(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153019
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】硬質ポリウレタンフォーム及び断熱ボード
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20221004BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20221004BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20221004BHJP
C08G 18/50 20060101ALI20221004BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20221004BHJP
C08K 5/02 20060101ALI20221004BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20221004BHJP
【FI】
C08G18/00 L
C08G18/40 018
C08G18/08 038
C08G18/50 021
C08L75/04
C08K5/02
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056025
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安藤 衛
(72)【発明者】
【氏名】栗田 剛志
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK031
4J002CK041
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4J034RA10
4J034RA11
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4J034RA15
(57)【要約】
【課題】 本発明は、フッ素系不活性液体を核剤として有しても、自己接着性が劣ることなく寸法安定性及び断熱性能に優れる硬質ポリウレタンフォーム及び当該フォームを断熱材として用いる断熱ボードを提供することを課題とする。
【解決手段】 ポリオール、発泡剤、整泡剤、核剤、触媒を含むポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを反応硬化させてなる硬質ポリウレタンフォームであって、前記核剤が、フッ素系不活性液体で、かつその含有量が前記ポリオール100質量部に対し、0.1質量部以上3.0質量部以下であり、前記ポリオールが、芳香族ポリオール及び脂肪族アミンエーテルポリオールを含み、前記脂肪族アミンエーテルポリオールの含有量が、前記ポリオール100質量%に対し、8質量%以上含有してなることを特徴とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、発泡剤、整泡剤、核剤、触媒を含むポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを反応硬化させてなる硬質ポリウレタンフォームであって、
前記核剤が、フッ素系不活性液体で、かつその含有量が前記ポリオール100質量部に対し、0.1質量部以上3.0質量部以下であり、
前記ポリオールが、少なくとも芳香族ポリオール及び脂肪族アミンエーテルポリオールを含み、
前記脂肪族アミンエーテルポリオールの含有量が、前記ポリオール100質量%に対し、8質量%以上含有してなることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記芳香族ポリオールの芳香族濃度が13質量%以上35質量%以下であり、
当該芳香族ポリオールの含有量が、前記ポリオール100質量%に対し、50質量%以上92質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記芳香族ポリオールが、芳香族ポリエステルポリオールと芳香族ポリエーテルポリオールを含み、
前記芳香族ポリエステルポリオールの含有量が、前記ポリオール100質量%に対し、30質量%以上80質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の硬質ポリウレタンフォームを断熱層とし、前記断熱層の表裏面に面材を有することを特徴とする断熱ボード。
【請求項5】
前記断熱層と前記面材との間に接着剤層を有さないことを特徴とする請求項4に記載の断熱ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンフォーム及び当該フォームを断熱材として用いる断熱ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、優れた断熱性と高い機械的強度を有することから、家庭用・業務用の冷凍庫・冷蔵庫、浴槽、自動販売機、建築物、その他種々の分野における機器類、構築物などの断熱材として広く利用されている。
【0003】
近年では、断熱材の性能を向上させることによる、大幅な省エネルギーの実現を目指した取り組みが活発となっている。断熱性能の指標としては、一般的に熱伝導率(λ:W/(m・K))が用いられており、λの値が小さい材料ほど断熱性能に優れるものである。
【0004】
硬質ウレタンフォームの断熱性能を向上させるためには、セル径を小さくすること(セルの微細化)で輻射を小さくし、熱伝導率を下げる方法が知られている。例えば、特許文献1では、フッ素化された不溶性化合物(フッ素系不活性液体ともいう)を核剤として添加することで、セルの微細化が可能であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、フッ素系不活性液体を核剤として使用することで、硬質ポリウレタンフォームの断熱性能を改善することができる。
しかしながら、フッ素系不活性液体を添加した硬質ポリウレタンフォームは自己接着性に劣ってしまい、実用化するには課題が残されている。
すなわち、通常、断熱ボードのように面材と硬質ポリウレタンフォームとの積層体を製造する際、接着剤を使用することなく、ポリウレタンフォーム原液を直接面材上に塗布することで、硬質ポリウレタンフォームの自己接着性により面材との強固な接着性が得られるが、フッ素系不活性液体が硬質ポリウレタンフォーム中に存在することにより、面材が容易に剥がれてしまうことがあった。加えて、フッ素系不活性液体を添加した硬質ポリウレタンフォームでは寸法安定性が悪化することがあった。
【0007】
本発明は、フッ素系不活性液体を核剤として有しても、自己接着性が劣ることなく寸法安定性及び断熱性能に優れる硬質ポリウレタンフォーム及び当該フォームを断熱材として用いる断熱ボードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリオール、発泡剤、整泡剤、核剤、触媒を含むポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを反応硬化させてなる硬質ポリウレタンフォームであって、
前記核剤が、フッ素系不活性液体で、かつその含有量が前記ポリオール100質量部に対し、0.1質量部以上3.0質量部以下であり、
前記ポリオールが、少なくとも芳香族ポリオール及び脂肪族アミンエーテルポリオールを含み、
前記脂肪族アミンエーテルポリオールの含有量が、前記ポリオール100質量%に対し、8質量%以上含有してなることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、フッ素系不活性液体の含有量を特定することにより、自己接着性が劣ることなく寸法安定性及び断熱性能に優れる硬質ポリウレタンフォームが得られる。
【0010】
また、前記芳香族ポリオールの芳香族濃度が13質量%以上35質量%以下であり、当該芳香族ポリオールの含有量が、前記ポリオール100質量%に対し、50質量%以上92質量%以下であることが好ましい。それにより熱伝導率をより低くすることができ、断熱性能が向上する。
【0011】
さらに、前記芳香族ポリオールが、芳香族ポリエステルポリオールと芳香族ポリエーテルポリオールを含み、前記芳香族ポリエステルポリオールの含有量が、前記ポリオール100質量%に対し、30質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。それにより断熱性能とともに寸法安定性にも優れる。
【0012】
本発明は、当該硬質ポリウレタンフォームを断熱層とし、当該断熱層の表裏面に面材を有することを特徴とする断熱ボードを含み、好ましくは、当該断熱層と当該面材との間に接着剤層を有さないものである。
本発明の硬質ポリウレタンフォームを断熱層として用いれば、自己接着性により面材との間に接着剤層を有さなくとも断熱層と面材とが強固に接合した断熱ボードが得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、フッ素系不活性液体を核剤として有しても、自己接着性が劣ることなく寸法安定性及び断熱性能に優れる硬質ポリウレタンフォーム及び当該フォームを断熱材として用いる断熱ボードを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、ポリオール、核剤、発泡剤、整泡剤、触媒を含むポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを反応硬化させてなる硬質ポリウレタンフォームであって、当該核剤は、フッ素系不活性液体である。
【0015】
本発明のポリオールは、少なくとも芳香族ポリオール及び脂肪族アミンエーテルポリオールを含む。本発明の芳香族ポリオールとしては、芳香族ポリエステルポリオール、芳香族ポリエーテルポリオールが使用できる。
【0016】
芳香族ポリエーテルポリオールとしては、ビスフェノールAなどの多価アルコール;トルエンジアミン、メチレンジアニリンなどの芳香族アミン類;など分子中に芳香族環を有する開始剤とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを1種または2種以上を付加重合して得られるものが挙げられ、これらの芳香族ポリエーテルポリオールは1種単独であるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
芳香族ポリエーテルポリオールの水酸基価は、特に限定しないが、300~800mgKOH/gが好ましい。
【0017】
芳香族ポリエステルポリオールとしては、フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸及びこれらの無水物である芳香族環を有する多価カルボン酸に、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークロース、ビスフェノールAなどの多価アルコールを縮合してなるポリオールや、分子中に芳香族環を有する環状エステル開環重合からなるポリオールが挙げられる。これらの芳香族ポリエステルポリオールは1種単独であるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。このポリエステルポリオールの水酸基価は、特に限定しないが、100~500mgKOH/gが好ましい。
【0018】
脂肪族アミンエーテルポリオールとしては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンなどの脂肪族アミンにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを1種または2種以上を付加重合して得られるものなどが挙げられ、これらの脂肪族アミンエーテルポリオールは1種単独であるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。脂肪族アミンエーテルポリオールの水酸基価は、特に限定しないが、300~800mgKOH/gが好ましい。
【0019】
本発明では、脂肪族アミンエーテルポリオールの含有量は、ポリオール100質量%に対し、8質量%以上であり、好ましくは8質量%以上30質量%以下である。
脂肪族アミンエーテルポリオールの含有量が8質量%未満だと、硬質ポリウレタンフォームとしたときの自己接着性に劣ってしまう。一方、脂肪族アミンエーテルポリオールを含有しすぎると、後述するように芳香族ポリオールの占める割合が小さくなるにつれて熱伝導率が上昇してしまい、断熱性能に劣る傾向にあることから、上限値としては30質量%が好ましい。
【0020】
また、本発明では、芳香族ポリオールの芳香族濃度が13質量%以上35質量%以下であり、当該芳香族ポリオールの含有量が、前記ポリオール100質量%に対し、50質量%以上92質量%以下であることが好ましい。
ここで、芳香族濃度が13~35質量%の芳香族ポリオールを2種以上混合した場合は、その2種以上の芳香族ポリオールを合わせた含有量がポリオール100質量%に対し、50質量%以上92質量%以下の範囲内であればよい。
当該含有量が50質量%未満だと、熱伝導率が0.0200W/(m・K)以下の硬質ポリウレタンフォームが得られ難い。これは、後述する核剤(フッ素系不活性液体)の効果でセルを微細化できても、形成した硬質ポリウレタンフォームのガスバリア性が低くなり熱伝導率が上昇してしまうためであると考えられる。
また、芳香族濃度が13質量%未満のポリオールが多く含まれると、目的とする断熱性能が得られ難く、芳香族濃度が35質量%を超えるポリオールが多く含まれると、ポリオールとしての粘度が高くなり、フォームを製造するのが困難となる。
【0021】
さらに、芳香族ポリオールは、芳香族ポリエステルポリオールと芳香族ポリエーテルポリオールを含み、当該芳香族ポリエステルポリオールの含有量が、ポリオール100質量%に対し、30質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
芳香族ポリエステルポリオールの含有量が30質量%未満であると、形成した硬質ポリウレタンフォームのガスバリア性が低くなり、断熱性能が劣る傾向にある。また、含有量が80質量%を超えると、寸法安定性に劣る虞がある。
【0022】
なお、本発明の効果を損ねない程度であれば、上述したポリオール以外の、例えば脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリエーテルポリオール及び架橋剤としての多価アルコールを含んでもよい。
【0023】
本発明の核剤は、フッ素系不活性液体である。フッ素系不活性液体とは、炭素原子と結合した水素原子のほとんどがフッ素に置換された化合物の総称であり、本発明において、フッ素置換された水素原子が、全水素原子の含有数に対し75%~100%のものである。フッ素置換された水素原子の含有数(フッ素化率ともいう)が75%未満であると、セルの微細化効果が得られ難く、目的とする断熱性能が得られない。
【0024】
本発明で使用できるフッ素系不活性液体としては、例えば、フッ素化炭化水素、フッ素化エーテル、フッ素化オキシシラン、フッ素化カーボネート、フッ素化アミノエーテル、フッ素化スルホンなどの環状又は非環状の化合物が挙げられ、これらのフッ素系不活性液体は1種単独であるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0025】
その中でも、炭素数が3~15程度で、沸点が20~80℃の範囲のフッ素系不活性液体が好適である。具体的には、フッ素化率が100%のパーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルモルフォリンなどが挙げられる。
【0026】
本発明において、フッ素系不活性液体の含有量は、ポリオール100質量部に対し0.1質量部以上3.0質量部以下である。当該含有量が0.1質量部未満だとセルの微細化効果が得られず、断熱性能に劣る硬質ポリウレタンフォームとなる。また、当該含有量が3.0質量部を超えると硬質ポリウレタンフォームの自己接着性が低下し、寸法安定性にも劣るものとなる。
好ましくは、フッ素系不活性液体の含有量がポリオール100質量部に対し、0.2質量部以上1.0質量部以下である。当該範囲であれば、自己接着性が劣ることなく寸法安定性及び断熱性能に優れる硬質ポリウレタンフォームが得られやすい。
【0027】
本発明の発泡剤は、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、イソブタン等のハイドロカーボン、1-クロロ-3,3,3,-トリフルオロプロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2ブテン等のハイドロフルオロオレフィン(HFO)が挙げられ、これらは1種単独であるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。また、上記発泡剤と共に水を併用してもよい。
少なくともシクロペンタンを含むのが好ましく、その理由として、シクロペンタンは、ノルマルペンタンやイソペンタンよりも沸点が高くガス化し難いものであり、熱伝導率もこれらよりも低く、かつポリオール成分への溶解性が他のペンタンよりも優れているため、微細で均一なセルを有するフォームを得やすい。
【0028】
発泡剤の含有量は、水以外の発泡剤の場合、ポリオール100質量部に対し、5~40質量部が好ましい。また、水を併用する場合は、水の含有量はポリオール100質量部に対し0~5質量部とすることが好ましい。
【0029】
本発明の整泡剤は、従来から一般に用いられているシリコーン系化合物及びフッ素系化合物(本発明のフッ素系不活性液体は除く)などが挙げられる。整泡剤の含有量はポリオール100質量部に対し0.1~5質量部が好ましい。
【0030】
本発明の触媒は、従来から一般に用いられているアミン触媒や金属触媒等が使用できる。
アミン触媒としては、例えばN,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン、トリエチレンジアミン、N,N’,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’,N’’-トリス(3-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-s-トリアジン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-アミノエトキシエタノール、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、テトラメチルヘキサンジアミン、1-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール等が使用できる。
金属触媒としては、例えばスタナスオクトエート;ジブチルチンジラウリレート;オクチル酸鉛;酢酸カリウムやオクチル酸カリウム等のカリウム塩等が使用できる。
これらのアミン触媒や金属触媒の他に、蟻酸や酢酸等の脂肪酸の第4級アンモニウム塩等も使用できる。
【0031】
以上の触媒は、それぞれ1種単独で使用してもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。本発明における触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対し、0.1~15質量部程度が好ましい。
【0032】
上記のポリオール成分と反応させるポリイソシアネート成分として、本発明では、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなど;これらの変性ポリイソシアネート、すなわち、ポリイソシアネートの部分化学反応で得られる生成物であって、例えば、エステル、尿素、ビューレット、アロファネート、カルボジイミド、イソシアヌレート、ウレタンなどの基を含むポリイソシアネート;などが挙げられ、これらは1種単独であるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0033】
上記のポリイソシアネート成分の含有量は、イソシアネートインデックス(=ポリイソシアネート成分のNCO基/ポリオール成分の活性水素〔当量比〕×100)が100~350、好ましくは120~160となる量である。
【0034】
その他助剤として、従来から一般に用いられている発泡安定剤、気泡制御剤、相溶化剤、充填剤、染料、顔料、難燃剤、加水分解防止剤などを適量で使用することが出来る。このような助剤は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分のどちらに添加してもよい。
【0035】
以上のようなポリオール、核剤、発泡剤、触媒、整泡剤を含むポリオール成分とポリイソシアネート成分との少なくとも2成分からなる原料を反応させて硬質ポリウレタンフォームを製造するには、一般的に使用される高圧、及び低圧の硬質ポリウレタン発泡機が用いられ、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを一定の比率で連続又は非連続的に混合する発泡方法を用いることが出来る。
【0036】
このようにして得られる本発明の硬質ポリウレタンフォームは、セル径が230μm以下、好ましくは210μm以下と微細化されたものであり、フッ素系不活性液体を核剤として有しても、自己接着性が劣ることなく寸法安定性及び断熱性能に優れるものとなる。
【0037】
本発明のセル径は、45℃に温調した金属プレート上で自由発泡させて得た硬質ポリウレタンフォームよりから、200mm×200mm×50mmの大きさの試験片を切り出し、該試験片の厚み方向において、1mm間隔で50箇所それぞれのセル(その各箇所における1mm2当たりに含まれる全てのセル)の径を市販の走査型電子顕微鏡(日本電子社製、商品名「JSM-6700F」)を用いて測定し、得られるセル径の平均値で示される。
【0038】
本発明の断熱性能は、熱伝導率:λで評価され、当該値が小さいほど断熱性能に優れることを示す。
ここで、下記式(1)に示されるように、熱の通りにくさを数値化した熱抵抗値[m2・K/W]は、断熱材が厚いほど、又は熱伝導率が小さいほど、その値が大きくなる関係にある。
熱抵抗値[m2・K/W]=断熱材厚み[m]/熱伝導率:λ[W/mK] (1)
【0039】
一方で、建築物に用いられる断熱材の場合、建築基準法などの規制により、厚みに制限が設けられていることもあり、厚みが同じ場合の断熱性能は、断熱材の熱伝導率によって決定される。
以上のことから、断熱材の厚みが15~100mmの範囲で用いられる用途において、熱伝導率:λが0.0202W/(m・K)以下であれば、本発明の目的とする断熱性能が得られる。好ましくは、0.0200W/(m・K)以下であり、断熱性能をより向上させることができる。
【0040】
本発明の熱伝導率:λ(W/(m・K))は、45℃に温調した金属プレート上で自由発泡させて得た硬質ポリウレタンフォームから、200mm×200mm×25mmの大きさの試験片を切り出し、JIS-A-1412に示される熱流計法により、英弘精機社製の“オートλHC-074”を用いて平均温度23℃で測定した値である。
【0041】
本発明の自己接着性は、大きさ300mm×300mm×30mmの枠体と上蓋と底蓋とからなるモールド型を用い、当該底蓋及び上蓋に、フォームと接する面にコロナ処理が施されたポリエチレンフィルム(面材)が貼られた状態で、モールド型内にポリオール成分とポリイソシアネート成分とを配合した液をパック率120%になるよう充填した後、上蓋を閉じて発泡させて得られる面材付き硬質ポリウレタンフォームから、50mm×50mm×30mmの大きさの試験片を切り出し、JIS A 9526に準拠して接着強さを測定した際の硬質ウレタンフォーム部の破壊又は硬質ウレタンフォーム部と面材との剥離状態を目視にて観察し、以下の通り評価される。
〇:試験後の試験片が、フォームが破壊されて剥離する凝集破壊が確認された
△: 試験後の試験片が、部分的にフォームが破壊されて剥離した凝集破壊及び部分的 に面材とフォームの層間で剥離した界面剥離が確認された
×:試験後の試験片が、面材とフォームの層間で剥離する界面剥離が確認された
【0042】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの寸法安定性は、木箱内で自由発泡して得た硬質ポリウレタンフォームより、100mm×100mm×100mmの試験片を切り出し、当該試験片を-20℃で72時間以上放置した時、100℃で72時間以上放置した時及び70℃,95%Rh×72時間以上放置した時の3条件における試験片の体積変化率をそれぞれ測定し、以下の通り評価される。なお、体積変化率とは、各条件で放置する前後の体積を測定し、放置前の体積をV0mm3、放置後の体積をV1mm3とした時、(V1/V0-1)×100[%]で求められる値である。
○:3条件ともに、フォームの体積変化率が5%未満
△:3条件ともに、フォームの体積変化率が7%未満であり、
かつ少なくとも1条件でフォームの体積変化率が5%以上
×:3条件のうち、少なくとも1条件でフォームの体積変化率が7%以上
【0043】
また、本発明の硬質ポリウレタンフォームの密度は、28~45kg/m3が好ましい。
密度は、JIS A 9521に準拠して測定した値であり、木箱内で自由発泡して得た硬質ポリウレタンフォームより、100mm×100mm×100mmの大きさに切り出した試験片を用いて測定される。
【0044】
本発明は、上記の硬質ポリウレタンフォームを断熱層とし、当該断熱層の表裏面に面材を有する断熱ボードを含む。このとき、断熱層の厚みとしては、15~100mmが好ましく、断熱性能に優れる断熱ボードが得られる。
【0045】
面材としては、特に限定されないが、例えば合成樹脂フィルム、不織布、金属蒸着フィルム等を単独または複数組み合わせて積層させたものが使用できる。
合成樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、その他として、無機物を混合した合成紙などが挙げられる。そして、断熱層である硬質ポリウレタンフォームとの接着性を向上させるために、例えばコロナ処理等を行ってもよい。
不織布としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリオレフィン繊維などの合成繊維、綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維などの無機繊維から1種、又は2種以上を交絡させたものが使用できる。
また、金属蒸着フィルムとしては、アルミ箔、銅箔、鉄箔、鉛箔等が挙げられ、軽量であるアルミ箔が好ましく使用できる。
【0046】
本発明の断熱ボードにおいて、断熱層と面材との間に接着剤層を有さなくともよい。
本発明の硬質ポリウレタンフォームは、自己接着性が劣ることがないため、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを混合したものを直接面材に吐出するだけで、断熱層と面材との間が強固に接着した断熱ボードが形成できる。また、本発明の硬質ポリウレタンフォームは断熱性能に優れるため、断熱ボードとした際もその優れる効果を発揮できるものである。
【0047】
本発明の硬質ポリウレタンフォームは、断熱ボード以外にも、壁面など建築物の躯体に直接吹き付けて形成される断熱材や、注入によって形成される断熱材など各種用途に適用できる。
【実施例0048】
以下、実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0049】
〔実施例1~11、比較例1~5〕
表1に示すように、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを配合した液を、ハンドミキサーを用いて4500回転/分で4秒撹拌した後、250mm×150mm×300mmの木箱内で自由発泡させて硬質ポリウレタンフォームAを得た。
また、同じ配合液を、ハンドミキサーを用いて4500回転/分で4秒撹拌した後、45℃に温調した金属プレート上で自由発泡させ、硬質ポリウレタンフォームBを得た。
さらに、同じ配合液を、ハンドミキサーを用いて4500回転/分で4秒撹拌した後、大きさ300mm×300mm×30mmの枠体と上蓋と底蓋とからなるモールド型を用い、当該底蓋及び上蓋に、フォームと接する面にコロナ処理が施されたポリエチレンフィルムが貼られた状態で、モールド型内に当該配合液をパック率120%になるよう充填した後、上蓋を閉じて発泡させて面材付き硬質ポリウレタンフォームCを得た。
なお、表中の配合量は質量部で示され、ポリイソシアネート及びポリオールは、液温30℃でイソシアネートインデックスが130(実施例7のみ150)になるよう配合した。
【0050】
得られた硬質ポリウレタンフォームAについては密度及び寸法安定性を、硬質ポリウレタンフォームBについてはセル径及び熱伝導率を、面材付きの硬質ポイウレタンフォームCについては自己接着性を以下の方法で測定及び評価し、その結果を表1に示す。
【0051】
ポリオール成分:
ポリオール1 TDAを開始剤とした芳香族ポリエーテルポリオール(水酸基価 420mgKOH/g、芳香族濃度25%)
ポリオール2 無水フタル酸を開始剤とした芳香族ポリエステルポリオール(水酸基価 315mgKOH/g、芳香族濃度23%)
ポリオール3 EDAを開始剤とした脂肪族アミンエーテルポリオール(水酸基価 755mgKOH/g、芳香族濃度0%)
ポリオール4 シュークロースを開始剤としたポリエーテルポリオール(水酸基価 420mgKOH/g、芳香族濃度0%)
核剤1 パーフルオロヘキサン(フッ素化率100%)
核剤2 パーフルオロメチルモルフォリン(フッ素化率100%)
核剤3 1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(フッ素化率50%)
発泡剤1 水
発泡剤2 シクロペンタン(丸善石油化学社製、商品名「マルカゾールFH」)
発泡剤3 HFO-1233zd(1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペ ン(ハネウェル社製、商品名「SolsticeLBA」)
整泡剤 シリコーン系化合物(東レ・ダウ社製、商品名「SH-193」)
触媒1 トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサトリアジン(エボニック社 製、商品名「PC-41」)
触媒2 3級アミン触媒(東ソー社製、商品名「TEDA-L33」)
難燃剤 トリスクロロプロピルフォスフェート(大八化学社製、商品名「TMC PP」)
ポリイソシアネート成分:ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー社 製、商品名「MR-200」)
【0052】
〔密度(kg/m3)〕
JIS A 9521に準拠して測定した値であり、木箱内で自由発泡して得た硬質ポリウレタンフォームAより、100mm×100mm×100mmの大きさに切り出した試験片を用いて測定した。
【0053】
〔セル径(μm)〕
硬質ポリウレタンフォームBから、200mm×200mm×50mmの試験片を切り出し、該試験片の厚み方向において、1mm間隔で50箇所それぞれのセル(その各箇所における1mm2当たりに含まれる全てのセル)の径を市販の走査型電子顕微鏡(日本電子社製、商品名「JSM-6700F」)を用いて倍率30倍で測定し、得られたセル径の平均を算出してセル径とした。なお、本発明では、当該セル径が230μm以下のものであればよい。
【0054】
〔熱伝導率:λ(W/(m・K))〕
硬質ポリウレタンフォームBから、200mm×200mm×25mmの大きさの試験片を切り出し、JIS-A-1412に示される熱流計法により、英弘精機社製の“オートλHC-074”を用いて平均温度23℃で測定した。なお、本発明では、当該熱伝導率が0.0202W/(m・K)以下のものであればよい。
【0055】
〔自己接着性〕
面材付き硬質ポリウレタンフォームCから、50mm×50mm×30mmの大きさの試験片を切り出し、JIS A 9526に準拠して接着強さを測定した際の硬質ウレタンフォーム部の破壊又は硬質ウレタンフォーム部とポリエチレンフィルムと剥離状態を目視にて観察し、以下の通り評価した。なお、本発明では、当該評価が〇又は△のものであればよい。
〇:試験後の試験片が、フォームが破壊されて剥離する凝集破壊が確認された
△:試験後の試験片が、部分的にフォームが破壊されて剥離した凝集破壊及び部分的 に面材とフォームの層間で剥離した界面剥離が確認された
×:試験後の試験片が、面材とフォームの層間で剥離する界面剥離が確認された
【0056】
〔寸法安定性〕
硬質ポリウレタンフォームAより、100mm×100mm×100mmの試験片を切り出し、当該試験片を-20℃で72時間以上放置した時、100℃で72時間以上放置した時及び70℃,95%Rh×72時間以上放置した時の3条件における試験片の体積変化率をそれぞれ測定し、以下の通り評価した。体積変化率とは、各条件で放置する前後の体積を測定し、放置前の体積をV0mm3、放置後の体積をV1mm3とした時、(V1/V0-1)×100[%]で求められる値である。なお、本発明では、当該評価が〇又は△のものであればよい。
○:3条件ともに、フォームの体積変化率が5%未満
△:3条件ともに、フォームの体積変化率が7%未満であり、
かつ少なくとも1条件でフォームの体積変化率が5%以上
×:3条件のうち、少なくとも1条件でフォームの体積変化率が7%以上
【0057】
【0058】
【0059】
表1より、本発明の実施例1~11では、フッ素系不活性液体を核剤として有しても、自己接着性が劣ることなく寸法安定性及び断熱性能に優れる硬質ポリウレタンフォームが得られた。特に、実施例1~3、5,7~9に示されるように、フッ素系不活性液体を少量添加しただけでも、ポリオールを特定することにより、寸法安定性及び断熱性能に優れる硬質ポリウレタンフォームを得ることができた。