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特開2022-153183判定装置、締結装置、および、判定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153183
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】判定装置、締結装置、および、判定システム
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20221004BHJP
   B25B 21/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B25B23/14 620G
B25B23/14 610Y
B25B21/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056285
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大隈 友和
(72)【発明者】
【氏名】中西 純弥
(72)【発明者】
【氏名】重田 啓介
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038BC04
3C038CA06
3C038CC04
(57)【要約】
【課題】締結具の締結完了を判定する判定装置を提供する。
【解決手段】締結具を締結する締結工具の動作を判定する判定装置であって、検知した音を電気信号に変換する音検知部と、電気信号に基づいて、締結具の締結が終了したか否かを判定する判定部とを備える判定装置を提供する。判定装置は、判定部において締結が終了したと判定された場合に、締結工具の動作を停止させる動作制御部を更に備えてよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結具を締結する締結工具の動作を判定する判定装置であって、
検知した音を電気信号に変換する音検知部と、
前記電気信号に基づいて、前記締結具の締結が終了したか否かを判定する判定部と
を備える判定装置。
【請求項2】
前記判定部において締結が終了したと判定された場合に、前記締結工具の動作を停止させる動作制御部を更に備える
請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、20kHz以上の周波数帯の前記電気信号の成分に基づいて、前記締結が終了したか否かを判定する
請求項1または2に記載の判定装置。
【請求項4】
前記締結工具は、前記締結具の締結時に連続した打撃音を発生し、
前記判定部は、少なくとも一つの前記打撃音を含む期間の前記電気信号に基づいて、前記締結が終了したか否かを判定する
請求項1から3のいずれか一項記載の判定装置。
【請求項5】
前記判定部は、機械学習により生成された、前記電気信号から前記締結具のトルクを判定する判定モデルを用いて、前記締結具の締結が終了したか否かを判定する
請求項1から4のいずれか一項に記載の判定装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記締結具が締結する締結対象の種類に更に基づいて、前記締結が終了したか否かを判定する
請求項1から5のいずれか一項に記載の判定装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記締結具が締結する締結対象の種類毎に異なる前記判定モデルを用いて、前記締結具の締結が終了したか否かを判定する
請求項5に記載の判定装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記締結工具の種類に更に基づいて、前記締結が終了したか否かを判定する
請求項1から7のいずれか一項に記載の判定装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記締結具を締結しているときの前記締結工具の姿勢に更に基づいて、前記締結が終了したか否かを判定する
請求項1から8のいずれか一項に記載の判定装置。
【請求項10】
締結が完了した前記締結具が、建築物のいずれの場所の締結具であるかを記憶する場所記憶部を更に備える
請求項1から9のいずれか一項に記載の判定装置。
【請求項11】
前記音検知部は、検知した音をアナログ信号に変換し、
前記判定装置は、
前記アナログ信号のカットオフ周波数以下の成分を減衰させるハイパスフィルタと、
前記ハイパスフィルタを通過した前記アナログ信号を、デジタル信号に変換して、前記判定部に入力するAD変換部と
を更に備える請求項1から10のいずれか一項に記載の判定装置。
【請求項12】
前記カットオフ周波数が、4kHz以上、20kHz以下である
請求項11に記載の判定装置。
【請求項13】
前記AD変換部が出力する前記デジタル信号に対して、デジタルノイズを重畳する信号処理部を更に備える
請求項11または12に記載の判定装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の判定装置と、
前記締結工具と
を備える締結装置。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の判定装置と、
前記締結工具の使用者と対話する対話モジュールと、
前記判定部における判定結果と、前記対話モジュールの対話データとを対応付けて記憶する対話記憶部と
を備える判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定装置、締結装置、および、判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インパクトドライバのような電動の工具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2021-7999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電動の工具においては、作業が完了したか否かを検出できることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様においては、締結具を締結する締結工具の動作を判定する判定装置を提供する。判定装置は、検知した音を電気信号に変換する音検知部を備えてよい。判定装置は、電気信号に基づいて、締結具の締結が終了したか否かを判定する判定部を備えてよい。
【0005】
本発明の第二の態様においては、第一の態様に係る判定装置と、締結工具とを備える締結装置を提供する。
【0006】
本発明の第三の態様においては、第一の態様に係る判定装置と、締結工具の使用者と対話する対話モジュールと、判定部における判定結果と、対話モジュールの対話データとを対応付けて記憶する対話記憶部とを備える判定システムを提供する。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一つの実施形態に係る締結装置200の一例を示す模式図である。
図2】締結装置200により締結される締結具の一例を説明する図である。
図3】判定装置220の構成例を示す図である。
図4】判定モデルを生成する判定モデル学習装置310を説明する図である。
図5】判定装置220の動作例を示すフローチャートである。
図6】締結音の電気信号の波形の一例を示す図である。
図7】判定モデル記憶部260が記憶する判定モデルの一例を示す図である。
図8】判定モデル記憶部260が記憶する判定モデルの他の例を示す図である。
図9】判定システム232の構成例を示す図である。
図10】判定装置220の他の構成例を示す図である。
図11】判定装置220の他の構成例を示す図である。
図12】録音装置100の他の構成例を示す図である。
図13】ハイパスフィルタ110の構成例を示す回路図である。
図14】アナログ信号の周波数スペクトルと、ハイパスフィルタ110の周波数特性の一例を示す図である。
図15】アナログ信号に含まれる振動雑音の周波数スペクトルの例を示す図である。
図16】ハイパスフィルタ110に入力されるアナログ信号の時間波形の一例を示す図である。
図17】ハイパスフィルタ110が出力するアナログ信号の時間波形の一例を示す図である。
図18】信号処理部130が重畳するデジタルノイズの一例を示す図である。
図19】デジタルノイズが重畳されたデジタル信号の時間波形の一例を示す図である。
図20】判定装置220の回路が搭載された回路基板360の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る締結装置200の一例を示す模式図である。締結装置200は、ネジ、ボルト等の締結具を締結する。締結装置200は、締結工具210と、判定装置220とを備える。締結工具210は、例えばインパクトドライバであるが、これに限定されない。締結工具210は、電力等のエネルギーで締結具を回転させて、締結具を締結する。
【0011】
本例の締結工具210は、筐体211、接続部212、操作部213、把持部214および台座部215を備える。筐体211は、締結工具210の各部品を収容する。筐体211は、例えばモーター等の部品を収容する。
【0012】
接続部212は、筐体211に設けられ、締結具に直接的または間接的に接続される。接続部212には、締結具の種類に応じて交換可能なアダプタが接続されてよい。接続部212は、モーター等により発生させた動力により締結具を回転させる。
【0013】
操作部213は、締結装置200の使用者により操作される。操作部213に対する操作に応じて、筐体211内のモーター等の部品が動作して、締結具を締結する。操作部213は、押下可能なトリガーであってよい。
【0014】
把持部214は、締結動作時に、使用者により把持されるべき部分である。台座部215には、判定装置220が固定される。台座部215は、判定装置220との間で電気信号を入出力できる端子を有してよい。本例の台座部215は、把持部214の先端に設けられている。
【0015】
判定装置220は、台座部215に固定されるケースを有してよい。ケース内には、締結工具210と電気的に接続される回路が収容される。ケース内には、締結工具210に電力を供給する電源が設けられてよい。
【0016】
判定装置220は、締結工具210の動作を判定する。判定装置220は、締結工具210の締結動作時に検知された音に基づいて、締結具の締結が完了したか否かを判定する。判定装置220は、判定結果に基づいて、締結工具210の動作を制御してよい。例えば判定装置220は、締結具の締結が完了したと判定された場合に、締結工具210による締結動作を停止させてよい。判定装置220は、締結具を回転させるモーターを制御してよい。
【0017】
図2は、締結装置200により締結される締結具の一例を説明する図である。締結具は、建築物300を構成する部材間を締結するのに用いられてよい。建築物300は、例えば、基礎305、柱301および梁302を備える。基礎305は、地面に固定された部材である。基礎305は、コンクリートで形成されてよい。柱301は、一方の端部が地面または基礎305に固定される。柱301は、地面または基礎305に固定される固定部303を有してよい。梁302は、両方の端部が、地面または基礎305以外に固定される部材である。梁302の端部は、柱301または他の梁302に固定されてよい。および梁302は、鉄で形成されてよい。柱301および梁302は木材であってよく、他の材料で形成されていてもよい。
【0018】
それぞれの部材は、締結具304により互いに固定されている。締結具304は、例えばボルトのように、回転することで締結される部材であってよい。建築物300には、複数の箇所に締結具304が使用される。
【0019】
図3は、判定装置220の構成例を示す図である。判定装置220は、録音装置100および判定部240を備える。判定装置220は、動作制御部250および判定モデル記憶部260の少なくともいずれかを更に備えてよい。
【0020】
録音装置100は、音検知部10を含み、検知した音を記録する。音検知部10は、検知した音をアナログの電気信号(単にアナログ信号と称する場合がある)に変換して出力する。音検知部10は、例えばマイクロホンのように、音圧を検知して、音圧波形に応じたアナログ信号を出力する。
【0021】
録音装置100は、締結工具210の締結動作中の音を記録することが好ましい。録音装置100は、操作部213が操作されたか否かにより、検知した音を記録するか否かを切り替えてよい。録音装置100は、締結工具210が締結動作を開始してから、締結動作を終了するまでの音を記録してよい。音検知部10も、操作部213の操作に応じて、音を検知するか否かを切り替えてよい。
【0022】
判定部240は、音検知部10が出力し、録音装置100により記録された電気信号に基づいて、締結具304の締結が完了したか否かを判定する。判定部240は、予め作成された判定モデルを用いて、締結具304の締結が完了したか否かを判定してよい。判定モデルは、機械学習により作成されたモデルであってよく、設計者等により判定基準および判定アルゴリズムが作成されたモデルであってもよい。本例の判定装置220は、一つ以上の判定モデルを記憶した判定モデル記憶部260を有する。
【0023】
締結具304の締結が完了しておらず、締結具304が小さいトルクで回転している状態と、締結具304の締結が完了して、締結具304に大きなトルクを加えても回転しない状態では、締結具304および締結工具210から発生する締結音が変化する。本例では、締結具304および締結工具210から発生する締結音に基づいて、締結具304の締結が完了したか否かを判定する。これにより、簡易な構成で、締結具304の締結状態を判定できる。
【0024】
判定装置220は、締結具304の締結が完了していないにも関わらず、操作部213により締結工具210の締結動作が終了した場合、その旨を締結工具210の使用者に通知してよい。また、判定装置220は、締結が完了していない締結具304の識別情報を記録してもよい。締結具304の識別情報は、例えば建築物300内において、締結具304が設けられている位置を示す情報を含む。
【0025】
動作制御部250は、判定部240において締結が終了したと判定された場合に、締結工具210の動作を停止させる。動作制御部250は、締結が終了したと判定された場合に、操作部213の操作状態によらず、締結工具210の締結動作を停止させる。これにより、締結具304の締結を効率よく行える。
【0026】
図4は、判定モデルを生成する判定モデル学習装置310を説明する図である。判定モデル学習装置310は、演算装置を含む。判定モデル学習装置310は、判定装置220に含まれてよく、判定装置220の外部に設けられたコンピュータであってもよい。
【0027】
判定モデル学習装置310には、複数の教師データが入力され、教師データに基づいて判定モデルを生成する。本例の判定モデル学習装置310には、教師データとして、締結音データと、トルクデータとの組み合わせが入力される。
【0028】
締結音データは、締結具304を締結したときの締結音のデータである。締結音データは、締結音の波形データであってよく、締結音の波形から抽出した特徴量データであってもよい。特徴量は、例えばピークの振幅、ピークの間隔、ピークの幅等を含んでよい。トルクデータは、締結後の締結具304の締付トルクを測定したデータである。締付トルクは、締結具304を締結方向とは逆方向に回転させ始めるのに要したトルクであってよい。トルクデータは、締付トルクが一定以上であるか否かを示すデータであってもよい。
【0029】
判定モデル学習装置310は、教師データに基づいて、締結音データから締付トルクを推定する判定モデルを生成する。本例の判定モデルは、締結音の電気信号の特徴量データから、締結具304の締付トルクの値を推定する。例えば判定モデル学習装置310は、ランダムフォレスト回帰法により判定モデルを生成するが、機械学習の方法はこれに限定されない。
【0030】
図5は、判定装置220の動作例を示すフローチャートである。まず、音検知部10が締結音を取得する(S501)。録音装置100は、音検知部10が出力する電気信号における所定の周波数成分を抽出する(S502)。録音装置100は、例えば20kHz以上の周波数帯の電気信号の成分を抽出してよい。
【0031】
フィルタリング段階S502におけるカットオフ周波数は、人の音声を除去できる周波数であってよい。カットオフ周波数は、例えば4kHz以上の周波数である。人の音声の主成分は、概ね2kHz以下である。カットオフ周波数を4kHz以上の周波数に設定することで、人の音声の大部分を除去できる。このため、音声に含まれ得る個人情報、機密情報を除去した音データを録音できる。また、カットオフ周波数は、例えば20kHz以下の周波数である。これにより、締結装置200が動作したときに生じる締結音を録音できる。締結音は、例えばネジ、ボルト等の金属部品が、こすれ、または、ぶつかる音である。カットオフ周波数は、4kHz以上、20kHz以下の範囲で変更可能であってよい。
【0032】
次に、録音装置100は、アナログの電気信号をデジタル信号に変換する(S503)。次に、判定部240は、デジタル信号波形の特徴量を抽出する(S504)。次に、判定部240は、抽出した特徴量と、所定の判定モデルを用いて、締結具304の状態を判定する(S505)。本例の判定部240は、20kHz以上の周波数帯のデジタル信号の成分に基づいて、締結具304の締結が終了したか否かを判定する。
【0033】
判定段階S505において締結が終了したと判定した場合(Y)、動作制御部506は、締結動作を停止させるための停止信号を、締結工具210に出力する(S506)。これにより、締結工具210の締結動作が完了する。また、判定段階S505において締結が完了していないと判定した場合(N)、S501からの処理を繰り返してよい。締結が完了していないにも関わらず、操作部213に対する操作により既に締結動作が終了している場合、判定部240は、この締結具304に対する締結は完了していない旨を使用者に通知してよく、メモリに記憶してもよい。この場合も、判定装置220は処理を終了する。
【0034】
図6は、締結音の電気信号の波形の一例を示す図である。本例の締結工具210は、締結具304の締結時に連続した打撃音を発生するインパクトドライバである。電気信号波形は、打撃音に対応する複数のピーク601を有する。判定部240は、ピーク601の振幅M、幅W、および、ピーク601間の間隔Tの少なくとも一つを特徴量として抽出してよい。また、判定部240は、電気信号の周波数スペクトルにおいて、所定の帯域のパワーを特徴量として用いてもよい。判定部240は、複数の帯域のパワーを特徴量として用いてよい。例えば判定部240は、予め定められた帯域(例えば0kHz-48kHz)のうちの全帯域のパワーと、複数の部分帯域(例えば、20kHz-34kHz、34kHz-48kHz)のパワーを特徴量として用いてよい。
【0035】
また、判定部240は、デジタル信号に対して所定の窓関数を適用して、FFTにより周波数スペクトルを生成してよい。窓関数で示される窓の時間幅は、少なくとも一つの打撃音を含む期間である。窓の時間幅は、複数のピーク601を含んでもよい。窓の開始点t1は、ピーク601の直後であってよく、ピーク601に対して所定の時間間隔を有する点であってもよい。図6における窓は方形であるが、他の形状の窓を用いてもよい。
【0036】
図7は、判定モデル記憶部260が記憶する判定モデルの一例を示す図である。本例の判定モデル記憶部260は、締結対象の種類毎に異なる判定モデルを記憶する。締結対象とは、締結具304により締結される部材、または、締結される部材の組み合わせである。例えば図2の例では、締結対象として柱301、梁302、基礎305、および、これらの組み合わせが挙げられる。また、締結対象は、各部材における位置毎に異なっていてもよい。例えば、柱301の脚部(図2の固定部303)である柱脚と、柱301の頭部である柱頭は、異なる締結対象として扱ってよい。また、部材の用途が同一であっても、部材の材料が異なる場合には、異なる締結対象として扱ってよい。
【0037】
締結対象の種類毎に、締結動作時の締結音は異なり得る。このため、判定部240が、締結対象の種類毎に異なる判定モデルを用いて締結具304の締結が終了したか否かを判定することで、締結具304の締結が完了したか否かを、より精度よく判定できる。判定モデル記憶部260は、締結対象の種類が判別できない場合に用いるべき、汎用の判定モデルを更に記憶してもよい。
【0038】
判定モデル記憶部260は、締結具304の種類毎に、異なる判定モデルを記憶してもよい。締結具304の形状、大きさ、材料の少なくとも一つが異なる場合に、締結具304の種類が異なるとしてよい。
【0039】
締結対象の種類、締結具304の種類は、使用者から判定装置220に指示されてよい。使用者は、音声によって当該指示を入力してよく、選択式のボタン等の他の方法により当該指示を入力してもよい。判定モデル学習装置310は、締結対象の種類、締結具304の種類毎に判定モデルを生成してよい。
【0040】
図8は、判定モデル記憶部260が記憶する判定モデルの他の例を示す図である。本例の判定モデル記憶部260は、締結工具210の種類毎に異なる判定モデルを記憶する。動作時の締結音が異なる締結工具210を、異なる種類の締結工具210として扱ってよい。また、締結工具210のメーカー、および、締結工具210の商品名の少なくとも一方を、締結工具210の種類として用いてよい。判定モデル記憶部260は、締結工具210の種類が判別できない場合に用いる、汎用の判定モデルを更に記憶してもよい。判定モデル学習装置310は、締結工具210の種類毎に判定モデルを生成してよい。
【0041】
締結工具210の種類は、判定装置220が検出してよい。判定装置220は、締結工具210が接続された場合に、締結工具210の種類を示す信号を受信してよい。締結工具210の種類毎に、締結動作時の締結音は異なり得る。このため、判定部240が、締結工具210の種類毎に異なる判定モデルを用いて締結具304の締結が終了したか否かを判定することで、締結具304の締結が完了したか否かを、より精度よく判定できる。
【0042】
図9は、判定システム232の構成例を示す図である。判定システム232は、図1から図8において説明した判定装置220に加えて、対話モジュール350を更に備える。対話モジュール350は、判定装置220のケース外に設けられる。対話モジュール350は、締結工具210の使用者に携帯される装置である。対話モジュール350は、使用者に携帯される電話等の通信デバイスに組み込まれたソフトウェアであってもよい。
【0043】
対話モジュール350は、締結工具210の使用者と対話形式で、情報を入出力する。対話モジュール350は、予め設定された質問および回答の音声を、使用者の音声に従って出力してよい。
【0044】
本例の対話モジュール350は、締結具304の締結対象を示す使用者の音声を検出する。対話モジュール350は、締結具304の締結対象を問い合わせる質問を、使用者に出力してよい。
【0045】
対話モジュール350は、締結具304の締結対象を示す情報を、判定部240に通知する。対話モジュール350は、近距離無線通信によって、当該情報を判定部240に送信してよい。判定部240は、当該情報に基づいて判定モデルを選択してよい。
【0046】
図10は、判定装置220の他の構成例を示す図である。本例の判定装置220は、図1から図9において説明したいずれかの構成に加えて、場所記憶部270を備える。他の構成は、図1から図9において説明した構成と同様である。また、判定装置220は、対話モジュール350と通信可能であってよい。
【0047】
場所記憶部270は、判定部240により締結が完了したと判定された締結具304が、建築物300のいずれの場所の締結具304であるかを記憶する。場所記憶部270には、建築物300に含まれる全ての締結具304が予め登録されてよい。場所記憶部270は、それぞれの締結具304について、締結が完了したか否かを記憶する。場所記憶部270は、判定部240の判定結果に応じて、それぞれの締結具304の状態を更新してよい。場所記憶部270は、建築物300の場所ごとに、締結されるべき締結具304の本数と、締結完了した締結具304の本数とを記憶してよい。
【0048】
判定部240は、音検知部10が検知した締結音が、いずれの締結具304の締結音であるかを、対話モジュール350からの情報に基づいて判定してよい。対話モジュール350は、締結工具210の使用者から、いずれの締結具304を締結するかを示す音声が入力されてよい。当該音声は、例えば締結具304の識別情報を含んでよく、締結具304が締結する部材の識別情報を含んでもよい。対話モジュール350は、締結具304または部材の識別情報を問い合わせる質問を、使用者に出力してよい。
【0049】
判定部240は、場所記憶部270が記憶した情報に基づいて、まだ締結が完了していない締結具304を示す情報を、締結工具210の使用者に提示してよい。判定部240は、対話モジュール350を介して当該情報を提示してよく、他の方法で当該情報を提示してもよい。例えば判定部240は、使用者が携帯している表示デバイスに当該情報を表示させてよい。
【0050】
場所記憶部270は、判定部240における判定結果と、対話モジュール350の対話データとを対応付けて記憶する対話記憶部として機能してもよい。場所記憶部270は、対話データのうち、いずれの締結具304を締結するかを示す情報を抽出して記憶してもよい。
【0051】
図11は、判定装置220の他の構成例を示す図である。本例の判定装置220は、図1から図10において説明したいずれかの構成に加えて、姿勢検知部280を備える。他の構成は、図1から図10において説明した構成と同様である。また、判定装置220は、対話モジュール350と通信可能であってよい。
【0052】
姿勢検知部280は、締結具304を締結しているときの、締結工具210の姿勢を検知する。締結工具210の姿勢とは、接続部212が、いずれの方向を向いているかを示す3次元の情報であってよい。
【0053】
判定部240は、締結具304を締結しているときの締結工具210の姿勢に基づいて、締結が終了したか否かを判定してよい。判定部240は、当該姿勢に基づいて、用いる判定モデルを選択してよく、特徴量を補正してもよい。
【0054】
判定部240は、締結工具210の姿勢により、締結具304の締結対象を推定してよい。例えば、接続部212が下を向いている場合、判定部240は、固定部303を基礎305に締結していると判定してよい。判定部240は、推定した締結対象に基づいて、判定モデルを選択してよい。
【0055】
また、締結工具210の姿勢により、締結工具210または締結具304から発生する締結音は変化し得る。例えば締結具304の下方から締結工具210が上向きに接続される場合と、締結具304の上方から締結工具210が下向きに接続される場合とでは、締結具304に印加される締結工具210の重みが変化する。このため、締結音も変化し得る。判定部240は、締結工具210の姿勢に基づいて、判定モデルを選択してよく、特徴量を補正してもよい。特徴量をどのように補正すべきかは、締結工具210の姿勢毎に測定した締結音の特徴量の相違に基づいて、予め決定してよい。
【0056】
図12は、録音装置100の他の構成例を示す図である。本例の録音装置100は、図1から図11において説明した録音装置100の構成に加えて、ハイパスフィルタ110、AD変換部120、信号処理部130、制御部140、通信部150および記憶媒体20を備える。記憶媒体20は、判定装置220の外部に設けられた装置であってもよい。記憶媒体20は、音データに対して専用に設けられたメモリであってよく、他のデータも記憶するメモリであってもよい。
【0057】
ハイパスフィルタ110は、音検知部10が出力したアナログ信号に対して、所定のカットオフ周波数以下の成分を減衰させて出力する。カットオフ周波数は、人の音声を除去できる周波数であってよい。カットオフ周波数は、例えば4kHz以上の周波数である。人の音声は、概ね1kHz~4kHzである。カットオフ周波数を4kHz以上の周波数に設定することで、人の音声の大部分を除去できる。このため、音声に含まれ得る個人情報、機密情報を除去した音データを録音できる。また、カットオフ周波数は、20kHz以下の周波数である。これにより、締結工具210が動作したときに生じる締結音を録音できる。締結音は、例えばネジ、ボルト等の金属部品が、こすれ、または、ぶつかる音である。カットオフ周波数は、4kHz以上、20kHz以下の範囲で変更可能であってよい。
【0058】
AD変換部120は、ハイパスフィルタ110が出力したアナログ信号を、所定のビット数のデジタル信号に変換する。AD変換部120は、所定の周期でアナログ信号をサンプリングして、時系列のデジタル信号を出力する。本例によれば、AD変換部120の前にハイパスフィルタ110が配置されている。このため、AD変換部120に入力されるアナログ信号の振幅を小さくできる。従って、デジタル信号におけるデジタル値の範囲を、比較的に小さい振幅に割り当てることができ、デジタル信号における振幅分解能を向上できる。このため、対象の信号を高精度に録音できる。
【0059】
信号処理部130は、AD変換部120が出力するデジタル信号に対して所定の処理を行う。信号処理部130は、例えばデジタル信号に対して所定の演算を行い、デジタルフィルタ処理を行ってよい。信号処理部130は、デジタル信号に対して、ハイパスフィルタ110のカットオフ周波数以下の周波数成分を低減させてよい。これにより、人の音声をより確実に除去できる。
【0060】
信号処理部130は、所定の処理を行ったデジタル信号を、判定部240に出力してよい。信号処理部130は、所定の処理を行ったデジタル信号を、記憶媒体20に記憶してよい。また、信号処理部130は、所定の処理を行ったデジタル信号を、通信部150を介して、判定装置220の外部に送信してもよい。
【0061】
制御部140は、信号処理部130の動作を制御する。制御部140は、信号処理部130のデジタルフィルタ処理におけるカットオフ周波数を調整してよい。制御部140は、信号処理部130を制御して、デジタル信号を記憶媒体20に記憶させてよく、デジタル信号を外部に送信させてもよい。制御部140は、使用者等から入力される指示に応じて、信号処理部130の動作を制御してよい。
【0062】
通信部150は、信号処理部130から指定された信号を外部に送信する。通信部150は、信号処理部130が処理したデジタル信号を、外部に送信してよい。通信部150は、デジタル信号を外部のサーバーに送信してよい。当該サーバーは、デジタル信号に含まれる音の情報を解析してよい。サーバーは、図4において説明した判定モデル学習装置310として機能してよい。本例によれば、通信部150が外部に送信するデジタル信号には、人の音声の情報がほとんど含まれない。このため、個人情報または機密情報の漏洩を防ぐことができる。
【0063】
ハイパスフィルタ110は、次数およびカットオフ周波数等の特性が可変であってよい。制御部140は、ハイパスフィルタ110の特性を制御してよい。
【0064】
例えば制御部140は、音検知部10が出力するアナログ信号の振幅に応じて、ハイパスフィルタ110のカットオフ周波数を制御してよい。制御部140は、アナログ信号の振幅が大きいほど、カットオフ周波数を高く制御してよい。制御部140は、アナログ信号の振幅が大きいほど、ハイパスフィルタ110の次数を高く制御してよい。これにより、アナログ信号から除去される成分が増大するので、AD変換部120に入力されるアナログ信号の振幅を抑制できる。制御部140は、AD変換部120が出力するデジタル信号に応じて、ハイパスフィルタ110のカットオフ周波数または次数を制御してもよい。制御部140は、デジタル信号の値が飽和した(すなわち、デジタル信号が最大値となった)場合に、ハイパスフィルタ110のカットオフ周波数をより高い値に設定し、または、次数をより高い次数に設定してよい。これにより、デジタル信号の値が飽和することを抑制できる。
【0065】
図13は、ハイパスフィルタ110の構成例を示す回路図である。本例のハイパスフィルタ110は、入力部11、第1コンデンサ111、第2コンデンサ112、コイル113、抵抗114、および、出力部121を備える。入力部11は、音検知部10からアナログ信号が入力される端子である。出力部121は、AD変換部120にアナログ信号を出力する端子である。
【0066】
第1コンデンサ111および第2コンデンサ112は、入力部11および出力部121の間に直列に設けられる。コイル113は、第2コンデンサ112および出力部121の接続ノードと、基準電位との間に設けられる。基準電位は、例えばグランド電位である。抵抗114は、第2コンデンサ112および出力部121の接続ノードと、基準電位との間に設けられる。コイル113と抵抗114は、互いに並列に設けられている。このような構成によりハイパスフィルタ110は、高周波成分を出力部121に通過させ、低周波成分をコイル113および抵抗114を介して基準電位に出力する。
【0067】
ハイパスフィルタ110は、スイッチ115、スイッチ116、スイッチ117およびスイッチ118の少なくとも一つを備えてよい。スイッチ115は、第1コンデンサ111と並列に設けられ、第1コンデンサ111の両端を接続するか否かを切り替える。つまりスイッチ115は、入力部11から伝送されたアナログ信号を、第1コンデンサ111に通過させるか、スイッチ115に迂回させるかを切り替える。
【0068】
スイッチ116は、第2コンデンサ112と並列に設けられ、第2コンデンサ112の両端を接続するか否かを切り替える。つまりスイッチ116は、入力部11から伝送されたアナログ信号を、第2コンデンサ112に通過させるか、スイッチ116に迂回させるかを切り替える。
【0069】
スイッチ117は、コイル113と直列に設けられ、入力部11から伝送されたアナログ信号の成分を、コイル113を介して基準電位に出力させるか否かを切り替える。スイッチ118は、抵抗114と直列に設けられ、入力部11から伝送されたアナログ信号の成分を、抵抗114を介して基準電位に出力させるか否かを切り替える。
【0070】
制御部140は、それぞれのスイッチを制御してよい。それぞれのスイッチを制御することで、ハイパスフィルタ110の次数およびカットオフ周波数を調整できる。図13の例のハイパスフィルタ110は、コンデンサおよびスイッチの組み合わせを直列に2組備えている。他の例では、ハイパスフィルタ110は、コンデンサおよびスイッチの組み合わせを直列に3組以上備えてもよい。
【0071】
第1コンデンサ111の容量をC1[F]、第2コンデンサ112の容量をC2[F]、コイル113の容量をL[H]、抵抗114の抵抗値をR[Ω]とする。それぞれのスイッチのオン抵抗、および、配線等における寄生成分は無視できるほど小さいとする。
【0072】
スイッチ115およびスイッチ116がオン、スイッチ117およびスイッチ118がオフの場合、ハイパスフィルタ110はバイパスモードとなり、入力部11から出力部121までの伝達関数は1となる。従って、アナログ信号の周波数特性は変化しない。
【0073】
スイッチ115がオフ、スイッチ116がオン、スイッチ117がオフ、スイッチ118がオンの場合、ハイパスフィルタ110は一次フィルタとして機能し、カットオフ周波数fcは下式となる。
fc=1/(2π×(C1×R))
【0074】
スイッチ115がオフ、スイッチ116がオン、スイッチ117がオン、スイッチ118がオフの場合、ハイパスフィルタ110は二次フィルタとして機能し、カットオフ周波数fcは下式となる。
fc=1/(2π×(C1×L)0.5
【0075】
スイッチ115がオン、スイッチ116がオフ、スイッチ117がオフ、スイッチ118がオンの場合、ハイパスフィルタ110は一次フィルタとして機能し、カットオフ周波数fcは下式となる。
fc=1/(2π×(C2×R))
【0076】
スイッチ115がオン、スイッチ116がオフ、スイッチ117がオン、スイッチ118がオフの場合、ハイパスフィルタ110は二次フィルタとして機能し、カットオフ周波数fcは下式となる。
fc=1/(2π×(C2×L)0.5
【0077】
スイッチ115がオフ、スイッチ116がオフ、スイッチ117がオフ、スイッチ118がオンの場合、ハイパスフィルタ110は一次フィルタとして機能し、カットオフ周波数fcは下式となる。ただし、C1とC2の直列合成容量をC3とする。
fc=1/(2π×(C3×R))
【0078】
スイッチ115がオフ、スイッチ116がオフ、スイッチ117がオン、スイッチ118がオフの場合、ハイパスフィルタ110は二次フィルタとして機能し、カットオフ周波数fcは下式となる。
fc=1/(2π×(C3×L)0.5
【0079】
このように、各スイッチを制御することで、ハイパスフィルタ110の次数およびカットオフ周波数を制御できる。本例では、ハイパスフィルタ110がシングルエンド回路の例を説明したが、ハイパスフィルタ110は全作動回路であってもよい。ハイパスフィルタ110の具体的回路は本例に限定されない。
【0080】
また、ハイパスフィルタ110は、図13に示すように受動素子で構成され、増幅器等の能動素子を含まないことが好ましい。受動素子のみでハイパスフィルタ110を構成することで、ハイパスフィルタ110が出力するアナログ信号の振幅が増幅されることを防げる。このため、AD変換部120に入力するアナログ信号の振幅を抑制できる。
【0081】
図14は、アナログ信号の周波数スペクトルと、ハイパスフィルタ110の周波数特性の一例を示す図である。図14における横軸は周波数を示し、縦軸はスペクトル強度を示す。本例のハイパスフィルタ110は、二次フィルタとして機能している。ハイパスフィルタ110のカットオフ周波数をfcとする。カットオフ周波数fcは、ゲインが-6dBとなる周波数である。
【0082】
本例のアナログ信号は、録音対象である対象信号の周波数成分と、発話ノイズの周波数成分とを含む。本例の対象信号は、締結工具210または締結具304が発生する締結音である。本例の対象信号のスペクトルのピーク周波数は、20kHzより大きい。発話ノイズは、人の音声によるノイズである。発話ノイズのスペクトルは、主に1kHz~4kHzの帯域に分布している。発話ノイズのスペクトルのピーク周波数は、4kHzより小さい。
【0083】
カットオフ周波数fcは、発話ノイズのスペクトルのピーク周波数より高いことが好ましい。カットオフ周波数fcは、4kHz以上である。カットオフ周波数fcは、発話ノイズのスペクトルの上端周波数より大きくてよい。例えばカットオフ周波数fcは、10kHz以上であってもよい。ただし、カットオフ周波数fcは、対象信号のピーク周波数より低いことが好ましい。例えばカットオフ周波数fcは、20kHz以下である。対象信号のピーク周波数をf1、対話ノイズのピーク周波数をf2とする。カットオフ周波数fcは、ピーク周波数f1およびピーク周波数f2の中間周波数に設定されてよく、中間周波数±5kHzの範囲内に設定されてよく、中間周波数±3kHzの範囲内に設定されてよく、中間周波数±1kHzの範囲内に設定されてもよい。これにより、対象信号の成分を残留させることと、発話ノイズの成分を除去することを両立しやすくなる。制御部140は、アナログ信号に含まれる発話ノイズ等のノイズ成分のピーク周波数と、対象信号のピーク周波数とに基づいて、ハイパスフィルタ110のカットオフ周波数fcを設定してよい。制御部140は、ハイパスフィルタ110をバイパスモードに設定した状態でアナログ信号をAD変換部120に入力し、信号処理部130に周波数スペクトルを解析させてよい。
【0084】
発話ノイズは、使用者等の会話が含まれている。使用者の会話には、使用者自身または他人の個人情報、および、業務上の機密情報が含まれ得る。本例の録音装置100によれば、このような個人情報および機密情報が含まれる発話ノイズを除去した信号を記録できる。
【0085】
図15は、アナログ信号に含まれる振動雑音の周波数スペクトルの例を示す図である。アナログ信号には、振動雑音成分に加えて、図14に示した発話ノイズ成分および対象信号成分が含まれてよい。図15では、発話ノイズ成分を省略している。
【0086】
振動雑音は、例えば工具の振動により生じる音である。振動雑音のスペクトルは、主に1kHz~3kHzに分布している。ハイパスフィルタ110のカットオフ周波数fcを4kHz以上に設定することで、振動雑音成分も除去できる。
【0087】
図16は、ハイパスフィルタ110に入力されるアナログ信号の時間波形の一例を示す図である。アナログ信号には、対象信号の成分と、発話ノイズ等のノイズ成分が含まれている。信号振幅はこれらの成分の和になるので、信号振幅が大きい。
【0088】
図17は、ハイパスフィルタ110が出力するアナログ信号の時間波形の一例を示す図である。当該アナログ信号からは、発話ノイズ等のノイズ成分が除去されている。このため、対象信号成分が周期的に観察され、また、全体的な振幅が小さくなっている。当該アナログ信号をAD変換部120に入力するので、AD変換部120の各ビットを効率よく利用して、振幅方向の分解能を向上できる。
【0089】
信号処理部130は、AD変換部120が出力するデジタル信号に対して所定の処理を行う。信号処理部130は、デジタル信号に対してデジタルフィルタ処理を行ってよい。当該デジタルフィルタは、通過帯域と阻止帯域との間の過渡領域において、ゲインが最小値から最大値まで直線的に変化する特性を有してよい。デジタルフィルタの境界周波数fbは、ハイパスフィルタ110のカットオフ周波数fcと一致していてよく、カットオフ周波数fcより小さくてよく、大きくてもよい。
【0090】
一例として、ハイパスフィルタ110の伝達関数gA(f)は下式となる。
gA(f)=f×(1+(2π×(f/fc))
また、デジタルフィルタの伝達関数gD(f)は下式となる。なお、過渡領域の帯域をfb1~fb2とする。
f<fb1において、
gD(f)=1/A ただし、Aは設定される定数。
f≧fb2において、
gd(f)=(1+(2π×(f/fc)))/f
【0091】
また信号処理部130は、AD変換部120が出力するデジタル信号に対して、デジタルノイズを重畳してもよい。信号処理部130は、発話ノイズの成分が解析できないように、発話ノイズの成分の周波数帯域の少なくとも一部に、デジタルノイズを重畳することが好ましい。
【0092】
図18は、信号処理部130が重畳するデジタルノイズの一例を示す図である。図18においては、デジタルノイズが重畳されたデジタル信号の周波数スペクトルと、ハイパスフィルタ110の周波数特性を示している。デジタル信号には、デジタルノイズの成分と、対象信号の成分が含まれる。
【0093】
信号処理部130は、ハイパスフィルタ110のカットオフ周波数fc以下の周波数帯域の少なくとも一部に、デジタルノイズを重畳する。信号処理部130は、カットオフ周波数fc以下の周波数帯の全体に、デジタルノイズを重畳してもよい。信号処理部130は、カットオフ周波数fcよりも大きい周波数帯域にも、デジタルノイズを重畳してよい。例えば信号処理部130は、カットオフ周波数fcと、対象信号のスペクトルのピーク周波数との間の帯域の少なくとも一部に、デジタルノイズを重畳してもよい。
【0094】
信号処理部130は、発話ノイズのスペクトルのピーク周波数を含む帯域にデジタルノイズを重畳してよい。信号処理部130は、デジタルフィルタの過渡領域の下限周波数fb1以下の帯域にデジタルノイズを重畳してよく、上限周波数fb2以下の帯域にデジタルノイズを重畳してもよい。
【0095】
信号処理部130は、1kHz以上の帯域にデジタルノイズを重畳してよい。これにより、発話ノイズの帯域のほぼ全体にわたって、デジタルノイズを重畳できる。信号処理部130は、0.5kHz以上の帯域にデジタルノイズを重畳してよく、0Hz以上の帯域にデジタルノイズを重畳してもよい。
【0096】
デジタルノイズを重畳することで、記録するデジタル信号からは、発話ノイズの内容を解析することが困難となる。デジタルノイズは、いわゆるホワイトノイズであってよい。つまりデジタルノイズは、ノイズ重畳の対象となる帯域の全体にわたって、スペクトル強度がほぼ一定となるノイズであってよい。例えばデジタルノイズは、スペクトル強度の変動幅が、スペクトル強度の平均値の±3dBの範囲内であってよい。信号処理部130は、デジタルノイズを重畳する前のデジタル信号を、判定部240に出力してよい。信号処理部130は、デジタルノイズを重畳した後のデジタル信号を、通信部150または記憶媒体20に出力してよい。
【0097】
図19は、デジタルノイズが重畳されたデジタル信号の時間波形の一例を示す図である。本例の波形は、図17に示した波形に対して、デジタルノイズ成分が重畳されている。デジタルノイズ成分の振幅は、対象信号成分の振幅より小さくてよく、大きくてもよい。
【0098】
本例によれば、AD変換部120よりも後段においてデジタルノイズを重畳するので、AD変換部120に入力するアナログ信号の振幅は増大しない。そして、デジタルノイズを重畳することで、音声情報を秘匿化できる。通信部150は、音声情報が秘匿化された信号を外部に送信できる。また、記憶媒体20は、音声情報が秘匿化された信号を記録できる。
【0099】
図20は、判定装置220の回路が搭載された回路基板360の一例を示す図である。回路基板360には、判定装置220以外の回路も設けられてよい。
【0100】
回路基板360には、防振材380が設けられる。防振材380は、回路基板360よりも弾性率が低い材料で形成される。例えば防振材380は、シリコンゲルで形成されている。防振材380は、回路基板360と、回路基板360が収容される筐体の壁との間に配置されている。本例の防振材380は、回路基板360の一部分を周回するように設けられている。これにより、音検知部10の振動を抑制して、アナログ信号における振動成分を抑制できる。
【0101】
防振材380は、回路基板360に対して複数設けられてよい。また、防振材380は、複数の回路基板360に対して共通に設けられてもよい。本例では、複数の回路基板360が積層して設けられている。2つの回路基板360の間には、支持部370が配置されている。支持部370は、2つの回路基板360の間隔を規定する。支持部370は、回路基板360からの熱を外部に放出するヒートシンクとして機能してもよい。防振材380は、複数の回路基板360および支持部370を周回するように設けられてよい。
【0102】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0103】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0104】
10・・・音検知部、11・・・入力部、20・・・記憶媒体、100・・・録音装置、110・・・ハイパスフィルタ、111・・・第1コンデンサ、112・・・第2コンデンサ、113・・・コイル、114・・・抵抗、115・・・スイッチ、116・・・スイッチ、117・・・スイッチ、118・・・スイッチ、120・・・AD変換部、121・・・出力部、130・・・信号処理部、140・・・制御部、150・・・通信部、200・・・締結装置、210・・・締結工具、211・・・筐体、212・・・接続部、213・・・操作部、214・・・把持部、215・・・台座部、220・・・判定装置、232・・・判定システム、240・・・判定部、250・・・動作制御部、260・・・判定モデル記憶部、270・・・場所記憶部、280・・・姿勢検知部、300・・・建築物、301・・・柱、302・・・梁、303・・・固定部、304・・・締結具、305・・・基礎、310・・・判定モデル学習装置、350・・・対話モジュール、360・・・回路基板、370・・・支持部、380・・・防振材、601・・・ピーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20