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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153098
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20221004BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221004BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221004BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20221004BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20221004BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20221004BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20221004BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20221004BHJP
【FI】
E02F9/20 Z
H01M10/48 301
H01M10/44 P
H01M10/633
H01M10/615
H01M10/651
H01M10/625
H01M10/6571
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056152
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧村 雄基
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 絢太
【テーマコード(参考)】
2D003
5H030
5H031
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB06
2D003AC06
2D003BA02
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA04
2D003DB06
2D003FA02
5H030AA01
5H030AS08
5H030BB06
5H030BB21
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H031HH06
5H031KK03
(57)【要約】
【課題】暖機運転の実行時間を短縮し、結果として蓄電装置の充電時間の短縮を図る。
【解決手段】この建設機械は、油圧ポンプを駆動する電動機と、電動機に電力を供給する蓄電装置と、蓄電装置を充電する充電器と、充電器を制御する制御装置とを備える。制御装置は、少なくとも蓄電装置の温度に基づき、蓄電装置の充電と放電を繰り返す暖機運転を実行するか否かを判定する。そして、制御装置は、蓄電装置の温度と、充電器の充電率との関係に従い、暖機運転中の充電電流と放電電流の大きさを変化させて暖機運転を実行する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧制御装置を駆動する電動機と、
前記電動機に電力を供給する蓄電装置と、
前記蓄電装置を充電する充電器と、
前記充電器を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
少なくとも前記蓄電装置の温度に基づき、前記蓄電装置の充電と放電を繰り返す暖機運転を実行するか否かを判定し、
前記蓄電装置の温度と、前記充電器の充電率との関係に従い、前記暖機運転中の充電電流と放電電流の大きさを変化させて前記暖機運転を実行する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記制御装置は、前記暖機運転において、前記充電電流を前記放電電流よりも大きい値にする、請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記制御装置は、前記暖機運転において、前記蓄電装置の温度が増加するに従い、前記放電電流に対する前記充電電流の比率を大きくする、請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記制御装置は、前記暖機運転において、前記蓄電装置の充電率が増加するに従い、前記放電電流に対する前記充電電流の比率を大きくする、請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
前記制御装置は、前記暖機運転において、前記充電電流を前記放電電流よりも大きい値に設定し、
前記蓄電装置の温度が増加するに従い、前記放電電流に対する前記充電電流の比率を大きくし、
前記蓄電装置の充電率が増加するに従い、前記放電電流に対する前記充電電流の比率を大きくする、請求項1に記載の建設機械。
【請求項6】
前記制御装置は、前記蓄電装置の温度と、前記充電率との組合せ毎に前記充電電流の値と前記放電電流の値を記憶したテーブルを備え、
前記制御装置は、得られた前記温度及び前記充電率に基づいて、前記テーブルを参照して前記充電電流の値と前記放電電流の値を決定する、請求項1に記載の建設機械。
【請求項7】
前記制御装置は、前記暖機運転の前記充電電流と前記放電電流を設定した後、新たに計測又は算出された前記温度及び前記充電率とに基づき、前記充電電流と前記放電電流とを含む前記暖機運転の条件を更新する、請求項1に記載の建設機械。
【請求項8】
前記蓄電装置は、前記暖機運転時の放電電流に基づく放電電力を前記充電器に電力を供給する電源に回生する、請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の抑制の観点から、自動車の電動化が急速に進んでおり、建設機械においても欧州を中心として電動化が進み始めている。電動化を可能とする駆動源である電動機への電力源としては、自動車同様に蓄電装置が主に用いられている。
【0003】
電動式の建設機械は、外気に晒された過酷な環境下にて使用されるため、蓄電装置は外部環境の影響を大きく受ける。蓄電装置から電動機に電力を供給するには、予め蓄電装置に電力を蓄積する必要がある。
【0004】
蓄電装置の特性により蓄電装置に流せる許容可能な電流値に制限があり、この許容可能な電流値は、低温時には更に低下する。充電時においては十分な電流値を流せないため、充電時間が長くなってしまうという問題がある。そのため蓄電装置を暖める暖機運転を行うことで、許容可能な電流値を大きくし、これにより充電時間を短くすることが行われている。暖機運転は、一例として、蓄電装置に対する充電と放電とを意図的に繰り返し行うことにより実行される。暖機運転中の充放電電流により発生する熱により蓄電装置を暖めることができる(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
しかし、従来技術においては、検出された温度に従って暖機運転の実行の要否を判断するのみであり、暖機運転の実行時間を十分に短くすることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-094173号公報
【特許文献2】特開2013-052866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、暖機運転の実行時間を短縮し、結果として蓄電装置の充電時間の短縮を図ることができる建設機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る建設機械は、油圧ポンプを駆動する電動機と、前記電動機に電力を供給する蓄電装置と、前記蓄電装置を充電する充電器と、前記充電器を制御する制御装置とを備える。前記制御装置は、少なくとも前記蓄電装置の温度に基づき、前記蓄電装置の充電と放電を繰り返す暖機運転を実行するか否かを判定する。そして、前記制御装置は、前記蓄電装置の温度と、前記充電器の充電率との関係に従い、前記暖機運転中の充電電流と放電電流の大きさを変化させて前記暖機運転を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、暖機運転の実行時間を短縮し、結果として蓄電装置の充電時間の短縮を図ることができる建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の建設機械10の外観構成図である。
図2】建設機械10に備えられる、油圧制御装置を駆動する電動機、及びその電動機に電力を供給する電気系統の構成例を説明するブロック図である。
図3】蓄電装置4の充電時における、充電率(SOC)と許容電流との関係について説明するグラフである。
図4】蓄電装置4の放電時における、充電率(SOC)と許容電流との関係について説明するグラフである。
図5】コントローラ6が備えるテーブルの例を示す。
図6】実施の形態の建設機械における暖機運転の動作を説明するフローチャートである。
図7】実施の形態の建設機械における暖機運転の動作を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0012】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0013】
図1の外観構造図に示すように、本実施形態の建設機械10は、一例として、油圧ショベルであり、例えば上部旋回体1110と、下部走行体1120と、作業機1130と、旋回機構1140と、シリンダ1160とを備えている。
【0014】
上部旋回体1110は、下部走行体1120の上部に旋回機構1140を介して旋回可能に取り付けられる車体の一部であり、オペレータが運転を行うための運転室1111が備えられている。運転室1111には運転室1111を外部と仕切り開閉可能とされたドアDが備え付けられている。ドアDは、物理鍵により施錠可能に構成されている。
【0015】
上部旋回体1110は、建設機械10の高さ方向に平行な回転軸を中心に、下部走行体1120に対して旋回する。上部旋回体1110は、例えば、油圧ポンプ、及び油圧制御装置を収容している。下部走行体1120は、例えば、図示を省略する油圧ポンプによって駆動される履帯1121を備え、制御装置の制御の下で建設機械10を走行させる。後述するように、この建設機械10は、この油圧制御装置を駆動する電動機、及び電動機に電力を供給する蓄電装置、その他の電気系統も内蔵している。
【0016】
作業機1130は、例えば、上部旋回体1110の前部に設けられ、シリンダ1160によって駆動されて掘削作業などの作業を行う。作業機1130は、例えば、ブーム1131と、アーム1132と、バケット1133とを有する。旋回機構1140は、図示を省略する油圧モータを有し、油圧制御装置の制御の下、建設機械10の高さ方向に平行な回転軸を中心に、上部旋回体1110を下部走行体1120に対して旋回させる。
【0017】
建設機械10は一般に、油圧ポンプ等にて各種可動部に動力を与えている。このような油圧ポンプ等を電動機と接続し、電動機からの動力により油圧ポンプを回して圧力を生成し、油圧バルブのソレノイドの開閉度を調節して、各種可動部を動作させる。ソレノイドの開閉度は、運転席の操作レバーやペダルにて操作することができる。
【0018】
図2のブロック図を参照して、建設機械10に備えられる、油圧制御装置を駆動する電動機、及びその電動機に電力を供給する電気系統の構成例を説明する。図2において、電力を供給する電力線を実線で示し、制御信号等を送受信する通信信号線は点線で示している。
【0019】
この建設機械10は、油圧制御装置1を駆動する電動機(モータ)2と、電動機2を制御するためのインバータ3と、インバータ3を介して電動機2に電力を供給する高電圧用の蓄電装置4と、高電圧用の蓄電装置4への充電を行う充電器5を備えている。また、これらの機器を制御し、電気系統の動作の全体を制御、監視、保護のためのコントローラ6(制御装置)が設けられている。さらに、これらの機器の電気的な接続を行うためのジャンクションボックス9が備えられている。ジャンクションボックス9は、各種機器の接続に関し防塵・防水機能を提供すると共に、誤用や故障に対する保護の観点から、リレーやヒューズ等のOCP(Over current protection)を備えている。
【0020】
前述したように、蓄電装置4に流せる許容可能な電流値に制限があり、この許容可能な電流(放電電流、充電電流)の値は、低温時には更に低下する。このため、本実施の形態の蓄電装置4は、低温時には、充電と放電を繰り返し実行して暖機運転をすることが可能に構成されている。暖機運転を実行するか否かの判断は、コントローラ6において、蓄電装置4の温度に基づいて判断される。なお、暖機運転の実行の要否は、蓄電装置4の温度のみでなく、他の判断要素も加味して判断されてもよい。なお、後述するように、暖機運転における充電電流の放電電流の値は、状況の変化に応じて適宜更新される。
【0021】
蓄電装置4には、ジャンクションボックス9を介して、電力変換装置7が接続されている。電力変換装置7は、蓄電装置4から供給される電圧を変換し各機器の制御電圧を生成する。電力変換装置7には、低電圧(例えば12/24V)の蓄電装置8が接続される。
【0022】
低電圧用の蓄電装置8は、各機器を制御するための制御電圧を生成する。また、建設機械10には、各種警告灯が設置される。このような警告灯等で使用される低電圧を供給するための蓄電装置として、蓄電装置8が設けられる。
【0023】
インバータ3は、電動機2を任意の回転数に制御するため、蓄電装置4が出力する直流電力を交流電力に変換する。蓄電装置4が電力を供給するためには予め電力を蓄積しておく必要がある。充電器5は、系統電源設備に接続され、コントローラ6の制御の下、蓄電装置4を充電する。
【0024】
蓄電装置4の内部には、蓄電装置4に流れる電流を計測する電流計測部としての電流センサ11、蓄電装置4を構成する電池セルの各電圧を計測する電圧計測部としての電圧センサ12、及び、蓄電装置4の電池セルの各温度を計測する温度計測部としての温度センサ13がそれぞれ取り付けられている。
【0025】
各種センサ11~13の各々は、1つの蓄電装置4中に複数個設けられてもよい。同種のセンサが1つの蓄電装置8の中に複数個設けられる場合、その計測値は、平均値、最大値、最小値、中間値などとして出力することができる。コントローラ6は、各種センサ11~13で計測された電流、電圧、温度などに従い、蓄電装置8の蓄電量を算出し、更に蓄電量から充電率(SOC)を算出する。
【0026】
図3及び図4を参照して、蓄電装置4の充電時及び放電時における、充電率(SOC)と許容電流との関係について説明する。許容電流とは、ある条件下で蓄電装置4が流すことができる電流を意味する。
【0027】
図3及び図4に示すように、蓄電装置4が高温の場合には、低温時に比べ、充電電流の許容電流、放電電流の許容電流が大きいことが分かる。
【0028】
また、図3及び図4に示すように、蓄電装置4が低温時においては、充電率(SOC)が高くなるほど、放電電流の許容電流は増加する。一方、図3に示すように、蓄電装置4が低温時においては、充電率(SOC)の増加に対し、充電電流の許容電流の増加は微小である。なお、大きな電流を流すことでより発熱を促進することができることを考慮すると、蓄電装置4の暖機運転として充放電を実施する場合、温度は常温(25℃程度まで)程度まで高くされることが望ましく、充電率(SOC)は高く維持されていることが望ましい。
【0029】
図3及び図4から分かるように、蓄電装置4の充電時、及び放電時における許容電流は、蓄電装置4の充電率(SOC)によっても異なるし、また蓄電装置4の温度によっても異なる。そこで、本実施の形態では、蓄電装置4の充電率(SOC)と蓄電装置4の温度Tとの組合せに従って、暖機運転中の充電電流の値x及び放電電流の値yを決定し、その決定値x、yに従い、を蓄電装置4の暖機運転を制御する。コントローラ6は、充電率SOCと温度Tを逐次算出又は計測し、その算出又は計測された充電率(SOC)及び温度Tに適した充電電流及び放電電流を設定して暖機運転を実行する。
【0030】
一例として、コントローラ6は、図5に示すような、暖機運転中の充電電流の値x、yを決定するためのテーブルを備えている。このテーブルは、蓄電装置4の充電率(SOC)と、蓄電装置の温度Tとの組合せ毎に、暖機運転中の充電電流の値xと、放電電流の値yとを記憶している。コントローラ6は、算出された充電率(SOC)と、測定された蓄電装置4の温度Tとによりテーブルを参照し、充電電流の値x及び放電電流の値yを決定し、暖機運転を制御する。なお、暖機運転時の放電電流に基づく放電電力は、充電器5に充電電力を供給する電源に回生することができる。
【0031】
図5のテーブルにおいて、充電率(SOC)と温度Tの組合せ毎に、充電電流の値x(x11、x12、・・・・x99)と、放電電流の値y(y11、y12、・・・y99)とが定められているが、いずれの組合せにおいても、充電電流xの値は、放電電流の値yよりも大きい値にされている。x、yの値は、暖機運転の間適宜更新されるが、x>yの関係は図5のテーブルの記憶値に従い、常に維持される。x>yの関係が暖機運転中に維持されることで、暖機運転の実行中、充電率(SOC)は単調に増加する。充電率(SOC)が高い方が、許容電流が大きくなり、その分、x、yの値も大きい値に設定することができる。従って、x>yの関係が維持されることは、蓄電装置4の充電時間を短縮するためには好ましい。ただし、動作条件によっては、一部においてx≦yとなる時間帯が設定されてもよい。
【0032】
図5のテーブルにおいて、充電率(SOC)が上昇するほど、放電電流の値yに対する充電電流の値xの比率が大きくなるように、x及びyの値が設定されることが好ましい。これにより、暖機運転中の放電電流に対する充電電流の比率は、充電率(SOC)が上昇するほどに大きくされ、これにより、蓄電装置4の充電時間を短縮することができる。また、図5のテーブルにおいて、温度Tが上昇するほど、放電電流の値yに対する充電電流の値xの比率が大きくなるように、x及びyの値が設定されることが好ましい。これにより、暖機運転中の放電電流に対する充電電流の比率は、温度Tが上昇するほどに大きくされ、これにより、蓄電装置4の充電時間を短縮することができる。
【0033】
図6のフローチャート、及び図7のグラフを参照して、実施の形態の建設機械10における暖機運転の動作を説明する。
【0034】
最初に、ステップS10では、蓄電装置4の温度Tを検出する。そして、ステップS11では、検出された温度Tが、暖機運転が必要になる閾値温度Tthよりも低いか否かが判定される。T<Tthの場合には、暖機運転が必要と判断され、ステップS12に移行し、暖機運転の準備が開始される。T≧Tthの場合は、暖機運転は不要と判断され、通常運転(充電)が実行される(ステップS24)。
【0035】
続くステップS12では、電流センサ11及び電圧センサ12の計測値に基づき、蓄電装置4の蓄電量が算出され、更に充電率(SOC)が算出される。コントローラ6は、計測された温度Tと、算出された充電率(SOC)とに基づいて図5のテーブルを参照し、充放電電流の条件(条件1~5)としての、暖機運転時における充電電流の値x及び放電電流の値yを設定(又は更新)し(ステップS13)、暖機運転が実施される(ステップS14)。
【0036】
図7に示すように、時刻t0で暖機運転が開始され、決定された充電電流及び放電電流の値に従い、暖機運転において蓄電装置4への充電及び放電が短期間に繰り返される。図7の一番上のグラフは、蓄電装置4への充放電電流の時間による変化を示しており、放電流を+側、充電電流を-側としている。図7の真ん中のグラフは、充電率(SOC)の時間による変化を示している。暖機運転による充電と放電の繰り返しがされることにより、充電率(SOC)も、増減を繰り返す。ただし、充電電流xの値は、放電電流yの値よりも大きい値に原則として設定されるため、充電率(SOC)も全体として時間と共に増加する。なお、図7において、条件1~条件5とは、充電率(SOC)と温度Tに従い図5に示すテーブルを参照して設定された充電電流の値x、及び放電電流yの値を含む、暖機運転の実行時の条件を示している。条件1~5の内容は、状況の変化に応じて変化する。図7では、条件1~5が設定される例が図示されているが、暖機運転中に設定(更新)される条件の数はこれに限定されるものではない。
【0037】
図6のフローチャートに戻って説明すると、設定された条件に従って暖機運転を開始後、所定の時間間隔で、蓄電装置4の温度T、及び充電率(SOC)が検出又は算出される(ステップS20、S21)。
【0038】
続くステップS22では、ステップS21で検出された温度Tが、次の目標温度Tg(Tg1、Tg2、・・・)を超えたか否かが判定される。T>Tgであれば、温度Tが最終目標温度Tmaxに達していない限り(ステップS23のNo)、ステップS13に戻り、充放電電流の条件が図5のテーブルに基づいて更新される。なお、ステップS23でYesの判定がされる場合には、暖機運転は終了し、通常運転、すなわち、通常の蓄電装置4への充電動作に切り替えられる。
【0039】
ステップS22で、T≦Tgと判定された場合、ステップS32では、ステップS21で算出された充電率(SOC)が、次の目標充電率SOC(SOC1、SOC2...)を超えたか否かが判定される。Yesであれば、ステップS33に移行する。Noであれば、ステップS14に戻って、同一の充放電条件により暖機運転が継続される。
【0040】
ステップS33では、充電率(SOC)が最終目標充電率SOCmaxに到達していないか否かが判定される。到達していなければ(ステップS33のNo)、ステップS13に戻り、充放電電流の条件がテーブルに基づいて更新される。ステップS33でYesの判定がされる場合には、充電は完了したものと判定し、充電動作を終了する。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態によれば、暖機運転の開始後も、充電率(SOC)と温度Tとが継続的に算出又は計測され、その充電率(SOC)及び温度Tの組合せに従った充電電流の値x及び放電電流の値yが決定され、暖機運転の条件が適宜更新される。これにより、最適な条件で暖機運転が実行され、より短時間で蓄電装置4への充電動作を終了することができる。
【0042】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、上記以外の様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…油圧制御装置、 2…電動機、 3…インバータ、 4…蓄電装置、 5…充電器、 6…コントローラ、 7…電力変換装置、 8…蓄電装置、 9…ジャンクションボックス、 10…建設機械、 11…電流センサ、 12…電圧センサ、 13…温度センサ、 1110…上部旋回体、 1111…運転室、 1120…下部走行体、 1121…履帯、 1130…作業機、 1131…ブーム、 1132…アーム、 1133…バケット、 1140…旋回機構、 1160…シリンダ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7