(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153192
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】水質監視装置、プラント制御装置、プラント制御方法、及び、フィルタ自動供給装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20060101AFI20221004BHJP
G01N 33/18 20060101ALI20221004BHJP
C02F 3/12 20060101ALI20221004BHJP
C02F 3/28 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C02F1/00 L
G01N33/18 106A
C02F1/00 V
C02F3/12 P
C02F3/28 Z
C02F1/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056300
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 英樹
【テーマコード(参考)】
4D028
4D040
【Fターム(参考)】
4D028BA00
4D028BB03
4D028BE00
4D028CA00
4D028CC01
4D040AA12
4D040AA22
4D040AA24
4D040AA61
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水処理プラントに対する水質監視において、監視対象以外の外乱による影響を抑制し、監視対象の成分分析を、安定かつ精度よく、オンラインで行う水質監視装置、並びに、この水質監視装置を用いたプラント制御装置及び方法を提供する。
【解決手段】水処理プラントから自動採水する自動採水部と、採水された試料を自動で濾過処理する自動濾過部と、濾過された濾液に対する成分分析を行う水質監視装置とを備え、この水質監視装置を用いたプラント制御装置及び方法を提供する。採水及び濾過処理に係る操作を自動化し、かつ濾液に対する成分分析を行うことで、監視対象以外の外乱による影響を抑制し、成分分析をオンラインで安定かつ精度よく行うことができる。また、成分分析結果に基づく制御を行うことで、水処理プラントの安定した運転状態が維持できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理プラントにおける水質監視装置であって、
前記水処理プラントから自動で採水する自動採水部と、
前記自動採水部で採水された試料を自動で濾過処理する自動濾過部と、を備え、
前記自動濾過部で濾過された濾液に対する成分分析を行うことを特徴とする、水質監視装置。
【請求項2】
前記自動採水部は、前記水処理プラントにおける流入水及び流出水を自動で採水することを特徴とする、請求項1に記載の水質監視装置。
【請求項3】
前記試料もしくは前記濾液を、任意の希釈倍率で自動希釈する自動希釈手段を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水質監視装置。
【請求項4】
前記自動濾過部は、フィルタの自動供給を行うフィルタ自動供給部を備え、
前記フィルタ自動供給部は、複数のフィルタカートリッジを収納可能とすることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の水質監視装置。
【請求項5】
水処理プラントの運転制御を行うプラント制御装置であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の水質監視装置と、
前記水質監視装置により得られた分析結果を基に、前記水処理プラントの運転条件に係る制御を行う制御部と、を備えることを特徴とする、プラント制御装置。
【請求項6】
水処理プラントの運転制御を行うプラント制御方法であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の水質監視装置により得られた分析結果を基に、前記水処理プラントの運転条件に係る制御を行う制御工程を備えることを特徴とする、プラント制御方法。
【請求項7】
濾過処理においてフィルタを自動で供給するフィルタ自動供給装置であって、
フィルタ収納筒と、
前記フィルタ収納筒内に、上下方向に積み重ねられて収納された複数のフィルタカートリッジと、
前記フィルタカートリッジの取り出し及び搬送を行う搬送手段と、を備え、
前記搬送手段は、前記フィルタ収納筒の上部から前記フィルタカートリッジの取り出しを行うことを特徴とする、フィルタ自動供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質監視装置、並びに、この水質監視装置を用いたプラント制御装置及びプラント制御方法に関するものである。更に詳しくは、水処理プラントにおける水質の成分分析をオンラインで行うことのできる水質監視装置、並びに、この水質監視装置を用いたプラント制御装置及びプラント制御方法に関するものである。
また、本発明は、フィルタ自動供給装置に関するものである。更に詳しくは、成分分析において、前処理として有用である濾過処理の自動化を可能とするためのフィルタ自動供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、被処理水に対する水処理を行う水処理プラントにおいては、水質に関するデータの測定が行われ、その測定したデータに基づき水質の状態を判断し、水処理に係る工程の制御等が行われる。
【0003】
例えば、特許文献1には、水処理プラントに配置された自動計測器からの複数のプロセスデータ(DO、SS、MLSS等)の自動計測値が入力される自動計測値入力手段と、手分析により得られた複数のプロセスデータの手分析値が入力される手分析値入力手段と、自動分析値と手分析値の間の誤差を求める相関解析手段とを備える水処理プラントの運転支援システムが記載されており、併せて、この運転支援システムを用いたプロセスの状態監視や制御を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、水質プラントにおける被処理水や処理水の水質として、DO、SS、MLSSなどのプロセスデータを測定し、この測定データに基づき、水処理プラントの運転制御を行うことは既に知られている。また、特許文献1に記載されるように、プロセスデータに係るデータ取得においては、水処理プラント内にセンサ等の測定機器を直接設け、リアルタイムで測定を行う技術についても、既に知られている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載のプロセスデータ(DO、SS、MLSS等)は、酸素量や固体分(懸濁物質や浮遊物質)の濃度等から、被処理水や処理水に含まれる成分に係る情報を間接的に得るものである。このため、水処理プラントの運転制御に際し、被処理水や処理水の水質がどのように変動しているのかを具体的に把握することや、水処理プラントにおける処理状況を十分に把握することは困難である。また、pHや温度等のように、被処理水や処理水の物性に係るデータにおいても同様に、被処理水や処理水の水質変動を具体的に把握することや、水処理プラントにおける処理状況を十分に把握することは困難である。
特に、水処理プラントが生物処理工程を含むものである場合、被処理水や生物処理工程を経た処理水の水質変化に係る状況、特に、被処理水や処理水中に含有される有機物の量や種類等の変化、窒素やリンなどの富栄養化原因物質、金属類などの毒性物質の種類と濃度変化に係る状況を正確に判断することが困難であり、水処理プラントの適切な運転制御も困難となる。したがって、水処理プラントにおける被処理水や処理水中に含まれる各種成分に関するデータを直接的に得るための分析(成分分析)を行う必要がある。
【0007】
水処理プラントにおける被処理水や処理水中の各種成分に関する直接的なデータを取得するには、分析に係る安定性や精度の問題から、定期あるいは不定期に作業員を現場に派遣して、被処理水や処理水の採水や成分分析を行うというような手分析(オフライン分析)が一般的である。
一方、作業コストの低減や水処理プラントの運転に係る迅速な対応等を可能にするためには、水処理プラントにおける水質監視として、被処理水や処理水中に含まれる成分に係る分析をリアルタイムで行う技術(オンライン分析)が求められている。
【0008】
しかし、水処理プラントの水質監視においては、単に水処理プラントから採水するだけでは、監視対象となる成分以外の夾雑物などの外乱により、安定かつ精度の高い成分分析を行うことが困難である。したがって、監視対象となる成分以外の外乱による影響を効果的に抑制し、成分分析のオンライン化を可能とする技術が求められている。
【0009】
本発明の課題は、水処理プラントに対する水質監視において、監視対象以外の外乱による影響を効果的に抑制し、監視対象の成分分析を、安定かつ精度よく、オンラインで行うことのできる水質監視装置、並びに、この水質監視装置を用いたプラント制御装置及びプラント制御方法を提供することである。
また、本発明の課題は、成分分析のオンライン化において、分析対象以外の外乱による影響を効果的に抑制するために、前処理として有用である濾過処理の自動化を容易とするフィルタ自動供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、水処理プラントからの採水及び濾過処理に係る操作を自動化し、濾過後の濾液に対し成分分析を行うことで、監視対象以外の外乱による影響を抑制し、監視対象の成分分析を、安定かつ精度よく、オンライン化できることを見出して本発明を完成させた。
また、本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、上下方向に積み重ねて収納されたフィルタカートリッジを、上部から取り出して搬送することで、濾過処理に必要なフィルタの自動供給に係る効率向上を可能とし、それに伴い、濾過処理を容易に自動化できることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の水質監視装置、プラント制御装置、プラント制御方法、及び、フィルタ自動供給装置である。
【0011】
なお、以下、本発明における「自動」とは、作業者等、人の手による直接的な操作は含まれず、プログラムや指示信号の送受信により、各種操作が行われることを指している。
また、本発明における「オンライン」とは、水処理プラントから切り離されることなく、処理や操作が行われることを指している。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の水質監視装置は、水処理プラントにおける水質監視装置であって、水処理プラントから自動で採水する自動採水部と、自動採水部で採水された試料を自動で濾過処理する自動濾過部と、を備え、自動濾過部で濾過された濾液に対する成分分析を行うことを特徴とする。
この水質監視装置によれば、水処理プラントからの採水に係る操作、及び、採水された試料の濾過処理に係る操作を自動化し、かつ採水した試料を濾過した後の濾液に対し成分分析を行うことで、監視対象以外の外乱による影響を効果的に抑制し、監視対象の成分分析を、安定かつ精度よく、オンラインで行うことが可能となる。
特に、従来オフラインで行われていた前処理(濾過処理)を自動化することで、これまでオンライン化が難しいとされていた成分分析を行うための各種分析装置を用いることが可能となる。これにより、水処理プラントにおける水質監視に係る質の向上が可能となる。
【0013】
また、本発明の水質監視装置の一実施態様としては、自動採水部は、水処理プラントにおける流入水及び流出水を自動で採水するという特徴を有する。
この特徴によれば、水処理プラントにおける水質監視対象として、水処理プラントに導入される側(流入水)と、水処理プラントから排出される側(流出水)の両方を対象とすることができ、流入水及び流出水に含まれる成分に係る情報を比較することが可能となる。これにより、水処理プラントによる水処理を経ることで、処理対象の水質がどのように変化しているかという情報を得ることができ、水処理プラント内の処理状況をより詳細に把握することが可能となる。
また、この特徴によれば、一つの水質監視装置で、流入水及び流出水に関する成分分析を行うことができ、水処理プラントにおける水質監視に係るランニングコストの低減及び省スペース化が可能となる。
【0014】
また、本発明の水質監視装置の一実施態様としては、試料もしくは濾液を、任意の希釈倍率で自動希釈する自動希釈手段を備えるという特徴を有する。
一般に、成分分析を行う手段である分析装置には、測定可能な濃度範囲(測定レンジ)が存在している。
この特徴によれば、水処理プラントから採水した試料又は濾液を自動希釈することで、監視対象の濃度が成分分析における分析装置の測定レンジ内に収まるようにすることが可能となる。また、測定レンジが異なる複数の分析装置にも一つの前処理装置により対応が可能である。これにより、監視対象に係る成分分析を、より一層安定かつ精度よく、オンラインで行うことが可能となる。
特に、水処理プラントにおける流入水及び流出水のように、監視対象の濃度がそれぞれ異なる複数の試料(濾液)に対しても、それぞれの試料(濾液)における監視対象の濃度が自動的に分析装置の測定レンジ内に収まるようにした状態で成分分析を行うことが可能となる。これにより、水質監視に係る質をより一層高めることが可能となる。
【0015】
また、本発明の水質監視装置の一実施態様としては、自動濾過部は、フィルタの自動供給を行うフィルタ自動供給部を備え、フィルタ自動供給部は、複数のフィルタカートリッジを収納可能とするという特徴を有する。
この特徴によれば、自動濾過部において、試料の濾過処理に必要なフィルタ(濾過体)を自動供給し、一回の濾過で一つのフィルタを使い捨てすることで、フィルタ(濾過体)が目詰まりすることなく、フィルタの洗浄も不要になり安定した濾過処理の自動化を容易とすることが可能となる。また、フィルタ自動供給部において複数のフィルタカートリッジを収納可能とすることで、フィルタの自動供給に係る効率化を図ることが可能となる。
【0016】
上記課題を解決するための本発明のプラント制御装置は、水処理プラントの運転制御を行うプラント制御装置であって、上述した水質監視装置と、水質監視装置により得られた分析結果を基に、水処理プラントの運転条件に係る制御を行う制御部と、を備えることを特徴とする。
このプラント制御装置によれば、上述した水質監視装置により、監視対象に関する精度の高い情報を取得することができる。したがって、この情報に基づく制御を行うことで、水処理プラントの安定した運転状態を維持するために必要な対応を適切に行うことが可能となる。
【0017】
上記課題を解決するための本発明のプラント制御方法は、水処理プラントの運転制御を行うプラント制御方法であって、上述した水質監視装置により得られた分析結果を基に、水処理プラントの運転条件に係る制御を行う制御工程を備えることを特徴とする。
このプラント制御方法によれば、上述した水質監視装置により、監視対象に関する精度の高い情報を取得することができる。したがって、この情報に基づく制御を行うことで、水処理プラントの安定した運転状態を維持するために必要な対応を適切に行うことが可能となる。
【0018】
上記課題を解決するための本発明のフィルタ自動供給装置は、濾過処理においてフィルタを自動で供給するフィルタ自動供給装置であって、フィルタ収納筒と、フィルタ収納筒内に、上下方向に積み重ねられて収納された複数のフィルタカートリッジと、フィルタカートリッジの取り出し及び搬送を行う搬送手段と、を備え、搬送手段は、フィルタ収納筒の上部からフィルタカートリッジの取り出しを行うことを特徴とする。
成分分析のオンライン化においては、分析対象以外の外乱による影響を効果的に抑制することが必要であり、そのためには、成分分析における前処理として有用である濾過処理を自動化する必要がある。
このフィルタ自動供給装置によれば、フィルタカートリッジを上下方向に積み重ねることで、フィルタカートリッジの収納に係る省スペース化を可能とする。また、積み重ねられたフィルタカートリッジを上部から取り出すことで、一つのフィルタカートリッジだけを容易に取り出すことが可能となる。これにより、濾過処理に必要なフィルタの自動供給に係る効率向上を可能とし、それに伴う濾過処理を容易に自動化することが可能となる。
また、このフィルタ自動供給装置を、上述した水処理プラントの水質監視装置等、成分分析を行う既存の装置に適用することで、濾過処理の自動化及び効率化を図ることができ、併せて成分分析のオンライン化も容易となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水処理プラントに対する水質監視において、監視対象以外の外乱による影響を効果的に抑制し、監視対象の成分分析を、安定かつ精度よく、オンラインで行うことのできる水質監視装置、並びに、この水質監視装置を用いたプラント制御装置及びプラント制御方法を提供することができる。
また、本発明によれば、成分分析のオンライン化において、分析対象以外の外乱による影響を効果的に抑制するために、前処理として有用である濾過処理の自動化を容易とするフィルタ自動供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施態様における水質監視装置の構造を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様におけるプラント制御装置の構造を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施態様におけるフィルタ自動供給装置の構造を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施態様におけるフィルタ自動供給装置の別態様を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の第2の実施態様における水質監視装置の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の水質監視装置は、水処理プラントに対する水質監視を行うためのものであり、特に監視対象に対する成分分析によりオンラインで水質監視を行うためのものである。
また、本発明のプラント制御装置及びプラント制御方法は、本発明の水質監視装置を用い、水処理プラントの運転制御を行うためのものである。
さらに、本発明のフィルタ自動供給装置は、濾過処理に用いるフィルタ(濾過体)の自動供給を行うためのものであり、特に成分分析における前処理としての濾過処理に対して適用されるものである。
【0022】
本発明における水処理プラントは、処理対象となる被処理水に対する水処理を行うプラントであればよく、水処理に係る公知の各種処理設備(各種処理装置)を備えるものが挙げられる。
本発明の水処理プラントの一例としては、例えば、下水処理場、廃水処理場、食品工場、製薬工場等の有機性排水処理施設、メッキ工場等の無機性排水処理施設、浄水場等の上水処理施設等が挙げられる。
また、本発明の水処理プラントが備える各種処理設備の一例としては、沈砂地設備、沈殿池設備、曝気槽、好気反応槽、嫌気反応槽、オキシデーションディッチ槽、凝集槽、沈殿槽、汚泥濃縮設備、汚泥消化設備、貯留タンク、消毒設備等の排水処理設備、着水井、フロック形成池、沈殿池、ろ過池、配水池等の上水処理設備等が挙げられる。なお、実施態様における水処理プラントについては、本発明を説明するための例示であって、これに限定されるものではない。
【0023】
また、本発明における処理対象となる被処理水は、水処理プラントで処理されるものであればよく、特に限定されない。被処理水としては、例えば、下水、工場排水(工場廃水)、河川水・雨水等の自然水などが挙げられる。なお、実施態様における被処理水については、本発明を説明するための例示であって、これに限定されるものではない。
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る水質監視装置、プラント制御装置、プラント制御方法、及び、フィルタ自動供給装置の実施態様を詳細に説明する。また、本発明に係るプラント制御方法の説明については、本発明に係るプラント制御装置の構成及び操作に係る説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する水質監視装置、プラント制御装置、プラント制御方法、及び、フィルタ自動供給装置については、本発明に係る水質監視装置、プラント制御装置、プラント制御方法、及び、フィルタ自動供給装置を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0025】
〔第1の実施態様〕
[水質監視装置]
図1は、本発明の第1の実施態様における水質監視装置の構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係る水質監視装置1Aは、水処理プラント100に対する水質監視を行うものであり、
図1に示すように、水処理プラント100から自動で採水を行う自動採水部2と、自動採水部2で採水した試料Sを自動で濾過処理する自動濾過部3と、自動濾過部3で濾過された濾液Fの成分分析を行う分析装置4と、を備えている。
また、本実施態様における水処理プラント100は、有機物を含む排水Wを被処理水とし、この排水Wに対して水処理を行う排水処理施設に係る構成を一例として挙げたものであり、処理設備として沈砂池101、生物処理槽102、消毒処理槽103を備えるものを示している。
なお、
図1において、実線で示された矢印は、配管などにより通水可能に連結されていることを示している。また、一点鎖線で示された矢印は、制御又は入力可能に接続されていることを示している。
【0026】
図1に示した水処理プラント100において、排水W(流入水)は、まず配管L1を介して沈砂池101に流入し、排水W中の夾雑物などを除去した後、配管L2を介して排水W中の有機物を生物処理する生物処理槽102に供給される。生物処理槽102において生物処理された排水Wは、配管L3を介して消毒を行う消毒処理槽103に供給され、消毒処理槽103に添加される消毒液によって殺菌処理が行われた後、配管L4を介して処理水W1(流出水)として公共水域に放出される。
なお、
図1に示した水処理プラント100における各種処理設備は一例を示すものであり、その他の処理設備を備えるものであってもよい。例えば、沈砂池101と生物処理槽102の間に調整池を設けるものとしてもよい。また、生物処理槽102の前後に沈殿池を設けるものとしてもよい。さらには、消毒処理槽103の前段に濾過設備を設けるものとしてもよい。
【0027】
以下、本実施態様における水質監視装置1Aの各構成について説明する。
(自動採水部)
自動採水部2は、水処理プラント100から自動で採水を行うためのものである。より詳しくは、水処理プラント100における各処理設備(設備101~103)内、あるいは各処理設備間を接続する配管(配管L1~L4)から、監視対象となる試料Sとして、排水Wや処理水W1を自動で採水するものである。
【0028】
自動採水部2は、水処理プラント100の少なくとも1か所以上から自動で採水を行うことができるものであればよく、自動採水に係る具体的な構造、及び、採水箇所については特に限定されない。
例えば、自動採水部2による自動採水を行う箇所は、水処理プラント100に対して排水W(流入水)が最初に導入される処理設備である沈砂池101や、水処理プラント100での処理が完了し、公共水域に放出される直前の処理水W1(流出水)が貯留される処理設備である消毒処理槽103等、水処理プラント100の処理設備における各種水槽(貯水槽、各種反応槽)のほか、排水W(流入水)が通過する配管L1や、公共水域に放出される処理水W1(流出水)が通過する配管L4のように、水処理プラント100における各種処理設備間に設けられる配管などが挙げられる。
特に、本実施態様における自動採水部2では、
図1に示すように、沈砂池101及び消毒処理槽103(あるいは配管L1及び配管L4)から自動採水を行い、それぞれ試料S1、S2を得ることが好ましい。これにより、水処理プラント100に導入される側(流入水)と、水処理プラント100から排出される側(流出水)の両方を監視対象とすることができる。そして、試料S1及びS2に対する成分分析の結果から、流入水及び流出水に含まれる成分に係る情報を比較することが可能となる。すなわち、試料S1及びS2に対する成分分析の結果から、水処理プラント100による水処理を経ることで、処理対象(排水W)の水質がどのように変化しているかという情報を得ることができ、水処理プラント100内の処理状況をより詳細に把握することが可能となる。
また、一つの水質監視装置1Aで、流入水及び流出水に関する成分分析を行うことができる。これにより、水処理プラント100に対する水質監視に係るランニングコストの低減及び省スペース化が可能となる。
【0029】
自動採水部2の構造の一例としては、
図1に示すように、沈砂池101及び消毒処理槽103に設けられた採水管20a、20bと、採水管20a及び20bを介して試料Sを吸引採取するポンプ21a、21bと、ポンプ21a及び21bに係る動作を制御するポンプ制御手段22と、からなるものが挙げられる。
ここで、ポンプ21a及び21bとしては、シリンジポンプのような定量圧送ポンプを用いることが挙げられる。これにより、試料Sの採水量が一定量となるように制御することが容易となり、後述する自動濾過部3や分析装置4に対し、定量の試料Sを安定して供給することが可能となる。
なお、
図1には、それぞれの採水管20a及び20bごとに、1台ずつポンプ21a及び21bを設けるものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、採水管20a及び20bに対する流路切替部を設け、流路切替部の後段に1台のポンプを設けることで、流路切替部の切り替えにより採水管20aあるいは採水管20bからの採水を行うものとしてもよい。
また、採水箇所が配管である場合、自動採水部2としては、配管(配管L1や配管L4等)に分岐配管を接続し、分岐配管を介して試料Sを吸引採取するポンプと、ポンプに係る動作を制御する制御手段と、からなるものが挙げられる。
【0030】
また、自動採水部2の他の例としては、水処理プラント100に対し、採水のときだけ挿入する採水管と、採水管の挿入を行う挿入手段と、採水管を介して試料Sを吸引採取するポンプと、挿入手段及びポンプに係る動作を制御する制御手段と、からなるものなどが挙げられる。これにより、自動採水部2と監視対象(被処理水や処理水)との接触機会を低減させ、監視対象に含まれる夾雑物等により自動採水部2が汚染等の影響を受けることを抑制することが可能となる。
【0031】
また、自動採水部2による採水の頻度及び採水量については特に限定されない。自動採水部2による採水頻度や採水量については、例えば、水処理プラント100の構造や処理内容のほか、監視対象となる被処理水・処理水の種類等に基づき、水処理プラント100の運転に係る監視等を行う作業者が適宜設定することが挙げられる。そして、採水頻度や採水量に係る設定値に基づき、自動採水部2に設けられた制御手段により、常時あるいは定期的に採水を行うことのほか、作業者からの指示(指示信号の発信)等、不定期に採水を行うことなどが挙げられる。
なお、
図1に示すように、複数の試料S1,S2を採水する場合、自動濾過部3に導入される試料S1,S2が混ざらないように、ポンプ制御手段22によるポンプ21a及び21bの運転制御、あるいは流路切替部による流路切替の制御を行うことが好ましい。
【0032】
(自動濾過部)
自動濾過部3は、自動採水部2で採水された試料Sを自動で濾過処理するためのものである。
自動濾過部3は、試料Sを自動で濾過処理し、濾液Fを得ることができるものであればよく、具体的な構造等については特に限定されない。
【0033】
本実施態様における自動濾過部3としては、例えば、試料Sの濾過処理を行うためのフィルタ(濾過体)の自動供給に係る機能や、フィルタに対して試料Sを自動で導入する機能を備えることが挙げられる。これにより、濾過処理の自動化が容易となる。
ここで、フィルタの自動供給やフィルタに対する試料Sの自動導入を行うための機能に係る具体的な構造については特に限定されない。
【0034】
フィルタの自動供給に係る機能として、例えば、フィルタの自動供給を行うフィルタ自動供給部30を設けることが挙げられる。また、このフィルタ自動供給部30には、複数のフィルタカートリッジFCを収納可能とすることが挙げられる。これにより、フィルタの自動供給に係る効率化を図ることが可能となる。
【0035】
フィルタ自動供給部30としては、
図1に示すように、濾過処理を行うステージ31上にフィルタカートリッジFCを自動供給するための機構を有するものが挙げられる。例えば、複数のフィルタカートリッジFCが収納されたところから、一のフィルタカートリッジFCを取り出し、ステージ31上に配置するものなどが挙げられる。なお、フィルタ自動供給部30としては、後述するフィルタ自動供給装置5を用い、フィルタの自動供給を行うものとしてもよい。
【0036】
ステージ31は、フィルタカートリッジFCを配置するスペースを有し、濾液Fが通過する孔が設けられているものであればよく、その他の構造については特に限定されない。例えば、フィルタカートリッジFCを固定するための構造(フィルタ固定部)等を設けるものとしてもよい。フィルタ固定部は、ステージ31にフィルタカートリッジFCを嵌め込む窪みを設けることや、ステージ31にフィルタカートリッジFCを載置する構造物(ベース)を設けることなどが挙げられる。
【0037】
フィルタカートリッジFCとしては、形状や膜材質等については特に限定されないが、フィルタカートリッジとして市販され、広く流通しているものを用いることが好ましい。より具体的には、メンブレンフィルターとハウジングとが一体化されたディスポーザブルフィルタカートリッジを用いることが好ましい。これにより、フィルタの調達及びフィルタの収納が容易になる。
【0038】
また、フィルタカートリッジFCは、1回使用するごとに新しいフィルタカートリッジFCに交換することが好ましい。これにより、フィルタカートリッジFCの目詰まり等を抑制するとともに、フィルタの洗浄も不要となるため、安定した濾過処理を行うことが可能となる。
フィルタカートリッジFCの交換に係る手段については特に限定されない。例えば、フィルタ自動供給部30において、フィルタカートリッジFCの取り出し及びステージ31上への配置を行う機構に、使用済みフィルタカートリッジFCの回収機能をさらに付与することや、別途使用済みフィルタカートリッジFCの回収機構を設けることなどが挙げられる。なお、装置構成を簡略化するという観点からは、フィルタ自動供給部30に、使用済みフィルタカートリッジFCの回収機能を設け、フィルタの自動供給と自動回収を一つの機構で兼用させることが好ましい。なお、フィルタ自動供給部30として、フィルタ自動供給装置5を用いる場合、フィルタ自動供給装置5の搬送手段51に対し、フィルタの自動供給と自動回収に係る機能を付与することが挙げられる。
【0039】
なお、フィルタ自動供給部30により自動供給されるフィルタは、フィルタカートリッジFCに限定するものではない。他の例としては、ローラー等に巻いた帯状の濾布を連続して供給することなどが挙げられる。
【0040】
また、フィルタに対する試料Sの自動導入に係る機能としては、例えば、フィルタカートリッジFCに対して試料Sを導入するためのノズル32を設け、ステージ31に配置されたフィルタカートリッジFCに対し、ノズル32の取り付けを行うことが挙げられる。このとき、ノズル32を自動採水部2と接続させることで、採水管20a、20b及びポンプ21a、21bを介して、水処理プラント100から採水した試料SをオンラインでフィルタカートリッジFCに導入することが可能となる。なお、ノズル32の形状は、フィルタカートリッジFCの入口側に差し込むことができるものであればよく、特に限定されない。
また、ノズル32には、上下移動するための昇降機構を設けるものとしてもよい。これにより、ステージ31上のフィルタカートリッジFCの交換に合わせ、ノズル32とフィルタカートリッジFCとの取り付け及び取り外しに係る作業をスムーズに行うことが可能となる。
【0041】
ステージ31上のフィルタカートリッジFCに対し、ノズル32から供給された試料Sは、濾過処理されて濾液Fとなる。この濾液Fは、ステージ31の下方部に設けられた濾液貯留部33に貯留され、分析装置4へと導入される。なお、濾液貯留部33を省略し、濾液Fを直接分析装置4に導入するものとしてもよい。
【0042】
分析装置4は、自動濾過部3で得られた濾液Fに対し、成分分析を行うためのものである。
分析装置4は、監視対象に係る成分分析を行うことができるものであればよく、特に限定されない。分析装置4としては、例えば、分光法(UV、可視光など)に基づく分析装置、各種クロマトグラフィー(イオンクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィーなど)、特定の成分検出に特化した分析装置(TOC計、全リン計、総窒素計など)等が挙げられる。本実施態様における分析装置4としては、分光法に基づく分析装置や各種クロマトグラフィーを用いることが特に好ましい。これにより、迅速な成分分析や、高精度な成分分析が可能となる。
なお、分析装置4として用いる装置の台数は特に限定されない。例えば、同一の分析装置を複数台設けるものとしてもよく、分析手法の異なる分析装置を複数種類設けるものとしてもよい。
【0043】
分析装置4により成分分析を行った結果については、単に測定データの形のまま、外部に出力するものとしてもよく、測定データに対する解析等を行い、監視対象(被処理水や処理水)の状態に係る判断や、水処理プラント100の状態に係る判断を併せて外部に出力するものとしてもよい。これにより、水処理プラント100の運転に係る監視等を行う作業者に対し、水処理プラント100の現状について通知することが可能となる。
また、水質監視装置1Aで得られた分析結果を水質監視装置1Aから直接外部に出力するのではなく、後述するプラント制御装置10のように、水質監視装置1Aで得られた分析結果を、別の装置(制御部11等)に入力することで活用してもよい。
【0044】
以上のように、この水質監視装置1Aによれば、水処理プラント100からの採水に係る操作、及び、採水された試料Sの濾過処理に係る操作を自動化し、かつ採水した試料Sを濾過した後の濾液Fに対し成分分析を行うことで、監視対象以外の外乱による影響を効果的に抑制し、監視対象の成分分析を、安定かつ精度よく、オンラインで行うことが可能となる。
特に、本実施態様における水質監視装置1Aでは、従来オフラインで行われていた前処理(濾過処理)を自動化することで、これまでオンライン化が難しいとされていた成分分析を行うための各種分析装置を用いることが可能となる。これにより、水処理プラントにおける水質監視に係る質の向上が可能となる。
【0045】
[プラント制御装置]
図2は、本発明の第1の実施態様におけるプラント制御装置の構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係るプラント制御装置10は、上述した水質監視装置1Aを用い、監視対象に係る成分分析の結果を基に、水処理プラント100の運転制御を行うためのものである。
【0046】
本実施態様におけるプラント制御装置10は、
図2に示すように、上述した水質監視装置1Aに加え、水処理プラント100の運転条件に係る制御を行う制御部11を備えている。なお、
図2における一点鎖線は、入出力可能に接続されていることを示すものである。
【0047】
制御部11は、水処理プラント100の運転条件に係る制御を行うものであり、水処理プラント100の各処理設備に対し、運転条件の変更に係る操作を行うことができるものである。
また、制御部11は、水質監視装置1Aにより得られた分析結果を基に、水処理プラント100の運転条件に係る制御を行うものである。
【0048】
ここで、水質監視装置1Aにより得られた分析結果とは、水処理プラント100から採水した試料S1(あるいは試料S2)を分析装置4により測定し、試料S1に係る成分分析の現在の測定データと、過去のデータとを比較した結果や、試料S1及びS2に係る成分分析の測定データ同士を比較した結果等が挙げられる。これらの分析結果が、あらかじめ設定されている閾値などを超えた場合、水処理プラント100の運転に支障が出ている、あるいは運転に支障が出ると予測されると判断し、水処理プラント100を安定に運転させるための制御を、制御部11を介して行う。
【0049】
例えば、水質監視装置1Aの分析結果から、水処理プラント100における処理が十分でないと判断された場合、水処理プラント100における処理能力を高めるように、制御部11を介して水処理プラント100の運転条件に係る制御を行うことが挙げられる。
ここで、水処理プラント100の運転条件に係る制御の一例としては、各処理設備における流入水及び/又は流出水の流量制御を行うことや、各処理設備における処理条件に係る設定及び調整(使用する処理剤あるいは処理補助剤の量及び種類の設定、撹拌時間や滞留時間の調整など)等が挙げられる。
【0050】
制御部11による制御に係る具体例としては、排水Wを生物処理する生物処理槽102における処理能力を高めることが挙げられる。
本実施態様における生物処理槽102で行う生物処理は、好気処理、嫌気処理のいずれであってもよく、特に限定されない。例えば、生物処理として好気処理を行う場合、一般に、生物処理槽102は、好気条件の形成や、被処理水と微生物の接触効率を向上させるために、曝気装置や撹拌装置を備えている。このとき、制御部11を介し、生物処理槽102の曝気装置及び撹拌装置の駆動に係る制御を行うことで、生物処理槽102における処理能力を高めることが可能となる。また、例えば、生物処理が嫌気処理の場合、制御部11を介し、生物処理槽102に対し、嫌気条件下で、微生物による有機物の分解に適した温度管理や撹拌装置の駆動に係る制御を行うことで、生物処理槽102における処理能力を高めることが可能となる。
【0051】
また、生物処理槽102に、微生物の活性を向上させるための栄養源となる物質を添加する添加手段を設けるものとしてもよい。このとき、制御部11によって、添加手段により添加される物質の量を調整することで、生物処理槽102における処理能力を高めるものとしてもよい。
【0052】
また、制御部11を介し、沈砂池101から生物処理槽102へ排水Wを送る配管L2の流量を制御して、生物処理槽102における処理量を制御するものとしてもよい。
【0053】
なお、プラント制御装置10に設けられる他の構成としては、水質監視装置1Aで取得した成分分析に係る分析結果の解析を行う解析部や、解析部の解析結果に基づき水処理プラント100の状況を判断する判断部などが挙げられる。
解析部及び判断部は、成分分析結果に基づくデータの解析、及び、この解析の結果に基づき、水処理プラント100の状況判断を行うことができるものであればよく、例えば、分析結果(成分濃度や成分の種類等に関するデータ)の演算に必要なプログラムを、CPU等のプロセッサにより実行する計算装置とすることが挙げられる。また、判断部による判断結果に基づき、制御部11の制御を行うものとしてもよい。
これにより、水処理プラント100における状況をより的確に把握し、それに基づく水処理プラント100の運転制御を行うことが可能となる。また、水処理プラントの安定した運転状態を維持するために必要な対応を適切に行うことが可能となる。
【0054】
[フィルタ自動供給装置]
上述したように、成分分析のオンライン化においては、分析対象以外の外乱による影響を効果的に抑制することが必要であり、そのためには、成分分析における前処理として有用である濾過処理の自動化及び効率化が必要となる。
濾過処理の自動化及び効率化に関する手段の一つとしては、フィルタを自動で効率よく供給できる構造を有するフィルタ自動供給装置を用いることが挙げられる。
以下、本実施態様におけるフィルタ自動供給装置について説明する。
【0055】
図3は、本発明の第1の実施態様におけるフィルタ自動供給装置の構造を示す概略説明図である。
本実施態様におけるにおけるフィルタ自動供給装置5は、フィルタ収納筒50と、フィルタ収納筒50内に、上下方向に積み重ねられて収納された複数のフィルタカートリッジFCと、フィルタカートリッジFCの取り出し及び搬送を行う搬送手段51と、を備えるものである。
なお、
図3では、フィルタ自動供給装置5によるフィルタの供給先(濾過処理を行う箇所)は、上述した水質監視装置1Aにおけるステージ31となっているが、本実施態様の説明のために例示するものであって、これに限定されるものではない。本実施態様におけるフィルタ自動供給装置5によるフィルタの供給先は、濾過処理を行う箇所であればどこでもよく、上述した水質監視装置1Aにおける自動濾過部3以外を、フィルタの供給先としてもよい。特に、成分分析のオンライン化に伴う前処理として濾過処理を行う箇所を、フィルタの供給先とすることが好ましい。これにより、オンライン化した成分分析において、分析対象以外の外乱による影響を効果的に抑制することが可能となる。
【0056】
フィルタ収納筒50は、フィルタカートリッジFCを収納するためのものであり、
図3に示すように、一部にスリット50aを有する筒状部材からなるものである。
フィルタ収納筒50の直径や長さは、収納するフィルタカートリッジFCの直径や個数に応じて適宜選択することができるものであり、特に限定されない。
【0057】
図3に示すように、フィルタカートリッジFCはフィルタ収納筒50内で上下方向に積み重ねられて収納されている。これにより、横方向にフィルタカートリッジFCを並べることに比べ、同じ底面積において収納できるフィルタカートリッジFCの個数が多くなり、フィルタカートリッジFCの収納に係る省スペース化が可能となる。
また、フィルタカートリッジFCの構造が、試料Sを導入する入口側と濾液Fを排出する出口側とを区別して用いる構造である場合、試料Sを導入する入口側が上になるように積層することが好ましい。これにより、搬送手段51により取り出した方向のまま、濾過処理を行う箇所(ステージ31)にフィルタカートリッジFCを配置することができ、フィルタの自動供給の効率化を図ることが可能となる。
【0058】
搬送手段51は、フィルタ収納筒50からフィルタカートリッジFCの取り出しを行うとともに、濾過処理を行う箇所(ステージ31)にフィルタカートリッジFCを搬送するためのものである。
また、搬送手段51は、フィルタ収納筒50の上部からフィルタカートリッジFCを取り出すものである。
【0059】
フィルタ収納筒50の下部からフィルタカートリッジFCを取り出そうとすると、フィルタカートリッジFCの自重によって、複数のフィルタカートリッジが重なった状態のまま落ちてくるおそれがある。
一方、本実施態様における搬送手段51により、フィルタ収納筒50内に積み重ねられたフィルタカートリッジFCを上部から取り出すことで、一つのフィルタカートリッジFCだけを容易に取り出すことが可能となる。これにより、フィルタの自動供給に係る効率向上が可能となる。
【0060】
搬送手段51としては、
図3に示すように、フィルタカートリッジFCを掴むフィルタハンド52と、フィルタハンド52が取り付けられ、フィルタカートリッジFCの搬送を行う搬送用アーム53とを備えるものが挙げられる。
【0061】
フィルタハンド52は、搬送用アーム53に取り付けられ、2本のハンド部材52aが左右方向に移動して開閉を行うことで、フィルタカートリッジFCの取り出しや搬送を可能とするものである。なお、ハンド部材52aは、フィルタカートリッジFCを安定して挟み込むことができるものであればよく、フィルタカートリッジFCの外装(円周)に合わせた窪みを設けることなどが挙げられる。
【0062】
搬送用アーム53は、フィルタハンド52で取り出したフィルタカートリッジFCを、濾過処理を行う箇所(ステージ31)へ搬送するためのものである。
搬送用アーム53によるフィルタカートリッジFCの搬送に係る具体的な手段及び構造については特に限定されない。例えば、
図3に示すように、搬送用アーム53に、回転駆動機構53a及び上下方向への移動が可能となる移動機構53bを設けることにより、フィルタハンド52によって取り出されたフィルタカートリッジFCの搬送を可能とすることなどが挙げられる。なお、回転駆動機構53aとしては、搬送用アーム53に回転軸R1を設けるとともに、この回転軸R1を回転させるためのモーター等の駆動部(不図示)を設けるものが挙げられる。また、移動機構53bとしては、搬送用アーム53に昇降用シリンダを設け、回転軸R1に沿って上下方向に移動可能とするものが挙げられる。
【0063】
また、搬送手段51としては、
図3に示すように、フィルタ収納筒50内のフィルタカートリッジFCを押し上げる押上部54を備えることが挙げられる。押上部54としては、フィルタ収納筒50と平行に設けられたポール54aと、ポール54aに取り付けられた押上爪54bを備えることが挙げられる。ここで、押上爪54bは、フィルタ収納筒50のスリット50aを介してフィルタ収納筒50内を上下移動し、フィルタカートリッジFCの最下部からフィルタカートリッジFCを押し上げるものである。押上爪54bがフィルタ収納筒50内を上下する機構については特に限定されない。例えば、ポール54aをねじ構造とし、ポール54aの回転により押上爪54bが上下移動するように、ポール54aと押上爪54bとを取り付ける部品を設計することなどが挙げられる。
【0064】
搬送手段51によるフィルタカートリッジFCの取り出し及び搬送について説明する。
まず、フィルタ収納筒50内に積層されたフィルタカートリッジFCのうち、最上部にあるフィルタカートリッジFC1がフィルタ収納筒50の上端よりも上の位置まで来るように、押上部54により押し上げる。
【0065】
次に、最上部にあるフィルタカートリッジFC1を掴める位置に、フィルタハンド52が来るように、搬送用アーム53の回転及び上下方向への移動を行う。なお、搬送用アーム53の移動については、あらかじめプログラムとして決まった動きを設定しておいてもよく、位置センサ等を用いて微修正を加えながら移動させるものとしてもよい。
【0066】
そして、フィルタハンド52により、最上部にあるフィルタカートリッジFC1を掴んだ後、搬送用アーム53を上方向に移動させ、フィルタカートリッジFC1を、その下に配置されたフィルタカートリッジFCから外す。このとき、フィルタカートリッジFC1を確実に外すために、フィルタハンド52あるいは搬送用アーム53に、取り出すフィルタカートリッジFC1の下にあるフィルタカートリッジFCが持ち上がるのを防止する押さえ部材を設けるものとしてもよい。また、この押さえ部材を設ける場合、他の操作への影響を抑止するために、フィルタカートリッジFCを取り出すとき以外は収納可能な構造とすることが好ましい。
【0067】
そして、搬送用アーム53の回転及び上下方向へ移動により、濾過処理を行う箇所(ステージ31)にフィルタカートリッジFCを搬送する。なお、フィルタカートリッジFCを、濾過処理を行う箇所(ステージ31)に搬送するために、搬送用アーム53に対し、水平方向への移動を可能とする移動機構を更に設けるものとしてもよいが、濾過処理を行う箇所(ステージ31)は、搬送用アーム53の回転径内にあることが好ましい。これにより、フィルタの自動供給がスムーズに行われる。
【0068】
フィルタ自動供給装置5により、濾過処理を行う箇所(ステージ31)に搬送されたフィルタカートリッジFCは、試料S等の被処理液が供給され、濾過処理が行われる。
【0069】
また、濾過処理後の使用済みフィルタカートリッジFCは、回収(廃棄)することになるが、このとき、搬送手段51(フィルタハンド52及び搬送用アーム53)を用い、フィルタカートリッジFCの自動供給及び自動回収を行うことが好ましい。これにより、濾過処理の自動化及び効率化を図ることが可能となる。
【0070】
図3には、1本のフィルタ収納筒50を備えるフィルタ自動供給装置を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、本実施態様におけるフィルタ自動供給装置として、複数のフィルタ収納筒50を備えることが挙げられる。
【0071】
図4は、本実施態様におけるフィルタ自動供給装置の別態様を示す概略説明図である。
図4に示すように、本実施態様におけるフィルタ自動供給装置5の他の例としては、フィルタ収納筒50を複数設けるとともに、フィルタ収納筒50が配置され、回転駆動する回転体55を設けるものが挙げられる。なお、
図4では、フィルタ自動供給装置5における搬送手段51のうち、フィルタハンド52及び搬送用アーム53に係る構成は図示を省略している。
【0072】
回転体55は、フィルタ収納筒50を配置する回転体本体55aと、回転軸R2とを有し、回転軸R2は搬送手段51における押上部54のポール54aと平行になるように設けられている。また、回転体本体55aには、回転軸R2を中心として、同心円状にフィルタ収納筒50が配置されており、回転体55全体としては、レボルバー様の構造を形成している。
なお、図示はしていないが、回転体本体55aは、フィルタ収納筒50を固定するための構造を設けることが好ましい。例えば、回転体本体55aに、フィルタ収納筒50に対する嵌合構造やホルダー構造等を設けることなどが挙げられる。
【0073】
図4に示したフィルタ自動供給装置5における操作の一例について説明する。
押上部54により、フィルタ収納筒50内のフィルタカートリッジFCが全て取り出された後、回転体本体55aを回転させる。具体的には、フィルタ収納筒50内のフィルタカートリッジFCの有無を判断するための検知センサ(透過センサ)等を設け、この検知センサの応答に応じて回転体本体55aを回転させることなどが挙げられる。
そして、次のフィルタ収納筒50の下部に対し、押上部54の押上爪54bが挿入されることで、次のフィルタ収納筒50内のフィルタカートリッジFCを取り出すことが可能となる。
この操作を繰り返すことで、回転体55に配置されたフィルタ収納筒50に収納された全てのフィルタカートリッジFCを、連続して供給することが可能となる。
これにより、フィルタカートリッジFCの補充頻度を減らすことができ、フィルタの自動供給に係る一層の効率化を図ることが可能となる。
【0074】
本実施態様におけるフィルタ自動供給装置は、水質監視装置1Aにおけるフィルタ自動供給部として利用することができる。また、本実施態様におけるフィルタ自動供給装置は、成分分析を行う既存の装置に適用することができる。これにより、濾過処理の自動化及び効率化を図ることができ、併せて成分分析のオンライン化も容易となる。
【0075】
〔第2の実施態様〕
図5は本発明の第2の実施態様における水質監視装置の構造を示す概略説明図である。
本発明の第2の実施態様における水質監視装置1Bは、
図5に示すように、第1の実施態様における水質監視装置1Aに対し、試料Sもしくは濾液Fを任意の希釈倍率で自動希釈する自動希釈手段6を更に備えるものである。なお、第1の実施態様の構造と同じものについては、説明を省略する。
【0076】
一般に、成分分析を行う手段である分析装置4には、測定可能な濃度範囲(測定レンジ)が存在しており、この測定レンジを超えると、成分分析に係るデータが得られないことに加え、分析装置4の検出部に影響を与えるという問題が生じる。
一方、水処理プラント100から採水する試料S(又は濾液F)は、水処理プラント100のどこから採水するかによって、含まれる成分濃度に大きな差が存在する。特に、水処理前の流入水には、監視対象となる成分が多く含まれることになるため、濾過処理を経た後の濾液Fにも分析装置4の測定レンジを超えた成分量が含まれることがある。
【0077】
そのため、本実施態様における水質監視装置1Bには、試料Sもしくは濾液Fを任意の希釈倍率で自動希釈する自動希釈手段6を設け、水処理プラント100から採水した試料S又は濾液Fの自動希釈を行うものとする。
【0078】
自動希釈手段6としては、
図5に示すように、自動濾過部3における濾液貯留部33に対し、希釈用の純水を供給する希釈用純水供給部60を備えるものが挙げられる。なお、希釈用純水供給部60による希釈用の純水の供給先は、濾液貯留部33に限定されるものではなく、濾過処理前の試料Sに対し、希釈用の純水を供給するようにしてもよい。
また、希釈用純水供給部60から供給される純水の量や、純水供給のタイミングを制御する制御部(不図示)を設けることが好ましい。
【0079】
希釈倍率は、過去の実績等を基に、あらかじめ設定しておくものとしてもよく、分析装置4からの分析結果に係るフィードバックを受け、希釈倍率を演算して設定するものとしてもよい。
本実施態様における水質監視装置1Bでは、自動採水部2から採水する試料Sの採水量を略一定とし、自動濾過部3に導入することが可能である。したがって、希釈倍率を設定することで、試料Sあるいは濾液Fに供給する希釈用純水の量を一定とすることができ、自動希釈手段6に係る操作を簡便なものとすることができる。
【0080】
以上のように、本実施態様における水質監視装置1Bでは、自動希釈手段を設け、水処理プラントから採水した試料又は濾液を自動希釈することで、監視対象の濃度を成分分析における分析装置4の測定レンジ内に収め、監視対象に係る成分分析を、より一層安定かつ精度よく、オンラインで行うことが可能となる。
特に、水処理プラントにおける流入水及び流出水のように、監視対象の濃度がそれぞれ異なる複数の試料(濾液)に対しても、それぞれの試料(濾液)における監視対象の濃度が自動的に分析装置の測定レンジ内に収まるようにした状態で成分分析を行うことが可能となる。これにより、水質監視に係る質をより一層高めることが可能となる。
なお、本実施態様における分析装置4として測定レンジが異なる複数の分析装置を用いた場合においても、一つの前処理装置(本実施態様における自動濾過部3(フィルタ自動供給装置5)と自動希釈手段6の組み合わせ)により、試料(濾液)における監視対象の濃度をそれぞれの分析装置の測定レンジ内に収め、適切な対応が可能となる。これにより、監視対象に係る成分分析の安定性や精度を高めるとともに、成分分析のオンライン化に係るランニングコストの低減及び省スペース化が可能となる。
【0081】
また、本実施態様における水質監視装置1Bは、上述したプラント制御装置10における水質監視装置1Aに代えて用いることができる。これにより、監視対象となる成分の濃度を、分析装置の測定レンジ内に収め、監視対象に関する精度の高い情報を安定して取得することができる。したがって、この情報に基づく制御を行うことで、水処理プラントの安定した運転状態を維持するために必要な対応をより適切に行うことが可能となる。
【0082】
なお、上述した実施態様は水質監視装置、プラント制御装置、プラント制御方法、及び、フィルタ自動供給装置の一例を示すものである。本発明に係る水質監視装置、プラント制御装置、プラント制御方法、及び、フィルタ自動供給装置は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る水質監視装置、プラント制御装置、プラント制御方法、及び、フィルタ自動供給装置を変形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の水質監視装置、プラント制御装置及びプラント制御方法は、水処理プラントの運転制御及び水処理プラントの維持管理に利用することができる。
【0084】
また、本発明のフィルタ自動供給装置は、オンラインでの濾過処理に好適に利用される。特に、オンラインでの成分分析における前処理として行われる濾過処理の自動化において、好適に利用される。
【符号の説明】
【0085】
1A,1B 水質監視装置、10 プラント制御装置、11 制御部、2 自動採水部、20a,20b 採水管、21a,21b ポンプ、22 ポンプ制御手段、3 自動濾過部、30 フィルタ自動供給部、31 ステージ、32 ノズル、33 濾液貯留部、4 分析装置、5 フィルタ自動供給装置、50 フィルタ収納筒、50a スリット、51 搬送手段、52 フィルタハンド、52a ハンド部材、53 搬送用アーム、53a 回転駆動機構、53b 移動機構、54 押上部、54a ポール、54b 押上爪、55 回転体、55a 回転体本体、6 自動希釈手段、60 希釈用純水供給部、100 水処理プラント、101 沈砂池、102 生物処理槽、103 消毒処理槽、F 濾液、FC,FC1 フィルタカートリッジ、L1~L4 配管、R1,R2 回転軸、S,S1,S2 試料、W 排水、W1 処理水