(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152989
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】車両用ロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 83/24 20140101AFI20221004BHJP
E05B 79/08 20140101ALI20221004BHJP
【FI】
E05B83/24 Z
E05B79/08
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055978
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000146434
【氏名又は名称】株式会社城南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井出 直紀
(72)【発明者】
【氏名】小林 真由
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250KK01
2E250LL15
(57)【要約】
【課題】ベースの歪み等によってロックレバーがトーションバネのアーム部に近づいた場合にも、トーションバネのアーム部が、ロックレバーに引っかかることがない車両用ロック装置を提供する。
【解決手段】ストライカSが進入する進入溝22が形成されたベース11と、ストライカSを拘束する拘束位置A1及び、ストライカSを解放する解放位置A2の間で揺動するラッチ12と、ラッチ12と係合してラッチ12を拘束位置A2に保持するロックレバー13と、第1のアーム部52がラッチ12側に位置するようにラッチ12に隣接して配設され、第1のアーム部52がストライカSに接触してストライカSを進入方向の後方に付勢するトーションバネ14と、を備え、トーションバネ14は、第1のアーム部52の先端部72aが巻回部51の軸方向内側に位置するように、第1のアーム部52が軸方向内側に屈曲又は湾曲されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた開口部を開閉する蓋体を、閉状態でロックする車両用ロック装置であって、
ストライカが進入する進入溝が形成されたベースと、
前記ベースに支持され、前記ストライカを拘束する拘束位置及び、前記ストライカを解放する解放位置の間で揺動するラッチと、
前記ベースに支持され、前記ラッチと係合して前記ラッチを前記拘束位置に保持するロックレバーと、
第1のアーム部が前記ラッチ側に位置するように前記ラッチに隣接して配設され、前記第1のアーム部が前記ストライカに接触して前記ストライカを進入方向の後方に付勢するトーションバネと、を備え、
前記トーションバネは、前記第1のアーム部の先端部が巻回部の軸方向における前記巻回部の内側に位置するように、前記第1のアーム部が前記軸方向に屈曲又は湾曲されていることを特徴とする車両用ロック装置。
【請求項2】
前記先端部は、前記ストライカによって前記第1のアーム部が押し下げられたときに前記軸方向から見て前記ロックレバーと重畳する部分であることを特徴とする請求項1に記載の車両用ロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ロック装置として、例えば、トーションバネがストライカと直接接触し、ストライカを上方に押し上げる車両用ロック装置(フードロック装置)がある(特許文献1参照)。この車両用ロック装置は、ストライカが進入するストライカ溝が設けられているベース(ベースプレート)と、ストライカを係止するラッチ位置とアンラッチ位置との間で回動可能にベースに支持されたラッチと、ラッチ位置にあるラッチと係合する係合部を有し、ラッチのアンラッチ位置への回動を阻止するロックレバー(ロッキングプレート)と、ラッチの回動軸上に配置され、ストライカに接触してストライカを付勢する第1のトーションバネと、ロックレバーの回動軸上に配置され、ストライカに接触してストライカを付勢する第2のトーションバネと、を含む。この車両用ロック装置では、トーションバネを、ラッチやロックレバーの前側に隣接して配置することで、車両用ロック装置の寸法を小さくすることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の車両用ロック装置では、利用時の負荷等によるベースの歪み(変形)によって、ロックレバーが前後方向でトーションバネのアーム部に近づいた場合に、トーションバネのアーム部がロックレバーに引っかかるという問題が生じた。トーションバネのアーム部がロックレバーに引っかかると、ストライカSの押上げ及び押下げが正常に行なわれず、フード閉動作及びフード開動作が正常に行えなくなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、ベースの歪み等によってロックレバーがトーションバネのアーム部に近づいた場合にも、トーションバネのアーム部が、ロックレバーに引っかかることがない車両用ロック装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、車両に設けられた開口部を開閉する蓋体を、閉状態でロックする車両用ロック装置であって、ストライカが進入する進入溝が形成されたベースと、前記ベースに支持され、前記ストライカを拘束する拘束位置及び前記ストライカを解放する解放位置の間で揺動するラッチと、前記ベースに支持され、前記ラッチと係合して前記ラッチを前記拘束位置に保持するロックレバーと、第1のアーム部が前記ラッチ側に位置するように前記ラッチに隣接して配設され、前記第1のアーム部が前記ストライカに接触して前記ストライカを進入方向の後方に付勢するトーションバネと、を備え、前記トーションバネは、前記第1のアーム部の先端部が巻回部の軸方向における前記巻回部の内側に位置するように、前記第1のアーム部が前記軸方向に屈曲又は湾曲されていることを特徴とする車両用ロック装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用ロック装置は、ベースの歪み等によってロックレバーがトーションバネのアーム部に近づいた場合にも、トーションバネのアーム部が、ロックレバーに引っかかることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用ロック装置を示したフード開状態における正面図(a)、フード閉状態における正面図(b)及びフード開状態における平面図(c)である。
【
図2】ラッチを示した正面図(a)、右上から見た側面図(b)及び斜視図(c)である。
【
図3】(a)は、トーションバネを示した正面図であり、(b)は、トーションバネを示した平面図(b)であり、(c)は、ラッチを省略した車両用ロック装置を示した平面図である。
【
図4】ストライカによって第1のアーム部が押し下げられたときの車両用ロック装置を示した正面図である。
【
図5】車両用ロック装置におけるフード閉動作の前半部を示した説明図である。
【
図6】車両用ロック装置におけるフード閉動作の後半部を示した説明図である。
【
図7】車両用ロック装置におけるフード開動作を示した説明図である。
【
図8】(a)は、車両用ロック装置の第1変形例を示した平面図であり、(b)は、第1変形例におけるトーションバネを示した正面図であり、(c)は、第1変形例におけるトーションバネを示した平面図である。
【
図9】(a)は、車両用ロック装置の第2変形例を示した平面図であり、(b)は、第2変形例におけるトーションバネを示した正面図であり、(c)は、第2変形例におけるトーションバネを示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る車両用ロック装置について説明する。この車両用ロック装置は、車両(の車体)の前方に設けられたエンジンルーム用の開口部に配設され、当該開口部を開閉するフード(ボンネット)(蓋体)を閉状態でロックするものである。また、この車両用ロック装置は、フードに固定されたストライカを拘束しフードを閉状態でロックするロック機能と、当該ストライカを押し上げてフードを押し開く押上げ機能と、を備えたものである。特に、本車両用ロック装置は、トーションバネの第1のアーム部がロックレバーに引っかかることのない構造を有したものである。なお、各図に示す通り、左右、前後及び上下を規定して説明する。具体的には、ストライカの進入方向を上下方向とし、上下方向に直交する方向を左右方向とし、上下方向及び左右方向に直交する方向を前後方向とする。本実施形態では、例えば、車両用ロック装置の上下方向が車両の上下方向と一致し、車両用ロック装置の左右方向が車両の車幅方向と一致し、車両用ロック装置の前後方向が車両の前後方向と一致している。
【0010】
(実施形態)
図1に示すように、車両用ロック装置1は、ストライカSが進入する進入溝22が形成されたベース11と、ベース11の前面右側において揺動自在に支持され、ストライカSを拘束するフック状のラッチ12と、ベース11の前面左側において揺動自在に支持され、ラッチ12をロックするロックレバー13(ポール)と、ラッチ12の前側に隣接して配設され、ストライカSを進入方向D後方に押し上げるトーションバネ14と、を備えている。ラッチ12は、揺動軸を成すラッチピン15によって、ベース11に対し、ストライカSを拘束する拘束位置A1(
図1(b)参照)と、ストライカSを解放すると共にストライカSの進入を受け入れる解放位置A2(
図1(a)参照)と、の間で揺動自在に支持されている。また、ロックレバー13は、揺動軸を成すロックピン16によって、ベース11に対し、ラッチ12を拘束位置A1でロックするロック位置B1(
図1(b)参照)と、ラッチ12のロックを解除するアンロック位置B2(
図7(a)参照)と、の間で揺動自在に支持されている。
【0011】
図1に示すように、ベース11は、板金で形成されており、板状の平板部21と、平板部21の左右方向中央に形成された進入溝22と、平板部21の左右両端から後方に相互に拡開するように立ち上がる右立上がり部24及び左立上がり部25と、右立上がり部24の先端から右方向に延在して形成され、右取付け孔26aを有する右フランジ部26と、左立上がり部25の先端から左方向に延在して形成され、左取付け孔27aを有する左フランジ部27と、を有している。ベース11は、右取付け孔26a及び左取付け孔27aの2か所で、車両の車体に対しネジ止め固定される。
【0012】
進入溝22は、平板部21の上端から下方に延びる開口であり、上端側を開放側とし下側を底側とする正面視「U」字の溝状に形成されている。また、進入溝22は、ストライカSが通過可能な幅を有しており、ストライカSをガイドするストライカガイドとして機能している。なお、ストライカSは、円柱係合部S1と、円柱係合部S1を両持ちで支持する一対の腕部S2と、を有し、進入溝22は、この円柱係合部S1に接触して、ストライカSをガイドする。
【0013】
図1及び
図2に示すように、ラッチ12は、板状且つ「U」字状の金属部材によって形成されており、ラッチピン15に対し揺動自在に取り付けられた本体部31と、本体部31から進入溝22を跨ぐように左方向に延出し、ストライカSに対し下方から接触する第1爪部32と、第1爪部32と向かい合うように本体部31から左上方向に延出し、ストライカSの円柱係合部S1に対し上方から接触する第2爪部33と、第1爪部32の先端部に形成され、ロックレバー13と係合する被係合爪34と、本体部31の右上端から前方に立ち上がるように形成され、トーションバネ14と係合する被係合リブ35(被係合部)と、を一体として有している。
【0014】
第1爪部32と第2爪部33との間には、ストライカSを拘束する拘束溝36が形成されている。ラッチ12が拘束位置A1に揺動した状態では、拘束溝36が左向きとなるのに対し、ラッチ12が解放位置A2に揺動した状態では、拘束溝36の開放側が上側を向いており、進入溝22上を移動して来るストライカSが、拘束溝36の内部に入り込むようになっている。
【0015】
第1爪部32は、上端面32aが、ストライカSの円柱係合部S1に接触する接触面(受け面)となっており、上方から進入溝22上を移動して来るストライカSからの押圧を受ける押圧受け部として機能する。一方、第2爪部33は、下端面が、ストライカSの円柱係合部S1を上方から押える押え面となっており、ラッチ12が拘束位置A1に揺動した状態において、ストライカSの進入方向D(
図1(b)参照)後方への移動を規制し押える押え部として機能する。
【0016】
被係合リブ35は、本体部31から前方に立ち上がるように形成されたリブであり、トーションバネ14の第1のアーム部52に対して、右斜め上方から接触して係合する。被係合リブ35は、第1のアーム部52に対してトーションバネ14の巻回方向手前側(トーションバネ14の周方向の正面視反時計回り側)から係合して、トーションバネ14の付勢力をラッチ12に伝達する。このトーションバネ14の付勢力によって、ラッチ12が解放位置A2に付勢される。また、被係合リブ35は、ストライカSが第1のアーム部52を押し下げたときの第1のアーム部52の回動方向の手前側において第1のアーム部52と接触し、第1のアーム部52に係合していると言える。詳細は後述するが、この構成により、ストライカSが第1のアーム部52を進入方向Dに押し下げたとき、被係合リブ35と第1のアーム部52との係合が解除される構成となっている。
【0017】
図1に示すように、ロックレバー13は、上下方向に延びた板状の金属部材によって形成されており、ロックピン16に対し揺動自在に支持され、上下方向に延びる本体部41と、本体部41の下端部右側に形成され、ラッチ12の被係合爪34と係合する係合爪42(係合部)と、本体部41の上端部に形成され、トーションバネ14の第2のアーム部53と係合するバネ係合部43と、本体部41の下端部から下方に延出する下延出部44と、下延出部44の基端部右側に形成され、図外の解除ケーブルによって操作される操作部45と、を一体として有している。
【0018】
ロックレバー13は、ロック位置B1に揺動した状態では、係合爪42が、拘束位置A1に揺動したラッチ12の被係合爪34に係合し、ラッチ12を拘束位置A1にロック(保持)する。一方、アンロック位置B2に揺動した状態では、被係合爪34と係合爪42との係合が解除され、ラッチ12のロックが解除される。また、ロック位置B1からアンロック位置B2への揺動は、解除ケーブルによって操作部45が操作されることで行われる。一方、解除ケーブルによる操作が行われていない状態では、第2のアーム部53を介して、トーションバネ14の付勢力がロックレバー13に伝達され、ロック位置B1に揺動した状態となる。なお、係合爪42の上端面は、右側に向かって下方に傾斜する誘導斜面となっており、ロックレバー13がロック位置B1に位置した状態で、ラッチ12が解放位置A2から拘束位置A1に揺動して来たとき、この誘導斜面がラッチ12に接触して、ロックレバー13がアンロック位置B2側に揺動される。これにより、ラッチ12が拘束位置A1に揺動するのを許容する構成となっている。
【0019】
図1及び
図3に示すように、トーションバネ14は、ラッチピン15に巻回されて配設されており、金属線材を巻回させた巻回部51と、巻回部51の一端から金属線材が引き出されて形成された後側の第1のアーム部52と、巻回部51の他端から金属線材が引き出されて形成された前側の第2のアーム部53と、を有している。具体的には、トーションバネ14は、ラッチピン15の軸部15bを挿通しつつ、ラッチピン15の頭部15aとラッチ12との間に配設されており、第1のアーム部52がラッチ12側に位置するように、ラッチ12の前側に隣接して配設されている。
【0020】
第2のアーム部53は、巻回部51の下部から左方向に引き出された左延在部61と、左延在部61の先端から屈曲して左斜め上方に延在し、ロックレバー13のバネ係合部43と係合するレバー係合部62と、を有している。トーションバネ14は、この第2のアーム部53のレバー係合部62が、ロックレバー13のバネ係合部43と係合することで、ロックレバー13をロック位置B1に付勢する。
【0021】
第1のアーム部52は、巻回部51の右部から上方に引き出された後、左斜め上方に延在し、ラッチ12の被係合リブ35と係合するラッチ係合部71と、ラッチ係合部71の先端側に連なると共に進入溝22を跨ぐように左方向に延在し、ストライカSと接触するストライカ接触部72と、を有している。トーションバネ14は、この第1のアーム部52のラッチ係合部71が、ラッチ12の被係合リブ35と係合することで、ラッチ12に対して解放位置A2への弾性力を付与する。また、トーションバネ14は、この第1のアーム部52のストライカ接触部72が、ストライカSの円柱係合部S1に押圧接触することで、ストライカSを進入方向Dの後方(上方)に付勢する。
【0022】
また、第1のアーム部52は、ストライカSによって下方(ストライカSの進入方向D)に押し下げられたとき、ラッチ係合部71と被係合リブ35との係合が解除されるように構成されている。すなわち、トーションバネ14は、第1のアーム部52がストライカSによって下方に押し下げられた状態では、ラッチ係合部71と被係合リブ35との係合が解除され、ストライカS及びラッチ12のうちのストライカSのみを付勢する。一方、トーションバネ14は、フード(図示省略)が開放され、第1のアーム部52がストライカSによって下方に押し下げられていない状態では、ラッチ係合部71と被係合リブ35とが係合し、ラッチ12を付勢する。すなわち、ストライカSが第1のアーム部52に接触しているか否かに関わらず、第1のアーム部52がストライカSによって下方に押し下げられていない状態では、ラッチ係合部71と被係合リブ35とが係合し、ラッチ12を付勢する。
【0023】
図3(a)及び(c)に示すように、ストライカ接触部72は、先端側が前側に屈曲して形成されている。具体的には、
図3(c)に示すように、ストライカ接触部72は、第1のアーム部52がストライカSによって押し下げられていない状態において、進入溝22を超える位置まで左方向にストレートに延び、その後、前側(巻回部51の軸方向内側)に屈曲して形成されている。より具体的には、ストライカ接触部72は、所定の先端部72aが巻回部51の軸方向における巻回部51の内側に位置するように、前側に屈曲して形成されている。これにより、ストライカ接触部72は、所定の先端部72aがロックレバー13の係合爪42から前後方向で離間するように、係合爪42から離間する側に屈曲されている。
図4に示すように、巻回部51の軸方向内側に位置する上記所定の先端部72aは、ストライカSによって第1のアーム部52が押し下げられたときに前後方向(巻回部51の軸方向)から見てロックレバー13と重畳する部分である。すなわち、ストライカ接触部72は、ストライカSによって第1のアーム部52が押し下げられたときに前後方向から見てロックレバー13と重畳する部分が巻回部51の軸方向における巻回部51の内側に位置するように、前側に屈曲して形成されている。
【0024】
(車両用ロック装置の動作)
次に
図5乃至
図7を参照して、車両用ロック装置1におけるフード閉動作(フード閉塞方法)及びフード開動作(フード開放方法)について説明する。なお、
図5乃至
図7では、ストライカSにおける図中手前側の腕部S2を省略するものとする。
【0025】
まず、
図5及び
図6を参照して、車両用ロック装置1におけるフード閉動作について説明する。このフード閉動作は、利用者がフードの先側を上方から落下させることで行われる動作であり、車両用ロック装置1によって、閉塞されたフードのストライカSを拘束し、フードを閉状態でロック(保持)する動作である。また、フード閉動作は、トーションバネ14の付勢力によって、ラッチ12が解放位置A2に揺動し、ロックレバー13がロック位置B1に揺動した状態から行われる。なお、フード閉動作が行われる前の状態(ストライカSからラッチ12が離間した状態)では、トーションバネ14の第1のアーム部52がラッチ12の被係合リブ35と係合し、ラッチ12が解放位置A2に付勢された状態となっている。
【0026】
図5(a)に示すように、フードの先側の落下によってフードが閉塞されていくと、まず、ストライカSが進入溝22に進入し、ストライカSの円柱係合部S1が、トーションバネ14の第1のアーム部52(のストライカ接触部72)に接触する。トーションバネ14の第1のアーム部52は、ラッチ12の第1爪部32より上方に配設されているため、まず、ストライカSの円柱係合部S1が、第1のアーム部52に接触する。
【0027】
その後、更にフードの閉塞が進み、ストライカSが進入溝22上を進んでいくと、
図5(b)に示すように、ストライカSによって第1のアーム部52が下方に押圧されて、第1のアーム部52が下方に回動し、第1のアーム部52の回動によって、第1のアーム部52のラッチ係合部71とラッチ12の被係合リブ35との係合が解除される。その後、ストライカSがラッチ12の第1爪部32に接触する。
【0028】
その後、更にフードの閉塞が進み、ストライカSが進入溝22上を進んでいくと、
図5(c)に示すように、第1のアーム部52の回動が進むと共に、ストライカSの押圧によって、ラッチ12が拘束位置A1側に揺動していく。これにより、ストライカSの円柱係合部S1がラッチ12の拘束溝36に入り込む。その後、更にフードの閉塞が進み、
図6(d)に示すように、ラッチ12が拘束位置A1に達すると、ラッチ12の被係合爪34とロックレバー13の係合爪42とが係合し、ラッチ12が拘束位置A1でロックされる。これにより、拘束位置A1にロックされたラッチ12が、ストライカSを拘束し、ストライカSが固定されたフードが閉状態でロックされる。
【0029】
その後、
図6(e)に示すように、トーションバネ14の第1のアーム部52が、ストライカSの円柱係合部S1をラッチ12の第2爪部33に押し付ける。このように、トーションバネ14が、ストライカSを第2爪部33に押し付けるバッファとして機能する。これにより、本フード閉動作を終了する。
【0030】
次に
図7を参照して、車両用ロック装置1におけるフード開動作について説明する。このフード開動作は、利用者が解除ケーブルによって操作部45を操作することに起因して行われるものであり、車両用ロック装置1によって、ストライカSを上方に押し上げ、フードを押し開く動作である。また、フード開動作は、
図6(e)で示した、ロックレバー13によってラッチ12が拘束位置A1でロックされ、拘束位置A1にロックされたラッチ12がストライカSを拘束した状態から行われる。
【0031】
図7(a)に示すように、利用者が解除ケーブルによって操作部45を操作すると、ロックレバー13がロック位置B1からアンロック位置B2に揺動し、ロックレバー13によるラッチ12のロックが解除される。ラッチ12のロックが解除されると、トーションバネ14の付勢力により、第1のアーム部52によってストライカSが上方に押し上げられ、ストライカSの円柱係合部S1に第2爪部33が接触したラッチ12が解放位置A2側に揺動していく。
【0032】
その後、
図7(b)に示すように、ストライカSの押上げによって、拘束溝36が上向きになるようにラッチ12が揺動した後、ストライカSの円柱係合部S1が拘束溝36から脱出する。ストライカSの円柱係合部S1が拘束溝36から脱出したら、
図7(c)に示すように、トーションバネ14の付勢力によって、ストライカSが上方に跳ね上げられ、フードが押し開かれる。このとき、トーションバネ14の第1のアーム部52が押し下げられる前の状態に戻り、第1のアーム部52(のラッチ係合部71)とラッチ12の被係合リブ35とが係合する。この係合に起因して、トーションバネ14の付勢力により、ラッチ12が解放位置A2に付勢され、ラッチ12の位置が解放位置A2に維持される。これにより、本フード開動作を終了する。
【0033】
(実施形態の作用及び効果)
以上、上記実施形態の構成によれば、トーションバネ14において、第1のアーム部52の先端部72aが巻回部51の軸方向における巻回部51の内側に位置するように、第1のアーム部52が前側に屈曲又は湾曲されていることにより、ベース11の歪み等によってロックレバー13が第1のアーム部52に近づいた場合にも、トーションバネ14の第1のアーム部52が、ロックレバー13に引っかかることがない。
【0034】
すなわち、車両用ロック装置1では、第1のアーム部52がラッチ12側に位置するように、トーションバネ14をラッチ12に隣接して配設することで、車両用ロック装置1の前後方向の寸法を小さくしている。一方で、車両用ロック装置1を利用したときの負荷等によって、ベース11が歪み(変形し)、その影響で、ロックレバー13の係合爪42が前後方向で第1のアーム部52に近づいてしまう場合がある。これらによって、従来の車両用ロック装置1では、前後方向で第1のアーム部に近づいたロックレバーの係合爪に、ストライカに押し下げられて回動する第1のアーム部が引っかかってしまうという問題が生じた。第1のアーム部に係合爪が引っかかると、ストライカの押上げ及び押下げが正常に行なわれず、フード閉動作及びフード開動作が正常に行えなくなってしまう。
これに対し、上記実施形態の構成によれば、トーションバネ14において、第1のアーム部52の先端部72aが巻回部51の軸方向における巻回部51の内側に位置するように、第1のアーム部52が前側に屈曲又は湾曲されていることにより、トーションバネ14の位置はそのままに、第1のアーム部52の先端部72aを、ロックレバー13の係合爪42から離間させることができる。これにより、車両用ロック装置1を前後方向の寸法を小さくした状態を維持しつつ、ベース11の歪み等によってロックレバー13の係合爪42が第1のアーム部52に近づいた場合にも、ロックレバー13の係合爪42が、ストライカSに押し下げられた第1のアーム部52に引っかかることがない(引っかかるのを抑制することができる)。そのため、ストライカSの押上げ及び押下げが正常に行なわれずフード閉動作及びフード開動作が正常に行えなくなる事態を避けることができる。なお、ここでは、ベース11の歪みによってロックレバー13の係合爪42が前後方向で第1のアーム部52に近づいてしまう場合を例に挙げたが、製造誤差等によって、ロックレバー13の係合爪42が前後方向で第1のアーム部52に近づいてしまう場合も考えられる。
【0035】
また、上記実施形態の構成によれば、第1のアーム部52がラッチ12側に位置するように、トーションバネ14をラッチ12に隣接して配設する構成であるため、ラッチ12の前面が第1のアーム部52に対するガイド面として機能し、第1のアーム部52が前後方向で暴れるのを抑制することができる。
【0036】
(その他の実施形態について)
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0037】
例えば、上記実施形態においては、第1のアーム部52(のストライカ接触部72)が、進入溝22を超えた先で前側に屈曲されている構成であったが、第1のアーム部52の先端部72aが巻回部51の軸方向における巻回部51の内側に位置するように、第1のアーム部52が前側に屈曲又は湾曲されている構成であれば、これに限るものではない。すなわち、
図8に示すように、進入溝22の手前から前側に屈曲されている構成であっても良いし、
図9に示すように、第1のアーム部52(のストライカ接触部72)が、前側に「L」字状に屈曲されている構成であっても良い。さらに言えば、第1のアーム部52が、屈曲ではなく、湾曲されている構成であっても良いし、第1のアーム部52の湾曲及び屈曲を組み合わせて、第1のアーム部52の先端部72aが巻回部51の軸方向における巻回部51の内側に位置するようになっている構成であっても良い。
【0038】
また、上記実施形態においては、エンジンルーム用のフード(エンジンフード)を閉状態でロックする車両用ロック装置1に本発明を適用したが、これに限るものではなく、トランクルーム用のフード(トランクフード)を閉状態でロックする車両用ロック装置に本発明を適用しても良い。さらに言えば、車体に設けられた開口部を開閉する蓋体を閉状態でロックする車両用ロック装置であれば、例えば、充電用の開口部を開閉する蓋体(いわゆる充電用リッド)を閉状態でロックする車両用ロック装置に本発明を適用しても良い。
【0039】
また、上記実施形態においては、ストライカSがフード(蓋体)側に固定され、車両用ロック装置1が開口部側に固定される構成であったが、車両用ロック装置1がフード(蓋体)側に固定され、ストライカSが開口部側に固定される構成であっても良い。
【0040】
なお、上記実施形態においては記載を省略したが、車両用ロック装置1において、開放しようとするフードをわずかに開いた半開状態で停止させるセフティレバーを、更に備える構成であっても良い。かかる場合、上記実施形態におけるフードの開放、開時、開状態等の表現は、フードの半開、半開時及び半開状態を含むものとする。
【符号の説明】
【0041】
1:車両用ロック装置、 11:ベース、 12:ラッチ、 13:ロックレバー、 14:トーションバネ、 22:進入溝、 51:巻回部、 52:第1のアーム部、 72a:先端部、 A1:拘束位置、 A2:解放位置、D;進入方向、 S:ストライカ