(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153103
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】作業現場の監視システム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20221004BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20221004BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
H04N7/18 J
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056161
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】太田 守飛
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博史
【テーマコード(参考)】
5C054
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054FC12
5C054FE09
5C054HA30
5H181AA07
5H181AA21
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB20
5H181CC04
5H181FF13
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL14
5H181MC19
5L096AA06
5L096BA02
5L096BA04
5L096CA02
5L096DA02
5L096FA16
5L096FA64
5L096FA66
5L096FA69
5L096GA30
5L096GA51
5L096HA11
5L096JA22
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】物体の認識の精度の向上を図る。
【解決手段】作業現場の監視システム5は、撮影装置30により撮影された画像データを取得し、取得した画像データに基づいて、監視範囲内の物体の存在を認識する認識処理装置100を有する監視装置40と、認識処理装置100により取得された画像データに基づいて学習を行う学習装置60とを備える。監視装置40は、認識モデルが記憶されたモデル記憶部131と、画像データを記憶保持する画像記憶部132とを備え、認識処理装置100により認識された物体の認識処理結果の信頼度が第2信頼度以上の場合には、画像データを画像記憶部132に記憶保持する。学習装置60は、画像記憶部132に記憶保持された画像データに関する学習用データに基づいて学習を行うことにより、認識モデルの更新用データを生成する。監視装置40は、更新用データに基づいてモデル記憶部131に記憶されている認識モデルを更新する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の周囲を撮影する撮影装置と、前記撮影装置により撮影された画像データを取得し、取得した前記画像データに基づいて、監視範囲内の物体の存在を認識する認識処理装置と、を有する監視装置と、
前記認識処理装置により取得された前記画像データに基づいて学習を行う学習装置と、を備えた作業現場の監視システムにおいて、
前記監視装置は、
物体を認識するための認識モデルが記憶されたモデル記憶部と、所定の前記画像データを記憶保持する画像記憶部と、を備え、
前記認識処理装置により認識された物体の認識処理結果の信頼度が第1信頼度以上の場合には、前記監視範囲内に前記物体が存在すると判定し、
前記認識処理装置により認識された物体の認識処理結果の信頼度が前記第1信頼度よりも低い第2信頼度以上の場合には、前記画像データを前記画像記憶部に記憶保持し、
前記学習装置は、
前記画像記憶部に記憶保持された前記画像データに関する学習用データに基づいて学習を行うことにより、前記モデル記憶部に記憶された前記認識モデルの更新用データを生成し、
前記監視装置は、
前記学習装置により生成された前記更新用データに基づいて前記モデル記憶部に記憶されている前記認識モデルを更新する、
ことを特徴とする作業現場の監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の作業現場の監視システムにおいて、
前記監視装置は、作業機械に搭載され、前記画像記憶部に記憶保持されている前記画像データを前記学習装置に送信し、前記学習装置から前記認識モデルの更新用データを受信する第1通信装置を備え、
前記学習装置は、前記作業機械の外部に設けられ、前記監視装置から前記画像データを受信し、前記監視装置へ前記認識モデルの更新用データを送信する第2通信装置を備え、
前記監視装置は、前記第1通信装置により受信した前記認識モデルの更新用データに基づいて、前記モデル記憶部に記憶された前記認識モデルを更新する、
ことを特徴とする作業現場の監視システム。
【請求項3】
請求項1に記載の作業現場の監視システムにおいて、
前記監視装置は、取得した前記画像データから、単一の前記認識モデルを用いた認識処理によって、前記監視範囲内の物体の存在を認識する、
ことを特徴とする作業現場の監視システム。
【請求項4】
請求項1に記載の作業現場の監視システムにおいて、
前記監視装置は、取得した前記画像データから、前記認識モデルを用いて、人の頭部を含む体の一部を認識する認識処理を実行する、
ことを特徴とする作業現場の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等を用いて土木作業等が行われる作業現場の監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入力画像から検出された判別の候補となる候補物体が、歩行者であるか否かをニューラルネットワーク手法によって判別する物体判別部を備えた画像認識装置が記載されている。
【0003】
具体的には、物体判別部は、撮像装置から現在入力されている入力画像内の候補物体の輪郭及び大きさと、学習モデル記憶部に記憶しておいた歩行者を構成する所定の部位(例えば、頭、胴体、手足など)のいずれかのパターンの大きさ及び形状とを比較する判定(部位判定)を行って、その一致度(一致度合い)を示す判定出力値を求める。そして、物体判別部は、判定出力値が所定の判別閾値を超えていれば、候補物体が歩行者を構成する所定の部位(例えば、頭、胴体、手足など)のいずれかであることから、候補物体を歩行者であると判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ニューラルネットワーク手法等により物体の認識の精度を向上させるためには、様々な状況に応じた学習用データを収集し、物体の認識処理に必要な認識モデル(学習モデル)を更新することが有効である。しかしながら、撮影装置で撮影された画像データに基づいて学習用データを作成する際、画像データが膨大になると学習用データの作成に手間がかかり、物体の認識の精度の向上に必要な認識モデルの更新が遅れてしまうといった問題がある。
【0006】
本発明は、学習用データを容易に作成することができ、認識モデルの更新を適切に行うことにより、物体の認識の精度の向上を図ることができる作業現場の監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による作業現場の監視システムは、車体の周囲を撮影する撮影装置と、前記撮影装置により撮影された画像データを取得し、取得した前記画像データに基づいて、監視範囲内の物体の存在を認識する認識処理装置と、を有する監視装置と、前記認識処理装置により取得された前記画像データに基づいて学習を行う学習装置と、を備える。前記監視装置は、物体を認識するための認識モデルが記憶されたモデル記憶部と、所定の前記画像データを記憶保持する画像記憶部と、を備える。前記監視装置は、前記認識処理装置により認識された物体の認識処理結果の信頼度が第1信頼度以上の場合には、前記監視範囲内に前記物体が存在すると判定し、前記認識処理装置により認識された物体の認識処理結果の信頼度が前記第1信頼度よりも低い第2信頼度以上の場合には、前記画像データを前記画像記憶部に記憶保持する。前記学習装置は、前記画像記憶部に記憶保持された前記画像データに関する学習用データに基づいて学習を行うことにより、前記モデル記憶部に記憶された前記認識モデルの更新用データを生成する。前記監視装置は、前記学習装置により生成された前記更新用データに基づいて前記モデル記憶部に記憶されている前記認識モデルを更新する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、学習用データを容易に作成することができ、認識モデルの更新を適切に行うことにより、物体の認識の精度の向上を図ることができる作業現場の監視システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】作業現場の監視システムの主な機能について示す機能ブロック図。
【
図3】表示装置の表示画面に表示される表示画像の一例について示す図であり、撮影装置の近傍において、作業員が立った状態で作業をしている様子が撮影された表示画像を示す。
【
図4】表示装置の表示画面に表示される表示画像の一例について示す図であり、作業員がしゃがみ込んだ状態で作業をしている様子が撮影された表示画像を示す。
【
図5】監視装置のコントローラにより実行される監視処理の内容について示すフローチャート。
【
図6】監視装置のコントローラにより実行される画像データ送信処理の内容について示すフローチャート。
【
図7】監視装置のコントローラにより実行される認識モデル更新処理の内容について示すフローチャート。
【
図8】変形例1に係る監視装置における表示装置の表示画面に表示される表示画像の一例について示す図。
【
図9】変形例1に係る監視装置における表示装置の表示画面に表示される表示画像の別の例について示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る作業現場の監視システムについて説明する。作業現場では、作業機械が稼働している。作業機械は、土木作業、建設作業、解体作業等の各種作業に用いられる機械である。本実施形態では、作業機械が、クローラ式の油圧ショベル1である例について説明する。
【0011】
図1は、作業現場の監視システム5の構成を示す図である。
図1に示すように、作業現場の監視システム5は、作業現場で作業を行う油圧ショベル1と、管理センタ52に設置される管理サーバ53と、を有する。管理センタ52は、例えば、油圧ショベル1の製造業者(メーカー)の本社、支社、工場等の施設、油圧ショベル1のレンタル会社、サーバの運営を専門的に行うデータセンタ、油圧ショベル1を所有するオーナーの施設等に設置される。管理サーバ53は、油圧ショベル1の状態を遠隔で管理(把握、監視)する外部装置である。
【0012】
監視システム5は、作業現場で作業を行う油圧ショベル1と、作業現場から離れた場所あるいは作業現場に設置される管理サーバ53との間で広域ネットワークの通信回線50を介して双方向通信を行うことができるように構成されている。すなわち、油圧ショベル1と管理サーバ53とは、通信回線50を介して情報(データ)の送信、受信を行うことができる。通信回線50は、携帯電話事業者等が展開する携帯電話通信網(移動通信網)、インターネット等である。例えば、図示するように、油圧ショベル1と無線基地局51とが携帯電話通信網(移動通信網)で接続されている場合、無線基地局51は、油圧ショベル1から所定の情報を受信すると、受信した情報をインターネットを介して管理サーバ53に送信する。
【0013】
管理サーバ53は、油圧ショベル1から受信した稼働データ、警告データ、及び、画像データ等の車体データを受信し、ハードディスクドライブ等の記憶部54に記憶する。管理サーバ53は、記憶部54に記憶された情報(データ)を液晶ディスプレイ装置等の表示装置55に表示させる。管理者は、管理サーバ53をキーボード、マウス等の入力装置56により操作し、所定の油圧ショベル1の情報を表示装置55に表示させることで、油圧ショベル1の状態を把握することができる。例えば、管理サーバ53は、油圧ショベル1から送信された画像データを記憶部54に記憶し、記憶した画像データに基づいて、表示装置55の表示画面に油圧ショベル1の周囲の画像を表示させる。
【0014】
油圧ショベル1は、機体(車体)4と、機体4に取り付けられる作業装置10と、を備える。機体4は、走行体2と、走行体2上に旋回可能に設けられた旋回体3と、を備え、旋回体3の前部に作業装置10が取り付けられている。走行体2は、左側のクローラを駆動させる左側走行用油圧モータ及び右側のクローラを駆動させる右側走行用油圧モータと、を備える。走行体2は、左右一対のクローラを走行用油圧モータによって駆動することにより走行する。旋回体3は、機体4に設けられた旋回用油圧モータを駆動することにより旋回する。
【0015】
旋回体3は、旋回フレーム8と、旋回フレーム8の前部左側に設けられる運転室7と、旋回フレーム8の後部に設けられるカウンタウエイト9と、旋回フレーム8における運転室7の後側に設けられるエンジン室6と、を有する。エンジン室6には、原動機であるエンジン、エンジンにより駆動される油圧ポンプ等の油圧機器が収容されている。旋回フレーム8の前部中央には作業装置10が回動可能に連結されている。
【0016】
作業装置10は、回動可能に連結される複数のフロント部材及びフロント部材を駆動する複数の油圧シリンダ(アクチュエータ)を有する多関節型の作業装置である。本実施形態では、3つのフロント部材としてのブーム11、アーム12及びバケット13が、直列的に連結される。ブーム11は、その基端部が旋回フレーム8の前部に回動可能に連結される。アーム12は、その基端部がブーム11の先端部に回動可能に連結される。バケット13は、アーム12の先端部に回動可能に連結される。
【0017】
ブーム11は、油圧シリンダ(以下、ブームシリンダ11aとも記す)によって駆動され、旋回フレーム8に対して回動する。アーム12は、油圧シリンダ(以下、アームシリンダ12aとも記す)によって駆動され、ブーム11に対して回動する。バケット13は、油圧シリンダ(以下、バケットシリンダ13aとも記す)によって駆動され、アーム12に対して回動する。作業装置10の各油圧シリンダが駆動されることにより、地山の掘削、整地等の作業が行われる。
【0018】
監視システム5は、油圧ショベル1に搭載される監視装置40と、油圧ショベル1の外部、例えば、油圧ショベル1が稼働する作業現場に設置される学習装置60と、を備える。監視システム5は、撮影装置30により撮影された画像データに基づいて、監視範囲(すなわち、撮影装置30による撮影範囲)内を監視するためのシステムである。監視システム5は、旋回体3に複数の撮影装置30を取り付けることにより、機体4の周囲の監視が可能である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態では、旋回体3の後方向を撮影する撮影装置30がカウンタウエイト9の上部に取り付けられている。撮影装置(後カメラ)30は、旋回体3の後方の領域を左右約180°の画角で斜めに見下ろすような方向で連続的に撮影する。なお、油圧ショベル1は、後カメラの他に、旋回体3の左方向を撮影する撮影装置(左カメラ)、旋回体3の右方向を撮影する撮影装置(右カメラ)、旋回体3の前方向を撮影する撮影装置(前カメラ)を備えていてもよい。撮影装置30は、例えば、耐久性、耐候性に優れたCCD、CMOSなどの撮像素子と広角レンズを備えた広角ビデオカメラである。
【0020】
運転室7内には、油圧ショベル1の各部を操作するための操作装置、及び、所定の情報を表示する表示装置190が設けられる。表示装置190は、後述するコントローラ100による処理により、油圧ショベル1の周囲に物体が存在すると判定された場合(物体が検出された場合)、その情報を表示画面に表示させて、物体が検出されたことを油圧ショベル1のオペレータに報知する。なお、表示装置190は、液晶ディスプレイ上にタッチセンサが設けられたタッチパネルモニタである。つまり、表示装置190は、所定の操作を行うことにより、所定の情報をコントローラ100に入力可能な入力装置180(
図2参照)としても機能する。
【0021】
第1通信装置160は、広域ネットワークである通信回線50に接続される無線基地局51と無線通信可能な無線通信装置であって、所定の周波数帯域を感受帯域とする通信アンテナを含む通信インタフェースを有する。なお、第1通信装置160は、Wi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの通信方式を利用して、学習装置60と直接的に、あるいは間接的に情報の授受を行うようにしてもよい。
【0022】
コントローラ100及び管理サーバ53は、動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)、記憶部としてのROM(Read Only Memory)、記憶部としてのRAM(Random Access Memory)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。なお、コントローラ100及び管理サーバ53は、それぞれ1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。
【0023】
コントローラ100及び管理サーバ53のROMは、EEPROM等の不揮発性メモリであり、各種演算が実行可能なプログラム及び閾値等のデータが格納されている。すなわち、コントローラ100及び管理サーバ53のROMは、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体(記憶装置)である。RAMは揮発性メモリであり、CPUとの間で直接的にデータの入出力を行うワークメモリである。RAMは、CPUがプログラムを演算実行している間、必要なデータを一時的に記憶する。なお、コントローラ100及び管理サーバ53は、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリを記憶部として備えている。
【0024】
CPUは、ROMに記憶された制御プログラムをRAMに展開して演算実行する処理装置であって、制御プログラムに従って入出力インタフェース及びROM,RAMから取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。入出力インタフェースには、各種装置からの信号が入力される。入出力インタフェースは、入力された信号をCPUで演算可能なように変換する。入出力インタフェースは、CPUでの演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を各種装置に出力する。
【0025】
図2は、作業現場の監視システム5の主な機能について示す機能ブロック図である。
図2に示すように、監視装置40は、旋回体3に取り付けられ機体4の周囲を撮影する撮影装置30と、撮影装置30で撮影された画像を表示画面に表示させる表示装置190と、油圧ショベル1の外部に設置される外部装置である学習装置60と無線通信を行うための第1通信装置160と、表示装置190及び第1通信装置160を制御するコントローラ100と、コントローラ100に所定の情報を入力する入力装置180と、を備える。
【0026】
コントローラ100は、撮影装置30により撮影された画像データを表示装置190に表示させる表示制御装置、第1通信装置160を介して画像データを外部へ送信する通信制御装置、及び、撮影装置30により撮影された画像データ内の物体を認識する認識処理装置として機能する。以下、詳しく説明する。
【0027】
コントローラ100は、ROMに記憶されているプログラムを実行することにより、物体認識部101、表示画像生成部102、記憶保持制御部103及び通信制御部104として機能する。また、コントローラ100の不揮発性メモリは、モデル記憶部131及び画像記憶部132として機能する。なお、モデル記憶部131及び画像記憶部132は、単一の不揮発性メモリで構成してもよいし、それぞれ個別の不揮発性メモリで構成してもよい。
【0028】
モデル記憶部131には、物体を認識するための認識モデルが記憶されている。認識モデルは、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)の1種であるYOLO(You Only Look Once)モデルである。YOLOモデルは、ニューラルネットワーク手法による機械学習に基づく深層学習の結果により作成される認識モデルであり、予めモデル記憶部131に記憶されている。
【0029】
物体認識部101は、撮影装置30により撮影された画像データを取得し、取得した画像データから、単一の認識モデル(YOLOモデル)を用いた認識処理によって、監視範囲内の物体の存在を認識する(推定する)。物体認識部101は、認識処理により認識された物体の認識処理結果の信頼度に基づいて、監視範囲内に物体が存在するか否かを判定する。物体認識部101は、画像データに対する認識処理の結果、認識された物体の認識処理結果の信頼度が第1信頼度以上であるか否かを判定する。物体認識部101は、認識された物体の認識処理結果の信頼度が第1信頼度以上である場合には、監視範囲内に物体が存在すると判定する。物体認識部101は、認識された物体の認識処理結果の信頼度が第1信頼度未満である場合には、監視範囲内に物体が存在するとは判定しない。
【0030】
信頼度は、物体認識部101の認識処理により得られる判定出力値であり、認識モデルに予め設定されている物体のパラメータとの一致度(一致度合い)に相当し、完全に一致する場合には100%となる。第1信頼度は、物体の存在の有無を判定するために予め設定される閾値である。第1信頼度は、例えば、90%程度の値が設定される。
【0031】
本実施形態では、認識モデルが人の頭部に関するパラメータ群を有しており、物体認識部101は、人の頭部と推定する確度を信頼度として算出する。つまり、物体認識部101は、取得した画像データから、認識モデルを用いて、人の頭部を認識する認識処理を実行する。物体認識部101は、認識処理により存在が認識された物体の情報として、「物体の種類を表すクラス(認識対象の分類情報)」、「物体の位置座標情報(画像内の横軸方向の座標及び縦軸方向の座標)」、「物体の大きさ情報(物体を囲む矩形枠の横軸方向長さ及び縦軸方向長さ)」を生成する。
【0032】
表示画像生成部102は、物体認識部101により監視範囲内に存在すると判定された物体192の情報(物体の位置座標及び物体の大きさの情報)に基づいて、その物体192を囲む枠画像193を、撮影装置30により撮影された画像に合成して表示装置190の表示画面に表示させる(
図3及び
図4参照)。
【0033】
図3及び
図4は、表示装置190の表示画面に表示される表示画像の一例について示す図である。
図3は、撮影装置30の近傍(すなわち油圧ショベル1の後部の近傍)において、作業員が立った状態で作業をしている様子が撮影された表示画像を示し、
図4は撮影装置30からある程度離れた位置において、作業員がしゃがみ込んだ状態で作業をしている様子が撮影された表示画像を示す。
【0034】
図3及び
図4に示すように、表示画像生成部102は、撮影装置30で撮影された撮影画像191を表示装置190の表示画面に表示させる。表示画像生成部102は、物体認識部101により監視範囲内に物体192が存在すると判定されると、その物体(人の頭部)192を囲む矩形状の枠画像193を生成し、枠画像193を撮影画像191に合成して表示装置190の表示画面に表示させる。このように、物体(人の頭部)192の位置及び大きさを表す矩形状の枠画像193を撮影画像191に重ねて表示することにより、オペレータは、油圧ショベル1の周囲に存在する作業員(人)の位置を容易に把握することができる。
【0035】
表示画像生成部102は、油圧ショベル1から作業員までの距離に応じて段階的に枠画像193の色を変化させることが好ましい。表示画像生成部102は、例えば、油圧ショベル1から作業員までの距離が第1閾値未満の場合には枠画像193を赤色で表示し、油圧ショベル1から作業員までの距離が第1閾値以上第2閾値未満の場合には枠画像193を黄色で表示し、油圧ショベル1から作業員までの距離が第2閾値以上の場合には枠画像193を青色で表示する。なお、第2閾値は第1閾値よりも大きい値である。このように、枠画像193を油圧ショベル1から作業員までの距離に応じて段階的に変化させることにより、オペレータは、作業員の位置をより容易に把握することができる。
【0036】
なお、油圧ショベル1から作業員までの距離の算出方法の一例は以下のとおりである。コントローラ100の記憶部には、撮影装置30で撮影された撮影画像191の位置座標をショベル基準座標系(例えば、旋回体3の旋回中心軸上の任意の点を原点とした3次元座標系)における位置座標へ変換する変換パラメータが記憶されている。コントローラ100は、枠画像193の下辺の中心位置の座標を変換パラメータによりショベル基準座標系の位置座標へ変換(座標変換)し、油圧ショベル1からの距離(例えば、ショベル基準座標系の原点からの距離)を算出する。なお、枠画像193は、人の頭部の位置及び大きさを表しているため、人の頭部の位置から人の足部の位置を推定するための補正パラメータによって、座標変換後の座標を補正し、補正後の座標に基づいて油圧ショベル1から作業員(人)までの距離を算出してもよい。
【0037】
記憶保持制御部103は、物体認識部101により認識された物体の認識処理結果の信頼度が第2信頼度以上であるか否かを判定する。記憶保持制御部103は、物体認識部101により認識された物体の認識処理結果の信頼度が第2信頼度以上である場合には、その画像データを画像記憶部132に記憶保持させる。記憶保持制御部103は、物体認識部101により認識された物体の認識処理の結果の信頼度が第2信頼度未満である場合には、その画像データを画像記憶部132に記憶保持させない。
【0038】
コントローラ100は、撮影装置30で撮影された1秒当たり30枚の画像データで構成される映像データを取得する。1秒間で取得される複数の画像データは、その多くが類似する画像データとなる。このため、本実施形態では、記憶保持制御部103は、撮影装置30から取得した画像データを間引いて画像記憶部132に記憶保持する。記憶保持制御部103は、取得した画像データのうち、所定時間t0(例えば、0.2秒)ごとに、画像データを画像記憶部132に記憶保持させる。なお、画像データには、撮影画像の情報だけでなく、油圧ショベル1の識別番号、撮影日時などの情報も含まれる。
【0039】
第2信頼度は、認識モデルの再学習に用いる画像データを選別するための閾値(画像データが再学習を必要とするか否かを判定するための閾値)であり、予め、第1信頼度よりも低い任意の値が設定される。第2信頼度は、例えば、50~70%程度の値が設定される。第2信頼度は、選別された画像データに物体が存在しているか否かを人が判断し、学習用データの作成を効率よく行うことができるか否かによって定めることができる。つまり、第2信頼度は、所定の物体が存在する可能性が高いか否かを判定するための閾値ともいえる。なお、選別された画像データに基づいて学習用データの作成を効率よく行えない場合には、第2信頼度の値を上昇させればよい。
【0040】
通信制御部104は、第1通信装置160によって学習装置60と通信が可能な状態であるか否かを判定する。通信制御部104は、通信が可能な状態である場合、第1通信装置160によって、画像記憶部132に記憶保持されている画像データを学習装置60に送信する。学習装置60は、第2通信装置150によって、監視装置40から画像データを受信する。学習装置60は、監視装置40からの画像データの受信が正常に完了した場合、その旨を表す受信完了情報を、第2通信装置150によって油圧ショベル1の監視装置40に送信する。監視装置40は、受信完了情報を受信すると、送信が正常に完了したと判定された画像データを送信済み画像データとして登録する。送信済み画像データは、定期的に消去される、あるいは、上書き可能な状態とされる。なお、送信済み画像データは、学習装置60に送信されることはない。
【0041】
図5を参照して、監視装置40のコントローラ100により実行される監視処理の内容について説明する。
図5に示すフローチャートの処理は、例えば、油圧ショベル1のイグニッションスイッチがオン(すなわち、キーオン)されることにより開始され、初期設定が行われた後、所定の制御周期(例えば、1/30秒)で繰り返し実行される。
【0042】
ステップS101において、コントローラ100は、撮影装置30で撮影された画像のデータを撮影装置30から取得し、ステップS104へ進む。
【0043】
ステップS104において、コントローラ100は、ステップS101で取得した1枚の画像データから認識モデルを用いた認識処理を行い、その認識処理の結果の信頼度(本実施形態では、人の頭部の推定確度)を算出し、ステップS107へ進む。なお、認識処理では、コントローラ100は、監視範囲内に存在すると推定された物体(認識された物体)の位置座標情報及び大きさ情報も算出する。
【0044】
ステップS107において、コントローラ100は、本演算サイクルよりも前であって、かつ本演算サイクルに最も近い演算サイクルでの記憶保持処理S113(前回の記憶保持処理とも記す)が実行されてからの時間tが、予め定めた所定時間t0(例えば、0.2秒)を経過しているか否かを判定する。ステップS107において、前回の記憶保持処理S113が実行されてからの時間tが、予め定めた所定時間t0を経過していると判定されると、ステップS110へ進む。ステップS107において、前回の記憶保持処理S113が実行されてからの時間tが、予め定めた所定時間t0を経過していないと判定されると、ステップS131へ進む。なお、初めてステップS107が実行された場合には、ステップS110へ進む。また、時間tは、コントローラ100のタイマ機能により計測され、後述するステップS113の記憶保持処理が実行される度にリセット(t=0)される。
【0045】
ステップS110において、コントローラ100は、ステップS104で算出された信頼度が第2信頼度以上であるか否かを判定する。ステップS110において、信頼度が第2信頼度以上であると判定されるとステップS113へ進み、信頼度が第2信頼度未満であると判定されるとステップS137へ進む。
【0046】
ステップS113において、コントローラ100は、ステップS101で取得した画像データを画像記憶部132に記憶保持し、ステップS131へ進む。ステップS131において、コントローラ100は、ステップS104で算出された信頼度が第1信頼度以上であるか否かを判定する。ステップS131において、信頼度が第1信頼度以上であると判定されると、その物体は存在しているとしてステップS134へ進み、信頼度が第1信頼度未満であると判定されると、その物体は存在していないとしてステップS137へ進む。
【0047】
ステップS134において、コントローラ100は、ステップS104で監視範囲内に存在すると判定された物体の位置座標情報及び大きさ情報に基づいて、枠画像193を生成し、ステップS137へ進む。
【0048】
ステップS137において、コントローラ100は、ステップS101で取得した画像データに基づいて表示画像(撮影画像191)を生成し、表示装置190の表示画面に表示させる。なお、本演算サイクルにおいて枠画像生成処理S134が実行されている場合には、ステップS101で取得した画像データに基づいて生成した表示画像(撮影画像191)に枠画像193を合成した合成画像を表示装置190の表示画面に表示させる。
【0049】
ステップS137の表示処理が完了すると、
図5のフローチャートに示す処理を終了し、次の演算サイクルのステップS101へ進む。
【0050】
図6を参照して、監視装置40のコントローラ100により実行される画像データ送信処理の内容について説明する。
図6に示すフローチャートの処理は、例えば、油圧ショベル1のイグニッションスイッチがオン(すなわち、キーオン)されることにより開始され、初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0051】
ステップS116において、コントローラ100は、第1通信装置160によって学習装置60と通信が可能な状態であるか否かを判定する。ステップS116において、通信が可能な状態であると判定されるとステップS119へ進み、通信が不可能な状態であると判定されるとステップS128へ進む。
【0052】
ステップS128において、コントローラ100は、画像記憶部132に記憶保持されている画像データのうち、登録画像データ(送信済み画像データとして登録されている画像データ、及び、未送信画像データとして登録されている画像データ)以外の画像データを未送信画像データとして登録して
図6のフローチャートに示す処理を終了する。
【0053】
ステップS119において、コントローラ100は、画像記憶部132に記憶保持されている画像データのうち、未送信画像データとして登録されている画像データを第1通信装置160によって管理サーバ53へ送信し、ステップS122へ進む。
【0054】
ステップS122において、コントローラ100は、未送信画像データの送信が正常に完了したか否かを判定する。ステップS122において、コントローラ100は、管理サーバ53からステップS119で送信した未送信画像データに関する受信完了情報を取得した場合、未送信画像データの送信が正常に完了したと判定し、ステップS125へ進む。ステップS122において、コントローラ100は、管理サーバ53からステップ119で送信した未送信画像データに関する受信完了情報を所定時間内に取得しなかった場合、未送信画像データの送信が正常に完了しなかったと判定し、ステップS128へ進む。
【0055】
ステップS125において、コントローラ100は、画像記憶部132に記憶保持されている画像データのうち、管理サーバ53への送信が完了した画像データを送信済み画像データとして登録し、
図6のフローチャートに示す処理を終了する。
【0056】
図1に示すように、学習装置60は、管理サーバ53と、第2通信装置150と、表示装置55と、入力装置56と、を備える。第2通信装置150は、第1通信装置160と同様の構成である。
図2に示すように、学習装置60は、制御部57及び記憶部54として機能する。なお、記憶部54は、管理サーバ53に搭載されるフラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリに相当する。記憶部54には、認識モデルが記憶されている。制御部57は、表示装置55及び第2通信装置150を制御する。
【0057】
制御部57は、第2通信装置150による受信処理により、油圧ショベル1の監視装置40の画像記憶部132で記憶保持された画像データを取得し、記憶部54に記憶する。制御部57は、入力装置56から入力される情報に基づいて、取得した画像データを表示装置55の表示画面に表示させる。
【0058】
制御部57は、取得した画像データに関する学習用データに基づいて学習を行うことにより、新しいバージョンの認識モデルを生成するとともに、認識モデルの更新用データを生成する処理(更新用データ生成処理)を実行する。認識モデルの更新用データとは、油圧ショベル1のモデル記憶部131に記憶されている認識モデルを新しいバージョンの認識モデルに更新するための更新プログラムである。なお、認識モデルの更新用データは、更新プログラムに限定されず、新しいバージョンの認識モデル全体であってもよい。
【0059】
学習用データは、取得した画像データのうち、所定の物体(例えば、人)が存在することが管理者の目視によって確認された画像データと、その画像データ内の物体の位置座標情報(画像内の横軸方向の座標及び縦軸方向の座標)と、その物体の大きさ情報(物体を囲む矩形枠の横軸方向長さ及び縦軸方向長さ)と、その物体の種類を表すクラス(分類情報)と、で構成される。学習用データは、管理者が、表示装置55に表示される画像を見ながら入力装置56を操作し、物体が存在する画像データを選択し、その画像データ内の物体の位置座標情報、大きさ情報及びクラスを、選択した画像データと対応付けて記憶部54に記憶させる処理(学習用データ作成処理)を行うことにより作成することができる。
【0060】
上述したように、学習装置60が受信した画像データは、油圧ショベル1の監視装置40において、人が存在する可能性が高いとして選別されたものである。このため、管理者は、少ない画像データに基づいて、効率よく学習用データを作成することができる。
【0061】
学習装置60の制御部57は、学習用データに基づいて、YOLOv3等を用いた周知のニューラルネットワーク手法による機械学習を行うことにより、新しいバージョンの認識モデルを生成するとともに、認識モデルの更新用データを生成する。
【0062】
監視装置40の通信制御部104は、学習装置60と通信を行って、管理サーバ53の記憶部54に記憶されている認識モデルの情報を取得する。通信制御部104は、取得した認識モデルの情報に基づいて、学習装置60が、モデル記憶部131に記憶されている認識モデルのバージョンよりも新しいバージョンの認識モデルを有しているか否かを判定する。つまり、監視装置40の通信制御部104は、管理サーバ53の記憶部54に記憶されている認識モデルに、モデル記憶部131に記憶されている認識モデルには存在しない新規なパラメータ群が含まれているか否かを判定する。
【0063】
学習装置60が、モデル記憶部131に記憶されている認識モデルのバージョンよりも新しいバージョンの認識モデルを有している場合、通信制御部104は、第1通信装置160を介して、認識モデルの更新用データを取得するための要求指令を学習装置60へ送信する。学習装置60の制御部57は、要求指令を受信すると、認識モデルの更新用データを第2通信装置150によって監視装置40へ送信する。
【0064】
通信制御部104は、第1通信装置160による受信処理により、学習装置60から認識モデルの更新用データを取得する。通信制御部104は、取得した認識モデルの更新用データに基づいて、モデル記憶部131に記憶されている認識モデルを更新する更新処理(バージョンアップ)を行う。すなわち、コントローラ100は、モデル記憶部131に記憶されている認識モデルを構成するパラメータ群を更新する。
【0065】
図7を参照して、監視装置40のコントローラ100により実行される認識モデル更新処理の内容について説明する。
図7に示すフローチャートの処理は、例えば、油圧ショベル1のイグニッションスイッチがオン(すなわち、キーオン)されることにより開始され、初期設定が行われた後、実行される。なお、
図7に示すフローチャートの処理は、イグニッションスイッチがオンされて、油圧ショベル1の監視装置40の起動されたときに実行される場合に限らず、オペレータによって入力装置180が操作され、入力装置180から更新処理の実行指令がコントローラ100に入力されると実行されるようにしてもよい。
【0066】
ステップS180において、コントローラ100は、第1通信装置160によって学習装置60と通信が可能な状態であるか否かを判定する。ステップS180において、通信が可能な状態であると判定されるとステップS185へ進み、通信が不可能な状態であると判定されると
図7のフローチャートに示す処理を終了する。
【0067】
ステップS185において、コントローラ100は、学習装置60から認識モデルのバージョン情報を取得し、学習装置60の認識モデルのバージョンが、監視装置40のモデル記憶部131に記憶されている認識モデルのバージョンよりも新しいか否かを判定する。ステップS185において、学習装置60の認識モデルのバージョンが、監視装置40のモデル記憶部131に記憶されている認識モデルのバージョンよりも新しいと判定されると、ステップS190へ進む。ステップS185において、学習装置60の認識モデルのバージョンが、監視装置40のモデル記憶部131に記憶されている認識モデルのバージョンよりも新しくないと判定されると、
図7のフローチャートに示す処理を終了する。
【0068】
ステップS190において、コントローラ100は、第1通信装置160によって、学習装置60から認識モデルの更新用データを取得し、ステップS195へ進む。
【0069】
ステップS195において、コントローラ100は、現在利用されている認識モデル(現行モデル)を、ステップS190で取得した認識モデルの更新用データによって更新する更新処理を実行し、
図7のフローチャートに示す処理を終了する。
【0070】
以上のとおり、本実施形態に係る監視方法は、撮影装置30により撮影された画像データを取得する取得処理(S101)と、モデル記憶部131に記憶されている認識モデルを用いて、取得した画像データから監視範囲内(撮影範囲内)に存在する物体を認識する認識処理(S104)と、を含む。この監視方法は、画像データ内において認識された物体の認識処理結果の信頼度が第1信頼度以上である場合には、監視範囲内(撮影範囲内)に物体が存在すると判定する存在判定処理(S131)と、画像データ内において認識された物体の認識処理結果の信頼度が第1信頼度よりも低い第2信頼度以上である場合には、その画像データを画像記憶部132に記憶保持する記憶保持処理(S110でY→S113)と、画像記憶部132に記憶保持された画像データに基づいて学習用データを作成する学習用データ作成処理と、学習用データに基づいて認識モデルの更新用データを生成する更新用データ生成処理と、更新用データに基づいてモデル記憶部131に記憶された認識モデルを更新するモデル更新処理(S195)と、を含む。この監視方法によれば、学習用データを容易に作成することができ、認識モデルの更新を適切に行うことにより、物体の認識の精度の向上を図ることができる。
【0071】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0072】
(1)作業現場の監視システム5は、機体(車体)4の周囲を撮影する撮影装置30と、撮影装置30により撮影された画像データを取得し、取得した画像データに基づいて、監視範囲内の物体の存在を認識するコントローラ(認識処理装置)100と、を有する監視装置40と、コントローラ(認識処理装置)100により取得された画像データに基づいて学習を行う学習装置60と、を備える。監視装置40は、物体(例えば、人の頭部)を認識するための認識モデルが記憶されたモデル記憶部131と、所定の画像データを記憶保持する画像記憶部132と、を備える。監視装置40は、コントローラ100により認識された物体の認識処理結果の信頼度が第1信頼度以上の場合には、監視範囲内に物体が存在すると判定する。監視装置40は、コントローラ100により認識された物体の認識処理結果の信頼度が第1信頼度よりも低い第2信頼度以上の場合には、その認識処理の対象となった画像データを画像記憶部132に記憶保持する。学習装置60は、画像記憶部132に記憶保持された画像データに関する学習用データに基づいて学習を行うことにより、モデル記憶部131に記憶された認識モデルの更新用データを生成する。監視装置40は、学習装置60により生成された更新用データに基づいてモデル記憶部131に記憶されている認識モデルを更新する。
【0073】
この構成では、学習用データの作成に必要な画像データを抽出して(選択して)記憶保持するため、少ない画像データで学習用データを作成することができる。このため、学習用データの作成を効率よく行うことができ、認識モデルの更新を短期間で行うことができる。つまり、本実施形態によれば、学習用データを容易に作成することができ、認識モデルの更新を適切に行うことにより、物体の認識(検出)の精度の向上を図ることができる。
【0074】
(2)監視装置40は、油圧ショベル(作業機械)1に搭載される。監視装置40は、画像記憶部132に記憶保持されている画像データを学習装置60に送信し、学習装置60から認識モデルの更新用データを受信する第1通信装置160を備える。学習装置60は、油圧ショベル1の外部に設けられる。学習装置60は、監視装置40から画像データを受信し、監視装置40へ認識モデルの更新用データを送信する第2通信装置150を備える。監視装置40は、第1通信装置160により受信した認識モデルの更新用データに基づいて、モデル記憶部131に記憶された認識モデルを更新する。
【0075】
この構成では、第1通信装置160及び第2通信装置150により、学習用データの作成に用いる画像データを速やかに監視装置40から学習装置60へ提供することができ、認識モデルの更新用データを速やかに学習装置60から監視装置40へ提供することができる。したがって、本実施形態によれば、記憶媒体等を用いて監視装置40と学習装置60との間でデータの授受を行う場合に比べて、認識モデルの更新をより適切なタイミングで行うことができるため、作業効率の向上を図ることができる。
【0076】
(3)監視装置40は、取得した画像データから、単一の認識モデルを用いた認識処理によって、監視範囲内の物体の存在を認識する。これにより、複数の認識モデルによって複数段階の認識処理を実行する場合に比べて、認識処理の精度の向上を図ることができる。
【0077】
(4)監視装置40は、取得した画像データから、認識モデルを用いて、人の頭部を含む体の一部を認識する認識処理を実行する。これにより、監視範囲内の人の位置を適切に把握することができる。
【0078】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0079】
<変形例1>
上記実施形態では、コントローラ100が、人(作業員)の頭部を認識する処理を実行し、監視範囲内に存在していると判定された人の頭部(検出された人の頭部)の位置及び大きさを表す枠画像193を表示装置190の表示画面に表示させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。撮影装置30により撮影された画像は、画像下端部の中心が最も撮影装置30に近く、画像下端部の中心から放射状に距離が加算される。このため、コントローラ100は、立体物である人(作業員)の距離を推定する場合には、検出された人(作業員)の足元の位置座標に基づいて、ショベル基準座標系の位置座標を演算し、油圧ショベル1から作業員までの距離を算出することが好ましい。
【0080】
本変形例1に係る監視装置40は、取得した画像データから、認識モデルを用いて、人の頭部を含む体の一部として、人の頭部、頭部を含む上半身、及び、上半身を含む全身の3つのクラス(種類)の位置及び大きさを認識する認識処理を実行する。つまり、本変形例では、モデル記憶部131に記憶されている認識モデルには、頭部及び上半身及び全身の3つのクラスに対するパラメータ群が含まれている。
【0081】
図8に示すように、コントローラ100は、人の頭部、上半身及び全身の位置及び大きさを表す矩形状の枠画像193A,193B,193Cを表示装置190の表示画面に表示させる。なお、人の頭部、上半身及び全身が検出された場合に、それらの位置及び大きさを表す枠画像193A,193B,193Cを全て表示せずに、最も大きい枠画像、すなわち全身の位置及び大きさを表す枠画像193Cのみを表示させるようにしてもよい。コントローラ100は、枠画像193Cの下端部の中心位置の座標に基づいて、油圧ショベル1から人までの距離を演算する。
【0082】
コントローラ100は、人(作業員)がしゃがみ込んで作業を行っている場合には、
図9に示すように、人の頭部及び上半身の位置及び大きさを表す矩形状の枠画像193A,193Bを表示装置190の表示画面に表示させる。なお、人の頭部及び上半身が検出された場合に、それらの位置及び大きさを表す枠画像193A,193Bを全て表示せずに、最も大きい枠画像、すなわち上半身の位置及び大きさを表す枠画像193Bのみを表示させるようにしてもよい。この場合、コントローラ100は、枠画像193Bの下端部の中心位置の座標に基づいて、油圧ショベル1から人までの距離を演算する。
【0083】
本変形例1の構成によれば、作業員(人)の位置をより正確に把握することができるため、油圧ショベル1による作業効率の向上を図ることができる。
【0084】
<変形例2>
上記実施形態では、通信装置150,160を介して、監視装置40と学習装置60とがデータの送受信を行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。メモリカード、USBメモリ等の持ち運びが可能な記憶媒体、あるいは記憶媒体を内蔵するタブレットPC等の情報端末を介して監視装置40と学習装置60との間でデータのやり取りを行ってもよい。
【0085】
この場合、例えば、監視装置40は、画像記憶部132に画像データを蓄積し、記憶媒体に蓄積した画像データを移動する。管理者は、記憶媒体を用いて、学習装置60の記憶部54に画像データを記憶させ、学習用データを作成する。学習装置60は、学習用データに基づいて認識モデルの再学習を行い、認識モデルの更新用データを生成し、記憶媒体に記憶させる。オペレータは、記憶媒体を用いて、認識モデルの更新用データを監視装置40に入力する。監視装置40は、入力された認識モデルの更新用データに基づいて、モデル記憶部131に記憶されている認識モデルを更新する。したがって、本変形例2に係る監視システム5は、通信装置150,160を省略することができる。また、本変形例2によれば、通信装置150,160を介した通信を行う必要がないため、認識モデルの再学習及び認識モデルの更新のための通信コストがかかることもない。
【0086】
<変形例3>
上記実施形態では、
図6のフローチャートに示す処理により、画像記憶部132に記憶保持されている画像データを学習装置60に送信する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、入力装置180に対する操作に基づいて、画像記憶部132に記憶保持されている未送信の画像データを学習装置60に送信するようにしてもよい。オペレータが入力装置180を用いてデータ送信を行うための操作がなされると、入力装置180からコントローラ100にデータ送信指令が入力される。
図2に示すように、通信制御部104は、データ送信指令が入力されると、第1通信装置160を制御して、画像記憶部132に記憶保持されている未送信の画像データを管理サーバ53へ送信する。
【0087】
コントローラ100は、油圧ショベル1の稼働時間が予め定めた閾値を超えたか否かを判定し、稼働時間が閾値を超えた場合に、自動で画像記憶部132に記憶保持されている未送信の画像データを管理サーバ53に送信してもよい。コントローラ100は、蓄積した未送信の画像データの量が予め定めた閾値を超えたか否かを判定し、未送信の画像データの量が閾値を超えた場合に、自動で画像記憶部132に記憶保持されている未送信の画像データを管理サーバ53に送信してもよい。
【0088】
<変形例4>
上記実施形態では、表示装置190の表示画面に、物体192の位置及び大きさを表す矩形状の枠画像193を表示させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。枠画像193は、矩形状に限定されず、円形状、楕円形状、五角形等の多角形状としてもよいし、曲線と直線とを繋いだ任意の形状としてもよいし、物体の形状に沿った形状としてもよい。また、枠画像193は、任意のアルファ値を設定した透過色で表示してもよい。枠画像193は、物体が検出された場合に常に表示することなく、任意の周期で表示(点滅表示)させてもよい。
【0089】
<変形例5>
上記実施形態では、撮影装置30で撮影された画像内に物体が存在すると判定されると、枠画像193を撮影画像191に合成して表示する例について説明したが、物体が存在すると判定されたことをオペレータに通知するための方法は、これに限定されない。例えば、コントローラ100は、撮影装置30で撮影された画像内に物体が存在すると判定された場合、撮影画像191の外側に、物体(例えば、作業員)が存在することを表すアイコンを表示させるようにしてもよい。
【0090】
<変形例6>
上記実施形態では、学習装置60が油圧ショベル1の外部の管理センタ52に設けられる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。油圧ショベル1に搭載される監視装置40に、上記実施形態で説明した学習装置60の機能を持たせてもよい。この場合、上記実施形態で説明した通信装置150,160によるデータのやり取り、及び、変形例2で説明した記憶媒体によるデータのやり取りが不要になる。なお、油圧ショベル1に監視装置40及び学習装置60を搭載する場合、コントローラ100において、認識モデルの再学習が行われるため、処理能力が高い(性能の高い)コンピュータが必要となる。一方、上記実施形態で説明したように、学習装置60を油圧ショベル1の外部に設けることにより、油圧ショベル1に搭載されるコントローラ100のコストの低減を図ることができる。
【0091】
<変形例7>
上記実施形態では、油圧ショベル1に搭載される監視装置40が記憶保持した画像データを、第1通信装置160によって管理センタ52内の学習装置60に送信する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
図1に示すように、監視装置40は、第1通信装置160によって、油圧ショベル1及び管理センタ52とは別の場所に設置されるデータサーバ58に画像データを送信してもよい。データサーバ58は、受信した画像データを記憶装置59に記憶する。この場合、データサーバ58の記憶装置59に記憶されている画像データを用いて学習用データを作成し、学習用データをデータサーバ58の記憶装置59に記憶させる。学習装置60は、第2通信装置150によって、データサーバ58から学習用データを受信する。学習装置60は、学習用データに基づいて認識モデルの更新用データを生成する。本変形例7によれば、学習装置60の記憶部54の容量を上記実施形態に比べて小さくすることができる。
【0092】
<変形例8>
上記実施形態では、撮影装置30により撮影した画像のデータを、所定の条件が成立したときに、画像記憶部132に記憶保持する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
図1に示すように、油圧ショベル1に取り付けられる撮影装置30と同様の高さ及び取付角度となるように、油圧ショベル1が稼働する作業現場に設置された支柱34の先端に取り付けられた撮影装置33により撮影された画像データを画像記憶部132に記憶保持するようにしてもよい。
【0093】
この場合、監視システムは、撮影装置33と、撮影装置33に接続される監視シミュレータ240と、を有する。監視シミュレータ240は、監視装置40と同様の構成及び機能を有しているため、それらの詳細な説明は省略する。本変形例では、上記実施形態と同様、監視シミュレータ240は、撮影装置33により撮影された画像データを取得し、取得した画像データから監視範囲(撮影範囲)内の物体の存在を認識する認識処理を実行する。監視シミュレータ240は、画像データ内において認識された物体の認識処理結果の信頼度が第2信頼度以上である場合に、その認識処理の対象となった画像データを抽出して監視シミュレータ240の画像記憶部に記憶保持する。
【0094】
つまり、本変形例8では、撮影装置33の撮影範囲を油圧ショベル1の撮影装置30の撮影範囲として模擬した状態で、撮影装置33による撮影を行って、撮影した画像のデータの中から、効率よく学習用データを作成することができる画像データを選別することができる。したがって、本変形例8によれば、油圧ショベル1を用いなくても、学習用データの作成に必要な画像データの取得することができる。
【0095】
<変形例9>
上記実施形態では、監視装置40が、監視範囲内に存在する人を認識する処理を実行する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。監視装置40は、監視範囲内に存在する物体として、作業車両、標識、岩等の障害物を認識する処理を実行してもよい。
【0096】
<変形例10>
上記実施形態では、作業機械がクローラ式の油圧ショベル1である場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。ホイール式の油圧ショベル、ホイールローダ、ダンプトラック、クレーン等の種々の作業機械に本発明を適用することができる。
【0097】
<変形例11>
上記実施形態では、認識モデルとしてYOLOモデルを例に挙げたが、認識モデルはこれに限定されない。SSD(Single Shot Multibox Detector)などの種々の物体認識用のCNN(Convolutional Neural Network)モデルを採用してもよい。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0099】
1…油圧ショベル(作業機械)、4…機体(車体)、5…監視システム、10…作業装置、30…撮影装置、33…撮影装置、40…監視装置、52…管理センタ、53…管理サーバ、54…記憶部、55…表示装置、56…入力装置、60…学習装置、100…コントローラ(認識処理装置)、101…物体認識部、102…表示画像生成部、103…記憶保持制御部、104…通信制御部、131…モデル記憶部、132…画像記憶部、150…第2通信装置、160…第1通信装置、180…入力装置、190…表示装置、240…監視シミュレータ(監視装置)