(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152920
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】遊星歯車装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/28 20060101AFI20221004BHJP
F16H 57/031 20120101ALI20221004BHJP
【FI】
F16H1/28
F16H57/031
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055874
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久井 孝喜
(72)【発明者】
【氏名】山田 和貴
【テーマコード(参考)】
3J027
3J063
【Fターム(参考)】
3J027FA11
3J027FB01
3J027FB32
3J027GC13
3J027GC24
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE01
3J027GE05
3J027GE27
3J063AA01
3J063AA27
3J063AB12
3J063AC01
3J063BA09
3J063BB23
3J063CD41
3J063CD67
3J063XB07
(57)【要約】
【課題】キャリアの回転の軸ぶれを抑制し、安定して駆動できる。
【解決手段】太陽歯車と遊星歯車とを内部に収容するハウジングの軸方向一端部に配置されるハウジングカバーと、内部で前記ハウジングカバーに軸方向で隣接して配置され、遊星歯車の軸を軸方向一端部側から支持するキャリアカバーと、を有し、ハウジングカバー及びキャリアカバーにおいて互いに対向する一対の対向部のうち、一方の対向部は、軸方向で径が異なる錘状部を有し、他方の対向部は、錘状部の軸と同一軸心で錘状部の周面を摺動する摺動部を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽歯車と遊星歯車とを内部に収容するハウジングの軸方向一端部に配置されるハウジングカバーと、
前記内部で前記ハウジングカバーに前記軸方向で隣接して配置され、前記遊星歯車の軸を前記軸方向一端部側から支持するキャリアカバーと、
を有し、
前記ハウジングカバー及び前記キャリアカバーにおいて互いに対向する一対の対向部のうち、一方の対向部は、軸方向で径が異なる錘状部を有し、他方の対向部は、前記錘状部の軸と同一軸心で前記錘状部の周面を摺動する摺動部を有する、
遊星歯車装置。
【請求項2】
前記錘状部は、中央側が外周側に対して凹となる錘状凹部を有し、
前記摺動部は、中央部が外周部に対して凸となる錘状凸部を有する、
請求項1に記載の遊星歯車装置。
【請求項3】
前記錘状凹部は、中央側が凹となるテーパ面であり、前記錘状凸部は、中央側が凸となるテーパ面である、
請求項2に記載の遊星歯車装置。
【請求項4】
前記錘状凹部は、凹球面であり、前記錘状凸部は、凸球面である、
請求項2に記載の遊星歯車装置。
【請求項5】
前記一対の対向部は、前記太陽歯車の径方向で前記遊星歯車の軸心よりも内側に配置される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の遊星歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊星歯車装置は、入力された回転を減速して出力する減速機として、自動車及びロボット等の様々な機械装置に用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、モータの回転を減速して出力軸に伝達する遊星歯車装置が開示されている。このような遊星歯車装置は、太陽歯車や内歯車、キャリア等の構成部材をハウジング内に収容している。
【0004】
具体的には、遊星歯車装置では、太陽歯車は、ハウジング内で、ハウジングの一端面側から挿入されるモータの駆動軸に固定される。太陽歯車と、太陽歯車を囲むように太陽歯車と同一軸心で配置される内歯車との間には、双方に噛み合う遊星歯車が配置されている。遊星歯車は、太陽歯車と同一軸心で回転可能に設けられたキャリアに、太陽歯車を中心に公転し、且つ、自転するように支持されており、太陽歯車の回転を、キャリアの回転に変換して、その回転力を出力する。
【0005】
ところで、遊星歯車装置をモータに取り付けて用いる場合、特に、自動車のバックドアの開閉に用いる場合では、車内に配置されることから静音性の高い遊星歯車装置が望まれている。
【0006】
このように歯車が高速回転し且つ静音性の高い遊星歯車装置では、騒音発生の原因となる加工誤差や組立誤差を吸収するために、キャリアを軸受けで支持しない、所謂、「フローティング」支持構造により、支持している。これにより、各遊星歯車に、駆動により加わる荷重を均等となるように配分させて、誤差による変動荷重が極力小さくなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、キャリアを「フローティング」支持する構造では、実際には、キャリアは、太陽歯車と内歯車と噛み合う遊星歯車を介して支持された状態であるので、キャリアの高速回転時に、キャリアの軸ぶれが発生し、キャリアの回転が不安定になるという問題がある。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、キャリアの回転の軸ぶれを抑制し、安定して駆動する遊星歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の遊星歯車装置の一つの態様は、
太陽歯車と遊星歯車とを内部に収容するハウジングの軸方向一端部に配置されるハウジングカバーと、
前記内部で前記ハウジングカバーに前記軸方向で隣接して配置され、前記遊星歯車の軸を前記軸方向一端部側から支持するキャリアカバーと、
を有し、
前記ハウジングカバー及び前記キャリアカバーにおいて互いに対向する一対の対向部のうち、一方の対向部は、軸方向で径が異なる錘状部を有し、他方の対向部は、前記錘状部の軸と同一軸心で前記錘状部の周面を摺動する摺動部を有する構成を採る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キャリアの回転の軸ぶれを抑制し、安定して駆動する遊星歯車装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る一実施の形態の遊星歯車装置を有するアクチュエータの説明に供する斜視図である。
【
図2】本発明に係る一実施の形態の遊星歯車装置の背面側斜視図である。
【
図3】遊星歯車装置の軸線方向に沿った縦断面図である。
【
図4】本発明に係る一実施の形態の遊星歯車装置の分解斜視図である。
【
図6】ハウジングに収容される一実施の形態の遊星歯車装置における遊星歯車機構の背面側斜視図である。
【
図8】内歯車を外した遊星歯車機構の要部構成を示す前方側分解斜視図である。
【
図9】内歯車を外した遊星歯車機構の要部構成を示す後方前方側分解斜視図である。
【
図10】キャリアカバーとハウジングカバーの摺動部分の部分拡大断面図である。
【
図11】ハウジングカバーの係合爪部とハウジングの係合孔との関係を示す側面図である。
【
図12】
図3のハウジングカバーとハウジングとの係合関係を示す拡大部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る一実施の形態の遊星歯車装置を有するアクチュエータを示す斜視図であり、
図2は、同遊星歯車装置の背面側斜視図であり、
図3は、遊星歯車装置の軸線方向に沿った縦断面図である。
図4は、本発明に係る一実施の形態の遊星歯車装置の分解斜視図である。
【0015】
以下の説明では、
図1及び
図3における左右方向を軸方向という。また、
図1及び
図3における左方向を軸方向における一方側といい、右方向を軸方向における他方側という。軸方向とは、特に断らない限り、遊星歯車装置を構成する各部材の軸方向を意味する。
【0016】
また、
図1及び
図3において軸方向に直交する方向を径方向という。径方向とは、特に断らない限り、遊星歯車装置を構成する各部材の径方向を意味する。径方向における外側とは、径方向において、遊星歯車装置を構成する各部材の中心から離れる方向を意味する。一方、径方向における内側とは、径方向において、遊星歯車装置を構成する各部材の中心に近づく方向を意味する。
【0017】
また、
図1及び
図3において、軸方向に平行な遊星歯車装置の中心軸回りの方向を周方向という。周方向とは、特に断らない限り、遊星歯車装置を構成する各部材の周方向を意味する。
【0018】
<アクチュエータ1>
図1~
図4に示す遊星歯車装置3は、モータ10に取り付けられて、アクチュエータ1を構成する。アクチュエータ1は、例えば、自動車のバックドアの開閉に用いられる自動車用の電動バックドアのアクチュエータとして使用される。但し、アクチュエータ1の用途は、これに限定されるものではない。
【0019】
<モータ>
図1に示すモータ10は、モータ本体11と、回転軸12と、を有する。モータ10は、制御部(不図示)の制御下で作動し、回転軸12を回転させて遊星歯車装置3を駆動する。
【0020】
モータ本体11は、軸方向における他方側の端面(
図1における右端面)に、遊星歯車装置3を支持するための支持面111を有する。モータ本体11は、支持面111に、複数(本実施形態の場合、2個)のモータ側の固定孔112を有する。
【0021】
モータ側の固定孔112は、例えば、挿入相手と係合する係合孔であり、支持面111において、周方向における等間隔(180°間隔)位置に設けられている。モータ側の固定孔112には、遊星歯車装置3をモータ10に固定するための遊星歯車側の遊星側固定部と係合する。モータ側の固定孔112と遊星側固定部とは、例えば、モータ側の固定孔112と、孔とした遊星側固定部に、ボルト等の締結部品(不図示)が螺合されて、遊星歯車装置3を固定してもよい。遊星側固定部は、本実施の形態では、
図2及び
図3に示すように、遊星歯車装置3が有する凸状の遊星側固定部421a、421bである。これら遊星側固定部421a、421bを、モータ側の固定孔112(112a、112b)に圧入することにより、モータ10に遊星歯車装置3が固定されている。モータ10は、後述の遊星歯車装置3を支持するための部材でもある。なお、モータの種類は、特に限定されず、従来から知られている種々の電動モータであってよい。
【0022】
<遊星歯車装置>
遊星歯車装置3は、モータ10から入力された回転を、所定の減速比で減速して出力する。遊星歯車装置3は、
図1~
図4に示すように、ハウジング4と、ハウジング4に収容された遊星歯車機構6と、ハウジングカバー41を有する。
【0023】
<ハウジング4>
ハウジング4は、本実施の形態では、遊星歯車機構6として接続された複数の遊星歯車機構7、8をハウジングカバー41とともに収容し、複数段の減速を実現している。ハウジング4では、遊星歯車機構6は、モータ10の駆動による回転軸12の回転を2段階で減速して出力軸接続部87から出力する。
【0024】
<ハウジングカバー41>
ハウジングカバー41は、例えば、モータ10を遊星歯車装置3に取り付けるための部材である。
【0025】
ハウジングカバー41は、ハウジング4の軸方向一端部に配置される。
ハウジングカバー41は、中央部に貫通孔40aを有しており、円輪状の固定部42と、筒状の接続筒部43と、を有する。ハウジングカバー41の固定部42及び接続筒部43は、例えば合成樹脂製で射出成形により一体成形される。貫通孔40aには、モータ10の回転軸12が挿通される。
【0026】
固定部42は、軸方向外面側が、モータ本体11の支持面111に固定される部分である。固定部42は、複数(本実施形態の場合、2個)の遊星側固定部421a、421bを有する。遊星側固定部421a、421bは、軸方向外側面402で軸方向に突出する凸状に形成される。
【0027】
遊星側固定部421a、421bは、固定部42において、モータ本体11のモータ側の固定孔112に対応する位置に設けられている。遊星側固定部421a、421bを固定孔112a、112bに挿入(例えば、圧入)して係合することにより、モータ10に、ハウジングカバー41が、ハウジングカバー41の回転、つまり、遊星歯車装置3の回転が規制された状態で、固定される。
【0028】
また、固定部42は、外周部分には、軸方向に切り欠かれた凹状の複数(本実施形態の場合、5個)の係合凹部423、424を有する。係合凹部423、424は、ハウジング4の係合凸部451a、キー凸部451eと軸方向で係合している。
【0029】
また、固定部42は、固定部42の軸方向における他端部側、つまり、ハウジング4側の面404に、遊星歯車機構6と互いに対向するハウジング側の対向部48(
図3及び
図4参照)を有する。
対向部48が、対向する遊星歯車機構6の部位は、キャリアカバー734側の対向部(キャリア側の対向部ともいう)77である。なお、ハウジング4側の面404は、以下では、「ハウジングカバー内面」とも称する。これら一対の対向部48、77のうち、一方の対向部は、軸方向で径が異なる錘状部を有し、他方の対向部は、錘状部の軸と同一軸心で錘状部の周面を摺動する摺動部を有する。
【0030】
ハウジング側の対向部48は、摺動部に該当し、ハウジングカバー内面404に、貫通孔40aを囲むように突設される。ハウジング側の対向部48は、中央部が外周部482に対して凸となる錘状凸部を有する。錘状凸部としては、例えば、突出方向で、外径が小さくなる円錐台状の錐状凸部としてもよい。
【0031】
ハウジング側の対向部48は、その軸心が、固定部42の軸と同一軸心で、固定部42に一体に設けられている。
【0032】
ハウジング側の対向部48は、外周部482の傾斜する面で、キャリア側の対向部77のテーパ面と摺動する。この摺動により、対向部48、77の双方が、同一軸心で摺動することになる。これにより、ハウジングカバー41が取り付けられたハウジング4と、ハウジング4内部の遊星歯車機構6(第1キャリア73)との軸ぶれが解消される。
【0033】
なお、ハウジング側の対向部48は、錘状凸部としたが、これに限らず、ハウジングとキャリアとが同一軸心で回転可能に配置される構成であれば、どのように構成されてもよい。
【0034】
ハウジング側の対向部48は、例えば、軸方向に突出した凸部を、貫通孔を囲む位置に複数配置し、これら複数の凸部がキャリア側対向部のテーパ面を、同一軸心回りに摺動して、ハウジングとキャリアとを同一軸心で回転するようにしてもよい。
【0035】
接続筒部43は、固定部42のハウジングカバー内面404の外周から突出した円弧状壁部であって、周方向に延在する複数の円弧状壁部430により筒状に構成されている。接続筒部43は、接続筒部43の軸方向における一方側の端部(
図1及び
図3における左端部)で固定部42に一体に設けられている。なお、以下では、軸方向における一方側の端部を、軸方向一端部とも称し、軸方向における他方側の端部を、軸方向他端部とも称する。
【0036】
接続筒部43は、ハウジングカバー41をハウジング4に抜けないように取り付けて、ハウジング4とともに、遊星歯車機構6を収容する。
【0037】
接続筒部43は、所定の円弧状壁部430の外周面に、ハウジング4の軸方向一端部と係合する複数(本実施形態の場合、4個)の係合爪部431を有する。接続筒部43は、係合爪部431を介して、ハウジング4に接続されている。なお、係合爪部431とハウジング4の係合孔451bと係合についての詳細は後述する。
【0038】
<ハウジング4>
図5は、ハウジングの説明に供する図であり、軸方向における一方側から見たハウジングを示す斜視図である。
図3及び
図5に示すように、ハウジング4は、ハウジングカバー41が取り付けられる軸方向の一方側の端部が開放されている。
【0039】
ハウジング4は、本体筒部45と、支持筒部47を有する円輪部46と、を有する。
【0040】
本体筒部45は、円筒状であって、内側に、遊星歯車機構6を収容する。
具体的には、本体筒部45は、軸方向における一方側(
図3における左側)から順に、第1遊星歯車機構7を収容する第1ハウジング要素451と、第2遊星歯車機構8を収容する第2ハウジング要素452と、を有する。第2ハウジング要素452は、出力軸接続部87を、本体筒部45から、軸方向における他方側(
図3における右側)に突出させた状態で第2遊星歯車機構8を収容する。なお、ハウジング4、特に、第1ハウジング要素451及び第2ハウジング要素452は、例えば合成樹脂製で、射出成形により、支持筒部47を有する円輪部46とともに、一体成形される。
【0041】
第1ハウジング要素451は、軸方向一端部(以下、第1ハウジング要素451の第一端部と称する。)に、係合孔451bが、周方向に延在して複数(本実施形態の場合4個)設けられている。
【0042】
係合孔451bは、周方向に延在するスリット状に形成され、係合爪部431と係合する。第1ハウジング要素451の第一端部の内周面には、係合孔451bに対して、軸方向における一方側で近接して、ハウジング4の軸心側に開口するように凹状に切り欠かれたガイド溝451cが設けられている。ガイド溝451cは、ハウジングカバー41がハウジング4に取り付けられる際に、摺動する係合爪部431を係合孔451bに軸方向における他方側に案内し、双方の係合を容易にする。これらガイド溝451cは、一部の係合凸部451aの内周面側に設けられている。
【0043】
係合凸部451aは、第1ハウジング要素451の第一端部における周方向の複数箇所に、軸方向に延在して設けられている。第1ハウジング要素451の第一端部が、ハウジングカバー41の接続筒部43に外嵌した際に、係合凸部451aは、係合凹部423と係合する。
【0044】
すなわち、ハウジングカバー41の接続筒部43に外嵌した際に、係合孔451bがハウジングカバー41の係合爪部431と係合し、係合凸部451aが、ハウジングカバー41における固定部42の係合凹部423と係合する。加えて、切り欠き部424にもキー凸部451eが係合する。
【0045】
ハウジング4は、係合孔451bと係合爪部431との係合により、接続筒部43に対する軸方向及び周方向への移動が規制されている。また、ハウジング4は、係合凸部451aと係合凹部423との係合により、接続筒部43に対する周方向への移動が規制されている。また、ハウジング4は、キー凸部451eと切り欠き部424との係合により、ハウジングカバー41を所定の位置に組み付けることができる。
【0046】
第1ハウジング要素451は、内周面のうち後述の第1内歯車74の外周面と径方向に対面する部分に、軸方向に延在する複数(本実施形態の場合、4個)の凸条451dを有する。
【0047】
凸条451dは、後述の第1内歯車74の外周に設けられた外周溝部741cと周方向に係合している。また、第1ハウジング要素451の内周面と第1内歯車74の外周面との間には、径方向における僅かな隙間が存在する。凸条451dと外周溝部741cが点接触または線接触で接触することにより、第1ハウジング要素451は、第1内歯車74を、第1ハウジング要素451(ハウジング4)の中心軸に対して、第1内歯車74の軸線が僅かに傾斜するように移動可能に支持している。
【0048】
第2ハウジング要素452の軸方向一端部(以下、第2ハウジング要素452の第1端部と称する。)は、第1ハウジング要素451の軸方向他端部(以下、第1ハウジング要素451の第2端部と称する。)に接続されている。
【0049】
第2ハウジング要素452は、内周面に、軸方向に延在する複数の歯部を有する第2内歯車部452aを有する。第2内歯車部452aは、はすば歯車であって、後述の第2遊星歯車機構8の第2の遊星歯車82と噛合している。
【0050】
なお、第2内歯車部452aは、平歯車であってもよい。また、第2ハウジング要素452を、第2遊星歯車機構8の内歯車と捉えることもできる。また、第2遊星歯車機構8の内歯車は、ハウジング4と別体の部材であってもよい。この場合、ハウジング4とは別に設けた内歯車の内周面に第2内歯車部を設ける。そして、この内歯車を、ハウジング4に固定(内嵌)する。この内歯車は、後述の第1遊星歯車機構7の第1内歯車74と同様にハウジング4によりフローティング支持されてもよい。
【0051】
第2ハウジング要素452の内径は、第1ハウジング要素451の内径よりも小さい。よって、第2ハウジング要素452と第1ハウジング要素451との接続部(つまり、第2ハウジング要素452の軸方向における一方側の端面)には、段部452bが存在している。
【0052】
なお、段部452bは、第1内歯車74の軸方向他端部(以下、第1内歯車74の第2端部と称する。)と、軸方向に対面している。段部452bは、第1内歯車74の軸方向における他方側への移動を、所定量に規制する。
【0053】
円輪部46は、円輪状であり、ハウジング4の軸方向他端部に接続されている。具体的には、円輪部46の径方向における外端部は、ハウジング4の他方側の端部に一体に設けられている。
【0054】
支持筒部47は、筒状であり、円輪部46の中央の開口に連続して、軸方向に沿って、軸方向における他方側、つまり、出力側に突設されている。
支持筒部47は、出力軸接続部87をその接続口を外露出した状態で回転可能に支持している。これにより、出力軸接続部87に、出力軸、或いは、回転力の出力対象となる部材を接続して、出力軸接続部87が出力するトルクを外部の機構に伝達することができる。また、支持筒部47は、第2キャリア83の軸方向における他方側への移動を、所定量に規制している。
【0055】
以上のような構成を有するハウジング4は、遊星歯車機構6を収容した状態で、ハウジングカバー41を介して、モータ10に固定されている。
【0056】
<遊星歯車機構6>
遊星歯車機構6は、
図3及び
図4に示すように、ハウジング4内に収容され、モータ10から伝達された回転を減速して出力軸接続部87を介して出力する。遊星歯車機構6は、軸線方向に沿って配置された第1遊星歯車機構7と第2遊星歯車機構8とを有している。
【0057】
<第1遊星歯車機構7>
図6は、ハウジングに収容される一実施の形態の遊星歯車装置における遊星歯車機構の背面側斜視図であり、
図7は、遊星歯車機構の分解斜視図である。また、
図8は、内歯車を外した遊星歯車機構の要部構成を示す前方側分解斜視図であり、
図9は、内歯車を外した遊星歯車機構の要部構成を示す後方前方側分解斜視図である。
【0058】
第1遊星歯車機構7は、太陽歯車71と、太陽歯車71を中央にしてその周囲に配された複数の遊星歯車72と、複数の遊星歯車72を回転可能に支持する第1キャリア73と、第1内歯車74とを備えている。第1遊星歯車機構7は、1つ以上の遊星歯車72を備えていればよいが、本実施の形態では、3つの遊星歯車72を備える。
【0059】
太陽歯車71は、外周面に太陽歯部が形成された外歯車であり、モータ10の回転軸12に接続され、回転軸12と同軸心で回転可能である。太陽歯車71は、モータ10の駆動により、回転する。太陽歯部は、例えば、太陽歯車71の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有し、本実施の形態の太陽歯車71は、所謂、はすば歯車である。
【0060】
遊星歯車72は、外周面に遊星歯部が形成された外歯車である。複数の遊星歯車72は、太陽歯車71と第1内歯車74との間に等間隔に配置され、太陽歯車71と第1内歯車74の双方に噛合する。複数の遊星歯車72は、例えば、第1遊星歯車機構7の軸を中心とした同一の円上に配置され、第1キャリア73により回転可能に支持されている。遊星歯部は、本実施の形態では、遊星歯車72の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有し、本実施の形態の遊星歯車72は、所謂、はすば歯車である。
【0061】
遊星歯車72はそれぞれ、太陽歯車71の回転に基づいて、自身の中心軸(遊星軸部7344)を中心に回転する。また、遊星歯車72はそれぞれ、それ自体の回転及び第1内歯車74との噛合に基づいて、太陽歯車71の周りを公転する。遊星歯車72の公転の中心軸は、太陽歯車71の中心軸に一致してよい。
【0062】
第1キャリア73は、遊星歯車72を回転可能(自転可能)に支持する。加えて、第1キャリア73は、遊星歯車72の公転に基づいて回転し、回転を第2遊星歯車機構8に伝達する。また、第1キャリア73は、筒状に形成されており、その外周面に形成された収容開口(図示省略)内に、遊星歯車72を収容している。遊星歯車72のそれぞれは、収容開口内で軸線方向に向けられた遊星軸部7344により回転可能に支持されている。遊星歯車72は、本実施の形態では、一部が収容開口から径方向外方に突出しており、第1キャリア73の外周面から突出した状態で取り付けられている。これにより、遊星歯部は、第1内歯車74の内歯部と噛み合う。
【0063】
また、第1キャリア73は、遊星歯車機構6において、高速段側の端部、つまり、軸方向において一方側の端部を構成し、対向するハウジングの部位(対向部48)と対向する対向部77を有する。
【0064】
第1キャリア73は、キャリア本体732と、対向部77を有しキャリア本体732と係合するキャリアカバー734とを有する。なお対向部77は、第1キャリア73のように、遊星歯車機構6において、ハウジングの対向部48と対向する位置に配置される部位を有していれば、どこに設けられてもよい。キャリアカバー734がキャリア本体732と一体に形成される構成であれば、キャリアカバーではなくキャリアに設けられてもよい。
【0065】
キャリア本体732は、太陽歯車及び遊星歯車72を回動自在に収容し、キャリア本体732には太陽歯車と同じ軸で回転する、第2遊星歯車機構8の太陽歯車81が固定されている。キャリア本体732には、軸方向における一方側からキャリアカバー734が取り付けられる。
【0066】
キャリアカバー734は、遊星歯車72の軸を軸方向における一方側、つまり、軸方向一端部側から支持する。キャリアカバー734は、ハウジング4の内部でハウジングカバー41に軸方向で隣接して配置される。キャリアカバー734は、中央貫通孔730を有するリング状の本体部7342と、本体部7342から軸方向で突設された遊星軸部7344とを有する。
【0067】
遊星軸部7344は遊星歯車72を回転自在に挿通しており、キャリアカバー734はキャリア本体732に取り付けられる。第1キャリア73は、遊星歯車72を、太陽歯車71の外周で噛み合わせるとともに、収容開口から露出する部位で第1内歯車74と噛み合わせることにより、太陽歯車71を中心に公転及び自転自在に支持する。
【0068】
対向部77は、遊星歯車機構6をハウジング4及びハウジングカバー41内に収容した際に、対向する対向部48を摺動可能に構成される。
【0069】
対向部77は、軸方向で径が異なる錘状部を有し、この錘状部の周面772で、対向部48が、対向部77の錘状部と同一軸心で摺動する。対向部77の周面772は、例えば、
図3、
図6及び
図9に示すように、中央に貫通孔40aを有し、且つ、軸方向他端部側、つまり、軸方向における他方側に向かって縮径するすり鉢状をなしている。
【0070】
言い換えれば、対向部77は、錘状部として、中央側が外周側に対して凹となる錘状凹部を有し、錘状凹部は、中央側が凹となるテーパ面となっている。なお、テーパ面は断面視した場合に直線であっても曲線であってもよい。対向部77は、テーパ面である周面772の軸方向他端部側に、周面772と連続するフラットな環状面774を有している。なお、この形状は、対向部48の形状に対応すると好適である。
【0071】
第1内歯車74は、第1の遊星歯車72の周囲に配置され、第1の遊星歯車72と噛合している。第1内歯車74は、内周面に第1内歯部が設けられた円筒状の筒部741を有する。第1内歯部は、筒部741の中心軸(モータ10の回転軸12の中心軸と共通の中心軸)に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有する。このような筒部741は、はすば歯車であり且つ内歯車である。
【0072】
筒部741は、ハウジング4の収容空間において、第1ハウジング要素451の内側且つ第1の遊星歯車72の周囲に配置されている。この状態で、筒部741の外周面と第1ハウジング要素451の内周面との間には、径方向における僅かな隙間が存在する。筒部741の第1内歯部は、第1の遊星歯車72の第1遊星歯部と噛合している。なお、第1内歯部は、筒部741の中心軸に平行な歯を有してもよい。つまり、筒部741は、平歯車であり且つ内歯車であってもよい。
【0073】
筒部741の外周面には、外周溝部741cを有する第1凸条741aが複数(本実施形態の場合、軸方向で離間する端部に3個ずつ)設けられている。第1凸条741aは、周方向に延在している。外周溝部741cと凸条451dとの係合により、第1内歯車74のハウジング4に対する回転が規制されている。これにより、筒部741は、第1ハウジング要素451(ハウジング4)に対して軸方向に僅かに移動可能且つ僅かに傾斜可能な状態で支持されている。つまり、筒部741は、第1ハウジング要素451(ハウジング4)に対して、フローティング支持されている。
【0074】
筒部741の軸方向における一方側の端部(以下、筒部741の第1端部と称する。)は、ハウジング4におけるハウジングカバー41の接続筒部43と、僅かな隙間を介して軸方向に対面している。よって、筒部741の軸方向における一方側への移動は、ハウジングカバー41により所定量に規制される。
【0075】
一方、筒部741の軸方向における他方側の端部(以下、筒部741の第2端部と称する。)は、ハウジング4における第2ハウジング要素452の段部452bと、軸方向の所定隙間を介して軸方向に対面している。よって、筒部741の軸方向における他方側への移動は、段部452bにより所定量に規制される。
【0076】
なお、筒部741は、第1ハウジング要素451(ハウジング4)に対して、移動不可能な状態で固定されてもよい。また、筒部741は、第1ハウジング要素451(ハウジング4)により構成されてもよい。
【0077】
<第2遊星歯車機構8>
第2遊星歯車機構8は、第1遊星歯車機構7から伝達された回転を、所定の減速比で減速して、出力する。第2遊星歯車機構8は、第1遊星歯車機構7よりも軸方向における他方側(
図1の右側であり、出力側)に設けられている。
【0078】
第2遊星歯車機構8は、ハウジング4の収容空間において、ハウジング4の第2ハウジング要素452内、具体的には、第2内歯車部452aと対応する部分に配置されている。なお、第2遊星歯車機構8は、省略されてもよい。
【0079】
第2遊星歯車機構8は、本実施の形態では、太陽歯車81と、遊星歯車82と、遊星歯車82を回転可能に支持する第2キャリア83と、を備えている。第2遊星歯車機構8は、1つ以上の遊星歯車82を備えていればよいが、本実施の形態では、3つの遊星歯車82を備える。
【0080】
太陽歯車81は、外歯車であって、外周面に、太陽歯部を有する。太陽歯部は、本実施の形態では、太陽歯車81の中心軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有しており、太陽歯車81は、所謂、はすば歯車である。
【0081】
太陽歯車81は、本実施の形態では、第1遊星歯車機構7の第1キャリア73に互いの軸線を一致させた状態で固定されている。これにより、太陽歯車81は、第1遊星歯車機構7の第1キャリア73の回転に伴い、第1遊星歯車機構7の第1キャリア73の回転に連動して回転する。すなわち、太陽歯車81は、第1遊星歯車機構7の第1キャリア73の回転に伴い、第1遊星歯車機構7の第1キャリア73と同じ回転方向に、第1遊星歯車機構7の第1キャリア73と同じ回転速度で回転する。
【0082】
遊星歯車82は、外周面に遊星歯部が形成された外歯車である。複数の遊星歯車82は、太陽歯車81と第2内歯車部452aとの間に等間隔に配置され、太陽歯車81と第2内歯車部452aの双方に噛み合う(噛合する)。複数の遊星歯車82は、本実施の形態では、第2遊星歯車機構8の軸を中心とした同一の円上に配置され、第2キャリア83の遊星軸86に回転可能に支持されている。遊星歯部は、本実施の形態では、遊星歯車82の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有し、本実施の形態の遊星歯車82は、所謂、はすば歯車である。
【0083】
遊星歯車82はそれぞれ、太陽歯車81の回転に基づいて、自身の中心軸(遊星軸86)を中心に回転する。また、遊星歯車82はそれぞれ、それ自体の回転及び第2内歯車部452aとの噛合に基づいて、太陽歯車81の周りを公転する。遊星歯車82の公転の中心軸は、太陽歯車81の中心軸に一致してよい。
【0084】
第2キャリア83は、遊星歯車82を回転可能(自転可能)に支持する。加えて、第2キャリア83は、遊星歯車82の公転に基づいて回転し、出力軸接続部87に接続される出力軸に伝達する。
【0085】
第2キャリア83は、例えば、歯車保持部834と、出力軸接続部87を保持する第2キャリア本体835とを有する。
【0086】
歯車保持部834は、第2キャリア83の軸方向における一方側の端部を構成するリング部に軸線方向に設けた遊星軸86を有し、軸部に遊星歯車82を挿通して回転自在に支持している。歯車保持部834は、第2キャリア本体835に接合される。第2キャリア本体835の外周面に形成された収容開口(図示省略)から、遊星歯車82のそれぞれが露出している。このように、遊星歯車82は、一部が収容開口から径方向外方に突出しており、第2キャリア83の外周面から突出した状態で取り付けられている。これにより、遊星歯部は、第2内歯車部452aの歯部と噛み合う。
【0087】
出力軸接続部87は、第2キャリア本体835よりも他方側(出力側)に突設される。出力軸接続部87は、第2キャリア本体835よりも小径の円筒状に形成されており、出力軸接続部87の径方向における内側には、出力軸が接続される。
【0088】
なお、出力軸は、例えば、軸状に形成され、第2キャリア83に保持され、第2キャリア83とともに回転する。出力軸接続部87は、出力側の端部の内周にローレット形状の歯を有する。
【0089】
<遊星歯車装置3の作用と効果>
図10は、キャリアカバー734とハウジングカバー41の摺動部分の部分拡大断面図である。本実施の形態の遊星歯車装置3は、ハウジングカバー41と、キャリアカバー734と有する。ハウジングカバー41は、太陽歯車71と遊星歯車72とを内部に収容するハウジング4の軸方向一端部に配置される。キャリアカバー734は、ハウジング4の内部でハウジングカバー41に軸方向で隣接して配置され、遊星歯車72の軸を、ハウジングの軸方向一端部側から支持する。
【0090】
ハウジングカバー41及びキャリアカバー734において互いに対向する一対の対向部48、77のうち、一方の対向部は、軸方向で径が異なる錘状部を有し、他方の対向部48は、錘状部の軸と同一軸心で錘状部の周面を摺動する摺動部を有している。
【0091】
キャリアカバー734の対向部77は、錘状部として、中央側が外周側に対して凹となり、周面772を備えた錘状凹部を有し、ハウジングカバー41の対向部48は、周面772を摺動する摺動部として、中央部が外周部に対して凸となる錘状凸部を有する。
【0092】
また、キャリアカバー734の対向部77の錘状凹部は、中央側が凹となるテーパ面が周面772であり、ハウジングカバー41の錘状凸部としての外周部482は、中央側が凸となるテーパ面である。
【0093】
遊星歯車装置3が駆動するときに、ハウジングカバー41の対向部48と、キャリアカバー734の対向部77とが摺動すると、必然的に、双方とも同一軸心での回転駆動を行うこととなる。
【0094】
これにより、ハウジング側の対向部48と遊星歯車機構6側の対向部77とが互いに摺動して、ハウジング4に対して、第1キャリア或いは遊星歯車機構6の軸心が一致していき、互いの軸心のぶれを防止できる。したがって、キャリアの回転の軸ぶれを抑制し、ハウジング4において安定した第1キャリア73の回転を実現し、遊星歯車装置を安定駆動できる。また、第1キャリア73がハウジング4に対して、軸ぶれせずに安定して駆動できるので、遊星歯車装置の静音性の向上を図ることができる。
【0095】
なお、錘状凹部を凹球面とし、錘状凸部を凸球面であるものとしても、本実施の形態の遊星歯車装置3と同様の作用効果をうることができる。
【0096】
また、一対の対向部48、77は、太陽歯車71の径方向で遊星歯車72の軸心よりも内側に配置されている。すなわち、遊星歯車装置3において、ハウジング4(ハウジングカバー41)に対して、第1キャリア73(キャリアカバー734)が同軸で回動する構成において、双方の軸ぶれの防止を、回転軸心に接近した位置で行うことができる。
【0097】
よって、ハウジング側とキャリア側の一対の対向部が、太陽歯車の径方向で遊星歯車の軸心よりも外側に配置される構成と比較して、回転中心に近い分、互いの摺動領域を小さくして、軸ぶれの調整を容易に行うことができる。
【0098】
また、本実施の形態の遊星歯車装置3において、キャリアカバー734の対向部77を錘状凹部とし、ハウジングカバー41の対向部48を、錘状凸部を有した構成としたが、逆の構成としてもよい。すなわち、対向部77が錘状凸部を有し、ハウジングカバー41の対向部48が錘状凹部を有した構成としてもよい。
【0099】
<ハウジング4とハウジングカバー41との接合>
図11は、ハウジングカバー41の係合爪部431とハウジング4の係合孔451bとの関係を示す側面図であり、
図12は、
図3のハウジングカバー41とハウジング4との係合関係を示す拡大部分断面図である。
【0100】
接続筒部43は、ハウジング4の一端部側から挿入して一端部に接合される。接続筒部43は、軸方向からみて円弧状の壁部を周方向に筒状に配置されて構成されている。
【0101】
図3、
図4及び
図11に示す円弧状の壁部の外面に係合爪部431が、固定部42の中心から放射方向に突出して設けられている。凸部を有する係合爪部431は、所謂、スナップフィット式であり、係合孔451b内に嵌め込んで係合孔451bの縁部に引っ掛けることにより、係合孔451bに係合する。
【0102】
係合爪部431は、円弧状壁部430の外面の中央部で、周方向に延在する(周方向の長さである幅L1を有する)ように配置されている。係合爪部431が、係合孔451bと係合した際に、円弧状壁部430は、それぞれハウジング4内に挿入された際に、円弧状壁部430の外面の領域で、係合孔451bを塞ぐ。
【0103】
円弧状壁部430は、周方向に係合孔451bよりも周方向の両側に広く、幅L2を有する。また、円弧状壁部430は、軸方向、つまり、挿入方向の長さも、係合孔451bの軸方向の長さよりも長い。これにより、円弧状壁部430は、ハウジング4内に挿入された際に、ハウジング4に対し、係合孔451bと中央の領域で重なる、つまり、係合孔451bとともに係合孔451bの周縁部を閉塞するように配置される。よって、レーザ溶着しなくとも、ハウジング4とハウジングカバー41とで閉塞された内部の気密性を向上させることができ、内部に塗布されたグリスの漏れを防止できる。
【0104】
また、
図12に示すように、係合爪部431が、係合孔451b内に配置されて係合した際に、係合孔451bにおいて開口側の辺部に、掛止する係合爪部431の部位431aには、軸方向における一方側の端部に向かって外径が小さくなるように傾斜するテーパ部が設けられている。すなわち、係合爪部431において軸方向における他方側の外径よりも一方側の外径の方が狭くなっており、このテーパ部でハウジング4の端部開口と隙間無く係合させることができる。
【0105】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明に係る遊星歯車装置は、キャリアの回転の軸ぶれを抑制し、安定して駆動する効果を有し、バックドアの開閉用アクチュエータなどに用いられる遊星歯車装置として有用である。
【符号の説明】
【0107】
1 アクチュエータ
3 遊星歯車装置
4 ハウジング
6 遊星歯車機構
7 第1遊星歯車機構
8 第2遊星歯車機構
10 モータ
11 モータ本体
12 回転軸
40a 貫通孔
41 ハウジングカバー
42 固定部
43 接続筒部
45 本体筒部
46 円輪部
47 支持筒部
48、77 対向部
71、81 太陽歯車
72、82 遊星歯車
73 第1キャリア
74 第1内歯車
83 第2キャリア
86 遊星軸
87 出力軸接続部
111 支持面
112、112a、112b 固定孔
402 軸方向外側面
404 ハウジングカバー内面
421a、421b 遊星側固定部
423、424 係合凹部
430 円弧状壁部
431 係合爪部
431a 部位
451 第1ハウジング要素
451a 係合凸部
451b 係合孔
451c ガイド溝
451d 凸条
451e キー凸部
452 第2ハウジング要素
452a 第2内歯車部
452b 段部
482 外周部
730 中央貫通孔
732 キャリア本体
734 キャリアカバー
741 筒部
741a 第1凸条
741c 外周溝部
772 周面
774 環状面
834 歯車保持部
835 第2キャリア本体
7342 本体部
7344 遊星軸部