(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153155
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】シールド掘進機の掘進予測モデル
(51)【国際特許分類】
E21D 9/093 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
E21D9/093 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056250
(22)【出願日】2021-03-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(令和元年度国土交通省関東地方整備局「千代田幹線工事」施工現場における品質管理の高度化等を図る技術の試行業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願)
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 貴
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英典
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AA01
2D054AC01
2D054GA04
2D054GA25
2D054GA42
2D054GA49
2D054GA56
2D054GA62
2D054GA64
2D054GA65
2D054GA72
(57)【要約】
【課題】施工計測データに含まれる正側と負側の値をとるデータを、評価し易いデータに変換して、掘進方向の予測精度を向上させるシールド掘進機の掘進予測モデルを提供する。
【解決手段】シールド掘進管理システム10から送られる施工計測データを教師データとして、AIによる機械学習によって作成される、シールド掘進機20の先端の偏差を予測する予測モデルであって、掘進方向後方側のリングN-1~N-5を施工した際の施工計測データを説明変数とし、掘進方向前方側のリングN~N+5を施工する際のシールド掘進機20の先端の偏差を目的変数として機械学習により作成される。説明変数となる施工計測データに含まれる、基準位置の両側に可動するシールド掘進機の構造や性能に関する所定のデータは、正規化後の最小値を-0.5、最大値を+0.5、最小値と最大値との差を1.0として、正規化されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進工法において、シールド掘進管理システムから送られる施工計測データを教師データとして、人工知能による機械学習によって作成される、シールド掘進機の先端の偏差を予測する掘進予測モデルであって、
掘進方向後方側の一又は複数のリングを施工した際の前記施工計測データを説明変数とし、掘進方向前方側の所定のリングを施工する際のシールド掘進機の先端の偏差を目的変数として、人工知能による機械学習により作成されたものとなっており、
且つ説明変数となる前記施工計測データに含まれる、基準位置の両側に可動するシールド掘進機の構造又は機械設備の性能に関する所定のデータは、正規化後の最小値を-0.5、最大値を+0.5、最小値と最大値との差を1.0とする、正規化されたデータとなっているシールド掘進機の掘進予測モデル。
【請求項2】
前記基準位置の両側に可動するシールド掘進機の構造又は機械設備の性能に関する所定のデータは、基準位置の両側に可動範囲を有する前記施工計測データとして、前胴のピッチング角、前胴のローリング角、後胴のピッチング角、又は後胴のローリング角のデータのうちの、1又は2以上を含んでおり、基準位置を0.0とし、基準位置の一方側の最大可動範囲を-0.5、基準位置の他方側の最大可動範囲を+0.5として、最小値と最大値との差を1.0とする、正規化されたデータとなっている請求項1記載のシールド掘進機の掘進予測モデル。
【請求項3】
前記基準位置の両側に可動するシールド掘進機の構造又は機械設備の性能に関する所定のデータは、特徴量エンジニアリングによって合成学習データとして変換された、方向付きトルクのデータを含んでいる請求項1記載のシールド掘進機の掘進予測モデル。
【請求項4】
前記機械学習が、サポートベクターマシンをアルゴリズムとするニューラルネットワークによる機械学習である請求項1~3のいずれか1項記載のシールド掘進機の掘進予測モデル。
【請求項5】
目的変数となるシールド掘進機の先端の偏差が、水平偏差、垂直偏差、及び方向偏差である請求項1~4のいずれか1項記載のシールド掘進機の掘進予測モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機の掘進予測モデルに関し、特に、シールド掘進工法において、人工知能による機械学習によって作成されるシールド掘進機の掘進予測モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進工法は、公知の土圧式や泥水式等のシールド掘進機の先端の切羽面を、泥土圧、泥水圧等によって押さえ付けて安定させつつ回転カッターによって地山を掘削すると共に、これらのシールド掘進機の後方にセグメントによるトンネル覆工体を一リング毎に組み立てながら、発進立坑から到達立坑に向けて、地中にトンネルを形成してゆく工法であり、都市部や平野部における主要なトンネル工事のための工法として、広く採用されている。
【0003】
また、シールド掘進工法に用いる土圧式や泥水式等のシールド掘進機は、スキンプレートと呼ばれる金属製の外殻体の前部に切羽面を切削する回転カッターや、隔壁、カッター駆動装置、排土機構等を備えると共に、スキンプレートの後部に、シールドジャッキ、エレクター装置等を備えており、エレクター装置を用いてセグメントによるトンネル覆工体を一リング毎に組み立て、組み立てたトンネル覆工体から反力をとりつつ、シールドジャッキによってスキンプレートと共に回転カッターを押し出すことで、切羽面を切削しながらシールドトンネルを掘進して行くようになっている。
【0004】
このようなシールド掘進工法では、地中に設定された掘進計画延長線に沿って、精度良くシールド掘進機を掘進させて行く必要があるが、地中での施工になるため、周囲の地盤の地質の変化や環境状態の変化、個々のシールド掘進機の特性等に由来する何等かの種々の要因によって、掘進計画延長線に沿って精度良く掘進して行くように制御しながら運転することが難しく、一般に、掘進計画延長線に対する水平偏差や垂直偏差や方向偏差が、シールド掘進機の先端に生じることになる。特に、個々のシールド掘進機の特性等に由来する何等かの種々の要因は、個々の施工現場におけるシールド掘進機の「クセ」と呼ばれて、正確に把握することが難しく、従来は、熟練の作業員による経験と勘による運転の制御によって、掘進計画延長線に対する偏差が大きくならないようにシールド掘進機を掘進させるようになっていた。
【0005】
また、近年、IoT(Internet of Things)やAI(人工知能:Artificial Intelligence)の技術革新に基づき、大量のデータとAIの利用によって、第四次産業革命の実現が期待されており、シールド掘進工法においても、例えばAIを活用したシールド掘進計画支援システムが開発されている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1のシールド掘進計画支援システムでは、AIが試行錯誤しながら自己学習することで最適解を導く強化学習手法により、シールドトンネルの線形に応じたシールド掘進機の操作の計画値や、セグメントの配置計画を導き出すことができるようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】AIを活用したシールド掘進計画支援システムを開発/企業情報/清水建設、2018年5月25日、〔2019年6月10日検索〕、インターネット(URL:https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2018/2018005/html)
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1のシールド掘進計画支援システムは、施工現場で実際にシールド掘進工事を施工するのに先立って、計画線形に対するシールド掘進機の運転方法と、形状の異なる複数のセグメントの割り付け方法について事前シミュレーションを行って、これらの計画値を設定するものに過ぎないばかりか、学習済みモデルを作成するため教師データのデータ項目(パラメータ)は、限定された特定のものとなっているため、個々の施工現場において、周囲の地盤の地質の変化や環境状態の変化、あるいは個々のシールド掘進機の特性等に由来する種々の不確定な要因による、シールド掘進機の「クセ」と呼ばれる特質を反映させた精度の良い予測モデルを得て、地中に設定された掘進計画延長線に沿ってシールド掘進機が掘進して行くように、適切に管理することは困難である。
【0009】
一方、シールド掘進工法では、シールド掘進機の進行に応じた掘進状況を詳細に把握することを目的として、シールド掘進管理システムが導入されることが多くなっている。シールド掘進管理システムは、シールド掘進工事における測量データや、シールド掘進機に設置した各種センサーによる計測データ等の各種のデータの収集を行って、シールド掘進機の管理の一元化を担う公知のシステムであり、施工時の計測データの経時的変化やデータの統計処理の結果によって、地山の掘削土砂の状況やシールドマシンの負荷状況などを推測できるようになっており、また測量結果が入力されることにより、シールド掘進機やセグメントの位置を計算して、掘進計画延長線からの偏差を求めることができるようになっている。
【0010】
また、シールド掘進管理システムでは、シールドトンネルを形成するセグメントによる覆工体の各々のリングに対応する掘進が行なわれる際に、多数のパラメータ(データ項目)に関するデータが、例えば5秒程度の時間間隔毎に、或いはシールドジャッキによる10mm程度のジャッキストロ-ク毎に収集されて、大量の数のデータとして記憶されている。これらの大量の数のデータをAIによって解析させることにより、個々の施工現場における周囲の地盤の地質の変化や環境状態の変化、あるいは個々のシールド掘進機の特性等に由来する種々の不確定な要因による、シールド掘進機の「クセ」と呼ばれる特質を反映させて、シールド掘進機が地中に設定された掘進計画延長線に沿って掘進して行くように、適切に管理することが可能になると考えられる。
【0011】
このようなことから、本願出願人は、例えば特許文献1において、シールド掘進管理システムから送られる施工計測データを教師データとする人工知能による機械学習の結果を利用して、シールド掘進機の掘進を管理するシールド掘進機の施工管理方法を提案している。特許文献1のシールド掘進機の施工管理方法では、施工現場におけるシールド掘進機の掘進計画延長線上に学習領域を設定し、設定された学習領域において、掘進方向後方側の一又は複数のリングを施工した際の施工計測データを説明変数とし、掘進方向前方側の所定のリングを施工する際のシールド掘進機の先端の偏差を目的変数とする学習済みモデルを機械学習により作成し、学習領域よりも掘進方向前方側の本掘進領域において、作成された学習済みモデルを予測モデルとして、施工された掘進方向後方側の一又は複数のリングを施工した際の施工計測データを入力し、掘進方向前方側の所定のリングを施工する際のシールド掘進機の先端の偏差を出力させて、シールド掘進機の先端の掘進計画延長線からの偏差を予測しながらシールド掘進機の掘進を管理するようになっている。
【0012】
しかしながら、特許文献1のシールド掘進機の施工管理方法では、人工知能による機械学習によってシールド掘進機の方向予測のためのモデルを作成する際に、教師データとなるシールド掘進管理システムから送られる施工計測データに、シールド掘進機の構造又は機械設備の性能に関する所定のデータとして、基準位置の両側に可動する構造や性能に関するデータが含まれている。これらの基準位置の両側に可動する構造や性能に関するデータは、具体的には、例えばシールド掘進機自体の円周方向のねじれ(ローリング)や、トンネルの中心線に対する上下方向の折れ曲がり(ピッチング)に関するデータであり、中折れ式シールド掘進機の場合には前胴部と後胴部のそれぞれについて発生する。またこれらの基準位置の両側に可動する構造や性能に関するデータは、人工知能によって評価し難いものであることから、これらのデータを評価し易いデータとなるように適切に変換して用いることにより、シールド掘進機の掘進方向の予測精度をさらに向上できるようになると考えられる。
【0013】
本発明は、教師データとなるシールド掘進管理システムから送られる施工計測データに含まれる、基準位置の両側に可動するシールド掘進機の構造や機械設備の性能に関する所定のデータを、評価し易いデータとなるように適切に変換して用いることにより、掘進方向の予測精度を向上させることのできるシールド掘進機の掘進予測モデルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、シールド掘進工法において、シールド掘進管理システムから送られる施工計測データを教師データとして、人工知能による機械学習によって作成される、シールド掘進機の先端の偏差を予測する掘進予測モデルであって、掘進方向後方側の一又は複数のリングを施工した際の前記施工計測データを説明変数とし、掘進方向前方側の所定のリングを施工する際のシールド掘進機の先端の偏差を目的変数として、人工知能による機械学習により作成されたものとなっており、且つ説明変数となる前記施工計測データに含まれる、基準位置の両側に可動するシールド掘進機の構造又は機械設備の性能に関する所定のデータは、正規化後の最小値を-0.5、最大値を+0.5、最小値と最大値との差を1.0とする、正規化されたデータとなっているシールド掘進機の掘進予測モデルを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0015】
そして、本発明のシールド掘進機の掘進予測モデルは、前記基準位置の両側に可動するシールド掘進機の構造又は機械設備の性能に関する所定のデータは、基準位置の両側に可動範囲を有する前記施工計測データとして、前胴のピッチング角、前胴のローリング角、後胴のピッチング角、又は後胴のローリング角のデータのうちの、1又は2以上を含んでおり、基準位置を0.0とし、基準位置の一方側の最大可動範囲を-0.5、基準位置の他方側の最大可動範囲を+0.5として、最小値と最大値との差を1.0とする、正規化されたデータとなっていることが好ましい。
【0016】
また、本発明のシールド掘進機の掘進予測モデルは、前記基準位置の両側に可動するシールド掘進機の構造又は機械設備の性能に関する所定のデータが、特徴量エンジニアリングによって合成学習データとして変換された、方向付きトルクのデータを含んでいることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明のシールド掘進機の掘進予測モデルは、前記機械学習が、サポートベクターマシンをアルゴリズムとするニューラルネットワークによる機械学習であることが好ましい。
【0018】
さらにまた、本発明のシールド掘進機の掘進予測モデルは、目的変数となるシールド掘進機の先端の偏差が、水平偏差、垂直偏差、及び方向偏差であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のシールド掘進機の掘進予測モデルによれば、教師データとなるシールド掘進管理システムから送られる施工計測データに含まれる、基準位置の両側に可動するシールド掘進機の構造や機械設備の性能に関する所定のデータを、評価し易いデータとなるように適切に変換して用いることにより、掘進方向の予測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の掘進予測モデルが作成されるシステムネットワークの説明図である。
【
図4】学習済みモデルを作成すための教師データとなる複数の変数(パラメータ)を例示する説明図である。
【
図6】学習済みモデルを作成する工程の説明図である。
【
図8】水平・垂直方向のモーメントの求め方の説明図である。
【
図9】水平・垂直方向の余堀量の求め方の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい一実施形態に係るシールド掘進機の掘進予測モデルは、例えば
図1に示す構成のシステムネットワークにおいて作成されるようになっている。
図1に示す構成のシステムネットワークは、例えばシールド施工現場でシールド掘進機20(
図2参照)の施工を管理するシールド掘進管理システム10と、LAN12を介して接続する、AI(人工知能:Artificial Intelligence)として好ましくはサポートベクターマシンをアルゴリズムとするニューラルネットワークを実装可能な公知の機械学習ツール(ソフトウェア)が組み込まれた、好ましくはクラウドサーバ11を用いて、例えばシールド掘進機20の先端の偏差を目的変数とする予測モデルを作成することで、シールド掘進機20が地中に設定された掘進計画延長線21(
図2参照)に沿って掘進して行くように、適切に管理できるようにするものである。本実施形態のシールド掘進機の掘進予測モデルは、好ましくは
図1に示す構成のシステムネットワークにおいて、シールド施工現場のシールド掘進管理システム10から送られて、クラウドサーバ11に記憶された多数のパラメータに関する大量のデータ(施工計測データ)を用いることで、AIによる機械学習によって作成されると共に、教師データとなる施工計測データに含まれる、基準位置の両側に可動するシールド掘進機20の構造や機械設備の性能に関する所定のデータを、評価し易いデータとなるように適切に変換して用いることにより、掘進方向の予測精度を向上させることができるようになっている。
【0022】
ここで、本実施形態では、公知のシールド掘進管理システム10として、例えば商品名「Arigataya」(株式会社演算工房製)を好ましく用いることができる。また、クラウドサーバ11は、例えばコンピュータを含んで構成されている。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)、HDD(Hard Disk Drive)、記憶手段、入力手段、表示手段、出力手段等を備えている。CPUは、ROMに組み込まれた各種のプログラムに従って、RAMをワークエリアとして使用しながら、AIによる機械学習を制御する。また、CPUは、各種のコンピュータプログラムがROMに組み込まれていることにより、記憶手段、入力手段、表示手段、出力手段等を機能させると共に、シールド掘進管理システム10から送られる大量のデータやAIによる解析結果等を、例えばデータベース部に記憶させたり、所定の情報として、LAN12や現場に設置されたパーソナルコンピュータ13等を介して、例えば現場のディスプレイ14に表示させたり、プリンタから出力させたりできるようになっている。
【0023】
そして、本実施形態のシールド掘進機の掘進予測モデルは、シールド掘進工法において、シールド掘進管理システム10から送られる施工計測データを教師データとして、人工知能による機械学習によって作成される、シールド掘進機20の先端の偏差を予測する予測モデルであって、掘進方向後方側の一又は複数のリングN-1~N-5(
図2参照)を施工した際の施工計測データを説明変数とし、掘進方向前方側の所定のリングN~N+5を施工する際のシールド掘進機20の先端の偏差を目的変数として、人工知能による機械学習により作成されたものとなっており、且つ説明変数となる施工計測データに含まれる、基準位置の両側に可動するシールド掘進機20の構造又は機械設備の性能に関する所定のデータは、正規化後の最小値を-0.5、最大値を+0.5、最小値と最大値との差を1.0とする、正規化されたデータとなっている。
【0024】
また、本実施形態では、基準位置の両側に可動するシールド掘進機20の構造又は機械設備の性能に関する所定のデータが、好ましくは基準位置の両側に可動範囲を有する施工計測データとして、好ましくは単位を度(°)又はradとする、前胴のピッチング角、前胴のローリング角、後胴のピッチング角、又は後胴のローリング角のデータのうちの、1又は2以上を含んでおり、基準位置を0.0とし、基準位置の一方側の最大可動範囲を-0.5、基準位置の他方側の最大可動範囲を+0.5として、最小値と最大値との差を1.0とする、正規化されたデータとなっている。
【0025】
さらに、本実施形態では、基準位置の両側に可動するシールド掘進機の構造又は機械設備の性能に関する所定のデータが、好ましくは特徴量エンジニアリングによって合成学習データとして変換された、方向付きトルクのデータを含んでいる。
【0026】
本実施形態では、シールド施工現場において、シールド掘進管理システム10から送られる教師データとなるトンネル掘進時の施工計測データは、例えばシールド掘進管理システム10により「リング報」(
図3参照)として出力可能な多数のデータ項目から、好ましくはシールドエンジニアの知見によって、シールド掘進機20の方向制御に関するものとして選別された、例えば
図4に示す187項目程度の、多数のパラメータに関するデータとなっている。これらのデータは、シールドトンネルを構成する覆工体の各々のリング毎に、まとまったデータとして収集され、好ましくは5秒毎にクラウドサーバ11に送られて、例えば記憶部に蓄積されるようになっている。すなわち、シールド掘進工法では、一リング分の長さに対応する掘進長で、シールド掘進機20の先端の回転カッター20aにより切羽面を掘削しつつ、シールドジャッキ20bを伸長させながら掘進したら、シールド掘進機20の掘進作業を一旦中断し、スキンプレート20cの後部において、エレクター装置20dを用いてセグメント20eによる一リング分のトンネル覆工体が組み立てられることで、一リング毎に掘進作業が行なわれることから、好ましくは施工計測データは、一リング毎にまとまったデータとして処理されるようになっている。
【0027】
また、本実施形態では、選別された好ましくは187のデータ項目(パラメータ)の施工計測データは、シールド掘進機20の位置の把握に関する合計44点の掘進データ(前胴、中胴、後胴、ジャイロコンパス、座標、偏差、変位量などに関するもの)50Aと、シールド掘進機20の方向制御に関する合計120点の掘進データ(シールドジャッキ、中折れジャッキ、コピーカッタなどに関するもの)50Bと、土質などその他の合計23点の掘進データ(記録日時、カッタビット加速度、テールクリアランスなどに関するもの)50Cとに分類されるようになっている。これらの分類されたデータ項目は、上述にように、例えば5秒毎にシールド掘進管理システム10を介してクラウドサーバ11に送られることで、経時的変化を伴うデータとして収集されて、例えば記憶部に記憶されるようになっている。なお、
図4中、「※」で示されるシールド掘進機20の先端の水平偏差、先端の垂直偏差、及び方位偏差(方向偏差)は、目的変数となるものである。
【0028】
これらの施工計測データは、好ましくはセグメント20eの組立て位置のリングNo.を表題として、収集されるようになっている。すなわち、
図5に示すように、データ項目によっては、データが収集される位置が、例えば回転カッター20aが配置されるシールド掘進機20の先端の切羽面の位置やスキンプレート20cの後方の裏込め材の注入位置と、シールドジャッキ20bの伸縮部に配置されるセグメント20eによる各リングの組立て位置とが、1リング分の長さよりも離れた位置となっている。これらの1リング分の長さよりも離れた位置のデータについても、セグメントの組立て位置のリングNo.を表題とする、当該リングNo.の組立て位置のリング幅を確保するための切羽面の掘削作業中のデータや、当該リングNo.の組立て位置のリングにおける組立て作業中のデータとして、シールド掘進管理システム10に送られて収集されるようになっている。
【0029】
さらに、本実施形態では、シールド掘進機の構造又は機械設備の性能に関する前提条件データが、予めシールド掘進管理システム10やクラウドサーバ11に入力されて登録されている。シールド掘進機の構造に関する前提条件データとして、例えばカッタ面板の直径や、シールドジャッキや中折れジャッキ本数、配置等を挙げることができる。これらのシールド掘進機の構造に関する前提条件データは、説明変数として直接入力されるのではなく、シールド掘進管理システム10から送られるトンネル掘進時の施工計測データと組み合わせて、特徴量エンジニアリングを行うことにより正規化してから、入力することができる。またシールド掘進機の機械設備の性能に関する前提条件データとして、例えば各々のシールドジャッキや中折れジャッキの最大圧力や、伸縮の最大速度、最大ストローク等を挙げることができる。これらのシールド掘進機の機械設備の性能に関する前提条件データは、最大値を1.0に換算して入力されて、シールド掘進管理システム10から送られるトンネル掘進時の施工計測データを、0.0~1.0の値で正規化して評価するために用いることができる。
【0030】
さらにまた、本実施形態では、シールド掘進管理システム10から送られるトンネル掘進時の施工計測データのうち、特徴量エンジニアリングや正規化により加工して入力される計測データは、例えば作業者の操作に関するデータとして、シールドジャッキや中折れジャッキの圧力やストロークに関するデータ、カッタ回転に関するデータ等を挙げることができる。また、例えばシールド掘進機の位置や方向に関するデータとして、水平変位量、垂直変位量、方向変位量等に関するデータ等を挙げることができる。さらに、例えば周辺環境がシールド掘進機に影響を与えるデータとして、切羽水圧やテールクリアランス等に関するデータ等を挙げることができる。
【0031】
また、本実施形態では、シールド掘進管理システム10から送られるトンネル掘進時の施工計測データには、好ましくは正側と負側の値をとる、基準位置の両側に可動するシールド掘進機の構造又は機械設備の性能に関するデータが含まれている。このような好ましくは正側と負側の値をとるシールド掘進機の構造又は機械設備の性能に関するデータとして、例えば前胴のピッチング角やローリング角、後胴のピッチング角やローリング角、カッタ回転、カッタトルク等に関するデータを挙げることができる。例えばカッタトルクのように正側(右回転)と負側(左回転)とがある場合、正規化後の最小値は-0.5、最大値は+0.5とする、方向付きトルクに変換することができる(最小と最大の差が1.0)。カッタトルクの最大値が300kN・mで、150kN・mで右回転した場合に、正規化後の方向付きトルクの値を+0.25とすることができる。
【0032】
そして、本実施形態では、上述のシールド掘進管理システム10が設けられたシールド施工現場において、AIによる機械学習によって、精度の良いシールド掘進機の掘進予測モデルが作成されるようになっている。
【0033】
すなわち、所定のシールド施工現場において、シールド掘進機20の掘進計画延長線21上に設定された、例えば70リング分(1リング=1.5m)の延長の初期の施工区間を第1週の学習領域(例えば125m)とし、
図2に示すように、掘進方向後方側の好ましくは5リングN-1~N-5を施工した際の、正側と負側の値をとるシールド掘進機の構造又は機械設備の性能に関する所定のデータが上述のように正規化されものとなっているデータを含む施工計測データを説明変数として、好ましくは掘進方向前方側の6箇所のリングN~N+5を各々施工する際の、シールド掘進機20の先端の偏差(水平偏差、垂直偏差、方向偏差)を目的変数とする学習済みモデルを各々作成する。また目的変数であるシールド掘進機20の先端の偏差は、掘進方向前方側の6箇所のリングN~N+5を各々施工する際に得られた施工計測データに基づいて、例えばシールド掘進機20に取り付けられたジャイロコンパスによる計測データ等の、所定の測量データに関するデータから、所定の計算式に従って算定された、好ましくはシールド掘進機20の先端のカッター中心の、シールドトンネルの掘進計画延長線21からの水平偏差や垂直偏差や方向偏差の値とすることができる。
【0034】
ここで、シールド掘進機の機械設備の性能に関するデータを正規化する場合、基準位置の両側に可動する好ましくは正側と負側の値をとるデータ以外のものについては、機械設備を使用しない状態を0、機械設備を最大の性能で使用する状態を1として、0から1の間で推移する値によるデータとすることができる。
【0035】
例えば、シールドジャッキの最大圧力を1.0、停止時の圧力を0.0として、掘進時の圧力を、0.0~1.0の間の数値で入力できるようにすることが好ましい。また、例えばシールドジャッキの最大圧力が100kNの場合には、100kNを1.0として、0.0~1.0の間の無次元化された値で正規化することができ、例えばシールドジャッキの最大圧力が5000kNの場合には、5000kNを1.0として、0.0~1.0の間の無次元化された数値で正規化することができる。この際の最大圧力等の機械設備の最大の性能は、実際に使用されると考えられる性能の範囲における最大値ではなく、機械設備の規格上の最大能力(最大の性能)とすることが好ましい。これによって、例えば汎用学習済みモデルを作成した際のシールド掘進機の施工条件によらずに、他のシールド施工現場においても機械設備の能力を適正に評価することが可能になる。
【0036】
また、本実施形態では、シールド掘進管理システム10から送られる施工計測データは、好ましくはクラウドサーバ11において、シールド掘進機20の構造と操作に関する所定のデータが、特徴量エンジニアリングによって、AIにより機械学習し易い合成学習データに変換されるようになっていても良い。本実施形態では、上述のように、好ましくは水平方向のカッタ面の傾き、垂直方向のカッタ面の傾き、水平方向のモーメント、垂直方向のモーメント、水平方向の余掘量、垂直方向の余掘量、又は上述の方向付きトルクに関するデータのうちの1又は2以上が、特徴量エンジニアリングによって、合成学習データに変換されるようになっている。
【0037】
ここで、特徴量エンジニアリングによって、AIによる機械学習により評価し易いデータとなる合成学習データとして、水平方向のカッタ面の傾きや垂直方向のカッタ面の傾きは、水平・垂直方向のジャッキストロークの差より算出される値である。具体的には、例えば
図7に示すように、表1に示すシールドジャッキnストローク(n:1,2,・・・,6)の計6変数を説明変数として使用して、ジャッキストロークの差から、水平方句と垂直方向に分解して、合成学習データとなるカッタ面の傾きを計算することができる。
【0038】
【0039】
また特徴量エンジニアリングによって、AIによる機械学習により評価し易いデータとなる合成学習データとして、水平方向のモーメントや垂直方向のモーメントは、ジャッキのON,OFFの検出により合成モーメントを生成し、合成ベクトルを水平、垂直方向に分解して算出される値である。具体的には、例えば
図8に示すように、表2に示すNo.nシールドジャッキ選択(n:1,2,・・・,18)の計18変数を説明変数として使用して、1)[選択中]ジャッキのモーメントベクトルを計算する、2)計算したジャッキのモーメントベクトルを足し合わせて合成モーメントベクトルを求める、3)求めた合成モーメントベクトルを水平方向と垂直方向に分解する、といった手順によって、合成学習データとなる水平方向のモーメントや垂直方向のモーメントを算出することができる。
【0040】
【0041】
例えば、シールドジャッキが16本で等間隔で設置されており、そのうち右上側の2本を100kNで押圧させた場合、右上側の2本を押圧させたことと、他の14本を押圧させなかったことは、生じた偏差の原因として同等の重みを持つことになるが、シールド掘進機20の断面におけるシールドジャッキの中心をつないだ円と、その中心から右斜め33.75°の線が交差する位置を、合計200kNで押圧した場合に生じるモーメントとする合成学習データに変換することで、シールド掘進機20の偏差の要因として、意味のあるデータにすることが可能になる。
【0042】
また特徴量エンジニアリングによって、AIによる機械学習より評価し易いデータとなる合成学習データとして、水平方向の余掘量や垂直方向の余掘量は、全体の余堀量の算出後、余堀り量ベクトルを計算し、水平、垂直方向に分解して算出される値である。より具体的には、例えば
図9に示すように、表3に示すコピーカッタnストローク(n:1,2)の計2変数、及びコピーカッタ余掘位置m度選択中(m:0,15,30,・・・,345)の計24変数を説明変数として使用して、1)コピーカッタ[選択中]の範囲と[コピーカッタストローク]から余堀量の面積を計算する、2)選択中コピーカッタの中心にすべての力がかかっているとして、余堀量ベクトルを計算する、3)計算した余堀量ベクトルを水平・垂直方向に分解する、といった手順によって、合成学習データとなる水平方向の余堀量や垂直方向の余堀量を算出することができる。
【0043】
【0044】
さらに、特徴量エンジニアリングによって、AIによる機械学習に意味のあるデータとなる合成学習データとして、方向付きトルクは、カッタ面板の回転方向により、トルクのかかる方向を算出して得られる値である。より具体的には、表4に示すカッタ左回転中、カッタ右回転中、カッタトルクの計3変数を説明変数として使用して、下記の(式1)によって、合成学習データとなる方向付きトルクを算出することにより、1変数にまとめることができる。(式1)において、Tdirは方向付きトルク、Rrはカッタ右回転中、Rlはカッタ左回転中、Tはカッタトルクである。またカッタトルクは、カッタの回転方向に関係なく正の値を取ることになる。カッタ右回転中、カッタ左回転中は、カッタが回転中の場合に1、停止中は0となる。これらの2変数は、カッタの回転方向に合わせて片方だけが1となる。方向付きトルクは、基準位置の両側に可動するシールド掘進機20の構造又は機械設備の性能に関する所定のデータとして、例えばカッタが右回転中の場合は正、左回転中は負の値とすると共に、上述のように、好ましくはカッタトルクの計測値をカッタトルクの最大能力で除した値として、正規化後の最小値を-0.5、最大値を+0.5、最小値と最大値との差を1.0とする、正規化されたデータとすることができる。
【0045】
【0046】
【0047】
例えば、カッタ面板が右回転してトルク値が100kN・mである場合、そのままデータを入力すると、右回転であることとトルク値が100kN・mであることは、生じた偏差の原因として同等の重みを持つことになるが、実際は“トルク値100kN・mで右回転”させたことで初めて偏差の要因として意味のあるものになる。このため、右回転は+、左回転を-とし、回転方向に関係なく正の値となるカッタトルクのトルク値を、方向付きトルクである“+100kN・m”として合成学習データに変換することで、シールド掘進機20の偏差の要因として、意味のあるデータにすることが可能になる。またこれらの変換されたデータの値を、上述のような正規化されたデータとすることにより、AIによって評価し易く機械学習し易いデータとなるように適切に処理することが可能になる。
【0048】
本実施形態では、所定のシールド施工現場において、上述のようにして正規化されたデータや、特徴量エンジニアリングによって変換された合成学習データを含む施工計測データを説明変数として、好ましくはサポートベクターマシンをアルゴリズムとするニューラルネットワークによる機械学習を行うことで、掘進方向後方側の5リングN-1~N-5の、正規化されたデータや特徴量エンジニアリングによって変換された合成学習データを含む施工計測データを入力データとし、掘進方向前方側の6箇所のリングN~N+5を各々施工する際のシールド掘進機20の先端の偏差を出力データとする、学習済みモデルを作成する。これらの学習済みモデルは、第1週の学習領域においては、掘進方向前方側の6箇所のリングN~N+5を各々施工する際の、シールド掘進機20の先端の偏差を出力データとする学習済み汎用モデルとして、6モデル作成することができる(
図6参照)。
【0049】
また、本実施形態では、第1週の学習領域に後続して、シールド掘進機20の掘進計画延長線21上に、第1週の学習領域と同様の例えば70リング分の延長(例えば125m)の区間を、第2週~第4週の学習領域として設定して、第1週の学習領域と同様に、
図2に示すように、第2週~第4週の学習領域の各々について、6モデルの学習済みモデルを作成する。すなわち、第2週~第4週の各々の学習領域において、
図2に示すように、掘進方向後方側の好ましくは5リングN-1~N-5を施工した際の、上述のようにして正規化されたデータや、特徴量エンジニアリングによって変換された合成学習データを含む施工計測データを説明変数とし、掘進方向前方側の6箇所のリングN~N+5を各々施工する際の、シールド掘進機20の先端の偏差を目的変数として、好ましくはサポートベクターマシンをアルゴリズムとするニューラルネットワークによる機械学習を行うことで、掘進方向後方側の5リングN-1~N-5の正規化されたデータや特徴量エンジニアリングによって変換された合成学習データを含む施工計測データを入力データとし、掘進方向前方側の6箇所のリングN~N+5を各々施工する際のシールド掘進機20の先端の偏差を出力データとする、6モデルの学習済み汎用モデルを作成する。
【0050】
これらによって、本実施形態では、
図6に示すように、第1週~第4週を予測期間とし、各予測期間における未来6リング(N~N+5)を予測区間として、6箇所のリングN~N+5を施工する際の、各々のシールド掘進機20における先端を予測先地点とする、偏差を出力するための合計24モデルの学習済みモデルが作成されることになる。
【0051】
また、本実施形態では、これらの合計24モデルの学習済みモデルから、最も精度の良い予測期間、予測区間の学習済みモデルを選択して、シールド掘進機の掘進予測モデルとすることが好ましい。ここで、シールド掘進機の掘進予測モデルとなる最も精度の良い予測期間、予測区間の学習済みモデルの選択は、例えば一の学習済みモデルを得た週とは別の週における学習領域で得られた、正規化されたデータや特徴量エンジニアリングによって変換された合成学習データを含む施工計測データを当該一の学習済み汎用モデルに入力した際の出力データを、当該別の週における学習領域で得られた施工計測データにおけるシールド掘進機の先端の偏差に関する既知の値と比較することによって、容易に行うことができる。
【0052】
そして、上述のようにして所定のシールド施工現場でAIによる機械学習によって作成された、本実施形態のシールド掘進機の掘進予測モデルによれば、教師データとなるシールド掘進管理システムから送られる施工計測データに含まれる、基準位置の両側に可動するシールド掘進機の構造や機械設備の性能に関する所定のデータを、評価し易いデータとなるように適切に変換して用いることにより、掘進方向の予測精度を向上させることが可能になる。
【0053】
すなわち、本実施形態のシールド掘進機の掘進予測モデルによれば、説明変数となる施工計測データに含まれる、基準位置の両側に可動するシールド掘進機の構造又は機械設備の性能に関する所定のデータとして、上述のように、好ましくは前胴のピッチング角、前胴のローリング角、後胴のピッチング角、又は後胴のローリング角のデータが、基準位置を0.0とし、基準位置の一方側の最大可動範囲を-0.5、基準位置の他方側の最大可動範囲を+0.5として、正規化後の最小値を-0.5、最大値を+0.5、最小値と最大値との差を1.0とする、正規化されたデータとなっているので、説明変数となる評価が難しいデータを、目的変数の直接の要因となり得る説明変数に適切に変換することで、AIがルールを見つけて評価し易くすると共に、機械学習し易くして、掘進方向の予測精度を向上させることが可能になる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、学習済みモデルを作成するための説明変数となる施工計測データは、掘進方向後方側の直前の5リングから得られるものである必要は必ずしもなく、掘進方向後方側の一又は複数のリングを適宜選択して、これらのリングから得られる施工計測データとすることもできる。目的変数となるシールド掘進機の先端の偏差が計測されるリングは、掘進方向前方側の直後の6リングうちのいずれかである必要は必ずしも無く、7リング以上前方側のリングにおけるシールド掘進機の先端の偏差であっても良い。学習済みモデルや予測モデルを作成するための機械学習は、サポートベクターマシンをアルゴリズムとするニューラルネットワークによるものである必要は必ずしも無く、大量の施工計測データを解析することが可能な、その他の種々のアルゴリズムによるものであっても良い。
【0055】
また、上述のピッチング角やローリング角における-0.5~+0.5の正規化の範囲は、機械設備の規格上の最小値と最大値から求めることができる他、例えば学習領域において計測された、実際に使用されたピッチング角やローリング角の最小値と最大値から求めることもできる。すなわち、例えば学習領域において実際に使用されたピッチング角やローリング角が、-0.2°~+0.1°の範囲であった場合に、-0.2°を-0.5とし、+0.1°を+0.5として、-0.5~+0.5の範囲で正規化することもできる。
【符号の説明】
【0056】
10 シールド掘進管理システム
11 クラウドサーバ
12 LAN
13 パーソナルコンピュータ
14 ディスプレイ
20 シールド掘進機
20a 回転カッター
20b シールドジャッキ
20c スキンプレート
20d エレクター装置
20e セグメント
21 掘進計画延長線
22 学習領域
N~N+5,N-1~N-5 リング