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特開2022-153178床振動性能調整方法、床振動性能調整プログラム及び二重床構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153178
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】床振動性能調整方法、床振動性能調整プログラム及び二重床構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/18 20060101AFI20221004BHJP
   E04F 15/20 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
E04F15/18 601
E04F15/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056278
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504306002
【氏名又は名称】独立行政法人都市再生機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】早坂 泰範
(72)【発明者】
【氏名】赤丸 一朗
(72)【発明者】
【氏名】石丸 亮
(72)【発明者】
【氏名】桜井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】井上 勝夫
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA19
2E220AA39
2E220AA51
2E220AB06
2E220AC03
2E220CA02
2E220CA16
2E220CA23
2E220CA30
2E220CA32
2E220CA70
2E220DA02
2E220DA19
2E220DB05
2E220EA11
2E220FA11
2E220FA13
2E220GA07X
2E220GA07Z
2E220GA25X
2E220GA32Y
2E220GB02Y
2E220GB22Z
2E220GB39Z
2E220GB43X
2E220GB45X
(57)【要約】
【課題】二重床構造の施工の適用性を向上させることが可能となる技術を提供する。
【解決手段】実施形態に係る床振動性能調整方法は、建物におけるスラブと、前記スラブの上側に設けられる角形鋼管又はH形鋼で構成される第1部材と前記第1部材の両端を下方から支持する第1支持部材とを有する床構成部と、を備えた二重床構造の床振動性能を調整する床振動性能調整方法であって、固有振動数fを決定する固有振動数決定工程を備え、前記固有振動数決定工程では、前記第1部材の材軸方向の長さL0とし、前記第1部材の境界条件λとし、前記第1部材の曲げ剛性EIとし、前記第1部材の単位長さ当たり重量ρAとしたとき、前記第1部材の端部から離間される調整部材の配置位置に基づいて、前記第1部材の長さL0未満の支持スパンL1を設定し、前記固有振動数fを決定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物におけるスラブと、前記スラブの上側に設けられる角形鋼管又はH形鋼で構成される第1部材と前記第1部材の両端を下方から支持する第1支持部材とを有する床構成部と、を備えた二重床構造の床振動性能を調整する床振動性能調整方法であって、
固有振動数fを決定する固有振動数決定工程を備え、
前記固有振動数決定工程では、前記第1部材の材軸方向の長さL0とし、前記第1部材の境界条件λとし、前記第1部材の曲げ剛性EIとし、前記第1部材の単位長さ当たり重量ρAとしたとき、前記第1部材の端部から離間される調整部材の配置位置に基づいて、前記第1部材の長さL0未満の支持スパンL1を設定し、以下の数(1)により前記固有振動数fを決定すること
を特徴とする床振動性能調整方法。
【数5】
【請求項2】
前記固有振動数決定工程では、前記調整部材が前記第1部材を下方から支持する第2支持部材であり、前記第2支持部材の配置位置に基づいて、前記支持スパンL1を設定し、前記固有振動数fを決定すること
を特徴とする請求項1記載の床振動性能調整方法。
【請求項3】
前記固有振動数決定工程では、前記調整部材が前記第1部材の材軸方向に直交する方向に配置される仕切り板であり、前記仕切り板の配置位置に基づいて、前記支持スパンL1を設定し、前記固有振動数fを決定すること
を特徴とする請求項1記載の床振動性能調整方法。
【請求項4】
前記固有振動数決定工程では、前記角形鋼管と、前記角形鋼管の内部に設けられる充填部材と、で構成される前記第1部材の単位長さ当たり重量ρAを設定し、前記固有振動数fを決定すること
を特徴とする請求項1~3の何れか1項記載の床振動性能調整方法。
【請求項5】
前記固有振動数決定工程では、前記角形鋼管に結合されるセメント系材料を前記充填部材として前記第1部材の曲げ剛性EIを設定し、前記固有振動数fを決定すること
を特徴とする請求項4記載の床振動性能調整方法。
【請求項6】
前記固有振動数決定工程では、前記角形鋼管とは独立した錘部材を前記充填部材として前記第1部材の単位長さ当たり重量ρAを設定し、前記固有振動数fを決定すること
を特徴とする請求項4記載の床振動性能調整方法。
【請求項7】
建物におけるスラブと、前記スラブの上側に設けられる角形鋼管又はH形鋼で構成される第1部材と前記第1部材の両端を下方から支持する第1支持部材とを有する床構成部と、を備えた二重床構造の床振動性能を調整する床振動性能調整プログラムであって、
固有振動数fを決定する固有振動数決定ステップをコンピューターに実行させ、
前記固有振動数決定ステップでは、前記第1部材の材軸方向の長さL0とし、前記第1部材の境界条件λとし、前記第1部材の曲げ剛性EIとし、前記第1部材の単位長さ当たり重量ρAとし、前記第1部材の長手方向に直交する断面の断面積Aとしたとき、前記第1部材の端部から離間される調整部材の配置位置に基づいて、前記第1部材の長さL0未満の支持スパンL1を設定し、以下の数(1)により前記固有振動数fを決定すること
を特徴とする床振動性能調整プログラム。
【数6】
【請求項8】
前記固有振動数決定ステップでは、前記調整部材が前記第1部材を下方から支持する第2支持部材であり、前記第2支持部材の配置位置に基づいて、前記支持スパンL1を設定し、前記固有振動数fを決定すること
を特徴とする請求項7記載の床振動性能調整プログラム。
【請求項9】
前記固有振動数決定ステップでは、前記調整部材が前記第1部材の材軸方向に直交する方向に配置される仕切り板であり、前記仕切り板の配置位置に基づいて、前記支持スパンL1を設定し、前記固有振動数fを決定すること
を特徴とする請求項7記載の床振動性能調整プログラム。
【請求項10】
前記固有振動数決定ステップでは、前記角形鋼管と、前記角形鋼管の内部に設けられる充填部材と、で構成される前記第1部材の単位長さ当たり重量ρAを設定し、前記固有振動数fを決定すること
を特徴とする請求項7~9の何れか1項記載の床振動性能調整プログラム。
【請求項11】
前記固有振動数決定ステップでは、前記角形鋼管に結合されるセメント系材料を前記充填部材として前記第1部材の曲げ剛性EIを設定し、前記固有振動数fを決定すること
を特徴とする請求項10記載の床振動性能調整プログラム。
【請求項12】
前記固有振動数決定ステップでは、前記角形鋼管とは独立した錘部材を前記充填部材として前記第1部材の単位長さ当たり重量ρAを設定し、前記固有振動数fを決定すること
を特徴とする請求項10記載の床振動性能調整プログラム。
【請求項13】
建物におけるスラブと、前記スラブの上側に設けられる床構成部とを備えた二重床構造であって、
前記床構成部は、
角形鋼管で構成される複数の第1部材と、
前記第1部材の両端を下方から支持する一対の第1支持部材と、
前記第1部材の端部から離間した位置に設けられ、前記第1部材の支持スパンを調整するための調整部材と、を有すること
を特徴とする二重床構造。
【請求項14】
前記調整部材は、前記第1支持部材から離間した位置に配置され、前記第1部材を下方から支持する第2支持部材で構成されること
を特徴とする請求項13記載の二重床構造。
【請求項15】
前記調整部材は、前記第1部材の材軸方向に直交する方向に配置される仕切り板で構成されること
を特徴とする請求項13又は14記載の二重床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、床振動性能調整方法、床振動性能調整プログラム及び二重床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート造のスラブと、このスラブの上に設けた複数の根太及びその上に設けた板状部を有する床構成部とを備えた二重床構造として、特許文献1が開示されている。
【0003】
特許文献1の二重床構造は、鉄筋コンクリート造の建物におけるスラブと、このスラブの上側に設けた床構成部とを備えた二重床構造であって、床構成部は、複数の大引きと、これらの大引きの上側に配置された板状部とを少なくとも備えており、前記各大引きは、長手方向の両端部が前記スラブの上面に支持部材を介して設置され、前記各支持部材は、前記建物の壁の近傍、前記スラブを下方から支える梁に対応する部位の近傍及び当該梁に対応する部位の何れかの位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-109306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、床振動性能は、床の構造特性と加振力特性によって決定される。床の構造特性の一つの要素である床の固有振動数と、加振力の周波数成分が共振すると、応答値が大きくなり、人に不快感を与えることとなる。よって、共振を防止する方法の一つとして、床の固有振動数を調整することが有効である。
【0006】
従来、床の固有振動数fは、大引材の材軸方向の長さL0とし、大引材の境界条件λとし、大引材の曲げ剛性EIとし、大引材の単位長さ当たり重量ρAとしたとき、以下の数式(2)により決定される。
【0007】
【数1】
【0008】
床構造では部屋の寸法が予め定められていることから、床を構成する大引材の材軸方向の長さL0は、数式(2)において、部屋の寸法に基づいて設定される定数として取り扱われる。このため、従来の床の固有振動数を調整する方法は、大引材の部材厚、高さ寸法や幅寸法等の断面寸法を設定するのみで、床の固有振動数を調整する選択肢が少ない、という事情があった。したがって、例えば共振を抑制するために大引材の断面寸法を大きくしたとしても、現場の条件によっては大引材を人力で搬入できない等の現場条件の影響を受けやすく、施工の適用性が低いという問題点があった。
【0009】
この発明は、上記問題点に鑑みて為されたもので、その目的は、二重床構造の施工の適用性を向上させることが可能となる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る床振動性能調整方法は、建物におけるスラブと、前記スラブの上側に設けられる角形鋼管又はH形鋼で構成される第1部材と前記第1部材の両端を下方から支持する第1支持部材とを有する床構成部と、を備えた二重床構造の床振動性能を調整する床振動性能調整方法であって、固有振動数fを決定する固有振動数決定工程を備え、前記固有振動数決定工程では、前記第1部材の材軸方向の長さL0とし、前記第1部材の境界条件λとし、前記第1部材の曲げ剛性EIとし、前記第1部材の単位長さ当たり重量ρAとしたとき、前記第1部材の端部から離間される調整部材の配置位置に基づいて、前記第1部材の長さL0未満の支持スパンL1を設定し、以下の数(1)により前記固有振動数fを決定することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る床振動性能調整プログラムは、建物におけるスラブと、前記スラブの上側に設けられる角形鋼管又はH形鋼で構成される第1部材と前記第1部材の両端を下方から支持する第1支持部材とを有する床構成部と、を備えた二重床構造の床振動性能を調整する床振動性能調整プログラムであって、固有振動数fを決定する固有振動数決定ステップをコンピューターに実行させ、前記固有振動数決定ステップでは、前記第1部材の材軸方向の長さL0とし、前記第1部材の境界条件λとし、前記第1部材の曲げ剛性EIとし、前記第1部材の単位長さ当たり重量ρAとし、前記第1部材の長手方向に直交する断面の断面積Aとしたとき、前記第1部材の端部から離間される調整部材の配置位置に基づいて、前記第1部材の長さL0未満の支持スパンL1を設定し、以下の数(1)により前記固有振動数fを決定することを特徴とする。
【0012】
【数2】
【0013】
本発明に係る二重床構造は、建物におけるスラブと、前記スラブの上側に設けられる床構成部とを備えた二重床構造であって、前記床構成部は、角形鋼管で構成される複数の第1部材と、前記第1部材の両端を下方から支持する一対の第1支持部材と、前記第1部材の端部から離間した位置に設けられ、前記第1部材の支持スパンを調整するための調整部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、二重床構造の施工の適用性を向上させることが可能となる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)は、床振動性能調整装置の構成の一例を示す模式図であり、図1(b)は、床振動性能調整装置の機能の一例を示す模式図である。
図2図2は、実施形態に係る二重床構造の第1例を一部分解して示す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る二重床構造の第1例を示す平面図である。
図4図4は、実施形態に係る二重床構造の第1例を示す側面断面図である。
図5図5は、実施形態に係る二重床構造の第1例における床構成部を幅方向に直交する面で切った断面図である。
図6図6は、実施形態に係る二重床構造の第1例における第1部材を示す斜視図である。
図7図7(a)は、Case1~3の二重床構造の模式図であり、図7(b)は、Case4~6の二重床構造の模式図である。
図8図8は、実施形態に係る二重床構造の第2例を一部分解して示す斜視図である。
図9図9は、実施形態に係る二重床構造の第2例を示す平面図である。
図10図10は、実施形態に係る二重床構造の第2例における床構成部を幅方向に直交する面で切った断面図である。
図11図11は、第1部材の第1変形例を示す斜視図である。
図12図12は、第1部材の第2変形例を示す斜視図である。
図13図13は、第1部材の第3変形例を示す斜視図である。
図14図14は、第1部材の第4変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態のいくつかを、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、第1部材1の材軸方向を材軸方向Xとし、材軸方向Xと交差、例えば直交する第2部材2の材軸方向を幅方向Yとし、材軸方向Xと幅方向Yとそれぞれと交差、例えば直交する方向を上下方向Zとする。また、各図において、共通する部分については、共通する参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
<床振動性能調整装置500>
図1(a)は、床振動性能調整装置500の構成の一例を示す模式図である。床振動性能調整装置500は、二重床構造100の床振動性能を調整するために用いられる。ユーザは、床振動性能調整プログラムを床振動性能調整装置500で実行させる。床振動性能調整装置500として、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等のような公知の電子機器が用いられる。床振動性能調整装置500は、例えば筐体10と、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、保存部104と、I/F105~108とを備え、例えば通信機器111を備えてもよい。各構成101~108は、内部バス110により接続される。
【0018】
CPU101は、床振動性能調整装置500全体を制御する。ROM102は、CPU101の動作コードを格納する。RAM103は、CPU101の動作時に使用される作業領域である。保存部104は、各種情報が保存される。保存部104として、例えばSDメモリーカードのほか、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等のような公知のデータ保存媒体が用いられる。
【0019】
I/F105は、通信可能な通信機器111との各種情報の送受信を行うための公知のインターフェースである。
【0020】
I/F106は、用途に応じて接続される入力装置112との各種情報の送受信を行うための公知のインターフェースである。入力装置112として、例えばキーボード等の公知の入力装置が用いられ、床振動性能調整装置100の管理等を行う管理者等は、入力装置112を介して、各種情報の制御コマンド等を入力又は選択する。
【0021】
I/F107は、表示部113との各種情報の送受信を行うための公知のインターフェースである。表示部113は、保存部104に保存された各種情報や、床振動性能調整装置100の処理状況等を出力する。表示部113として、例えばディスプレイが用いられ、例えばタッチパネル式でもよい。この場合、表示部113が入力装置112を含む構成としてもよい。
【0022】
I/F108は、例えば外部機器との各種情報の送受信を行うための公知のインターフェースである。I/F108は、例えば複数設けられ、インターネット等の通信網を介した各種情報の送受信を行うために用いられてもよい。
【0023】
なお、I/F105~I/F108として、例えば同一のものが用いられてもよく、各I/F105~I/F108として、例えばそれぞれ複数のものが用いられてもよい。
【0024】
図1(b)は、床振動性能調整装置500の機能の一例を示す模式図である。床振動性能調整装置500は、取得部11と、固有振動数決定部12と、記憶部13と、出力部14とを備える。なお、図1(b)に示した各機能は、CPU101が、RAM103を作業領域として、保存部104等に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
【0025】
<<取得部11>>
取得部11は、各種情報を取得する。
【0026】
<<固有振動数決定部12>>
固有振動数決定部12は、二重床構造100の固有振動数fを決定する。
【0027】
二重床構造100の第1例は、図2図6に示すように、鉄筋コンクリート造や木造等の集合住宅(建物)におけるスラブ9と、このスラブ9の上側に配置された床構成部6とを備える。
【0028】
スラブ9は、床構成部6による二重床構造100を構成する部分が、構造躯体91によって保持される。構造躯体91は、外壁92と、これに平行に延在する梁93と、外壁92及び梁93と直交し各住戸を区切る戸境壁94によって少なくとも保持される。この場合、スラブ9は材軸方向X及び幅方向Y(水平方向)に延在し、外壁92及び戸境壁94は上下方向Zに延在する。なお、各住戸のスラブ9の全体は、その周縁部が外壁92及び戸境壁94等によって保持され、その中間部が梁93やその他の梁等によって下方から支持される。
【0029】
床構成部6は、第1部材1と、板状部4と、第1支持部材5aと、調整部材8と、を備える。
【0030】
第1部材1は、材軸方向が材軸方向Xに延びる角形鋼管からなる。第1部材1は、例えば断面が長方形状あって、長辺が150mm程度、短辺が100mm程度の角形鋼管が用いられる。第1部材1は、例えば長手方向の長さが3270mm程度のものが用いられる。第1部材1は、その長手方向が床構成部6の長手方向(材軸方向X)に沿って複数配置される。なお、第1部材1は、断面が正方形状であってもよい。
【0031】
第1部材1は、図5に示すように、幅方向Yにおける幅寸法Bとする。また、第1部材1の幅方向Yの中央Cの間隔(第1部材1の軸心間隔)pとする。このとき、二重床構造100は、p≦3Bを満たす。これにより、板状部4の中心に荷重が作用したとき、幅方向Yの中央に配置される第1部材1(図3中の第1部材1-6、第1部材1-7)の荷重分担率が50%以下となり、当該第1部材1(図3中の第1部材1-6、第1部材1-7)の荷重分担率が小さい。これに対して、p>3Bの場合には、板状部4の中心に荷重が作用したとき、幅方向Yの中央に配置される第1部材1(図3中の第1部材1-6、第1部材1-7)の荷重分担率が50%を超え、当該第1部材1(図3中の第1部材1-6、第1部材1-7)の荷重分担率が大きい。また、中央に配置される第1部材1(図3中の第1部材1-6、第1部材1-7)の1本隣の第1部材1(図3中の第1部材1-5、第1部材1-8)の荷重分担率について、P=3Bの場合とP<3Bの場合とを比較すると、P=3Bの方が高くなる。
【0032】
また、二重床構造100は、p≦2Bを満たすことが好ましい。これにより、板状部4の中心に荷重が作用したとき、幅方向Yの中央に配置される第1部材1(図3中の第1部材1-6、第1部材1-7)の1本隣の第1部材1(図3中の第1部材1-5、第1部材1-8)の荷重分担率が、第1部材1-1~第1部材1-12の中で最も高くなる。つまり、中央に配置される第1部材1(図3中の第1部材1-6、第1部材1-7)の1本隣の第1部材1(図3中の第1部材1-5、第1部材1-8)の荷重分担率は、中央に配置される第1部材1(図3中の第1部材1-6、第1部材1-7)の荷重分担率よりも高くなる。
【0033】
第1部材1は、上面に開口部11が形成され、内部には充填部材が充填される。第1部材1の両端部18、19には、充填部材の漏出を防止するための押さえプレート12が設けられる。角形鋼管の内部への充填部材の充填は、角形鋼管をスラブ9に並べた後に行われることが好ましい。これにより、搬入時における第1部材1の重量を軽量化でき、施工を容易に行うことが可能となる。
【0034】
充填部材は、例えば、高強度コンクリート等のセメント系材料が用いられ、開口部11から充填される。これにより、角形鋼管と充填部材とが一体化されるものとなり、第1部材1の曲げ剛性と単位長さ当たり重量を増加させることができる。充填部材は、例えば、砂袋や鋼板等の錘部材が用いられてもよい。これにより、角形鋼管等が充填部材とは独立されるものとなり、第1部材1の単位長さ当たり重量を増加させることができる。なお、充填部材は省略されてもよい。
【0035】
板状部4は、図1に示すように、第1部材1の上側に固定される。板状部4は、平面視で長方形状に形成され、長手方向が材軸方向Xに、短手方向が幅方向Yに、沿って配置される。板状部4は、構造用合板41と、構造用合板41の上に載置された床仕上げ材42とによって構成される。
【0036】
構造用合板41は、例えば厚さ12mmのベニヤ合板からなる。構造用合板41は、ビスや接着剤によって、第1部材1の上面及び第2部材2の上面に固定される。
【0037】
床仕上げ材42は、例えば厚さ8.7mmであって、擦り傷や凹み傷が付きにくい樹脂製の複数のクッション付きフローリングによって構成されており、両面テープや接着剤によって、構造用合板41の上面に固定される。床仕上げ材42は、損傷したクッション付きフローリングのみを張替ることが可能とされていてもよい。床仕上げ材42としてのフローリングは、フローリングを構成する複数の合板の目地が千鳥状に配置されたものであってもよいし、複数の合板の目地を揃えて配置されたものであってもよい。
【0038】
第1支持部材5aは、第1部材1の端部に配置され、第1支持1を下側から支持するものである。第1支持部材5aは、ゴム弾性を有する弾性支持部材によって構成されている。第1支持部材5aは、例えば、一辺が100mmの正方形状であって、厚さが20mmで、硬度が78のゴム製の防音マットが用いられる。第1支持部材5aは、スラブ9の上面及び第1部材1の下面に両面テープや、接着剤によって固定される。
【0039】
調整部材8は、第1部材1の端部から離間した位置に設けられ、第1部材1の支持スパンを調整するためのものである。調整部材8は、第1部材1に複数設けられる。調整部材8は、第1部材1を下側から支持する第2支持部材5bで構成される。第2支持部材5bは、第1支持部材5aと同様に、ゴム弾性を有する弾性支持部材によって構成されている。
【0040】
第1支持部材5a及び第2支持部材5bは、図3に示すように、インピーダンスの高い構造躯体91近傍に配置することにより、床衝撃音遮断性能の低下を抑制することができるため、構造躯体91から1000mm以下の領域98(図中二点鎖線の領域)に配置されることが好ましい。つまり、構造躯体91から1000mm以下において、第1支持部材5aと第2支持部材5bを配置することで目標とする遮音性能と床振動性能に応じて定めることができる。第2支持部材5bは、構造躯体91から例えば、500mm~700mmの位置に配置されることが好ましい。第1支持部材5aと第2支持部材5bは、構造躯体91から例えば、400mm以下の位置に配置されることがより好ましい。
【0041】
例えば図3に示すように、構造躯体91は、スラブ9を保持するものであって、外壁92と、梁93と、戸境壁94と、で構成される。図3に示すように、構造躯体91から500mm以下の領域98が、上下方向Zから見てコの字状に形成され、第1支持部材5a及び第2支持部材5bは、この領域98内に1又は複数配置されることにより、二重床構造100を支持する。
【0042】
この場合、第1支持部材5aは、領域98内において、第1部材1の材軸方向Xの一端部18の下面と、第1部材1の材軸方向Xの他端部19の下面とに配置される。また、第2支持部材5bは、領域98内において、一端部18と他端部19との間に配置される。板状部4の中央に荷重が作用した場合には、第1部材1の支持スパンは、第1部材1の長手方向の中央を挟んで両側の最も近接した2つの第2支持部材5b間の長さとなり、第1部材1の長手方向の長さよりも短くなる。
【0043】
ここで、第1部材1の材軸方向Xの長さL0とし、第1部材1の境界条件λとし、第1部材1の曲げ剛性EIとし、第1部材1の単位長さ当たり重量ρAとする。なお、Eは第1部材1のヤング率であり、Iは第1部材1の断面2次モーメントであり、ρは第1部材1の単位体積重量であり、Aは、第1部材1の材軸方向Xに直交する断面の断面積である。
【0044】
固有振動数決定部12は、第1部材1の端部から離間される調整部材8の配置位置に基づいて、第1部材1の長さL0未満の支持スパンL1を設定し、固有振動数fを以下の数式(1)により決定する。
【0045】
【数3】
【0046】
図6に示す第1部材1では、互いに離間して配置された2つの調整部材8、8の間の距離が支持スパンL1であり、第1部材1の端部から調整部材8までの距離をMとすると、L1=L0-2×Mである。
【0047】
第1部材1の境界条件λは、第1部材1の両端部の支持条件に基づいて、設定される。また、第1部材1の曲げ剛性EI及び第1部材1の単位長さ当たり重量ρAは、第1部材1を構成する角形鋼管と充填部材に基づいて、設定される。
【0048】
<<記憶部13>>
記憶部13は、各種情報を保存部104に記憶させ、又は各種情報を保存部104から取出す。記憶部13は、取得部11と、固有振動数決定部12と、出力部14との処理内容に応じて、各種情報の記憶又は取出しを行う。
【0049】
<<出力部14>>
出力部14は、各種情報を表示部113等に出力する。
【0050】
(床振動性能調整装置500の動作例)
次に、床振動性能調整装置500の動作例について説明する。床振動性能調整装置500では、固有振動数決定ステップをコンピュータに実行させる。
【0051】
固有振動数決定ステップでは、取得部11は、第1部材1の材軸方向の長さL0、及び、調整部材8の配置位置を取得する。これにより、第1部材1の長さL0未満の支持スパンL1を取得する。また、取得部11は、第1部材1の境界条件λ、第1部材1の曲げ剛性EI、第1部材1の単位長さ当たり重量ρAを取得する。
【0052】
そして、固有振動数決定ステップでは、固有振動数決定部12は、第1部材1の境界条件λ、第1部材1の曲げ剛性EI、第1部材1の単位長さ当たり重量ρA、及び、第1部材1の長さL0未満の支持スパンL1を設定し、固有振動数fを数式(1)により決定する。
【0053】
そして、固有振動数決定ステップでは、出力部14が表示部113に固有振動数fを出力する。以上により、床振動性能調整装置500の動作が完了する。
【0054】
次に、固有振動数の計算の第1例について説明する。
【0055】
ここで、「振動レベル」とは、測定した振動加速度の実効値に対して周波数補正を行った値であり、人体の振動に対する感じ方を考慮した評価値である。この周波数補正値は、JIS C 1510「振動レベル計」に基準レスポンスとして示されている。基準レスポンスは、3.15Hz~8Hz帯域ではほぼ平坦特性(約0)となっており、3.15Hzから低周波側になるほど、また8Hzから高周波側になるほど、基準レスポンスの値が小さくなることが分かる。つまり、鉛直振動に対して人体が感じやすい周波数帯域は3.15Hz~8Hzである。
【0056】
床振動の加振源として代表的であるのが、人の歩行加振である。通常の歩行の歩調は、1.6Hz~2.3Hz程度である。歩調の整数倍の振動数が床の固有振動数と一致すると、歩数を重ねるごとに振幅が増幅する共振現象を倍調波共振というが、倍調波共振は一般に歩行の4倍調波成分まで発生する可能性があるということが知られている。よって、上記の歩調を考慮すると、床の固有振動数は、2.3×4≒10Hz以上とすれば倍調波共振が避けられる可能性が高く、かつ人体が感じやすい周波数帯域を回避することができる。このため、固有振動数の目標値を10Hz以上と設定した。
【0057】
Case1~6の二重床構造は、5450mm×2400mmの部屋に、12本の角形鋼管を並べ、その上に20kg/mの板状部を重ねたものである。角形鋼管の断面は長方形状であり、その両端には、第1支持部材を配置した。
【0058】
表1に、従来の固有振動数の調整方法である以下の数式(2)により決定される固有振動数を示す。従来の固有振動数の調整方法では、数式(2)に示すように、第1部材1の材軸方向Xの長さL0に基づいて、固有振動数fが決定される。なお、第1部材1の材軸方向Xの長さL0とし、第1部材1の境界条件λとし、第1部材1の曲げ剛性EIとし、第1部材1の単位長さ当たり重量ρAとする。
【0059】
【数4】
【0060】
【表1】
【0061】
図7(a)に示すように、Case1~3では、何れも第1部材1として角形鋼管が用いられ、その両端に第1支持部材5aが設けられるものの、第1部材1に調整部材が設けられていない。このため、Case1~3では、支持スパンが部屋長辺寸法と同じであり、第1部材1の材軸方向の長さL0は、5450mmである。Case2は、Case1の角形鋼管よりも高さ寸法、幅寸法が大きく、肉厚が厚いものである。Case3は、高さ寸法、幅寸法がCase1の角形鋼管と同じであり、肉厚がCase1の角形鋼管よりも厚いものである。
【0062】
表1に示すように、Case1、3では、固有振動数fが10Hz未満となり、目標値を満足しない。また、Case2では、固有振動数fが10Hz以上となるものの、部材断面が大きくなってしまい、施工に制限がある現場では、搬入することができないおそれがある。Case1~3に示すように、従来の手法では、調整部材8が設けられていないため、固有振動数を調整するためには、角形鋼管の断面寸法を変更するしかなく、施工の適用性が低いものであった。
【0063】
表2に、数式(1)により決定される固有振動数を示す。
【0064】
【表2】
【0065】
図7(b)に示すように、Case4~6では、何れも第1部材1として角形鋼管が用いられ、その両端に第1支持部材5aが設けられ、かつ、第1部材1の端部から500mm離間した位置に、調整部材8としての第2支持部材5bが2か所に設けられるものである。このため、Case4~6では、第1部材1の長手方向の長さL0は、部屋長辺寸法と同じく5450mmであるが、支持スパンL1は、2つの調整部材8の配置位置(M=500mm)に基づいて設定され、4450mmである。すなわち、支持スパンL1は、2つの第2支持部材5bの間の長さであり、第1部材1の材軸方向Xの長さL0未満である。
【0066】
Case4~6では、Case1の角形鋼管と同様の断面寸法のものを用いている。Case4は、角形鋼管の内部に充填部材が充填されていないものである。
【0067】
Case5は、角形鋼管の内部にコンクリートを充填したものである。コンクリートの圧縮強度は、60N/mmとした。Case5では、コンクリートが角形鋼管に接合されるため、曲げ剛性EIと単位長さ当たり重量ρAがCase4のものよりも大きくなる。
【0068】
Case6は、角形鋼管の内部に錘部材を充填したものである。錘部材の充填量は、角形鋼管と同じ重量とした。Case6では、錘部材が角形鋼管と独立されるため、曲げ剛性EIはCase4のものと同じであるものの、第1部材1の単位長さ当たりの重量ρAがCase4のものよりも大きくなる。
【0069】
Case4~6では、角形鋼管の断面寸法をCase1と同一としたものの、固有振動数fが10Hz以上を満たした。Case4~6では、調整部材8の配置位置に基づいて、第1部材1の長手方向の長さL0未満である支持スパンL1が設定され、数式(1)により固有振動数fが決定される。これにより、角形鋼管の部材寸法を変更することなく、固有振動数fを調整することができる。このため、床振動性能を調整することができ、施工の適用性を向上させることが可能となる。
【0070】
以上、本実施形態によれば、固有振動数決定部12は、第1部材1の端部から離間される調整部材の配置位置に基づいて、第1部材1の長さL0未満の支持スパンL1を設定し、固有振動数fを数式(1)により決定する。これにより、第1部材1の部材厚等の断面寸法を変更することなく、固有振動数fを調整することができる。このため、二重床構造100の床振動性能を調整することができ、二重床構造100の施工の適用性を向上させることが可能となる。
【0071】
本実施形態によれば、固有振動数決定部12は、第1部材1の材軸方向Xの両端に配置されるとともに第1部材1を下方から支持する一対の第1支持部材5a、5aの間に配置される第2支持部材5bの配置位置に基づいて、支持スパンL1を設定し、固有振動数fを決定する。これにより、第2支持部材5bの配置位置に応じて、二重床構造100の床振動性能を調整することができる。このため、二重床構造100の施工の適用性を向上させることが可能となる。
【0072】
本実施形態によれば、固有振動数決定部12は、角形鋼管と角形鋼管の内部に設けられる充填部材と、で構成される第1部材1の単位長さあたり重量ρAを設定し、固有振動数fを決定する。これにより、角形鋼管の内部に充填される充填部材に応じて、二重床構造100の床振動性能を調整することができる。二重床構造100の施工の適用性を向上させることが可能となる。
【0073】
本実施形態によれば、固有振動数決定部12は、角形鋼管に結合されるセメント系材料を充填部材として第1部材1の曲げ剛性EIと単位長さ当たり重量ρAを設定し、固有振動数fを決定する。これにより、角形鋼管の内部に充填されるセメント系材料に応じて、二重床構造100の床振動性能を調整することができる。このため、二重床構造100の施工の適用性を向上させることが可能となる。
【0074】
本実施形態によれば、固有振動数決定部12は、角形鋼管とは独立した錘部材を充填部材として第1部材1の単位長さ当たり重量ρAを設定し、固有振動数fを決定する。これにより、角形鋼管の内部に充填される錘部材に応じて、二重床構造100の床振動性能を調整することができる。このため、二重床構造100の施工の適用性を向上させることが可能となる。
【0075】
本実施形態によれば、床構成部6は、角形鋼管で構成される複数の第1部材1と、第1部材1の両端を下方から支持する一対の第1支持部材5と、第1部材1の端部から離間した位置に設けられ、支持スパンを調整するための調整部材8と、を有する。これにより、二重床構造100の固有振動数fを調整部材8により調整することができる。このため、第1部材1を構成する角形鋼管等の断面寸法を変更することなく、床振動性能を調整することができ、共振を抑制することができる。したがって、施工の適用性を高くすることが可能となる。
【0076】
本実施形態によれば、調整部材8は、第1部材1を下方から支持する第2支持部材5bで構成される。これにより、第2支持部材5bの配置位置に応じて、支持スパンL1を設定することができ、二重床構造100の固有振動数fを調整することができる。このため、第1部材1を構成する角形鋼管等の断面寸法を変更することなく、床振動性能を調整することができ、共振を抑制することができる。したがって、施工の適用性を高くすることが可能となる。
【0077】
次に、実施形態に係る二重床構造100の第2例について説明する。図8図10に示すように、第2例に係る二重床構造100は、複数の第1部材1を締結して接合する締結部材3を備える。
【0078】
締結部材3は、第1部材1の第1側板13に貫通される全ネジアンカー30aと、この全ネジアンカーに螺合されるナット30bで構成される。全ネジアンカーに代わり、両ネジアンカー、ボルト等のナット等が螺合される周知の締結部材が用いられてもよい。ナット30bは、第1側板13の外面側に配置される。締結部材3は、全ネジアンカー30bが隣り合う2本の第1部材1に貫通されて、これらを接合するものであってもよい。締結部材3は、全ネジアンカー30bが隣接する3本以上の第1部材1に貫通されて、これらを接合するものであってもよい。
【0079】
次に、固有振動数の計算の第2例について説明する。
【0080】
Case7~12の二重床構造は、5200mm×2400mmの部屋に、7本の角形鋼管を並べ、その上に20kg/mの板状部を重ねたものである。角形鋼管の断面は正方形状であり、角形鋼管同士を締結部材3により連結した。Case7~12の角形鋼管の両端には、第1支持部材を配置した。
【0081】
表3に、従来の固有振動数の調整方法である数式(2)により決定される固有振動数を示す。従来の固有振動数の調整方法では、数式(2)に示すように、第1部材1の材軸方向Xの長さL0に基づいて、固有振動数fが決定される。
【0082】
【表3】
【0083】
Case7~9では、何れも第1部材1として角形鋼管が用いられ、その両端に第1支持部材5aが設けられるものの、第1部材1に調整部材が設けられていない。このため、Case7~9では、支持スパンが部屋長辺寸法と同じであり、第1部材1の材軸方向の長さL0は、5200mmである。Case8は、Case7の角形鋼管よりも高さ寸法、幅寸法が大きく、肉厚はCase7と同じものである。Case9は、高さ寸法、幅寸法がCase7の角形鋼管と同じであり、肉厚がCase7の角形鋼管よりも厚いものである。
【0084】
表3に示すように、Case7、9では、固有振動数fが10Hz未満となり、目標値を満足しない。また、Case8では、固有振動数fが10Hz以上となるものの、部材断面が大きくなってしまい、施工に制限がある現場では、搬入することができないおそれがある。Case7~9に示すように、従来の手法では、調整部材8が設けられていないため、固有振動数を調整するためには、角形鋼管の断面寸法を変更するしかなく、施工の適用性が低いものであった。
【0085】
表4に、数式(1)により決定される固有振動数を示す。
【0086】
【表4】
【0087】
Case10~12では、何れも第1部材1として角形鋼管が用いられ、その両端に第1支持部材5aが設けられ、かつ、第1部材1の端部から500mm離間した位置に、調整部材8としての第2支持部材5bが2か所に設けられるものである。このため、Case10~12では、第1部材1の長手方向の長さL0は、部屋長辺寸法と同じく5200mmであるが、支持スパンL1は、2つの調整部材8の配置位置(M=500mm)に基づいて設定され、4200mmである。すなわち、支持スパンL1は、2つの第2支持部材5bの間の長さであり、第1部材1の材軸方向Xの長さL0未満である。
【0088】
Case10~12では、Case7の角形鋼管と同様の断面寸法のものを用いている。Case10は、角形鋼管の内部に充填部材が充填されていないものである。
【0089】
Case11は、角形鋼管の内部にコンクリートを充填したものである。コンクリートの圧縮強度は、60N/mmとした。Case11では、コンクリートが角形鋼管に接合されるため、曲げ剛性EIと単位長さ当たり重量ρAがCase7のものよりも大きくなる。
【0090】
Case12は、角形鋼管の内部に錘部材を充填したものである。錘部材の充填量は、角形鋼管と同じ重量とした。Case12では、錘部材が角形鋼管と独立されるため、曲げ剛性EIはCase10のものと同じであるものの、第1部材1の単位長さ当たりの重量ρAがCase10のものよりも大きくなる。
【0091】
Case10~12では、角形鋼管の断面寸法をCase7と同一としたものの、固有振動数fが10Hz以上を満たした。Case10~12では、調整部材8の配置位置に基づいて、第1部材1の長手方向の長さL0未満である支持スパンL1が設定され、数式(1)により固有振動数fが決定される。このため、角形鋼管の部材寸法を変更することなく、固有振動数fを調整することができる。したがって、床振動性能を調整することができ、施工の適用性を向上させることが可能となる。
【0092】
次に、二重床構造100で用いられる第1部材1の変形例について説明する。
【0093】
変形例に係る第1部材1では、図11図14に示すように、調整部材8は、第1部材の材軸方向に直交する方向に配置される仕切り板13で構成される。これにより、第1部材1の支持スパンL1を、第1部材1の材軸方向Xの長さL0未満とすることができる。
【0094】
図11に示すように、第1部材1は、材軸方向Xに複数に分割された角形鋼管であり、仕切り板13は、分割された角形鋼管に溶接される。また、第1部材1の上面には、開口部11が形成され、充填部材が充填されてもよい。このとき、仕切り板13は、充填部材の漏出を防止する機能を有する。
【0095】
図12に示すように、仕切り板13は、第1部材1に形成されたスリット14に挿入されてもよい。第1部材1の上面には、開口部11が形成され、充填部材が充填されてもよい。このとき、仕切り板13は、充填部材の漏出を防止する機能を有する。
【0096】
図13に示すように、第1部材1は、材軸方向Xに複数に分割された角形鋼管であり、分割された角形鋼管の端部に仕切り板13が溶接されて設けられる。第1部材1は、分割された角形鋼管の仕切り板13と、これに隣接する分割された角形鋼管の仕切り板13とは互いに接触されており、互いに接触された仕切り板13同士が図示しないボルト等の接合部材により接合される。
【0097】
図14に示すように、仕切り板13には、孔13aが形成されていてもよい。第1部材1は、両端に押さえプレート12が設けられる。仕切り板13に孔13aが形成されることにより、第1部材1の内部の全域に亘って充填部材を開口部12から充填することができる。このため、固有振動数fの調整範囲をより広くすることができる。その結果、施工の適用性を更に向上させることが可能となる。
【0098】
そして、床振動性能調整装置500では、固有振動数決定部13は、調整部材8が第1部材1の材軸方向Xに直交する方向に配置される仕切り板13であり、仕切り板13の配置位置に基づいて、支持スパンL1を設定し、固有振動数fを決定する。
【0099】
本実施形態によれば、固有振動数決定工程では、調整部材8が第1部材1の材軸方向Xに直交する方向に配置される仕切り板13であり、仕切り板13の配置位置に基づいて、支持スパンL1を設定し、固有振動数fを決定する。これにより、仕切り板13の配置位置に応じて、二重床構造100の床振動性能を調整することができる。このため、二重床構造100の施工の適用性を向上させることが可能となる。
【0100】
本実施形態によれば、調整部材8は、第1部材1の材軸方向Xに直交する方向に配置される仕切り板13で構成される。これにより、仕切り板13の配置位置に応じて、支持スパンL1を設定することができ、二重床構造100の固有振動数fを調整することができる。このため、第1部材1を構成する角形鋼管等の断面寸法を変更することなく、床振動性能を調整することができ、共振を抑制することができる。したがって、施工の適用性を向上させることが可能となる。
【0101】
本実施形態によれば、第1部材1は、材軸方向Xに複数に分割され、仕切り板13は、分割された角形鋼管に溶接される。これにより、材軸方向Xに分割された角形鋼管と仕切り板13とを現場において溶接することができる。このため、角形鋼管の材軸方向Xの長さを小さくして現場に搬入することができ、施工を容易に行うことができる。
【0102】
本実施形態によれば、仕切り板13は、第1部材1に形成されたスリット14に挿入される。これにより、溶接等の作業が不要となるため、施工を容易に行うことが可能となる。
【0103】
本実施形態によれば、第1部材1は、分割された角形鋼管の端部に仕切り板13がそれぞれ溶接され、互いに接触された仕切り板13同士が接合部材により接合される。これにより、材軸方向に分割された角形鋼管と仕切り板13とを現場において接合することができる。このため、角形鋼管の材軸方向Xの長さを小さくして現場に搬入することができ、施工を容易に行うことができる。
【0104】
本実施形態によれば、第1部材1の内部に充填部材が充填され、第1部材1の端部に、押さえプレート12が設けられ、仕切り板13には、孔13aが形成される。これにより、第1部材1の内部の全域に亘って充填部材を開口部12から充填することができる。このため、固有振動数fの調整範囲をより広くすることができる。その結果、施工の適用性を更に向上させることが可能となる。
【0105】
上述した実施形態では、床振動性能調整プログラムを例示したが、床振動性能調整方法として具現化されてもよい。また、上述した実施形態では、第1部材1は角形鋼管で構成されるものを例示したが、第1部材1は、H形鋼で構成されてもよい。
【0106】
以上、この発明の実施形態のいくつかを説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、これらの実施形態の各例は、適宜組み合わせて実施することが可能である。さらに、この発明は、上記いくつかの実施形態の各例の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記いくつかの実施形態の各例のそれぞれは、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
100 :二重床構造
1 :第1部材
18 :端部
19 :端部
1a :第1部材
1b :第1部材
2 :第2部材
4 :板状部
41 :構造用合板
42 :床仕上げ材
5 :支持部材
5a :支持部材
5b :支持部材
6 :床構成部
9 :スラブ
91 :構造躯体
92 :外壁
93 :梁
94 :戸境壁
98 :領域
B :幅寸法
X :材軸方向
Y :幅方向
Z :上下方向
p :軸心間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14