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特開2022-153069電力変換装置、電力変換システム、制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153069
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】電力変換装置、電力変換システム、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
H02M3/28 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056103
(22)【出願日】2021-03-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、環境省、CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 繁之
(72)【発明者】
【氏名】塚本 剛平
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 健一
(72)【発明者】
【氏名】松井 亮二
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730BB27
5H730DD04
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE57
5H730EE58
5H730FD11
5H730FD51
5H730FG07
5H730FG15
(57)【要約】
【課題】本開示は、DC/DCコンバータが異常な動作をする可能性を低減させることを目的とする。
【解決手段】電力変換装置3は、DC/DCコンバータ1と、制御回路2と、を備える。DC/DCコンバータ1は、一対の第1端11、12と、第1巻線N1と、1つ以上の第1スイッチング要素Q1~Q4と、1つ以上の第1ダイオードD1~D4と、一対の第2端13、14と、第2巻線N2と、1つ以上の第2スイッチング要素Q5~Q8と、1つ以上の第2ダイオードD5~D8と、を有する。同期整流制御において、制御回路2は、第1スイッチング要素Q1~Q4をオンからオフに切り替える第1タイミングから遅れ時間だけ遅れた第2タイミングに、第2スイッチング要素Q5~Q8をオフからオンに切り替える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータの動作を制御する制御回路と、を備え、
前記DC/DCコンバータは、
一対の第1端と、
第1巻線と、
前記第1巻線と前記一対の第1端との間に電気的に接続された1つ以上の第1スイッチング要素と、
1つ以上の前記第1スイッチング要素に一対一で対応して並列に接続された1つ以上の第1ダイオードと、
一対の第2端と、
前記第1巻線と共に絶縁トランスを構成する第2巻線と、
前記第2巻線と前記一対の第2端との間に電気的に接続された1つ以上の第2スイッチング要素と、
1つ以上の前記第2スイッチング要素に一対一で対応して並列に接続された1つ以上の第2ダイオードと、を有し、
前記制御回路は、前記第1スイッチング要素と前記第2スイッチング要素との両方をオンオフする同期整流制御を行い、
前記同期整流制御において、前記制御回路は、前記第1スイッチング要素をオンからオフに切り替える第1タイミングから遅れ時間だけ遅れた第2タイミングに、前記第2スイッチング要素をオフからオンに切り替える、
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御回路は、所定のパラメータに基づいて、前記遅れ時間を決定し、
前記所定のパラメータは、前記一対の第1端における1次側電圧、1次側電流及び1次側電力、並びに、前記一対の第2端における2次側電圧、2次側電流及び2次側電力のうち少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記所定のパラメータは、前記第1スイッチング要素のスイッチング周波数を更に含む、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記2次側電流の正負が切り替わるタイミングよりも遅れたタイミングに前記第2スイッチング要素をオフからオンに切り替えるように、前記遅れ時間を決定する、
請求項2又は3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記所定のパラメータの変化に対して前記遅れ時間を連続的に変化させる、
請求項2~4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記所定のパラメータの変化に対して前記遅れ時間を不連続に変化させる、
請求項2~4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記DC/DCコンバータは、前記第1巻線に電気的に接続された第1キャパシタと、前記第2巻線に電気的に接続された第2キャパシタと、のうち少なくとも一方を更に有し、
前記制御回路は、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタのうち少なくとも一方と、前記第1巻線側の第1漏れインダクタンスと、前記第2巻線側の第2漏れインダクタンスと、を含む共振回路の共振周波数が、前記第1スイッチング要素及び前記第2スイッチング要素のスイッチング周波数よりも低い場合に、前記第2スイッチング要素をオンからオフに切り替えるタイミングを前記共振周波数に基づいて決定する、
請求項2~6のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記制御回路は、前記第2スイッチング要素をオフに維持し前記第1スイッチング要素をオンオフするダイオード整流制御と、前記同期整流制御と、の切替のタイミングを、前記所定のパラメータに基づいて決定する、
請求項2~7のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記制御回路が前記ダイオード整流制御から前記同期整流制御へ切り替えるときの前記所定のパラメータと、前記制御回路が前記同期整流制御から前記ダイオード整流制御へ切り替えるときの前記所定のパラメータと、にヒステリシスを持たせた、
請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の電力変換装置と、
前記DC/DCコンバータの前記一対の第1端又は前記一対の第2端に電気的に接続されたインバータと、を備える、
電力変換システム。
【請求項11】
DC/DCコンバータの動作を制御する制御方法であって、
前記DC/DCコンバータは、
一対の第1端と、
第1巻線と、
前記第1巻線と前記一対の第1端との間に電気的に接続された1つ以上の第1スイッチング要素と、
1つ以上の前記第1スイッチング要素に一対一で対応して並列に接続された1つ以上の第1ダイオードと、
一対の第2端と、
前記第1巻線と共に絶縁トランスを構成する第2巻線と、
前記第2巻線と前記一対の第2端との間に電気的に接続された1つ以上の第2スイッチング要素と、
1つ以上の前記第2スイッチング要素に一対一で対応して並列に接続された1つ以上の第2ダイオードと、を有し、
前記制御方法は、前記第1スイッチング要素と前記第2スイッチング要素との両方をオンオフする同期整流制御を行うことを含み、
前記同期整流制御では、前記第1スイッチング要素をオンからオフに切り替える第1タイミングから遅れ時間だけ遅れた第2タイミングに、前記第2スイッチング要素をオフからオンに切り替える、
制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の制御方法を、1以上のプロセッサに実行させるための、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に電力変換装置、電力変換システム、制御方法及びプログラムに関する。本開示は、より詳細には、DC/DCコンバータを備える電力変換装置、電力変換システム、このDC/DCコンバータの動作を制御する制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の共振形電源装置(電力変換装置)は、入力電圧を1次側スイッチング素子によりスイッチングすることでトランスと共振素子にパルス状の電圧を印加し、2次側スイッチング素子によりスイッチングして出力電圧を制御する。共振形電源装置は、出力電圧の指令値を、パルス状の電圧の振幅のトランスの巻数比分の一以下に設定し、該設定している期間のスイッチング周波数を取得し、該取得したスイッチング周波数に基づき2次側スイッチング素子のゲート信号を補正する制御機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-195664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、DC/DCコンバータが異常な動作をする可能性を低減させることができる電力変換装置、電力変換システム、制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る電力変換装置は、DC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバータの動作を制御する制御回路と、を備える。前記DC/DCコンバータは、一対の第1端と、第1巻線と、1つ以上の第1スイッチング要素と、1つ以上の第1ダイオードと、一対の第2端と、第2巻線と、1つ以上の第2スイッチング要素と、1つ以上の第2ダイオードと、を有する。前記第1スイッチング要素は、前記第1巻線と前記一対の第1端との間に電気的に接続されている。1つ以上の前記第1ダイオードは、1つ以上の前記第1スイッチング要素に一対一で対応して並列に接続されている。前記第2巻線は、前記第1巻線と共に絶縁トランスを構成する。前記第2スイッチング要素は、前記第2巻線と前記一対の第2端との間に電気的に接続されている。1つ以上の前記第2ダイオードは、1つ以上の前記第2スイッチング要素に一対一で対応して並列に接続されている。前記制御回路は、前記第1スイッチング要素と前記第2スイッチング要素との両方をオンオフする同期整流制御を行う。前記同期整流制御において、前記制御回路は、前記第1スイッチング要素をオンからオフに切り替える第1タイミングから遅れ時間だけ遅れた第2タイミングに、前記第2スイッチング要素をオフからオンに切り替える。
【0006】
本開示の一態様に係る電力変換システムは、前記電力変換装置と、インバータと、を備える。前記インバータは、前記DC/DCコンバータの前記一対の第1端又は前記一対の第2端に電気的に接続されている。
【0007】
本開示の一態様に係る制御方法は、DC/DCコンバータの動作を制御する制御方法である。前記DC/DCコンバータは、一対の第1端と、第1巻線と、1つ以上の第1スイッチング要素と、1つ以上の第1ダイオードと、一対の第2端と、第2巻線と、1つ以上の第2スイッチング要素と、1つ以上の第2ダイオードと、を有する。前記第1スイッチング要素は、前記第1巻線と前記一対の第1端との間に電気的に接続されている。1つ以上の前記第1ダイオードは、1つ以上の前記第1スイッチング要素に一対一で対応して並列に接続されている。前記第2巻線は、前記第1巻線と共に絶縁トランスを構成する。前記第2スイッチング要素は、前記第2巻線と前記一対の第2端との間に電気的に接続されている。1つ以上の前記第2ダイオードは、1つ以上の前記第2スイッチング要素に一対一で対応して並列に接続されている。前記制御方法は、前記第1スイッチング要素と前記第2スイッチング要素との両方をオンオフする同期整流制御を行うことを含む。前記同期整流制御では、前記第1スイッチング要素をオンからオフに切り替える第1タイミングから遅れ時間だけ遅れた第2タイミングに、前記第2スイッチング要素をオフからオンに切り替える。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記制御方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、DC/DCコンバータが異常な動作をする可能性を低減させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係る電力変換システムの回路ブロック図である。
図2図2は、同上の電力変換システムの高周波スイッチングにおける第1同期整流制御の説明図である。
図3図3は、同上の電力変換システムの要部の回路図である。
図4図4は、同上の電力変換システムの高周波スイッチングにおける第2同期整流制御の説明図である。
図5図5は、同上の電力変換システムに対する比較例に係る制御を示す説明図である。
図6図6は、同上の電力変換システムの低周波スイッチングにおける第1同期整流制御の説明図である。
図7図7は、実施形態2に係る電力変換システムの要部の等価回路図である。
図8図8は、同上の電力変換システムの制御を示す説明図である。
図9図9は、実施形態3に係る電力変換システムの制御を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記の各実施形態においては、本開示の電力変換装置及び電力変換システムについて、図面を用いて説明する。ただし、下記の各実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。下記の各実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
(実施形態1)
(概要)
図1に示すように、本実施形態の電力変換装置3は、DC/DCコンバータ1と、制御回路2と、を備える。制御回路2は、DC/DCコンバータ1の動作を制御する。
【0013】
DC/DCコンバータ1は、一対の第1端11、12と、第1巻線N1と、1つ以上(図1では4つ)の第1スイッチング要素Q1~Q4と、1つ以上(図1では4つ)の第1ダイオードD1~D4と、一対の第2端13、14と、第2巻線N2と、1つ以上(図1では4つ)の第2スイッチング要素Q5~Q8と、1つ以上(図1では4つ)の第2ダイオードD5~D8と、を有する。第1スイッチング要素Q1~Q4は、第1巻線N1と一対の第1端11、12との間に電気的に接続されている。1つ以上の第1ダイオードD1~D4は、1つ以上の第1スイッチング要素Q1~Q4に一対一で対応して並列に接続されている。第2巻線N2は、第1巻線N1と共に絶縁トランスTr1を構成する。第2スイッチング要素Q5~Q8は、第2巻線N2と一対の第2端13、14との間に電気的に接続されている。1つ以上の第2ダイオードD5~D8は、1つ以上の第2スイッチング要素Q5~Q8に一対一で対応して並列に接続されている。制御回路2は、第1スイッチング要素Q1~Q4と第2スイッチング要素Q5~Q8との両方をオンオフする同期整流制御を行う。同期整流制御において、制御回路2は、第1スイッチング要素Q1~Q4をオンからオフに切り替える第1タイミングから遅れ時間tx(図2参照)だけ遅れた第2タイミングに、第2スイッチング要素Q5~Q8をオフからオンに切り替える。
【0014】
本実施形態によれば、同期整流制御において遅れ時間txを設けることにより、第2巻線N2に正方向の電流が流れるべき期間に負方向の電流が流れる可能性を低減させることができ、第2巻線N2に負方向の電流が流れるべき期間に正方向の電流が流れる可能性を低減させることができる。このように、第2巻線N2に逆方向の電流が流れる可能性を低減させることができる。つまり、DC/DCコンバータ1が異常な動作をする可能性を低減させることができる。
【0015】
また、第2スイッチング要素Q5~Q8をオンすることにより、第2ダイオードD5~D8ではなく第2スイッチング要素Q5~Q8に電流が流れるので、第2ダイオードD5~D8における電流損失を低減させることができる。
【0016】
なお、以下の説明では、第1スイッチング要素Q1~Q4及び第2スイッチング要素Q5~Q8をそれぞれ、単に、スイッチング要素Q1~Q8と称することがある。また、以下の説明では、第1ダイオードD1~D4及び第2ダイオードD5~D8をそれぞれ、単に、ダイオードD1~D8と称することがある。
【0017】
(詳細)
(1)電力変換システムの構成
図1に示すように、電力変換システム10は、電力変換装置3と、インバータ5と、を備える。インバータ5は、DC/DCコンバータ1の第1端11、12又は第2端13、14に電気的に接続されていればよい。本実施形態では、インバータ5は、DC/DCコンバータ1の第2端13、14に電気的に接続されている。電力変換システム10は、検出回路4と、チョッパ回路6と、を更に備える。
【0018】
電力変換システム10は、電力の供給源と供給先との間に電気的に接続される。電力変換システム10は、電力の供給源から入力された電力を変換し、変換後の電力を供給先へ出力する。本実施形態の電力変換システム10は、双方向に電力変換可能である。そのため、ある時点で電力の供給源であった構成が、別の時点では電力の供給先であってもよい。反対に、ある時点で電力の供給先であった構成が、別の時点では電力の供給源であってもよい。
【0019】
図1では、電力の供給源又は供給先として、蓄電池B1が電力変換システム10に電気的に接続されている。電力の供給源としての蓄電池B1は、電力変換システム10を介して、負荷へ電力を供給する。また、電力の供給先としての蓄電池B1は、電力変換システム10を介して、商用電源等の電源から電力を受電し、充電される。蓄電池B1は、例えば、電気自動車に搭載される。電力変換システム10は、例えば、CHAdeMO(登録商標)仕様に対応したパワーコンディショナである。
【0020】
図1に示すように、DC/DCコンバータ1は、絶縁トランスTr1を用いた絶縁型双方向DC/DCコンバータである。より詳細には、DC/DCコンバータ1は、第1キャパシタC1、第1インダクタL1、第2インダクタL2及び第2キャパシタC2による共振を利用するCLLC共振方式の双方向DC/DCコンバータである。第1インダクタL1及び第2インダクタL2は、絶縁トランスTr1の漏れインダクタンスである。
【0021】
DC/DCコンバータ1は、絶縁トランスTr1、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2を有する。また、DC/DCコンバータ1は、第1端11、12及び第2端13、14を有する。第1端11、12及び第2端13、14はそれぞれ、端子であってもよいし、電力変換システム10の回路を構成する配線の一部であってもよい。
【0022】
DC/DCコンバータ1は、スイッチング方式のDC/DCコンバータであり、複数(図1では8つ)のスイッチング素子S1~S8(半導体スイッチング素子)を有する。絶縁トランスTr1の第1巻線N1は、スイッチング素子S1~S4を介して、第1端11、12に電気的に接続されている。絶縁トランスTr1の第2巻線N2は、スイッチング素子S5~S8を介して、第2端13、14に電気的に接続されている。以下の説明では、第2巻線N2よりも第1巻線N1側の構成を「1次側」と呼び、第1巻線N1よりも第2巻線N2側の構成を「2次側」と呼ぶことがある。
【0023】
インバータ5は、スイッチング方式のインバータであり、複数(図1では6つ)のスイッチング素子S9~S14(半導体スイッチング素子)を有する。インバータ5は、3つのインダクタL3~L5を更に有する。
【0024】
チョッパ回路6は、DC/DCコンバータ1と蓄電池B1との間に電気的に接続されている。チョッパ回路6は、インダクタL6と、複数(図1では2つ)のスイッチング素子S15、S16(半導体スイッチング素子)と、を有する。
【0025】
各スイッチング素子S1~S16は、制御端子、第1主端子及び第2主端子を有する。各スイッチング素子S1~S16の制御端子は、制御回路2に電気的に接続されている。各スイッチング素子S1~S16は、制御回路2から与えられる制御信号(制御電圧)に応じてオンオフされる。すなわち、制御回路2から与えられる制御信号に応じて、第1主端子と第2主端子との間の導通の有無が切り替わる。
【0026】
本実施形態では、一例として、各スイッチング素子S1~S16は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)である。より詳細には、各スイッチング素子S1~S16は、nチャネルMOSFETである。ここで、nチャネルMOSFETは、ノーマリオフ型のSi系MOSFETである。各スイッチング素子S1~S16の制御端子、第1主端子及び第2主端子は、それぞれ、ゲート端子、ドレイン端子及びソース端子である。
【0027】
制御回路2は、DC/DCコンバータ1と、インバータ5と、チョッパ回路6と、をそれぞれ独立してスイッチング制御する。制御回路2は、各スイッチング素子S1~S8に対して、PFM(Pulse Frequency Modulation)制御を行う。すなわち、各スイッチング素子S1~S8のスイッチング周波数は、可変である。各スイッチング素子S1~S8は、共通のスイッチング周波数でスイッチングされる。スイッチング周波数を、DC/DCコンバータ1の共振周波数に近づけるほど、DC/DCコンバータ1のゲインが大きくなる。DC/DCコンバータ1の共振周波数は、第1キャパシタC1、第1インダクタL1、第2インダクタL2及び第2キャパシタC2による共振回路RC1により決まる。
【0028】
各スイッチング素子S1~S16は、スイッチング要素と、ダイオードと、を含む。図1では、スイッチング素子S1~S8に含まれるスイッチング要素Q1~Q8及びダイオードD1~D8に符号を付し、スイッチング素子S9~S16に含まれるスイッチング要素及びダイオードの符号は省略してある。
【0029】
スイッチング要素は、制御回路2から与えられる制御信号(制御電圧)に応じてオンオフされる構成である。
【0030】
各ダイオードは、MOSFETであるスイッチング素子S1~S16の寄生ダイオードである。各ダイオードは、アノード及びカソードを有する。各スイッチング素子S1~S16において、ダイオードのアノードは、第2主端子(ソース端子)に電気的に接続されており、ダイオードのカソードは、第1主端子(ドレイン端子)に電気的に接続されている。つまり、ダイオードは、スイッチング要素に逆並列に接続されている。
【0031】
DC/DCコンバータ1は、スイッチング要素Q1、Q2の直列回路と、スイッチング要素Q3、Q4の直列回路と、スイッチング要素Q5、Q6の直列回路と、スイッチング要素Q7、Q8の直列回路と、を有する。スイッチング要素Q1、Q2の直列回路は、第1端11、12の間に電気的に接続されている。スイッチング要素Q3、Q4の直列回路は、第1端11、12の間に電気的に接続されている。スイッチング要素Q5、Q6の直列回路は、第2端13、14の間に電気的に接続されている。スイッチング要素Q7、Q8の直列回路は、第2端13、14の間に電気的に接続されている。
【0032】
スイッチング素子S1、S3は、第1端11、12のうち第1端11側に設けられ、スイッチング素子S2、S4は、第1端11、12のうち第1端12側に設けられている。
【0033】
スイッチング素子S1のドレイン端子は、第1端11に電気的に接続されている。スイッチング素子S1のソース端子は、スイッチング素子S2のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチング素子S2のソース端子は、第1端12に電気的に接続されている。
【0034】
スイッチング素子S3のドレイン端子は、第1端11に電気的に接続されている。スイッチング素子S3のソース端子は、スイッチング素子S4のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチング素子S4のソース端子は、第1端12に電気的に接続されている。
【0035】
スイッチング素子S5のドレイン端子は、第2端13に電気的に接続されている。スイッチング素子S5のソース端子は、スイッチング素子S6のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチング素子S6のソース端子は、第2端14に電気的に接続されている。
【0036】
スイッチング素子S7のドレイン端子は、第2端13に電気的に接続されている。スイッチング素子S7のソース端子は、スイッチング素子S8のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチング素子S8のソース端子は、第2端14に電気的に接続されている。
【0037】
絶縁トランスTr1の第1巻線N1は、第1キャパシタC1に直列に接続されている。第1巻線N1及び第1キャパシタC1の直列回路は、スイッチング素子S1とスイッチング素子S2との接続点と、スイッチング素子S3とスイッチング素子S4との接続点と、の間に電気的に接続されている。
【0038】
絶縁トランスTr1の第2巻線N2は、第2キャパシタC2に直列に接続されている。第2巻線N2及び第2キャパシタC2の直列回路は、スイッチング素子S5とスイッチング素子S6との接続点と、スイッチング素子S7とスイッチング素子S8との接続点と、の間に電気的に接続されている。
【0039】
絶縁トランスTr1において、1次側には第1漏れインダクタンス(第1インダクタL1)が形成され、2次側には第2漏れインダクタンス(第2インダクタL2)が形成される。DC/DCコンバータ1では、第1キャパシタC1、第1インダクタL1、第2インダクタL2及び第2キャパシタC2による共振回路RC1(CLLC共振回路)が形成されている。
【0040】
また、DC/DCコンバータ1は、キャパシタC3、C4を更に備える。キャパシタC3、C4は、例えば、電解コンデンサである。キャパシタC3は、第1端11、12の間に電気的に接続されている。キャパシタC4は、第2端13、14の間に電気的に接続されている。
【0041】
チョッパ回路6において、スイッチング素子S15のドレイン端子は、第1端11に電気的に接続されている。スイッチング素子S15のソース端子は、スイッチング素子S16のドレイン端子に電気的に接続されている。スイッチング素子S16のソース端子は、第1端12に電気的に接続されている。第1端12は、蓄電池B1の負極端子に電気的に接続されている。
【0042】
インダクタL6は、蓄電池B1の正極端子とスイッチング素子S15のソース端子との間に電気的に接続されている。第1端11は、スイッチング素子S15及びインダクタL6を介して、蓄電池B1の正極端子に電気的に接続されている。
【0043】
チョッパ回路6は、降圧動作(降圧チョッパ動作)と、昇圧動作(昇圧チョッパ動作)と、が可能な昇降圧チョッパ回路である。チョッパ回路6が蓄電池B1の電圧を蓄電池B1の電圧よりも大きな電圧に変換する昇圧動作を行う場合、スイッチング素子S15をオフとし、スイッチング素子S16のオン、オフが高周波で交互に繰り返される。これにより、チョッパ回路6は、昇圧チョッパ回路として機能する。
【0044】
また、チョッパ回路6がDC-DCコンバータ1の第1端11、12の間の電圧を当該電圧よりも小さな電圧に変換する降圧動作を行う場合、スイッチング素子S16をオフとして、スイッチング素子S15のオン、オフが高周波で交互に繰り返される。これにより、チョッパ回路6は、降圧チョッパ回路として機能する。
【0045】
インバータ5は、DC/DCコンバータ1の出力電圧である直流電圧を交流電圧に変換するDC/AC変換動作と、インバータ5へ入力された交流電圧を直流電圧に変換しDC/DCコンバータ1へ出力するAC/DC変換動作と、が可能である。
【0046】
インバータ5は、3相インバータである。インバータ5は、6つのスイッチング素子S9~S14と、3つのインダクタL3~L5と、を有する。インバータ5の6つのスイッチング素子S9~S14は、3相ブリッジ形式に接続されている。つまり、6つのスイッチング素子S9~S14は、U相の上段及び下段を構成する2つのスイッチング素子S9、S10と、V相の上段及び下段を構成する2つのスイッチング素子S11、S12と、W相の上段及び下段を構成する2つのスイッチング素子S13、S14と、である。各相の上段のスイッチング素子と下段のスイッチング素子とは、直列接続されている。これにより、上段と下段との2つのスイッチング素子からなる直列回路が3組形成されており、この3組の直列回路が互いに並列接続されている。3組の直列回路は、第2端13、14の間に電気的に接続されている。3組の直列回路の各々の上段と下段との間の接続点は、インダクタL3~L5を介して、負荷又は電源に電気的に接続される。
【0047】
DC/DCコンバータ1は、1次側の入力電圧を2次側の出力電圧に変換する第1変換動作と、2次側の入力電圧を1次側の出力電圧に変換する第2変換動作と、が可能である。1次側の入力電圧及び出力電圧は、第1端11、12の間の電圧である。2次側の入力電圧及び出力電圧は、第2端13、14の間の電圧である。以下では、1次側の入力電圧と出力電圧とをまとめて、1次側電圧と呼び、2次側の入力電圧と出力電圧とをまとめて、2次側電圧と呼ぶ。また、以下では、特に断りの無い限り、第1変換動作と第2変換動作とのうち、第1変換動作に着目して説明するが、第1変換動作に関する説明は、第2変換動作にも適宜適用可能である。
【0048】
検出回路4は、DC/DCコンバータ1の第1端11、12の間の電圧を1次側電圧として検出する。また、検出回路4は、DC/DCコンバータ1の第2端13、14の間の電圧を2次側電圧として検出する。検出回路4は、例えば、キャパシタC3の両端間に接続される第1抵抗分圧回路と、キャパシタC4の両端間に接続される第2抵抗分圧回路と、基準電圧源と、第1、第2抵抗分圧回路により検出した電圧と基準電圧源の電圧とを比較するコンパレータと、を含む。
【0049】
さらに、検出回路4は、第1巻線N1に流れる電流を1次側電流として検出する。また、検出回路4は、第2巻線N2に流れる電流を2次側電流として検出する。検出回路4は、例えば、カレントトランス又はロゴスキーコイルを含む。
【0050】
さらに、検出回路4は、1次側電圧及び1次側電流に基づいて、1次側電力を演算する。1次側電力は、第1端11、12に入力又は出力される電力である。また、検出回路4は、2次側電圧及び2次側電流に基づいて、2次側電力を演算する。2次側電力は、第2端13、14に入力又は出力される電力である。
【0051】
制御回路2は、DC/DCコンバータ1の動作を制御する。より詳細には、制御回路2は、スイッチング素子S1~S16の各々のスイッチング要素を制御する。制御回路2は、スイッチング要素それぞれに制御電圧(ゲート電圧)を与えることができるように構成されている。制御回路2は、例えば、スイッチング要素それぞれに制御電圧を与える駆動回路と、駆動回路を制御する制御部と、を有する。制御電圧は、スイッチング要素の制御端子と第2主端子との間に印加される電圧である。制御電圧は、例えば、スイッチング要素の閾値電圧(ゲート閾値電圧)よりも高い電圧値(例えば、10V)と閾値電圧よりも低い電圧値(例えば、0V)との間で電圧レベルが交互に変化する電圧である。
【0052】
制御回路2の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、1又は複数のコンピュータを有している。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御回路2の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよいし、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ(磁気ディスク)等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0053】
(2)高周波スイッチングにおける同期整流制御
次に、図2を参照して、制御回路2による同期整流制御について説明する。上述の通り、同期整流制御は、第1スイッチング要素Q1~Q4と第2スイッチング要素Q5~Q8との両方をオンオフする制御である。
【0054】
制御回路2は、DC/DCコンバータ1を少なくとも、フルブリッジ制御モードと、倍電圧制御モードと、2次側位相シフト制御モードと、で動作させることができる。各モードにおいて、同期整流制御を実現可能である。本実施形態では、フルブリッジ制御モードについてのみ説明し、倍電圧制御モード及び2次側位相シフト制御モードについては、実施形態2、3で説明する。
【0055】
図2では、各スイッチング要素Q1~Q8のスイッチング周波数は、DC/DCコンバータ1の共振周波数以上である。このようなスイッチング周波数によるスイッチングを、本開示では高周波スイッチングと称す。
【0056】
図2において、1次側電流It1は、第1巻線N1に流れる電流である。2次側電流It2は、第2巻線N2に流れる電流である。1次側電流It1及び2次側電流It2は、検出回路4で検出可能である。第1キャパシタC1、第1インダクタL1、第2インダクタL2及び第2キャパシタC2による共振回路RC1が存在することにより、1次側電流It1と2次側電流It2との間に位相差が生じる。
【0057】
また、図2では、各スイッチング要素Q1~Q8に印加される制御電圧(ゲート電圧)の時間変化を表示している。制御電圧は、時点t1から時点t5までを1周期として、同じ波形を繰り返す。各スイッチング要素Q1~Q8は、ハイレベルの制御電圧が印加されているときオンになり、ローレベルの制御電圧が印加されているときオフになる。スイッチング要素Q1、Q4に印加される制御電圧は共通である。スイッチング要素Q2、Q3に印加される制御電圧は共通である。スイッチング要素Q5、Q8に印加される制御電圧は共通である。スイッチング要素Q6、Q7に印加される制御電圧は共通である。
【0058】
制御回路2は、スイッチング要素Q1、Q4の組とスイッチング要素Q2、Q3の組とを交互にオンにする。スイッチング要素Q1、Q4の組とスイッチング要素Q2、Q3の組とのうち一方がオンからオフに切り替わってから、他方がオフからオンに切り替わるまでの間には、デッドタイムtdが存在する。
【0059】
制御回路2は、第1期間~第4期間の制御を繰り返す。第1期間は、スイッチング要素Q1、Q4をオフとし、スイッチング要素Q2、Q3をオンとする期間である。第2期間は、スイッチング要素Q1~Q4をオフとする期間である。第3期間は、スイッチング要素Q1、Q4をオンとし、スイッチング要素Q2、Q3をオフとする期間である。第4期間は、スイッチング要素Q1~Q4をオフとする期間である。
【0060】
図3は、制御回路2がDC/DCコンバータ1をフルブリッジ制御モードで制御する場合の電流経路の一例を示している。第1期間には、まず、図3に破線矢印で示す経路で電流が流れる。すなわち、1次側においては、第1端11-スイッチング要素Q3-第1巻線N1-第1インダクタL1-第1キャパシタC1-スイッチング要素Q2-第1端12の経路で電流が流れる。また、2次側においては、第2端14-スイッチング素子S6-第2キャパシタC2-第2インダクタL2-第2巻線N2-スイッチング素子S7-第2端13の経路で電流が流れる。第1期間の途中で第1巻線N1に流れる電流がゼロクロスして、第1巻線N1に流れる電流の向きが逆向きになる。
【0061】
第1期間において、スイッチング要素Q6がオンのときは、スイッチング素子S6のうちスイッチング要素Q6に電流が流れ、スイッチング要素Q6がオフのときは、ダイオードD6に電流が流れる。同様に、スイッチング要素Q7がオンのときは、スイッチング素子S7のうちスイッチング要素Q7に電流が流れ、スイッチング要素Q7がオフのときは、ダイオードD7に電流が流れる。このように、2次側の回路で、少なくとも一部の期間において、ダイオードではなくスイッチング要素に電流を流すことで、ダイオードにおける電流損失を低減させることができる。第2~第4期間においても同様である。
【0062】
図2に示すように、スイッチング要素Q5、Q8のスイッチング周波数及びオン期間の長さはそれぞれ、スイッチング要素Q1、Q4のスイッチング周波数及びオン期間の長さと等しい。スイッチング要素Q5、Q8に印加される制御電圧は、スイッチング要素Q1、Q4に印加される制御電圧に対して位相がずれた波形である。つまり、スイッチング要素Q5、Q8のオンオフのタイミングは、スイッチング要素Q1、Q4のオンオフのタイミングに対して位相がずれている。
【0063】
スイッチング要素Q6、Q7のスイッチング周波数及びオン期間の長さはそれぞれ、スイッチング要素Q2、Q3のスイッチング周波数及びオン期間の長さと等しい。スイッチング要素Q6、Q7に印加される制御電圧は、スイッチング要素Q2、Q3に印加される制御電圧に対して位相がずれた波形である。つまり、スイッチング要素Q6、Q7のオンオフのタイミングは、スイッチング要素Q2、Q3のオンオフのタイミングに対して位相がずれている。
【0064】
具体的には、スイッチング要素Q1、Q4がオンからオフに切り替わるタイミング(時点t3)から遅れ時間txだけ遅れたタイミング(時点t4)に、スイッチング要素Q6、Q7がオフからオンに切り替わる。また、スイッチング要素Q2、Q3がオンからオフに切り替わるタイミング(時点t1)から遅れ時間txだけ遅れたタイミング(時点t2)に、スイッチング要素Q5、Q8がオフからオンに切り替わる。
【0065】
図2では、時点t2にスイッチング要素Q5、Q8がオフからオンに切り替わり、その後、時点t3と時点t4との間でスイッチング要素Q5、Q8がオンからオフに切り替わってから、デッドタイムtdが経過すると、スイッチング要素Q6、Q7がオフからオンに切り替わる。その後、時点t1と時点t2との間でスイッチング要素Q6、Q7がオンからオフに切り替わってから、デッドタイムtdが経過すると、スイッチング要素Q5、Q8がオフからオンに切り替わる。
【0066】
制御回路2は、所定のパラメータに基づいて、遅れ時間txを決定する。所定のパラメータは、第1端11、12における1次側電圧、1次側電流及び1次側電力、並びに、第2端13、14における2次側電圧、2次側電流及び2次側電力のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。また、所定のパラメータは、第1スイッチング要素Q1~Q4のスイッチング周波数を更に含むことが好ましい。
【0067】
一例として、制御回路2は、検出回路4で検出された1次側電力が大きいほど、遅れ時間txを大きくしてもよい。また、1次側電力と遅れ時間txとの相関が、1次側電圧に応じて変化してもよい。一例として、制御回路2は、1次側電力等を含む上記所定のパラメータと遅れ時間txとの相関をデータテーブルとして記憶しており、データテーブルを参照することで、遅れ時間txを決定すればよい。
【0068】
また、制御回路2は、DC/DCコンバータ1が1次側の入力電圧を2次側の出力電圧に変換する第1変換動作をしている場合と、2次側の入力電圧を1次側の出力電圧に変換する第2変換動作をしている場合とで、遅れ時間txを異ならせてもよい。つまり、制御回路2は、DC/DCコンバータ1が第1変換動作をしている場合と、第2変換動作をしている場合とで、異なるデータテーブルを参照してもよい。
【0069】
[表1]は、第1変換動作時(蓄電池B1が放電しているとき)の遅れ時間txを求めるためのデータテーブルの一例である。第1列の値は、2次側電力の大きさであって、0から1までの値に規格化されている。第2~第4列の値は、遅れ時間txを表し、0から1までの値に規格化されている。2次側電圧の値が与えられると、2次側電圧の大きさに応じて、電圧条件1~3のいずれに当てはまるかが選択され、2次側電力の値と併せて、遅れ時間txが決定される。
【0070】
【表1】
【0071】
一例として、遅れ時間tx(データテーブルの各値)は、次の第1条件及び第2条件を満たすように決定されればよい。第1条件は、スイッチング要素Q6、Q7がオフからオンに切り替わるタイミング(時点t4)と、2次側電流It2が負から0になるタイミングと、が一致することである。第2条件は、スイッチング要素Q5、Q8がオフからオンに切り替わるタイミング(時点t2)と、2次側電流It2が正から0になるタイミングと、が一致することである。上記所定のパラメータの値ごとに、第1条件及び第2条件を満たすような遅れ時間txを予め算出し、遅れ時間txがデータテーブルとして記憶されていればよい。以下では、第1条件及び第2条件を満たすような同期整流制御を、「第1同期整流制御」と呼ぶ。
【0072】
第1条件及び第2条件を満たすように遅れ時間txが決定されれば、図2に示すように、スイッチング要素Q5、Q8がオンである期間の2次側電流It2が負となり、スイッチング要素Q6、Q7がオンである期間の2次側電流It2が正となる可能性が高まる。よって、同期整流制御において2次側に逆方向の電流が流れる可能性を低減させることができる。
【0073】
ただし、DC/DCコンバータ1の第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2のキャパシタンス、並びに、第1インダクタL1及び第2インダクタL2のインダクタンスは、個体ごとにばらつく可能性がある。これにより、複数のDC/DCコンバータ1の間で、2次側電流It2が0になるタイミングがばらつく可能性がある。
【0074】
そこで、制御回路2は、2次側電流It2の正負が切り替わるタイミングよりも遅れたタイミングに第2スイッチング要素Q5~Q8をオフからオンに切り替えるように、遅れ時間を決定することが好ましい。このような制御を、以下では「第2同期整流制御」と言う。ここで、「2次側電流It2の正負が切り替わるタイミング」という記載の「2次側電流It2」は、各スイッチング要素のスイッチング周波数、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2のキャパシタンス、並びに、第1インダクタL1及び第2インダクタL2のインダクタンス等の設計値に基づいて決定される値である。ここで言う「2次側電流It2」は、必ずしも実際に検出される2次側電流It2と一致していなくてもよい。
【0075】
第2同期整流制御を実行する場合、2次側電流It2が0になるタイミングがばらついても、2次側に逆方向の電流が流れる可能性を低減させることができる。
【0076】
第2同期整流制御の一例を、図4に示す。図4において、1次側電流It1、2次側電流It2、及び、スイッチング要素Q1~Q4の制御電圧は、図2と同じである。図4では、各スイッチング要素Q1~Q8のスイッチング周波数は、DC/DCコンバータ1の共振周波数以上である。
【0077】
図4では、時点t2に、2次側電流It2の正負が切り替わる。これに遅れて、時点t21に、スイッチング要素Q5、Q8がオフからオンに切り替わる。その後、時点t3よりも前の時点t22に、スイッチング要素Q5、Q8がオンからオフに切り替わる。スイッチング要素Q5、Q8のオン期間は、スイッチング要素Q1、Q4のオン期間よりも短い。
【0078】
時点t4に、2次側電流It2の正負が切り替わる。これに遅れて、時点t41に、スイッチング要素Q6、Q7がオフからオンに切り替わる。その後、時点t5(t1)よりも前の時点t42に、スイッチング要素Q6、Q7がオンからオフに切り替わる。スイッチング要素Q6、Q7のオン期間は、スイッチング要素Q2、Q3のオン期間よりも短い。
【0079】
スイッチング要素Q5~Q8のデッドタイムtd1、td2は、スイッチング要素Q1~Q4のデッドタイムtdよりも長い。
【0080】
第2同期整流制御では、スイッチング要素Q5~Q8は、第1同期整流制御においてオフからオンに切り替わるタイミングから遅れて、オフからオンに切り替わる。遅れの長さ(マージンtm)は、例えば、スイッチング周期の1/2倍よりも短い固定値である。マージンtmは、例えば、制御回路2のメモリに予め記憶されている。第2同期整流制御は、遅れ時間をtxとマージンtmとの和とし、第1スイッチング要素Q1~Q4をオンからオフに切り替える第1タイミングから遅れ時間だけ遅れた第2タイミングに、第2スイッチング要素Q5~Q8をオフからオンに切り替える制御と言える。
【0081】
なお、スイッチング要素Q1~Q4のオンオフ制御とスイッチング要素Q5~Q8のオンオフ制御とを入れ替えることで、2次側の入力電圧を1次側の出力電圧に変換する第2変換動作にも、第1及び第2同期整流制御を適用可能である。
【0082】
(3)比較例
図5に、比較例に係る制御方式のタイミングチャートを示す。比較例に係る制御方式では、スイッチング要素Q5~Q8のオンオフのタイミングが、実施形態と相違する。図5では、スイッチング要素Q1、Q4がオンからオフに切り替わるタイミング(時点t3)に、スイッチング要素Q6、Q7がオフからオンに切り替わる。また、スイッチング要素Q2、Q3がオンからオフに切り替わるタイミング(時点t1)に、スイッチング要素Q5、Q8がオフからオンに切り替わる。
【0083】
図5では、時点t3から、時点t4と時点t5(t1)との間の時点t43まで、スイッチング要素Q6、Q7がオンである。時点t3から時点t4までの期間の2次側電流It2の方向は、時点t4から時点t43までの期間の2次側電流It2の方向に対して、逆方向である。つまり、第2巻線N2には、逆方向の2次側電流It2が流れる。これに対して、実施形態に対応する図2図4では、オンオフのタイミングを少なくとも遅れ時間txだけ遅らせることにより、逆方向の2次側電流It2が流れる可能性を低減させることができる。
【0084】
(4)低周波スイッチングにおける同期整流制御
ここまでの説明では、各スイッチング要素Q1~Q8のスイッチング周波数が、DC/DCコンバータ1の共振周波数以上であるという条件で、同期整流制御を説明した。以下では、各スイッチング要素Q1~Q8のスイッチング周波数が、DC/DCコンバータ1の共振周波数よりも低いという条件における同期整流制御について、図6を参照して説明する。このようなスイッチング周波数によるスイッチングを、本開示では低周波スイッチングと称す。
【0085】
図6に示すように、時点t1から時点t3までの期間の長さは、スイッチング周期の1/2倍である。2次側電流It2が0から負の値になった後、2次側電流It2が0になるまでの期間(時点t1~時点t24)の長さは、スイッチング周期の1/2倍よりも短い。
【0086】
各スイッチング要素Q1~Q8のスイッチング周波数が、DC/DCコンバータ1の共振周波数以上の場合(図2図4参照)は、2次側電流It2が負の値から0になるタイミングは、スイッチング周波数により決まる。これに対して、スイッチング周波数が共振周波数よりも低い場合(図6参照)は、2次側電流It2が負の値から0になるタイミングは、スイッチング周波数ではなく、DC/DCコンバータ1の共振周波数により決まる。そこで、スイッチング周波数が共振周波数よりも低い場合に、制御回路2は、第2スイッチング要素をオンからオフに切り替えるタイミングを共振周波数に基づいて決定する。具体的には、制御回路2は、共振周波数に基づいて、2次側電流It2が0になるタイミング(時点t24)を求め、このタイミングでスイッチング要素Q6、Q7をオンからオフに切り替える。
【0087】
図6に示すように、時点t3から時点t5(t1)までの期間の長さは、スイッチング周期の1/2倍である。2次側電流It2が0から正の値になった後、2次側電流It2が0になるまでの期間(時点t3~時点t44)の長さは、スイッチング周期の1/2倍よりも短い。
【0088】
各スイッチング要素Q1~Q8のスイッチング周波数が、DC/DCコンバータ1の共振周波数以上の場合(図2図4参照)は、2次側電流It2が正の値から0になるタイミングは、スイッチング周波数により決まる。これに対して、スイッチング周波数が共振周波数よりも低い場合(図6参照)は、2次側電流It2が正の値から0になるタイミングは、スイッチング周波数ではなく、DC/DCコンバータ1の共振周波数により決まる。そこで、スイッチング周波数が共振周波数よりも低い場合に、制御回路2は、第2スイッチング要素をオンからオフに切り替えるタイミングを共振周波数に基づいて決定する。具体的には、制御回路2は、共振周波数に基づいて、2次側電流It2が0になるタイミング(時点t44)を求め、このタイミングでスイッチング要素Q5、Q8をオンからオフに切り替える。
【0089】
以上説明したように、DC/DCコンバータ1は、第1巻線N1に電気的に接続された第1キャパシタC1と、第2巻線N2に電気的に接続された第2キャパシタC2と、のうち少なくとも一方(本実施形態では、両方)を有する。制御回路2は、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2のうち少なくとも一方と、第1巻線N1側の第1漏れインダクタンス(第1インダクタL1)と、第2巻線N2側の第2漏れインダクタンス(第2インダクタL2)と、を含む共振回路RC1の共振周波数が、第1スイッチング要素Q1~Q4及び第2スイッチング要素Q5~Q8のスイッチング周波数よりも低い場合に、第2スイッチング要素Q5~Q8をオンからオフに切り替えるタイミングを共振周波数に基づいて決定する。
【0090】
なお、共振周波数がスイッチング周波数よりも低い場合に、第2スイッチング要素Q5~Q8をオンからオフに切り替えるタイミングを共振周波数に基づいて決定することは、必須ではない。共振周波数がスイッチング周波数よりも低い場合にも、共振周波数がスイッチング周波数以上の場合と同様の制御を行っても構わない。
【0091】
(5)ダイオード整流制御
制御回路2は、基本的には、上述の同期整流制御を行う。ただし、制御回路2は、軽負荷時には、ダイオード整流制御を行ってもよい。ダイオード整流制御は、第2スイッチング要素Q5~Q8をオフに維持し第1スイッチング要素Q1~Q4をオンオフする制御である。ダイオード整流制御では、2次側において、第2スイッチング要素Q5~Q8ではなく第2ダイオードD5~D8に電流が流れる。
【0092】
制御回路2は、ダイオード整流制御と同期整流制御との切替のタイミングを、上述の所定のパラメータに基づいて決定してもよい。ここでは、制御回路2は、切替のタイミングを、所定のパラメータに含まれる出力電力(2次側電力)に基づいて決定すると仮定して説明する。出力電力は、0以上の値である。
【0093】
制御回路2は、例えば、DC/DCコンバータ1の出力電力が閾値よりも大きいと、同期整流制御を行い、出力電力が閾値以下であると、ダイオード整流制御を行う。
【0094】
なお、制御回路2がダイオード整流制御から同期整流制御へ切り替えるときの所定のパラメータと、制御回路2が同期整流制御からダイオード整流制御へ切り替えるときの所定のパラメータと、にヒステリシスを持たせてもよい。すなわち、制御回路2がダイオード整流制御から同期整流制御へ切り替えるときの第1閾値と、制御回路2が同期整流制御からダイオード整流制御へ切り替えるときの第2閾値と、が異なっていてもよい。具体例として、第1閾値は、第2閾値よりも大きい。ダイオード整流制御を行っているとき、制御回路2は、出力電力が第1閾値よりも大きくなると、同期整流制御へ切り替える。また、同期整流制御を行っているとき、制御回路2は、出力電力が第2閾値よりも小さくなると、ダイオード整流制御へ切り替える。
【0095】
(実施形態2)
実施形態2では、制御回路2がDC/DCコンバータ1を倍電圧制御モードにて動作させる場合について説明する。電力変換システム10の構成は、実施形態1と同様である。各スイッチング要素Q1~Q8のスイッチング周波数は、DC/DCコンバータ1の共振周波数以上であるとする。
【0096】
制御回路2は、DC/DCコンバータ1を第1変換動作させる場合に、倍電圧制御モードでは、スイッチング要素Q7をオフとし、スイッチング要素Q8をオンとし、スイッチング要素Q1~Q6をそれぞれスイッチングさせる。図7は、制御回路2がDC/DCコンバータ1を倍電圧制御モードで制御する場合のDC/DCコンバータ1の等価回路図である。制御回路2がDC/DCコンバータ1をフルブリッジ制御モードで制御したときの電圧ゲインに対して、倍電圧制御モードで制御したときの電圧ゲインは略2倍になる。
【0097】
図8に、倍電圧制御モードにおける1次側電流It1、2次側電流It2、各スイッチング要素Q1~Q8に印加される制御電圧の時間変化の一例を表示する。図8に示す制御は、第2同期整流制御である。すなわち、遅れ時間は、txとマージンtmとの和である。
【0098】
スイッチング要素Q1、Q4がオンからオフに切り替わるタイミング(時点t3)から遅れ時間(tx+tm)だけ遅れたタイミング(時点t41)に、スイッチング要素Q6がオフからオンに切り替わる。
【0099】
また、スイッチング要素Q2、Q3がオンからオフに切り替わるタイミング(時点t1)から遅れ時間(tx+tm)だけ遅れたタイミング(時点t21)に、スイッチング要素Q5がオフからオンに切り替わる。
【0100】
また、時点t2に、2次側電流It2の正負が切り替わる。これに遅れて、時点t21に、スイッチング要素Q5がオフからオンに切り替わる。その後、時点t3よりも前の時点t22に、スイッチング要素Q5がオンからオフに切り替わる。スイッチング要素Q5のオン期間は、スイッチング要素Q1、Q4のオン期間よりも短い。
【0101】
時点t4に、2次側電流It2の正負が切り替わる。これに遅れて、時点t41に、スイッチング要素Q6がオフからオンに切り替わる。その後、時点t5(t1)よりも前の時点t42に、スイッチング要素Q6がオンからオフに切り替わる。スイッチング要素Q6のオン期間は、スイッチング要素Q2、Q3のオン期間よりも短い。
【0102】
倍電圧制御モードにおいても、2次側の回路で、少なくとも一部の期間において、ダイオードではなくスイッチング要素に電流を流すことで、ダイオードにおける電流損失を低減させることができる。また、遅れ時間を設けることにより、2次側に逆方向の電流が流れる可能性を低減させることができる。
【0103】
(実施形態3)
実施形態3では、制御回路2がDC/DCコンバータ1を2次側位相シフト制御モードにて動作させる場合について説明する。電力変換システム10の構成は、実施形態1と同様である。各スイッチング要素Q1~Q8のスイッチング周波数は、DC/DCコンバータ1の共振周波数よりも低いとする。
【0104】
2次側位相シフト制御とは、2次側のフルブリッジ回路を構成する4つのスイッチング要素Q5~Q8のうち、スイッチング要素Q6、Q8に与える制御電圧を、スイッチング要素Q1~Q4に与える制御電圧に対し位相差を設ける方式である。より詳細には、スイッチング要素Q1、Q4に与える制御電圧と、スイッチング要素Q8に与える制御電圧と、に位相差が設けられ、スイッチング要素Q2、Q3に与える制御電圧と、スイッチング要素Q6に与える制御電圧と、に位相差が設けられる。また、2次側位相シフト制御において、スイッチング要素Q5、Q7のオフ期間は、スイッチング要素Q6、Q8のオフ期間よりも長く設定される。
【0105】
図9に、2次側位相シフト制御モードにおける1次側電流It1、2次側電流It2、各スイッチング要素Q1~Q8に印加される制御電圧の時間変化の一例を表示する。図9に示す制御は、第2同期整流制御である。すなわち、遅れ時間は、txとマージンtmとの和である。制御電圧は、時点t1からt9までを1周期とする。
【0106】
スイッチング要素Q1、Q4がオンからオフに切り替わるタイミング(時点t5)から遅れ時間(tx+tm)だけ遅れたタイミング(時点t61)に、スイッチング要素Q7がオフからオンに切り替わる。
【0107】
また、スイッチング要素Q2、Q3がオンからオフに切り替わるタイミング(時点t1)から遅れ時間(tx+tm)だけ遅れたタイミング(時点t21)に、スイッチング要素Q5がオフからオンに切り替わる。
【0108】
また、時点t2に、2次側電流It2の正負が切り替わる。これに遅れて、時点t21に、スイッチング要素Q5がオフからオンに切り替わる。その後、時点t3よりも前の時点t22に、スイッチング要素Q5がオンからオフに切り替わり、時点t1と時点t5との間の時点t4に、スイッチング要素Q8がオフからオンに切り替わる。
【0109】
時点t6に、2次側電流It2の正負が切り替わる。これに遅れて、時点t61に、スイッチング要素Q7がオフからオンに切り替わる。その後、時点t5と時点t1との間の時点t8に、スイッチング要素Q6がオフからオンに切り替わる。
【0110】
2次側位相シフト制御モードにおいても、2次側の回路で、少なくとも一部の期間において、ダイオードではなくスイッチング要素に電流を流すことで、ダイオードにおける電流損失を低減させることができる。また、遅れ時間を設けることにより、2次側に逆方向の電流が流れる可能性を低減させることができる。
【0111】
(変形例)
以下、本開示の変形例を列挙する。以下の変形例は、実施形態1~3にそれぞれ適用可能である。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0112】
遅れ時間txを決定する手段は、データテーブルを参照することに限定されず、所定の計算式により遅れ時間txが決定されてもよい。
【0113】
実施形態1では、制御回路2は、デジタル処理を行うことにより、所定のパラメータの変化に対して遅れ時間txを不連続に変化させる。これに対して、制御回路2は、所定のパラメータを入力として遅れ時間txを出力するアナログ回路を備えることにより、所定のパラメータの変化に対して遅れ時間txを連続的に変化させてもよい。
【0114】
第1インダクタL1及び第2インダクタL2は、絶縁トランスTr1の漏れインダクタンスのみからなることに限定されない。すなわち、絶縁トランスTr1の1次側及び2次側の少なくとも一方には、外付けのインダクタが電気的に接続されてもよい。
【0115】
ダイオードD1~D8は、寄生ダイオードに限定されない。すなわち、スイッチング要素とダイオードとが個別に設けられていてもよい。
【0116】
DC/DCコンバータ1は、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2のうち一方のみを有していてもよいし、いずれも有していなくてもよい。
【0117】
実施形態1では、複数の第1スイッチング要素Q1~Q4及び複数の第2スイッチング要素Q5~Q8がそれぞれフルブリッジを構成するように接続されているが、各スイッチング要素の接続態様は、これに限定されない。例えば、各スイッチング要素は、ハーフブリッジを構成するように接続されていてもよい。
【0118】
本開示の電力変換システム10における制御は、制御方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体にて具現化可能である。
【0119】
一態様に係る制御方法は、DC/DCコンバータ1の動作を制御する制御方法である。DC/DCコンバータ1は、一対の第1端11、12と、第1巻線N1と、1つ以上の第1スイッチング要素Q1~Q4と、1つ以上の第1ダイオードD1~D4と、一対の第2端13、14と、第2巻線N2と、1つ以上の第2スイッチング要素Q5~Q8と、1つ以上の第2ダイオードD5~D8と、を有する。第1スイッチング要素Q1~Q4は、第1巻線N1と一対の第1端11、12との間に電気的に接続されている。1つ以上の第1ダイオードD1~D4は、1つ以上の第1スイッチング要素Q1~Q4に一対一で対応して並列に接続されている。第2巻線N2は、第1巻線N1と共に絶縁トランスTr1を構成する。第2スイッチング要素Q5~Q8は、第2巻線N2と一対の第2端13、14との間に電気的に接続されている。1つ以上の第2ダイオードD5~D8は、1つ以上の第2スイッチング要素Q5~Q8に一対一で対応して並列に接続されている。制御方法は、第1スイッチング要素Q1~Q4と第2スイッチング要素Q5~Q8との両方をオンオフする同期整流制御を行うことを含む。同期整流制御では、第1スイッチング要素Q1~Q4をオンからオフに切り替える第1タイミングから遅れ時間txだけ遅れた第2タイミングに、第2スイッチング要素Q5~Q8をオフからオンに切り替える。
【0120】
一態様に係るプログラムは、上記の制御方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。プログラムは、コンピュータで読み取り可能な非一時的記録媒体に記録されていてもよい。
【0121】
本開示における電力変換システム10は、制御回路2の構成として、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御回路2としての機能の少なくとも一部が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0122】
また、電力変換システム10における複数の機能が、1つの筐体に集約されていることは電力変換システム10に必須の構成ではなく、電力変換システム10の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、電力変換システム10の少なくとも一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0123】
反対に、実施形態において、複数の筐体に分散されている電力変換システム10の少なくとも一部の機能が、1つの筐体に集約されていてもよい。例えば、DC/DCコンバータ1とインバータ5とに分散されている電力変換システム10の一部の機能が、1つの筐体に集約されていてもよい。
【0124】
本開示での2値の比較において、「より大きい」としているところは、2値の一方が他方を超えている場合を指す。ただし、これに限らず、ここでいう「より大きい」は、2値が等しい場合、及び、2値の一方が他方を超えている場合の両方を含む「以上」と同義であってもよい。つまり、2値が等しい場合を含むか否かは、基準値等の設定次第で任意に変更できるので、「より大きい」か「以上」かに技術上の差異はない。同様に、「より小さい」においても「以下」と同義であってもよい。
【0125】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
【0126】
第1の態様に係る電力変換装置(3)は、DC/DCコンバータ(1)と、DC/DCコンバータ(1)の動作を制御する制御回路(2)と、を備える。DC/DCコンバータ(1)は、一対の第1端(11、12)と、第1巻線(N1)と、1つ以上の第1スイッチング要素(Q1~Q4)と、1つ以上の第1ダイオード(D1~D4)と、一対の第2端(13、14)と、第2巻線(N2)と、1つ以上の第2スイッチング要素(Q5~Q8)と、1つ以上の第2ダイオード(D5~D8)と、を有する。第1スイッチング要素(Q1~Q4)は、第1巻線(N1)と一対の第1端(11、12)との間に電気的に接続されている。1つ以上の第1ダイオード(D1~D4)は、1つ以上の第1スイッチング要素(Q1~Q4)に一対一で対応して並列に接続されている。第2巻線(N2)は、第1巻線(N1)と共に絶縁トランス(Tr1)を構成する。第2スイッチング要素(Q5~Q8)は、第2巻線(N2)と一対の第2端(13、14)との間に電気的に接続されている。1つ以上の第2ダイオード(D5~D8)は、1つ以上の第2スイッチング要素(Q5~Q8)に一対一で対応して並列に接続されている。制御回路(2)は、第1スイッチング要素(Q1~Q4)と第2スイッチング要素(Q5~Q8)との両方をオンオフする同期整流制御を行う。同期整流制御において、制御回路(2)は、第1スイッチング要素(Q1~Q4)をオンからオフに切り替える第1タイミングから遅れ時間(tx)だけ遅れた第2タイミングに、第2スイッチング要素(Q5~Q8)をオフからオンに切り替える。
【0127】
上記の構成によれば、第1タイミングと第2タイミングとが一致している場合と比較して、第2巻線(N2)に逆方向の電流が流れる可能性を低減させることができる。つまり、DC/DCコンバータ(1)が異常な動作をする可能性を低減させることができる。
【0128】
また、第2の態様に係る電力変換装置(3)では、第1の態様において、制御回路(2)は、所定のパラメータに基づいて、遅れ時間(tx)を決定する。所定のパラメータは、一対の第1端(11、12)における1次側電圧、1次側電流及び1次側電力、並びに、一対の第2端(13、14)における2次側電圧、2次側電流及び2次側電力のうち少なくとも1つを含む。
【0129】
上記の構成によれば、所定のパラメータに応じたスイッチングを実現できる。
【0130】
また、第3の態様に係る電力変換装置(3)では、第2の態様において、所定のパラメータは、第1スイッチング要素(Q1~Q4)のスイッチング周波数を更に含む。
【0131】
上記の構成によれば、スイッチング周波数に応じてスイッチングのタイミングが決定され、これにより、DC/DCコンバータ(1)では、絶縁トランス(Tr1)の巻線比よりも大きいゲインを得ることができる。
【0132】
また、第4の態様に係る電力変換装置(3)では、第2又は3の態様において、制御回路(2)は、2次側電流の正負が切り替わるタイミングよりも遅れたタイミングに第2スイッチング要素(Q5~Q8)をオフからオンに切り替えるように、遅れ時間(tx+tm)を決定する。
【0133】
上記の構成によれば、DC/DCコンバータ(1)の共振周波数のばらつきがあっても、DC/DCコンバータ(1)が異常な動作をする可能性を低減させることができる。
【0134】
また、第5の態様に係る電力変換装置(3)では、第2~4の態様のいずれか1つにおいて、制御回路(2)は、所定のパラメータの変化に対して遅れ時間(tx)を連続的に変化させる。
【0135】
上記の構成によれば、高精度な同期整流制御を実現できる。
【0136】
また、第6の態様に係る電力変換装置(3)では、第2~4の態様のいずれか1つにおいて、制御回路(2)は、所定のパラメータの変化に対して遅れ時間(tx)を不連続に変化させる。
【0137】
上記の構成によれば、マイクロコントローラ等を用いて遅れ時間(tx)を決定できる。
【0138】
また、第7の態様に係る電力変換装置(3)では、第2~6の態様のいずれか1つにおいて、DC/DCコンバータ(1)は、第1巻線(N1)に電気的に接続された第1キャパシタ(C1)と、第2巻線(N2)に電気的に接続された第2キャパシタ(C2)と、のうち少なくとも一方を更に有する。制御回路(2)は、第1キャパシタ(C1)及び第2キャパシタ(C2)のうち少なくとも一方と、第1巻線(N1)側の第1漏れインダクタンス(第1インダクタL1)と、第2巻線(N2)側の第2漏れインダクタンス(第2インダクタL2)と、を含む共振回路(RC1)の共振周波数が、第1スイッチング要素(Q1~Q4)及び第2スイッチング要素(Q5~Q8)のスイッチング周波数よりも低い場合に、第2スイッチング要素(Q5~Q8)をオンからオフに切り替えるタイミングを共振周波数に基づいて決定する。
【0139】
上記の構成によれば、共振周波数がスイッチング周波数よりも低い場合であっても、同期整流制御を実現できる。
【0140】
また、第8の態様に係る電力変換装置(3)では、第2~7の態様のいずれか1つにおいて、制御回路(2)は、第2スイッチング要素(Q5~Q8)をオフに維持し第1スイッチング要素(Q1~Q4)をオンオフするダイオード整流制御と、同期整流制御と、の切替のタイミングを、所定のパラメータに基づいて決定する。
【0141】
上記の構成によれば、同期整流制御に加えてダイオード整流制御を併用することで、DC/DCコンバータ(1)の動作の安定化を図ることができる。
【0142】
また、第9の態様に係る電力変換装置(3)は、第8の態様において、制御回路(2)がダイオード整流制御から同期整流制御へ切り替えるときの所定のパラメータと、制御回路(2)が同期整流制御からダイオード整流制御へ切り替えるときの所定のパラメータと、にヒステリシスを持たせたことを特徴とする。
【0143】
上記の構成によれば、同期整流制御とダイオード整流制御とが頻繁に切り替わるチャタリング現象が起きる可能性を低減できる。
【0144】
第1の態様以外の構成については、電力変換装置(3)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0145】
また、第10の態様に係る電力変換システム(10)は、第1~9の態様のいずれか1つに係る電力変換装置(3)と、インバータ(5)と、を備える。インバータ(5)は、DC/DCコンバータ(1)の一対の第1端(11、12)又は一対の第2端(13、14)に電気的に接続されている。
【0146】
上記の構成によれば、DC/DCコンバータ(1)が異常な動作をする可能性を低減させることができる。
【0147】
また、第11の態様に係る制御方法は、DC/DCコンバータ(1)の動作を制御する制御方法である。DC/DCコンバータ(1)は、一対の第1端(11、12)と、第1巻線(N1)と、1つ以上の第1スイッチング要素(Q1~Q4)と、1つ以上の第1ダイオード(D1~D4)と、一対の第2端(13、14)と、第2巻線(N2)と、1つ以上の第2スイッチング要素(Q5~Q8)と、1つ以上の第2ダイオード(D5~D8)と、を有する。第1スイッチング要素(Q1~Q4)は、第1巻線(N1)と一対の第1端(11、12)との間に電気的に接続されている。1つ以上の第1ダイオード(D1~D4)は、1つ以上の第1スイッチング要素(Q1~Q4)に一対一で対応して並列に接続されている。第2巻線(N2)は、第1巻線(N1)と共に絶縁トランス(Tr1)を構成する。第2スイッチング要素(Q5~Q8)は、第2巻線(N2)と一対の第2端(13、14)との間に電気的に接続されている。1つ以上の第2ダイオード(D5~D8)は、1つ以上の第2スイッチング要素(Q5~Q8)に一対一で対応して並列に接続されている。制御方法は、第1スイッチング要素(Q1~Q4)と第2スイッチング要素(Q5~Q8)との両方をオンオフする同期整流制御を行うことを含む。同期整流制御では、第1スイッチング要素(Q1~Q4)をオンからオフに切り替える第1タイミングから遅れ時間(tx)だけ遅れた第2タイミングに、第2スイッチング要素(Q5~Q8)をオフからオンに切り替える。
【0148】
上記の構成によれば、DC/DCコンバータ(1)が異常な動作をする可能性を低減させることができる。
【0149】
また、第12の態様に係るプログラムは、第11の態様に係る制御方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0150】
上記の構成によれば、DC/DCコンバータ(1)が異常な動作をする可能性を低減させることができる。
【0151】
上記態様に限らず、実施形態に係る電力変換システム(10)の種々の構成(変形例を含む)は、制御方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体にて具現化可能である。
【符号の説明】
【0152】
1 DC/DCコンバータ
2 制御回路
3 電力変換装置
5 インバータ
10 電力変換システム
11、12 第1端
13、14 第2端
C1 第1キャパシタ
C2 第2キャパシタ
D1~D4 第1ダイオード
D5~D8 第2ダイオード
L1 第1インダクタ(第1漏れインダクタンス)
L2 第2インダクタ(第2漏れインダクタンス)
N1 第1巻線
N2 第2巻線
Q1~Q4 第1スイッチング要素
Q5~Q8 第2スイッチング要素
RC1 共振回路
Tr1 絶縁トランス
tx 遅れ時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9