通信エリアを形成する第1のアレイアンテナと、環状に配置され、前記第1の通信エリアの外側に第2の通信エリアを形成する第2のアレイアンテナと、を有する。
【0008】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施例によれば、空中浮遊型の中継装置において、広範な通信エリアを形成できる。
【0010】
本開示の一実施例における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態に係る通信システムの構成例を示した図
図2】HAPSに搭載されるアンテナ装置の斜視図
図3A】平面アレイアンテナの側面図
図3B】平面アレイアンテナの側面図
図4】平面アレイアンテナの正面図
図5】平面アレイアンテナのブロック構成例を示した図
図6】HAPSのブロック構成例を示した図
図7】アンテナグループが形成するエリアを説明する図
図8A】アンテナグループの制御例を説明する図
図8B】アンテナグループの制御例を説明する図
図9】アンテナ装置の動作例を説明するフローチャート
図10図2に示したアンテナ装置の上面図
図11】第2の実施の形態に係るアンテナ装置の斜視図
図12】第3の実施の形態に係るアンテナ装置の斜視図
図13】第4の実施の形態に係るアンテナ装置のブロック構成例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0013】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る通信システム1の構成例を示した図である。図1に示すように、通信システム1は、HAPS11と、地上局12,13と、を有する。
【0015】
HAPS11は、中継装置を搭載したUAV(unmanned aerial vehicle)または無人気球といった飛行体である。HAPS11は、地上に固定された地上局12と地上局13との間の通信を中継する。
【0016】
サービスエリアA11は、HAPS11の通信可能なエリアを示す。HAPS11は、例えば、高度約20kmの高高度を円状のHAPS航路R11を飛行しながら空中に滞在し、地上にサービスエリアA11を形成する。HAPS航路R11は、例えば、サービスエリアA11内に地上局12,13が位置するように決定される。
【0017】
HAPS11は、HAPS航路R11を飛行しながら、サービスエリアA11内の地上局12とのリンクL11と、地上局13とのリンクL12とを定常的に確立し、地上局12と地上局13との間の無線通信回線を提供(中継)する。
【0018】
なお、HAPSは、空中浮遊型の中継装置、中継局、無線局、または通信装置と言い換えられてもよい。地上局は、基地局、無線局、または通信装置と言い換えられてもよい。サービスエリアは、通信エリアまたはエリアと言い換えられてもよい。
【0019】
また、HAPS航路R11は、円状でなくてもよい。例えば、HAPS航路R11は、8の字状であってもよい。
【0020】
図2は、HAPS11に搭載されるアンテナ装置20の斜視図である。図2に示すように、アンテナ装置20は、平面アレイアンテナ21~24(第2のアレイアンテナ)と、平面アレイアンテナ31~34(第1のアレイアンテナ)と、を有する。アンテナ装置20は、例えば、無人飛行体の底部に配置される。
【0021】
平面アレイアンテナ21~24,31~34は、環状に配置される。平面アレイアンテナ21~24,31~34は、アンテナ面(図4に示すアンテナ素子41が形成される面)の法線が水平方向に対し下側を向くように配置される。すなわち、平面アレイアンテナ21~24,31~34のアンテナ面は、HAPS11が空中に浮遊しているとき、地上の方を向く。平面アレイアンテナ21~24,31~34が環状に配置されることにより、平面アレイアンテナ21~24,31~34のアンテナ面に形成されるアンテナ素子も環状に配置される。
【0022】
平面アレイアンテナ21~24各々のアンテナ面の俯角は、同じである。平面アレイアンテナ31~34各々のアンテナ面の俯角は、同じである。なお、「同じ」は、特に断らない限り「略同じ」を含む。また、以下では、「平面アレイアンテナのアンテナ面の俯角」を、「平面アレイアンテナの俯角」と表現することがある。また、以下では、俯角を傾斜角と称する。
【0023】
図3Aは、平面アレイアンテナ21の側面図である。図3Bは、平面アレイアンテナ31の側面図である。
【0024】
図3Aの点線X1は、平面アレイアンテナ21の法線を示す。平面アレイアンテナ21の法線は、水平方向に対し下方を向く。平面アレイアンテナ21は、図3Aに示すように、傾斜角TA1を有する。
【0025】
上記した通り、平面アレイアンテナ21~24は、同じ傾斜角を有する。従って、平面アレイアンテナ22~24も、傾斜角TA1を有する。
【0026】
図3Bの点線X2は、平面アレイアンテナ31の法線を示す。平面アレイアンテナ31の法線は、水平方向に対し下方を向く。平面アレイアンテナ31は、図3Bに示すように、傾斜角TA2を有する。傾斜角TA2は、平面アレイアンテナ21の傾斜角TA1より大きい。
【0027】
上記した通り、平面アレイアンテナ31~34は、同じ傾斜角を有する。従って、平面アレイアンテナ32~34も、傾斜角TA2を有する。
【0028】
傾斜角TA2は、90度未満である。従って、平面アレイアンテナ31~34のアンテナ面は、真下を向かない。傾斜角TA2より小さい傾斜角TA1を有する平面アレイアンテナ31~34のアンテナ面も、真下を向かない。
【0029】
以下では、同じ傾斜角TA1を有する平面アレイアンテナ21~24を、アンテナグループG1と称することがある。同じ傾斜角TA2を有する平面アレイアンテナ31~34を、アンテナグループG2と称することがある。
【0030】
図2の説明に戻る。平面アレイアンテナ21~24,31~34は、隣接する平面アレイアンテナ21~24,31~34の傾斜角が互いに異なるように配置される。
【0031】
例えば、図2のアンテナ装置20を上方から見て、傾斜角TA1を有する平面アレイアンテナ21の左隣りには、傾斜角TA2を有する平面アレイアンテナ31が配置される。傾斜角TA2の平面アレイアンテナ31の左隣には、傾斜角TA1を有する平面アレイアンテナ22が配置される。すなわち、アンテナグループG1の平面アレイアンテナ21~24と、アンテナグループG2の平面アレイアンテナ31~34とは、環状に、交互に配置される。
【0032】
図4は、平面アレイアンテナ21の正面図である。図4に示すように、平面アレイアンテナ21は、縦横方向に並んだ複数のアンテナ素子41を有する。アンテナ素子41は、例えば、垂直偏波と水平偏波とに対応した偏波共用パッチアンテナである。
【0033】
以下では、平面アレイアンテナ21におけるアンテナ素子41の座標(位置)を、P(m,n)で示す。mは、縦方向におけるアンテナ素子41の位置を示す。nは、横方向におけるアンテナ素子41の位置を示す。mは、1以上M以下の整数である。nは、1以上N以下の整数である。
【0034】
なお、図4に示すP(M,N)は、図4に示す平面アレイアンテナ21の例では、M=N=8となる。
【0035】
また、図4では、平面アレイアンテナ21の構成例について説明したが、平面アレイアンテナ22~24,31~34も、図4に示す平面アレイアンテナ21と同様の構成を有する。
【0036】
図5は、平面アレイアンテナ21のブロック構成例を示した図である。図5に示すように、平面アレイアンテナ21は、M×N個のRF(Radio Frequency)ユニット51-1,51-2,…,5M-Nと、ベースバンド(BB)部63と、I/F(Interface)部64と、を有する。
【0037】
RFユニット51-1は、図4に示したP(1,1)のアンテナ素子41と、送受信機61,62と、を有する。
【0038】
送受信機61は、ベースバンド部63から出力されるH偏波(垂直偏波)における信号を無線周波数にアップコンバートし、P(1,1)のアンテナ素子41に出力する。また、送受信機61は、P(1,1)のアンテナ素子41が受信したH偏波における信号をダウンコンバートし、ベースバンド部63に出力する。
【0039】
送受信機62は、ベースバンド部63から出力されるV偏波(水平偏波)における信号を無線周波数にアップコンバートし、P(1,1)のアンテナ素子41に出力する。また、送受信機62は、P(1,1)のアンテナ素子41が受信したV偏波における信号をダウンコンバートし、ベースバンド部63に出力する。
【0040】
RFユニット51-2,…,5M-Nも、RFユニット51-1と同様の構成を有する。ただし、RFユニット5m-nのユニットは、P(m,n)のアンテナ素子41を有する。
【0041】
ベースバンド部63は、デジタルのベースバンド信号を送受信するTRXBB-V/H(1,1),TRXBB-V/H(1,2),…,TRXBB-V/H(M,N)のインターフェースを介して、RFユニット51-1,51-2,…,5M-Nと接続される。ベースバンド部63は、I/F部64から受信した信号に対し、ベースバンド処理を行い、RFユニット51-1,51-2,…,5M-Nに出力する。また、ベースバンド部63は、RFユニット51-1,51-2,…,5M-Nから出力される信号に対し、ベースバンド処理を行い、I/F部64に出力する。
【0042】
なお、図5では、平面アレイアンテナ21のブロック構成例について説明したが、平面アレイアンテナ22~24,31~34も、図5に示す平面アレイアンテナ21と同様のブロック構成を有する。
【0043】
図6は、HAPS11のブロック構成例を示した図である。図6に示すように、HAPS11は、図2に示したアンテナ装置20と、信号処理部72と、I/F部73と、を有する。
【0044】
アンテナ装置20は、図2に示した平面アレイアンテナ21~24,31~34を有する。平面アレイアンテナ21~24は、傾斜角TA1で配置され、図6に示すように、アンテナグループG1に属する。平面アレイアンテナ31~34は、傾斜角TA2で配置され、図6に示すように、アンテナグループG2に属する。また、アンテナ装置20は、図2において図示しなかった制御部71を有する。
【0045】
制御部71は、図5で説明した平面アレイアンテナ21のI/F部64に接続される。平面アレイアンテナ22~24,31~34も、図5で説明したように、平面アレイアンテナ21のI/F部64と同様のI/F部を有し、制御部71に接続される。
【0046】
制御部71は、アンテナ装置20の位置情報および姿勢情報と、地上局12の位置情報とに基づいて、アンテナグループG1を用いて地上局12と通信を行うか、または、アンテナグループG2を用いて地上局12と通信を行うかを判定する。
【0047】
制御部71は、アンテナグループG1を用いて地上局12と通信を行うと判定した場合、アンテナグループG1の平面アレイアンテナ21~24のいずれかを用いて地上局12と通信する。制御部71は、アンテナグループG2を用いて地上局12と通信を行うと判定した場合、アンテナグループG2の平面アレイアンテナ31~34を用いて地上局12と通信する。制御部71は、地上局13との通信においても、上記と同様の判定および制御を行う。
【0048】
信号処理部72は、地上局処理部72aと、地上局処理部72bと、を有し、信号の再生中継処理を行う。
【0049】
例えば、地上局処理部72aは、地上局12から受信した信号を、地上局処理部72aのTX端子から出力し、地上局処理部72bのRX端子に出力する。地上局処理部72bは、RX端子に入力された地上局12の信号を、地上局13に送信する。地上局処理部72bは、地上局13から受信した信号を、地上局処理部72bのTX端子から出力し、地上局処理部72aのRX端子に出力する。地上局処理部72aは、RX端子に入力された地上局13の信号を、地上局12に送信する。
【0050】
なお、図6に示す制御信号は、アンテナ装置20と信号処理部72との間で送受信される制御信号を示す。チャネル1TRXは、地上局12から受信した信号および地上局12に送信する信号を示す。チャネル2TRXは、地上局13から受信した信号および地上局13に送信する信号を示す。
【0051】
I/F部73には、HAPS11の位置情報および姿勢情報が入力される。例えば、I/F部73には、GNSS(global navigation satellite system)装置が接続され、GNSS信号が入力される。また、例えば、I/F部73には、慣性センサーが接続され、加速度信号や角速度信号といった姿勢信号が入力される。後述するが、HAPS11の位置情報および姿勢情報は、地上局12,13の位置情報とともに、アンテナグループG1,G2の制御に用いられる。
【0052】
図7は、アンテナグループG1およびアンテナグループG2が形成するエリアを説明する図である。図7には、図1で説明したサービスエリアA11が示してある。
【0053】
図7に示す実線の円C1と、実線の円C2とで挟まれるエリアA21は、アンテナグループG1の平面アレイアンテナ21~24が形成(提供)する通信エリアを示す。
【0054】
図7に示す実線の円C1と、実線の円C3とで挟まれるエリアA22は、アンテナグループG2の平面アレイアンテナ31~34が形成する通信エリアを示す。
【0055】
従って、HAPS11が提供するサービスエリアA11は、エリアA21とエリアA22とから構成される。
【0056】
なお、図3Aおよび図3Bで説明したように、アンテナグループG1の平面アレイアンテナ21~24の傾斜角TA1は、アンテナグループG2の平面アレイアンテナ31~34の傾斜角TA2より小さい(浅い)。従って、エリアA21は、エリアA22の外側に形成される。
【0057】
アンテナグループG1の平面アレイアンテナ21~24は、例えば、アンテナ面の法線がエリアA21を等分割する境界X11を向くように配置される。これにより、BF(ビームフォーミング)の傾斜角方向における振れ幅(BFの傾斜角方向における上限角および下限角)でカバーする領域(エリアA21)を、境界X11において略等分割できる。
【0058】
アンテナグループG2の平面アレイアンテナ31~34は、例えば、アンテナ面の法線がエリアA22を等分割する境界X12を向くように配置される。これにより、BFの傾斜角方向における振れ幅でカバーする領域(エリアA22)を、境界X12において略等分割できる。
【0059】
このように、エリアA21およびエリアA22を等分割するように、平面アレイアンテナ21~24,31~34を配置した場合、アンテナ装置20は、BFの性能低下を抑制できる。
【0060】
なお、アンテナグループG1の平面アレイアンテナ21~24およびアンテナグループG2の平面アレイアンテナ31~34は、エリアA21およびエリアA22を等分割する配置に限定されない。
【0061】
また、エリアA22は、エリアA21比べてHAPS11の旋回からの離心距離が短く、自由伝搬損失が小さいため、相対的に面積を広くしてもよい。これにより、エリア毎の送信電力の配分が均一化される。
【0062】
図8Aおよび図8Bは、アンテナグループG1およびアンテナグループG2の制御例を説明する図である。図8Aおよび図8Bにおいて、図7と同じ構成要素には同じ符号が付してある。
【0063】
図8Aに示すように、地上局12がエリアA21内に位置している場合、HAPS11は、エリアA21を形成するアンテナグループG1の平面アレイアンテナ21~24のうち、方位角方向において、地上局12方向を向く平面アレイアンテナを選択する。
【0064】
例えば、HAPS11は、アンテナグループG1の平面アレイアンテナ21~24のうち、アンテナ面の法線が、地上局12を基準とした方位角方向±45度の範囲の方向を向いている平面アレイアンテナを選択する。HAPS11は、選択した平面アレイアンテナにおいてBF制御を行い、ビームを地上局12に向ける。
【0065】
図8Bに示すように、地上局12がエリアA22内に位置している場合、HAPS11は、エリアA22を形成するアンテナグループG2の平面アレイアンテナ31~34のうち、方位角方向において、地上局12方向を向く平面アレイアンテナを選択する。
【0066】
例えば、HAPS11は、アンテナグループG2の平面アレイアンテナ31~34のうち、アンテナ面の法線が、地上局12を基準とした方位角方向±45度の範囲の方向を向いている平面アレイアンテナを選択する。HAPS11は、選択した平面アレイアンテナにおいてBF制御を行い、ビームを地上局12に向ける。
【0067】
なお、上記では、地上局12に対するアンテナグループG1およびアンテナグループG2の制御例を説明したが、HAPS11は、地上局13においても同様の制御を行う。
【0068】
また、地上局12を基準とした方位角方向の角度範囲は、±45度に限られない。地上局12を基準とした方位角方向の角度範囲は、平面アレイアンテナの数によって変更してもよい。例えば、平面アレイアンテナの数が多ければ、地上局12を基準とした方位角方向の角度範囲は、小さくなる。
【0069】
図9は、アンテナ装置20の動作例を説明するフローチャートである。アンテナ装置20の制御部71は、例えば、HAPS11が空中浮遊する目標の場所で旋回を開始した場合に、図9に示すフローチャートの処理を開始する。
【0070】
制御部71は、HAPS11の位置情報、地上局12,13の位置情報、およびHAPS11の姿勢情報を取得する(S1)。
【0071】
なお、制御部71は、I/F部73を介して、HAPS11の位置情報および姿勢情報を取得する。地上局12,13の位置情報は、例えば、HAPS11が飛行を開始する前に、制御部71が備えるメモリといった記憶装置にあらかじめ記憶される。位置情報には、例えば、緯度、経度、および高度が含まれる。
【0072】
制御部71は、S1にて取得したHAPS11の位置情報および姿勢情報と、地上局12,13の位置情報とに基づいて、地上局12がエリアA21に位置しているか、または、エリアA22に位置しているかを判定する(S2)。
【0073】
すなわち、制御部71は、アンテナグループG1の平面アレイアンテナ21~24が形成するエリアA21に、地上局12が位置しているか、または、アンテナグループG2の平面アレイアンテナ31~34が形成するエリアA22に、地上局12が位置しているかを判定する。
【0074】
そして、制御部71は、アンテナグループG1の平面アレイアンテナ21~24が形成するエリアA21に、地上局12が位置していると判定した場合(S2の「エリアA21」)、平面アレイアンテナ21~24を用いた、地上局12に向けたBF制御を実行する(S3a~S7a)。また、制御部71は、アンテナグループG2の平面アレイアンテナ31~34が形成するエリアA22に、地上局12が位置していると判定した場合(S2の「エリアA22」)、平面アレイアンテナ31~34を用いた、地上局12に向けたBF制御を実行する(S3b~S7b)。
【0075】
以下、制御部71が、アンテナグループG1の平面アレイアンテナ21~24が形成するエリアA21に、地上局12が位置していると判定した場合の処理(S3a~S7a)を説明する。
【0076】
制御部71は、HAPS11の位置情報、地上局12,13の位置情報、およびHAPS11の姿勢情報を取得する(S3a)。なお、制御部71は、S1の処理と同様の処理によって、HAPS11の位置情報、地上局12,13の位置情報、およびHAPS11の姿勢情報を取得する。
【0077】
制御部71は、S3aにて取得したHAPS11の位置情報および姿勢情報と、地上局12,13の位置情報とに基づいて、アンテナグループG1の平面アレイアンテナ21~24のうち、アンテナ面の法線が、地上局12を基準とした方位角方向から、所定角度範囲内に向いている平面アレイアンテナを選択する(S4a)。
【0078】
制御部71は、S4aにて選択した平面アレイアンテナを用いて、地上局12方向に向くためのBFのウェイトを計算する(S5a)。なお、制御部71は、BFの地上局12に向かう方向を、S3aにて取得したHAPS11の位置情報および姿勢情報と、地上局12,13の位置情報とに基づいて算出する。
【0079】
制御部71は、S4aにて選択した平面アレイアンテナにおいて、S5aにて算出したウェイトを用いてBFを制御(形成)する(S6a)。
【0080】
制御部71は、所定時間経過したか否かを判定する(S7a)。
【0081】
制御部71は、所定時間経過していないと判定した場合(S7aの「No」)、処理をS3aに移行する。すなわち、制御部71は、アンテナグループG1の平面アレイアンテナ21~24を用いたBF制御を行う。
【0082】
一方、制御部71は、所定時間経過したと判定した場合(S7aの「Yes」)、処理をS1に移行する。そして、制御部71は、S2にて、地上局12が、エリアA21に位置しているか、または、エリアA22に位置しているかを判定する。
【0083】
つまり、地上局12が傾斜角方向におけるエリアA21またはエリアA22に位置しているか否かの判断(S2の処理)の頻度は、BF制御(S3a~S6a)の頻度より少ない。これは、HAPS11が空中を旋回しても、HAPS11に対する地上局12の傾斜角方向における変動が小さいためである。
【0084】
なお、S3b~S7bは、アンテナグループG2の平面アレイアンテナ31~34におけるBF制御の処理であり、S3a~37aの処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0085】
また、制御部71は、地上局13についても、図9のフローチャートの処理を実行する。
【0086】
S5aのウェイト計算の例について説明する。制御部71は、HAPS11の位置情報および姿勢情報と、地上局12の位置情報とに基づいて、S4aにて選択した平面アレイアンテナのアンテナ面に対する地上局12の方向を計算する。すなわち、制御部71は、S4aにて選択した平面アレイアンテナで形成するビーム方向「r0」を計算する。そして、制御部71は、計算したビーム方向「r0」にビームが向くウェイト「w0」を、S4aにて選択した平面アレイアンテナのM×N個の各RFユニット(例えば、図5のRFユニット51-1,51-2,…,5M-Nを参照)を用い、BF制御を行う。
【0087】
P(m,n)のRFユニットで用いるウェイトw0(m,n)は、式(1)の値を用いて算出される。ここで、p(m,n)は、アンテナ面中心からアンテナ素子P(m,n)へのベクトルを示す。jは、虚数単位を示す。kは、使用する周波数での波数を示す。r0は、ビーム方向を示すベクトルである。ur0は、r0方向の単位ベクトルである。
【0088】
w0(m,n)=exp(-j×k×(ur0・p(m,n))) (1)
【0089】
以上の処理によって、アンテナ装置20は、HAPS11の位置および姿勢変化に追従したBF制御を行うことができる。
【0090】
以上説明したように、HAPS11に搭載されるアンテナ装置20は、環状に配置され、地上にエリアA22を形成する平面アレイアンテナ31~34と、環状に配置され、エリアA22の外側にエリアA21を形成する平面アレイアンテナ21~24と、を有する。
【0091】
このように、アンテナ装置20は、平面アレイアンテナ31~34によってエリアA22を形成し、その外側に平面アレイアンテナ31~34によってエリアA21を形成するので、広範な通信エリアを形成できる。
【0092】
また、アンテナ装置20は、アンテナ面が真下を向く平面アレイアンテナを有さない。すなわち、アンテナ装置20は、底面(地上を向く面)にアンテナ素子を備えない。これにより、アンテナ装置20は、HAPS11のヨー回転による偏波制御が不要となる。
【0093】
例えば、アンテナ面が真下を向く平面アレイアンテナは、HAPS11のヨー回転と同じ角度で回転する。このため、地上局12,13との通信路の偏波は、HAPS11のヨー回転に応じて回転する。アンテナ面が真下を向く平面アレイアンテナにおいて、安定した通信路を形成するには、ヨー回転する偏波に追従する偏波制御が必要となり、BF制御が複雑になる。
【0094】
これに対し、アンテナ装置20は、アンテナ面が真下を向く平面アレイアンテナを有さない。アンテナ装置20は、例えば、アンテナグループG2の平面アレイアンテナ31~34によって、アンテナ面が真下を向く平面アレイアンテナが形成するエリアをカバーする。これにより、アンテナ装置20は、HAPS11のヨー回転による偏波制御が不要となる。
【0095】
なお、図4では、例として8×8アンテナ素子の平面アレイアンテナの例を示したが、アンテナ素子数はこれに限定されない。アンテナ素子数(M×N)は、HAPS11と地上局との間の回線設計に従い、決定されてもよい。
【0096】
また、アンテナ装置20には、縦横の数が異なる(M≠N)平面アレイアンテナが用いられてもよい。制御部71は、アンテナ素子の位置P(m、n)に従い、式(1)によりウェイトを計算することで、HAPS11の位置および姿勢変化に追従したBF制御が可能となる。
【0097】
また、平面アレイアンテナ21~24,31~34は、デジタルフェイズドアレイで構成されてもよい。これにより、アンテナ装置20は、平面アレイアンテナ21~24,31~34がアナログフェイズドアレイで構成される場合よりも、BFを高精度に制御できる。
【0098】
また、平面アレイアンテナ21~24,31~34は、アナログフェイズドアレイで構成されてもよい。これにより、アンテナ装置20は、平面アレイアンテナ21~24,31~34がデジタルフェイズドアレイで構成される場合よりも、消費電力を低減できる。
【0099】
また、平面アレイアンテナ21~24,31~34は、アナログフェイズドアレイおよびデジタルフェイズドアレイで構成されてもよい。これにより、アンテナ装置20は、アナログフェイズドアレイで消費電力を低減する一方、アナログフェイズドアレイで高精度に制御できないBFを、デジタルフェイズドアレイで補うことができる。
【0100】
また、アレイアンテナは、平面アレイアンテナでなくてもよい。アレイアンテナのアンテナ面は、曲面であってもよい。
【0101】
また、アンテナ装置20は、アンテナ面の傾斜角が異なるアンテナグループG1,G2の平面アレイアンテナ21~24,31~34によって、サービスエリアA11を同心円状のエリアA21,A22に分割する。アンテナ装置20は、アンテナグループG1の平面アレイアンテナ21~24の、傾斜角方向におけるアンテナ面の向きが、エリアA21を等分するように設定される。アンテナ装置20は、アンテナグループG2の平面アレイアンテナ31~34の、傾斜角方向におけるアンテナ面の向きが、エリアA22を等分するように設定される。アンテナ装置20は、地上局12,13が位置するエリアA21,A22に基づいて、BFするアンテナグループG1,G2を選択する。アンテナ装置20は、HAPSの座標(位置)および姿勢と、地上局の位置とに基づいてビーム方向およびウェイトを計算し、選択したアンテナグループの平面アレイアンテナを用いて、BF制御を行う。
【0102】
これにより、アンテナ装置20は、HAPS11の位置および姿勢変化に追従したBF制御ができる。また、アンテナ装置20は、傾斜角が異なるアンテナグループG1,G2の平面アレイアンテナ21~24,31~34を用いて、サービスエリアA11をエリアA21,A22に分割することで、傾斜角方向におけるBFの振れ角幅を低減し、アンテナ面の地上局12,13に対する角度差による利得偏差を抑制できる。また、アンテナ装置20は、BFのダイナミックレンジを軽減し、消費電力を低減できる。なお、HAPS11では、搭載されたバッテリーや太陽電池などの限られた電力容量で搭載機器を駆動するため、消費電力の低減は重要である。
【0103】
(変形例1)
変形例1では、アンテナ装置20は、地上局12がエリアA21,A22の境界付近(例えば、図7の円C1付近)に位置する場合、アンテナグループG1,G2判定に基づいた平面アレイアンテナによるBF制御を実行しない。すなわち、アンテナ装置20は、地上局12がエリアA21,A22の境界付近に位置する場合、アンテナグループG1,G2を区別せず、平面アレイアンテナ21~24,31~34において、BF制御する平面アレイアンテナを選択する。
【0104】
図10は、図2に示したアンテナ装置20の上面図である。図10において、図2と同じ構成要素には同じ符号が付してある。
【0105】
アンテナ装置20の制御部71は、例えば、図9で説明したS1の処理の後、地上局12が、エリアA21,A22の境界(例えば、図7の円C1)から所定距離内に位置しているか否かを判定する。
【0106】
制御部71は、地上局12が、エリアA21,A22の境界から所定距離内に位置していないと判定した場合、図9で説明したS2以降の処理を実行する。
【0107】
一方、制御部71は、地上局12が、エリアA21,A22の境界から所定距離内に位置していると判定した場合、HAPS11の位置情報、地上局12,13の位置情報、およびHAPS11の姿勢情報を取得する。
【0108】
制御部71は、取得したHAPS11の位置情報および姿勢情報と、地上局12,13の位置情報とに基づいて、平面アレイアンテナ21~24と平面アレイアンテナ31~34とのうち、アンテナ面の法線が、地上局12を基準とした方位角方向の所定角度範囲内に向いている平面アレイアンテナを選択する。
【0109】
すなわち、制御部71は、アンテナグループG1,G2を区別せずに、平面アレイアンテナ21~24と平面アレイアンテナ31~34との中から、アンテナ面の法線が、地上局12を基準とした方位角方向の、所定角度範囲内(図10に示す角度範囲AZ21~AZ24,AZ31~AZ34)に向いている平面アレイアンテナを選択する。
【0110】
例えば、地上局12は、エリアA21,A22の境界から所定距離内に位置し、図10に示す角度範囲AZ23に示す角度範囲内に位置するとする。この場合、制御部71は、平面アレイアンテナ23を選択する。
【0111】
制御部71は、選択した平面アレイアンテナを用いて、地上局12方向に向くためのBFのウェイトを計算する。
【0112】
制御部71は、選択した平面アレイアンテナにおいて、算出したウェイトを用いてBFを制御する。
【0113】
制御部71は、所定時間経過したか否かを判定し、所定時間経過していなければ、アンテナグループG1,G2を区別しない、平面アレイアンテナの選択処理を実行する。制御部71は、所定時間経過していれば、地上局12が、エリアA21,A22の境界から所定距離内に位置しているか否かを判定する。
【0114】
アンテナ装置20は、上記の処理によって、消費電力の増加を抑制できる。また、アンテナ装置20は、効率的なBF制御ができる。
【0115】
例えば、エリアA21,A21の境界付近においては、HAPS11の姿勢変化によって、利得のよいアンテナグループG1,G2が頻繁に変動する一方で、アンテナグループG1と、アンテナグループG2とのアンテナ利得の差は大きくない。そこで、アンテナ装置20は、上記した通り、地上局12がエリアA21,A21の境界付近に位置する場合には、アンテナグループG1,G2を区別せず、平面アレイアンテナ21~24,31~34の中から、BF制御する平面アレイアンテナを選択する。これにより、アンテナ装置20は、アンテナ利得の低いグループアンテナが、所定時間、選択される状態(図9のS7a,S7bを参照)を防止し、消費電力の増加を抑制する。また、アンテナ装置20は、効率的なBF制御ができる。
【0116】
以上説明したように、制御部71は、地上局12,13がエリアA21とエリアA22との境界から所定距離内に位置しているか否かを判定し、地上局12,13が所定距離内に位置していると判定した場合、平面アレイアンテナ21~24,31~34のうち、地上局12,13方向を向くアレイアンテナを選択する。そして、制御部71は、選択した平面アレイアンテナを用いて地上局12,13に向けたBF制御を行う。これにより、アンテナ装置20は、消費電力を低減し、効率的なBF制御ができる。
【0117】
(第2の実施の形態)
図11は、第2の実施の形態に係るアンテナ装置80の斜視図である。図11に示すように、アンテナ装置80は、平面アレイアンテナ81~84,86~89を有する。
【0118】
平面アレイアンテナ81~84は、例えば、図3Aで示した傾斜角TA1を有する。平面アレイアンテナ81~84は、アンテナグループG1を形成する。
【0119】
平面アレイアンテナ86~89は、例えば、図3Bで示した傾斜角TA2を有する。平面アレイアンテナ86~89は、アンテナグループG2を形成する。
【0120】
アンテナグループG1の平面アレイアンテナ81~84は、アンテナグループG2の平面アレイアンテナ86~89の上に配置される。
【0121】
アンテナ装置80は、上下方向に、傾斜角の異なるアンテナグループの平面アレイアンテナが配置されることで、水平方向における専有面積を抑制できる。また、アンテナ装置80は、HAPS11の搭載条件において、水平方向の専有面積が制限される場合、容易にHAPS11に搭載されることができる。
【0122】
アンテナ装置80の制御部は、図9のフローチャートと同様の処理を実行する。アンテナ装置80の制御部は、アンテナ素子の位置に対応した式(1)のウェイトを用いることで、HAPS11の位置および姿勢変化に追従したBF制御を行う。
【0123】
以上説明したように、平面アレイアンテナ81~84は、平面アレイアンテナ86~89の上に配置される。これにより、アンテナ装置80は、HAPS11の位置および姿勢変化に追従したBF制御を行うことができ、水平方向における専有面積を抑制できる。
【0124】
なお、平面アレイアンテナ81~84は、平面アレイアンテナ86~89の下に配置されてもよい。
【0125】
また、アンテナグループG1の平面アレイアンテナ81~84の数と、アンテナグループG2の平面アレイアンテナ86~89の数とは、同じでなくてもよい。
【0126】
例えば、図11において、アンテナグループG1の平面アレイアンテナ81~84各々の間に、傾斜角TA1を有する平面アレイアンテナを1つずつ配置してもよい。例えば、アンテナグループG1の平面アレイアンテナの数を8とし、アンテナグループG2の平面アレイアンテナの数を4としてもよい。
【0127】
(第3の実施の形態)
図12は、第3の実施の形態に係るアンテナ装置90の斜視図である。図12に示すように、アンテナ装置90は、アレイアンテナ91~94を有する。
【0128】
アレイアンテナ91は、図12に示すように、平面のサブアレイアンテナ91a~91dを有する。サブアレイアンテナ91a~91d各々には、例えば、同じ数のアンテナ素子が形成される。
【0129】
一番下のサブアレイアンテナ91aの傾斜角は、最も大きい。下から2番目のサブアレイアンテナ91bの傾斜角は、2番目に大きい。下から3番目のサブアレイアンテナ91cの傾斜角は、3番目に大きい。一番上のサブアレイアンテナ91dの傾斜角は、最も小さい。すなわち、サブアレイアンテナ91a~91dの傾斜角は、上のサブアレイアンテナほど、小さくなる。
【0130】
アレイアンテナ92~94もアレイアンテナ91と同様に、サブアレイアンテナを有する。
【0131】
アレイアンテナ91~94各々の一番下のサブアレイアンテナは、アンテナグループG1を構成し、第1の通信エリアを形成する。アレイアンテナ91~94各々の下から2番目のサブアレイアンテナは、アンテナグループG2を構成し、第1の通信エリアの外側に第2の通信エリアを形成する。アレイアンテナ91~94各々の下から3番目のサブアレイアンテナは、アンテナグループG3を構成し、第2の通信エリアの外側に第3の通信エリアを形成する。アレイアンテナ91~94各々の下から4番目のサブアレイアンテナは、アンテナグループG4を構成し、第3の通信エリアの外側に第4の通信エリアを形成する。
【0132】
アンテナ装置90の制御部は、傾斜角方向において、地上局12,13の位置に対応するアンテナグループを選択する。制御部は、選択したアンテナグループのサブアレイアンテナにおいて、式(1)のウェイトを用いてBF制御を行う。
【0133】
以上説明したように、アレイアンテナ91~94各々は、地上に異なる通信エリアを形成するサブアレイアンテナを有する。これにより、アンテナ装置90は、RFユニット(例えば、図5のRFユニット51-1,51-2,…,5M-Nを参照)の稼働数を低減でき、消費電力を低減できる。
【0134】
なお、図12では、上から順にサブアレイアンテナの傾斜角を大きくした構成例を示したが、下から順に傾斜角が大きくなるようにサブアレイアンテナを構成してもよい。
【0135】
(第4の実施の形態)
図13は、第4の実施の形態に係るアンテナ装置20のブロック構成例を示した図である。図13に示すように、アンテナ装置20は、RFユニット101と、SW(スイッチ)103a,103bと、TX-H線(H偏波送信線)104aと、RX-H線(H偏波受信線)104bと、TX-V(V偏波送信線)線105aと、RX-V(V偏波受信線)線105bと、RF-BB変換部106と、ベースバンド部111と、を有する。
【0136】
RFユニット101は、P(m,n)のアンテナ素子41と、RF部102a,102bとを有する。RF部102a,102bの各々は、送受信共用器と、PA(パワーアンプ)と、LNA(低ノイズアンプ)と、を有する。
【0137】
RF部102aの送受信共用器は、アンテナ素子41のH偏波端子に接続される。RF部102aのPAは、SW103aのオンによって、TX-H線104aに接続される。RF部102aのLNAは、SW103aのオンによって、RX-H線104bに接続される。
【0138】
RF部102bの送受信共用器は、アンテナ素子41のV偏波端子に接続される。RF部102bのPAは、SW103bのオンによって、TX-V線105aに接続される。RF部102bのLNAは、SW103bのオンによって、RX-V線105bに接続される。
【0139】
RF-BB変換部106は、アップコンバータ107aと、DAC(Digital to Dnalog Converter)108aと、ダウンコンバータ109aと、ADC(Analog-to-Digital Converter)110aと、を有する。また、RF-BB変換部106は、アップコンバータ107bと、DAC108bと、ダウンコンバータ109bと、ADC110bと、を有する。
【0140】
アップコンバータ107aは、SW103aのオンによって、TX-H線104aに接続される。従って、RF部102aのPAは、SW103aのオンおよびオフによって、アップコンバータ107aに接続され、また、アップコンバータ107aとの接続が切断される。
【0141】
ダウンコンバータ109aは、SW103aのオンによって、RX-H線104bに接続される。従って、RF部102aのLNAは、SW103aのオンおよびオフによって、ダウンコンバータ109aに接続され、また、ダウンコンバータ109aとの接続が切断される。
【0142】
アップコンバータ107bは、SW103bのオンによって、TX-V線105aに接続される。従って、RF部102bのPAは、SW103bのオンおよびオフによって、アップコンバータ107bに接続され、また、アップコンバータ107bとの接続が切断される。
【0143】
ダウンコンバータ109bは、SW103bのオンによって、RX-V線105bに接続される。従って、RF部102bのLNAは、SW103bのオンおよびオフによって、ダウンコンバータ109bに接続され、また、ダウンコンバータ109bとの接続が切断される。
【0144】
ベースバンド部111から出力されるH偏波送信デジタル信号は、DAC108aによってアナログ信号に変換される。アナログ信号は、アップコンバータ107aによってRF周波数帯の信号に変換される。
【0145】
ベースバンド部111から出力されるV偏波送信デジタル信号は、DAC108bによってアナログ信号に変換される。アナログ信号は、アップコンバータ107bによってRF周波数帯の信号に変換される。
【0146】
RX-H線104bを伝送するH偏波受信信号は、ダウンコンバータ109aによってベースバンド信号に変換される。ベースバンド信号は、ADC110aによってH偏波受信デジタル信号に変換される。H偏波受信デジタル信号は、ベースバンド部111に出力される。
【0147】
RX-H線105bを伝送するH偏波受信信号は、ダウンコンバータ109bによってベースバンド信号に変換される。ベースバンド信号は、ADC110bによってH偏波受信デジタル信号に変換される。H偏波受信デジタル信号は、ベースバンド部111に出力される。
【0148】
ベースバンド部111は、地上局12,13に送信する信号のベースバンド処理を行う。また、ベースバンド部111は、地上局12,13から受信した信号のベースバンド処理を行う。
【0149】
アンテナ装置20は、RF-BB変換部106をM×N個有する。すなわち、アンテナ装置20は、1つの平面アレイアンテナが有するアンテナ素子数分、RF-BB変換部106を有する。1つの平面アレイアンテナが有するアンテナ素子数分のRF-BB変換部106各々には、平面アレイアンテナ21~24,31~34各々において、位置が対応するアンテナ素子を有するRFユニット101が、SWを介して接続される。
【0150】
例えば、第1-1のRF-BB変換部106には、平面アレイアンテナ21~24,31~34のP(1,1)のアンテナ素子を有するRFユニット101が、SWを介して接続される。第1-2のRF-BB変換部106には、平面アレイアンテナ21~24,31~34のP(1,2)のアンテナ素子を有するRFユニット101が、SWを介して接続される。第1-3のRF-BB変換部106には、平面アレイアンテナ21~24,31~34のP(1,3)のアンテナ素子を有するRFユニット101が、SWを介して接続される。以下同様に、第M-NのRF-BB変換部106には、平面アレイアンテナ21~24,31~34のP(M,N)のアンテナ素子を有するRFユニット101が、SWを介して接続される。
【0151】
そして、例えば、図9のS4a,S4bにて選択された平面アレイアンテナのM×N個のRFユニットが、SWのオンおよびオフ制御によって、M×N個のRF-BB変換部106に接続される。
【0152】
すなわち、M×N個のRF-BB変換部106は、平面アレイアンテナ21~24,31~34のうちの選択された平面アレイアンテナにおけるM×N個のアンテナ素子(RFユニット)と、SWを介して接続される。
【0153】
制御部71は、BF制御において、平面アレイアンテナ21~24,31~34を選択する。制御部71は、SW103a,103bによって、選択した平面アレイアンテナに対応するRFユニットに対し、TX信号およびRX信号の接続を切り替える。例えば、制御部71は、図9のS4a,4bの平面アレイアンテナの選択に応じて、SW103a,103bのオンおよびオフを切り替える。これにより、地上局12,13方向のビームが形成される。
【0154】
以上説明したように、アンテナ装置20は、平面アレイアンテナ21~24,31~34各々のアンテナ素子各々において、信号の周波数を変換するRF-BB変換部106が共用される。これにより、アンテナ装置20は、消費電力を低減できる。
【0155】
なお、上記では、アンテナ装置20のブロック構成例について説明したが、図13のブロック構成例は、アンテナ装置80,90にも適用できる。
【0156】
上述の実施の形態においては、各構成要素に用いる「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0157】
以上、図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかである。そのような変更例または修正例についても、本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態における各構成要素は任意に組み合わされてよい。
【0158】
本開示はソフトウェア、ハードウェア、又は、ハードウェアと連携したソフトウェアで実現することが可能である。上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、部分的に又は全体的に、集積回路であるLSIとして実現され、上記実施の形態で説明した各プロセスは、部分的に又は全体的に、一つのLSI又はLSIの組み合わせによって制御されてもよい。LSIは個々のチップから構成されてもよいし、機能ブロックの一部または全てを含むように一つのチップから構成されてもよい。LSIはデータの入力と出力を備えてもよい。LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0159】
集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、汎用プロセッサ又は専用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。本開示は、デジタル処理又はアナログ処理として実現されてもよい。
【0160】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本開示は、空中に浮遊し、地上の無線局間の通信を中継する中継装置に適用できる。
【符号の説明】
【0162】
1 通信システム
11 HAPS
12,13 地上局
20 アンテナ装置
21~24,31~34 平面アレイアンテナ
41 アンテナ素子
51-1,51-2,…,5M-N RFユニット
61,62 送受信機
63 ベースバンド部
64 I/F部
71 制御部
72 信号処理部
72a,72b 地上局処理部
73 I/F部
80 アンテナ装置
81~84,86~89 平面アレイアンテナ
90 アンテナ装置
91~94 アレイアンテナ
91a~91d サブアレイアンテナ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13