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特開2022-153140覆蓋設備および組成分析用データ取得方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153140
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】覆蓋設備および組成分析用データ取得方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3563 20140101AFI20221004BHJP
【FI】
G01N21/3563
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056226
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 宏治
(72)【発明者】
【氏名】中島 秀也
(72)【発明者】
【氏名】大久保 英也
(72)【発明者】
【氏名】川井 将之
(72)【発明者】
【氏名】朱 林
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊明
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB08
2G059DD12
2G059EE02
2G059EE12
2G059FF01
2G059HH01
2G059KK04
2G059MM01
2G059NN01
(57)【要約】
【課題】廃棄物の組成情報を分析するのに適したデータを容易に取得することができる。
【解決手段】組成分析の対象となる廃棄物Pを計測するために用いられる覆蓋設備2であって、廃棄物Pを覆う覆蓋部10と、覆蓋部10の内部に設けられた照明器20および計測器30と、を備え、覆蓋部10は、外部からの自然光を遮光可能な構造になっており、計測器30は、照明器20が廃棄物Pを照射する光を用いた計測を行って前記組成分析に使用するデータを取得することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成分析の対象となる廃棄物を計測するために用いられる覆蓋設備であって、
前記廃棄物を覆う覆蓋部と、
前記覆蓋部の内部に設けられた照明器および計測器と、を備え、
前記覆蓋部は、外部からの自然光を遮光可能な構造になっており、
前記計測器は、前記照明器が前記廃棄物を照射する光を用いた計測を行って前記組成分析に使用するデータを取得する、
ことを特徴とする覆蓋設備。
【請求項2】
運搬車両の荷台に積載され、組成分析の対象となる廃棄物を計測するために用いられる覆蓋設備であって、
前記廃棄物を覆う覆蓋部と、
前記覆蓋部の内部に設けられた照明器および計測器と、を備え、
前記覆蓋部は、計測位置において前記運搬車両の上方に配置される天井と、地上に立設され前記運搬車両の側面を覆う側壁または前記天井の縁から垂れ下がって設けられた遮光幕と、を有し、
前記側壁または前記遮光幕には、前記運搬車両が前記覆蓋部内に進入するための入口および前記覆蓋部外に退出するための出口が設けられており、
前記計測器は、前記照明器が前記廃棄物を照射する光を用いた計測を行って前記組成分析に使用するデータを取得する、
ことを特徴とする覆蓋設備。
【請求項3】
運搬車両の荷台に積載され、組成分析の対象となる廃棄物を計測するために用いられる覆蓋設備であって、
揚重手段に吊り下げられた状態で前記廃棄物を覆う覆蓋部と、
前記覆蓋部の内部に設けられた照明器および計測器と、を備え、
前記覆蓋部は、前記荷台の上方に配置される天井部と、前記天井部の縁から垂れ下がって設けられた遮光幕と、を有し、
前記計測器は、前記照明器が前記廃棄物を照射する光を用いた計測を行って前記組成分析に使用するデータを取得する、
ことを特徴とする覆蓋設備。
【請求項4】
地面に置かれ、組成分析の対象となる廃棄物を計測するために用いられる覆蓋設備であって、
吊り下げられた状態または自立した状態で前記廃棄物を覆う覆蓋部と、
前記覆蓋部の内部に設けられた照明器および計測器と、を備え、
前記覆蓋部は、天井部と、前記天井部の縁から垂れ下がって設けられた遮光幕と、を有し、
前記計測器は、前記照明器が前記廃棄物を照射する光を用いた計測を行って前記組成分析に使用するデータを取得する、
ことを特徴とする覆蓋設備。
【請求項5】
前記計測器は、所定の帯域で分光して撮影するハイパースペクトルカメラであり、
前記照明器は、近赤外線領域または中赤外線領域の波長成分を含む光を照射するものである、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の覆蓋設備。
【請求項6】
組成分析の対象となる廃棄物を計測し、前記組成分析に使用するデータを取得する組成分析用データ取得方法であって、
地面に置かれた廃棄物群の一部に請求項4に記載の覆蓋設備を被せる第一工程と、
前記覆蓋設備を被せた状態で、前記計測器を用いて前記組成分析に使用するデータを取得する第二工程と、を有し、
場所を移動して前記第一工程および前記第二工程を繰り返し行うことで、前記廃棄物群のデータを取得する、
ことを特徴とする組成分析用データ取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覆蓋設備および組成分析用データ取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な災害時(地震・津波災害など)には、被災地域において廃棄物が大量に発生する。この廃棄物は、可燃物や不燃物など、様々な性状の物が混ざり合った状態であり「混合物」とも呼ばれる。この廃棄物は、最初に、被災地から一次仮置場(通常は屋外)と呼ばれる保管場所に集積された後、廃棄物の破砕、選別、焼却などを行う仮設の処理施設を配置した二次仮置場と呼ばれる場所に運搬される。そして、二次仮置場で処理を行った後、選別品を既設の焼却施設や最終処分場などに搬出して最終的な処分を行う。ここで、仮設処理施設の計画や選別品の搬出計画を立てる際の基礎情報として、仮置場に集積された廃棄物の組成情報(木材が多く含まれている、陶器片が多く含まれているなど)が必要になる。
過去の災害廃棄物処理業務では、こうした組成情報を取得するために、廃棄物を撮影した写真を人間が見て簡易的に判別したり、仮置場に保管されている廃棄物を人間が直接選別して組成を計測していた。しかし、従来行われていたこれらの方法は、推計誤差が大きい、計測頻度(サンプル)が少ないため精度が低い、計測に時間を要するなどの問題があった。これに関連して、ハイパースペクトル画像に示されるスペクトル特徴に基づいて物体を識別する技術が提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。この技術を適用すれば、廃棄物を撮影したハイパースペクトル画像から組成情報を得ることが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】趙 文輝、他2名、「リモートセンシングによる産廃投棄現場の発見に関する検討」、平成18年度 電気関係学会東北支部連合大会 講演論文集、一般社団法人電気学会ほか、2006年、p.176
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイパースペクトルカメラによって撮影した画像を用いて廃棄物の組成を分析する場合には、廃棄物表面の光量を一定にするなど、ある一定の条件下で撮影を行う必要がある。例えば、天候(晴れ、曇りなど)、撮影時刻(朝夕、南中時など)、撮影場所の周辺環境などの違いにより、分析結果に影響が生じる。その為、屋外の仮置場に保管されている廃棄物を撮影したハイパースペクトル画像から廃棄物の組成を分析することが難しかった。なお、廃棄物を屋内に運んで撮影を行ったり、撮影条件を厳格に定めて撮影を行うのは大変な手間であるので効率的ではない。
なお、上記問題はハイパースペクトルカメラ画像のみならず近赤外カメラなどの他の光学計測器によって取得したデータにも生じ得る。
このような観点から、本発明は、廃棄物の組成情報を分析するのに適したデータを容易に取得することができる覆蓋設備および組成分析用データ取得方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る覆蓋設備は、組成分析の対象となる廃棄物を計測するために用いられる覆蓋設備であって、前記廃棄物を覆う覆蓋部と、前記覆蓋部の内部に設けられた照明器および計測器とを備える。前記覆蓋部は、外部からの自然光を遮光可能な構造になっており、前記計測器は、前記照明器が前記廃棄物を照射する光を用いた計測を行って前記組成分析に使用するデータを取得する。
また、本発明に係る覆蓋設備は、運搬車両の荷台に積載され、組成分析の対象となる廃棄物を計測するために用いられる覆蓋設備であって、前記廃棄物を覆う覆蓋部と、前記覆蓋部の内部に設けられた照明器および計測器とを備える。前記覆蓋部は、計測位置において前記運搬車両の上方に配置される天井と、地上に立設され前記運搬車両の側面を覆う側壁または前記天井の縁から垂れ下がって設けられた遮光幕とを有する。前記側壁または前記遮光幕には、前記運搬車両が前記覆蓋部内に進入するための入口および前記覆蓋部外に退出するための出口が設けられている。前記計測器は、前記照明器が前記廃棄物を照射する光を用いた計測を行って前記組成分析に使用するデータを取得する。
また、本発明に係る覆蓋設備は、運搬車両の荷台に積載され、組成分析の対象となる廃棄物を計測するために用いられる覆蓋設備であって、揚重手段に吊り下げられた状態で前記廃棄物を覆う覆蓋部と、前記覆蓋部の内部に設けられた照明器および計測器とを備える。前記覆蓋部は、前記荷台の上方に配置される天井部と、前記天井部の縁から垂れ下がって設けられた遮光幕とを有する。前記計測器は、前記照明器が前記廃棄物を照射する光を用いた計測を行って前記組成分析に使用するデータを取得する。
また、本発明に係る覆蓋設備は、地面に置かれ、組成分析の対象となる廃棄物を計測するために用いられる覆蓋設備であって、吊り下げられた状態または自立した状態で前記廃棄物を覆う覆蓋部と、前記覆蓋部の内部に設けられた照明器および計測器とを備える。前記覆蓋部は、天井部と、前記天井部の縁から垂れ下がって設けられた遮光幕とを有する。前記計測器は、前記照明器が前記廃棄物を照射する光を用いた計測を行って前記組成分析に使用するデータを取得する。
本発明に係る覆蓋設備においては、覆蓋部によって外部からの自然光(主に太陽光)の影響を排除することが可能である。また、照明器が照射した光を用いることで、廃棄物表面の光量を一定にし、常に同じ条件で計測することが可能である。その為、例えば天候、時刻、場所などの制約なく組成分析に使用するデータ(例えば、ハイパースペクトル画像)を容易に取得できる。
【0006】
前記計測器は、所定の帯域で分光して撮影するハイパースペクトルカメラであり、前記照明器は、近赤外線領域または中赤外線領域の波長成分を含む光を照射するものであるのがよい。
このようにすると、組成分析により適している有用なデータ(波長情報)を取得できる。データは画像形式となる。つまり、色の影響を受ける可視光領域の光をハイパースペクトルカメラで撮影したデータよりも、近赤外線領域または中赤外線領域の光をハイパースペクトルカメラで撮影したデータの方が、素材による特徴が表れやすい。その為、後者のデータを用いて組成分析を行うことで、より精度の高い分析結果を得ることができる。
なお、本発明の発明者は、廃棄物をハイパースペクトルカメラで撮影した場合の波長情報そのものよりも、波長情報を一次微分した値の方が、素材による特徴がより明確に表れることを研究を通じて検証した。その為、近赤外線領域または中赤外線領域の光をハイパースペクトルカメラで撮影した場合の波長情報を一次微分した情報を用いて組成分析を行うことで、さらに精度の高い分析結果を得ることができる。
【0007】
本発明に係る組成分析用データ取得方法は、組成分析の対象となる廃棄物を計測し、前記組成分析に使用するデータを取得する組成分析用データ取得方法である。
この組成分析用データ取得方法は、地面に置かれた廃棄物群の一部に上記した覆蓋設備を被せる第一工程と、前記覆蓋設備を被せた状態で、前記計測器を用いて前記組成分析に使用するデータを取得する第二工程とを有する。場所を移動して前記第一工程および前記第二工程を繰り返し行うことで、前記廃棄物群のデータを取得する。
本発明に係る組成分析用データ取得方法においては、組成分析に使用するデータの取得に制約(例えば天候、時刻、場所などの制約)がないので、計測頻度(サンプル)を容易に増やすことができる。その為、精度の高い分析結果を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、廃棄物の組成情報を分析するのに適したデータを容易に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る覆蓋設備を用いた組成分析システムの概略構成図である。なお、覆蓋設備の一部を切り欠いて内部を示している。
図2】第1タイプの覆蓋設備の概略断面図である。
図3】第2タイプの覆蓋設備の概略断面図である。
図4】第3タイプの覆蓋設備の概略断面図である。
図5A】近・中赤外線領域に対応したハイパースペクトルカメラで木くず、合板、単板積層材を撮影した場合の波長情報の例示である。
図5B】近・中赤外線領域に対応したハイパースペクトルカメラでコンクリートブロックを撮影した場合の波長情報の例示である。
図5C】近・中赤外線領域に対応したハイパースペクトルカメラで布製の手袋を撮影した場合の波長情報の例示である。
図6A】近・中赤外線領域に対応したハイパースペクトルカメラで木くず、合板、単板積層材を撮影した場合の波長情報(図5A参照)を一次微分したものである。
図6B】近・中赤外線領域に対応したハイパースペクトルカメラでコンクリートブロックを撮影した場合の波長情報(図5B参照)を一次微分したものである。
図6C】近・中赤外線領域に対応したハイパースペクトルカメラで布製の手袋を撮影した場合の波長情報(図5C参照)を一次微分したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0011】
<実施形態に係る覆蓋設備を用いた組成分析システム>
図1を参照して、実施形態に係る覆蓋設備2を用いた廃棄物Pの組成分析システム1について説明する。図1は、組成分析システム1の概略構成図である。組成分析システム1は、廃棄物Pの組成を分析するためのシステムである。廃棄物Pは、可燃物や不燃物など、様々な性状のものが混ざり合った状態である。組成分析システム1は、覆蓋設備2と、制御装置3とを備える。
覆蓋設備2は、廃棄物Pの組成を計測するために用いられる設備である。覆蓋設備2は、廃棄物Pを覆う覆蓋部10と、覆蓋部10の内部に設けられた照明器20および計測器30とを備える。なお、照明器20および計測器30は、一つの装置として構成されてもよい。覆蓋設備2は、屋外での使用を想定しているが、屋内でも使用できる。
【0012】
覆蓋部10は、外部からの自然光を遮光可能な構造(計測に影響を与えない程度の光を通過させてもよい)になっている。覆蓋部10のサイズは、計測対象の廃棄物Pを内部に収納できるものである。廃棄物Pを積載して運搬する運搬車両の荷台を計測することを想定した場合、覆蓋部10のサイズは、例えば車両全体、荷台全体、荷台の一部を覆うものであってよい。また、仮置場に保管されている廃棄物Pを計測することを想定した場合、覆蓋部10のサイズは、例えば全体の一部分を覆うものであってよい。覆蓋部10の形状や覆蓋部10を構成する部材の材質などは特に限定されない。覆蓋部10は、例えば、桝,桶や椀を逆さまにしたようなドーム形状や箱形状である。また、覆蓋部10の材料は、例えば、コンクリート、金属、木、紙、布などである。遮光性能を有しない材料の場合には遮光を実現するための加工処理(例えばコーティング)を施すとよい。覆蓋設備2が人力で持ち運びできないサイズや重さである場合、揚重手段4(例えばクレーン)を用いて覆蓋部10を廃棄物Pまで移動させるのがよい。また、覆蓋設備2が地上に備え付けられている場合(つまり、覆蓋設備2が施設である場合)、覆蓋部10に廃棄物Pを搬入するための入口(図示せず)を設けるのがよい。
【0013】
照明器20は、計測器30が検出可能な波長成分を含む光(可視光、赤外線など)を照射する。具体的には、照明器20は、近赤外線領域または中赤外線領域の波長成分を含む光を照射する白熱灯またはハロゲンランプなどとすることができる。照明器20は、廃棄物Pを適切に照射できるように覆蓋部10内に設置される。設置される照明器20の数は一以上であり特に限定されない。廃棄物Pの形状や重なりなどにより生じる影の発生を防止するために、廃棄物Pに対して異なる方向から光を照射できるように複数の照明器20が配置されているのが望ましい。
計測器30は、照明器20が照射する光を用いて組成分析に使用するデータを取得する。計測器30は、例えば種々のセンサ類やカメラ類であってよいが、特に近赤外線領域や中赤外線領域に対応したハイパースペクトルカメラであるのが望ましい。ハイパースペクトルカメラは、所定の帯域で区分して(分光して)撮影するカメラである。その為、ハイパースペクトルカメラで撮影した画像(ハイパースペクトル画像)には、撮影対象が有する特有の波長情報が示される。また、計測器30は、近赤外線領域を計測するセンサ類やカメラ類と中赤外線領域を計測するセンサ類やカメラ類とを組み合わせた構成、マルチスペクトルカメラなど、多バンドを計測可能な光学系機器からなる他の構成であってもよい。なお、補助の計測器(例えば、容積や重量を測定するもの、廃棄物Pの種類を目視確認するためのRGBカメラなど)をさらに設けてもよい。
【0014】
制御装置3は、覆蓋設備2に対して制御情報を送信し、覆蓋設備2を制御する。また、覆蓋設備2を制御して計測器30が取得したデータ(つまり、組成分析に使用するデータ)を受信する。制御装置3は、例えば、PC(Personal Computer)であり、記憶部および制御部を備える。制御装置3は、分析ツールを有しており、計測器30が取得したデータをこの分析ツールで分析して廃棄物Pの組成を求める。制御装置3は、例えば画像データを分析ツールで分析することで、廃棄物Pにコンクリート、木くず、金属などがそれぞれ何パーセント含まれているのかを算出する。なお、HDD(Hard Disk Drive)や各種メモリなどの記録媒体を用いて、計測器30が取得したデータを制御装置3に受け渡してもよい。また、制御装置3の制御によらず、人間の操作によって計測器30を動作させてもよい。
【0015】
図2ないし図4を参照して、覆蓋設備2の具体例(第1タイプ~第3タイプ)を説明する。図2は、第1タイプの覆蓋設備2Aの概略断面図である。図3は、第2タイプの覆蓋設備2Bの概略断面図である。図4は、第3タイプの覆蓋設備2Cの概略断面図である。
第1タイプ~第3タイプは、覆蓋設備2のバリエーションである。第1タイプおよび第2タイプでは、運搬車両5の荷台5aに積載された廃棄物Pを計測する場面を想定する。第3タイプでは、地面Gに置かれた廃棄物Pを計測する場面を想定する。
【0016】
(第1タイプの覆蓋設備2Aの構成)
図2に示す第1タイプの覆蓋設備2Aは、覆蓋部10Aと、照明器20Aと、組成計測器30Aと、容積計測器40Aと、トラックスケール50Aとを備える。照明器20A、組成計測器30A、容積計測器40Aおよびトラックスケール50Aは、覆蓋部10Aの内部に設けられる。
覆蓋部10Aは、計測位置において運搬車両5の上方に配置される天井11Aと、地面Gに立設され運搬車両5の側面を覆う側壁12Aとを有する。側壁12Aには、入口13Aおよび出口14Aが設けられており、入口13Aおよび出口14Aにはシャッターまたは開閉式ゲート15Aが設置されている。入口13Aおよび出口14Aは分かれて設置されず、出入口として一つになっていてもよい。天井11Aには、架台16Aが設けられている(架台16Aが設けられるのは側壁12Aであってもよい)。なお、側壁12Aの全部または一部を、布、ビニール、ナイロンまたはポリエステル等の軟性部材で形成してもよい。同様に天井11Aの全部または一部を軟性部材で形成してもよい。その場合、例えば骨組みに膜状の部材(遮光幕)を固定した構造であってよい。遮光幕は、例えば天井11Aの縁から垂れ下がって設けられる。
【0017】
照明器20Aは、天井11Aや側壁12Aや架台16Aに固定されている。照明器20Aは、光のムラがないように配置されるのがよい。つまり、荷台5aに積載される廃棄物Pを様々な方向から照射するように照明器20Aを配置するのがよい。
組成計測器30Aは、組成分析に使用するデータを取得する。組成計測器30Aは、例えば近赤外線領域や中赤外線領域に対応したハイパースペクトルカメラである。組成計測器30Aは、架台16Aに固定されている。
容積計測器40Aは、積載される廃棄物Pの容積を計測する。容積計測器40Aは、例えば3Dレーザースキャナである。
トラックスケール50Aは、運搬車両5の重量(積載物を含む)を測定する大型の秤である。トラックスケール50Aは、組成計測器30Aの計測位置(組成計測器30Aおよび容積計測器40Aの下方の地面G上であり運搬車両5の下となる)に設置されている。
なお、覆蓋部10Aの内部に管理室6が設置されていてもよい。管理室6には、例えば制御装置3(図1参照)が設置され、シャッターまたは開閉式ゲート15Aの開閉、照明器20Aの点滅、組成計測器30Aによる撮影、容積計測器40Aによる容積計測、トラックスケール50Aによる重量計測を制御する。管理室6は覆蓋部10Aの外部に設置されていてもよい。
【0018】
(第1タイプの覆蓋設備2Aを用いた計測方法)
廃棄物Pを積載した運搬車両5は、入口13Aから覆蓋部10A内に進入し、計測位置で停止する。次に、入口13Aのシャッターまたは開閉式ゲート15Aを閉じた状態にし、組成計測器30Aであるハイパースペクトルカメラを用いて荷台5aの廃棄物Pを撮影する。撮影時に照明器20Aを点灯させ、撮影対象の廃棄物Pを照らす。また、容積計測器40Aで廃棄物Pの容積を計測し、トラックスケール50Aで運搬車両5(廃棄物Pを含む)の重量を計測する。計測した情報は制御装置3(図1参照)に送られる。計測が終了した運搬車両5は、出口14Aから覆蓋部10A外へ退出する。その後、入口13Aからは新たな運搬車両5が覆蓋部10A内に進入し、廃棄物Pの計測を行う。
【0019】
(第2タイプの覆蓋設備2Bの構成)
図3に示す第2タイプの覆蓋設備2Bは、覆蓋部10Bと、照明器20Bと、組成計測器30Bと、容積計測器40Bとを備える。覆蓋設備2Bは、揚重手段4(図1参照)に吊り下げられた状態で廃棄物Pを覆って自然光を遮光し、組成計測器30Bなどでの計測を行う。照明器20B、組成計測器30Bおよび容積計測器40Bは、覆蓋部10Bの内部に設けられる。照明器20B、組成計測器30Bおよび容積計測器40Bは、第1タイプの照明器20A、組成計測器30Aおよび容積計測器40Aと同様なので説明を省略する。
覆蓋部10Bは、荷台5aの上方に配置される天井部11Bと、天井部11Bの縁から垂れ下がって設けられた遮光幕12Bとを有する。天井部11Bは、板状または膜状の部材であり、例えば荷台5aに対応した矩形状を呈している。天井部11Bが膜状の部材である場合、例えば骨組みに膜状の部材を固定した構造であってよい。遮光幕12Bは、布、ビニール、ナイロンまたはポリエステル等の軟性部材で形成され、幅広である帯状の軟性部材の両端を縫合した無端状を呈している。風などでなびかないように遮光幕12Bには錘が取り付けられていてもよい。遮光幕12Bには切込みや隙間が形成されていないことが望ましいが、計測に影響を与えない程度の自然光を通過させる切込みや隙間であれば形成されていてもよい。天井部11Bの上面には、揚重手段4(図1参照)に連結するための吊り具13Bが設けられている。
【0020】
(第2タイプの覆蓋設備2Bを用いた計測方法)
揚重手段4(図1参照)を用いて覆蓋設備2Bを荷台5aまで移動させ、遮光幕12Bで荷台5aの廃棄物Pを覆って外部からの自然光を遮る。この吊られた状態で、組成計測器30Bであるハイパースペクトルカメラを用いて荷台5aの廃棄物Pを撮影する。撮影時に照明器20Bを点灯させ、撮影対象の廃棄物Pを照らす。また、容積計測器40Bで廃棄物Pの容積を計測する。計測した情報は制御装置3(図1参照)に送られる。計測が終了した後、揚重手段4(図1参照)を用いて覆蓋設備2Bを荷台5aから離脱させ、次に計測を行う運搬車両5の荷台5aに移動させる。
【0021】
(第3タイプの覆蓋設備2Cの構成)
図4に示す第3タイプの覆蓋設備2Cは、覆蓋部10Cと、照明器20Cと、組成計測器30Cと、容積計測器40Cとを備える。覆蓋設備2Cは、揚重手段4(図1参照)に吊り下げられた状態で廃棄物Pを覆って自然光を遮光し、組成計測器30Cなどでの計測を行う。可搬式の覆蓋設備2Cの場合、人間が手に持った状態や図示しない自立手段(例えば脚部)を用いて自立した状態で組成計測器30Cなどでの計測を行ってもよい。照明器20C、組成計測器30Cおよび容積計測器40Cは、覆蓋部10Cの内部に設けられる。覆蓋部10C、照明器20C、組成計測器30Cおよび容積計測器40Cは、第2タイプの覆蓋部10B、照明器20B、組成計測器30Bおよび容積計測器40Bと同様である。例えば、覆蓋部10Cは、上方に配置される天井部11Cと、天井部11Cの縁から垂れ下がって設けられた遮光幕12Cとを有する。天井部11Cは、板状または膜状の部材であり、その形状は矩形、円形など任意形状とすることができる。天井部11Cが膜状の部材である場合、例えば骨組みに膜状の部材を固定した構造であってよい。遮光幕12Cは、布、ビニール、ナイロンまたはポリエステル等の軟性部材で形成され、幅広である帯状の軟性部材の両端を縫合した無端状を呈している。
【0022】
(第3タイプの覆蓋設備2Cを用いた計測方法)
揚重手段4(図1参照)を用いて、または可搬式の場合は人間が持参して、覆蓋設備2Cを廃棄物群P1まで移動させ、遮光幕12Cで廃棄物群P1の一部の廃棄物Pを覆って外部からの自然光を遮る。この吊られた状態で、組成計測器30Cであるハイパースペクトルカメラを用いて遮光幕12Cで覆われた部分の廃棄物Pを撮影する。撮影時に照明器20Cを点灯させ、撮影対象の廃棄物Pを照らす。また、遮光幕12Cで覆われた部分の廃棄物Pの容積を容積計測器40Cにより計測する。計測した情報は制御装置3(図1参照)に送られる。計測が終了した後、揚重手段4(図1参照)を用いて覆蓋設備2Cを次に計測を行う場所に移動させ、遮光幕12Cで廃棄物群P1の別部分の廃棄物Pを覆って外部からの自然光を遮り撮影を行う。この覆蓋設備2Cを移動させて撮影する工程を繰り返し行うことで廃棄物群P1の組成を分析するためのデータを取得できる。
【0023】
以上のように、実施形態に係る覆蓋設備2では、覆蓋部10によって外部からの自然光(主に太陽光)の影響を排除することが可能である。また、照明器20が照射した光を用いることで、常に同じ条件で計測することが可能である。その為、例えば天候、時刻、場所などの制約なく組成分析に使用するデータ(例えば、ハイパースペクトル画像)を容易に取得できる。
また、第2タイプの覆蓋設備2Bにおける遮光幕12Bおよび第3タイプの覆蓋設備2Cにおける遮光幕12Cを軟性部材にて形成することで、計測対象である廃棄物Pが凹凸のある大きな廃棄物群P1の一部であってもその凹凸に合わせて軟性部材が変形するため(例えば図4における遮光幕12Cの左側)、外部からの自然光の影響を排除して安定光源下で廃棄物Pを計測できる。
また、近赤外線領域または中赤外線領域に対応したハイパースペクトルカメラで撮影を行うことにより、組成分析により適している有用なデータ(波長情報)を取得できる。つまり、色の影響を受ける可視光領域の光をハイパースペクトルカメラで撮影したデータよりも、近赤外線領域または中赤外線領域の光をハイパースペクトルカメラで撮影したデータの方が、素材による特徴が表れやすい。その為、後者のデータを用いて組成分析を行うことで、より精度の高い分析結果を得ることができる。なお、データは各画素に対応する位置における廃棄物Pの波長情報がアレイ状に並んだ画像(ハイパースペクトル画像)となる。
【0024】
図5Aないし図5Bを参照して、近赤外線領域または中赤外線領域の光をハイパースペクトルカメラで撮影したデータについての研究結果を説明する。なお、図中のグラフは、複数回の撮影を行ったなかでの反射強度の平均を示すグラフである。
図5Aは、近・中赤外線領域に対応したハイパースペクトルカメラで木くず、合板、単板積層材を撮影した場合の波長情報の例示である。
図5Bは、近・中赤外線領域に対応したハイパースペクトルカメラでコンクリートブロックを撮影した場合の波長情報の例示である。
図5Cは、近・中赤外線領域に対応したハイパースペクトルカメラで布製の手袋を撮影した場合の波長情報の例示である。
図5Aないし図5Bを参照すると、ハイパースペクトルカメラで撮影した場合の波長情報から各物品の反射強度の傾向を知ることができる。
【0025】
また、本発明の発明者は、廃棄物をハイパースペクトルカメラで撮影した場合の波長情報そのものよりも、波長情報を一次微分した値の方が、素材による特徴がより明確に表れることを研究を通じて検証した。図6Aないし図6Bを参照して説明する。なお、図中のグラフの「平均」の意味は、図5Aないし図5Bで説明した内容と同じである。
図6Aは、近・中赤外線領域に対応したハイパースペクトルカメラで木くず、合板、単板積層材を撮影した場合の波長情報(図5A参照)を一次微分したものである。
図6Bは、近・中赤外線領域に対応したハイパースペクトルカメラでコンクリートブロックを撮影した場合の波長情報(図5B参照)を一次微分したものである。
図6Cは、近・中赤外線領域に対応したハイパースペクトルカメラで布製の手袋を撮影した場合の波長情報(図5C参照)を一次微分したものである。
図6Aないし図6Bを参照すると、図5Aないし図5Bに示す波長情報よりも当該波長情報を一次微分したものの方が各物品の特徴がより明確である。その為、近赤外線領域または中赤外線領域の光をハイパースペクトルカメラで撮影した場合の波長情報を一次微分した情報を用いて組成分析を行うことで、さらに精度の高い分析結果を得ることができる。
【0026】
また、第1タイプの覆蓋設備2A(図2参照)および第2タイプの覆蓋設備2B(図3参照)では、運搬車両5の荷台5aに積載された廃棄物Pを撮影していた。廃棄物Pを集積した状態にすると隣り合う物品同士の高低差によって影が発生し、撮影したハイパースペクトル画像に影響を与える場合がある。つまり、ハイパースペクトル画像(波長情報)は各波長の反射強度を計測しているが、影の部分は光源から直接光が当たっている部分と大きく光条件が異なり(入射光が遮られている)、各波長の強度が異なるため、反射強度に違いが出てしまう。その為、影ができにくいように、撮影対象の廃棄物Pの表面をできるだけ平らにする(物品同士の高低差を小さくする)ことが望ましいが、運搬車両5の荷台5aに積載された廃棄物Pは表面を平らに整形されている場合が多い。つまり、走行中に振動や風に煽られるなどして廃棄物Pが荷台5aから落下するのを防止するなどの理由から、バックホウのバケットで運搬車両5に積載された廃棄物Pの上面を叩く、撫でるなどして表面を平らな状態にするのが一般的である。また、荷台5aをシートで保護する場合でも、シートを掛ける作業は積み荷の表面に凹凸がない方が作業をしやすいので、同様に表面を平らな状態にするのが一般的である。その結果、影の影響を排除して安定した撮影を行うことができる。
また、第2タイプの覆蓋設備2B(図3参照)および第3タイプの覆蓋設備2C(図4参照)では、揚重手段4(例えばクレーン)を用いて覆蓋部10B,10Cを吊り下げていた。その為、場所を移動させての撮影が容易であり、効率的にデータを取得できる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
第2,3タイプでは覆蓋部10B,10Cを吊り下げていたが、覆蓋部10B,10Cに脚部を設けて自立するようにしてもよい。また、揚重手段4を設けて吊り下げるのではなく、取っ手を設けて作業員が持ち運びできるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 組成分析システム
2,2A,2B,2C 覆蓋設備
3 制御装置
4 揚重手段
5 運搬車両
10,10A,10B,10C 覆蓋部
11A 天井
12A 側壁
11B,11C 天井部
12B,12C 遮光幕
13B,13C 吊り具
20,20A,20B,20C 照明器
30 計測器
30A,30B,30C 組成計測器
40A,40B,40C 容積計測器
50A トラックスケール
P 廃棄物
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C