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特開2022-153194光学機器、光学機器用部材、光学機器用取付部品、点検装置及び点検方法
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  • 特開-光学機器、光学機器用部材、光学機器用取付部品、点検装置及び点検方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153194
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】光学機器、光学機器用部材、光学機器用取付部品、点検装置及び点検方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/08 20210101AFI20221004BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20221004BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G03B17/08
G03B17/56 Z
H04N5/225 430
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056303
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 修
【テーマコード(参考)】
2H101
2H105
5C122
【Fターム(参考)】
2H101CC21
2H101CC41
2H105CC01
2H105DD06
2H105EE07
5C122DA12
5C122DA30
5C122EA01
5C122EA42
5C122GE03
5C122GE11
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、水中の対象物に係る情報取得において、特に対象物表面に係る情報を精度よく、かつ簡便に取得することのできる光学機器、光学機器用部材、光学機器用取付部品、点検装置及び点検方法を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、水中にある対象物の情報取得において、受光部の前面に、対象物との接触による変形が可能である透明部材を配置した光学機器、並びに、この透明部材を備える光学機器用部材及び光学機器用取付部品、並びに、この光学機器を備える点検装置及び点検方法と提供する。これにより、受光部と対象物の間に、透明部材による空間を形成し、対象物の情報取得時における周辺環境による外乱の影響を抑制することができる。そして、透明部材を対象物に接触させるという簡便な操作により、対象物の情報取得に係る精度を高めることが可能となる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中にある対象物の情報取得を行う光学機器であって、
受光部の前面に、透明部材が配置され、
前記透明部材は、前記対象物との接触による変形が可能であることを特徴とする、光学機器。
【請求項2】
前記透明部材は、前記対象物との離間により自然復元することを特徴とする、請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
前記受光部は、カメラのレンズであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学機器。
【請求項4】
移動手段を有する移動体を備え、
前記受光部は、前記移動体に取り付けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学機器。
【請求項5】
水中にある対象物の情報取得を行う光学機器における受光部の前面に取り付ける光学機器用部材であって、
透明、かつ、前記対象物との接触による変形が可能であることを特徴とする、光学機器用部材。
【請求項6】
水中にある対象物の情報取得を行う光学機器に取り付ける光学機器用取付部品であって、
透明部材と、
前記透明部材を前記光学機器の受光部の前面に配設する配設用部材と、を備え、
前記透明部材は、前記対象物との接触による変形が可能であることを特徴とする、光学機器用取付部品。
【請求項7】
水中にある対象物の点検を行う点検装置であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の光学機器を備えることを特徴とする、点検装置。
【請求項8】
水中にある対象物の点検を行う点検方法であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の光学機器による情報取得工程を備えることを特徴とする、点検方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機器、光学機器用部材及び光学機器用取付部品に関するものである。更に詳しくは、水中にある対象物の情報取得を行う光学機器、光学機器用部材及び光学機器用取付部品に関するものである。
また、本発明は、この光学機器を用いた点検装置及び点検方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中にある対象物について情報取得を行うことは、様々な分野で広く行われている。例えば、ダム等の貯水施設、あるいは浄水場及び排水処理施設等の水処理施設全般における各種水槽(原水槽、処理槽等)などについて、施設内や槽内の水中の状況に係る情報取得のほか、施設や槽自体の状態に係る情報取得が行われている。特に、光学機器を用い、水中の対象物に係る情報取得を行うことが広く行われている。併せて、取得した情報に基づき、各種処理条件の制御やメンテナンス作業等に係る操作を効率化するための点検も行われている。
【0003】
さらに、水中にある対象物について情報取得を行うに当たり、光学機器を直接水中に浸漬して用いることや、光学機器に対し、水中における情報取得を適切に行うための手段を設けることなども行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、廃水処理槽の水中に浸漬し、水中の監視を行うセンサやカメラの撮像部からなる光学機器(監視器)に対し、カバー、昇降可能なワイヤ及び擦洗部材を設けるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-76248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、廃水処理槽のように濁度の高い水中において用いる光学機器に対し、光学機器への微生物や汚染物質の付着あるいは堆積による汚染に対応する手段を設けることが示されている。
【0007】
一方、水中にある対象物自体に汚染物質等が付着あるいは堆積している場合、光学機器への汚染を除去することだけでは、対象物表面に係る情報取得を行うことはできない。特に、濁度の高い水中にある対象物表面に係る情報取得を行う場合、対象物の表面状態及びその周辺環境により、光学機器による十分な情報取得が困難となる。
【0008】
また、水中にある対象物の情報取得においては、情報取得に係る作業の簡便性や、情報の精度向上のため、貯水施設や水処理施設全般等の機能を停止することなく、水中にある状態のままで対象物の情報取得を行うことが求められる。さらに、水中に光学機器を浸漬する場合、光学機器の操作性を損なわないことも求められる。
【0009】
本発明の課題は、水中の対象物に係る情報取得において、特に対象物表面に係る情報を精度よく、かつ簡便に取得することのできる光学機器、光学機器用部材、光学機器用取付部品、点検装置及び点検方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、水中にある対象物の情報取得を行う光学機器において、光学機器の受光部に、対象物との接触による変形が可能な透明部材を設けることで、対象物表面に係る情報を精度よく、かつ簡便に取得できることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の光学機器、光学機器用部材、光学機器用取付部品、点検装置及び点検方法である。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の光学機器は、水中にある対象物の情報取得を行う光学機器であって、受光部の前面に、透明部材が配置され、透明部材は、対象物との接触による変形が可能であることを特徴とする。
この光学機器によれば、受光部の前面に透明部材を配置することで、受光部と対象物の間に、透明部材による空間を形成し、対象物の情報取得時における周辺環境による外乱の影響を抑制することが可能となる。特に、対象物が濁度の高い水中にある場合、透明部材を介して受光部が対象物の情報取得を行うことで、精度の高い情報取得が可能となる。
また、透明部材が対象物との接触により変形することで、透明部材と対象物との密着性を高め、対象物表面に付着あるいは堆積した汚染物質の影響を低減させた状態で、受光部を通した情報取得を行うことができる。すなわち、透明部材を対象物に接触させるという簡便な操作により、対象物の情報取得に係る精度を高めることが可能となる。
【0012】
また、本発明の光学機器の一実施態様としては、透明部材は、対象物との離間により自然復元するという特徴を有する。
対象物との接触時に変形した透明部材が、対象物と離間してもその形状を維持したままであると、連続した情報取得を行うことが困難となる。
一方、この特徴によれば、透明部材が対象物との離間により自然復元するため、光学機器を水中から引き上げることなく、連続した情報取得を行うことが可能となる。これにより、より一層簡便かつ迅速な情報取得を行うことが可能となる。
【0013】
また、本発明の光学機器の一実施態様としては、受光部は、カメラのレンズであるという特徴を有する。
この特徴によれば、対象物の情報取得を簡便に行うことができるとともに、情報を広域に取得することが可能となる。
【0014】
また、本発明の光学機器の一実施態様としては、移動手段を有する移動体を備え、受光部は、移動体に取り付けられているという特徴を有する。
この特徴によれば、水中に浸漬した光学機器(受光部)を容易かつ的確に対象物周辺に搬送することが可能となり、受光部による迅速かつ的確な情報取得が可能となる。
【0015】
上記課題を解決するための本発明の光学機器用部材は、水中にある対象物の情報取得を行う光学機器における受光部の前面に取り付ける光学機器用部材であって、透明、かつ、対象物との接触による変形が可能であることを特徴とする。
この特徴によれば、光学機器の受光部に取り付けることで、水中にある対象物の情報取得の精度を高めることができる光学機器用部材を提供することができる。また、既存の光学機器に適用することで、大掛かりな更新を伴うことなく、水中にある対象物表面に係る情報を精度よく、かつ簡便に取得することのできる光学機器とすることが可能となる。
【0016】
上記課題を解決するための本発明の光学機器用取付部品は、水中にある対象物の情報取得を行う光学機器に取り付ける光学機器用取付部品であって、透明部材と、透明部材を光学機器の受光部の前面に配設する配設用部材と、を備え、透明部材は、対象物との接触による変形が可能であることを特徴とする。
この特徴によれば、光学機器の受光部に取り付けることで、水中にある対象物の情報取得の精度を高めることができる光学機器用取付部品を提供することができる。また、既存の光学機器に適用することで、大掛かりな更新を伴うことなく、水中にある対象物表面に係る情報を精度よく、かつ簡便に取得することのできる光学機器とすることが可能となる。
【0017】
上記課題を解決するための本発明の点検装置は、水中にある対象物の点検を行う点検装置であって、上述した光学機器を備えることを特徴とする。
この特徴によれば、上述した光学機器により、対象物に関して精度の高い情報を取得することができる。したがって、この対象物に係る情報に基づく点検結果を得ることで、対象物の保守・維持管理を行う作業者らは必要な対応を適切に行うことが可能となる。また、作業者らは、対象物がある水槽等からの排水作業を行うことなく、対象物に関する適切な保守・維持管理を迅速かつ低コストで行うことが可能となる。
【0018】
上記課題を解決するための本発明の点検方法は、水中にある対象物の点検を行う点検方法であって、上述した光学機器による情報取得工程を備えることを特徴とする。
この特徴によれば、上述した光学機器により、対象物に関して精度の高い情報を取得することができる。したがって、この対象物に係る情報に基づく点検を行うことで、対象物の保守・維持管理を行う作業者らは必要な対応を適切に行うことが可能となる。また、作業者らは、対象物がある水槽等からの排水作業を行うことなく、対象物に関する適切な保守・維持管理を迅速かつ低コストで行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水中の対象物に係る情報取得において、特に対象物表面に係る情報を精度よく、かつ簡便に取得することのできる光学機器、光学機器用部材、光学機器用取付部品、点検装置及び点検方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施態様の光学機器の構造を示す概略説明図である。
図2】本発明の実施態様における透明部材及び配設用部材の別態様を示す概略説明図である。
図3】本発明の実施態様における透明部材及び配設用部材の別態様を示す概略説明図である。
図4】本発明の実施態様の点検装置の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の光学機器は、受光部を備え、水中にある対象物に係る情報を取得するためのものであり、特に水中にある対象物表面に係る情報を取得するためのものである。
また、本発明の光学機器用部材及び光学機器用取付部品は、水中にある対象物に係る情報を取得するために、光学機器の受光部に取り付けられるものである。
さらに、本発明の点検装置及び点検方法は、本発明の光学機器を用い、水中にある対象物の点検を行うためのものである。特に、水中にある対象物表面の点検を行うためのものである。
【0022】
本発明による情報取得を行う対象物の例としては、貯水施設内や各種水処理施設(浄水場や排水処理施設等)における水槽内に設置された構造物のほか、貯水施設や各種水処理施設の水槽の壁面などが挙げられる。特に、本発明に係る対象物としては、排水処理施設における原水槽や生物処理槽など、濁度の高い水を貯留する水槽内に設置された構造物や水槽壁面が挙げられる。なお、実施態様における対象物については、本発明を説明するための例示であって、これに限定されるものではない。
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る光学機器、光学機器用部材、光学機器用取付部品、点検装置及び点検方法の実施態様を詳細に説明する。また、本発明に係る点検方法の説明については、本発明に係る点検装置の構成及び操作に係る説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する光学機器、光学機器用部材、光学機器用取付部品、点検装置及び点検方法については、本発明に係る光学機器、光学機器用部材、光学機器用取付部品、点検装置及び点検方法を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0024】
[光学機器]
図1は、本発明の実施態様における光学機器の構造を示す概略説明図である。
本発明の実施態様に係る光学機器1は、対象物Tに対する情報取得を行うものであり、図1に示すように、受光部20を備える機器本体2と、受光部20の前面に取り付けられる透明部材3と、透明部材3を配設するための配設用部材4と、を備えている。なお、図1には、本実施態様における対象物Tとして、水処理施設における水槽壁面を例示している。
【0025】
(機器本体)
機器本体2は、受光部20を備え、対象物Tに係る情報を光学的に取得するためのものである。
本実施態様における機器本体2としては、対象物Tに係る情報を光学的に取得することができるものであればよく、例えば、光学センサ(光電センサ)や、カメラ等の画像取得装置(撮像装置)などが挙げられる。
特に、本実施態様における機器本体2としては、カメラを用いることが好ましい。これにより、対象物Tに係る情報を面で捉えることが可能となり、センサ類よりも広域、かつ迅速に情報取得することが可能となる。また、対象物Tに係る情報を画像として取得することができるため、情報の視認性が高く、後述する点検装置100等に対し、好適に活用することが可能となる。なお、機器本体2としてのカメラは、静止画、動画のいずれを取得するものであってもよく、必要に応じて静止画と動画を切り替えて取得可能なものとしてもよい。
【0026】
また、本実施態様における受光部20は、機器本体2に備えられ、対象物Tの情報を取得するための検出端(検出面)として機能するものである。例えば、光ファイバーを用いた光学センサにおける光ファイバー端部や、カメラ等の画像取得装置におけるレンズなどが挙げられる。特に、本実施態様における受光部20は、カメラのレンズであることが好ましい。これにより、対象物Tに係る情報をセンサ類の検出端よりも広域で取得することが容易となる。
【0027】
なお、機器本体2に設けられる受光部20以外の構成としては、受光部20による情報取得の開始/停止を行う情報取得指示部、対象物Tに対して光を放射する投光部、受光部20で検出した光を電気信号に変換する電気信号変換部、電気信号変換部からの電気信号を画像や出力値等の情報に変換する情報変換部などが挙げられる。投光部は、光学センサとしての検出に必要な光を対象物Tに対して放射するものであってもよく、照明としての光を放射するものであってもよい。また、各部の操作に係る指示を伝達・実行する運転制御部のほか、電気信号(情報)の外部出力及び運転制御部での指示に関する外部入力を可能とする通信手段などを設けるものとしてもよい。
【0028】
本実施態様における光学機器1は、水中に浸漬して対象物Tに係る情報取得を行うものであり、水中への浸漬手段及び水中からの回収手段については特に限定されない。例えば、光学機器1の機器本体2に、ワイヤ等の吊下用部材を取り付け、この吊下用部材を上下左右に移動させる移動機構を設けることなどが挙げられる。
特に、図1に示すように、本実施態様における光学機器1の機器本体2(受光部20)に対し、移動手段を備える移動体21を直接設けることが好ましい。これにより、水中に浸漬した光学機器1(機器本体2の受光部20)を容易かつ的確に対象物T周辺に搬送することが可能となり、受光部20による迅速かつ的確な情報取得が可能となる。なお、図1には、受光部20の左右に移動体21を設けるものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、受光部20の上方向及び/又は下方向に移動体21を設けるものとしてもよく、受光部20全体を囲うように移動体21を設けるものとしてもよい。
本実施態様における移動体21としては、水中での機器本体2の移動を可能にすることができるものであればよく、例えば、車輪や回転羽根(プロペラ)などの移動手段を備えたものが挙げられる。特に、移動体21としては、回転羽根を有する飛行体(ドローンなど)とすることが好ましい。これにより、対象物Tが水槽の壁面等であり、対象物Tの情報取得において、水平方向に加え、垂直方向への移動も必要となる場合において、光学機器1(機器本体2の受光部20)の的確かつ速やかな移動が可能となる。
【0029】
(透明部材)
透明部材3は、受光部20の前面に配置され、対象物Tとの接触による変形が可能なものである。
透明部材3を受光部20の前面に配置することで、受光部20と対象物Tの間に、透明部材3による空間を形成し、対象物Tの情報取得時における周辺環境による外乱の影響を抑制することが可能となる。特に、対象物Tが濁度の高い水中にある場合、透明部材3を介して受光部20が対象物Tの情報取得を行うことで、精度の高い情報取得が可能となる。
また、透明部材3が対象物Tとの接触により変形することで、透明部材3と対象物Tとの密着性を高め、対象物T表面に付着あるいは堆積した汚染物質の影響を低減させた状態で、受光部20を通した機器本体2による情報取得を行うことができる。すなわち、透明部材3を対象物Tに接触させるという簡便な操作により、対象物Tの情報取得に係る精度を高めることが可能となる。
【0030】
また、透明部材3は、対象物Tとの離間により、自然復元することが好ましい。対象物Tとの接触時に変形した透明部材3が、対象物Tと離間してもその形状を維持したままであると、連続した情報取得を行うことが困難となる。したがって、透明部材3が対象物Tとの離間により自然復元することで、機器本体2を水中から引き上げることなく、連続した情報取得を行うことが可能となる。これにより、より一層簡便かつ迅速な情報取得を行うことが可能となる。
【0031】
透明部材3としては、受光部20の前面に配置し、対象物Tとの接触により変形可能となるものであればよく、構造や材質については特に限定されない。
【0032】
透明部材3の具体的な例としては、例えば、図1に示すように、透明な材質からなる袋状構造体(バルーン)30であって、袋状構造体30内に、充填物31として気体あるいは液体を充填し、袋状構造体30の形状を可変とするものが挙げられる。これにより、対象物Tとの接触時には、袋状構造体30が変形するとともに、対象物Tとの離間時には、充填物31の存在により袋状構造体30の形状が自然復元する透明部材3とすることができる。
【0033】
より具体的には、図1に示すように、透明部材3としての袋状構造体30を対象物Tの表面に接触させることで、袋状構造体30の一部が対象物Tの表面構造に合わせて変形する。これにより、袋状構造体30を介し、受光部20が対象物Tの表面に係る情報取得を行うことができる。また、これにより、袋状構造体30により対象物T周辺環境による外乱や、対象物Tの表面に付着あるいは堆積した汚染物質の影響を抑制した情報取得を行うことが可能となる。
そして、情報取得後、袋状構造体30を対象物Tから離間することで、充填物31の存在により袋状構造体30を元の形状に復元する力が働き、袋状構造体30の形状が自然復元する。
【0034】
袋状構造体30の材質としては、受光部20による情報取得に影響しない程度の透明性を有し、かつ、成形した袋状構造体30が、充填物31の充填及び対象物Tとの接触に対する所定の強度(耐久性)を有するものが挙げられる。より具体的には、塩化ビニル等の樹脂からなるフィルムやシートなどが挙げられる。
また、袋状構造体30内に充填する充填物31としては、濁度が低く、情報取得を行う対象物Tの周辺環境との比重差がほとんど存在しない液体とすることが好ましく、より具体的には、純水とすることが特に好ましい。これにより、透明部材3を配置した機器本体2を水中に浸漬する際、機器本体2の操作性や情報取得の精度に係る影響(浮力や屈折率差等)を抑制することが可能となる。
【0035】
透明部材3は、図1に示す袋状構造体30に限定されるものではない。
図2及び図3は、本実施態様の光学機器における透明部材の別態様を示す概略説明図である。
図2に示すように、透明部材3の別の例としては、板状構造体32aによる筐体32を形成するものが挙げられる。筐体32内には、充填物31を充填する空間が形成され、充填物31として、気体又は液体を充填する。なお、充填物31は、上述したように、濁度が低く、情報取得を行う対象物Tの周辺環境との比重差がほとんど存在しない液体とすることが好ましく、より具体的には、純水とすることが特に好ましい。
このとき、板状構造体32aの材質としては、透明、かつ対象物Tとの接触及び離間により変形可能な弾性を有する樹脂が挙げられる。より具体的には、透明、かつゲル状物質であるシリコンゲル、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
これにより、板状構造体32aと対象物Tとの接触により、板状構造体32aの表面が対象物Tの表面構造に合わせて変形するとともに、対象物Tとの離間により自然復元する透明部材3を形成することができる。
【0036】
また、図3に示すように、透明部材3の別の例としては、筐体33の一部に設けた孔34に、袋状構造体30と同様の材質からなるシート35を張り、充填物31を充填することで、シート35を半球状とするものが挙げられる。このとき、筐体33は、シート35を保持するためのものであり、軽量かつ一定の強度を有するものであればよく、透明であるか否かは特に限定されない。例えば、板状構造体32aと同材質で形成するものとしてもよく、軽量金属や高い強度を有するその他の樹脂等で形成するものとしてもよい。
これにより、シート35と対象物Tとの接触により、シート35が対象物Tの表面構造に合わせて変形するとともに、対象物Tとの離間により自然復元する透明部材3を形成することができる。
【0037】
本実施態様における透明部材に係る構成は、本発明における光学機器用部材として独立したものとすることができる。この光学機器用部材は、既存の光学機器に適用することができる。これにより、既存の光学機器に対して大掛かりな更新を伴うことなく、本発明の光学機器を容易に提供することが可能となる。
【0038】
(配設用部材)
配設用部材4は、透明部材3を受光部20の前面に配設するためのものである。
本実施態様の配設用部材4は、透明部材3を受光部20の前面に配設することができるものであればよく、構造や材質については特に限定されない。
【0039】
配設用部材4の材質については、水中に浸漬して使用することを鑑み、透明部材3を配設するための強度に加え、耐水性、耐腐食性を有することが好ましい。また、機器本体2の操作性を阻害しないために、配設用部材4は軽量であることが好ましい。より具体的には、配設用部材4としては、アルミなどの軽量金属や、塩化ビニルなどの樹脂等からなる板状部材や管状部材等が挙げられる。
【0040】
また、配設用部材4の構造は、透明部材3の形状に応じて適宜設計するものとしてもよく、透明部材3の形状を問わずに使用することができる汎用性の高い構造としてもよい。
配設用部材4としては、透明部材3をホールドするホールド部と、ホールド部と機器本体2とを固定する固定部とを備えるものや、透明部材3を機器本体2に直接固定して取り付ける取付部を備えるものなどが挙げられる。
【0041】
以下、配設用部材4について具体的に例示するが、これに限定されるものではない。
例えば、図1に示すように、透明部材3として袋状構造体30を用いる場合、配設用部材4としては、袋状構造体30が嵌め込まれるリング状部材40と、リング状部材40を機器本体2に取り付けるための支持部材41を備えるものが挙げられる。ここで、リング状部材40はホールド部として、支持部材41は固定部として機能するものである。
このとき、リング状部材40の直径は、袋状構造体30の直径よりも小さいものとする。これにより、対象物Tと透明部材3(袋状構造体30)との接触を阻害することなく、リング状部材40により袋状構造体30を確実に固定することができる。
また、支持部材41は、リング状部材40と機器本体2とを固定し、受光部20の前面に袋状構造体30を配設することができるものであればよい。例えば、図1に示すように、リング状部材40と支持部材41とを固定するために、リング状部材40に設けられた固定用プレート40aと支持部材41の端部41aとを固定する第一の固定手段を設けるとともに、支持部材41と機器本体2とを固定する第二の固定手段を設けることが挙げられる。このとき、支持部材41と各部(リング状部材40及び機器本体2)とを固定する第一及び第二の固定手段は、それぞれの固定を行うことができればよく、具体的な手段としては特に限定されない。例えば、ねじ、ボルト・ナット、クランプ、その他の留め具や締め具を用いることのほか、接着剤や接着テープなどを用いること等が挙げられる。
【0042】
また、図2及び図3に示すように、透明部材3として板状構造体32aからなる筐体32を用いる場合や、筐体33を用いる場合、配設用部材4としては、筐体32又は筐体33を機器本体2に直接取り付けるための支持部材42を備えるものが挙げられる。ここで、支持部材42は、取付部として機能するものである。
このとき、支持部材42は、筐体32、33と機器本体2とを固定し、受光部20の前面に筐体32又は筐体33を配設することができるものであればよい。
例えば、図2に示すように、筐体32と支持部材42とを固定するために、筐体32の一部と支持部材42とを、ねじや接着剤等で直接固定する固定手段を設けることが挙げられる。
また、他の例としては、筐体32の一部と支持部材42とを間接的に固定する別部材を設けることなどが挙げられる。例えば、図3に示すように、筐体33の一部に、支持部材42の差込あるいは嵌合が可能な構造を有する接続用部材36を設け、この接続用部材36を介して筐体33と支持部材42を固定することなどが挙げられる。
【0043】
さらに、配設用部材4としては、リング状部材40などのホルダー部や、支持部材42などの取付部が、透明部材3のサイズに合わせて可変となる構造を有するものとしてもよい。これにより、受光部20のサイズや対象物Tのサイズに合わせ、適切な透明部材3のサイズを選択し、機器本体2に取り付けることが可能となる。
【0044】
本実施態様における透明部材及び配設用部材を併せた構成は、本発明における光学機器用取付部品として独立したものとすることができる。この光学機器用取付部品は、既存の光学機器に適用することができる。これにより、既存の光学機器に対して大掛かりな更新を伴うことなく、本発明の光学機器を容易に提供することが可能となる。
【0045】
[点検装置]
図4は、本発明の実施態様における点検装置の構造を示す概略説明図である。
本発明の実施態様に係る点検装置100は、上述した光学機器1を用い、水中にある対象物Tの情報取得を行い、対象物Tの点検を行うためのものである。
【0046】
本実施態様における点検装置100は、図4に示すように、上述した光学機器1に加え、光学機器1と送受信可能に接続された制御部110と、光学機器1からの情報を外部に出力する出力部120とを備えている。なお、図3における一点破線は、入出力可能に接続されていることを示すものである。
【0047】
制御部110は、光学機器1における機器本体2各部の操作に係る指示を行う運転制御部及び移動体21の移動手段と入出力可能に接続することが好ましい。このとき、制御部110は、光学機器1の制御が可能となるように接続されているものであればよく、例えば、制御部110と光学機器1とを同一のケーシング内に配置し、制御部110が外部からの信号を受信して光学機器1の制御(操作)をすることや、制御部110と光学機器1とが別体として設けられ、ネットワーク等で接続することで、光学機器1の制御(遠隔操作)を可能とすることなどが挙げられる。
【0048】
また、出力部120は、光学機器1で取得した対象物Tに係る情報を外部に出力し、対象物Tの保守・維持管理を行う作業者らに通知するためのものである。
本実施態様における光学機器1により、特に濁度の高い水中における対象物Tに関して精度の高い情報を取得することができる。したがって、出力部120により、この対象物Tに係る情報を作業者らに通知することにより、作業者らは対象物Tの保守・維持管理に必要な対応を適切に行うことが可能となる。これにより、作業者らは、対象物Tがある水槽等からの排水作業を行うことなく、対象物Tに関する適切な保守・維持管理を迅速かつ低コストで行うことが可能となる。
【0049】
なお、点検装置100に設けられる他の構成としては、光学機器1で取得した情報の解析を行う解析部や、解析部の解析結果に基づく判断部などが挙げられる。解析部及び判断部は、出力部で出力するデータの解析、及び、この解析の結果に基づき、対象物Tの状態判断を行うものであり、例えば、数値や画像データの比較に必要なプログラムをCPU等のプロセッサにより実行する計算装置とすることが挙げられる。これにより、点検装置100による対象物Tの点検結果について、作業者らが容易に内容を理解し、必要な対応を速やかに行うことが可能となる。
【0050】
本実施態様における点検装置100による点検においては、対象物Tがある水槽等からの排水作業を行うことなく、対象物Tの保守・維持管理に必要な情報を適宜取得することが可能である。
以下、本実施態様における点検装置100を用いた点検の一例について説明する。
例えば、対象物Tの特定箇所に対して定期的あるいは断続的な光学機器1による情報取得(対象物Tに対する定点観測)を行い、この定点観測により得られた対象物Tの情報を蓄積し、比較を行うことが挙げられる。これにより、対象物Tが水中にある状態のまま、どのような経年変化(経年劣化)が生じているかについての情報を得ることが可能となる。この経年変化に係る情報を基に、対象物Tの現状把握だけではなく、対象物Tの状態予測を行うことも可能となる。
【0051】
なお、上述した実施態様は光学機器、光学機器用部材、光学機器用取付部品、点検装置及び点検方法の一例を示すものである。本発明に係る光学機器、光学機器用部材、光学機器用取付部品、点検装置及び点検方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る光学機器、光学機器用部材、光学機器用取付部品、点検装置及び点検方法を変形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の光学機器、光学機器用部材及び光学機器用取付部品は、水中にある対象物に係る情報の取得に利用することができ、特に水中にある対象物表面に係る情報の取得において好適に利用される。また、本発明の光学機器、光学機器用部材及び光学機器用取付部品は、濁度の高い水中にある対象物に係る情報の取得において、特に好適に利用される。
【0053】
本発明の点検装置及び点検方法は、水中にある対象物の点検に利用することができ、特に水中にある対象物表面の点検において好適に利用される。また、本発明の点検装置及び点検方法は、濁度の高い水中にある対象物に係る点検において、特に好適に利用される。
【符号の説明】
【0054】
1 光学機器、2 機器本体、20 受光部、21 移動体、3 透明部材、30 袋状構造体、31 充填物、32 筐体、32a 板状構造体、33 筐体、34 孔、35 シート、36 接続用部材、4 配設用部材、40 リング状部材、40a 固定用プレート、41 支持部材、41a 端部、42 支持部材、100 点検装置、110 制御部、120 出力部、T 対象物
図1
図2
図3
図4