(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153170
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】表示装置及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20221004BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20221004BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20221004BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20221004BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/10
G09F9/30 365
G09F9/30 339
G09F9/30 348A
G09F9/00 342
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056270
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金城 拓海
(72)【発明者】
【氏名】青木 逸
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107DD00
3K107GG04
5C094AA21
5C094AA43
5C094BA27
5C094DA13
5C094DB01
5C094EA04
5C094FA02
5C094FB01
5C094FB15
5G435AA16
5G435AA17
5G435BB05
5G435HH12
5G435HH14
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】マスクを交換せずに複数の層を形成でき、かつ、OLEDが本来意図した性能を発揮できる表示装置等を提供する。
【解決手段】表示装置100は、基板120と、基板120に積層された有機層と、有機層に積層されたカソード138と、を備える。有機層は、少なくとも、第1層と、第1層に積層される第2層と、を含む。第1層は、第1方向Dxの一端側で当該第2層に覆われ、他端側で前記第2層に覆われない。当該有機層は、当該一端側でカソード138に覆われ、当該他端側でカソード138に覆われない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に積層された有機層と、
前記有機層に積層された電極層と、を備える表示装置であって、
前記有機層は、少なくとも、第1層と、前記第1層に積層される第2層と、を含み、
前記第1層は、前記基板に沿う一方向の一端側で前記第2層に覆われ、前記一方向の他端側で前記第2層に覆われず、
前記有機層は、前記一端側で前記電極層に覆われ、前記他端側で前記電極層に覆われない、
表示装置。
【請求項2】
前記電極層は、前記一端側で配線に接続される、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記配線又は前記配線に通じるコンタクトホールは、前記有機層の下側に形成された画素電極の一部を覆うように延出する絶縁部に設けられ、
前記有機層及び前記電極層の一端側は、前記絶縁部に積層される、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
複数の前記画素電極は、前記一方向に並び、
前記絶縁部は、前記一方向の一端が前記一方向に隣り合う2つの画素電極のうち一方の一部を覆うように延出し、前記一方向の他端が前記一方向に隣り合う2つの画素電極のうち他方の一部を覆うように延出し、
前記有機層は、複数の前記画素電極の各々に積層され、
前記有機層の他端側は、前記絶縁部に積層される、
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
複数の層を含む有機層と、前記有機層に積層される電極層と、を、前記有機層のうち最初に形成される層の大きさ及び形状に対応した開口部が設けられたマスクを用いて基板上に蒸着形成する表示装置の製造方法であって、
前記有機層のうち前記最初に形成される層を蒸着形成する工程と、
前記有機層のうち前記最初に形成される層以外の層の形成前に、前記マスクを前記基板に沿う一方側に移動させる工程と、
前記有機層のうち前記最初に形成される層以外の層を蒸着形成する工程と、
前記電極層の形成前に、前記マスクを前記一方側に移動させる工程と、
前記電極層を蒸着形成する工程と、を含む、
表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記有機層のうち前記最初に形成される層以外の1つの層の形成時の前記基板と前記マスクとの相対位置関係は、当該1つの層の直前に形成された層を形成する工程における前記基板と前記マスクとの相対位置関係を基準とすると、前記マスクが前記基板に対して前記一方側にずれて位置している相対位置関係である、
請求項5に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜の積層構造を含む表示装置の製造において、マスクを交換せずに複数の層を形成し続ける方法が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マスクを交換せずに複数の層を形成する場合、より先に形成される層の形成時点で放射された薄膜材料がマスクに付着してマスクの開口部を狭くする。このため、より後に形成される層の蒸着範囲がより先に形成される層の蒸着範囲よりも狭くなり、積層構造の端部で段差を形成する。この段差は、積層構造が積層方向に沿って先細りするテーパー構造を生じさせる。
【0005】
マスクを交換せずに、有機エレクトロルミネセンス(EL:Electro Luminescence)で画素として機能するOLED(Organic Light Emitting Diode)の発光層に含まれる複数の有機層の積層構造を形成しようとすると、上述のテーパー構造によって複数の有機層の各々の端部が露出した形態が生じる。このような発光層に、当該発光層に電流を流すための電極層をさらに積層した場合、テーパー構造の箇所で電極層と複数の有機層の各々の端部とが当接する。従って、電極層と、複数の有機層のうち相対的に下側の層との通電経路が成立する。このような通電経路の成立は、意図された発光層の通電経路、すなわち、電極層と全ての有機層とを通る通電経路とは異なるものである。このため、従来の方法でマスクを交換せずに表示装置を製造すると、OLEDが本来意図した性能を発揮することが困難になる。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたもので、マスクを交換せずに複数の層を形成でき、かつ、OLEDが本来意図した性能を発揮できる表示装置及び表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様による表示装置は、基板と、前記基板に積層された有機層と、前記有機層に積層された電極層と、を備える表示装置であって、前記有機層は、少なくとも、第1層と、前記第1層に積層される第2層と、を含み、前記基板に沿う一方向の一端側で前記第2層に覆われ、前記一方向の他端側で前記第2層に覆われず、前記有機層は、前記一端側で前記電極層に覆われ、前記他端側で前記電極層に覆われない。
【0008】
本開示の一態様による表示装置の製造方法は、複数の層を含む有機層と、前記有機層に積層される電極層と、を、前記有機層のうち最初に形成される層の大きさ及び形状に対応した開口部が設けられたマスクを用いて基板上に蒸着形成する表示装置の製造方法であって、前記有機層のうち前記最初に形成される層を蒸着形成する工程と、前記有機層のうち前記最初に形成される層以外の層の形成前に、前記マスクを前記基板に沿う一方側に移動させる工程と、前記有機層のうち前記最初に形成される層以外の層を蒸着形成する工程と、前記電極層の形成前に、前記マスク前記一方側に移動させる工程と、前記電極層を蒸着形成する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、表示装置の積層構造の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、工程1での基板の上側の構成及びマスクの状態を示す模式図である。
【
図3】
図3は、工程2での基板の上側の構成及びマスクの状態を示す模式図である。
【
図4】
図4は、工程3での基板の上側の構成及びマスクの状態を示す模式図である。
【
図5】
図5は、工程4での基板の上側の構成及びマスクの状態を示す模式図である。
【
図6】
図6は、工程4後の基板の上側の構成及びマスクの状態を示す模式図である。
【
図7】
図7は、工程1から工程4までのマスクの開口部の位置及び状態ならびに工程1よりも前の工程が完了した基板上に形成される積層構造を示す平面図である。
【
図8】
図8は、カソードコンタクト配線に与えられる電位の伝達経路の一例を示す模式的な平面図である。
【
図9】
図9は、カソードコンタクト配線に与えられる電位の伝達経路の他の一例を示す模式的な平面図である。
【
図12】
図12は、マスクの位置変更を行わずに形成された積層構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
(実施形態1)
図1は、表示装置100の積層構造の一例を示す断面図である。表示装置100は、基板120と、対向基板150と、基板120と対向基板150との間で積層構造を形成する複数の構成とを含む。以下、基板120から見て対向基板150側を上側とする。実施形態の説明では、基板120と対向基板150との積層方向を第3方向Dzとする。また、後述する第1副画素Gpixと、第2副画素Bpixと、第3副画素Rpixと、が並ぶ方向を第1方向Dxとする。また、第3方向Dzと第1方向Dxの両方に直交する方向を第2方向Dyとする。単に副画素と記載した場合、第1副画素Gpixと、第2副画素Bpixと、第3副画素Rpixと、を包括する。
【0012】
基板120の上には、下地層121、半導体膜122を含む半導体層、層間絶縁層123、ゲート電極124を含む第1電極層、層間絶縁層125、ドレイン電極126、ソース電極127を含む第2電極層、層間絶縁層128、平坦化層129の順でこれらの構成が積層されている。
【0013】
下地層121、層間絶縁層123,125,128は、例えば酸化シリコンや窒化シリコンを含む絶縁層である。また第1電極層及び第2電極層は、特に低抵抗性が求められ、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)等から選ばれた金属層、又はそれらの積層により構成されている。
【0014】
基板120上には、複数の副画素の各々に対応し、マトリクス状に配置された複数の画素回路Swが設けられる。下地層121から画素電極174までの層には、画素回路Swのうち有機EL素子を除く部分が形成されている。また、半導体膜122、ゲート電極124、ドレイン電極126、ソース電極127は、有機EL素子に直接的に接続される薄膜トランジスタを構成する。この薄膜トランジスタは、この薄膜トランジスタを含む画素回路Swに対応する副画素の発光を制御する。平面的にみると、半導体膜122とゲート電極124とは重なっている。半導体膜122のゲート電極124と重なる領域が、薄膜トランジスタのチャネル領域となり、半導体膜122の突出する部分の上面は、層間絶縁層123,125を貫くドレイン電極126及びソース電極127にそれぞれ接している。平坦化層129は例えばアクリル樹脂の膜であり、薄膜トランジスタを含む画素回路Swのうち主に有機EL素子を除く部分を覆うように設けられている。
【0015】
さらに、平坦化層129の上には、順に、画素電極174を含む第3電極層、バンク193、第1有機層131G,131B,131Rを含む第1有機層、第2有機層132G,132B,132Rを含む第2有機層、第3有機層133G,133B,133Rを含む第3有機層、カソード138、封止膜139が積層されている。以下、単に有機層と記載した場合、第1有機層、第2有機層及び第3有機層を包括する。
【0016】
第3電極層は、有機層を発光させるための仕事関数等を鑑みて決定され、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、亜鉛酸化物(ZnO)等から選ばれた酸化物導電材料等により構成されている。また、第3電極層は、トップエミッション型の場合は反射性が求められ、反射層として銀(Ag)、アルミニウム(Al)等の層を有していても良い。
【0017】
層間絶縁層128及び平坦化層129のうちドレイン電極126の上方にはコンタクトホール1741が形成されており、このコンタクトホール1741の底でドレイン電極126と画素電極174とが接している。なお、コンタクトホール1741を介して画素電極174と接続されるのはドレイン電極126でなくソース電極127であってもよい。
【0018】
画素電極174の上には有機層が設けられ、有機層の上には例えば透明電極からなるカソード138を含む第4電極層が設けられ、カソード138はさらに封止膜139により覆われている。画素電極174、有機層及びカソード138は、画素電極174を陽極、カソード138を陰極とするOLEDを構成している。カソード138が透明電極である場合、第4電極層は、例えばITO等の酸化物導電材料等により構成されている。また、カソード138は、酸化物導電材料の単層で形成されていても、その他の金属材料の層を含む複数の層で形成されていてもよい。なお、実施形態では第4電極層に含まれる構成がカソード138であるので、有機層を挟んで第3電極層に含まれる画素電極174がアノードである。
【0019】
有機層は、画素電極174とカソード138とにより電圧が印加され、電流が流れることで発光する発光層である。第1副画素Gpixの有機層と、第2副画素Bpixの有機層と、第3副画素Rpixの有機層とは、発光時にピークとなる光の波長がそれぞれ異なる有機材料を用いて形成される。具体的には、第1副画素Gpixの有機層は、緑色(G)として視認される光の波長がピークとなる有機材料を用いて形成される。また、第2副画素Bpixの有機層は、青色(B)として視認される光の波長がピークとなる有機材料を用いて形成される。また、第3副画素Rpixの有機層は、赤色(R)として視認される光の波長がピークとなる有機材料を用いて形成される。このような有機材料として、燐光材料や蛍光材料が挙げられる。
【0020】
画素電極174と有機層とが接する領域は薄膜トランジスタの直上、より厳密にはドレイン電極126(又はソース電極127)と画素電極174とを接続させるコンタクトホール1741の上方に配置されている。また、画素電極174と有機層とが接する領域に対応する発光領域において有機層は発光する。
【0021】
図1に示すように、バンク193の断面は、上方の幅が小さくなる、いわゆる台形である。バンク193は、アクリル樹脂で形成されている。バンク193の下面は、平坦化層129と、画素電極174とに接している。画素電極174は、バンク193の間で露出しており、画素電極174の上に有機層が形成されている。
【0022】
なお、有機層は画素電極174の両端に積層されたバンク193の上側にも延出する。バンク193は、第1方向Dxに並ぶ複数の画素電極174の間に介在し、バンク193を挟んで隣り合う画素電極174同士を絶縁する。
【0023】
また、バンク193の上側にはカソードコンタクト配線195が設けられている。カソードコンタクト配線195は、第1電極層や第2電極層と同様、低抵抗性を考慮した材料により構成されている。カソードコンタクト配線195は、その上側に積層されたカソード138と接続されている。具体的には、例えば
図1に示すように、カソード138は、第1方向Dxの一端側がカソードコンタクト配線195と接続されている。なお、カソード138は、第1方向Dxの他端側に位置するカソードコンタクト配線195とは接続されない。また、カソード138が複数の層から形成されている場合、いずれか一層がカソードコンタクト配線195と接続していればよい。
【0024】
カソード138は、カソードコンタクト配線195と接続されている第1方向Dxの一端側がその下側の有機層を覆う。また、第1方向Dxの一端側では、画素電極174の上側に積層される有機層に含まれる複数の層のうちより上側に積層される層がその直下の層を覆う。具体的には、第1副画素Gpix、第2副画素Bpix、第3副画素Rpixの各々に形成されている第3有機層は、第1方向Dxの一端側で、その下側の第2有機層を覆う。また、第1副画素Gpix、第2副画素Bpix、第3副画素Rpixの各々に形成されている第2有機層は、第1方向Dxの一端側で、その下側の第1有機層を覆う。すなわち、有機層に含まれる複数の層のうち互いに当接する2つの層のうち下側を第1層とし、上側を第2層とすると、第2層は、基板120に沿う一方向(例えば、第1方向Dx)の一端側で第1層を覆う。
【0025】
対向基板150の基板120側の面には、ブラックマトリクス141が設けられたフィルタ層145が形成されている。ブラックマトリクス141は、各副画素の境界から漏れ出る光を遮断するための遮光膜である。フィルタ層145と、基板120上に積層された封止膜139との間には、充填材140が設けられている。上述の下地層121から封止膜139までが積層された基板120と、フィルタ層145が形成された対向基板150とが、封止膜139とフィルタ層145とに挟まれる充填材140を接着材として貼り合わせられている。なお、ブラックマトリクス141やフィルタ層145は形成されていなくてもよい。
【0026】
図1では、有機層は、フィルタ層145に設けられたカラーフィルタによって各色を表現する構成となっていてもよい。その場合、第1副画素Gpixの有機層と、第2副画素Bpixの有機層と、第3副画素Rpixの有機層と、は個別に形成されず、共通の色(例えば、白色光)を発する発光層が共通して設けられる。また、ブラックマトリクス141を挟んで第1方向Dxに隣接する位置関係の有機層の上側には、フィルタ層145にそれぞれ異なる色のカラーフィルタが設けられる。カラーフィルタの色は、例えば緑(G)、青(B)、赤(R)等であるが、これに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0027】
各1つずつの第1副画素Gpixと、第2副画素Bpixと、第3副画素Rpixと、の組み合わせによって1つの画素が形成される。第1副画素Gpix、第2副画素Bpix、第3副画素Rpix、はそれぞれ副画素として機能する。図示しないが、第1方向Dxには、第1副画素Gpix、第2副画素Bpix、第3副画素Rpix、の順で複数の副画素が周期的に並ぶ。また、後述する
図8及び
図9に示すように、第2方向Dyには、同色の副画素が複数並ぶ。このような副画素及び画素のレイアウトはあくまで一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0028】
また、有機層は、テーパー構造TPを有する。テーパー構造TPは、有機層が含む複数の層構造によって形成される。具体的には、第1副画素Gpix、第2副画素Bpix、第3副画素Rpixの各々に形成されている第1有機層は、第1方向Dxの他端側が、その上側に形成されている第2有機層に覆われない状態でバンク193上に延出している。また、第1副画素Gpix、第2副画素Bpix、第3副画素Rpixの各々に形成されている第2有機層は、第1方向Dxの他端側が、その上側に形成されている第3有機層に覆われない状態で第1有機層上に延出している。このように、より上側の層に比して他端側がより延出している下側の層と、上側の層と、の積層構造によってテーパー構造TPが形成されている。すなわち、有機層に含まれる複数の層のうち互いに当接する2つの層のうち下側を第1層とし、上側を第2層とすると、第1層は、基板120に沿う一方向(例えば、第1方向Dx)の他端側が第2層に覆われない。また、カソード138の第1方向Dxの他端側は、テーパー構造TPを覆わない。すなわち、有機層に含まれる複数の層は、最も上に積層される層(例えば、第3有機層)を含めた全ての層の他端側がカソード138に覆われない。
【0029】
なお、有機層のうち、画素電極174と当接するのは有機層に含まれる複数の層のうち最下層である。有機層に含まれる複数の層のうち最下層以外の層は、画素電極174と当接しない。
【0030】
基板120と充填材140との間の積層構造に含まれる各層の形成は、例えばメタルマスク等のマスク200(
図2参照)を利用した蒸着によって行われる。なお、当該積層構造の全てが蒸着によって行われる必要はなく、例えば当該積層構造の一部について、フォトリソグラフィ等、他の形成方法が採用されてもよい。ただし、実施形態では、表示装置100の製造工程のうち少なくとも有機層の形成工程とカソード138の形成工程においてマスクを利用した蒸着が採用される。
【0031】
有機層とカソード138は、同一のマスク200を用いて形成される。以下では、
図2から
図7を参照して、有機層とカソード138の形成工程について説明する。以下、第1有機層131を形成する工程を工程1とする。第1有機層131は、第1有機層131G、第1有機層131B又は第1有機層131Rのいずれかである。また、第1有機層131の上側に第2有機層132を形成する工程を工程2とする。第2有機層132は、第2有機層132G、第2有機層132B又は第2有機層132Rのいずれかである。また、第2有機層132の上側に第3有機層133を形成する工程を工程3とする。第3有機層133は、第3有機層133G、第3有機層133B又は第3有機層133Rのいずれかである。また、工程3までに形成された第1有機層131、第2有機層132、第3有機層133の上側にカソード138を形成する工程を工程4とする。
【0032】
図2は、工程1での基板120の上側の構成及びマスク200の状態を示す模式図である。なお、
図2から
図6を参照した説明では、基板120に形成される積層構造の形成工程のうち、第1有機層131の形成工程よりも前に実施される形成工程について説明を省略する。当該説明では、第1有機層131の形成工程よりも前に実施される形成工程によって、基板120が、平坦化層129以下の積層構造が形成され、さらに、平坦化層129の上側に画素電極174、バンク193、カソードコンタクト配線195が既に形成されている状態であるものとする。以下、「工程1よりも前の工程が完了した基板120」と記載した場合、当該状態の基板120をさす。また、
図2から
図6では、平坦化層129以下の構成について詳細な図示を省略している。
【0033】
図2に示すように、第1有機層131の形成工程では、画素電極174の上側に開口部211が位置するようマスク200が位置している。
図2に示すように、開口部211は、第1方向Dxの開口幅が幅D1であるマスク200の開口部である。幅D1は、マスク200の縁部201と縁部202との間の間隔である。縁部201と縁部202は、開口部211を挟んで第1方向Dxに対向する。マスク200の位置が変わると、縁部201及び縁部202の位置が変わるので、開口部211の位置が変わる。
図2から
図7では、工程1における縁部201の第1方向Dxの位置を位置P11として示している。また、
図2から
図6では、工程1における縁部202の第1方向Dxの位置を位置P21として示している。
【0034】
マスク200を用いた蒸着が行われることで、工程1では、第1有機層131を構成する有機材料が
図2に示す放射角度範囲Ra内で上側から下側に向かって放射されて画素電極174上及びバンク193上に付着し、第1有機層131が形成される。
図2に示すように、第1有機層131は、第1方向Dxに並ぶ2つのカソードコンタクト配線195の間に形成される。第1有機層131の形成範囲は、開口部211の幅D1の位置及び大きさと、工程1よりも前の工程が完了した基板120との位置関係に対応する。
【0035】
工程1から工程4の説明では、それよりも前の工程が完了した基板120の位置は固定であるものとする。従って、工程1から工程4では、マスク200の位置によって各工程で形成される層の形成範囲が決定される。なお、工程1から工程4の説明では、各工程間におけるマスク200の位置変更は第1方向Dxについて行われ、第2方向Dy及び第3方向Dzについては行われないものとする。
【0036】
図3は、工程2での基板120の上側の構成及びマスク200の状態を示す模式図である。工程2の前に、
図2を参照して説明した工程1が行われたことで、マスク200には第1有機層231が積層されている。第1有機層231は、第1有機層131の有機材料によって形成された層である。第1有機層231を構成する有機材料は、大部分がマスク200の上側に付着するが、一部が縁部201及び縁部202にも付着する。これによって、工程1で縁部201と縁部202が内側に露出していた開口部211は、工程2では縁部201と縁部202が第1有機層231に覆われた状態の開口部212になっている。開口部212の第1方向Dxの開口幅は、第1有機層231に覆われた状態の縁部201と第1有機層231に覆われた状態の縁部202との間の幅D2である。幅D2は、幅D1よりも小さい。
【0037】
工程1の実施後、工程2の実施前に、縁部201の位置が位置P11から位置P12に移動するよう、マスク200の第1位置変更が行われる。第1位置変更によって、縁部202の位置が位置P21から位置P22に移動する。
図3では、第1位置変更によるマスク200の移動を矢印V1で示している。工程1及び第1位置変更後のマスク200を用いた蒸着が行われることで、工程2では、第2有機層132を構成する有機材料が
図3に示す放射角度範囲Rb内で上側から下側に向かって放射されて第1有機層131上及びバンク193上に付着し、第2有機層132が形成される。
【0038】
マスク200が第1位置変更をしていることで、第2有機層132は、
図3に示すように、第1方向Dxに並ぶ2つのカソードコンタクト配線195のうち一方側により近い範囲に形成される。このため、他方側では、第1有機層131の上側に第2有機層132が積層されずに第1有機層131が露出している範囲が生じる。
【0039】
図4は、工程3での基板120の上側の構成及びマスク200の状態を示す模式図である。工程3の前に、
図3を参照して説明した工程2が行われたことで、マスク200には第2有機層232がさらに積層されている。第2有機層232は、第2有機層132の有機材料によって形成された層である。第2有機層232を構成する有機材料は、大部分が第1有機層231の上側に付着するが、一部が、第1有機層231を構成する有機材料が付着済みの縁部201及び縁部202にも付着する。これによって、工程3では縁部201と縁部202が第1有機層231及び第2有機層232に覆われた状態になっている。従って、工程3では、マスク200の開口部が開口部213になっている。開口部213の第1方向Dxの開口幅は、第1有機層231及び第2有機層232に覆われた状態の縁部201と第1有機層231及び第2有機層232に覆われた状態の縁部202との間の幅D3である。幅D3は、幅D2よりも小さい。
【0040】
工程2の実施後、工程3の実施前に、縁部201の位置が位置P12から位置P13に移動するようマスク200の第2位置変更が行われる。第2位置変更によって、縁部202の位置が位置P22から位置P23に移動する。
図4では、第2位置変更によるマスク200の移動を矢印V2で示している。工程2及び第2位置変更後のマスク200を用いた蒸着が行われることで、工程3では、第3有機層133を構成する有機材料が
図4に示す放射角度範囲Rc内で上側から下側に向かって放射されて第2有機層132上及びバンク193上に付着し、第3有機層133が形成される。
【0041】
マスク200が第2位置変更をしていることで、第3有機層133は、
図4に示すように、第1方向Dxに並ぶ2つのカソードコンタクト配線195のうち一方側により近い範囲に形成される。このため、他方側では、第2有機層132の上側に第3有機層133が積層されずに第2有機層132が露出している範囲が生じる。
【0042】
図5は、工程4での基板120の上側の構成及びマスク200の状態を示す模式図である。工程4の前に、
図4を参照して説明した工程3が行われたことで、マスク200には第3有機層233がさらに積層されている。第3有機層233は、第3有機層133の有機材料によって形成された層である。第3有機層233を構成する有機材料は、大部分が第2有機層232の上側に付着するが、一部が、第1有機層231及び第2有機層232を構成する有機材料が付着済みの縁部201及び縁部202にも付着する。これによって、工程4では縁部201と縁部202が第1有機層231、第2有機層232及び第3有機層233に覆われた状態になっている。従って、工程4では、マスク200の開口部が開口部214になっている。開口部214の第1方向Dxの開口幅は、第1有機層231、第2有機層232及び第3有機層233に覆われた状態の縁部201と第1有機層231、第2有機層232及び第3有機層233に覆われた状態の縁部202との間の幅D4である。幅D4は、幅D4よりも小さい。
【0043】
工程3の実施後、工程4の実施前に、縁部201の位置が位置P13から位置P14に移動するようマスク200の第3位置変更が行われる。第3位置変更によって、縁部202の位置が位置P23から位置P24に移動する。
図5では、第3位置変更によるマスク200の移動を矢印V3で示している。工程3及び第3位置変更後のマスク200を用いた蒸着が行われることで、工程4では、カソード138を構成する薄膜電極材料が
図4に示す放射角度範囲Rc内で上側から下側に向かって放射されて第3有機層133上、バンク193上及びカソードコンタクト配線195上に付着し、カソード138が形成される。薄膜電極材料は例えばアルミニウム等の金属であるが、合金又は導電性を有する化合物であってもよい。
【0044】
マスク200が第3位置変更をしていることで、カソード138は、
図4に示すように、第1方向Dxに並ぶ2つのカソードコンタクト配線195のうち一方側に一部が重複する範囲に形成され、カソードコンタクト配線195と接続される。このため、他方側では、第3有機層133の上側にカソード138が積層されずに第3有機層133が露出している範囲が生じる。工程1で形成された第1有機層131の他方側と、工程2で形成された第2有機層132の他端側と、工程3で形成された第3有機層133の他端側と、がテーパー構造TPを形成する。
【0045】
なお、
図1、
図5及び
図6に示す例では、カソード138の第1方向Dxの他端側が、当該他端側に設けられたバンク193の台形に乗り上げるように有機層が形成されたことで生じた有機層の斜面及び当該台形の上底に沿う有機層を覆っていないが、カソード138の具体的形状は
図1、
図5及び
図6に示す例に限られるものでない。例えば、開口部214を介してマスク200側から基板120側に向かって末広がり状になる放射角度範囲Rdの放射角θ1,θ2がより大きくなるようにすることで、カソード138の第1方向Dxの延出長をより拡大してカソード138の他端側が有機層の斜面や当該台形の上底に沿う有機層を覆うようにしてもよい。その場合、放射角θ1,θ2に応じて、工程4における縁部201の位置を位置P13と位置P14との間の位置にする等、マスク200の第1方向Dxの位置を調整することで、カソード138の一端側の位置を
図1、
図5及び
図6に示す例と同様にしつつ、他端側でカソード138が有機層の斜面や当該台形の上底に沿う有機層を覆うようにする。より具体的には、例えばマスク200を介して蒸着材料をマスク200側に放射する基材とマスク200との第3方向Dzの位置関係の調整等によって放射角θ1,θ2の調整を図ることが挙げられる。また、マスク200と基板120との第3方向Dzの位置関係を調整する(長大化する)ことで、放射角θ1,θ2を変ずることなく放射角度範囲Rdの末広がりをより大きくしてカソード138の形成範囲をより大きくすることでも、同様に他端側でカソード138が有機層の斜面や当該台形の上底に沿う有機層を覆うように図れる。ただし、これら場合であっても、カソード138の第1方向Dxの他端側は、テーパー構造TPを覆わない。
【0046】
図6は、工程4後の基板120の上側の構成及びマスク200の状態を示す模式図である。
図5を参照して説明した工程3が行われたことで、マスク200には電極層238がさらに積層されている。電極層238は、カソード138の薄膜電極材料によって形成された層である。電極層238を構成する薄膜電極材料は、大部分が第3有機層233の上側に付着するが、一部が、第1有機層231、第2有機層232及び第3有機層233を構成する有機材料が付着済みの縁部201及び縁部202にも付着する。これによって、工程4後には縁部201と縁部202が第1有機層231、第2有機層232、第3有機層233及び電極層238に覆われた状態になっている。従って、工程4後には、マスク200の開口部が開口部214よりもさらに小さい開口部215になっている。
【0047】
図7は、工程1から工程4までのマスク200の開口部の位置及び状態ならびに工程1よりも前の工程が完了した基板120上に形成される積層構造を示す平面図である。平面図は、第1方向Dx-第2方向Dy平面を正面視した図である。なお、
図7では、当該積層構造に含まれるカソード138と接続されるカソードコンタクト配線195を図示することで、各工程でのマスク200の開口部及び当該積層構造の平面視点での位置を示している。
図7の「工程1」の「マスク開口部の位置」欄で示すように、開口部211は、例えば矩形状の開口部である。
【0048】
図2を参照して説明したように、工程1でのマスク200の開口部は開口部211である。開口部211の第2方向Dyの開口幅は幅T1である。工程1の実施によって、
図7の「工程1」の「積層構造」欄で示すように、第1有機層131が形成される。第1有機層131は、平面視点で開口部211よりも第1方向Dxの幅及び第2方向Dyの幅が大きい。
【0049】
図3を参照して説明したように、工程2で第2有機層132の形成に用いられる開口部は開口部212である。開口部212の第2方向Dyの開口幅は幅T2である。幅T2は、幅T1よりも小さい。工程2の実施によって、
図7の「工程2」の「積層構造」欄で示すように、第2有機層132が形成される。第2有機層132は、平面視点で開口部212よりも第1方向Dxの幅及び第2方向Dyの幅が大きい。
図3及び
図7の「工程2」の「マスク開口部の位置」欄で示すように、開口部211の第1方向Dxの一方側(
図2の縁部201)の端部の位置が位置P11から位置P12へ移動するため、第2有機層132の形成位置は、第1有機層131よりもカソードコンタクト配線195に近い。
【0050】
図4を参照して説明したように、工程3で第3有機層133の形成に用いられる開口部は開口部213である。開口部213の第2方向Dyの開口幅は幅T3である。幅T3は、幅T2よりも小さい。工程3の実施によって、
図7の「工程3」の「積層構造」欄で示すように、第3有機層133が形成される。第3有機層133は、平面視点で開口部213よりも第1方向Dxの幅及び第2方向Dyの幅が大きい。
図4及び
図7の「工程3」の「マスク開口部の位置」欄で示すように、開口部211の第1方向Dxの一方側(
図2の縁部201)の端部の位置が位置P12から位置P13へ移動するため、第3有機層133の形成位置は、第2有機層132よりもカソードコンタクト配線195に近い。なお、第3有機層133に限らず、複数の有機層はいずれもカソードコンタクト配線と当接しないことが望ましい。
【0051】
図5を参照して説明したように、工程4でカソード138の形成に用いられる開口部は開口部214である。開口部214の第2方向Dyの開口幅は幅T4である。幅T4は、幅T3よりも小さい。工程4の実施によって、
図7の「工程4」の「積層構造」欄で示すように、カソード138が形成される。カソード138は、平面視点で開口部214よりも第1方向Dxの幅及び第2方向Dyの幅が大きい。
図5及び
図7の「工程2」の「マスク開口部の位置」欄で示すように、開口部211の第1方向Dxの一方側(
図2の縁部201)の端部の位置が位置P13から位置P14へ移動するため、カソード138は、一部がカソードコンタクト配線195と重複するよう形成される。
【0052】
図5及び
図6で図示する副画素Pixは、第1副画素Gpix、第2副画素Bpix又は第3副画素Rpixのいずれかである。第1副画素Gpixの形成時には、工程1によって第1有機層131Gが形成され、工程2によって第2有機層132Gが形成され、工程3によって第3有機層133Gが形成され、工程4によってカソード138が形成される。第2副画素Bpixの形成時には、工程1によって第1有機層131Bが形成され、工程2によって第2有機層132Bが形成され、工程3によって第3有機層133Bが形成され、工程4によってカソード138が形成される。第3副画素Rpixの形成時には、工程1によって第1有機層131Rが形成され、工程2によって第2有機層132Rが形成され、工程3によって第3有機層133Rが形成され、工程4によってカソード138が形成される。第1副画素Gpixの形成と、第2副画素Bpixの形成と、第3副画素Rpixの形成と、は個別の工程で行われる。
【0053】
図8は、カソードコンタクト配線195に与えられる電位の伝達経路の一例を示す模式的な平面図である。
図1及び
図8に示すように、副画素(第1副画素Gpix、第2副画素Bpix、第3副画素Rpix)の各々と接続されるカソードコンタクト配線195は、副画素に対して第1方向Dxの一方側に配置される。また、
図8に示すように、カソードコンタクト配線195は、例えば第2方向Dyに延出する配線として設けられる。第2方向Dyに並ぶ副画素は、カソードコンタクト配線195を共有する。
【0054】
また、表示装置100は、表示領域AAと周辺領域FAとを有する。表示領域AAには、各々が第1副画素Gpix、第2副画素Bpix及び第3副画素Rpixを1つずつ含む画素が複数配置されている。表示領域AAでは、複数の画素による画像の表示が行われる。周辺領域FAは、平面視点で表示領域AAの外側に位置する。周辺領域FAには、例えば第1方向Dxに沿って給電線199が設けられている。給電線199は、例えば、
図1を参照して説明した基板120と充填材140との間の積層構造に含まれるよう設けられた電極である。具体的には、カソードコンタクト配線195は、表示領域AA内で副画素に沿って設けられ、かつ、端部が周辺領域FAに延出する。カソードコンタクト配線195は、周辺領域FAで給電線199と接続されている。カソードコンタクト配線195と給電線199とが同層である場合、カソードコンタクト配線195と給電線199とは一体的に設けられる。カソードコンタクト配線195と給電線199とが異層である場合、コンタクトホールを介してカソードコンタクト配線195と給電線199とが接続される。給電線199及びカソードコンタクト配線195を介して、カソード138の電位が外部から与えられる。
【0055】
図示しないが、表示装置100には、カソード138の電位を含めて、表示装置100の画素が動作するための各種の電位及び電気的信号を与えるドライバ回路を備える。当該ドライバ回路の詳細については、既知の有機ELディスプレイで採用されているものと同様であってよいし、専用のものであってもよい。
【0056】
図8では、表示領域AAのうち、第1方向Dxに1つ、第2方向Dyに3つの画素が並ぶ範囲を例示しているが、表示領域AAにはより多くの画素が配置されていてよい。また、図示されていない副画素とカソードコンタクト配線195との位置関係は、
図8に示す副画素とカソードコンタクト配線195との位置関係と同様である。
【0057】
なお、各副画素の平面視点での形状、配置及び1つの画素が備える副画素の数は、
図8や後述する
図9に示す例に限定されるものでなく、適宜変更可能である。一例を挙げると、4つの副画素が第1方向Dx×第2方向Dy=2×2となるよう配置された画素が表示領域AAに複数設けられていてもよい。
【0058】
また、
図8では、第1副画素Gpix、第2副画素Bpix及び第3副画素Rpixの各々の近傍に延出して各々のカソード138と接続されるカソードコンタクト配線195が共通のコンタクトホール299に接続されているが、副画素の色毎に異なる電位を供給できるようにしてもよい。すなわち、第1副画素Gpixの近傍に延出して各々のカソード138と接続されるカソードコンタクト配線195と、第2副画素Bpixの近傍に延出して各々のカソード138と接続されるカソードコンタクト配線195と、第3副画素Rpixの近傍に延出して各々のカソード138と接続されるカソードコンタクト配線195と、をそれぞれ異なる電極と周辺領域FAで接続するようにしてもよい。そして、異なる電極に異なる電位が供給されるようにすることで、副画素の色毎にカソード138の電位を個別に決定できるようになる。
【0059】
なお、カソードコンタクト配線195と外部との接続形態は
図8を参照して説明した例に限られるものでない。
【0060】
図9は、カソードコンタクト配線195に与えられる電位の伝達経路の他の一例を示す模式的な平面図である。
図9に示すように、副画素(第1副画素Gpix、第2副画素Bpix、第3副画素Rpix)の各々の近傍にコンタクトホール299を設けてもよい。この場合、カソードコンタクト配線195は、コンタクトホール299を利用して形成された接続経路を介して、カソード138の電位が外部から与えられる。
【0061】
図10は、
図9のA-A断面図である。カソードコンタクト配線195は、
図1、
図5、
図6及び
図10に示すように、カソードコンタクト配線195は、カソード138と接続される。当該カソード138は、
図2から
図5を参照して説明した第1有機層131、第2有機層132、第3有機層133、カソード138の積層構造の形成の工程のうち工程4で形成される。
図10で例示する第1有機層131G、第2有機層132G、第3有機層133Gは、第1副画素Gpixを形成する工程としての工程1、工程2、工程3で形成される。
【0062】
カソードコンタクト配線195の下側には、バンク193を貫通するコンタクトホール299が設けられる。カソードコンタクト配線195は、コンタクトホール299を介して、カソードコンタクト配線195の下側に設けられた給電線295と接続される。なお、
図10及び後述する
図11に示す給電線295は、平坦化層129内にあるが、給電線295は平坦化層129以下の積層構造内に設けられればよく、その配置は平坦化層129内に限られない。
【0063】
図11は、
図9のB-B断面図である。
図11で例示するように、給電線295は例えば第2方向Dyに延出する電極又は配線であるが、給電線295の形態はこれに限られるものでない。給電線295は、コンタクトホール299が接続された層でいずれかの経路を経てカソード138の電位が外部から与えられるように延出していればよい。
【0064】
なお、
図10及び
図11ではカソードコンタクト配線195の形成時にカソードコンタクト配線195と同様の構成でコンタクトホール299が埋められることによってカソードコンタクト配線195と給電線295とが接続される例を図示しているが、コンタクトホール299内を埋める構成はこれに限られるものでない。例えば、カソードコンタクト配線195の形成を省略してもよい。その場合、カソード138の形成時にカソード138と同様の構成でコンタクトホール299が埋められることによってカソード138と給電線295とが接続される。
【0065】
図9から
図11を参照した例では、周辺領域FAが不要になるので、平面視点で表示領域AAを囲う縁(例えば、額縁状の縁)をより狭くできる。なお、コンタクトホール299の位置は
図9に示す例に限定されるものでなく、カソード138が一端側でコンタクトホール299の位置に重複できる範囲内で適宜変更可能である。
【0066】
図1から
図11を参照して説明した実施形態によれば、カソード138と画素電極174との間に第1有機層131、第2有機層132、第3有機層133が挟まれている。また、カソード138は、第3有機層133と当接する。すなわち、カソード138と第1有機層131とが当接する箇所及びカソード138と第2有機層132とが当接する箇所がない。これによって、カソード138から第1有機層131又は第2有機層132に通じる導通経路が形成されることのない積層構造を形成でき、当該導通経路が形成された場合に生じるリーク電流による発光効率の低下を抑制できる。
【0067】
図12は、マスク200の位置変更を行わずに形成された積層構造を示す模式図である。ここで、
図2から
図6を参照して説明したようなマスク200の位置変更を行わない場合の表示装置300を想定する。この場合、
図12に示すように、副画素(第1副画素Gpix、第2副画素Bpix、第3副画素Rpix)の各々の第1方向Dxの両端にテーパーが生じる。このようなテーパーが形成されるのは、
図2から
図7を参照して説明したように、同一のマスク200を用いて第1有機層131からカソード138を形成した場合、より上側に形成される層の平面視点での大きさがその下側に形成される層の平面視点での大きさよりも小さくなるからである。そして、第1方向Dxに隣り合う副画素同士の間で、テーパーを上側から覆うように形成されたカソード138が隣り合う副画素同士を接続するように形成されてしまう。すなわち、副画素同士のショートが生じる。
【0068】
図12では、テーパー構造TP1とテーパー構造TP2との間にショート箇所SC1が生じ、テーパー構造TP3とテーパー構造TP4との間にショート箇所SC2が生じ、テーパー構造TP5とテーパー構造TP6との間にショート箇所SC3が生じている表示装置300を例示している。テーパー構造TP1は、第1副画素Gpixにおいて第1方向Dxの一方側で、第1有機層131G、第2有機層132G、第3有機層133Gの段差が形成するテーパーである。テーパー構造TP2は、第2副画素Bpixにおいて第1方向Dxの他方側で、第1有機層131B、第2有機層132B、第3有機層133Bの段差が形成するテーパーである。ショート箇所SC1は、テーパー構造TP1を上側から覆うよう形成されたカソード138の一方側と、テーパー構造TP2を上側から覆うよう形成されたカソード138の他方側と、が当接することで生じるショート箇所である。テーパー構造TP3は、第2副画素Bpixにおいて第1方向Dxの一方側で、第1有機層131B、第2有機層132B、第3有機層133Bの段差が形成するテーパーである。テーパー構造TP4は、第3副画素Rpixにおいて第1方向Dxの他方側で、第1有機層131R、第2有機層132R、第3有機層133Rの段差が形成するテーパーである。ショート箇所SC2は、テーパー構造TP3を上側から覆うよう形成されたカソード138の一方側と、テーパー構造TP4を上側から覆うよう形成されたカソード138の他方側と、が当接することで生じるショート箇所である。テーパー構造TP5は、第3副画素Rpixにおいて第1方向Dxの一方側で、第1有機層131R、第2有機層132R、第3有機層133Rの段差が形成するテーパーである。テーパー構造TP6は、第1副画素Gpixにおいて第1方向Dxの他方側で、第1有機層131G、第2有機層132G、第3有機層133Gの段差が形成するテーパーである。ショート箇所SC3は、テーパー構造TP5を上側から覆うよう形成されたカソード138の一方側と、テーパー構造TP6を上側から覆うよう形成されたカソード138の他方側と、が当接することで生じるショート箇所である。
【0069】
図12を参照して説明した表示装置300に対し、実施形態によれば、
図2から
図6を参照して説明したように、隣接する副画素間でのショートは生じない。従って、同一のマスク200を用いて画素電極174上に有機層及びカソード138を形成する工程を実施できる。
【0070】
以上説明したように、実施形態によれば、表示装置100は、基板120と、基板120に積層された有機層と、当該有機層に積層された電極層(カソード138)と、を備える。当該有機層は、少なくとも、第1層と、当該第1層に積層される第2層と、を含む。当該第1層は、当該基板に沿う一方向(例えば、第1方向Dx)の一端側で当該第2層に覆われ、当該一方向の他端側で前記第2層に覆われない。当該有機層は、当該一端側で当該電極層に覆われ、当該他端側で当該電極層に覆われない。これによって、電極層と有機層に含まれる複数の層の全てとを含む通電経路が成立する。一方、電極層と有機層に含まれる複数の層の一部を含む通電経路は成立しない。従って、OLEDが本来意図した性能を発揮できる。また、このようなOLEDの製造において、マスク(マスク200)を交換せずに当該第1層と、当該第2層とを含む当該有機層と、当該電極層と、を形成できる。
【0071】
また、電極層(カソード138)は、基板120に沿う一方向(例えば、第1方向Dx)の一端側で配線(例えば、カソードコンタクト配線195)に接続される。これによって、当該配線を用いた当該電極層への通電経路を形成できる。
【0072】
また、配線(例えば、カソードコンタクト配線195)又は当該配線に通じるコンタクトホール(例えば、コンタクトホール299)は、有機層の下側に形成された画素電極174の一部を覆うように延出する絶縁部(バンク193)に設けられる。当該有機層及び当該電極層の一端側は、当該絶縁部に積層される。これによって、画素電極174と当該配線との絶縁及び画素電極174と当該電極層との絶縁をより確実に行える。
【0073】
また、複数の画素電極174は、一方向(例えば、第1方向Dx)に並ぶ。絶縁部(バンク193)は、当該一方向の一端が当該一方向に隣り合う2つの画素電極174のうち一方の一部を覆うように延出し、当該一方向の他端が当該一方向に隣り合う2つの画素電極174のうち他方の一部を覆うように延出する。有機層は、複数の画素電極174の各々に積層される。当該有機層の他端側は、絶縁部に積層される。これによって、平面視点で画素電極174のうち絶縁部に覆われていない範囲よりもより広い範囲に有機層を形成できる。
【0074】
また、実施形態で採用される表示装置100の製造方法は、複数の層を含む有機層(例えば、第1有機層131、第2有機層132、第3有機層133)と、有機層に積層される電極層(カソード138)と、を、有機層のうち最初に形成される層の大きさ及び形状に対応した開口部(開口部211)が設けられたマスク200を用いて基板120上に蒸着形成する製造方法である。当該製造方法は、当該有機層のうち最初に形成される層を蒸着形成する工程と、有機層のうち最初に形成される層以外の層の形成前に、当マスク200を基板120に沿う一方側に移動させる工程と、当該有機層のうち最初に形成される層以外の層を蒸着形成する工程と、当該電極層の形成前に、マスク200を当該一方側に移動させる工程と、当該電極層を蒸着形成する工程と、を含む。これによって、マスク200を交換せずに複数の層を含む当該有機層と、当該電極層と、を形成できる。また、当該製造方法によって製造された表示装置のOLEDが本来意図した性能を発揮できる。
【0075】
また、当該有機層のうち最初に形成される層以外の1つの層の形成時の基板120とマスク200との相対位置関係は、当該1つの層の直前に形成された層を形成する工程における基板120とマスク200との相対位置関係を基準とすると、マスク200が基板120に対して基板120に沿う一方側にずれて位置している相対位置関係である。これによって、3以上の層を含む有機層であっても、マスク200を交換せずに当該有機層と、当該電極層と、を形成できる。また、当該製造方法によって製造された表示装置のOLEDが本来意図した性能を発揮できる。
【0076】
なお、
図2から
図7を参照した説明では、基板120の位置を固定してマスク200を移動させる場合を例としていたが、マスク200と基板120との相対位置関係の変更方法はこれに限られるものでない。
図2から
図7を参照して説明したマスク200と基板120との相対位置関係の変更は、マスク200又は基板120のいずれか一方を移動させることによるものであってもよいし、マスク200及び基板120の両方を移動させることによるものであってもよい。
【0077】
また、マスク200の移動方向は第1方向Dxに限定されない。有機層のうち最上の層(例えば、第3有機層133)とカソード138とが当接し、当該最上の層以外の有機層とカソード138とが当接しないようにマスク200と基板120との相対移動が行われればよい。例えば、マスク200と基板120との相対移動方向は、第3方向Dzに直交する方向であって第1方向Dx及び第2方向Dyに交差する方向又は第2方向Dyであってもよい。
【0078】
また、
図2から
図7を参照した説明では、工程1と工程2との間のマスク200と基板120との相対位置関係の変更量と、工程2と工程3との間のマスク200と基板120との相対位置関係の変更量と、工程3と工程4との間のマスク200と基板120との相対位置関係の変更量と、がそれぞれ異なっているが、これらのうち一部又は全部の変更量が統一されていてもよい。
【0079】
また、有機層に含まれる層の数は3に限られるものでなく、2以上であればよい。
【0080】
また、本実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本開示によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0081】
100 表示装置
120 基板
131,131G,131B,131R 第1有機層
132,132G,132B,132R 第2有機層
133,133G,133B,133R 第3有機層
174 画素電極
193 バンク
195 配線
299 コンタクト
200 マスク
211 開口部