(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153185
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】イオン発生機および電気集塵機
(51)【国際特許分類】
B03C 3/41 20060101AFI20221004BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20221004BHJP
B03C 3/68 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B03C3/41 Z
B03C3/40 A
B03C3/68 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056287
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 優介
(72)【発明者】
【氏名】永吉 健太郎
【テーマコード(参考)】
4D054
【Fターム(参考)】
4D054AA11
4D054BA02
4D054BB16
4D054CA18
4D054CA19
4D054EA11
4D054EA27
(57)【要約】
【課題】オゾンの発生を抑制しながら荷電効率を高めることができるイオン発生機および電気集塵機を提供する。
【解決手段】イオン発生機は、放電電極(310)と、放電電極(310)に対向して配置される対向電極(320)と、放電電極(310)と対向電極(320)との間に印加される印加電圧を制御する制御部(70)と、を備える。また、対向電極(320)は、導電体で形成される導電部(321)と、絶縁体で形成され、導電部(321)の表面を被覆する絶縁部(322)と、導電部(321)が露出する露出部(323)と、を有する。また、制御部(70)は、放電電極(310)と対向電極(320)との間を流れる放電電流値が、対向電極(320)に対向する放電電極(310)の長さ1(m)当たり0.1~25(μA)となるように印加電圧を制御する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と、
前記放電電極に対向して配置される対向電極と、
前記放電電極と前記対向電極との間に印加される印加電圧を制御する制御部と、
を備え、
前記対向電極は、
導電体で形成される導電部と、
絶縁体で形成され、前記導電部の表面を被覆する絶縁部と、
前記導電部が露出する露出部と、
を有し、
前記制御部は、
前記放電電極と前記対向電極との間を流れる放電電流値が、前記対向電極に対向する前記放電電極の長さ1(m)当たり0.1~25(μA)となるように前記印加電圧を制御する
イオン発生機。
【請求項2】
前記制御部は、
前記放電電流値が、前記対向電極に対向する前記放電電極の長さ1(m)当たり0.1~5(μA)となるように前記印加電圧を制御する
請求項1に記載のイオン発生機。
【請求項3】
前記放電電極と前記対向電極との間に電圧を印加する電圧印加部をさらに備え、
前記電圧印加部は、前記放電電極へ第1の極性の電圧を印加し、
前記対向電極は、前記第1の極性とは逆の極性である第2の極性のイオンを放出する
請求項1または2に記載のイオン発生機。
【請求項4】
前記第1の極性は、正極性であり、
前記第2の極性は、負極性である
請求項3に記載のイオン発生機。
【請求項5】
前記放電電流値を測定する測定手段、または前記放電電流値を推定する推定手段をさらに備える
請求項1~4のいずれか一つに記載のイオン発生機。
【請求項6】
前記導電部は、板状であり、
前記露出部は、前記導電部の側面に沿って配置される
請求項1~5のいずれか一つに記載のイオン発生機。
【請求項7】
前記導電部は、板状であり、
前記露出部は、前記導電部の主面において前記放電電極と向かい合う位置に配置される
請求項1~5のいずれか一つに記載のイオン発生機。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一つに記載のイオン発生機と、
前記イオン発生機により帯電された空気中の塵埃を捕集する集塵装置と、
を備える電気集塵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン発生機および電気集塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気集塵機などが備えるイオン発生機は、放電電極と、この放電電極と対で配置される対向電極を備える。かかるイオン発生機において、接地される対向電極を、絶縁体または半導電体で被覆することにより、コロナ放電を発生させないことで放電電流を抑制しつつ、放電電極からイオンを発生させ、通過する塵埃を荷電させるものが知られている(たとえば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術では、放電電流を抑制することでオゾンの発生を抑制することはできる一方で、コロナ放電を発生させない以上、塵埃を十分に帯電させるだけの荷電量を得られない恐れがある。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、オゾンの発生を抑制しながら荷電効率を高めることができるイオン発生機および電気集塵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示するイオン発生機の一態様は、放電電極と、放電電極に対向して配置される対向電極と、放電電極と対向電極との間に印加される印加電圧を制御する制御部と、を備える。また、対向電極は、導電体で形成される導電部と、絶縁体で形成され、導電部の表面を被覆する絶縁部と、導電部が露出する露出部と、を有する。また、制御部は、前記放電電極と前記対向電極との間を流れる放電電流値が、前記対向電極に対向する放電電極の長さ1(m)当たり0.1~25(μA)となるように印加電圧を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、オゾンの発生を抑制しながら荷電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るイオン発生機、および同イオン発生機を備える電気集塵機が設けられる空気清浄機の概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電気集塵機の構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る荷電部の放電電極および対向電極を示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る電気集塵機が備える制御部を主とするブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る電流測定部の構成の一例を示す回路図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る電気集塵機の制御手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係る荷電部における放電電流の波形を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る荷電部における対向電極の絶縁破壊により印加電圧とは逆極性のパルス電流が発生する過程を示す説明図である。
【
図9A】
図9Aは、実施形態の荷電部を通風方向から見た概略図である。
【
図9B】
図9Bは、実施形態の荷電部を通風方向に垂直な側方から見た概略図である。
【
図10】
図10は、
図9に示した実施例および参考例において測定された、荷電部における放電有効長1(m)当たりの放電電流値と荷電量との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態の変形例1に係る荷電部の放電電極および対向電極を示す模式図である。
【
図12A】
図12Aは、実施形態の変形例2に係る荷電部の放電電極の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示するイオン発生機および電気集塵機の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によって、本願の開示するイオン発生機および電気集塵機が限定されるものではない。
【0010】
また、以下の説明による構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。なお、実施形態の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付して説明する。
【0011】
また、以下の実施形態では、開示の技術に係るイオン発生機を、空気清浄機が備える電気集塵機に適用した場合を示した。しかし、これに限られず、開示の技術に係るイオン発生機は、たとえば、荷電によりイオンを発生させることのできる各種装置にも適用することができる。
【0012】
<空気清浄機の構成>
最初に、実施形態に係る空気清浄機1の構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係るイオン発生機、および同イオン発生機を備える電気集塵機2が設けられる空気清浄機1の概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、空気清浄機1は、空気を清浄化するための装置類を収納する筐体10を備える。かかる筐体10は、たとえば、合成樹脂材で直方体状に形成される。筐体10には、室内の空気を吸引する吸込口11と、清浄化された空気を室内に吹き出す吹出口12とが形成される。
【0014】
また、筐体10内には、プレフィルタ14と、複数の電気集塵機2と、脱臭フィルタ5とが設けられる。プレフィルタ14は、吸引された空気から大きな塵埃を除去する。複数の電気集塵機2は、プレフィルタ14を通過した空気中の塵埃を静電気力によって集塵する。脱臭フィルタ5は、電気集塵機2を通過した空気を脱臭処理する。
【0015】
プレフィルタ14は、たとえば、糸状のPET(polyethylene terephthalate)材を編みこんだ網目構造を有し、図示しない樹脂枠で保持される。プレフィルタ14は、筐体10の内部に吸い込まれた空気に含まれている比較的大きな塵埃を捕集する。
【0016】
複数の電気集塵機2は、それぞれ荷電部3と集塵部4とを備える。荷電部3は、イオン発生機の一例であり、通過する空気中に含まれる塵埃などの微粒子を帯電させる。集塵部4は、集塵装置の一例であり、荷電部3で帯電された微粒子を静電気力により捕集する。
【0017】
なお、本実施形態においては、3つの電気集塵機2が筐体10内に配置されているが、配置される数は何ら限定されない。
【0018】
脱臭フィルタ5は、プレフィルタ14および電気集塵機2で塵埃が除かれた空気から、触媒フィルタによって、たとえばアンモニアやメチルメルカプタンなどの臭気成分やホルムアルデヒドなどの有害成分を取り除く脱臭処理を行う。
【0019】
また、筐体10内には、ファン6と、ファンモータ61と、制御基板7と、埃センサ13と、操作表示基板15とが設けられる。ファン6は、脱臭フィルタ5の下流側に配置される。ファンモータ61は、ファン6を回転させる。
【0020】
制御基板7は、空気清浄機1を制御する。埃センサ13は、吸込口11から吸引された空気の塵埃濃度を検出する。操作表示基板15は、たとえば、運転開始操作、運転停止操作などを行う。
【0021】
また、筐体10には、各電気集塵機2の各集塵部4に電力を供給する単一の集塵部用の定電圧高圧電源部(以下、「集塵部用高圧電源40」と呼称する。)が配置される。
【0022】
一方で、荷電部3に電力を供給する荷電部用の定電流高圧電源部(以下、「荷電部用高圧電源30」と呼称する。)は、3つの荷電部3にそれぞれ配置される。かかる荷電部用高圧電源30は、電圧印加部の一例である。
【0023】
このような構成を有する空気清浄機1は、ファンモータ61により駆動されるファン6の回転により、矢印fで示すように、吸込口11から室内空気を吸引し、プレフィルタ14、電気集塵機2および脱臭フィルタ5を通過させながら空気を清浄し、清浄された空気を吹出口12から室内に吹き出す。
【0024】
なお、空気清浄機1の風量設定は、操作表示基板15の操作に基づいて手動で風量を切り換えることができるが、たとえば、埃センサ13の検出信号に基づいて、適切な風量に自動で切り換わる自動風量モード設定を設けることもできる。
【0025】
<電気集塵機の構成>
つづいて、実施形態に係るイオン発生機を備える電気集塵機2の構成について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、実施形態に係る電気集塵機2の構成図である。
【0026】
図2に示すように、電気集塵機2は、荷電部3と、集塵部4とを備える。荷電部3は、放電電極310と、対向電極320とを有する。
【0027】
放電電極310は、ワイヤ状の電極である。対向電極320は、放電電極310と異なる極性を有する平板状の電極である。そして、荷電部3では、複数の放電電極310および複数の対向電極320が、所定の間隔をあけて交互に配置されている。
【0028】
集塵部4は、平板電極を多数枚平行に配列し、隣り合う電極間に高電圧が印加されるよう電気的に接続した構造を有する。本実施形態では、集塵部4を構成する2種類の電極のうち、放電電極310と同極性の電極を「高圧電極410」と呼称し、対向電極320と同極性の電極を「捕集電極420」と呼称する。
【0029】
荷電部3の放電電極310と対向電極320との間には、荷電部用高圧電源30によって高電圧が印加される。荷電部用高圧電源30は、電源50から電源部55を介して電力が供給され、制御基板7(
図1参照)に搭載される制御部70により荷電部スイッチ301、302、303を介して駆動および制御される。
【0030】
集塵部4の捕集電極420と高圧電極410との間には、集塵部用高圧電源40によって高電圧が印加される。集塵部用高圧電源40は、電源50から電源部55を介して電力が供給され、制御基板7に搭載される制御部70により集塵部スイッチ401を介して駆動および制御される。
【0031】
荷電部用高圧電源30は、電気集塵機2が内蔵する荷電部3の個数と同じ数(ここでは3個)が設けられており、各電気集塵機2の荷電部3と1対1に対応して接続される。集塵部用高圧電源40は、電気集塵機2が内蔵する集塵部4の個数にかかわらず1つであり、すべての集塵部4が並列に接続される。
【0032】
<荷電部の構成>
つづいて、実施形態に係る荷電部3の構成について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、実施形態に係る荷電部3の放電電極310および対向電極320を示す模式図である。
【0033】
放電電極310は、例えばワイヤ状に形成されており、
図3においてはワイヤ状に形成される放電電極310の断面が見えている。一方で、対向電極320は、平板状に形成されており、導電部321と一対の絶縁部322とを有する。なお、放電電極310の形状はワイヤ状に限られず、たとえば鋸歯状やニードル状であってもよい。
【0034】
導電部321は、導電体で形成され、たとえば、SUS304などのステンレスで薄板状に形成される。本実施形態では、導電部321の外表面として、第1主面321a1と、第1主面321a1とは反対側の第2主面321a2と、第1主面321a1と第2主面321a2を繋ぐ側面321bとを備える。
【0035】
一対の絶縁部322は、絶縁体で形成され、導電部321における外表面のうち第1主面321a1および第2主面321a2をそれぞれ被覆する。絶縁部322は、たとえば、アルミナなどのセラミック、または塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂などの樹脂で形成される。
【0036】
一方で、絶縁部322は、導電部321の側面321bを被覆しない。すなわち、対向電極320は、導電部321の側面321bに、かかる導電部321が露出する露出部323を有する。
【0037】
かかる露出部323は、たとえば、溝形状を有する。かかる溝形状の底部には導電部321の側面321bが配置され、溝形状の側部には一対の絶縁部322が配置される。
【0038】
絶縁部322によって導電部321の第1主面321a1および第2主面321a2が被覆された対向電極320は、放電電極310との間での放電電流を抑制することができることから、それにともないオゾンの発生も抑制することができる。
【0039】
かかる荷電部3の構造を利用し、アースに接続される対向電極320を絶縁被覆した状態で、放電電極310と対向電極320との間に印加される電圧(以下、「放電電極310への印加電圧」とも呼称する。)を高めていく実験を行った。
【0040】
その結果、放電電極310近傍でコロナ放電が生じている場合の所定の印加電圧と、火花放電が生じ始めるまでの印加電圧との間の、限られた範囲の印加電圧を放電電極310に印加した場合、絶縁被覆された対向電極320付近からもイオンが発生する現象が生じることを見出した。
【0041】
しかも、対向電極320付近から発生するイオンの量は、コロナ放電が生じている場合に、放電電極310付近から発生するイオンの量よりも多いことが分かった。
【0042】
かかる現象を利用し、荷電部3の対向電極320付近から発生させたイオンを用いることによって、従来の装置に比べて塵埃への荷電量や荷電効率(荷電装置が消費する電力に対する得られた荷電量)を向上させることができる電気集塵機2の提供が可能となる。
【0043】
なお、放電電極310への印加電圧が高すぎる場合、放電電極310近傍で生じるコロナ放電から、放電電極310と対向電極320とを短絡する火花放電へと、放電現象が遷移する。
【0044】
火花放電が発生すると、放電電極310と対向電極320との間での短絡により大電流が流れ、放電電極310の電圧が低下することで、荷電装置としての荷電性能が低下し、ひいては集塵装置としての集塵性能が低下してしまう。また、火花放電の発生に伴って、大量のオゾンが生成されてしまう問題もある。
【0045】
そのため、本実施形態の荷電部3において、放電電極310への印加電圧は、火花放電が発生しない範囲の印加電圧としている。
【0046】
<電気集塵機の制御処理>
つづいて、実施形態に係る電気集塵機2の制御処理の詳細について、
図4~
図10を参照しながら説明する。
図4は、実施形態に係る電気集塵機2が備える制御部70を主とするブロック図である。
【0047】
制御部70は、たとえばCPUやメモリなどのマイクロコンピュータにより構成され、
図4に示すように、記憶部710と、通電制御部720とを有する。そして、制御部70は、記憶部710から所定のプログラムを読み出して処理することで、通電制御部720としての機能を果たす。
【0048】
また、記憶部710は、各種プログラムの他、たとえば、各種の計測値、取得値、算出値、各種閾値などを記憶しており、これら各種の計測値、取得値、算出値は、計測タイミング、取得タイミング、算出タイミング毎に、時系列で記憶される。
【0049】
たとえば、高い効率で塵埃を荷電できる印加電圧の値として、コロナ放電が生じる印加電圧(たとえば、4(kV))と火花放電が生じ始める印加電圧(たとえば、8(kV))との間で印加電圧が適宜制御される。
【0050】
すなわち、実施形態に係る通電制御部720は、上述の範囲の電圧を放電電極310と対向電極320との間に印加するよう、荷電部用高圧電源30を制御する。通電制御部720は、通電を開始すると、放電電極310への印加電圧を徐々に上昇させて、放電電極310の近傍でコロナ放電を生じさせる。
【0051】
その後、通電制御部720は、電流測定部80で測定される放電電流値が、記憶部710に記憶された範囲の電流値となるように制御された電圧を、放電電極310に印加する。
【0052】
かかる通電制御により、放電電極310付近から第1の極性のイオンが発生するとともに、対向電極320付近から第1の極性とは逆極性である第2の極性のイオンが発生する。
【0053】
なお、第1の極性は正であっても負であってもよく、たとえば放電電極310に正の印加電圧を印加すれば、放電電極310付近からは正極性のイオン(プラスイオン)が発生し、負の印加電圧を印加すれば、放電電極310付近からは負極性のイオン(マイナスイオン)が発生する。
【0054】
これに対し、第2の極性は、第1の極性とは逆の極性になる。たとえば放電電極310付近から正極性のイオンが発生する場合には、対向電極320付近からは負極性のイオンが発生する。一方、放電電極310付近から負極性のイオンが発生する場合には、対向電極320付近からは正極性のイオンが発生する。
【0055】
このように、制御部70は、放電電極310と対向電極320との間で放電電極310近傍でのコロナ放電を生じさせることにより第1の極性のイオンを発生させるとともに、対向電極320の絶縁部322の絶縁破壊を生じさせて第1の極性とは逆極性である第2の極性のイオンを発生させることができる。
【0056】
そして、かかる第2の極性のイオンにより、荷電部3を通過する塵埃の微粒子を帯電させることができる。すなわち、対向電極320の絶縁部322の絶縁破壊により生じた第2の極性のイオンによって、塵埃は第2の極性のイオンと同じ極性に帯電される。
【0057】
図4の説明に戻る。電流測定部80は、測定手段の一例である。かかる電流測定部80は、放電電極310と対向電極320との間を流れる電流値(以下、「放電電流値」とも呼称する場合がある。)を測定し、測定された放電電流値を通電制御部720に送信する。
図5は、実施形態に係る電流測定部80の構成の一例を示す回路図である。
【0058】
図5に示すように、電流測定部80は、たとえば、荷電部用高圧電源30と対向電極320との間に配置される。また、電流測定部80は、抵抗81と、抵抗82と、電圧計83とを有する。
【0059】
抵抗81および抵抗82は、荷電部用高圧電源30と対向電極320との間で直列に接続される。抵抗81は、たとえば、10(kΩ)程度の抵抗値を有し、抵抗82は、たとえば、200(kΩ)程度の抵抗値を有する。
【0060】
電圧計83は、抵抗81における両端の電圧を測定する。そして、電流測定部80は、かかる電圧計83で測定される電圧値に基づいて、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値を測定する。なお、電流測定部80の構成は
図5の例に限られず、各種の電流測定手法を用いることができる。
【0061】
図6は、実施形態に係る電気集塵機2の制御手順を示すフローチャートである。電気集塵機2の制御手順は、空気清浄機1の運転開始をきっかけとして実行される。
【0062】
図6に示すように、制御部70は、空気清浄機1の運転開始に応じて、電気集塵機2の荷電部3において、放電電極310に印加される印加電圧を変更する(ステップS101)。例えば、制御部70は、空気清浄機1の運転開始の直後は、放電電極310への印加電圧を上昇させるように制御する。
【0063】
次に、制御部70は、荷電部3の放電電極310への印加電圧が所定の印加電圧であるか否かを判定する(ステップS102)。ここで、所定の印加電圧とは、放電電極310近傍でのコロナ放電が開始される印加電圧であり、たとえば、6.5(kV)~8.0(kV)の範囲である。
【0064】
そして、放電電極310への印加電圧が所定の印加電圧でない場合(ステップS102,No)、ステップS101に戻り、放電電極310に印加される印加電圧を変更する。
【0065】
一方で、放電電極310への印加電圧が所定の印加電圧である場合(ステップS102,Yes)、制御部70は、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値が所定の電流値であるか否かを判定する(ステップS103)。
【0066】
そして、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値が所定の電流値でない場合(ステップS103,No)、ステップS101に戻り、放電電極310に印加される印加電圧を変更する。一方で、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値が所定の電流値である場合(ステップS103,Yes)、印加電圧を保持する(ステップS104)。
【0067】
すなわち、制御部70は、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値が所定の電流値になるように、放電電極310に印加される印加電圧を変更して、放電電極310付近でのコロナ放電を生じさせることで、放電電極310付近から第1の極性のイオンを発生させるとともに、対向電極320付近から第2の極性のイオンを発生させる。
【0068】
この際、制御部70は、ステップS101~S103において、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値I(μA)が、対向電極320に対向する放電電極310の長さ(以下、「放電有効長」と呼称する場合がある)1(m)当たり0.1~25(μA)となるように印加電圧を制御する。たとえば、制御部70は、放電電極310の放電有効長1(m)当たりでの放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値Iが、0.1(μA)よりも小さい場合、印加電圧を増加させる。
【0069】
一方で、制御部70は、たとえば、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値Iが放電電極310の放電有効長1(m)当たり25(μA)よりも大きい場合、印加電圧を減少させる。
【0070】
ここで、対向電極320に対向する放電電極310の長さ(放電有効長)をLe(m)とし、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値をI(μA)とし、放電有効長1(m)当たりの放電電流値(μA)を単位放電電流値I0(μA/m)とすると、単位放電電流値I0は、放電電流値I(μA)を放電有効長Le(m)で割ることで求められ、I0=I/Le(μA/m)で表される。すなわち、制御部70は、この単位放電電流値I0が、0.1~25(μA/m)となるように、印加電圧を制御すればよい。
【0071】
そして、制御部70は、かかる通電制御を空気清浄機1の運転終了がなされるまで実行し(ステップS105,No)、空気清浄機1の運転が終了されたと判断すると(ステップS105,Yes)、この制御手順を終了する。
【0072】
以上、説明したように、制御部70は、たとえば、6.5kV~8.0kVの範囲の中で印加電圧を制御することで、第1の極性のイオンを放電電極310付近から発生させるとともに、露出部323以外が絶縁部322で被覆された対向電極320での絶縁破壊を生じさせることによって、第1の極性とは逆極性である第2の極性のイオンを対向電極320付近から発生させることができる。
【0073】
さらに、制御部70は、対向電極320に対向する放電電極310の長さ(放電有効長)1(m)当たりで、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値I(μA)が、0.1~25(μA)となるように印加電圧を制御することで、荷電部3における荷電効率を向上させることができる。
【0074】
図7は、実施形態に係る電気集塵機2が備える荷電部3における放電電流の波形を示す図である。
図7に示すように、放電電流の値が小さい多数の連続的なパルスに混ざって、放電電流の値が大きい断続的なパルスが現れていることが分かる。
【0075】
放電電流の値が小さな連続的なパルスは、放電電極310付近から発生している、放電電極310への印加電圧と同極性(実施形態では正極性)の電荷による放電を示し、いわゆるバーストパルスコロナ放電によるものである。
【0076】
一方で、放電電流の値が大きなパルスは、対向電極320付近から発生している、放電電極310への印加電圧とは逆極性(実施形態では負極性)の電荷による放電を示す。
【0077】
この実験結果から、対向電極320の導電部321を絶縁部322で被覆して、限られた範囲の直流の電圧を放電電極310に印加した場合、対向電極320付近から放電電極310に印加した電圧とは逆極性の電荷によるパルス性の放電電流が断続的に発生することが分かった。
【0078】
ここで、対向電極320からパルス性の断続的な放電電流が発生するメカニズムについて説明する。
図8は、実施形態に係る荷電部3における対向電極320の絶縁破壊により印加電圧とは逆極性のパルス電流が発生する過程を示す説明図である。
【0079】
図8の(a)に示すように、たとえば放電電極310に、所定の大きさの正の直流電圧を印加すると、コロナ放電により、放電電極310付近からプラスイオン(正極性のイオン)が発生し、対向電極320の側へ引き寄せられる。
【0080】
すると、
図8の(b)に示すように、対向電極320の絶縁部322の表面にプラスイオンが蓄積されていく。この際、対向電極320の導電部321における絶縁部322近傍には電子が偏在することになり、絶縁部322の表面と導電部321における絶縁部322近傍との間に電位差(電圧)が生じる。
【0081】
さらに電荷が蓄積すると、電位差が大きくなり、一定の電位差に達すると絶縁破壊が生じ、
図8の(c)に示すように、対向電極320における導電部321の内部から電子が高速で飛び出す現象が生じる。
【0082】
この際、対向電極320に露出部323が存在すると、かかる露出部323内の空気と露出部323に面する絶縁部322との界面を通って、絶縁部322の内部を貫通する放電を生じる。
【0083】
すなわち、絶縁部322の表面への電荷の蓄積により対向電極320からパルス性の放電電流が断続的に発生する現象が生じる。この場合の放電の状態は、電荷が溜まる絶縁部322および露出部323により形成される電気的抵抗が適切な場合に断続的なパルス性の放電になると考えられる。以上のことから、対向電極320に露出部323が存在することによって、対向電極320における絶縁破壊を生じやすくし、パルス性の放電電流を安定的に発生させることができる。
【0084】
絶縁破壊によって対向電極320付近から高速で飛び出した電子は、大きなエネルギーをもっているため、空気中に多く存在する窒素分子(N2)に次々と衝突していく。そして、各窒素分子(N2)への衝突時に、高速の電子が窒素分子(N2)から電子を弾き飛ばす。
【0085】
電子を失った窒素分子(N2)は正イオン(N2
+)となって対向電極320の方に引き付けられる。なお、正イオン(N2
+)は不安定であるため、近くの水分子から電子を奪い、安定した窒素分子(N2)に戻る。
【0086】
一方、窒素分子(N
2)から弾き飛ばされた電子は、
図8の(d)に示すように、近くの酸素分子(O
2)と結びつく。電子と結びついて生じたマイナスイオン(O
2
-)は、電界に沿って放電電極310に引き付けられる。かかるマイナスイオンが、塵埃などの微粒子を負極性に帯電させることになる。
【0087】
このように、本実施形態では、放電電極310に第1の極性(たとえば「正」)の電圧を印加して、放電電極310近傍でコロナ放電を生じさせる。すると、放電電極310付近から第1の極性のイオンが発生するとともに、対向電極320の絶縁部322での絶縁破壊を生じることによって、対向電極320から大きな放電電流をともなうパルス性の放電が断続的に発生する。
【0088】
これにより、対向電極320の側では第2の極性(たとえば「負」)のイオンが大量に発生することになる。
【0089】
上述した実験などから考察されるに、荷電部3の対向電極320付近から発生させたイオンを用いることによって、従来の装置に比べて塵埃への荷電量や荷電効率(イオン発生機が消費する電力に対する得られた荷電量)を向上させることができるイオン発生機および電気集塵機2の提供が可能となる。しかも、オゾンの発生も抑制することが期待できる。
【0090】
図9Aおよび
図9Bは、実施形態の荷電部3の概略図である。
図9Aは、実施形態の荷電部3を通風方向から見た概略図である。
図9Bは、実施形態の荷電部3を通風方向に垂直な側方から見た概略図である。
【0091】
なお、実施形態の放電電極310としては、
図9Aおよび
図9Bに示すように、直径Φが0.12(mm)、有効長が100(mm)のタングステン製のワイヤ4本を互いに平行となるように配置して用いた。
図9Aおよび
図9Bに示すように、ワイヤは、当該ワイヤの長手方向(
図9Bにおいて紙面に垂直な方向)が、通風方向(
図9Bにおける左右方向)に対して垂直となるよう配置した。
【0092】
また、対向電極320の導電部321としては、通風方向に沿った幅wが10(mm)、ワイヤ状の放電電極310に平行な長手方向の長さlが100(mm)、板厚tが0.5(mm)のステンレス製の板状体を用い、絶縁部322としては、0.2(mm)の厚みのABS樹脂製の板状体を用いた。
【0093】
対向電極320は、導電部321である1枚の板状体を、絶縁部322である2枚の板状体で厚み方向の両側から挟んだ構造とした。そして、2つの対向電極320の間に、上述の放電電極310がそれぞれ位置するように、各対向電極320を互いに平行に配置した。また、隣り合う放電電極310と対向電極320との距離は6(mm)とした。
【0094】
また、対向電極320の露出部323は、導電部321を挟む2枚の絶縁部322同士の間に生じる隙間によって形成されており、対向電極320の露出部323が有する溝形状の寸法は、
図9Bにおいて対向電極320の厚み方向に平行な幅0.5(mm)、通風方向に平行な深さ1.5(mm)とした。
【0095】
なお、参考例としては、上記の実施形態における荷電部3の対向電極320から絶縁部322を取り除いた、導電部321のみで形成された対向電極を用いたものとした。
【0096】
ここで、放電有効長L
eとは、放電電極310において放電に寄与する部分の長さを示す。本実施形態では、放電電極310において対向電極320に対向する部分の長さの合計で表すことができ、
図9Aおよび
図9Bにおいては、有効長100(mm)の4本のワイヤ状の放電電極310が対向電極320に対向しているため、放電有効長L
eは4×100=400(mm)で表される。
【0097】
図10は、
図9に示した実施形態および参考例において測定された、荷電部3における放電有効長1(m)当たりの放電電流値と荷電量との関係を示す図である。
図10に示すように、実施形態に係る荷電部3は、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値が放電有効長1(m)当たり0.1~25(μA)の範囲において、参考例よりも同じ電流値における荷電量を増やすことができる。
【0098】
例えば、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値が放電有効長1(m)当たりで15(μA)のとき、実施形態は比較対象の参考例に比べて、同じ消費電力において概ね1.5倍の荷電量が得られている。
【0099】
すなわち、実施形態では、制御部70が、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値が放電電極310の放電有効長1(m)当たり0.1~25(μA)となるように、言い換えれば、単位放電電流値I0が0.1~25(μA/m)となるように、印加電圧を制御することにより、参考例よりも荷電効率を向上させることができる。
【0100】
ここまで説明したように、実施形態に係る荷電部3は、対向電極320における導電部321の主面321aを絶縁部322で被覆する。これにより、対向電極320と放電電極310との間での放電電流を抑制することができることから、それにともないオゾンの発生も抑制することができる。
【0101】
また、実施形態に係る荷電部3は、対向電極320に導電部321が露出する露出部323を設けることにより、パルス性の断続的な放電電流を安定的に生じさせることができる。
【0102】
さらに、実施形態では、制御部70が、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値が放電電極310の放電有効長1(m)当たり0.1~25(μA)となるように印加電圧を制御することにより、荷電効率を向上させることができる。
【0103】
したがって、実施形態によれば、オゾンの発生を抑制しながら荷電効率を高めることができる。
【0104】
また、
図10から分かるように、実施形態に係る荷電部3は、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値が、対向電極320に対向する放電電極310の長さ(放電有効長)1(m)当たりで5(μA)以下の範囲で、比較対象の参考例に比べて荷電効率がさらに高くなっている。言い換えれば、荷電部3は、放電有効長が1(m)当たりで5(μA)の電流値に変曲点を持つ。
【0105】
例えば、対向電極320に対向する放電電極310の長さ(放電有効長)1(m)当たりでの、放電電極310と対向電極320との間に流れる放電電流値が3(μA)のとき、実施形態は比較対象の参考例に比べて、同じ消費電力において概ね3倍の荷電量が得られている。
【0106】
そこで、実施形態では、制御部70が、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値が、対向電極320に対向する放電電極310の放電有効長1(m)当たり0.1~5(μA)となるように印加電圧を制御するとよい。これにより、
図10に示すように、参考例よりも同じ電流値における荷電量をさらに増やすことができる。
【0107】
したがって、実施形態によれば、放電電流を小さくすることでオゾンの発生を抑制しながら荷電効率をさらに高めることができる。
【0108】
また、実施形態では、制御部70が、対向電極320が第2の極性のイオンを放出するように、放電電極310への印加電圧を所定の電圧に制御するとよい。これにより、オゾンの発生を抑制しながら荷電効率をさらに高めることができる。
【0109】
また、実施形態では、電気集塵機2が電流測定部80を有するとよい。これにより、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値を直接測定できるので、放電電流値を精度よく測定することができる。したがって、実施形態によれば、荷電効率が向上する通電制御を安定して実施することができる。
【0110】
なお、実施形態では、電気集塵機2が必ずしも電流測定部80を有しなくともよく、たとえば、電流測定部80に換えて、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値を推定する推定手段(図示せず)を制御部70などが有していてもよい。
【0111】
かかる推定手段による推定処理は、たとえば、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値が増加するにしたがい荷電部用高圧電源30の電圧値が減少することを利用して、荷電部用高圧電源30の電圧値をモニタリングすることにより、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値を推定する。
【0112】
また、この推定処理は、たとえば、空気中の湿度が変化すると放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値が変化することを利用して、別途設けられる湿度センサの測定値をモニタリングすることにより、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値を推定してもよい。
【0113】
このような推定手段で放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値を推定することによっても、荷電効率が向上する通電制御を安定して実施することができる。
【0114】
また、実施形態では、
図3に示したように、対向電極320の露出部323が、板状の導電部321の側面321bに沿って配置されるとよい。これにより、パルス性の断続的な放電電流を安定的に発生させることのできる露出部323を容易に形成することができる。
【0115】
なお、実施形態に係る対向電極320の構成は、
図3の例に限られない。
図11は、実施形態の変形例1に係る荷電部3の放電電極310および対向電極320を示す模式図である。
図12Aおよび
図12Bは、実施形態の変形例2に係る荷電部3の放電電極310を示す模式図である。
【0116】
図11に示すように、この変形例1では、対向電極320の露出部323が、導電部321の主面321aにおいて放電電極310と向かい合う位置に配置される。これによっても、対向電極320に露出部323が形成されることで、パルス性の断続的な放電電流を安定的に発生させることができる。
【0117】
図12Aは、変形例2に係る荷電部3の放電電極310の正面図、
図12Bは、同放電電極310の平面図である。変形例2は、実施例のワイヤ状の放電電極310に代えて鋸歯状の放電電極310を用いている点、また平行に並べられた複数の放電電極310およびこれに対向する複数の対向電極320の数が増えている点以外は、実施例と共通である。
【0118】
図12Bに示すように、放電電極310は、複数の突起部315が形成された鋭利な鋸歯状に形成されている。そして、
図12Aに示すように、複数の放電電極310が、所定間隔をあけて枠部311に連結されている。本変形例2では、複数の放電電極310が、ステンレス(例えばSUS304)製の矩形板状の放電電極板を切り起こすことで形成されている。
【0119】
図12Bに示した変形例2における1つの放電電極310の放電有効長L
e1は、
図12Bに示されるように、放電点となる複数の突起部315が連続している長さとして表すことができる。本変形例2では、
図12Aに示すように、放電電極310を16本備えているため、全体の放電有効長L
e=16×L
e1で表される。
【0120】
変形例2の場合も、制御部70が、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値Iが放電電極310の放電有効長1(m)当たり0.1~25(μA)となるように、言い換えれば、単位放電電流値I0=I/Leが0.1~25(μA/m)となるように、印加電圧を制御することにより、参考例よりも荷電効率を向上させることができる。
【0121】
以上、本願の実施例を図面に基づいて説明したが、あくまでも例示であって、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施すことができる。
【0122】
上述してきた実施形態より、以下に示すイオン発生機および電気集塵機2が実現できる。なお、以下のイオン発生機は、電気集塵機2における荷電部3に相当する。
【0123】
(1)放電電極310と、放電電極310に対向して配置される対向電極320と、放電電極310と対向電極320との間に印加される印加電圧を制御する制御部70と、を備え、対向電極320は、導電体で形成される導電部321と、絶縁体で形成され、導電部321の表面を被覆する絶縁部322と、導電部321が露出する露出部323と、を有し、制御部70は、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値が、対向電極320に対向する放電電極310の長さ1(m)当たり0.1~25(μA)となるように印加電圧を制御するイオン発生機。
【0124】
かかる構成により、オゾンの発生を抑制しながら荷電効率を高めることができる。
【0125】
(2)上記(1)において、制御部70は、放電電流値が、対向電極320に対向する放電電極310の長さ1(m)当たり0.1~5(μA)となるように印加電圧を制御するイオン発生機。
【0126】
かかる構成により、上記(1)の効果に加え、オゾンの発生を抑制しながら荷電効率をさらに高めることができる。
【0127】
(3)上記(1)または(2)において、放電電極310と対向電極320との間に電圧を印加する電圧印加部(荷電部用高圧電源30)をさらに備え、電圧印加部(荷電部用高圧電源30)は、放電電極310へ第1の極性の電圧を印加し、対向電極320は、第1の極性とは逆の極性である第2の極性のイオンを放出するイオン発生機。
【0128】
かかる構成により、上記(1)または(2)の効果に加え、オゾンの発生を抑制しながら荷電効率をさらに高めることができる。
【0129】
(4)上記(3)において、第1の極性は、正極性であり、第2の極性は、負極性であるイオン発生機。
【0130】
かかる構成により、上記(3)の効果に加え、室内に浮遊するカビやウイルスなどの微生物を効果的に不活性化することができる。
【0131】
(5)上記(1)~(4)のいずれか一つにおいて、放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値を測定する測定手段(電流測定部80)、または放電電極310と対向電極320との間を流れる放電電流値を推定する推定手段をさらに備えるイオン発生機。
【0132】
かかる構成により、上記(1)~(4)のいずれか一つの効果に加え、荷電効率が向上する通電制御を安定して実施することができる。
【0133】
(6)上記(1)~(5)のいずれか一つにおいて、導電部321は、板状であり、露出部323は、導電部321の側面321bに沿って配置されるイオン発生機。
【0134】
かかる構成により、上記(1)~(5)のいずれか一つの効果に加え、パルス性の断続的な放電電流を安定的に発生させる露出部323を容易に形成することができる。
【0135】
(7)上記(1)~(5)のいずれか一つにおいて、導電部321は、板状であり、露出部323は、導電部321の主面321aにおいて放電電極310と向かい合う位置に配置されるイオン発生機。
【0136】
かかる構成により、上記(1)~(5)のいずれか一つの効果に加え、パルス性の断続的な放電電流を安定的に発生させることができる。
【0137】
(8)上記(1)~(7)のいずれか一つのイオン発生機(荷電部3)と、イオン発生機(荷電部3)により帯電された空気中の塵埃を捕集する集塵装置(集塵部4)と、を備える電気集塵機2。
【0138】
かかる構成により、上記(1)~(7)のいずれか一つの効果を奏する電気集塵機2を提供することができる。
【0139】
上述の実施形態および図示の具体的名称、処理、制御、各種のデータなどについては、一例を示すに過ぎず、適宜変更される場合がある。たとえば、上述の実施形態では、対向電極320の露出部323が、導電部321の側面321b、または主面321aにおいて放電電極310と向かい合う位置に配置される例について示した。しかし、対向電極320の露出部323が配置される位置はかかる例に限られない。
【0140】
また、上述の実施形態のより広範な態様は、上述のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0141】
2 電気集塵機
3 荷電部(イオン発生機の一例)
4 集塵部(集塵装置の一例)
30 荷電部用高圧電源(電圧印加部の一例)
70 制御部
80 電流測定部(測定手段の一例)
310 放電電極
315 突起部
320 対向電極
321 導電部
321a 主面
321b 側面
322 絶縁部
323 露出部
Le 放電有効長