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特開2022-153056竪型射出成形機、加熱筒交換治具および竪型射出成形機の加熱筒交換方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153056
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】竪型射出成形機、加熱筒交換治具および竪型射出成形機の加熱筒交換方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20221004BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056086
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 裕充
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 智之
(72)【発明者】
【氏名】榊原 正人
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM15
4F206JA07
4F206JC08
4F206JD03
4F206JL03
4F206JL06
4F206JQ06
4F206JQ41
(57)【要約】
【課題】高さ方向の寸法が大きくなることを抑制できる竪型射出成形機、人手での作業が可能で加熱筒の損傷を抑制できる加熱筒交換治具、および、加熱筒交換治具を使用した加熱筒交換方法を提供する。
【解決手段】竪型射出成形機1は、加熱筒保持プレート13とスクリュー保持プレート14とが通常動作時最大離間距離Dmだけ離れている場合に加熱筒保持プレート13が上方に移動したときでもスクリュー保持プレート14が連結ブラケット15bと衝突しないように、加熱筒保持プレート13の通常動作時上限位置Pmが設定されている。竪型射出成形機1は、加熱筒保持プレート13が通常動作時上限位置Pmより上方に移動することを規制する通常動作モードと、加熱筒保持プレート13が通常動作時上限位置Pmより上方に移動することを許容する加熱筒交換モードと、を有している。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が下方に向けられた加熱筒と、前記加熱筒に収容されるスクリューと、前記加熱筒が取り付けられる加熱筒保持プレートと、前記加熱筒保持プレートの上方に配置され、前記スクリューが取り付けられるスクリュー保持プレートと、前記加熱筒保持プレートを上下方向に移動させる射出装置駆動部と、前記スクリュー保持プレートを前記加熱筒保持プレートに対して上下方向に移動させるスクリュー駆動部と、前記射出装置駆動部および前記スクリュー駆動部を制御する制御装置と、を有する竪型射出成形機であって、
前記加熱筒保持プレートと前記スクリュー保持プレートとが通常動作時最大離間距離だけ離れている場合に前記加熱筒保持プレートが上方に移動したときでも前記スクリュー保持プレートが前記竪型射出成形機の構成部材と衝突しないように、前記加熱筒保持プレートの通常動作時上限位置が設定されており、
前記制御装置が、前記加熱筒保持プレートが前記通常動作時上限位置より上方に移動することを規制する通常動作モードと、前記加熱筒保持プレートが前記通常動作時上限位置より上方に移動することを許容する加熱筒交換モードと、を有していることを特徴とする竪型射出成形機。
【請求項2】
前記制御装置が、前記加熱筒交換モードにおいて、前記加熱筒保持プレートと前記スクリュー保持プレートとを前記通常動作時最大離間距離より近づけるとともに、前記加熱筒保持プレートを前記通常動作時上限位置より上方に移動させるように、前記射出装置駆動部および前記スクリュー駆動部を制御する、請求項1に記載の竪型射出成形機。
【請求項3】
竪型射出成形機の加熱筒の交換時に使用される加熱筒交換治具であって、
前記竪型射出成形機の加熱筒保持プレートの下方に配置されるフレームと、
前記加熱筒に取り付けられ、前記フレームに水平に設けられた移動用レーン上をスライド移動可能に構成されたスライダと、
前記加熱筒を上下方向に移動させる昇降部材と、を有し、
前記昇降部材が、前記フレームにねじ構造によって取り付けられたシャフトと、前記シャフトの上端部に取り付けられたテーブルと、を有し、前記シャフトを軸周りに回転させることによって前記テーブルが上下方向に移動するように構成されていることを特徴とする加熱筒交換治具。
【請求項4】
前記スライダが、前記移動用レーンを走行するための複数の車輪を有し、
前記フレームが、前記複数の車輪の間に配置され、前記スライダの上下方向の移動を案内するガイドポストを有している、請求項3に記載の加熱筒交換治具。
【請求項5】
前記スライダが、前記加熱筒の上下方向の中央箇所または当該中央箇所より上方の箇所に取り付けられる、請求項3または請求項4に記載の加熱筒交換治具。
【請求項6】
先端部が下方に向けられた加熱筒と、前記加熱筒に収容されるスクリューと、前記加熱筒が取り付けられる加熱筒保持プレートと、前記加熱筒保持プレートの上方に配置され、前記スクリューが取り付けられるスクリュー保持プレートと、前記加熱筒保持プレートを上下方向に移動させる射出装置駆動部と、前記スクリュー保持プレートを前記加熱筒保持プレートに対して上下方向に移動させるスクリュー駆動部と、前記射出装置駆動部および前記スクリュー駆動部を制御する制御装置と、を有する竪型射出成形機において加熱筒交換治具を使用して前記加熱筒を交換する加熱筒交換方法であって、
前記竪型射出成形機が、前記加熱筒保持プレートと前記スクリュー保持プレートとが通常動作時最大離間距離だけ離れている場合に前記加熱筒保持プレートが上方に移動したときでも前記スクリュー保持プレートが前記竪型射出成形機の構成部材と衝突しないように、前記加熱筒保持プレートの通常動作時上限位置が設定されており、
前記制御装置が、前記加熱筒保持プレートが前記通常動作時上限位置より上方に移動することを規制する通常動作モードと、前記加熱筒保持プレートが前記通常動作時上限位置より上方に移動することを許容する加熱筒交換モードと、を有しており、
前記加熱筒交換治具が、フレームと、前記フレームに水平に設けられた移動用レーン上をスライド移動可能に構成されたスライダと、前記加熱筒を上下方向に移動させる昇降部材と、を有し、前記昇降部材が、前記フレームにねじ構造によって取り付けられたシャフトと、前記シャフトの上端部に取り付けられたテーブルと、を有し、前記シャフトを軸周りに回転させることによって前記テーブルが上下方向に移動するように構成されており、
前記制御装置を前記加熱筒交換モードに切り替えて、前記加熱筒保持プレートと前記スクリュー保持プレートとを前記通常動作時最大離間距離より近づけるとともに、前記加熱筒保持プレートを前記通常動作時上限位置より上方に移動させ、
前記フレームを前記竪型射出成形機の前記加熱筒保持プレートの下方に配置し、
前記スライダを前記加熱筒に取り付け、
前記昇降部材の前記シャフトを軸周りに回転させて前記テーブルを前記加熱筒の先端部に当接するまで上方に移動させ、
前記加熱筒を前記加熱筒保持プレートから外して前記テーブルに載せ、
前記昇降部材の前記シャフトを軸周りに回転させて前記テーブルを前記スライダが前記移動用レーンに載るまで下方に移動させ、
前記スライダを前記移動用レーン上でスライド移動させて、前記スライダとともに前記加熱筒を水平方向に移動させる、ことを特徴とする加熱筒交換方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型射出成形機、加熱筒交換治具および竪型射出成形機の加熱筒交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
竪型射出成形機では、射出ユニットの加熱筒保持プレートに吊り下げられるように加熱筒が取り付けられている。このような竪型射出成形機の加熱筒の交換に関する技術が特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている竪型射出成形機では、加熱筒交換治具を使用して加熱筒の交換を行う。加熱筒交換治具は、スライダ本体と、スライダ本体に摺動可能に備えられたスライダ板と、スライダ板の上面に固定された筒状の加熱筒挿入保持部と、を有している。作業者は、加熱筒の取り外し時に加熱筒交換治具のスライダ本体を可動ダイプレートの上面に設置し、加熱筒保持プレートを下方に移動させて加熱筒の先端部を加熱筒挿入保持部に挿入する。そして、作業者は、加熱筒を加熱筒保持プレートから取り外して、スライダ板をスライダ本体に対して摺動させて、加熱筒挿入保持部に保持された加熱筒を竪型射出成形機の側方の所定位置まで移送する。
【0004】
特許文献2に開示されている竪型射出成形機は、可塑化ユニット取付板に枢支点を有する連結手段が設けられており、枢支点を中心として可塑化ユニット(加熱筒に相当)を旋回させて着脱を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-153110号公報
【特許文献2】特開平4-208427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の竪型射出成形機では、加熱筒保持プレートがボールねじ機構によって上下方向に移動可能に設けられている。竪型射出成形機は、スクリューが取り付けられるスクリュー保持プレート(直動プレート)を有している。スクリュー保持プレートは、加熱筒保持プレートの上方に配置されており、加熱筒保持プレートに対して上下方向に移動可能に設けられている。加熱筒保持プレートの上方にはボールねじ軸を連結する連結ブラケットが配置されている。竪型射出成形機は、加熱筒保持プレートとスクリュー保持プレートとが通常動作において最大限離れることが可能な距離(通常動作時最大離間距離)だけ離れている場合に加熱筒保持プレートが上方に移動したときでも、スクリュー保持プレートが連結ブラケットに衝突しないように、加熱筒保持プレートの上限位置が設定されている。そのため、加熱筒の交換のために加熱筒保持プレートをより高い位置まで移動可能にすると、衝突を回避するために連結ブラケットもより高い位置に配置する必要があり、竪型射出成形機の高さ方向の寸法が大きくなってしまう。また、加熱筒の交換時に加熱筒保持プレートを下方に移動させたとき、加熱筒の先端部と加熱筒挿入保持部とが衝突して、加熱筒が損傷するおそれがある。
【0007】
特許文献2の竪型射出成形機では、可塑化ユニットを取り付けるとき、人手によって可塑化ユニットを上下方向に沿うように配置する。しかしながら、竪型射出成形機の大型化に伴って可塑化ユニットも大型化すると、人手での作業が非常に困難になる。
【0008】
そこで、本発明は、高さ方向の寸法が大きくなることを抑制できる竪型射出成形機、人手での作業が可能で加熱筒の損傷を抑制できる加熱筒交換治具、および、加熱筒交換治具を使用した加熱筒交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る竪型射出成形機は、先端部が下方に向けられた加熱筒と、前記加熱筒に収容されるスクリューと、前記加熱筒が取り付けられる加熱筒保持プレートと、前記加熱筒保持プレートの上方に配置され、前記スクリューが取り付けられるスクリュー保持プレートと、前記加熱筒保持プレートを上下方向に移動させる射出装置駆動部と、前記スクリュー保持プレートを前記加熱筒保持プレートに対して上下方向に移動させるスクリュー駆動部と、前記射出装置駆動部および前記スクリュー駆動部を制御する制御装置と、を有する竪型射出成形機であって、前記加熱筒保持プレートと前記スクリュー保持プレートとが通常動作時最大離間距離だけ離れている場合に前記加熱筒保持プレートが上方に移動したときでも前記スクリュー保持プレートが前記竪型射出成形機の構成部材と衝突しないように、前記加熱筒保持プレートの通常動作時上限位置が設定されており、前記制御装置が、前記加熱筒保持プレートが前記通常動作時上限位置より上方に移動することを規制する通常動作モードと、前記加熱筒保持プレートが前記通常動作時上限位置より上方に移動することを許容する加熱筒交換モードと、を有していることを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る加熱筒交換治具は、竪型射出成形機の加熱筒の交換時に使用される加熱筒交換治具であって、前記竪型射出成形機の加熱筒保持プレートの下方に配置されるフレームと、前記加熱筒に取り付けられ、前記フレームに水平に設けられた移動用レーン上をスライド移動可能に構成されたスライダと、前記加熱筒を上下方向に移動させる昇降部材と、を有し、前記昇降部材が、前記フレームにねじ構造によって取り付けられたシャフトと、前記シャフトの上端部に取り付けられたテーブルと、を有し、前記シャフトを軸周りに回転させることによって前記テーブルが上下方向に移動するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る加熱筒交換方法は、先端部が下方に向けられた加熱筒と、前記加熱筒に収容されるスクリューと、前記加熱筒が取り付けられる加熱筒保持プレートと、前記加熱筒保持プレートの上方に配置され、前記スクリューが取り付けられるスクリュー保持プレートと、前記加熱筒保持プレートを上下方向に移動させる射出装置駆動部と、前記スクリュー保持プレートを前記加熱筒保持プレートに対して上下方向に移動させるスクリュー駆動部と、前記射出装置駆動部および前記スクリュー駆動部を制御する制御装置と、を有する竪型射出成形機において加熱筒交換治具を使用して前記加熱筒を交換する加熱筒交換方法であって、前記竪型射出成形機が、前記加熱筒保持プレートと前記スクリュー保持プレートとが通常動作時最大離間距離だけ離れている場合に前記加熱筒保持プレートが上方に移動したときでも前記スクリュー保持プレートが前記竪型射出成形機の構成部材と衝突しないように、前記加熱筒保持プレートの通常動作時上限位置が設定されており、前記制御装置が、前記加熱筒保持プレートが前記通常動作時上限位置より上方に移動することを規制する通常動作モードと、前記加熱筒保持プレートが前記通常動作時上限位置より上方に移動することを許容する加熱筒交換モードと、を有しており、前記加熱筒交換治具が、フレームと、前記フレームに水平に設けられた移動用レーン上をスライド移動可能に構成されたスライダと、前記加熱筒を上下方向に移動させる昇降部材と、を有し、前記昇降部材が、前記フレームにねじ構造によって取り付けられたシャフトと、前記シャフトの上端部に取り付けられたテーブルと、を有し、前記シャフトを軸周りに回転させることによって前記テーブルが上下方向に移動するように構成されており、前記制御装置を前記加熱筒交換モードに切り替えて、前記加熱筒保持プレートと前記スクリュー保持プレートとを前記通常動作時最大離間距離より近づけるとともに、前記加熱筒保持プレートを前記通常動作時上限位置より上方に移動させ、前記フレームを前記竪型射出成形機の前記加熱筒保持プレートの下方に配置し、前記スライダを前記加熱筒に取り付け、前記昇降部材の前記シャフトを軸周りに回転させて前記テーブルを前記加熱筒の先端部に当接するまで上方に移動させ、前記加熱筒を前記加熱筒保持プレートから外して前記テーブルに載せ、前記昇降部材の前記シャフトを軸周りに回転させて前記テーブルを前記スライダが前記移動用レーンに載るまで下方に移動させ、前記スライダを前記移動用レーン上でスライド移動させて、前記スライダとともに前記加熱筒を水平方向に移動させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る竪型射出成形機は、加熱筒保持プレートが通常動作時上限位置より上方に移動することを規制する通常動作モードと、加熱筒保持プレートが通常動作時上限位置より上方に移動することを許容する加熱筒交換モードと、を有している。このようにしたことから、成形動作などの通常動作を実行するときは通常動作モードに切り替えて、スクリュー保持プレートと竪型射出成形機の構成部材との衝突を回避できる。そして、加熱筒を交換するときは加熱筒交換モードに切り替えて、スクリュー保持プレートの衝突に注意しつつ、加熱筒保持プレートを通常動作時上限位置より上方に移動させることができる。そのため、竪型射出成形機の高さ方向の寸法が大きくなることを抑制できる。
【0013】
本発明に係る加熱筒交換治具は、加熱筒保持プレートの下方に配置されるフレームと、加熱筒に取り付けられ、フレームに水平に設けられた移動用レーン上をスライド移動可能に構成されたスライダと、加熱筒を上下方向に移動させる昇降部材と、を有している。そして、昇降部材が、フレームにねじ構造によって取り付けられたシャフトと、シャフトの上端部に取り付けられたテーブルと、を有し、シャフトを軸周りに回転させることによってテーブルが上下方向に移動するように構成されている。このようにしたことから、昇降部材のシャフトにハンドルなどを取り付けて回転させることにより、テーブルに載せた加熱筒を上下方向に手動で移動させることができる。また、スライダによって加熱筒を水平方向に容易に移動させることができる。
【0014】
また、本発明に係る加熱筒交換方法は、作業者が、竪型射出成形機を加熱筒交換モードに切り替えて、加熱筒保持プレートとスクリュー保持プレートとを通常動作時最大離間距離より近づけるとともに、加熱筒保持プレートを通常動作時上限位置より上方に移動させる。フレームを竪型射出成形機の加熱筒保持プレートの下方に配置する。スライダを加熱筒に取り付ける。昇降部材のシャフトを軸周りに回転させてテーブルを加熱筒の先端部に当接するまで上方に移動させる。加熱筒を加熱筒保持プレートから外してテーブルに載せる。昇降部材のシャフトを軸周りに回転させてテーブルをスライダが移動用レーンに載るまで下方に移動させる。スライダを移動用レーン上でスライド移動させて、スライダとともに加熱筒を水平方向に移動させる。このようにしたことから、加熱筒を人手によって容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る竪型射出成形機の正面図である。
図2図1の竪型射出成形機の機能ブロックを説明する図である。
図3図1の竪型射出成形機の加熱筒の交換に使用される加熱筒交換治具の斜視図である。
図4図3の加熱筒交換治具の正面図である。
図5図3の加熱筒交換治具の右側面図である。
図6図1の竪型射出成形機の加熱筒交換方法を説明する図である(加熱筒保持プレートおよびスクリュー保持プレートを通常動作モードにおける後退限位置に移動した状態)。
図7図1の竪型射出成形機の加熱筒交換方法を説明する図である(加熱筒保持プレートとスクリュー保持プレートとを通常動作時最大離間距離より近づけ、加熱筒保持プレートを通常動作時上限位置より上方に移動させた状態)。
図8図1の竪型射出成形機の加熱筒交換方法を説明する図である(可動ダイプレートの上面に加熱筒交換治具のフレームを配置した状態)。
図9図1の竪型射出成形機の加熱筒交換方法を説明する図である(加熱筒交換治具のフレームに昇降部材を取り付け、加熱筒にスライダを取り付けた状態)。
図10図1の竪型射出成形機の加熱筒交換方法を説明する図である(昇降部材のテーブルを加熱筒の先端部に当接させた状態)。
図11図1の竪型射出成形機の加熱筒交換方法を説明する図である(加熱筒に取り付けたスライダを後方から前方にスライドさせた状態)。
図12図1の竪型射出成形機の加熱筒交換方法を説明する図である(交換後の加熱筒を加熱筒保持プレートに取り付けた状態)。
図13図1の竪型射出成形機の加熱筒交換方法を説明する図である(交換後の加熱筒を加熱筒保持プレートに取り付けた後、加熱筒保持プレートおよびスクリュー保持プレートを通常動作モードにおける後退限位置に移動した状態)。
図14図1の竪型射出成形機の加熱筒交換方法を説明する図である(交換後の加熱筒にスクリューを挿入した状態)。
図15図1の竪型射出成形機の加熱筒交換方法を説明する図である(交換後の加熱筒に挿入したスクリューを上方に移動させた状態)。
図16図1の竪型射出成形機の加熱筒交換方法を説明する図である(交換後の加熱筒に挿入したスクリューをスクリュー保持プレートに取り付けた状態)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る竪型射出成形機について、図1図2を主に参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、竪型射出成形機1は、基台5上に、射出装置10と、型締装置20と、表示操作装置30と、を有している。また、図2に示すように、竪型射出成形機1は、制御装置40を有している。
【0018】
射出装置10は、上側金型2と下側金型3とによって形成されたキャビティに樹脂を射出充填する。射出装置10は、加熱筒11と、スクリュー12と、を有している。加熱筒11は、下方を向くノズル11aが先端部に設けられている。スクリュー12は、加熱筒11内に収容されている。
【0019】
型締装置20は、上側金型2と下側金型3とを開閉するとともに、上側金型2と下側金型3とを閉じた状態で型締力を発生させて型締する。型締装置20は、可動ダイプレート21と、ロータリーテーブル22と、を有している。可動ダイプレート21は、平板形状を有しており、上側金型2が下面21aに取り付けられる。ロータリーテーブル22は、下側金型3が上面22aに取り付けられる。ロータリーテーブル22は、複数の下側金型3が取り付けられており、回転することにより複数の下側金型3を順次上側金型2と対向する位置に搬送する。型締装置20によって上側金型2と下側金型3とが型締されるとキャビティが形成される。
【0020】
可動ダイプレート21の上方に加熱筒11が配置されている。可動ダイプレート21の中心部には、貫通孔21bが設けられている。貫通孔21bは、可動ダイプレート21の下面21aから上面21cまで貫通している。貫通孔21bの上部はすり鉢状に形成されている。貫通孔21bには、上面21c側からノズル11aが挿入される。射出装置10は、ノズル11aが上側金型2にタッチした状態でキャビティに溶融した樹脂を射出する。
【0021】
図6に示すように、射出装置10は、加熱筒保持プレート13と、スクリュー保持プレート14と、を有している。図6は、射出装置10のカバーを外した状態を示している。加熱筒保持プレート13は、ノズル11aが下方を向きかつ上下方向に沿うように加熱筒11を保持する。加熱筒保持プレート13には、加熱筒11の基端部が取り付けられる。加熱筒保持プレート13は、型締装置20のベースブラケット23の上方に上下方向に移動可能に配置されている。スクリュー保持プレート14は、スクリュー12を回転可能に保持する。スクリュー保持プレート14には、スクリュー12の基端部が取り付けられる。スクリュー保持プレート14は、加熱筒保持プレート13の上方に上下方向に移動可能に配置されている。
【0022】
射出装置10は、射出装置駆動部15と、スクリュー駆動部16と、を有している。
【0023】
射出装置駆動部15は、加熱筒保持プレート13を上下方向に移動させる。射出装置駆動部15は、ボールねじ機構15aと、図示しない射出装置移動用電動モータと、を有している。ボールねじ機構15aは、ボールねじ軸15a1と、ナット体15a2と、を有している。ボールねじ軸15a1は、ベースブラケット23から上方に延びるように配置されている。ボールねじ軸15a1は3本設けられている。各ボールねじ軸15a1の上端部は、連結ブラケット15bによって連結されている。連結ブラケット15bは、スクリュー保持プレート14の上方に配置されている。ナット体15a2は、加熱筒保持プレート13に取り付けられている。ナット体15a2は、射出装置移動用電動モータによって回転されるとボールねじ軸15a1に沿って上下方向に移動する。ナット体15a2は、各ボールねじ軸15a1に対応して3つ設けられている。
【0024】
スクリュー駆動部16は、スクリュー12を回転させるとともにスクリュー12を上下方向に移動させる。スクリュー駆動部16は、回転部材16aと、図示しないボールねじ機構と、図示しないスクリュー回転用電動モータと、図示しないスクリュー移動用電動モータと、を有している。回転部材16aは、スクリュー12と一体的に回転するように構成されている。回転部材16aがスクリュー回転用電動モータによって回転されると、スクリュー12が軸周りに回転する。スクリュー駆動部16のボールねじ機構は、スクリュー移動用電動モータによって駆動され、スクリュー12が取り付けられたスクリュー保持プレート14を加熱筒保持プレート13に対して上下方向に移動させる。
【0025】
表示操作装置30は、竪型射出成形機1に係る情報を表示する表示部31と、操作を入力するため操作部32と、を有している。表示部31および操作部32は、制御装置40に接続されている。表示部31は、制御装置40からの制御信号に基づき、表示領域に各種画面を表示する。操作部32は、複数のキーを備えており、各キーに入力された操作に応じた信号を制御装置40に送信する。なお、表示操作装置30は、操作部32として表示部31に重ねられたタッチパネルを備え、表示部31に表示したアイコンとタッチパネルとを組み合わせて構成したソフトウェアスイッチを有していてもよい。
【0026】
制御装置40は、マイクロコンピュータで構成されており、竪型射出成形機1の全体の動作を司る。制御装置40は、プログラムやデータを記憶するメモリを有している。制御装置40は、射出装置10や型締装置20などの各装置の動作を制御する。図2に示すように、制御装置40は、射出装置10(射出装置駆動部15、スクリュー駆動部16)、型締装置20および表示操作装置30(表示部31、操作部32)と接続されている。
【0027】
制御装置40のメモリには、加熱筒保持プレート13とスクリュー保持プレート14とが通常動作において最大限離れることが可能な距離(以下、「通常動作時最大離間距離Dm」という。)が記憶されている。通常動作において、加熱筒保持プレート13とスクリュー保持プレート14とが通常動作時最大離間距離Dmだけ離れているとき、スクリュー保持プレート14は後退限位置にある。また、制御装置40のメモリには、加熱筒保持プレート13とスクリュー保持プレート14とが通常動作時最大離間距離Dmだけ離れている場合に加熱筒保持プレート13が上方に移動したときでもスクリュー保持プレート14が竪型射出成形機1の構成部材(具体的には、連結ブラケット15b)と衝突しない加熱筒保持プレート13の上限位置(以下、「通常動作時上限位置Pm」という。)が記憶されている。通常動作時上限位置Pmは、通常動作における加熱筒保持プレート13の後退限位置である。通常動作とは、竪型射出成形機1の成形動作および成形動作に関連して実行される動作である。
【0028】
制御装置40は、通常動作モードと、加熱筒交換モードと、を有している。通常動作モードでは、制御装置40は、加熱筒保持プレート13が通常動作時上限位置Pmより上方に移動することを規制する。通常動作モードでは、制御装置40は、成形品を射出成形する成形動作や加熱筒11内の樹脂を排出するパージ動作などの通常動作を実行する。加熱筒交換モードでは、制御装置40は、加熱筒保持プレート13が通常動作時上限位置Pmより上方に移動することを許容する。加熱筒交換モードでは、制御装置40は、加熱筒11の交換に必要な動作を実行する。
【0029】
制御装置40は、通常動作モードにおいて、成形動作を実行する。成形動作において、制御装置40は、型締装置20を制御して、上側金型2と下側金型3とを型締する。制御装置40は、射出装置駆動部15を制御して、加熱筒11のノズル11aを上側金型2にタッチさせる。制御装置40は、スクリュー駆動部16を制御して、スクリュー12を回転させつつスクリュー保持プレート14とともに上方に移動させて樹脂を可塑化計量する。制御装置40は、スクリュー駆動部16を制御して、スクリュー12をスクリュー保持プレート14とともに下方に移動させてキャビティに樹脂を射出充填する。制御装置40は、型締装置20を制御して、キャビティから成形品を取り出すために上側金型2と下側金型3とを開く。
【0030】
制御装置40は、加熱筒交換モードにおいて、射出装置駆動部15およびスクリュー駆動部16を制御して、加熱筒保持プレート13とスクリュー保持プレート14とを通常動作時最大離間距離Dmより近づけるとともに、加熱筒保持プレート13を通常動作時上限位置Pmより上方に移動させる。具体的には、制御装置40は、射出装置駆動部15およびスクリュー駆動部16を制御して、加熱筒保持プレート13とスクリュー保持プレート14とを加熱筒11の交換作業に最低限必要な距離(以下、「加熱筒交換時距離Dn」という。)まで近づけるとともに、加熱筒保持プレート13を、スクリュー保持プレート14が連結ブラケット15bに衝突しない位置でかつ最も高い位置(以下、「加熱筒交換時上限位置Pn」という。)に移動させる。加熱筒交換時距離Dnは、通常動作時最大離間距離Dmより小さい。加熱筒交換時上限位置Pnは、通常動作時上限位置Pmより高い位置にある。なお、加熱筒交換時距離Dnは、加熱筒保持プレート13とスクリュー保持プレート14との機械的な限界近接距離であってもよい。
【0031】
次に、竪型射出成形機1の加熱筒11の交換時に使用される加熱筒交換治具100について、図3図5を主に参照して説明する。
【0032】
加熱筒交換治具100は、フレーム110と、スライダ120と、昇降部材130と、を有している。昇降部材130については、図10などに示す。
【0033】
フレーム110は、可動ダイプレート21の上面21cに配置され、可動ダイプレート21にボルトで固定される。フレーム110は、直方体形状のフレーム本体111を有しており、フレーム本体111の上部に水平方向に延びる移動用レーン112を有している。また、フレーム110は、フレーム本体111から上方に延びるガイドポスト113を有している。ガイドポスト113は、上下方向に沿って配置されている。ガイドポスト113は、フレーム本体111に着脱可能である。
【0034】
スライダ120は、加熱筒11に取り付けられる。スライダ120は、スライダ本体121と、車輪123と、取っ手124と、を有している。スライダ本体121は、平板形状を有しており、加熱筒11が内側に配置される加熱筒保持孔122が設けられている。加熱筒保持孔122の径は、加熱筒11の外径と同一である。加熱筒保持孔122の内面には、嵌合突起122bが設けられている。嵌合突起122bは、加熱筒11の外周面に設けられた嵌合穴11bに嵌合する。嵌合穴11bは、加熱筒11の上下方向の中央箇所または当該中央箇所より上方の箇所に設けられる。つまり、スライダ120は、加熱筒11の上下方向の中央箇所または当該中央箇所より上方の箇所に取り付けられる。なお、加熱筒11を加熱筒保持孔122から抜けないように保持可能であれば、加熱筒交換治具100および加熱筒11は、嵌合突起122bおよび嵌合穴11bを省略した構成を採用してもよい。車輪123は、4つ設けられており、スライダ本体121の前後左右の箇所に回転可能に取り付けられている。図5において点線で示すように、前後方向に並ぶ2つの車輪123の間には、ガイドポスト113が配置される。ガイドポスト113は、車輪123に接してスライダ120の上下方向の移動を案内する。スライダ本体121は、車輪123によって移動用レーン112を走行することにより、前後方向にスライド移動される。スライダ本体121は、左右対称となる形状を有しており、左部品121Aと、右部品121Bと、に分割可能に構成されている。スライダ本体121の前部には、取っ手124が取り付けられる。
【0035】
昇降部材130は、加熱筒11を上下方向に移動させる。図10などに示すように、昇降部材130は、シャフト131と、テーブル132と、を有している。シャフト131は、フレーム110にねじ構造によって取り付けられている。具体的には、シャフト131は、フレーム110のナット部材114に螺合されている。シャフト131の下端部には、シャフト131を軸周りに回転させるためのハンドル133が取り付けられる。テーブル132は、シャフト131の上端部にシャフト131に対して相対的に回転可能に取り付けられている。昇降部材130は、ハンドル133を回してシャフト131を軸周りに回転させることによってテーブル132が上下方向に移動するように構成されている。
【0036】
次に、上述した竪型射出成形機1において加熱筒交換治具100を使用して加熱筒11を交換する加熱筒交換方法の一例を、図6図16を参照して説明する。図6図11図12(a)、図13図14(a)、図15および図16は、竪型射出成形機1における可動ダイプレート21より上方の部分を右側から見た図である。図12(b)および図14(b)は、加熱筒11を下方から見た図である。図6図16において、説明の便宜上、一部の部材を断面図で示したり、記載を省略したりしている。
【0037】
加熱筒11の取り外しについて説明する。
【0038】
作業者は、操作部32を操作し、通常動作モードの制御装置40によって射出装置駆動部15およびスクリュー駆動部16を制御して、図6に示すように、加熱筒保持プレート13とスクリュー保持プレート14とを通常動作時最大離間距離Dmだけ離すとともに、加熱筒保持プレート13を通常動作時上限位置Pmに移動させる。このとき、加熱筒保持プレート13およびスクリュー保持プレート14は、通常動作における後退限位置にある。作業者は、射出装置10のカバーを取り外して、加熱筒保持プレート13およびスクリュー保持プレート14を露出させる。作業者は、ベースブラケット23のカバー24を取り外して、加熱筒11の先端部を露出させる。作業者は、加熱筒11からノズル11aを取り外す。作業者は、スクリュー保持プレート14からスクリュー12を取り外して加熱筒11の先端部からスクリュー12を抜き出す。
【0039】
次に作業者は、操作部32を操作して、通常動作モードから加熱筒交換モードに切り替える。そして、制御装置40によって射出装置駆動部15およびスクリュー駆動部16を制御して、図7に示すように、加熱筒保持プレート13とスクリュー保持プレート14とを加熱筒交換時距離Dnまで近づけるとともに、加熱筒保持プレート13を加熱筒交換時上限位置Pnに移動させる。そして、作業者は、竪型射出成形機1の電源をオフにする。
【0040】
次に作業者は、図8に示すように、加熱筒交換治具100のフレーム110を可動ダイプレート21の上面21cに配置し、フレーム110を可動ダイプレート21にボルトで固定する。このとき、フレーム110のナット部材114の中心軸と加熱筒11の中心軸とを一致させる。
【0041】
次に作業者は、図9に示すように、加熱筒11にスライダ120を取り付ける。具体的には、加熱筒保持孔122の内側に加熱筒11が配置されるように左部品121Aと右部品121Bとで挟むとともに、左部品121Aと右部品121Bとをボルトとナットで結合させる。このとき、加熱筒保持孔122の内周面に設けられた嵌合突起122bを加熱筒11の外周面に設けられた嵌合穴11bに嵌合させる。これにより、加熱筒11にスライダ120が取り付けられる。また、作業者は、フレーム110に昇降部材130を取り付ける。具体的には、作業者は、シャフト131をフレーム110のナット部材114に螺合させ、シャフト131の上端部にテーブル132を取り付ける。
【0042】
次に作業者は、図10に示すように、シャフト131の下端部にハンドル133を取り付ける。そして、作業者は、ハンドル133を回転させることによりシャフト131を軸周りに回転させて、テーブル132を加熱筒11の下端部に当接するまで上方に移動させる。
【0043】
次に作業者は、加熱筒保持プレート13から加熱筒11を取り外して、加熱筒11をテーブル132に載せる。作業者は、ハンドル133を回転させることによりシャフト131を軸周りに回転させて、図11に示すように、テーブル132をスライダ120がフレーム110の移動用レーン112に載るまで下方に移動させる。このとき、スライダ120の前後方向に並ぶ車輪123の間にガイドポスト113が配置され、ガイドポスト113がスライダ120の下方への移動を案内する。作業者は、スライダ120の取っ手124を前方に引っ張ることによりスライダ120とともに加熱筒11を前方に移動させる。作業者は、前方に移動した加熱筒11の基端部にアイボルト150を取り付けて、図示しないクレーンを使用して加熱筒11を搬出する。
【0044】
加熱筒11の取り付けについて説明する。
【0045】
作業者は、図示しないクレーンを使用してスライダ120が取り付けられた加熱筒11を当該スライダ120がフレーム110の移動用レーン112に載るように搬入する。作業者は、スライダ120の取っ手124を後方に押すことによりスライダ120とともに加熱筒11を後方に移動させる。このとき、フレーム110のナット部材114の中心軸と加熱筒11の中心軸とを一致させる。作業者は、ハンドル133を回転させることによりシャフト131を軸周りに回転させて、テーブル132を加熱筒11の先端部に当接するまで上方に移動させる。作業者は、ハンドル133をさらに回転させ、テーブル132を加熱筒11の基端部が加熱筒保持プレート13の取付位置に至るまで上方に移動させる。このとき、スライダ120の前後方向に並ぶ車輪123の間にガイドポスト113が配置され、ガイドポスト113がスライダ120の上方への移動を案内する。作業者は、図12に示すように、加熱筒保持プレート13に加熱筒11の基端部を取り付ける。また、作業者は、加熱筒11の先端部に、スクリュー落下防止治具140を取り付ける。スクリュー落下防止治具140は、帯板形状を有しており、一端にボルト孔が設けられ、他端にボルトに引っ掛けられる切り欠き140aが設けられている。スクリュー落下防止治具140は、ボルト孔を中心に回転可能なように加熱筒11に取り付けられる。
【0046】
次に作業者は、フレーム110から昇降部材130を取り外す。作業者は、竪型射出成形機1の電源をオンにする。作業者は、操作部32を操作して、加熱筒交換モードから通常動作モードに切り替え、制御装置40によって射出装置駆動部15およびスクリュー駆動部16を制御して、図13に示すように、加熱筒保持プレート13とスクリュー保持プレート14とを通常動作時最大離間距離Dmだけ離すとともに、加熱筒保持プレート13を通常動作時上限位置Pmに移動させる。
【0047】
次に作業者は、図14に示すように、加熱筒11の先端部からスクリュー12を挿入する。作業者は、スクリュー落下防止治具140を回転させて切り欠き140aをボルトに引っ掛ける。これにより、スクリュー12の落下を防ぐことができる。
【0048】
次に作業者は、図15に示すように、柱状のスクリュー持ち上げ用治具134をスクリュー落下防止治具140の治具挿通孔140bを通じて加熱筒11の先端部に挿入するとともに、昇降部材130をフレーム110に取り付ける。
【0049】
次に作業者は、図16に示すように、ハンドル133を回転させることによりシャフト131を軸周りに回転させて、テーブル132とともにスクリュー持ち上げ用治具134を、スクリュー12の基端部がスクリュー保持プレート14の取付位置に至るまで上方に移動させる。作業者は、スクリュー保持プレート14にスクリュー12の基端部を取り付ける。作業者は、フレーム110を可動ダイプレート21から取り外す。作業者は、加熱筒11の先端部からスクリュー落下防止治具140を取り外し、加熱筒11の先端部にノズル11aを取り付ける。作業者は、ベースブラケット23のカバー24を取り付けて、加熱筒11の先端部を覆う。そして、作業者は、射出装置10のカバーを取り付けて、加熱筒保持プレート13およびスクリュー保持プレート14を覆う。このようにして、竪型射出成形機1において加熱筒11を交換する。
【0050】
以上説明したように、竪型射出成形機1は、先端部が下方に向けられた加熱筒11と、加熱筒11に収容されるスクリュー12と、加熱筒11が取り付けられる加熱筒保持プレート13と、加熱筒保持プレート13の上方に配置され、スクリュー12が取り付けられるスクリュー保持プレート14と、加熱筒保持プレート13を上下方向に移動させる射出装置駆動部15と、スクリュー保持プレート14を加熱筒保持プレート13に対して上下方向に移動させるスクリュー駆動部16と、射出装置駆動部15およびスクリュー駆動部16を制御する制御装置40と、を有している。竪型射出成形機1には、加熱筒保持プレート13とスクリュー保持プレート14とが通常動作時最大離間距離Dmだけ離れている場合に加熱筒保持プレート13が上方に移動したときでもスクリュー保持プレート14が連結ブラケット15bと衝突しないように、加熱筒保持プレート13の通常動作時上限位置Pmが設定されている。そして、制御装置40が、加熱筒保持プレート13が通常動作時上限位置Pmより上方に移動することを規制する通常動作モードと、加熱筒保持プレート13が通常動作時上限位置Pmより上方に移動することを許容する加熱筒交換モードと、を有している。このようにしたことから、成形動作などの通常動作を実行するときは通常動作モードに切り替えて、スクリュー保持プレート14と連結ブラケット15bとの衝突を回避できる。そして、加熱筒11を交換するときは加熱筒交換モードに切り替えて、スクリュー保持プレート14の衝突に注意しつつ、加熱筒保持プレート13を通常動作時上限位置Pmより上方に移動させることができる。そのため、竪型射出成形機1の高さ方向の寸法が大きくなることを抑制できる。
【0051】
また、制御装置40が、加熱筒交換モードにおいて、加熱筒保持プレート13とスクリュー保持プレート14とを通常動作時最大離間距離Dmより近づけるとともに、加熱筒保持プレート13を通常動作時上限位置Pmより上方に移動させるように、射出装置駆動部15およびスクリュー駆動部16を制御する。このようにすることで、加熱筒11の交換時に加熱筒保持プレート13を上方に移動させたときにスクリュー保持プレート14が上方に移動することを抑えることができる。そのため、竪型射出成形機1の高さ方向の寸法が大きくなることを抑制できる。
【0052】
また、加熱筒交換治具100が、竪型射出成形機1の加熱筒保持プレート13の下方に配置されるフレーム110と、加熱筒11に取り付けられ、フレーム110に水平に設けられた移動用レーン112上をスライド移動可能に構成されたスライダ120と、加熱筒11を上下方向に移動させる昇降部材130と、を有している。昇降部材130が、フレーム110にねじ構造によって取り付けられたシャフト131と、シャフト131の上端部に取り付けられたテーブル132と、を有している。昇降部材130が、シャフト131を軸周りに回転させることによってテーブル132が上下方向に移動するように構成されている。このようにしたことから、昇降部材130のシャフト131にハンドル133を取り付けて回転させることにより、テーブル132に載せた加熱筒11を上下方向に手動で移動させることができる。また、スライダ120によって加熱筒11を水平方向に容易に移動させることができる。なお、ハンドル133に代えて、手持ち式の電動ドリルを用いてシャフト131を回転させるようにしてもよい。シャフト131をハンドル133や手持ち式の電動ドリルで回転させることで、作業者は、加熱筒11が何らかの部材に衝突したときの回転負荷の変化を敏感に感じ取ることができ、シャフト131の回転を直ちに停止することができる。そのため、加熱筒11の損傷を抑制できる。
【0053】
また、スライダ120が、移動用レーン112を走行するための複数の車輪123を有している。フレーム110が、複数の車輪123の間に配置され、スライダ120の上下方向の移動を案内するガイドポスト113を有している。このようにすることで、加熱筒11の上下方向の移動時に加熱筒11が傾いてしまうことを防ぐことができる。
【0054】
また、スライダ120が、加熱筒11の上下方向の中央箇所または当該中央箇所より上方の箇所に取り付けられる。このようにすることで、加熱筒11を上下方向または水平方向に移動させる際に、加熱筒11の姿勢を安定させることができる。
【0055】
また、加熱筒11の交換作業において、作業者は、制御装置40を加熱筒交換モードにする。加熱筒保持プレート13とスクリュー保持プレート14とを通常動作時最大離間距離Dmより近づけるとともに、加熱筒保持プレート13を通常動作時上限位置Pmより上方に移動させる。フレーム110を竪型射出成形機1の加熱筒保持プレート13の下方に配置する。スライダ120を加熱筒11に取り付ける。昇降部材130のシャフト131を軸周りに回転させてテーブル132を加熱筒11の先端部に当接するまで上方に移動させる。加熱筒11を加熱筒保持プレート13から取り外してテーブル132に載せる。昇降部材130のシャフト131を軸周りに回転させてテーブル132をスライダ120が移動用レーン112に載るまで下方に移動させる。スライダ120を移動用レーン112上でスライド移動させて、スライダ120とともに加熱筒11を水平方向に移動させる。このようにしたことから、加熱筒11を人手によって容易に交換することができる。
【0056】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…竪型射出成形機、2…上側金型、3…下側金型、5…基台、10…射出装置、11…加熱筒、11a…ノズル、11b…嵌合穴、12…スクリュー、13…加熱筒保持プレート、14…スクリュー保持プレート、15…射出装置駆動部、15a…ボールねじ機構、15a1…ボールねじ軸、15a2…ナット体、16…スクリュー駆動部、16a…回転部材、20…型締装置、21…可動ダイプレート、21a…下面、21b…貫通孔、21c…上面、22…ロータリーテーブル、22a…上面、23…ベースブラケット、24…カバー、30…表示操作装置、31…表示部、32…操作部、40…制御装置、100…加熱筒交換治具、110…フレーム、111…フレーム本体、112…移動用レーン、113…ガイドポスト、114…ナット部材、120…スライダ、121…スライダ本体、121A…左部品、121B…右部品、122…加熱筒保持孔、122b…嵌合突起、123…車輪、124…取っ手、130…昇降部材、131…シャフト、132…テーブル、133…ハンドル、134…スクリュー持ち上げ用治具、140…スクリュー落下防止治具、140a…切り欠き、140b…治具挿通孔、150…アイボルト、Dm…通常動作時最大離間距離、Dn…加熱筒交換時距離、Pm…通常動作時上限位置、Pn…加熱筒交換時上限位置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16