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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153191
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】クリップ構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/10 20060101AFI20221004BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F16B19/10 B
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056299
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 剣一
【テーマコード(参考)】
3D023
3J036
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB01
3D023BB06
3D023BB07
3D023BB08
3D023BB09
3D023BB10
3D023BC01
3D023BD02
3D023BD08
3D023BD10
3D023BD18
3D023BD19
3D023BD29
3D023BD32
3D023BD33
3D023BE36
3J036AA03
3J036CA06
3J036DA06
3J036DB04
(57)【要約】
【課題】クリップの形状や配置の自由度を阻害することなく車両用内装品のクリップ座へのクリップの組み付け作業の簡素化を図ることが可能なクリップ構造を提供すること。
【解決手段】クリップ構造1は、車両用内装品3に設けられるクリップ座10と、クリップ座10に係合して組み付けられるクリップ20と、成形時にクリップ座10とクリップ20とを連接させた状態にあり、クリップ20がクリップ座10に組み付けられる過程で変形することでクリップ座10とクリップ20とが一体成形されていた痕跡として残存する残存部30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用内装品に設けられるクリップ座と、
前記クリップ座に係合して組み付けられるクリップと、
成形時に前記クリップ座と前記クリップとを連接させた状態にあり、前記クリップが前記クリップ座に組み付けられる過程で変形することで前記クリップ座と前記クリップとが一体成形されていた痕跡として残存する残存部と、
を備える、クリップ構造。
【請求項2】
前記残存部は、前記クリップが前記クリップ座に組み付けられる過程で変形し易い易変形部を有する、請求項1に記載されたクリップ構造。
【請求項3】
前記残存部は、前記クリップが前記クリップ座に組み付けられる過程で前記クリップを前記クリップ座に対してガイドするガイド機能を有する、請求項1又は2に記載されたクリップ構造。
【請求項4】
前記残存部は、前記クリップ座と前記クリップとを連接させた状態で残存している、請求項1乃至3の何れか一項に記載されたクリップ構造。
【請求項5】
前記残存部は、前記クリップ座との接続境界と前記クリップとの接続境界との間で破断した状態で残存している、請求項1乃至3の何れか一項に記載されたクリップ構造。
【請求項6】
前記クリップ座における前記残存部との接続箇所及び前記クリップにおける前記残存部との接続箇所はそれぞれ、前記クリップ座と前記クリップとの係合箇所とは異なる、請求項5に記載されたクリップ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装品のクリップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被取付対象物に取り付けられる車両用内装品などの取付対象物に適用されるクリップ構造が知られている(例えば、特許文献1及び非特許文献1)。特許文献1記載のクリップ構造は、車両用内装品のクリップ座にクリップを組み付けたものである。このクリップ構造では、クリップ座とクリップとがそれぞれ別体で成形された後、クリップがクリップ座に組み付けられ、そのクリップがクリップ座に組み付けられた状態で被取付対象物に差し込まれる。
【0003】
また、非特許文献1記載のクリップ構造は、本体部品に一体化された樹脂部品一体クリップを備えている。樹脂部品一体クリップは、主に成形型内に樹脂を注入する射出成形により本体部品と一体に成形される。そして、樹脂部品一体クリップは、本体部品と一体成形された状態のまま用いられて被取付対象物に取り付けられる。この樹脂部品一体クリップによれば、本体部品に対して位置ずれが生じ難いので、被取付対象物への取り付けを精度良く実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-330011号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】加藤正典著 「高強度な樹脂部品一体クリップ開発」 CALSONIC KANSEI TECHNICAL REVIEW vol.10 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載のクリップ構造では、車両用内装品のクリップ座とクリップとが別体である。このため、クリップ座に対して組み付けられるクリップの数が多くなるほど、部品総数が増大してその組み付け作業に要する工数やコストが多くなってしまう。また、上記非特許文献1記載のクリップ構造では、クリップが成形時の状態のまま本体部品に対して一体化されて使用される。このため、クリップと本体部品とが別体である構成とは異なり、それらのクリップと本体部品との組み付け作業を不要とすることはできるが、クリップを成形時の状態のまま使用しつつそのクリップと被取付対象物との強固な係合を確保しようとすると、クリップの形状や配置の自由度が低くなりクリップと本体部品との一体成形上の制約が多くなる。この制約は、特に、クリップの数が多くなるほど顕著になる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、クリップの形状や配置の自由度を阻害することなく車両用内装品のクリップ座へのクリップの組み付け作業の簡素化を図ることが可能なクリップ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、車両用内装品に設けられるクリップ座と、前記クリップ座に係合して組み付けられるクリップと、成形時に前記クリップ座と前記クリップとを連接させた状態にあり、前記クリップが前記クリップ座に組み付けられる過程で変形することで前記クリップ座と前記クリップとが一体成形されていた痕跡として残存する残存部と、を備える、クリップ構造である。
【0009】
この構成によれば、クリップ座とクリップとが一体成形されるので、部品総数が削減されて、クリップの取り扱いが容易化される。また、成形時にクリップ座とクリップとを連結した状態にある残存部が、クリップがクリップ座に組み付けられる過程で変形して、クリップ座とクリップとが一体成形されていた痕跡として残存したものであるので、残存部の変形前にクリップ座とクリップとを一体成形するうえでクリップの形状や配置の自由度が規制されることは回避される。従って、クリップの形状や配置の自由度を阻害することなくクリップ座へのクリップの組み付け作業の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るクリップ構造におけるクリップがクリップ座に組み付けられる前の状態を表した斜視図である。
図2】実施形態のクリップ構造におけるクリップがクリップ座に組み付けられた後の状態を表した斜視図である。
図3】実施形態のクリップ構造におけるクリップがクリップ座に組み付けられる前の状態を表した断面図である。
図4】実施形態のクリップ構造におけるクリップがクリップ座に組み付けられた後の状態を表した断面図である。
図5】実施形態のクリップ構造におけるクリップ座に組み付けられたクリップが被取付対象物に差し込まれた状態を表した断面図である。
図6】実施形態のクリップ構造におけるクリップ座及びクリップを製造する過程のうち成形型を用いて成形する状態を表した断面図である。
図7】実施形態のクリップ構造におけるクリップ座及びクリップを製造する過程のうち型開きした状態を表した断面図である。
図8】実施形態のクリップ構造におけるクリップ座及びクリップを製造する過程のうちクリップをクリップ座に組む付けた状態を表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図8を用いて、本発明に係るクリップ構造の具体的な実施形態について説明する。
【0012】
一実施形態のクリップ構造1は、車体構造物などの被取付対象物2(図5参照)に例えばインストルメントパネルやサイドパネル,バックパネル,モールなどの取付対象物である車両用内装品3(図6図8参照)を取り付けるために適用される構造である。以下、車両用内装品3は、パネル状に形成されているものとする。このクリップ構造1は、被取付対象物2に車両用内装品3をワンタッチで取り付けることが可能に構成されている。クリップ構造1は、図1図5に示す如く、クリップ座10と、クリップ20と、を備えている。
【0013】
クリップ座10は、クリップ20が組み付けられる取付座部である。クリップ座10は、車両用内装品3に一体成形される。クリップ座10は、車両用内装品3のパネル面から板状に突出するように形成されている。クリップ座10は、車両用内装品3の周縁部に複数箇所設けられている。クリップ座10は、基板部11と、一対の側板部12と、を有している。
【0014】
基板部11は、クリップ20が組み付けのために接する部位である。基板部11は、車両用内装品3のパネル面から突出している。尚、基板部11は、車両用内装品3のパネル面から先端にかけて徐々に(リニアに又は階段状に)板厚が小さくなるように形成されていてよい。基板部11には、係合孔13が設けられている。係合孔13は、クリップ20を係合させるための孔である。係合孔13は、基板部11本体の中途部にその基板部11本体を貫通するように設けられている。側板部12は、基板部11へのクリップ20の組み付けを補助すると共にその組み付け後のクリップ20の移動を規制するための部位である。一対の側板部12は、基板部11をその基板部11の側面側で挟み込むように配置されている。
【0015】
クリップ20は、クリップ座10に係合して組み付けられる取付部品である。クリップ20は、クリップ座10の基板部11を挟み込み可能にかつ被取付対象物2の取付孔2aに差し込み可能に形成されている。クリップ20は、一対の挟持板部21と、一対の差込板部22と、を有している。
【0016】
一対の挟持板部21は、クリップ座10の基板部11を挟み込んでクリップ20をクリップ座10に組み付けるための板部である。一対の挟持板部21は、その間にクリップ座10の基板部11が挿入可能に二股状になるように形成されている。また、一対の差込板部22は、クリップ20がクリップ座10に組み付けられた状態で被取付対象物2の取付孔2aに差し込まれて車両用内装品3を被取付対象物2に取り付けるための板部である。一対の差込板部22は、被取付対象物2の取付孔2aに差し込み可能に二股状に形成されている。
【0017】
一対の差込板部22は、互いに一端側(すなわち、頭頂部)で一体化されて接続されている。一対の差込板部22は、頭頂部を支点にして他端側の自由端における離間距離が可変されるように弾性変形可能に構成されている。クリップ20は、一対の差込板部22が被取付対象物2の取付孔2aに挿入されるように被取付対象物2に取り付けられる。
【0018】
一対の差込板部22はそれぞれ、頭頂部からクリップ20の挿入方向に対して傾斜して延びるように形成されている。一対の差込板部22はそれぞれ、互いに最も離れた位置に設けられる爪部22aを有している。爪部22aは、差込板部22の外面の他端側において外側に突出している。一対の差込板部22の爪部22aの外面同士が離れる離間距離は、常態で、取付孔2aの径に比して大きくなるように設定されている。一対の差込板部22は、両側の爪部22aの離間距離が取付孔2aの径以下に小さくされた状態で取付孔2aに差し込まれ、その後、上記離間距離が元に戻されることで被取付対象物2の取付孔2aの奥側で引っ掛かる。これにより、クリップ20が取付孔2aから抜けるのが防止されて車両用内装品3が被取付対象物2から外れるのが防止される。
【0019】
一対の挟持板部21のうちの一方は、一対の差込板部22のうちの一方の内面に接続されている。また、一対の挟持板部21のうちの他方は、一対の差込板部22のうちの他方の内面に接続されている。一対の挟持板部21は、差込板部22との接続部を支点にして他端側の自由端における離間距離が可変されるように弾性変形可能に構成されている。クリップ20は、一対の挟持板部21の間にクリップ座10の基板部11が挿入されるようにクリップ座10に組み付けられる。
【0020】
一対の挟持板部21はそれぞれ、基板部11の係合孔13にその係合孔13の外側から係合する係合部21aを有している。係合部21aは、挟持板部21の内面の他端側で内側に突出するように設けられている。一対の挟持板部21の係合部21aの内面同士が離れる離間距離は、常態で、基板部11における係合孔13の両端間の距離(すなわち、係合孔13の孔深さ)に比して小さくなるように設定されている。一対の挟持板部21は、図4に示す如く各係合部21aが係合孔13に係合した状態で基板部11を挟み込む付勢力を発生する。
【0021】
クリップ構造1において、車両用内装品3のクリップ座10とクリップ20とは、例えば射出成形などにより一体成形されることにより互いに連接した状態に形成される。この一体成形は、図1及び図3に示す如く、クリップ座10とクリップ20とが組み付けられる前の状態、具体的には、基板部11と挟持板部21とが挟持板部21に対する基板部11の挿入方向とは逆方向に離れた状態に形成されるように行われる。
【0022】
クリップ座10及びクリップ20は、例えばポリプロピレン樹脂(PP)やアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)などの樹脂により形成されている。クリップ構造1は、クリップ座10及びクリップ20が一体成形された後、クリップ20がクリップ座10に組み付けられることにより、被取付対象物2に取り付けられることが可能な状態になる。
【0023】
クリップ構造1は、また、残存部30を備えている。残存部30は、成形時にクリップ座10とクリップ20とを連接させた状態にあり、クリップ座10へのクリップ20の組み付け後にクリップ座10とクリップ20とが一体成形されていた痕跡として残存する部位のことである。残存部30は、クリップ座10及びクリップ20と同材で構成されている。クリップ座10、クリップ20、及び残存部30は、射出成形などにより成形型に樹脂が流し込まれることにより互いに一体に形成される。樹脂は、車両用内装品3側に設けられたゲート4を通じて成形型内に流し込まれ、その後、クリップ座10→残存部30→クリップ20の順に流れる。
【0024】
残存部30は、クリップ座10及びクリップ20が一体成形された製造段階での中間成形品においてはクリップ座10とクリップ20とを連接させるランナであると共に、クリップ20がクリップ座10に組み付けられた状態ではそれらのクリップ座10及びクリップ20の少なくとも一方に残存する。以下適宜、クリップ20がクリップ座10に組み付けられる前における中間成形品での残存部30をランナ部30Aと称す。
【0025】
ランナ部30Aは、一端がクリップ座10の基板部11の先端に接続され、かつ、他端がクリップ20の差込板部22の自由端の先端に接続されるように形成される。すなわち、ランナ部30Aは、クリップ座10の基板部11の先端とクリップ20の差込板部22の自由端先端との間に介在するように形成される。ランナ部30Aは、例えば、1mm~5mmの範囲内の寸法を有している。
【0026】
クリップ座10におけるランナ部30Aとの接続箇所及びクリップ20におけるランナ部30Aとの接続箇所はそれぞれ、クリップ座10とクリップ20との係合箇所(具体的には、挟持板部21の係合部21aがクリップ座10の係合孔13に係合する箇所)とは異なる位置に設けられている。
【0027】
尚、上記の接合箇所と上記の係合箇所とは、クリップ20がクリップ座10に組み付けられる過程でクリップ20の一対の挟持板部21の間にクリップ座10の基板部11を適切に挿入させるうえでは、その組み付け過程でランナ部30Aの存在によってその挿入やクリップ座10とクリップ20との係合が妨げられない程度に十分かけ離れていることが好ましい。例えば、これらの箇所同士がクリップ20の挿入方向においてかけ離れる距離は、5mm以上や10mm以上などであって20mm以下であることが望ましく、又は、クリップ20の挿入方向におけるランナ部30Aの長さに対して1.0倍以上や2.0倍以上であって3.0倍以下であることが好ましい。
【0028】
ランナ部30Aは、クリップ20側とクリップ座10側との位相がずれることで型抜き方向の制約が低減されるようにクリップ座10及びクリップ20に接続して設けられている。例えば、ランナ部30Aは、クリップ20の外縁端(好ましくは、外縁角部)に接続するように設けられている。ランナ部30Aは、クリップ座10とクリップ20との間で並列になるように複数箇所(例えば四箇所)に設けられている。例えば、ランナ部30Aは、クリップ20の一対の差込板部22それぞれにおける自由端の両端部に接続するように設けられている。
【0029】
ランナ部30Aは、クリップ20がクリップ座10に組み付けられる過程でクリップ20をクリップ座10に対してガイドしてクリップ20の一対の挟持板部21の間にクリップ座10の基板部11が挿入されるのを補助する形状に形成されている。すなわち、ランナ部30Aは、上記の組み付け過程でクリップ座10とクリップ20との位置ズレが生じ難く、その組み付け方向が正しいときにランナ部30Aが所望の状態に変形する一方でその組み付け方向が正しくないときはランナ部30Aが所望の状態に変形しないように形成されている。
【0030】
ランナ部30Aは、例えば、クリップ座10とクリップ20との間で上記の挿入を生じさせ易い方向に延びておりその挿入を生じさせ易い部位に設けられている。また、ランナ部30Aは、クリップ座10及びクリップ20に比べて薄肉になるように形成されている。例えば、ランナ部30Aは、その断面形状が内面で平面になりかつ外面で半円形になるように形成されている。
【0031】
ランナ部30Aは、クリップ20が一対の挟持板部21の間にクリップ座10の基板部11が挿入されるようにクリップ座10に組み付けられる過程で変形する。尚、ランナ部30Aの上記変形は、形状変化が生じればよく、破断して二つの片に分離することや折れ曲がり点を挟んで二つに折れ曲がることなどを含む。また、ランナ部30Aの上記変形は、変形後の残存部30の存在によって、クリップ20の一対の挟持板部21の間にクリップ座10の基板部11が挿入されるのを妨げず、かつ、クリップ20がクリップ座10に組み付けられた車両用内装品3が被取付対象物2に取り付けられる際にその取り付けを妨げないように行われる。
【0032】
例えば、ランナ部30Aの変形は、クリップ座10とクリップ20との組み付け後、クリップ20とクリップ座10とを連接させたまま環状になる残存部30としてクリップ座10及びクリップ20の外方に残存するように行われる。又は、ランナ部30Aの変形は、クリップ20とクリップ座10との組み付けが所定位置関係まで進行した際にその組み付けに伴う押圧力で破断した残存部30としてクリップ座10及びクリップ20の外方に残存するように行われる。また、上記の変形が生じ易くなるように、ランナ部30Aは、クリップ20の挿入方向の所定部位の内面に切れ込みなどが形成された易変形部を有することとしてもよい。
【0033】
尚、ランナ部30Aの破断は、クリップ座10側及びクリップ20側の双方に残存部30が残存するように上記中間成形品のランナ部30Aの中間で生じることとしてもよいし、クリップ座10側に残存部30が比較的多量に残存するようにランナ部30Aのクリップ20寄りで生じることやそのクリップ20との境界で生じることとしてもよいが、クリップ20側に残存部30が比較的多量に残存するようにランナ部30Aのクリップ座10寄りで生じることやそのクリップ座10との境界で生じることとするのが、残存部30がクリップ座10とクリップ20との係合の妨げになるのを回避するうえで好適である。また、上記の破断が生じ易くなるように、ランナ部30Aは、クリップ20の挿入方向の所定部位に切れ込みなどが形成された易破断部を有することとしてもよい。
【0034】
上記のクリップ構造1は、製造装置50により製造される。製造装置50は、自働的に、車両用内装品3に対してクリップ構造1のクリップ座10、クリップ20、及び残存部30を一体成形しすなわちクリップ座10とクリップ20とを残存部30で連接させた状態で成形し、その後、クリップ20をクリップ座10に組み付ける。製造装置50は、図6図8に示す如く、成形型51と、押込装置52と、を備えている。成形型51及び押込装置52は、クリップ座10とクリップ20との組ごとに設けられている。
【0035】
成形型51は、所望形状のクリップ座10、クリップ20、及び残存部30を一体成形するための型である。成形型51は、その実現のために必要な形状や配置,数になるように構成されている。成形型51は、例えば、固定型、固定型に対して挟持板部21に対する基板部11の挿入方向と同一方向にスライドする可動型、その挿入方向と直交する方向にスライドする可動型などを含む。可動型は、移動装置(図示せず)によりスライド移動可能に構成されている。尚、クリップ20の一対の差込板部22の頭頂部外面側は、固定型により成形されても可動型により成形されてもよいが、以下では、固定型により成形されるものとする。
【0036】
押込装置52は、クリップ座10とクリップ20と残存部30とが一体成形された後に、クリップ20の一対の挟持板部21の間にクリップ座10の基板部11が挿入されるようにクリップ20をクリップ座10に向けて押し込む装置である。押込装置52は、成形型51に内蔵されるように配置されている。
【0037】
押込装置52は、押込棒52aを有している。押込棒52aは、先端がクリップ20の頭頂部の外面に当接した状態でそのクリップ20をクリップ座10に向けて押し込む棒材である。押込棒52aの先端部は、クリップ20の頭頂部の外面に当接してクリップ20を押し込むことが可能な形状に形成されている。押込棒52aは、固定型に開けられた孔51aに収容可能かつ摺動可能に設けられている。押込棒52aは、移動装置(図示せず)により固定型に対してスライド移動可能に構成されている。押込棒52aは、射出成型が完了するまでは固定型の孔51a内に収容されており、その射出成形が完了した後は移動装置によりクリップ座10に対するクリップ20の挿入方向へスライド移動して孔51aから突き出る。
【0038】
次に、製造装置50を用いたクリップ構造1の製造手法について説明する。
まず、図6に示す如く、成形型51が準備されて射出成形可能に型締めされる。かかる状態でゲート4から樹脂が流し込まれることにより、車両用内装品3の本体とクリップ座10とクリップ20とランナ部30Aとが一体成形される。この際、車両用内装品3にクリップ座10とクリップ20とが複数組用意されているときは、それら複数組が一括して成形される。また、この際、クリップ座10とクリップ20とがランナ部30Aを介して連接された状態に成形される。
【0039】
そして、上記の射出成形が完了すると、次に、図7に示す如く、成形型51の型開きが行われる。成形型51の型開きが行われた場合、クリップ座10とクリップ20との組ごとに、クリップ座10及びクリップ20の周囲にクリップ20をクリップ座10に妨げなく組み付けるうえで必要な空間が形成される。
【0040】
上記の成形型51の型開きが行われると、次に、クリップ座10とクリップ20との組ごとに、図8に示す如く、押込装置52の押込棒52aがクリップ座10に対するクリップ20の挿入方向に沿うようにスライド移動して孔51aから突き出る。押込棒52aが成形型51の孔51aから突き出ると、押込棒52aの先端がクリップ20の頭頂部の外面に当接した状態で押込棒52aがクリップ20をクリップ座10に向けて挿入方向へ押圧する。かかる押圧が行われると、クリップ20の一対の挟持板部21の間にクリップ座10の基板部11が挿入されることで、クリップ座10にクリップ20が組み付けられる。このクリップ座10へのクリップ20の組み付けは、すべての組で略同時に行われる。
【0041】
上記したクリップ座10へのクリップ20の組み付けは、ランナ部30Aの変形を伴いながら行われる。この際、ランナ部30Aは、クリップ20をクリップ座10に対してガイドしてクリップ20の一対の挟持板部21の間にクリップ座10の基板部11が挿入されるのを補助する。このため、クリップ座10へのクリップ20の組み付けを精度よく行うことができる。
【0042】
上記したクリップ座10へのクリップ20の組み付けが完了した後は、ランナ部30Aが変形した残存部30が、クリップ座10及びクリップ20の少なくとも一方に、クリップ座10とクリップ20とが一体成形されていた痕跡として残存する。
【0043】
このように、クリップ構造1においては、クリップ座10とクリップ20とが残存部30を介して一体成形された後、クリップ座10へのクリップ20の押し込みにより残存部30が変形しながらクリップ20がクリップ座10に組み付けられる。このクリップ構造1によれば、クリップ座10とクリップ20とが一体成形されるので、クリップ座10とクリップ20とが別体で成形される構造と比較して、部品総数を削減することができ、クリップ20の取り扱いを容易化することができる。このため、クリップ座10へのクリップ20の組み付け作業に要する工数やコストを低減させることができ、その作業の簡素化を図ることができる。
【0044】
また、クリップ座10とクリップ20とが成形型51を用いて一体成形された後、その成形型51に収容された押込棒52aを用いてクリップ20がクリップ座10に組み付けられる。この構成では、クリップ座10とクリップ20との一体成形直後にその中間成形品を取り出すことなくクリップ20をクリップ座10に組み付けることができるので、その一体成形後に中間成形品が取り出される構成と比較して、クリップ20がクリップ座10に組み付けられる前にクリップ20がクリップ座10側から外れて紛失するのを防止することができる。これにより、確実にクリップ20がクリップ座10に組み付けられた車両用内装品を製造することができる。
【0045】
また、クリップ座10とクリップ20との一体成形は、両者がランナ部30Aを介して連接された状態で行われ、クリップ座10へのクリップ20の組み付けが完了した状態とは異なる状態で行われる。すなわち、クリップ20は、成形時の状態のままクリップ座10に一体化されて使用されるものではなく、成形後に残存部30の変形に伴ってクリップ座10に組み付けられて使用されるものである。このため、クリップ座10とクリップ20とを一体成形するうえでクリップ20の形状や配置の自由度が規制されることは回避され、その一体成形上での制約が緩和される。
【0046】
従って、クリップ構造1によれば、クリップ20の形状や配置の自由度を阻害することなくクリップ座10へのクリップ20の組み付け作業の簡素化を図ることができる。
【0047】
また、車両用内装品3におけるクリップ座10とクリップ20との組数が多数であっても、それらの複数組が一括して成形され、その後、各組でのクリップ座10へのクリップ20の組み付けが略同時に行われる。このため、クリップ座10とクリップ20との組が多数用意された車両用内装品3におけるクリップ座10へのクリップ20の組み付け作業性を向上させることができる。
【0048】
[変形形態]
更に、上記の実施形態においては、特にクリップ座10にクリップ20が組み付けられた際にランナ部30Aが破断してクリップ座10とクリップ20との連接が解除される構造では、クリップ20がクリップ座10に組み付けられた車両用内装品3が被取付対象物2に取り付けられた後にその取り付けが解除された際に、クリップ20がクリップ座10から離れて紛失するおそれがある。そこで、クリップ座10及びクリップ20を含む車両用内装品3の成形時にその車両用内装品3に連接させた予備のクリップ20を同時に成形しておくこととしてもよい。この予備のクリップ20は、必要なときに車両用内装品3から引き離されて、紛失したクリップ20に代えてクリップ座10に組み付けられて使用される。
【0049】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:クリップ構造、2:被取付対象物、3:車両用内装品、10:クリップ座、20:クリップ、30:残存部、30A:ランナ部、50:製造装置、51:成形型、52:押込装置。
図1
図2
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図8