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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153176
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】二重床構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/18 20060101AFI20221004BHJP
   E04B 5/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
E04F15/18 Z
E04F15/18 601D
E04B5/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056276
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504306002
【氏名又は名称】独立行政法人都市再生機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】早坂 泰範
(72)【発明者】
【氏名】赤丸 一朗
(72)【発明者】
【氏名】石丸 亮
(72)【発明者】
【氏名】桜井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】井上 勝夫
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA19
2E220AA23
2E220AA25
2E220AA51
2E220AC03
2E220BA04
2E220CA02
2E220CA12
2E220CA32
2E220DA19
2E220GA07Y
2E220GA32Y
2E220GB02Y
2E220GB32X
2E220GB39Y
2E220GB45X
(57)【要約】
【課題】施工性を向上させることが可能となる二重床構造を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る二重床構造100は、建物におけるスラブ9と、スラブ9の上側に設けられる床構成部6とを備えた二重床構造100であって、床構成部6は、第1方向Xを材軸方向として延びる、角形鋼管からなる複数の第1部材1と、複数の第1部材1を締結して接合する締結部材3と、第1部材1を下側から支持する第1支持部材5と、を有することを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物におけるスラブと、前記スラブの上側に設けられる床構成部とを備えた二重床構造であって、
前記床構成部は、
第1方向を材軸方向として延びる、角形鋼管又は溝形鋼からなる複数の第1部材と、
複数の前記第1部材を締結して接合する締結部材と、を有すること
を特徴とする二重床構造。
【請求項2】
前記床構成部は、前記第1部材を下側から支持する第1支持部材を更に有し、
前記第1支持部材は、スラブを保持する構造躯体から1000mm以下の領域に配置されること
を特徴とする請求項1記載の二重床構造。
【請求項3】
前記床構成部は、
前記第1部材を支持する第1支持部材と、
前記第1部材と平行に延びる角形鋼管又は溝形鋼からなる第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材の上側に配置される板状部と、
前記第2部材を支持する第2支持部材と、を更に有し、
前記第2部材は、前記板状部により前記第1部材に固定され、
前記第2部材に配置される前記第2支持部材の配置箇所数は、前記第1部材に配置される前記第1支持部材の配置箇所数よりも多いこと
を特徴とする請求項1又は2記載の二重床構造。
【請求項4】
前記床構成部は、5本以上の前記第1部材を有し、
複数の前記第1部材のうち中央に配置される前記第1部材を中央部材とし、前記中央部材に隣接する前記第1部材を第1隣接部材とし、前記第1隣接部材を挟んで前記中央部材の反対側に配置される前記第1部材を第2隣接部材とし、
前記締結部材のうち前記中央部材と前記第1隣接部材とを締結する第1締結部材とし、前記第1隣接部材と前記第2隣接部材とを締結する第2締結部材としたとき、
前記第1締結部材は、前記第1方向において、少なくとも前記第2締結部材よりも前記第1隣接部材の中央側に配置されること
を特徴とする請求項1~3の何れか1項記載の二重床構造。
【請求項5】
前記第1部材は、角形鋼管であること
を特徴とする請求項1~4の何れか1項記載の二重床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二重床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート造のスラブと、このスラブの上に設けた複数の根太及びその上に設けた板状部を有する床構成部とを備えた二重床構造が知られている。
【0003】
このような二重床構造においては、物の落下や、足を踏み込んだ際等に生じる衝撃荷重が板状部に作用することで当該板状部が振動し、この振動が根太を介してスラブに伝達し、このスラブの振動が階下の部屋に騒音となって現れる。このため、この騒音が上下の各階におけるトラブルの原因になることがあるという問題があった。
【0004】
特許文献1には、鉄筋コンクリート造の建物におけるスラブと、このスラブの上側に設けた床構成部とを備えた二重床構造であって、床構成部は、複数の大引きと、これらの大引きの上側に配置された板状部とを少なくとも備えており、前記各大引きは、長手方向の両端部が前記スラブの上面に支持部材を介して設置され、前記各支持部材は、前記建物の壁の近傍、前記スラブを下方から支える梁に対応する部位の近傍及び当該梁に対応する部位の何れかの位置に配置されていることを特徴とする二重床構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-109306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、二重床構造は居室等の施工に適用されるが、その施工条件として、足場を設置できない場合や、重機を使用することができない場合がある。かかる場合には、部材を人力で運搬する必要がある。しかしながら、特許文献1の開示技術は、大引きとして重量の重いH形鋼が用いられる。このため、人力で運搬がしにくく、施工性が低いという問題点がある。
【0007】
また、特許文献1の開示技術では、大引きの上に板状部が設けられるだけであって、大引き同士が鋼材等で接合されていない。このため、局所的な荷重を受けた場合には、荷重が分散されにくく、大引き単体が受ける荷重が大きい。したがって、二重床構造全体としての剛性が低く、歩行時等の鉛直振動に抵抗するためには、H形鋼の大断面化を図る必要がある。その結果、重量が重くなり、施工性が低下するという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記問題点に鑑みて為されたもので、その目的は、施工性を向上させることが可能となる二重床構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る二重床構造は、建物におけるスラブと、前記スラブの上側に設けられる床構成部とを備えた二重床構造であって、前記床構成部は、第1方向を材軸方向として延びる、角形鋼管又は溝形鋼からなる複数の第1部材と、複数の前記第1部材を締結して接合する締結部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、施工性を向上させることが可能となる二重床構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る二重床構造を一部分解して示す斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る二重床構造を示す側面断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る二重床構造を示す平面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る二重床構造における第1部材と第2部材との接合箇所を第2方向に直交する断面で切った断面図である。
図5図5は、第2実施形態に係る二重床構造を一部分解して示す斜視図である
図6図6は、第2実施形態に係る二重床構造を示す底面図である。
図7図7は、図6のA-A断面図である。
図8図8は、第2実施形態に係る二重床構造の第1変形例を示す底面図である。
図9図9は、本発明例1の試験体を模式的に示す斜視図である。
図10図10は、比較例1の試験体を模式的に示す斜視図である。
図11図11は、試験方法を説明するための図である。
図12図12(a)は、第1経路で歩行した際の本発明例1と比較例1の試験結果を示す図であり、図12(b)は、第2経路で歩行した際の本発明例1と比較例1の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態のいくつかを、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、第1部材1の材軸方向を第1方向Xとし、第1方向Xと交差、例えば直交する第2部材2の材軸方向を第2方向Yとし、第1方向Xと第2方向Yとそれぞれと交差、例えば直交する方向を上下方向Zとする。また、各図において、共通する部分については、共通する参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
図1図4を参照して、第1実施形態における二重床構造100について説明する。二重床構造100は、図1図3に示すように、鉄筋コンクリート造の集合住宅(建物)におけるスラブ9と、このスラブ9の上側に配置された床構成部6とを備える。
【0014】
スラブ9は、図2及び図3に示すように、床構成部6による二重床構造100を構成する部分が、構造躯体91によって保持される。構造躯体91は、外壁92と、これに平行に延在する梁93と、外壁92及び梁93と直交し各住戸を区切る戸境壁94によって少なくとも保持される。この場合、スラブ9は第1方向X及び第2方向Y(水平方向)に延在し、外壁92及び戸境壁94は上下方向Zに延在する。なお、各住戸のスラブ9の全体は、その周縁部が外壁92及び戸境壁94等によって保持され、その中間部が梁93やその他の梁等によって下方から支持される。
【0015】
床構成部6は、第1部材1と、締結部材3と、板状部4と、を備える。
【0016】
第1部材1は、材軸方向が第1方向Xに延びる角形鋼管からなる。第1部材1は、例えば断面が正方形状であって、一辺が100mm程度の角形鋼管が用いられる。第1部材1は、例えば長手方向の長さが3270mm程度のものが用いられる。第1部材1は、その長手方向が床構成部6の長手方向(第1方向X)に沿って複数配置される。なお、第1部材1は、断面が長方形状であってもよい。
【0017】
第1部材1は、図4図6に示すように、第1部材1には、締結部材3が貫通される。第1部材1は、第1上板11と、第1下板12と、一対の第1側板13とを有する。第1側板13には、貫通孔13aが形成され、貫通孔13aに締結部材3が設けられる。
【0018】
締結部材3は、複数の第1部材1を締結して接合するものである。締結部材3は、第1部材1の第1側板13に貫通される全ネジアンカー30aと、この全ネジアンカーに螺合されるナット30bで構成される。全ネジアンカーに代わり、両ネジアンカー、ボルト等のナット等が螺合される周知の締結部材が用いられてもよい。ナット30bは、第1側板13の外面側に配置される。締結部材3は、全ネジアンカー30bが隣り合う2本の第1部材1に貫通されて、これらを接合するものであってもよい。締結部材3は、全ネジアンカー30bが隣接する3本以上の第1部材1に貫通されて、これらを接合するものであってもよい。
【0019】
ここで、図3に示すように、複数の第1部材1のうち中央に配置されるものを中央部材1aとし、中央部材1aに隣接する第1部材1を第1隣接部材1bとし、第1隣接部材1bを挟んで中央部材1aの反対側に配置される第1部材1を第2隣接部材1cとする。また、締結部材3のうち中央部材1aと第1隣接部材1bとを締結する締結部材3を第1締結部材3aとし、第1隣接部材1bと第2隣接部材1cとを締結する締結部材3を第2締結部材3bとする。
【0020】
第1締結部材3aは、中央部材1aと2本の第1隣接部材1bに貫通され、これらを接合する。第2締結部材3bは、1本の第1隣接部材1bと1本の第2隣接部材1cとに貫通され、これらを接合する。第1締結部材3aは、第1方向Xにおいて、少なくとも第2締結部材3bよりも第1隣接部材1bの中央側に配置される。
【0021】
また、第2隣接部材1cを挟んで第1隣接部材1bの反対側に配置される第1部材1を第3隣接部材1dとする。また、締結部材3のうち第2隣接部材1cと第3隣接部材1dを締結する締結部材3を第3締結部材3cとする。
【0022】
第3締結部材3cは、1本の第2隣接部材1cと1本の第3隣接部材1dとに貫通され、これらを接合する。第2締結部材3bは、第1方向Xにおいて、少なくとも第3締結部材3cよりも第2隣接部材1cの中央側に配置される。
【0023】
板状部4は、図1に示すように、第1部材1の上側に固定される。板状部4は、平面視で長方形状に形成され、長手方向が第1方向Xに、短手方向が第2方向Yに、沿って配置される。板状部4は、構造用合板41と、構造用合板41の上に載置された床仕上げ材42とによって構成される。
【0024】
構造用合板41は、例えば厚さ12mmのベニヤ合板からなる。構造用合板41は、ビスや接着剤によって、第1部材1の上面に固定される。
【0025】
床仕上げ材42は、例えば厚さ8.7mmであって、擦り傷や凹み傷が付きにくい樹脂製の複数のクッション付きフローリングによって構成されており、両面テープや接着剤によって、構造用合板41の上面に固定される。床仕上げ材42は、損傷したクッション付きフローリングのみを張替ることが可能とされていてもよい。床仕上げ材42としてのフローリングは、フローリングを構成する複数の合板の目地が千鳥状に配置されたものであってもよいし、複数の合板の目地を揃えて配置されたものであってもよい。
【0026】
本実施形態によれば、床構成部6は、第1方向Xを材軸方向として延びる、角形鋼管からなる複数の第1部材1と、複数の第1部材1を締結して接合する締結部材3と、を有する。これにより、H形鋼を用いるよりも重量を軽量化することができる。このため、足場や重機を用いることができない現場であっても、第1部材1を人力で運搬することができ、施工性を向上させることが可能となる。
【0027】
例えば、従来のようにH-100mm×100mm×6mm×8mmのH形鋼であって、その長さが3500mmのものを用いた場合には、その一本あたりの重量が60kg程度となり、人力で運搬することが難しい。一方で、本実施形態のように、第1部材1として100mm×100mm×3.2mmの角形鋼管であって、その長さが3270mmのものを用いる場合には、その一本あたりの重量は31kg程度となり、人力で運搬可能な重量にまで低減させることができる。このため、施工性を向上させることが可能となる。
【0028】
また、本実施形態によれば、複数の第1部材1を締結して接合する締結部材3を有する。これにより、板状部4に荷重が作用したとき、締結部材3を介して各々の第1部材1に作用する荷重が効果的に分散される。このため、各々の第1部材1が負担する荷重が分散され、第1部材1の合成効果が高くなる。したがって、二重床構造100全体としての剛性を向上させることが可能となる。その結果、部材の断面を大型化する必要がなく重量の軽量化を図ることができ、施工性を向上させることが可能となる。
【0029】
ここで、板状部4に荷重が作用したとき、板状部4の中心近傍の変位が大きくなる傾向にある。本実施形態によれば、第1締結部材3aは、第1方向Xにおいて、少なくとも第2締結部材3bよりも第1隣接部材1bの中央側に配置される。これにより、少ない数量の締結部材3であっても、板状部4の中心近傍の荷重を更に効率良く分散させることができる。このため、二重床構造100全体としての剛性を効率良く向上させることが可能となる。
【0030】
また、本実施形態によれば、第2締結部材3bは、第1方向Xにおいて、少なくとも第3締結部材3cよりも第2隣接部材1cの中央側に配置される。これにより、少ない数量の締結部材3であっても、板状部4の中心近傍を一層効率良く分散させることができる。このため、二重床構造100全体としての剛性を効率良く向上させることが可能となる。
【0031】
本実施形態によれば、第1部材1は、角形鋼管である。これにより、溝形鋼を用いるよりも、断面の剛性が高いものとなる。このため、二重床構造100全体としての剛性を高めることが可能となる。
【0032】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る二重床構造100では、図5図8に示すように、床構成部6は、第1部材1と、第2部材2と、締結部材3と、板状部4と、支持部材5と、を有する。以下、上述した実施形態と相違する点について主に説明し、上述した実施形態と同様の構成については、詳細な説明を省略する。
【0033】
第2部材2は、材軸方向が第1方向Xに延びる角形鋼管からなる。第2部材2は、断面が正方形であって、一辺が100程度mmの角形鋼管が用いられる。第2部材2は、長手方向の長さが3270mm程度のものが用いられる。第2部材2は、長手方向が床構成部6の長手方向(第1方向X)に沿って配置される。第2部材2は、床構成部6の短手方向(第2方向Y)の端部に配置される。なお、第2部材2は、断面が長方形であってもよい。
【0034】
第2部材2は、板状部4が上側に設けられる。第2部材2は、板状部4により第1部材1に固定され、締結部材3が設けられないものとなる。また、第2部材2は、後述する領域98内に配置されることが好ましい。
【0035】
支持部材5は、第1部材1を下側から支持するものである。支持部材5は、ゴム弾性を有する弾性支持部材によって構成されている。支持部材5は、例えば、一辺が100mmの正方形状であって、厚さが20mmで、硬度が78のゴム製の防音マットが用いられる。支持部材5は、スラブ9の上面及び第1部材1の下面に両面テープや、接着剤によって固定される。支持部材5は、第2部材2の下側にも設けられ、第2部材2を支持することができる。
【0036】
支持部材5は、図6図8に示すように、インピーダンスの高い構造躯体91近傍に支持部材5を配置することにより、支持部材5による床衝撃音遮断性能の低下を抑制することができるため、構造躯体91から1000mm以下の領域98(図中二点鎖線の領域)に配置されることが好ましい。つまり、構造躯体91から1000mm以下において、支持部材5を配置することで目標とする遮音性能と床振動性能に応じて定めることができる。支持部材5は、構造躯体91から例えば、500mm~700mmの位置に配置されることが好ましい。支持部材5は、構造躯体91から例えば、400mm以下の位置に配置されることがより好ましい。
【0037】
例えば図6図7に示すように、構造躯体91は、スラブ9を保持するものであって、外壁92と、梁93と、戸境壁94と、で構成される。このとき、図6に示すように、構造躯体91から500mm以下の領域98が、上下方向Zから見て(底面視において)コの字状に形成され、支持部材5は、この領域98内に1又は複数配置されることにより、二重床構造100を支持する。
【0038】
この場合、図7に示すように、支持部材5(第1支持部材5a)は、領域98内において、第1部材1の第1方向Xの一端部18の下面と、第1部材1の第1方向Xの他端部19の下面とに配置される。また、支持部材5(第1支持部材5a)は、領域98内において、一端部18と他端部19との間に配置される。板状部4の中央に荷重が作用した場合、第1部材1の支持スパン長さは、第1部材1の長手方向の中央を挟んで両側の最も近接した2つの第1支持部材5a間の長さとなり、第1部材1自体の長手方向の長さよりも短くなる。支持部材5(第2支持部材5b)は、第2部材2の第1方向Xの一端部28の下面と、第2部材2の第1方向Xの他端部29の下面とに配置される。また、支持部材5(第2支持部材5b)は、領域98内において、一端部28と他端部29との間に配置される。
【0039】
例えば図8に示すように、構造躯体91は、外壁92と、梁93とで構成される。このとき、構造躯体91から500mm以下の領域98(図中二点鎖線の領域)が一対形成され、支持部材5は、一対の領域98内に1又は複数配置されることにより、二重床構造100を支持する。
【0040】
この場合、図7で示す例と同様に、支持部材5(第1支持部材5a)は、領域98内において、第1部材1の第1方向Xの一端部18の下面と、第1部材1の第1方向Xの他端部19の下面とに配置される。また、支持部材5(第1支持部材5a)は、領域98内において、一端部18と他端部19との間に配置される。板状部4の中央に荷重が作用した場合には、第1部材1の支持スパン長さは、第1部材1の長手方向の中央を挟んで両側の最も近接した2つの第1支持部材5a間の長さとなり、第1部材1自体の長手方向の長さよりも短くなる。
【0041】
なお図示は省略するが、構造躯体91は、スラブ9の四方向を囲うように構成されてもよい。このとき、構造躯体91から500mm以下の領域が、上下方向Zから見てロの字状に形成され、支持部材5は、この領域内に1又は複数配置されることにより、二重床構造100を支持する。
【0042】
特に、本実施形態によれば、第1部材1を下側から支持する支持部材5は、第1部材1の第1方向の両端部18、19と、両端部18、19の間と、に配置される。これにより、第1部材1の支持スパン長を、第1部材1自体の長さよりも短くすることができる。このため、撓みや床振動を低減することができる。
【0043】
特に、本実施形態によれば、床構成部6は、スラブ9を保持する構造躯体91から500mm以下の領域に、支持部材5を更に有する。これにより、二重床構造100の床衝撃音遮断性能の低下を抑制することができる。
【0044】
特に、本実施形態によれば、床構成部6は、第1部材1を支持する第1支持部材5aと、第1部材1と平行に延びる角形鋼管からなる第2部材2と、第1部材1と第2部材2の上側に配置される板状部4と、第2部材2を支持する第2支持部材5bと、を更に有し、第2部材2は、板状部4により第1部材1に固定され、第2部材2に配置される第2支持部材5bの配置箇所数は、第1部材1に配置される第1支持部材5aの配置箇所数よりも多い。これにより、第1部材1と第2部材2とが締結部材3により締結されていなくても、二重床構造100を三辺支持することができる。このため、二重床構造100が二辺支持されるよりも、二重床構造100全体としての剛性を向上させることが可能となる。ものとなる。
【0045】
特に、本実施形態によれば、第2部材2は、角形鋼管である。これにより、溝形鋼を用いるよりも、断面の剛性が高いものとなる。このため、二重床構造100全体としての剛性を高めることが可能となる。
【0046】
上述した各実施形態では、第1部材1として角形鋼管を用いたが、溝形鋼が用いられてもよい。これにより、第1部材1に角形鋼管を用いる場合よりも、第1部材1の更なる軽量化を図ることができる。また、上述した各実施形態では、第2部材2として角形鋼管を用いたが、第2部材2に溝形鋼が用いられてもよい。これにより、角形鋼管を用いる場合よりも、第2部材2の更なる軽量化を図ることができる。
【実施例0047】
以下、本発明の作用効果について実施例を用いて説明する。
【0048】
本発明例1及び比較例1について、試験体を作製した。試験体の作製に用いた構成部材とその諸元を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
本発明例1の試験体200は、図9に示すように、6本の第1部材としての角形鋼管201と、1本の第2部材としての角形鋼管202とを並べて配置し、角形鋼管201同士は、締結部材としての全ネジアンカー203により互いに接合した。全ネジアンカー203は、M20のものを用い、貫通される角形鋼管201を挟んで両側にナットが螺合されている。角形鋼管202は、全ネジアンカー203により接合されていない。角形鋼管201と角形鋼管202の上側に板状部としてのベニヤ合板204を固定した。角形鋼管201の両端部の下面と、各々の端部から500mm離間した位置とに、支持部材としてのゴム製の防音マット205を配置した。これにより、本発明例の試験体200は、支持スパン長が2270mmとなる。また、角形鋼管102には、両端部の下面を含む7箇所に配置した。また、本発明例の試験体200では、三辺支持となる。
【0051】
試験体200の幅方向の中央に配置される角形鋼管201を角形鋼管201aとし、角形鋼管201aの1本隣の角形鋼管201を角形鋼管201bとし、角形鋼管201aの2本隣の角形鋼管201を角形鋼管201cとし、角形鋼管201cの3本隣の角形鋼管201を角形鋼管201dとする。本発明例1の試験体200では、角形鋼管201aと、角形鋼管201bとを締結して接合する全ネジアンカー203(全ネジアンカー203a)を、第1方向Xに282.5mm間隔で配置した。本発明例1の試験体200では、角形鋼管201bと角形鋼管201cとを締結して接合する全ネジアンカー203(全ネジアンカー203b)を、第1方向Xに1130mm間隔で配置した。本発明例1の試験体200では、角形鋼管201cと角形鋼管201dとを締結して接合する全ネジアンカー203(全ネジアンカー203b)を、第1方向Xに1700mm間隔で配置した。
【0052】
比較例1の試験体900は、図10に示すように、6本のH形鋼901を並べて配置し、H形鋼901の上側に板状部としてのベニヤ合板904を固定した。H形鋼901の両端部の下面に、支持部材としてのゴム製の防音マット905を配置した。これにより、比較例の試験体900は、支持スパン長が3270mmとなる。また、比較例の試験体900では、二辺支持となる。
【0053】
次に試験方法について説明する。図11は、試験体の模式平面図である。試験は、図12に示すように、試験体の中心Oに加速度ピックアップを設置し、成人男性1人による歩行加振を与え、時刻歴応答加速度を測定した。歩行者は同一人物とし、歩行方法は試験体の長辺3往復(第1経路W1)と短辺3往復(第2経路W2)の2通りとした。評価に用いる諸元は、社団法人日本建築学会発行の「建築物の振動に関する居住性能評価指針同解説(第2版2004年5月)」の人の動作・設備による鉛直振動の評価方法を参照し、1/3オクターブバンド分析による応答加速度の最大値とした。
【0054】
図13に試験の結果を示す。図12では、横軸を振動数とし、縦軸を応答加速度とした。上記した試験を実施し、本発明例1と比較例1の床振動性能を評価した。試験では、応答加速度が小さいほど、床振動性能が良いものとして評価することができる。本実施例では、床振動性能の評価において「建築物の振動に関する居住性能評価指針同解説(第2版2004年5月)」の人の動作・設備による鉛直振動の評価方法を参照し、評価対象となる振動数範囲を3Hz以上30Hz以下を評価対象とした。
【0055】
図12(a)に示すように、第1経路W1で歩行した場合、3Hz以上30Hz以下の振動数における応答加速度は、本発明例が比較例よりも小さくなった。図12(b)に示すように、第2経路W2で歩行した場合で歩行した場合も同様に、3Hz以上30Hz以下の振動数における応答加速度は、本発明例が比較例よりも小さくなった。
【0056】
以上から、本発明例1の床振動性能は、比較例1のものよりも高いと評価できる。本発明例1では、角形鋼管201同士が全ネジアンカー203により接合される。これにより、ベニヤ合板204に荷重が作用したとき、全ネジアンカー203を介して各々の角形鋼管201に作用する荷重が効果的に分散されたと考えられる。対して、比較例では、H形鋼901同士が全ネジアンカーで接合されていないことから、ベニヤ合板904に荷重が作用したとき、各々のH形鋼901に作用する荷重が分散されにくいものと考えられる。
【0057】
このため、本発明例1における各々の角形鋼管201の合成効果は、比較例1のものよりも高く、二重床構造全体としての剛性を向上させることが可能となる。その結果、部材の断面を大型化する必要がなく重量の軽量化を図ることができ、施工性を向上させることが可能となる。
【0058】
以上、この発明の実施形態のいくつかを説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、これらの実施形態の各例は、適宜組み合わせて実施することが可能である。さらに、この発明は、上記いくつかの実施形態の各例の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記いくつかの実施形態の各例のそれぞれは、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
100 :二重床構造
1 :第1部材
11 :第1上板
12 :第1下板
13 :第1側板
13a :貫通孔
18 :端部
19 :端部
1a :中央部材
1b :第1隣接部材
1c :第2隣接部材
1d :第3隣接部材
2 :第2部材
28 :端部
29 :端部
3 :締結部材
3a :第1締結部材
3b :第2締結部材
3c :第3締結部材
4 :板状部
41 :構造用合板
42 :床仕上げ材
5 :支持部材
5a :第1支持部材
5b :第2支持部材
6 :床構成部
9 :スラブ
91 :構造躯体
92 :外壁
93 :梁
94 :戸境壁
98 :領域
X :第1方向
Y :第2方向
Z :上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12